JPH1088238A - 表面外観及び加工性に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造 方法 - Google Patents

表面外観及び加工性に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造 方法

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JPH1088238A
JPH1088238A JP8237900A JP23790096A JPH1088238A JP H1088238 A JPH1088238 A JP H1088238A JP 8237900 A JP8237900 A JP 8237900A JP 23790096 A JP23790096 A JP 23790096A JP H1088238 A JPH1088238 A JP H1088238A
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智 栗栖
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 めっき原板の表面性状に起因するめっきの不
均一(スジ状のムラ)がなく、表面外観に優れる電気亜
鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.0040%以下、S
i:0.03%以下、Mn:0.5%以下、P:0.0
2%以下、S:0.020%以下、sol.Al:0.
02〜0.1%、N:0.0040%以下、Ti:0.
005〜0.030%、Nb:0.030%以下(無添
加を含む)、かつNb+Ti≧0.020%を含有し、
残部が実質的にFeよりなる鋼スラブを、下式で規定さ
れる温度T(℃)で150分以上加熱した後、熱間圧延
し、600〜700℃の温度で巻取り、圧下率60%以
上で冷間圧延し、再結晶温度以上Ac3 変態点以下の温
度で連続焼鈍した後、電気亜鉛めっきを施す。 −2000〔%Ti〕+1110≦T≦−3000〔%
Ti〕+1250

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、めっき後の表面外
観および加工性に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、家電用途で無塗装で使用される各
種クロメート処理電気亜鉛めっき鋼板の需要が増大して
いる。これらの鋼板は無塗装で使用されるため、表面外
観に優れることが要求される。優れた表面外観の条件と
は、めっき後、あるいはさらにクロメート処理等の処理
が施された後の表面外観に不均一(例えばムラ)が無
く、均一な表面外観を有することが上げられる。
【0003】一方、材料要求特性の多様性から、家電用
途に使用される電気亜鉛めっき鋼板においても従来以上
に高いプレス成形性等の加工性が要求されるようにな
り、これに対応して鋼中のC、NをTi、Nbなどによ
り炭窒化物として析出固定したいわゆるIF(Inte
rstitial Free)鋼が使用されるようにな
った。
【0004】しかし、Ti添加IF鋼(以下、Ti−I
F鋼という)を原板として電気亜鉛めっきを行うと、T
i−IF鋼の表面性状に起因するめっきの不均一(スジ
状のムラ)が発生し、めっき後の表面外観が著しく劣化
する。このめっきムラはクロメート処理等の処理を施す
とより目立つようになる。
【0005】従来、電気亜鉛めっき鋼板の表面外観を改
善する方法として、特公昭46−38888号公報、特
公平1−36559号公報に記載されるように、めっき
浴に添加剤を加え、光沢外観を得る方法が知られてい
る。
【0006】また、合金化溶融亜鉛めっきにおいて、T
i−IF鋼の表面性状に着目した技術として、特開平2
−38550号公報に記載される技術がある。この技術
では、合金化溶融亜鉛めっきにおいて、Ti−IF鋼を
使用した場合に発生するスジムラが母材鋼板の表層部に
存在する微細なフェライト粒に起因するという知見に基
づいて、予め、プレ焼鈍を行い微細なフェライト粒を粗
大化させ、または、微細なフェライト粒が存在する領域
の鋼板表層部を熱間圧延後あるいは冷間圧延後に研削除
去して、スジムラの原因を取り除いた後、溶融亜鉛めっ
きラインに装入して合金化溶融亜鉛めっきを行う方法が
記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特公昭46−
38888号公報、特公平1−36559号公報では、
めっき原板への言及がなされておらず、また、この公報
に記載される技術では、Ti−IF鋼の表面性状に起因
するめっきの不均一(スジ状のムラ)を改善することが
できない。
【0008】また、特開平2−38550号公報に記載
される技術は、製造工程の増加を伴うため、生産性が低
下し、製造コストが増大するという問題がある。さら
に、合金化溶融亜鉛めっきと電気亜鉛めっき(純亜鉛め
っき)は技術的に異なり、ムラの発生メカニズムも大き
く異なるので、予め、この方法に記載されるような処理
を施した鋼板を使用しても、電気亜鉛めっきではスジ状
のムラを完全に改善できない。
【0009】したがって、生産性の低下や製造コストの
増加を招くことなく、Ti−IF鋼の表面性状に起因し
て発生する電気亜鉛めっき鋼板のめっきの不均一(スジ
状のムラ)を改善する技術は、未だ見出されていない。
【0010】本発明は、このような事情を考慮してなさ
れたものであり、鋼板の加工性を考慮した上で、めっき
原板の表面性状に起因するめっきの不均一(スジ状のム
ラ)がなく、表面外観に優れる電気亜鉛めっき鋼板の製
造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】Ti−IF鋼では、鋼中
のTiはC、S、Nと結びつき、TiC、Ti4 2
2 、TiS、TiN等の析出物になる。これらの析出物
は、スラブ鋳造時に既に析出しているが、その量、大き
さには鋳造組織に起因する場所的なばらつきがある。ス
ラブ加熱とその後の熱間圧延において、TiNを除いた
析出物は、再溶解、成長、再析出し、析出物の場所的な
ばらつきがいっそう顕著になる。これらの不均一な再溶
解、成長、再析出によって、冷間圧延、焼鈍後の鋼板表
層の結晶粒径や結晶方位の分布にムラを生じ、また鋼板
表層に濃化層が生じること等により、鋼板は不均一な表
面になっていると考えられる。
【0012】一方、電気亜鉛めっきにおけるZn結晶成
長は下地鋼板のフェライト粒に対して、エキタピシャル
成長することが知られている。表面の不均一な原板にめ
っきを行うと、めっき結晶が不均一に成長し、その結
果、めっきムラが発生する。したがって、めっき後の表
面外観の優れた電気亜鉛めっき鋼板を得るには、めっき
原板の表面を均一にすることが必要である。
【0013】本発明者らは、Ti−IF鋼について、め
っきムラが発生せず、めっき後に良好な表面外観の得ら
れる鋼成分組成や原板の製造条件等について種々検討し
た。その結果、鋼成分範囲と熱間圧延条件を適正な範囲
に規定することにより、めっきムラの発生を防止できる
ことを新規に知見した。本発明は、この知見に基づくも
のであり、その要旨は以下のとおりである。
【0014】(1)重量%で、C:0.0040%以
下、Si:0.03%以下、Mn:0.5%以下、P:
0.02%以下、S:0.020%以下、sol.A
l:0.02〜0.1%、N:0.0040%以下、T
i:0.005〜0.030%、Nb:0.030%以
下(無添加を含む)、かつNb+Ti≧0.020%を
含有し、残部が実質的にFeよりなる鋼スラブを、下式
(2)で規定される温度T(℃)で150分以上加熱し
た後、熱間圧延し、600〜700℃の温度で巻取り、
圧下率60%以上で冷間圧延し、再結晶温度以上Ac3
変態点以下の温度で連続焼鈍した後、電気亜鉛めっきを
施す電気亜鉛めっき鋼板の製造方法である。 −2000〔%Ti〕+1110≦T≦−3000〔%Ti〕+1250 ・・・(2)
【0015】(2)前記(1)の発明において、さらに
重量%で、B:0.0002〜0.0015%を含有す
る電気亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0016】以下に本発明の限定理由について説明す
る。まず、鋼成分の限定理由について説明する。
【0017】C:Cはプレス性向上のため、できるだけ
少ない方がよいが、実用上本発明の効果を損なわない範
囲として、その上限を0.0040%に限定した。但
し、高いプレス成形性が要求される場合は、0.002
0%を上限にすることが好ましい。
【0018】Si:0.03%を超えると、焼鈍後の鋼
板表層にシリカが微量に濃化し、スジ状のムラが発生し
やすくなり、表面外観を著しく劣化するため、その上限
を0.03%に限定した。
【0019】Mn:多量に添加すると、プレス成形性を
著しく劣化させるので、その上限を0.5%に限定し
た。
【0020】P:0.02%を超えると、深絞り性を劣
化させるため、その上限を0.02%に限定した。
【0021】S:Sは鋼の延性を劣化させるのでできる
だけ少ない方がよいが、実用上本発明の効果を損なわな
い範囲として、その上限を0.020%に限定した。
【0022】sol.Al:Alは脱酸のために必要で
あり、そのために下限を0.02%に限定した。また、
0.1%を超えるとコスト高を招くばかりか、加工性が
劣化するので、上限を0.1%に限定した。
【0023】N:Nはプレス成形性向上のためには少な
い方がよいが、実用上本発明の効果を損なわない範囲と
して、その上限を0.0040%に限定した。但し、高
いプレス成形性が要求される場合、0.0020%を上
限にすることが好ましい。
【0024】Ti:Tiは鋼中のC、Nを固定し、プレ
ス成形性を向上させるために必要であり、そのために下
限を0.005%に限定した。しかし、Tiが0.03
0%を超えるとめっき後にスジムラが発生し、表面外観
を著しく劣化させるため、その上限を0.030%に限
定した。また、Ti量が低減すると表面外観が良好にな
るので、さらに良好な表面外観を得るには、上限を0.
020%にすることが好ましい。
【0025】Nb:前記したように、めっき後良好な表
面外観を得るためには、鋼中Ti量をできるだけ低く抑
えることが望ましい。しかし、Tiで鋼中のC、Nの大
部分を析出固定することができても、一部の鋼中Cが析
出固定されず、プレス成形性が劣化する場合がある。こ
れを補うために、Nbを添加して、C、Nを固定して、
プレス成形性を向上させる。
【0026】前記したTi添加量を基に、Ti+Nb≧
0.020%以上であれば、良好なめっき後の表面外
観、プレス成形性が得られる。しかし、Nbが0.03
0%を超えると、その効果が飽和し、逆にプレス成形性
を劣化させ、コスト高にもなるため、上限を0.030
%に限定した。
【0027】B:さらに表面外観の向上が要求される場
合は、Bを添加する。Bは結晶粒界に偏析することによ
って、結晶を均一細粒化する。この効果によって、鋼板
表面の結晶粒径、結晶方位がTiを単独添加またはTi
とNbを複合添加した場合より均一化し、めっき後の表
面外観がさらに向上する。また、Bの粒界偏析により、
粒界が強化されるため、せん断加工時のバリの抑制、絞
り加工時の耐縦割れ性を著しく向上させる効果もある。
【0028】Bが、0.0002%未満では前記効果が
なく、また0.0015%を超えると前記効果が飽和す
るばかりか、プレス成形性を著しく劣化するので、0.
0002〜0.0015%に限定した。
【0029】なお、本発明において、「残部が実質的に
Fe」とは、本発明の範囲内には、本発明の技術思想を
阻害しない範囲で、各請求項に記載されない他の任意の
元素を微量添加したもの、および不可避不純物を含むも
のが含まれることを示し、例えば、請求項1記載の発明
には、0.0001%程度のBを含むものが含まれると
いう趣旨である。
【0030】次に、製造条件とその限定理由について説
明する。本発明では、前記の成分範囲に溶製、鋳造して
製造した鋼スラブを、下式(3)で規定される範囲内の
温度T(℃)で150分以上加熱した後、熱間圧延し、
600〜700℃の温度で巻取り、圧下率60%以上で
冷間圧延し、再結晶温度以上Ac3 変態点以下の温度で
連続焼鈍した後、電気亜鉛めっきを行って、電気亜鉛め
っき鋼板を製造する。
【0031】 −2000〔%Ti〕+1110≦T≦−3000〔%Ti〕+1250 ・・・(3) スラブ加熱を前記式(3)で規定される範囲内の温度で
加熱するのは、スラブ加熱温度と鋼中Ti量がめっき後
の外観を大きく左右し、スラブ加熱温度T(℃)と鋼中
Ti量が前記式(3)を満足することにより、めっき後
に優れた表面外観を得ることができるためである。以
下、この点について説明する。
【0032】表1に示す成分組成のTi量の異なる鋼を
溶製してスラブとし、1025〜1250℃の温度で2
00分間加熱した後、熱間圧延して板厚3.2mmとし
て、640℃で巻取った。得られた熱延鋼板を酸洗し
て、0.8mmまで冷間圧延(圧下率75%)して、8
20℃の焼鈍温度で連続焼鈍した後、圧下率0.8%の
調質圧延を行い、片面あたり20g/m2 の電気亜鉛め
っきを施して、電気亜鉛めっき鋼板を得た。得られた電
気亜鉛めっき鋼板の表面外観を目視観察により調査し
た。表面外観は下記の基準に従い5段階に評価した。
【0033】 5:スジ状ムラが認められないもの 4:極軽度のムラのあるもの 3:軽度のムラのあるもの 2:ムラのあるもの 1:酷いムラのあるもの
【0034】
【表1】
【0035】スラブ加熱温度、鋼中Ti含有量とめっき
後の表面外観について調査した結果を図1に示す。図1
から実用上求められている表面外観である評価点4以上
の外観を得ることができる適正なスラブ加熱温度範囲お
よびTi量範囲が存在することがわかる。適正なTi量
の上限は0.03%であり、さらに回帰式で求めた適正
なスラブ加熱温度T(℃)の範囲はTi量に対して前記
式(3)により規定される範囲であり、従来の加熱温度
より低温加熱が有効なことがわかった。
【0036】本発明者らは、種々の成分組成の鋼につい
て同様の実験を行い、本発明の鋼成分範囲において、ス
ラブ加熱温度が前記式(3)の範囲を満足すれば、めっ
き後の表面外観の評価点が4以上になることを見出し
た。
【0037】スラブ加熱は、前記式(3)で規定された
温度範囲内で150分以上加熱する必要がある。
【0038】前記式(3)で規定される鋼中Ti量、ス
ラブ加熱温度の範囲内では、スラブ鋳造時に既に析出し
ているTiC、Ti4 2 4 、TiS、TiN等の炭
窒化物の不均一な再溶解、微細析出を防止し、析出物を
均一成長させるため、冷間圧延、焼鈍後の結晶粒径、結
晶方位、表面濃化層分布の均一化が可能になる。その結
果、均一な鋼板表面が得られ、したがって、電気亜鉛め
っき時に均一な亜鉛めっき結晶になり、めっき後にめっ
きムラのない優れた表面外観になる。
【0039】また、材質面においても、前記式(3)に
規定される温度範囲内で加熱(低温加熱)した場合、鋼
中の炭窒化物の微細析出が抑制されるため、焼鈍時の結
晶粒成長性が向上し、加工性、例えばr値が向上する。
【0040】なお、加熱温度が、前記式(3)に規定さ
れる範囲の上限を超えると、炭窒化物が微細かつ不均一
に再析出するため、めっき後の表面外観が低下し、r値
が低下する場合がある。
【0041】また、加熱温度が、前記式(3)に規定さ
れる範囲の下限を下回ると、仕上温度を確保できないた
め、不均一な粒成長になり、めっき後の表面外観が低下
し、r値が低下する場合がある。また、熱間圧延の圧延
負荷が増大するという問題もある。
【0042】スラブ加熱後、熱間圧延を行う。仕上温度
は、均一粒成長を促すためAr3 変態点以上の温度にす
る必要がある。熱間圧延後、600〜700℃の温度で
巻取る。巻取温度が600℃未満ではプレス成形性が劣
化し、700℃以上では表面スケールの剥離性が劣化
し、スケール性表面欠陥に起因する表面外観の劣化を招
くため、前記範囲に限定した。
【0043】熱間圧延後、常法で酸洗を行い、60%以
上の圧下率で冷間圧延する。これは60%未満の圧下率
では十分なプレス成形性が得られないためである。圧下
率の上限は特に規定しないが圧延機の負荷等を考慮する
と90%未満にするのがよい。
【0044】冷間圧延後、再結晶焼鈍を行うが、焼鈍方
法は連続焼鈍が望ましい。これは、短時間の焼鈍では、
鋼中元素の表面濃化による表面外観の不良が防止でき、
製造工程も短縮でき、製造コストも安価になるためであ
る。また、焼鈍温度は、再結晶温度以上Ar3 変態点以
下で行うのがよい。Ar3 変態点を超えた温度で焼鈍す
るとプレス成形性が著しく劣化するためである。
【0045】焼鈍後は調質圧延を行う。圧下率は、板
厚、形状、材質等に応じて0.3〜2%の範囲で行う。
【0046】以上の方法で製造した冷延鋼板に常法の電
気亜鉛めっきを行う。この時、めっき浴は硫酸浴、塩化
浴、混合浴のいずれでもよい。いずれの場合も、めっき
後の表面外観に優れた電気亜鉛めっき鋼板が得られる。
【0047】本発明により製造された電気亜鉛めっき鋼
板は、めっき後の表面外観に優れ、またプレス加工成形
性等の加工性に優れる。またBを含む鋼を使用した場
合、さらに表面外観の向上に加えて、せん断加工時のバ
リの抑制、絞り加工時の耐縦割れ性が向上する。
【0048】
【発明の実施の形態】 (実施例1)表1に示す成分組成の鋼を溶製してスラブ
とし、1025〜1250℃の温度で200分間加熱し
た後、熱間圧延して板厚3.2mmとして、640℃で
巻取った。得られた熱延鋼板を酸洗して、0.8mmま
で冷間圧延(圧下率75%)して、820℃の焼鈍温度
で連続焼鈍した後、圧下率0.8%の調質圧延を行い、
表2に記載の浴No.Iのめっき条件により、片面あた
り20g/m2 の電気亜鉛めっきを施して、電気亜鉛め
っき鋼板を得た。得られた電気亜鉛めっき鋼板につい
て、表面外観と加工性を調査した。
【0049】表面外観は、電気亜鉛めっき鋼板の表面を
目視観察により評価した。評価は、下記の基準に従い5
段階に評価した。
【0050】 5:スジ状ムラが認められないもの 4:極軽度のムラのあるもの 3:軽度のムラのあるもの 2:ムラのあるもの 1:酷いムラのあるもの また、加工性は、前記鋼板よりJIS5号試験片を採取
し、測定したr値により評価した。r値は、圧延方向に
平行(rL )、直角(rC )および45°(r N )方向
の値を次式で平均して求めた。
【0051】r値=(rL +rC +2rN )/4 製造条件と得られた結果を表3に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】実用上の使用条件を考慮すると、表面外観
は、評価点で4以上、また加工性はプレス加工性を考慮
して、r値が1.90以上あることが望ましい。したが
って、本発明では、表面外観について、評価点で4以上
あれば表面外観に優れ、評価点が4未満であれば表面外
観が劣るとし、またr値については、1.90以上あれ
ば加工性に優れ、1.90未満であれば加工性が劣ると
した。
【0055】本発明の範囲を満足する発明例の鋼板は、
いずれも外観評価点が4以上でr値が1.90以上あ
り、表面外観と加工性に優れる。
【0056】一方、加熱温度が本発明の範囲を外れる比
較例の鋼板は、外観評価点が4未満であり、表面外観が
劣り、またr値が1.90未満で加工性が劣るものがあ
る。
【0057】(実施例2)表4に示す成分組成の鋼を溶
製してスラブとし、1100℃で200分間加熱した
後、熱間圧延して板厚3.2mmとし、640℃で巻取
った。得られた熱延鋼板を酸洗して板厚を1.0mmま
で冷間圧延した(圧下率68.8%)。引続いて800
℃で連続焼鈍した後、圧下率1.0%の調質圧延を行
い、表2に示すめっき条件で電気亜鉛めっきを行った。
【0058】
【表4】
【0059】得られた電気亜鉛めっき鋼板の表面外観、
加工性を実施例1と同様にして調査した。得られた結果
を併せて表4に記載するとともに、図2にも示した。
【0060】本発明の範囲を満足するNo.9〜16の
本発明の電気亜鉛めっき鋼板は、いずれも外観評価点が
4以上でr値が1.90以上あり、表面外観と加工性に
優れる。
【0061】一方、Bが本発明の範囲を上回るNo.1
7、18の比較例鋼板はr値が1.90未満であり、プ
レス加工性に劣る。
【0062】また、0.0002〜0.0015%の範
囲内のBが添加され、請求項2記載の発明の範囲を満足
するNo.11〜18の鋼板は、外観評価点が5であ
り、表面外観がより優れいる。また、この鋼板は、粒界
が強化されるため、せん断加工時のバリが少なく、絞り
加工時の耐縦割れ性が改善されていた。
【0063】なお、表2に示すめっき条件の範囲におい
て、ムラの発生程度に顕著な差は認められず、外観不良
に及ぼす因子として原板側の影響の大きいことを確認し
た。
【0064】(実施例3)表5、表6に示す成分組成の
鋼を溶製してスラブとし、1040〜1250℃で25
0分間加熱後熱間圧延して板厚3.6mmとし、500
〜720℃で巻取った。得られた熱延鋼板を酸洗して板
厚を1.0mmまで冷間圧延した(圧下率72.2
%)。引続いて780〜930℃で連続焼鈍した後、圧
下率1.0%の調質圧延を行い、表2に示す条件で電気
亜鉛めっきを行った。
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】得られた電気亜鉛めっき鋼板について、実
施例1と同様にして、外観観察およびr値を調査した。
調査結果を表5、表6に併せて記載した。
【0068】本発明範囲を満足する発明例鋼板は、外観
評価点が4以上でr値が1.90以上あり、表面外観と
絞り加工性に優れた電気亜鉛めっき鋼板が得られてい
る。
【0069】それに対して、No.56〜63の比較例
鋼板は、本発明範囲よりTi含有量が多いため、表面外
観が劣っており、No.64〜67の比較例鋼板は加熱
温度が本発明範囲を外れているため、表面外観が劣って
おり、またr値が1.90未満で加工性が劣っているも
のがある。
【0070】また、No.68、70、71、72、7
3、74、76、77の比較例鋼板は、それぞれC、M
n、P、S、sol.Al、N、Nb、Bが本発明範囲
より多いため、r値が劣っており、No.75の比較例
鋼板はTi+Nb量が本発明範囲を下回るため、r値が
劣っている。
【0071】No.69の比較例鋼板は、Si量が本発
明範囲より多いため、表面外観が劣っている。
【0072】No.78、79の比較例鋼板は、熱間圧
延後の巻取り温度が本発明範囲より少ないのでr値が劣
っており、No.79の比較例鋼板については、さらに
スケール剥離性が劣るため、スケール性欠陥により表面
外観が劣っている。No.80の比較例鋼板は、焼鈍温
度がAr3 変態点を超えているためr値が劣っている。
【0073】
【発明の効果】以上、詳述したように本発明によれば、
表面外観およびプレス成形性等の加工性に優れる電気亜
鉛めっき鋼板を製造でき、また、請求項2記載の発明の
場合、さらに、表面外観に優れ、せん断加工時のバリが
少なく、絞り加工時の耐縦割れ性に優れる電気亜鉛めっ
き鋼板を製造できるので、その工業的な価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】めっき後の表面外観とTi含有量、スラブ加熱
温度の関係を示す図。
【図2】B含有量と亜鉛めっき後の表面外観、r値の関
係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C25D 5/26 C25D 5/26 C

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.0040%以下、S
    i:0.03%以下、Mn:0.5%以下、P:0.0
    2%以下、S:0.020%以下、sol.Al:0.
    02〜0.1%、N:0.0040%以下、Ti:0.
    005〜0.030%、Nb:0.030%以下(無添
    加を含む)、かつNb+Ti≧0.020%を含有し、
    残部が実質的にFeよりなる鋼スラブを、下式(1)で
    規定される温度T(℃)で150分以上加熱した後、熱
    間圧延し、600〜700℃の温度で巻取り、圧下率6
    0%以上で冷間圧延し、再結晶温度以上Ac3 変態点以
    下の温度で連続焼鈍した後、電気亜鉛めっきを施すこと
    を特徴とする表面外観および加工性に優れた電気亜鉛め
    っき鋼板の製造方法。 −2000〔%Ti〕+1110≦T≦−3000〔%Ti〕+1250 ・・・(1)
  2. 【請求項2】 重量%で、さらにB:0.0002〜
    0.0015%を含有することを特徴とする請求項1記
    載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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