JPH1088325A - 薄膜形成装置 - Google Patents

薄膜形成装置

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Publication number
JPH1088325A
JPH1088325A JP26131496A JP26131496A JPH1088325A JP H1088325 A JPH1088325 A JP H1088325A JP 26131496 A JP26131496 A JP 26131496A JP 26131496 A JP26131496 A JP 26131496A JP H1088325 A JPH1088325 A JP H1088325A
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JP
Japan
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cathode
substrate
thin film
gas
arc
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Application number
JP26131496A
Other languages
English (en)
Inventor
Eiji Takahashi
英治 高橋
Satoru Nishiyama
哲 西山
Kiyoshi Ogata
潔 緒方
Hiroshi Morino
弘 森野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissin Electric Co Ltd
Original Assignee
Nissin Electric Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アーク式蒸発源の陰極近傍のガス圧を、真空
容器内のガス圧よりも容易に高くすることができる装置
を提供する。 【解決手段】 真空容器2内に、アーク式蒸発源10の
陰極12の周りを囲むものであって、陰極12とホルダ
4上の基体6との間に位置する部分に陰極物質14が通
過する1以上の穴32を有する隔壁30を設けた。か
つ、この隔壁30内にガス36を導入するガス導入機構
34を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アーク式蒸発源
を用いて基体の表面に薄膜を形成する薄膜形成装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】アーク放電によって陰極物質を蒸発させ
るアーク式蒸発源を用いて、基体の表面に薄膜を形成す
る薄膜形成装置が従来から提案されている。このアーク
式蒸発源では、陰極と陽極間のアーク放電によって陰極
の局所的な溶解が起こり、それによって陰極物質が蒸発
させられる。
【0003】従来の電子ビーム加熱式や抵抗加熱式の蒸
発源では、るつぼ内で溶融させた蒸発原料が蒸発源から
こぼれ出さないようにするために、基体の下方にしか蒸
発源を配置することができない。これに対してアーク式
蒸発源では、アーク放電によって陰極を局所的に溶解さ
せて蒸発させるので、蒸発源配置の自由度が非常に高
く、基体の下方のみでなく側方および上方にも自由に配
置することができる。従って、装置設計の自由度が増す
と共に、立体的な形状の基体への成膜にも簡単に対応す
ることができる。
【0004】また、このようなアーク式蒸発源による蒸
着と、イオン照射とを併用する薄膜形成装置が、例えば
特公平4−48870号公報に提案されている。この装
置では、照射イオンによる蒸発物質の励起による新物質
の合成や、照射イオンによる蒸発物質の基体への押し込
み作用による膜の密着性向上等の効果も得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】アーク式蒸発源を用い
た薄膜形成装置では、例えば、真空容器内にガスを導入
し、アーク式蒸発源におけるアーク放電によってそのガ
スをプラズマ化し、このプラズマ化されたガスと蒸発物
質(陰極物質)との反応によって形成される物質を薄膜
として基体表面に被着させることができる。より具体例
を挙げれば、アーク式蒸発源の陰極にチタン(Ti)を
用い、反応用ガスとして窒素ガスを導入すれば、窒化チ
タン(TiN)薄膜が基体表面に形成される。
【0006】その際、真空容器内のガス圧によって、形
成される薄膜の特性が大きく左右される。例えば、ガス
圧によって、薄膜を構成するガス元素の割合が変化する
ので、薄膜の組成が変化する。より具体的には、ガス圧
が高くなるとガス元素の比率が高まる。また、真空容器
内のガス圧によって、アーク式蒸発源におけるアークの
集中状態が変化して蒸発物質の励起、イオン化状態が変
化するので、薄膜の結晶化度も変化する。より具体的に
は、ガス圧が低い方がアークが集中して蒸発物質のイオ
ン化が促進されるので薄膜の結晶化度は高まる。
【0007】しかし、真空容器内のガス圧は、アーク式
蒸発源におけるアーク放電の安定性にも影響を与える。
具体的には、当該ガス圧があまり低くなると、アーク式
蒸発源の陰極と陽極間におるけアーク放電が安定しなく
なり、安定した蒸発速度が得られなくなる。
【0008】このように、アーク式蒸発源におけるアー
ク放電の安定化のためには真空容器内のガス圧をある程
度高くしなければならないので、アーク式蒸発源におけ
るアーク放電の安定化と薄膜特性の制御とを両立させる
ことができない場合が起こり得る。
【0009】また、アーク式蒸発源の陰極近傍のプラズ
マ密度が高ければ、陰極から蒸発した陰極物質の励起、
イオン化を促進することができ、それによって陰極物質
が蒸発する際に発生し易い粗大粒子(いわゆるドロップ
レット)の分解が促進され、粗大粒子が基体に被着する
のを抑制することができるので、表面粗度の良好な(即
ち表面の平滑性の高い)薄膜を形成することができる。
そのため、アーク式蒸発源の陰極近傍にガスを吹き付け
て陰極近傍のガス圧を高めてプラズマ密度を高める試み
が成されているけれども、真空容器内へのガスの拡散に
よってガス吹き付けの効果が十分に発揮されていないの
が現状である。
【0010】更に、アーク式蒸発源による蒸着とイオン
照射を併用する薄膜形成装置においては、アーク放電に
適したガス圧と、イオン照射に適したガス圧とが両立し
ない問題がある。例えば、基体にイオンを照射する場合
は、真空容器内のガス圧が低い方が、イオンの平均自由
行程が大きくなりイオンのエネルギー損失が小さくなる
のでイオン照射の効果は大きくなるけれども、アーク式
蒸発源におけるアーク放電は、前述したように、ガス圧
が高い方が安定化する、といった矛盾を生じる。このよ
うな場合、イオン照射の大きな効果とアーク放電の安定
化とを両立させるガス圧を選択することが困難になる。
【0011】そこでこの発明は、アーク式蒸発源の陰極
近傍のガス圧を、真空容器内のガス圧よりも容易に高く
することができるようにした薄膜形成装置を提供するこ
とを主たる目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明の薄膜形成装置
は、前記真空容器内に、前記アーク式蒸発源の陰極の周
りを囲むものであって、当該陰極と前記ホルダ上の基板
との間に位置する部分に前記陰極物質が通過する1以上
の穴を有する隔壁を設け、かつこの隔壁内にガスを導入
するガス導入機構を設けたことを特徴とする。
【0013】上記構成によれば、隔壁内にガス導入機構
から導入されたガスは、当該隔壁の穴を通して真空容器
内に拡散するけれども、当該穴の部分で当該ガスに対す
るコンダクタンスが低下するので、隔壁内のガス圧を、
即ちアーク式蒸発源の陰極近傍のガス圧を、真空容器内
のガス圧よりも容易に高くすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係る薄膜形成
装置の一例を示す断面図である。この薄膜形成装置は、
図示しない真空排気装置によって真空排気される真空容
器2と、この真空容器2内のこの例では上部に設けられ
ていて基体6を保持するホルダ4と、真空容器2のこの
例ではホルダ4の下部の壁面に取り付けられたアーク式
蒸発源10とを備えている。
【0015】ホルダ4は、固定式でも良いし、例えば矢
印Aに示すような回転、あるいは公転、揺動、歳差運動
等の機構を備えたものでも良い。
【0016】アーク式蒸発源10は、陰極12とこの例
では陽極兼用の真空容器2(または後述する隔壁30)
との間のアーク放電によって陰極12を加熱して陰極1
2を局所的に溶解させて陰極物質14を蒸発させるもの
である。陰極12と真空容器2との間には、直流のアー
ク電源20から、前者を負側にして、例えば数十V〜数
百V程度のアーク放電電圧が印加される。16はアーク
起動用のトリガ電極、18はアークを広げるためのシー
ルド板、22、24は抵抗、26は絶縁物であり、通常
はこれらのものも設けられる。
【0017】この薄膜形成装置は、更に、真空容器2内
に設けられていてアーク式蒸発源10の陰極12の周り
を囲むこの例では箱状の隔壁30と、この隔壁30内に
真空容器2外からガス36を導入するガス導入機構34
とを備えている。この隔壁30によって、陰極12の周
りが真空容器2内から隔てられる。
【0018】隔壁30は、絶縁物製でも良いけれども、
この例では金属等の導体から成り、真空容器2に電気的
に接続されている。またこの隔壁30は、アーク式蒸発
源10の陰極12とホルダ4上の基体6との間に位置す
る部分に、即ちこの例では当該隔壁30の上面中央部付
近に、前記陰極物質14が通過する穴32を有してい
る。穴32をこのような位置に設けることにより、当該
穴32を通して、陰極12からの陰極物質14を基体6
に効率良く入射させることができる。
【0019】上記穴32は、図示例では一つであるけれ
ども、1以上で任意である。例えば、小さな穴を複数個
設けても良いし、更に小さな穴を多数設けてメッシュ構
造にしても良い。この穴32の構造は、例えば、陰極物
質14の基体6への付着効率や、隔壁30内に導入され
たガス36が真空容器2内へ拡散する場合のコンダクタ
ンス等を考慮して決めれば良い。例えば、穴32の開口
面積を大きくすると、陰極物質14の基体6への付着効
率は高まるけれども、穴32の部分でのコンダクタンス
が大きくなって隔壁30内と真空容器2内とのガス圧の
差は小さくなる。
【0020】上記ガス導入機構34は、例えばガス導入
パイプであるが、その途中に開閉用のバルブや流量調整
弁等を設けておいても良い。
【0021】上記ガス36は、例えば陰極物質14と反
応させて化合物薄膜を形成する場合は、当該陰極物質1
4と反応する反応性ガス、例えば窒素ガス、炭化水素系
ガス、酸素ガスあるいはそれらと不活性ガスとの混合ガ
スにすれば良い。また、陰極物質14と反応させずにア
ーク式蒸発源のアーク放電の安定化等だけを目的とする
場合は、Ne、Ar、Kr等の不活性ガスだけにしても
良い。
【0022】動作例を説明すると、ホルダ4に所望の基
体6を装着した後、真空容器2内を真空排気しながら、
かつ隔壁30内にガス導入機構34から所望のガス36
を導入しながら、アーク式蒸発源10においてアーク放
電を行わせる。その場合、この例では、隔壁30が導体
から成りかつ真空容器2に電気的に接続されており、し
かもこの隔壁30の方が真空容器2よりも陰極12に比
較的近いので、陰極12と真空容器2間よりも陰極12
とこの隔壁30間の方がアーク放電し易くなり、隔壁3
0と陰極12との間でアーク放電が持続される。このア
ーク放電によって陰極12が局所的に加熱されて陰極1
2から陰極物質14が蒸発させられる。そしてこの陰極
物質14は、隔壁30の穴32を通して基体6に入射堆
積し、基体6の表面に、当該陰極物質14から成る、あ
るいは当該陰極物質14と反応性ガスとが反応して成る
薄膜が形成される。
【0023】その場合、隔壁30内にガス導入機構34
から導入されたガス36は、隔壁30の穴32を通して
真空容器2内に拡散するけれども、当該穴32の部分で
ガス36に対するコンダクタンスが低下するので、隔壁
30内のガス圧を、即ちアーク式蒸発源10の陰極12
近傍のガス圧を、真空容器2内のガス圧よりも容易に高
くすることができる。
【0024】その結果、陰極12近傍のガス圧を高める
ことによるアーク式蒸発源におけるアーク放電の安定化
を図りつつ、真空容器2内のガス圧を所望のものに制御
して基体表面に形成される薄膜特性の制御を行うことが
できる。
【0025】また、陰極12近傍のガス圧を高めること
によって陰極12近傍のプラズマ密度を容易に高めるこ
とができ、この高密度のプラズマによって陰極12から
蒸発する陰極物質14の分解が促進されるので、粗大粒
子が基体6に被着するのを抑制して表面粗度の良好な
(即ち表面の平滑性の高い)薄膜を形成することができ
る。
【0026】また、密度の高いプラズマ中を陰極物質1
4が通過することによって陰極物質14の励起、イオン
化が促進されるので、薄膜の結晶化を促進して結晶化度
を高めることもできる。
【0027】また、陰極12から蒸発する陰極物質14
の大きさは、飛散角度(陰極表面に立てた垂線に対する
角度)に依存し、飛散角度が大きくなるほど陰極物質は
大粒になることが経験的に知られている。隔壁30の穴
32は陰極12と基体6との間に位置する部分に設けて
いるので、飛散角度の小さい陰極物質14はこの穴32
を通過することができるけれども、飛散角度が大きくて
粗大な陰極物質14は穴32を通過することはできず隔
壁30の壁面に当たって阻止される。従って、この隔壁
30は、粗大粒子が外に飛散して基体6に付着すること
を防ぐ作用をし、従って基体表面に形成される薄膜の表
面粗度をより一層良好なものにすることができる。
【0028】更に、隔壁30は、基体6上への薄膜形成
に寄与しない不要な陰極物質14が真空容器2の内壁に
付着することを抑制する作用(即ち防着板の作用)をす
るので、真空容器2の汚染を抑えることができる。従っ
て、この隔壁30を設けることによって当該薄膜形成装
置のメンテナンスが容易になる。
【0029】なお、ガス導入機構34からは、ガス36
をアーク式蒸発源10の陰極12の近傍に向けて供給す
るのが好ましい。そのようにすれば、陰極近傍のガス圧
をより高めて陰極近傍のプラズマ密度をより高めること
ができる。また、ガス導入機構34からガス36を陰極
12の前面(基体6に向かう面)に向けて吹き付けても
良い。そのようにすれば、アーク放電の陰極点が陰極表
面に多数生じて陰極12の表面近傍でアーク分岐が生じ
る等の作用によって、陰極表面での粗大な溶融部の形成
が抑制され、粗大粒子の飛散が一層抑制されるので、表
面粗度の一層良好な薄膜を形成することができる。
【0030】また、隔壁30がない場合は陰極12と陽
極兼用の真空容器2との間でアーク放電が生じるけれど
も、この例のように導体から成り真空容器2に電気的に
接続された隔壁30を設けると、前述したように陰極1
2と隔壁30との間でアーク放電が生じるようになり、
アーク放電の距離が短くなる。その結果、アーク放電を
安定に維持し易くなる。また、陰極12の消耗によって
アーク放電が不安定になるのを抑制することができる。
その結果、蒸発速度の安定化および薄膜形成の安定化を
より高めることができる。
【0031】また、陰極12から蒸発する陰極物質14
は、陰極近傍のプラズマ中を通過することによってかな
りの割合でイオン化されるので、バイアス電源を設けて
ホルダ4上の基体6に負のバイアス電圧を印加するよう
にしても良い。そのようにすれば、イオン化した陰極物
質14をバイアス電圧によって基体6に向けて加速し
て、陰極物質14に運動エネルギーを与えることができ
るので、基体表面に形成される薄膜の密着性が向上す
る。密着性が向上するのは、加速された陰極物質14が
基体6中にめり込んで強い付着強度を発揮するからであ
る。
【0032】基体6に印加するバイアス電圧は、−10
V〜−5kVの範囲内にするのが好ましい。バイアス電
圧が−10Vより小さいと(絶対値が小さいこと)、イ
オン化された陰極物質14を基体6に向けて加速する加
速エネルギーが小さ過ぎて、基体6に対する薄膜の密着
性向上を図れない。バイアス電圧が−5kVより大きい
と(絶対値が大きいこと)、イオン化された陰極物質1
4の加速エネルギーが大きくなり過ぎて、基体6の損傷
が過大になったり、薄膜の表面がスパッタリングによっ
て荒れて平滑性(表面粗度)が悪化する。
【0033】また、図2に示す例のように、ホルダ4上
の基体6にイオン42を照射するイオン源40を更に設
けても良い。そのようにすれば、アーク式蒸発源10に
よる蒸着とイオン照射とを併用する、例えば基体6に陰
極物質14を蒸着させるのと同時または交互に、基体6
にイオン42を照射することができる。
【0034】その場合、上記のような隔壁30とガス導
入機構34とを設けたことによって、隔壁30内のガス
圧と真空容器2内のガス圧とを互いに独立に制御するこ
とができるので、即ち真空容器2内のガス圧を低く抑え
つつ隔壁30内のガス圧を高く保つことができるので、
隔壁30内におけるガス圧を高くしてアーク式蒸発源1
0におけるアーク放電の安定化を図りつつ、真空容器2
内のガス圧、より具体的にはイオン42の飛翔経路上の
ガス圧を低くしてイオン照射の効果を高めることができ
る。即ち、イオン照射の大きな効果とアーク放電の安定
化とを両立させるガス圧を容易に実現することができ
る。ガス圧を低くすることによってイオン照射の効果が
高まるのは、前述したように、イオンの平均自由行程が
大きくなり、イオン42がそのエネルギーを失うことな
く基体6に入射するようになるからである。その結果、
照射イオン42によって基体6の表面近傍で陰極物質1
4を励起することによる新物質の合成や、照射イオン4
2による陰極物質14の基体6への押し込み作用による
膜の密着性向上等の効果を十分に発揮させることができ
る。
【0035】基体6に照射するイオン42の種類は、基
体6上に形成しようとする薄膜の種類等に応じて、例え
ば窒素イオン、炭素イオンあるいはNe、Ar、Kr等
の不活性ガスイオン等から選べば良い。基体6に照射す
るイオン42の加速エネルギーは、10eV〜40ke
Vの範囲内にするのが好ましい。10eV未満ではイオ
ン照射の効果が不十分になり、40keVを超えると基
体6に与える損傷が過大になるので、いずれも好ましく
ない。
【0036】また、イオン照射を併用する場合は、図2
中に矢印Bで示すように、基体6をアーク式蒸発源10
の陰極12に向く方向とイオン源40に向く方向との間
で揺動させるようにしても良く、そのようにすれば、基
体6の全面に対してイオン42と陰極物質14とを万遍
なく入射させることができるので、均一性良く薄膜形成
を行うことができる。また、立体的な基体6に対しても
均一性良く薄膜形成を行うことができる。
【0037】上記アーク式蒸発源10は、アーク放電に
よって陰極12を局所的に溶解させて蒸発させるので、
蒸発原料が蒸発源からこぼれ落ちることがなく、蒸発源
配置の自由度が非常に高い。従って、上記例のように基
体6の下方のみでなく、基体6の側方および上方にも自
由に配置することができる。
【0038】また、上記アーク式蒸発源10を、更に必
要に応じて上記イオン源40をも、複数台配置しても良
く、そのようにすれば、立体的な形状の基体6に対して
もより均一に成膜することができると共に、成膜速度
(スループット)をより向上させることができる。
【0039】
【実施例】
(1)図1に示した装置を用いて、アーク式蒸発源10
の陰極12にチタン(Ti)を用い、導入するガス36
に窒素ガスを用い、基体6上にTiN膜を厚さ3μm形
成した。その場合、真空容器2内のガス圧を約1×10
-5Torrにした場合でも、アーク式蒸発源10におけ
るアーク放電は安定していた。また、基体6上に形成さ
れた膜の組成を調べたところ(X線回折法による。以下
同じ)、膜は全てTiNであり良好な組成をしていた。
更に、膜の表面にドロップレットは観測されず膜の表面
粗度も良好であった。いずれも、隔壁30を設けたこと
によって隔壁30内のガス圧が真空容器2内のそれより
も十分に高まった結果である。
【0040】一方、図1と同様の装置で隔壁30を設け
ない場合、真空容器2内のガス圧を約1×10-5Tor
rにすると、アーク式蒸発源10におけるアーク放電に
不安定さが見られた。また、基体6上に形成された膜か
らは、窒素と結合していないTiが検出され膜特性に劣
るものとなった。更に、膜の表面にドロップレットが多
数付着していて膜の表面粗度も劣っていた。
【0041】(2)図2に示した装置を用いて、アーク
式蒸発源10の陰極12にチタンを用い、ガス36に窒
素ガスを用い、イオン源40からイオン42としてAr
イオンを2keVの加速エネルギーで引き出してそれを
チタンの蒸着と同時に基体6に照射した。これによっ
て、基体6上にTiN膜を厚さ3μm形成した。
【0042】その場合、隔壁30を設けない場合は、基
体6上に形成される膜中にTiNとなっていないTiが
混在するのを防止するために、真空容器2内のガス圧を
約1×10-3Torrにする必要があった。しかしその
ようにすると、イオン照射については真空容器2内のガ
ス圧が高過ぎるため、基体6にはArイオン電流が約1
mAしか流れず、イオン照射の効果を十分に発揮させる
ことができなかった。
【0043】これに対して、隔壁30を設けた場合は、
隔壁30内のガス圧が真空容器2内のそれよりも十分に
高まるので、真空容器2内のガス圧が約5×10-5To
rrの場合でも、Tiの混在しないTiNだけから成り
組成の良好な膜を基体6上に形成することができた。し
かも、基体6に流れるArイオン電流は約10mAもあ
り、Arイオンが十分に基体6に到達していることが確
かめられた。これによって、イオン照射の効果を十分に
発揮させて、TiNの結晶化を促進することができた。
【0044】
【発明の効果】この発明は、上記のとおり構成されてい
るので、次のような効果を奏する。
【0045】請求項1記載の発明によれば、上記のよう
な隔壁およびガス導入機構を設けたので、アーク式蒸発
源の陰極近傍のガス圧を、真空容器内のガス圧よりも容
易に高くすることができる。その結果、アーク式蒸発源
におけるアーク放電の安定化を図りつつ、基体表面に形
成される薄膜特性の制御を行うことができる。
【0046】また、陰極近傍のガス圧を高めることによ
って陰極近傍のプラズマ密度を容易に高めることがで
き、それによって陰極物質の分解が促進されるので、粗
大粒子が基体に被着するのを抑制して表面粗度の良好な
薄膜を形成することができる。
【0047】また、陰極近傍のプラズマ密度を高めるこ
とによって、そこを通過する陰極物質の励起、イオン化
が促進されるので、基体表面に形成される薄膜の結晶化
度を高めることができる。
【0048】また、上記隔壁によって、飛散角度が大き
くて粗大な陰極物質が外に飛散して基体に付着すること
を防ぐことができるので、基体表面に形成される薄膜の
表面粗度をより一層良好なものにすることができる。
【0049】更に、上記隔壁は、基体表面への薄膜形成
に寄与しない不要な陰極物質が真空容器の内壁に付着し
て汚染することを抑制することができるので、装置のメ
ンテナンスを容易にすることができるという効果も奏す
る。
【0050】請求項2記載の発明によれば、アーク式蒸
発源の陰極と隔壁との間でアーク放電が生じるようにな
り、それによってアーク放電を安定に維持し易くなるの
で、蒸発速度の安定化および薄膜形成の安定化をより高
めることができる。
【0051】請求項3記載の発明によれば、イオン化し
た蒸発物質を負バイアス電圧によって基体に向けて加速
して衝突させることができるので、基体表面に形成され
る薄膜の密着性を向上させることができる。
【0052】請求項4記載の発明によれば、隔壁内のガ
ス圧を高くしてアーク式蒸発源におけるアーク放電の安
定化を図りつつ、真空容器内のガス圧を低くしてイオン
照射の効果を高めることができるので、照射イオンによ
る陰極物質の励起による新物質の合成や、照射イオンに
よる陰極物質の基体中への押し込み作用による膜の密着
性向上等の効果を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る薄膜形成装置の一例を示す断面
図である。
【図2】この発明に係る薄膜形成装置の他の例を示す断
面図である。
【符号の説明】
2 真空容器 4 ホルダ 6 基体 10 アーク式蒸発源 12 陰極 14 陰極物質 30 隔壁 32 穴 34 ガス導入機構 36 ガス 40 イオン源 42 イオン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森野 弘 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空に排気される真空容器と、この真空
    容器内に設けられた基体保持用のホルダと、前記真空容
    器に取り付けられていてアーク放電によって陰極を溶解
    させて陰極物質を蒸発させるアーク式蒸発源とを備え、
    この陰極物質を前記ホルダ上の基体に入射させて薄膜を
    形成する薄膜形成装置において、前記真空容器内に、前
    記アーク式蒸発源の陰極の周りを囲むものであって、当
    該陰極と前記ホルダ上の基板との間に位置する部分に前
    記陰極物質が通過する1以上の穴を有する隔壁を設け、
    かつこの隔壁内にガスを導入するガス導入機構を設けた
    ことを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 【請求項2】 前記隔壁は、導体から成り、前記真空容
    器に電気的に接続されている請求項1記載の薄膜形成装
    置。
  3. 【請求項3】 前記ホルダ上の基体に負のバイアス電圧
    を印加するバイアス電源を更に備える請求項1または2
    記載の薄膜形成装置。
  4. 【請求項4】 前記ホルダ上の基体にイオンを照射する
    イオン源を更に備える請求項1、2または3記載の薄膜
    形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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