JPH11116602A - 食品に生理作用を付与する方法 - Google Patents

食品に生理作用を付与する方法

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JPH11116602A
JPH11116602A JP9280464A JP28046497A JPH11116602A JP H11116602 A JPH11116602 A JP H11116602A JP 9280464 A JP9280464 A JP 9280464A JP 28046497 A JP28046497 A JP 28046497A JP H11116602 A JPH11116602 A JP H11116602A
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茂 若林
Hiroaki Satsuba
裕昭 札場
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強い生理活性を食品に付与する方法を提供す
ること。 【解決手段】 難消化性成分の含有量が30〜60重量
%の酸添加焙焼デキストリンを、酸の存在下に加水分解
して得られる難消化性水飴及び/又は粉飴を、食品に添
加または食品の構成成分の一部と置換すること。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は酸添加焙焼デキスト
リンを酸の存在下に加水分解して得られる難消化性水飴
及び/又は粉飴を食品に添加、または食品成分の一部と
置換することにより食品に生理作用を付与する方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】近年日本においても生活水準の向上に伴
い、食生活も変化し欧米の水準に近付いてきた。この結
果として平均寿命が延長し、急速な高齢化現象が起きた
ことから疾病構造が変化して成人病が著しく増加したた
めに、健康志向が飛躍的に増大している。この中で生体
調節機能を有する食品素材の例として、食物繊維やオリ
ゴ糖が便秘の改善を中心とした生体調節機能を有すると
ころから、食品の機能を高める素材として注目を集めて
いる。これらの食物繊維やオリゴ糖のような難消化性の
物質は、消化管内で種々の挙動を示し、生体に対して生
理効果を発現する。まず、上部消化管において、水溶性
の食物繊維は食物の移動速度の低下をもたらし、栄養素
の吸収遅延が起こる。例えば、糖の吸収遅延は血糖値の
上昇を抑制し、それに伴いインシュリン節約などの効果
を発現する。また、胆汁酸の排泄を促進することによ
り、体内のステロールグループが減少し、血清中のコレ
ステロールが低下するなどの効果も現れる。その他、体
内の内分泌系を介しての生理効果も報告されている。
【0003】また、これらの難消化性物質の特徴は、小
腸までの消化吸収を免れ、大腸へ達することである。大
腸へ達したオリゴ糖や食物繊維の一部は、腸内細菌によ
り資化されて短鎖脂肪酸、腸ガス、ビタミンなどを産生
する。短鎖脂肪酸による腸内環境の酸性化は整腸作用を
もたらし、また吸収された短鎖脂肪酸は代謝されエネル
ギーになると同時にコレステロール合成を阻害すること
も報告されている。難消化性物質として、澱粉を原料と
して製造される難消化性デキストリン(食物繊維含有デ
キストリン)が知られており、水溶性であることから広
範囲の食品に使用することができる。特開平2−145
169号には、焙焼デキストリンにα−アミラーゼを作
用させて難消化性デキストリンを製造する方法が記載さ
れている。
【0004】特開平2−154664号には、焙焼デキ
ストリンにα−アミラーゼにつづいて、グルコアミラー
ゼを作用させ、クロマト分画で食物繊維分を採取して食
物繊維高含有デキストリンを製造する方法、クロマト分
画前にトランスグルコシダーゼを作用させて食物繊維を
増加させる方法などが記載されている。特開平6−16
6622号には、難消化性デキストリンを砂糖などの食
品に添加することによって、食品に肥満、耐糖能障害を
予防する作用を付与する方法が記載されている。これら
の難消化性デキストリンは低甘味であり、吸湿性が低
く、濃厚感を付与することができるが、一方では甘味が
低いために他の甘味料との併用が必要な場合がある。こ
の場合には、pHが中性の食品の製造中や保存中に褐変
が起こり易く、また煮詰め時の焦げ付きも起こり易いな
どの欠点を有している。
【0005】そこで前記の水溶性食物繊維が有する欠点
を改善し、単に低エネルギーだけでなくその保有する生
理効果を有し、煮詰めができて広範囲の食品に使用でき
る難消化性物質は開発・商品化されていないために、各
種の食品業界からその出現が切望されている。焙焼デキ
ストリンの酸加水分解に関しては、特開平4−1354
95号に無機酸添加焙焼デキストリンの水溶液をそのま
まか、または更に無機酸または有機酸を添加して加圧加
熱、中和してグルコースの生成量が約10%の酸加水分
解物を得て、これに糖化型アミラーゼを作用させて難消
化性多糖類と消化性糖類に糖化し、次に難消化性多糖類
を分離する方法が記載されている。特開平4−1354
95号にはさらに、この難消化性多糖類が低粘性で低カ
ロリーであるため、摂取カロリーや糖類の摂取を制限す
る人の食餌療法に用いられること、食物繊維として健康
維持のための食品素材として利用されることが記載され
ているが、難消化性成分とDE、分子量との相関や健康
維持のための生理作用の詳細については何も記載されて
いない。
【0006】また特開平7−170938号には、焙焼
デキストリンを酸加水分解して、そのDEと難消化性成
分の平均分子量が特定の条件を満たしたときに、酸加水
分解前にはほとんど見られなかったビフィズス菌選択増
殖活性が強く発現することが記載されている。しかし酸
加水分解前の焙焼デキストリンが有する脂質代謝の改善
作用や、血糖上昇を抑制する作用が酸加水分解によっ
て、どの様に変化するかについては、全く記載されてい
ない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、脂質
代謝の改善作用と血糖上昇の抑制作用などの生理作用を
有する食品を開発することである。さらに詳細には、本
発明の目的は、低エネルギーであることに加えて各種の
生理効果を有し、且つ適度の甘味と粘性を有し、煮詰め
ができ、さらに他の吸湿性が高くて保形性が悪い糖アル
コール類と混合してこれらの欠点を改善することができ
る難消化性水飴及び/又は粉飴を得ることである。本発
明の他の目的は、上記難消化性水飴及び/又は粉飴を食
品に添加して、食品に生理作用を付与する方法を提供す
ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは難消化性成
分を30〜60重量%含有する焙焼デキストリンの酸加
水分解物を食品の構成成分の一部とすることによって、
食品に脂質代謝の改善作用および、砂糖などと一緒に摂
取したときに、血糖の上昇を抑制する作用を付与するこ
とができるとの知見を得て本発明を完成したのである。
本発明は、難消化性成分の含有量が30〜60重量%の
酸添加焙焼デキストリンを、酸の存在下に加水分解して
得られる難消化性水飴及び/又は粉飴を食品に添加また
は食品の構成成分の一部と置換することを特徴とする、
食品に生理作用を付与する方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】澱粉などの糖質は、生体内の酵素
で分解されてできた単糖だけが、上部消化管で吸収さ
れ、二糖類以上の糖は吸収されずに大腸に達する。従っ
て、本発明の難消化性水飴及び/又は粉飴を含有する食
品では、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼで加水分解
した後のグルコース以外の部分が、難消化性成分とし
て、上部消化管で吸収されずに大腸まで達し、そこで生
理作用を発揮するので、ある程度の難消化性成分の含量
が必要である。本発明の基本的な特徴は、澱粉に酸、好
ましくは無機酸を添加し、低水分状態で加熱して生成す
る焙焼デキストリンを原料として用い、その水溶液に無
機酸または有機酸を添加し、加圧加熱して加水分解せし
めるという方法で製造された難消化性水飴及び/又は粉
飴を使用することにある。この原料焙焼デキストリン中
の難消化性成分の含有量は30〜60重量%である。す
なわちこの原料焙焼デキストリンをα−アミラーゼ、グ
ルコアミラーゼで加水分解した後の難消化性成分の含有
量は、30〜60重量%である。得られた難消化性水飴
及び/又は粉飴のDEは、好ましくは20〜50、さら
に好ましくは30〜50であり、難消化性水飴及び/又
は粉飴中の難消化性成分の含有量は、好ましくは26〜
50重量%である。本発明は、この難消化性水飴及び/
又は粉飴が、生理作用を有するという発見に基づくもの
である。
【0010】本発明に使用される焙焼デキストリンの原
料である澱粉としては、特に限定されないが、例えばコ
ーン(とうもろこし)、ワキシー・コーン(もちとうも
ろこし)、馬鈴薯、甘藷、タピオカ、小麦、大麦、米、
等の澱粉が使用できる。以下上記方法について更に詳細
に説明する。澱粉に対して鉱酸(例えば、塩酸、硝酸、
硫酸)、好ましくは塩酸を澱粉100重量部に対して、
例えば、1重量%の塩酸水溶液として3〜10重量%添
加、加熱処理して、中間物質である焙焼デキストリンを
得る。この加熱処理の前に澱粉と鉱酸の水溶液を均一に
混合するために、適当なミキサー中で攪拌、熟成させて
から、好ましくは100℃〜120℃程度で予備乾燥し
て、混合物中の水分を5重量%程度まで減少させること
が好ましい。加熱処理は従来技術の加酸焙焼デキストリ
ン(白色デキストリン、黄色デキストリン)の加熱条件
とは異なり、例えば、140〜200℃で10分〜12
0分、好ましくは20分〜120分が適当である。加熱
処理の温度は高い方が目的生成物中の難消化性成分の含
量が増加するが、180℃付近から着色物質が増加する
ので、より好ましくは150℃前後である。
【0011】加熱装置を選択することによって高温短時
間の反応を行うことも可能であるので、例えばエクスト
ルーダーのようにごく短時間に均一な反応を行うことが
できる装置を用いれば、効率的に加熱処理することがで
きる。また、粉末状態での反応であるから大規模生産の
場合は、加熱条件を変更する必要もあるので、加熱処理
後の製品の品質を検討した上で、適宜加熱条件を変更す
ることが望ましい。このようにして得られた焙焼デキス
トリンは水に易溶性であるので、水を加えて攪拌すると
水溶液が得られる。この水溶液をそのままか、または
酸、特に塩酸や蓚酸等を加えて、pHを1.6〜2.0
に調整し、120〜140℃で15〜、30分間加圧加
熱を行って加水分解させる。このようにして得られた酸
加水分解物は、中和後、常法に従って脱色、脱塩、濃縮
して難消化性水飴とするか、またはスプレードライして
難消化性粉飴とすることができる。
【0012】本発明において、後記する測定方法によっ
て求められる出発原料の焙焼デキストリン中の難消化性
成分の含量は酸の添加量、焙焼時間により変化するが、
難消化性成分が60重量%以上のものについては得られ
た難消化性水飴及び/又は粉飴の着色やこげがはなはだ
しくなり、製品の品質が低下して食品用として不適当で
ある。また、本発明の効果を発現させるためには、難消
化性水飴及び/又は粉飴の1日当りの摂取量は、難消化
性成分換算で約4g以上であることが望ましい。従って
焙焼デキストリン中の難消化性成分の含量が30重量%
以下のものでは、大腸に達する難消化性成分の量が少な
く、かなり大量に摂取することが必要となるため、コス
トが高くなり、添加できる食品が限定される。従って本
発明において生理作用を発揮するのは原料焙焼デキスト
リン中の難消化性成分の含量が30〜60重量%の範囲
内のものである。
【0013】次に焙焼デキストリンを酸加水分解するこ
とによって、難消化性成分の含量が低下するが酸加水分
解後の含量が26〜50重量%の範囲内であることが好
ましい。また酸加水分解によって後記するDEの値が上
昇するが、このDEは好ましくは約20〜50の範囲
内、さらに好ましくは約30〜50の範囲内のものが生
理作用を強く発揮する。さらに酸加水分解物中の難消化
性成分の平均分子量が600〜1200であるときに生
理作用を強く発揮する。この難消化性水飴及び/又は粉
飴を食品に添加するか、または食品の成分の1部と置換
することによって、食品に脂質代謝の改善作用および、
砂糖などと一緒に摂取したときに、血糖の上昇を抑制す
る作用を付与することができる。その添加量または置換
量は、その食品の1食分あたり難消化性成分換算で約4
g以上であることが好ましい。ただし難消化性成分が生
理作用に及ぼす影響は個人差があることから、効果を見
ながら適宜増減するのが良い。
【0014】本発明に用いられる難消化性水飴及び/又
は粉飴は殆ど全ての食品に使用することができる。この
明細書において「食品」とは、ヒトの食品のみならず、
哺乳動物、鳥類、魚類、特に家畜、家禽等の飼料、ペッ
トフードなどを総称するものである。本発明の難消化性
水飴及び/又は粉飴は、澱粉を原料とした水溶性のもの
であり、食物繊維を含有し、低カロリー増量剤としても
食品に使用できることから、従来デキストリンやマルト
デキストリン、水飴、還元水飴、還元麦芽糖水飴などが
使用できる食品の全てに対して、これを添加し又はその
一部を置換することができる。本発明の難消化性水飴及
び/又は粉飴を使用して、食品本来の特徴を変化させる
ことなく、生理作用を付与できる食品として好ましいも
のは、飲料類、デザート類、菓子類、米菓、冷菓、ジャ
ム、畜肉製品、水産練製品であり、中でも果汁飲料、炭
酸飲料、乳飲料、乳酸飲料、プリン、ゼリー、キャンデ
ィー、ビスケット、ケーキ、カステラ、アイスクリー
ム、シャーベット、ジャム、畜肉製品、水産練製品が最
も好ましい食品である。
【0015】次に本発明に使用される各定量法及び試験
法を詳細に記す。なお表中に%とあるのは重量%であ
る。 〔定量法〕 難消化性成分含量 :プロスキーらの方法により加水分
解を行い高速液体クロマトグラフィー( 日立D-2000, カ
ラムMCIGEL-CK08EC)により測定した。 グルコース量 :ピラノースオキシダーゼ法により
測定した。 分子量 :高速液体クロマトグラフィー法に
より測定した。 構造 :箱守らの方法によりメチル化を行
いGC分析を行った。 DE :ウィルシュテッター・シューデル
法により測定した。 糖組成 :高速液体クロマトグラフィー(日
立 D-2000 ,カラムMCIGEL-CK04SS)により測定した。 消化性試験1 :小腸粘膜酵素法により測定した。 消化性試験2 :プロスキー法により測定した。 甘味度 :官能検査法により測定した。 浸透圧 :10重量%溶液をOSMOTRO
N−10型により測定した。 氷点降下度 :10重量%溶液をOSMOTRO
N−10型により測定した。 粘性 :30重量%濃度でBM型粘度計に
より測定した。 褐変反応 :10%重量溶液に1重量%のグリ
シンを加え、pH4.5及び6.5で100℃で、30
分、60分、150分間加熱して光電比色計で吸光度を
測定した。 水分 :フィルム法により測定した。 見掛比重 :ホイッピング時の100ml容重
量を測定した。 容積 :菜種で測定した。 硬度 :レオメーターで測定した。 弾力性 :レオメーターで測定した。 ゲル硬度 :レオメーターで測定した。 付着性 :レオメーターで測定した。 離水率 :試料をロートのグラスウール上に
置き、落下する液量から算出した。 吸湿率 :製造時の水分で保存後の水分増加
量(重量%)を除して、100を乗じて算出した。 嗜好性 :下記の採点法で測定し、結果を危
険率5%で有意差検定を行った。 非常に良い +4 かなり良い +3 良い +2 やや良い +1 基準(対照区) 0 やや劣る −1 劣る −2 かなり劣る −3 非常に劣る −4
【0016】
【参考例1】コーンスターチ20kgに500ppmの
塩酸を添加して、水分15%に予備乾燥後、140℃で
60分間加熱し、白度65、難消化性画分含量53%の
焙焼デキストリンを得た。さらに、この焙焼デキストリ
ン15kgを水に溶解し30%溶液とし、その約50K
gに塩酸を添加してpH1.8としたのち2.0Kg/
cm2 の加圧加熱条件下で加水分解しDE35の分解物
を得た。中和後、活性炭による脱色、イオン交換樹脂に
よる脱塩を行い、濃縮してスプレー乾燥を行い難消化性
粉飴約12Kgを得た。
【0017】
【比較例1】残りの約15Kgの焙焼デキストリン水溶
液を水酸化ナトリウムでpH6.0に調整し、α−アミ
ラーゼ(ターマミル50L:商品名、ノボ・ノルディス
ク・バイオインダストリー社製造)を固形分に対して
0.2重量%添加して、85℃に昇温して1時間加水分
解を行った。次に2.0Kg/cm2 の加圧加熱条件下
で5分間加熱してα−アミラーゼを失活させ、同様に精
製、濃縮してスプレー乾燥を行い難消化性デキストリン
約3.5Kgを得た。
【0018】
【実験例1】比較例1の難消化性デキストリンと参考例
1の難消化性粉飴について、DE、難消化性成分、各種
のグルコシド結合の含量、及び小腸粘膜酵素とプロスキ
ー法による消化後に生成グルコース量、難消化性成分、
各種のグルコシド結合の含量を測定した。この結果を表
1に示す。
【0019】
【表1】 〔難消化性デキストリンとその酸加水分解後の構造と消化性の変化〕 難消化性 難消化性 消化性試験項目/試料 デキストリン 粉飴 小腸粘膜酵素 プロスキー法 DE 3.0 30.5 生成グルコース(%) − − 58.6 58.3 難消化性成分(%) 53.0 − 47.3 47.5 グルコシド結合(%) Terminal 27.5 34.5 67.4 69.5 1 →4 38.3 46.2 13.0 11.8 1 →6 7.8 5.3 7.7 5.9 1 →4,1 →6 10.4 4.9 3.3 4.0 1 →3 6.3 4.3 6.0 5.5 1 →4,1 →3 1.8 0.8 0.6 0.5 1 →2,1 →4 2.7 1.3 0.9 0.8その他の結合 5.1 2.7 1.1 2.0
【0020】
【実験例2】難消化性水飴及び/又は粉飴がラットの糖
質代謝に及ぼす影響を検討する目的で、生後8週齢のS
D系雄性ラットを対象にして、参考例1の難消化性粉飴
の単回経口投与を行い、投与後120分間にわたり血糖
値の変化を測定した。その結果を図1及び図2に示す。
ショ糖1.5g/Kg投与時の血糖頂値は負荷後30分
にみられ、160.4±1.6mg/dlに達したのに
対し、難消化性粉飴0.15g/Kg投与時の頂値は9
1.0±2.8mg/dlであった。また、ショ糖に難
消化性粉飴を0.0375〜0.15g/Kg添加して
投与したとき、ショ糖単独時(血糖曲線下面積=10
0.3±4.0mg/120分)に比較して、用量依存
的に血糖値は低下して前者の57〜76%を示し、低下
の程度は既に耐糖能改善効果が知られている難消化性デ
キストリンの2倍の効果であった。
【0021】
【実験例3】難消化性水飴及び/又は粉飴がラットの脂
質代謝に及ぼす影響を検討する目的で、生後3週齢のS
D系雄性ラットを高ショ糖飼料(ショ糖64.5%、カ
ゼイン25%、コーン油5%、MM−2ミネラル混合4
%、Harperビタミン混合1%、塩化コリン0.2
%、ビタミンE0.05%からなる粉末飼料)で2週間
馴化飼育後、無作為に6群に分けた。第1群(10匹)
は一夜絶食後、体重、体脂肪率(インピーダンス法)を
測定した。第2群(コントロール:12匹)は高ショ糖
飼料をそのまま、第3群(12匹)は高ショ糖飼料に糖
質、脂質代謝の改善効果が知られている比較例1の難消
化性デキストリンを5%添加したもの、第4群及び第5
群(各12匹)は高ショ糖飼料に参考例1の難消化性粉
飴を2.5%及び5%添加した飼料で、それぞれ4週間
飼育した。第2〜5群は飼育期間終了後、一夜絶食後に
体重と体脂肪率及び血清成分を測定した。結果を表2に
示す。ただし、数値に下線をつけたものはコントロール
に対して危険率5%で有意差があることを示す。
【0022】この結果、本実験条件下において、難消化
性デキストリンと難消化性粉飴ともに糖質及び脂質代謝
の改善効果が認められ、体脂肪率、総コレステロール
値、中性脂肪値及びトリグリセライドはコントロール群
に比較して有意に低値を示した。難消化性粉飴では、低
下の程度は用量に依存して増加した。
【0023】
【表2】飼育期間 0週間 4週間 区分 コントロール 難消化性 難消化性粉飴 デキストリン 5% 2.5% 5% 体重増加 370.1±8.4 363.3±10.2 389.9±12.9 387.3±4.9 飼料効率 0.35±0.01 0.33±0.01 0.36±0.01 0.35±0.1 体脂肪率(%) 21.7±0.3 30.0±1.1 23.6±0.6 25.4±1.0 23.7±0.7 総コレステロール(mg/dl) 87.3±4.4 105.0±4.5 89.9±3.3 96.3±2.4 90.2±3.1 HDL コレステロール (mg/dl) 52.3±2.8 83.2±4.5 72.3±4.3 81.2±4.0 79.9±4.7 HDL/総コレステロール (%) 60.1±1.7 76.8±1.2 76.4±3.0 81.9±2.0 83.9±2.1 トリグリセライド(mg/dl) 34.2±4.6 88.0±4.8 56.0±6.0 65.6±9.0 54.2±5.7
【0024】
【実験例4】参考例1の難消化性粉飴と他の糖質の基本
的な物性を比較測定した結果を図3〜図8に示す。図3
〜8から明らかなように難消化性水飴及び/又は粉飴
は、前記生理作用の有無を除けば、従来の水飴及び/又
は粉飴とほぼ同じ物性を有するので、従来の水飴や粉飴
等と同じ用途に同じ様に使用することが出来るものであ
る。
【0025】
【参考例2】市販のコーンスターチに500ppmの塩
酸を添加し、均一に混合後、150℃で60分間加熱し
て難消化性成分が53.2%の焙焼デキストリンを得
た。この焙焼デキストリンを水に溶解して30%の溶液
とし、10%塩酸水溶液を加えてpHを1.8に調整し
た。溶液をオートクレーブに移して121℃で30分間
加熱して加水分解物を得た。この加水分解物を活性炭脱
色、濾過に続いてイオン交換樹脂で脱塩処理後、濃度7
0%に濃縮してDE36.9で難消化性成分の含量が固
形分当り46.2%の難消化性水飴を得た。
【0026】
【実施例】次に参考例2で製造した難消化性水飴を用い
て、食品に生理作用を付与する方法を、実施例によって
詳細に説明する。実施例中に試料とあるのは難消化性水
飴、難消化性デキストリン及び市販水飴の総称である。
【0027】
【実施例1】表3の配合で水に糖及び他の原料を分散
し、加熱溶解して一旦沸騰させ、赤生餡を2回に分けて
加え、その都度沸騰させて所定の重量まで煮詰めて練り
餡を製造した。
【0028】
【表3】 対 照 区 試 験 区 原料名 重量(g) % 重量(g) % 赤生餡 500 41.7 500 41.7 グラニュー糖 380 31.7 380 31.7 市販水飴 27 2.3 − − 難消化性水飴 − − 29 2.4 水 293 24.3 291 24.2 合計 1200 100 1200 100 製品の分析値、保湿性と対照区に対する嗜好性の差異を
表4に示す。
【0029】
【表4】項目 対 照 区 試 験 区 製品の状態 水分 33.9 33.8 pH 7.4 7.4 硬度 120 117 付着性 51 53製品の保湿性 水分 3日後 33.5 33.4 6日後 33.1 33.1 10日後 32.7 32.4 水分減少率 3日後 1.2 1.2 6日後 2.4 2.1 10日後 3.5 4.1製品の嗜好性 口当り − 有意差なし 口どけ − 有意差なし 香り − 有意差なし 甘味 − 有意差なし うまみ − 有意差なし あと味 − 有意差なし 製造操作、製品状態、保湿性及び嗜好性に対して難消化
性水飴と市販水飴との間に差異は認められなかった。
【0030】
【実施例2】表5の配合で粉末寒天に加水し、加熱溶解
した後、糖、試料を加えて溶解して沸騰させ、赤生餡を
加えて所定の重量まで煮詰め、羊羹船に流して冷却、凝
固させて練羊羹を製造した。
【0031】
【表5】 対 照 区 試 験 区 原料名 重量(g) % 重量(g) % 赤生餡 400 33.1 400 33.1 グラニュー糖 475 39.3 475 39.3 粉末寒天 6 0.5 6 0.5 市販水飴 33 2.7 − − 難消化性水飴 − − 36 3.0 水 296 24.4 293 24.2 合計 1210 100 1210 100 製品の分析値、保湿性と対照区に対する嗜好性の差異を
表6に示す。
【0032】
【表6】項目 対 照 区 試 験 区 製品の状態 水分 33.9 33.8 pH 7.4 7.4 硬度 120 117 付着性 51 53製品の保湿性 水分 3日後 33.5 33.4 6日後 33.1 33.1 10日後 32.7 32.4 晶出性 両者とも2日目より切口に晶出したが、 両者間に大差はなかった製品の嗜好性 口当り − 有意差なし 口どけ − 有意差なし 香り − 有意差なし 甘味 − 有意差なし うまみ − 有意差なし あと味 − 有意差なし 製造操作、製品状態、保湿性及び嗜好性に対して難消化
性水飴と市販水飴との間に差異は認められなかった。
【0033】
【実施例3】表7の配合でシュガーバッター法で生地を
調製し、パウンド型に生地を250g宛分注して165
℃±5℃で30分間焙焼してバターケーキを製造した。
【0034】
【表7】 対 照 区 試 験 区 原料名 重量(g) % 重量(g) % 上白糖 475 26.3 475 26.2 小麦粉(薄力) 400 22.1 400 22.1 小麦粉(強力) 100 5.5 100 5.5 全卵 500 27.7 500 27.6 無塩マーガリン 300 16.6 300 16.6 市販水飴 33 1.8 − − 難消化性水飴 − − 36 2.0 合計 1808 100 1811 100 生地の状態、製品の分析値と対照区に対する嗜好性の差
異を表8に示す。
【0035】
【表8】項目 対 照 区 試 験 区 生地の状態 見掛比重 0.851 0.848 安定性 96.8 97.1製品の状態 水分(%) 26.0 25.9 容積(ml/100g) 254 258 硬度(g) 570 566 弾力性(%) 90.8 91.2製品の嗜好性 口当り − 有意差なし 口どけ − 有意差なし 香り − 有意差なし 甘味 − 有意差なし うまみ − 有意差なし あと味 − 有意差なし 製造操作、製品状態、保湿性及び嗜好性に対して難消化
性水飴と市販水飴との間に差異は認められなかった。
【0036】
【実施例4】表9の配合で1)牛乳にグラニュー糖、試
料を加え加熱沸騰させて室温まで冷却しておく。2)卵
黄をほぐし、擦りまぜながら1)を加えてよく混合す
る。予めほぐし、充分クリーミングした無塩マーガリン
に2)を徐々に加えてさらにクリーミングし、最後にラ
ム酒を混合してバタークリームを製造した。
【0037】
【表9】 対 照 区 試 験 区 原料名 重量(g) % 重量(g) % グラニュー糖 190 20.5 190 20.5 卵黄 120 12.9 120 12.9 無塩マーガリン 400 43.1 400 43.1 牛乳 200 21.6 200 21.5 ラム酒 5 0.5 5 0.5 市販水飴 13 1.4 − − 難消化性水飴 − − 14 1.5 合計 928 100 929 100 製品の分析値と対照区に対する嗜好性の差異を表10に
示す。
【0038】
【表10】項目 対 照 区 試 験 区 製品の状態 見掛比重 0.57 0.56 水分(%) 29.2 29.3 硬度(g) 521 524 付着性(g) 286 253 離水率(%) 0.0 0.0製品の嗜好性 口当り − 有意差なし 口どけ − 有意差なし 香り − 有意差なし 甘味 − 有意差なし うまみ − 有意差なし あと味 − 有意差なし 製造操作、製品状態、保湿性及び嗜好性に対して難消化
性水飴と市販水飴との間に差異は認められなかった。
【0039】
【実施例5】表11の配合でシュガーバッター法によっ
て絞り生地を調製し、絞り袋、口金を用いて成型し、1
60℃で10分間焙焼してクッキーを製造した。難消化
性デキストリンを用いた対照区2では、難消化性デキス
トリンが殆ど甘味がないので、市販水飴を甘味源として
用いた。
【0040】
【表11】 対 照 区 1 試 験 区 対 照 区 2 原料名 重量(g) % 重量(g) % 重量(g) % 上白糖 228 24.1 228 24.1 211 22.3 小麦粉(薄力) 300 31.7 300 31.7 300 31.8 全卵 150 15.9 150 15.9 150 15.9 無塩マーガリン 180 19.0 180 19.0 180 19.0 ベーキングパウダー 3 0.3 3 0.3 3 0.3 市販水飴 16 1.7 − − 16 1.7 難消化性水飴 − − 17 1.8 − − 難消化性デキストリン− − − − 17 1.8 水 68 7.3 67 7.2 68 7.2 合計 945 100 945 100 945 100 製品の分析値と対照区に対する嗜好性の差異を表12に
示す。
【0041】
【表12】項目 対 照 区 1 試 験 区 対 照 区 2 製品の状態 水分(%) 2.09 2.11 2.30 比容積(ml/100g) 179 183 167 硬度(g) 155 160 171 水分(%、7日後) 3.65 3.54 4.15 吸湿率(%、7日後) 74.6 67.8 80.4製品の嗜好性 口当り − 有意差なし 劣る 口どけ − 有意差なし 有意差なし 香り − 有意差なし 有意差なし 甘味 − 有意差なし 有意差なし うまみ − 有意差なし 有意差なし あと味 − 有意差なし 有意差なし 製造操作、製品状態、保湿性及び嗜好性に対して難消化
性水飴と市販水飴との間に差異は認められなかったが、
難消化性デキストリンを添加したものは、比容積が低下
して硬度が増加していることから明らかなように、製品
の組織がしまる傾向であり、このために口あたりと口ど
けが劣る傾向を示した。また、貯蔵による吸湿がやや増
加した。従って、難消化性デキストリンよりも難消化性
水飴の方が優れた結果を与えることが認められた。
【0042】
【実施例6】表13の配合で1)牛乳に上白糖、試料を
加えて加熱沸騰させてから、40℃以下に冷却する。
2)全卵をほぐし、1)を徐々に加えながら分散し、裏
ごししてカップに分注し、蒸し器で8分間蒸してカスタ
ードプディングを製造した。
【0043】
【表13】 対 照 区 試 験 区 原料名 重量(g) % 重量(g) % 上白糖 171 16.2 171 16.2 全卵 335 31.8 335 31.8 牛乳 500 47.5 500 47.5 市販水飴 12 1.1 − − 難消化性水飴 − − 13 1.2 水 35 3.4 34 3.3 合計 1053 100 1053 100 製品の分析値と対照区に対する嗜好性の差異を表14に
示す。
【0044】
【表14】項目 対 照 区 試 験 区 製品の状態 水分(%) 66.9 29.3 ゲル強度(g) 125 524 付着性(g) 51 253 離水率(%) 1日後 3.8 4.1 3日後 8.2 8.9 5日後 10.9 11.3 7日後 11.9 12.2 製品の嗜好性 口当り − 有意差なし 口どけ − 有意差なし 香り − 有意差なし 甘味 − 有意差なし うまみ − 有意差なし あと味 − 有意差なし 製造操作、製品状態、保湿性及び嗜好性に対して難消化
性水飴と市販水飴との間に差異は認められなかった。
【0045】
【実施例7】表15の配合でゼラチンに加水し、加熱溶
解させてグラニュー糖、試料を加えて溶解沸騰させた
後、カップに分注して冷却凝固させてワインゼリーを製
造した。
【0046】
【表15】 対 照 区 試 験 区 原料名 重量(g) % 重量(g) % グラニュー糖 119 10.2 119 10.2 ゼラチン 45 3.8 45 3.8 白ワイン 200 17.1 200 17.1 市販水飴 8 0.7 − − 難消化性水飴 − − 9 0.8 水 798 68.2 797 68.1 合計 1170 100 1170 100 製品の分析値と対照区に対する嗜好性の差異を表16に
示す。
【0047】
【表16】項目 対 照 区 試 験 区 製品の状態 水分(%) 84.6 84.2 ゲル強度(g) 388 378 付着性(g) 46 45 離水率(%) 1日後 0.0 0.0 3日後 0.0 0.0 5日後 2.8 3.0 7日後 3.9 4.1 製品の嗜好性 口当り − 有意差なし 口どけ − 有意差なし 香り − 有意差なし 甘味 − 有意差なし うまみ − 有意差なし あと味 − 有意差なし 製造操作、製品状態、保湿性及び嗜好性に対して難消化
性水飴と市販水飴との間に差異は認められなかった。
【0048】
【効果】本発明によれば、食品にその食品本来の性質、
特徴を損なうことなく生理作用を付与出来るので、得ら
れる食品は極めて優れた健康食品となるという効果を発
揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラットに、参考例1の難消化性粉飴及び/又は
ショ糖を経口投与した際の、血糖値の変化を示すグラフ
である。
【図2】ラットに、参考例1の難消化性粉飴及び/又は
ショ糖を経口投与した際の、血糖曲線下面積を示すグラ
フである。
【図3】参考例1の難消化性粉飴、市販水飴、ショ糖、
グルコース及びマルトースの相対的な甘味度を示すグラ
フである。
【図4】参考例1の難消化性粉飴、市販水飴及びショ糖
水溶液の浸透圧を示すグラフである。
【図5】参考例1の難消化性粉飴、市販水飴及びショ糖
水溶液の氷点降下度を示すグラフである。
【図6】参考例1の難消化性粉飴、市販水飴及びショ糖
水溶液の粘度を示すグラフである。
【図7】参考例1の難消化性粉飴、市販水飴及びグルコ
ースの褐変反応(pH4.5)の結果を示すグラフであ
る。
【図8】参考例1の難消化性粉飴、市販水飴及びグルコ
ースの褐変反応(pH6.5)の結果を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A23L 1/06 A23L 1/06 1/187 1/187 1/19 1/19 1/20 301 1/20 301Z A61K 31/715 ACN A61K 31/715 ACN ADN ADN ADP ADP

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 難消化性成分の含有量が30〜60重量
    %の酸添加焙焼デキストリンを、酸の存在下に加水分解
    して得られる難消化性水飴及び/又は粉飴を食品に添加
    または食品の構成成分の一部と置換することを特徴とす
    る、食品に生理作用を付与する方法。
  2. 【請求項2】 難消化性水飴及び/又は粉飴中の難消化
    性成分の含有量が26〜50重量%であることを特徴と
    する、請求項1に記載する食品に生理作用を付与する方
    法。
  3. 【請求項3】 難消化性水飴及び/又は粉飴のDEが2
    0〜50であることを特徴とする、請求項2に記載する
    食品に生理作用を付与する方法。
  4. 【請求項4】 難消化性水飴及び/又は粉飴のDEが3
    0〜50であることを特徴とする、請求項2に記載する
    食品に生理作用を付与する方法。
  5. 【請求項5】 難消化性水飴及び/又は粉飴中の難消化
    性成分の平均分子量が600〜1200であることを特
    徴とする、請求項3又は4に記載する食品に生理作用を
    付与する方法。
  6. 【請求項6】 食品への添加量または置換量が食品の1
    食あたり難消化性水飴及び/又は粉飴に含まれている難
    消化性成分換算で約4g以上であることを特徴とする、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載する食品に生理作用
    を付与する方法。
  7. 【請求項7】 生理作用が、脂質代謝の改善作用である
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載す
    る食品に生理作用を付与する方法。
  8. 【請求項8】 生理作用が、砂糖と一緒に摂取したとき
    血糖の上昇を抑制する作用であることを特徴とする請求
    項1〜6のいずれか1項に記載する食品に生理作用を付
    与する方法。
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