JPH1087697A - 蛋白質およびその遺伝子 - Google Patents

蛋白質およびその遺伝子

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JPH1087697A
JPH1087697A JP8261187A JP26118796A JPH1087697A JP H1087697 A JPH1087697 A JP H1087697A JP 8261187 A JP8261187 A JP 8261187A JP 26118796 A JP26118796 A JP 26118796A JP H1087697 A JPH1087697 A JP H1087697A
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protein
wasp
amino acid
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acid sequence
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JP8261187A
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Hiroaki Miki
裕明 三木
Tatatomi Takenawa
忠臣 竹縄
Akira Awaya
昭 粟屋
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Mitsui Pharmaceuticals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 脳神経組織中に存在する脳・神経疾患等の診
断・治療に役立つ新規な蛋白質を提供すること。 【解決手段】 蛋白質ウシNeural-Wiskott-Aldrich syn
drome protein、そのホモローグ、これらの部分ペプチ
ド等をコードするDNA断片。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はウシ臓器・組織・細
胞由来の新規な蛋白質およびその部分ペプチドフラグメ
ントに関する。より詳しくは本発明は牛の各臓器・組
織、特に脳に豊富に存在する、ヒト遺伝性疾患Wiskott-
Aldrich syndrome(症候群)の原因遺伝子産物WASP(Wi
skott-Aldrich syndrome protein)とアミノ酸配列の相
同性の高い新規な65-kDa蛋白質N-WASP、そのホモロー
グ、アナローグおよびその部分ペプチドフラグメント、
そのホモローグ、アナローグに関する。また本発明は該
蛋白質およびその部分ペプチドのアミノ酸配列をコード
する遺伝子を含むDNA断片、該DNA断片を含有するベクタ
ー、該ベクターで形質転換された宿主細胞、該宿主細胞
を培養することによる該蛋白質およびその部分ペプチド
の製造方法、そして該蛋白質およびその部分ペプチドに
結合能を有する抗体を提供する。
【0002】更に本発明は該蛋白質、該DNA断片あるい
は該抗体を含有ないし用いる医薬・診断薬あるいは各種
疾患の治療・診断方法を提供する。具体的には本発明
は、脳神経系疾患、免疫系疾患、内分泌系疾患、癌、心
臓・血管障害、肺呼吸器系疾患、腎疾患、血液系疾患な
どの医薬・診断薬およびその治療方法を提供する。脳神
経系疾患としては神経変性疾患、老年性痴呆、健忘症、
記憶障害、アルツハイマー型老人性痴呆、前アルツハイ
マー症候群などの、認識機能障害・不全、神経免疫機能
不全、器質性脳症候群、パーキンソン病、マッカード-
ジョセフ病のような小脳変性疾患、ハンティントン舞踏
病、ケネディー病、SCA1、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小
脳変性症、多発性硬化症、デュシエンヌ型筋ジストロフ
ィーなどの筋ジストロフィー、ギラン・バレー症候群
(GBS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、難聴、痙性、
慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチー、末梢性神経ニュ
ーロパチー、糖尿病性ニューロパチー、偏頭痛、てんか
ん、水頭症、薬物性神経障害、頭蓋、脳、脊髄外傷性損
傷、クモ膜下出血、脳内出血、脳虚血症、脳血栓症、脳
塞栓症、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)などの脳血
管障害、手術後の脳後遺症、各種精神病、精神分裂病、
そう、うつ症、不安障害、新生児の脳損傷、失語症、小
児の多動性障害、ダウン症などがあげられる。
【0003】
【従来の技術】生体の神経系、免疫系、内分泌系は相互
に関連、調和して生体のホメオスタシスを維持してい
る。この恒常性の破綻が疾患を発生し、増悪させる。様
々の疾患の中で、たとえば脳・神経系障害に基づく疾患
は前記のように多く、今日でもその多くは真の成因が不
明である。近年ヒューマンゲノムプロジェクトが進行
し、遺伝的変異、欠損に基づくものと考えられてきた種
々の神経系疾患の原因遺伝子が確定されるようになっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】また神経の発生、成長
・発達、神経の再生、修復あるいは腫瘍化の現象のメカ
ニズムの研究も大いに進展して、それらに関与する様々
な新規な蛋白質などの分子が見出されているが、まだこ
れら既知の分子だけで、神経現象を説明するのは不充分
であり、未知の因子がまだ数多く存在することが予想さ
れる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らも様々な神経
の生理現象に関わる新たな分子を見出し、その機能を明
らかにし、また前記の様々な脳・神経疾患の発症原因を
明らかにし、その診断・治療に役立てたいと考え、本発
明者らが長年研究してきた細胞内情報伝達系に関与し、
あるいは接点を有する新規な蛋白質を脳神経組織に求
め、探索した。
【0006】そしてヒト遺伝性疾患Wiskott-Aldrich sy
ndromeの原因遺伝子産物WASP(Wiskott-Aldrich syndro
me protein)とアミノ酸配列の相同性の高い新規な65-k
Da蛋白質をコードする遺伝子および該蛋白質を同定し、
N-WASPと命名した。本N-WASPは下記ノザンブロット、ウ
エスタンブロットなどの分析により生体の各臓器・組織
に発現、存在するが、特に脳に豊富に存在することがわ
かり、その脳内での重要な機能が想定されることから、
本発明の目的にかなうものであった。
【0007】即ち本発明は配列番号1に記載のアミノ酸
配列の全部を含む蛋白質ウシN-WASP、そのホモローグ、
または該アミノ酸配列の一部を含むその部分ペプチドフ
ラグメントまたはそのフラグメントのホモローグを提供
する。さらに本発明は配列番号1に記載のアミノ酸配列
のうち、1もしくは複数のアミノ酸が、付加、欠失もし
くは置換されたアミノ酸配列の全部を含む蛋白質N-WASP
アナローグ、そのホモローグ、または該アミノ酸配列の
一部を含むその部分ペプチドフラグメントまたはそのフ
ラグメントのホモローグを提供する。そして、本発明は
N-WASPやそのホモローグやそれらの部分ペプチドフラグ
メントなどのアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むDN
A断片、該DNA断片を含有する複製または発現ベクター、
該ベクターで形質転換された宿主細胞、該宿主細胞を培
養することによる該蛋白質およびその部分ペプチドの製
造方法、そして該蛋白質およびその部分ペプチドに結合
能を有する抗体を提供する。更に本発明は該蛋白質類、
該DNA断片類あるいは該抗体類を含有ないし用いる医薬
・診断薬、あるいは各種疾患の診断・治療方法を提供す
る。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の蛋白質N-WASPはウシ由来の蛋白質であり、ウシ
の種々の臓器・組織・細胞・体液に含まれる蛋白質であ
り、好ましくは脳、心臓、肺、結腸など、より好ましく
は脳などの組織細胞に含まれる蛋白質である。また本発
明の蛋白質N-WASPは以下に示すように遺伝子工学的手法
により、動物細胞、昆虫細胞、酵母、大腸菌、枯草菌か
ら作製することができる。
【0009】本発明の新規なN-WASPを発見するための手
段・方法として、本発明者らは前記のように、細胞内情
報伝達系に存在する受容体チロシンキナーゼの下流、そ
してRasの上流に位置する、本発明者らにより以前に発
見されたAsh(Abundant Src Homology)/Grb2(Growth
Factor Receptor Bound Protein 2)(Matsuoka, K.,et
al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 9015, 1992お
よびLowenstein, E. J.et al., Cell 70, 431, 1992)
というアダプター蛋白質をプローブとして用いたことが
特筆される。
【0010】AshはSH2ドメインを介して、EGFレセプタ
ー、NGFレセプター、PDGFレセプター、インスリンレセ
プターなどのチロシンリン酸化部位、pY-X-N-Xモチーフ
を認識して結合する。SH2ドメインでキャッチしたシグ
ナルはSH3ドメインに結合する蛋白質を介して下流に存
在する蛋白質に伝達される。
【0011】即ちAshはSH3ドメインを介してRasの活性
化因子(Sos)やダイナミンと結合しているが、本発明
者らはAshが増殖因子によって誘導されるアクチンフィ
ラメントの再構成にも関与することを明らかにし(Mats
uoka, K. et al., EMBO J. 12,3467, 1993)、他のいく
つかのシグナル分子がAshの下流に存在することを推定
した。
【0012】そして、その可能性を支持する知見を続い
て得た。即ちウシ脳サイトゾール画分よりSosを含めて4
つの主要なAsh結合蛋白質を見出し、それらのいくつか
がAshのSH3ドメインに結合することを示した(Miki, H.
et al., J. Biol. Chem. 269, 5489, 1994およびNakan
ishi, H. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 19
8, 1255, 1994)。本発明者はSos以外のそのようなAsh
結合蛋白質の中にアクチンフィラメントの再構成に必須
なターゲット蛋白質が存在すると考えた。
【0013】アクチンフィラメントはG-アクチン結合蛋
白質、脱重合蛋白質、キャッピング蛋白質そしてゲル化
蛋白質に分類されるアクチン調節蛋白質によって制御さ
れていることが知られている。そして多くのデータがホ
スファチジルイノシトール-二リン酸(以下PIP2)が、
それらのいくつかと、たとえばプロフィリン(profili
n)、コフィリン(cofilin)、ゲルゾリン(gelsoli
n)、gCap39やα-アクチニン(Fukami, K. et al., Nat
ure 359, 150-, 1992)と結合し、それらの機能を調節
している。これらの蛋白質に結合するPIP2量は、細胞骨
格の再構成に関連する受容体型チロシンキナーゼの活性
化に応じて変化することは注目すべき現象であることを
本発明者らは既に報告した(Fukami, K. et al., J. Bi
ol. Chem. 269, 1518, 1994)。
【0014】本発明において以下に示すプレクストリン
ホモロジー(PH)ドメインは近年、様々な蛋白質に発見
されてきている(Mayer, B. J. et al., Cell 73,629,
1993およびHaslam, R. J., Nature 363, 309, 1993)。
PHドメインはG蛋白質のβγサブユニットやプロテイン
キナーゼCと会合することが報告されているが、PIP2
も結合することが最近報告された。この場合PIP2はPHド
メインを含む蛋白質が膜に結合する際のターゲットとし
て働くと考えられる。
【0015】本発明はこのような生体反応である、細胞
内情報伝達系の数珠つなぎの数珠である個々の蛋白質に
精細に着目し、それらをプローブにして新たな数珠を分
離・特定する手法を用いて達成されたものであり、本発
明者らのこれまでの研究線上の一里塚である。
【0016】本発明の蛋白質N-WASPはウシの種々の臓器
・組織・細胞・体液などに由来する蛋白質であって、配
列番号1に記載のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を
有するN-WASP、そのホモローグ、あるいは配列番号1に
記載のアミノ酸配列と約50〜99.9%、好ましくは約90〜
99.9%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号
1に記載のN-WASPと同等ないし同質の生物活性を有する
蛋白質、そのホモローグが含まれる。
【0017】後者の蛋白質としては配列番号1に記載の
アミノ酸配列のうち、1もしくは複数のアミノ酸が、付
加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列の全部を含む
蛋白質N-WASP、そのホモローグがあげられる。さらには
場合により、N末端のメチオニン基がホルミル基、アシ
ル基などで保護されていたり、糖鎖結合能を有するアミ
ノ酸残基の一部に糖鎖が結合したり、リン酸基結合能を
有するアミノ酸残基の一部にリン酸基が結合したりした
蛋白質も本発明には含まれる。
【0018】本発明の蛋白質N-WASPの塩としては、薬学
的に許容される無機酸あるいは有機酸などの酸付加塩が
好ましい。また薬学的に許容される賦形剤および/また
は担体と混合して本発明の蛋白質N-WASPは薬学的組成物
の形態をとることができる。
【0019】本発明のN-WASP、そのホモローグは、ウシ
の種々の臓器・組織・細胞・体液などから、特にウシの
脳、心臓、肺、結腸など、より好ましくは脳から自体公
知の蛋白質の分離・精製法によって製造することがで
き、その一端は実施例に示されている。また後記のN-WA
SPをコードするDNA断片を含むベクターで形質転換され
た宿主細胞を培養することによっても製造することがで
きる。また後記のペプチド合成法を組み合わせて、全合
成に至ることも考えられる。
【0020】本発明の部分ペプチドフラグメントまたは
そのホモローグは配列番号1に記載のアミノ酸配列の一
部を含むものや、配列番号1に記載のアミノ酸配列のう
ち、1もしくは複数のアミノ酸が、付加、欠失もしくは
置換されたアミノ酸配列の一部を含むものがあげられ
る。本発明のN-WASPは図1〜6に示される種々のドメイ
ンからなり、本発明の部分ペプチドフラグメントはそれ
ら個々のドメインを個別に含むもの、あるいは複数のド
メインを同時に含むものであってもよいし、その他の部
分を含むものでもよい。本発明の部分ペプチドフラグメ
ントの塩としては、N-WASPの場合と同様に薬学的に許容
される広範な酸付加塩が用いられる。
【0021】本発明の部分ペプチドフラグメントは自体
公知のペプチド合成法で合成するか、種々の方法によっ
て製造したN-WASPあるいはN-WASPのアナローグ蛋白質を
適当なプロテアーゼ、あるいはペプチダーゼで切断して
得ることができる。ペプチドの合成法としては固相合成
法、液相合成法のいずれの方法でもよく、合成反応後は
通常の分離・精製法を組み合わせて本発明のペプチドフ
ラグメントを製造できる。さらに下記のN-WASPをコード
するDNA断片の一部を含むベクターで形質転換された宿
主細胞を培養することによっても製造することができ
る。その際、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GS
T)やプロテインAやマルトース結合性蛋白質(MBP)と
の融合蛋白質として個々のペプチドフラグメントを製造
することもできる。
【0022】本発明のN-WASPをコードするDNA断片はN-W
ASP、そのホモローグ、N-WASPのアナローグあるいはそ
れらの一部の部分ペプチドフラグメントをコードするDN
A断片を含む。N-WASPまたはその一部のペプチドフラグ
メントの場合は、配列番号1に記載の塩基配列を有するN
-WASPのアミノ酸配列の全部または一部の部分ペプチド
フラグメントをコードするDNA断片である。
【0023】以下に示す遺伝子操作、即ちcDNAの作製、
cDNAライブラリーの作製、ハイブリダイゼーションによ
るスクリーニング、組換えDNAの作製、DNAの塩基配列の
決定、組換えDNAベクターによる宿主細胞の形質転換、
宿主細胞による蛋白質発現、ノーザンブロット分析、ウ
エスタン分析などの分子生物学的な実験方法は、たとえ
ば、Molecular Cloning, A laboratory manual(Eds.,
Sambrook, J., Fritsh, E. F., and Maniatis, T., Col
d Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載の方
法に従い実施できる。
【0024】本発明のDNA断片は、いかなる方法で得ら
れるものであってもよく、たとえばmRNAから調製される
相補DNA(cDNA)、ゲノムDNAからスプライシングにより
調製されるDNA、化学合成によって得られるDNA、RNAま
たはDNAを鋳型としてPCR法で増幅させて得られるDNAお
よびこれらの方法を適当に組み合わせて調製されるDNA
などがすべて含まれる。
【0025】本発明のN-WASPは、まず牛脳サイトゾール
画分からAsh/Grb2結合蛋白質をアフィニティーカラムク
ロマトにより分離・精製するという手段を用いて単離す
ることに成功した。即ちアフィニティーカラムクロマト
で粗精製したAsh/Grb2結合蛋白質画分をSDS-PAGEで分離
し、ついで通常の方法でポリビニリデンジフルオロート
(PVDF)膜などにトランスファーし、ポンソー-S(Ponc
eau-S)などで染色して65-kDa蛋白質を同定した。この
蛋白質領域を切り取り、リジルエンドペプチダーゼで処
理して得たペプチド混合物を逆相HPLCカラムにアプライ
してトリフルオロ酢酸-アセトニトリル溶媒などで溶出
して、いくつかのペプチドを分画した。これらペプチド
のいくつかをApplied Biosystems Peptide Sequencerな
どによりアミノ酸配列を決定した。これらのうち、たと
えば2つのペプチドのアミノ酸配列は、N-NPEITTNRFYGPQ
INNISHT-CおよびN-RRDPPNGPNLPMATV-Cであった。
【0026】N-WASPのcDNAを得る行程は、例えば以下の
如く示される。上記の2つのペプチド断片のアミノ酸配
列に対応したPCRプライマーを市販のDNA合成機により合
成した。上記の後者のペプチド断片に対応する合成ヌク
レオチド5'-ACIGTIGCCATIGGIARRTTIGG-3'(RはAおよびG
を示す)を合成し、牛脳λgt10、cDNAライブラリーのス
クリーニングのためのプローブとして用いるため標識し
た。標識法としては、アイソトープ標識法、あるいは非
アイソトープ標識法がある。前者の方法として、たとえ
ば[32P]γ-ATPとT4ポリヌクレオチドキナーゼを用い
て末端をラベルする方法が利用しうる。
【0027】cDNAライブラリーを持ち合わせない場合
は、N-WASPをコードするmRNAを調製する必要があり、た
とえばグアニジンチオシアネート法(Chirgwin, J. M.
et al., Biochem. 18, 5294, 1979)や熱フェノール法
あるいはAGPC法などの通常の方法を用いて牛脳より調製
した全RNAをオリゴ(dT)セルロースやポリU-セファロ
ース等にアプライし、アフィニティークロマトグラフィ
ーを行い調製する。ついで得られたmRNAを鋳型として逆
転写酵素を用いるなどの通常の方法(たとえばOkayama,
H. et al., Mol. Cell. Biol. 2, 161, 1982など)でc
DNA鎖を合成し、さらに二本鎖cDNAへ変換する。そして
このcDNAをプラスミドベクターあるいはファージベクタ
ーに組み込み、大腸菌を形質転換させ、もしくはインビ
トロパッケージングの後、大腸菌にトランフェクトする
ことによりcDNAライブラリーを作製することができる。
日常用いられるクローニング用ベクターとして、pUC11
9、λgt10、λgt11などがあげられる。
【0028】プラスミドにcDNAを組み込む方法としては
前掲のManiatis, T.らのMolecularCloning, A Laborato
ry Manual, 2nd editionに記載の方法があげられる。フ
ァージベクターにcDNAを組み込む方法としては、Hyunh,
T. V.らの方法(Hyunh, T.V., DNA Cloning, A practic
al approach, 1, 49, 1985)などがあげられる。簡便に
は宝酒造など製造のライゲーションキットを用いてこれ
らの行程を実施できる。このようにして得られた組換え
プラスミドやファージベクターを大腸菌等の宿主に導入
することができる。
【0029】組換えプラスミドを宿主に導入する方法と
して、前掲のマニュアルにあるような塩化カルシウム
法、エレクトロポレーション法などがある。またファー
ジベクターを宿主に導入する方法としてファージDNAを
インビトロパッケージングしたのち、増殖した宿主に導
入する方法などがあげられる。インビトロパッケージン
グは、市販のインビトロパッケージングキット(Strata
gene製、Amersham製など)を用いることにより簡便に行
うことができる。
【0030】cDNAライブラリーから本発明のN-WASPをコ
ードするcDNAを単離する方法としては、32Pでラベルし
た合成ヌクレオチドをプローブとして通常のコロニーハ
イブリダイゼーションを行う方法あるいはプラークハイ
ブリダイゼーション法により、目的のクローンをスクリ
ーニングする方法などがあげられる。N-WASPあるいは部
分ペプチドに対する抗体を作製して、抗原抗体反応によ
り目的のクローンをスクリーニングする方法もある。
【0031】こうして得られたDNAの塩基配列はファー
ジM13を用いたジデオキシヌクレオチド法(Sanger, F.
et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA74, 5463, 1977)
あるいはマキサム・ギルバート法(Maxam, A. M. & Gil
bert, W., Proc. Natl. Acad. Sci. USA74, 560, 197
7)によって決定することができる。N-WASP遺伝子は上
記のようにして得られたクローンから、その全部または
一部を、種々の制限酵素を用いて切り出すことにより得
られる。
【0032】本発明のN-WASP、ホモローグ、アナローグ
あるいはそれぞれの部分ペプチドフラグメントをコード
するDNA断片を含む複製または発現ベクターなどの組換
えベクターとしては、原核細胞あるいは真核細胞の種々
の宿主の中で複製され、増殖できるものであれば、制限
されることはなく、プラスミドベクターやファージベク
ターなどが含まれる。大腸菌由来のプラスミドとしてた
とえばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13など、枯草菌由来
のプラスミドとしてはたとえばpUB110、pTP5、pC194な
ど、酵母由来のプラスミドとしてはたとえばpSH19、pSH
15などがあげられる。またファージとしては、λファー
ジなどのバクテリオファージがあげられる。さらにレト
ロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、核
多角体ウイルスなどバキュロウイルスなどの動物や昆虫
のウイルスなども用いられる。
【0033】N-WASP類やそれら部分ペプチド類をコード
する遺伝子を宿主内で発現させ、蛋白質を生産させる目
的には発現ベクターを用いるのが有用であり、発現ベク
ターとしては、原核細胞あるいは真核細胞の各種の宿主
の中でN-WASP類やそれら部分ペプチド類を生産する機能
を有するものであれば特に制限されない。好ましいベク
ターとしてpGEX 3-XやpGEX 5-X(Pharmacia製)やSV-40
由来の発現ベクターがあげられる。発現ベクターには、
大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞で若干異な
るが、一般に少なくもプロモーター-オペレーター領域
(あるいはプロモーター領域)、開始コドン、本発明の
N-WASP類あるいはそれらの部分ペプチドをコードするDN
A、終止コドン、場合によりターミネーター領域、複製
可能単位から構成される。またシグナルペプチド(たと
えばpel Bのシグナルペプチド)をコードするDNA、エン
ハンサー配列、本発明のN-WASP類をコードする遺伝子の
5'側および3'側の非翻訳領域、スプライシング接合部、
ポリアデニレーション部位、選択マーカー領域や遺伝子
増幅遺伝子マーカーなどを含んでいてもよい。またGST
やProtein AやMBPなどの蛋白質との融合蛋白質としてN-
WASP類あるいはそれらの部分ペプチドフラグメントを宿
主において生産する場合も原理は同じである。
【0034】本発明のN-WASP類をコードするDNA断片を
含む複製または発現ベクターで形質転換される宿主細胞
としては、本発明の技術分野において通常使用される天
然の細胞または人工的に樹立された組換え細胞など種々
の細胞が例示される。大腸菌としてはXL-1 Blue、K12 D
H1、DH5、HB101、JM103など、動物細胞としてはヒト由
来細胞(Hela、W138、HepG2、ミエローマ細胞、Namalw
a、FL細胞、2倍体線維芽細胞由来細胞)、サル由来細胞
(COS-1、COS-3、COS-7、CV1あるいはVero76など)、ハ
ムスター由来細胞(CHO、dhfr-CHO、BHKなど)、ラット
由来細胞(BRL3Aなど)マウス由来細胞(Sp2/0、NS-1、
NIH3T3、L、COPなど)があげられる。
【0035】発現ベクターの宿主細胞への導入は通常当
業者らが用いる種々の方法(コンピテント細胞法、リン
酸カルシウム法、リチウム法、プロトプラスト法、イン
ビトロパッケージング法、ウイルスベクター法など)に
より行うことができ、形質転換宿主細胞が得られる。動
物細胞の場合はVirology52巻、456頁、1973年に記載のG
rahamの方法などに従って行うとよい。宿主細胞は、そ
れぞれに適した栄養培地中で、至適な培養条件で培養す
ることができる。動物細胞の場合は、約5〜20%のウシ
胎児血清やウマ血清などを含むMEM培地、DMEM培地、RPM
I1640培地、199培地などを用いることができる。昆虫細
胞の場合は牛胎児血清を含むGrace's培地を用いること
もある。
【0036】上記培養により得られる培養物より、本発
明のN-WASP、ホモローグ、アナローグ、部分ペプチドフ
ラグメント、およびそれらの他の蛋白質、ペプチドとの
融合体は下記のようにして取得できる。目的の蛋白質あ
るいはペプチド断片を培養菌体、あるいはペリプラズマ
や細胞質内から抽出するに際しては、培養後、公知の方
法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸
濁し、超音波、リゾチーム添加、凍結融解などの処理法
を組み合わせて菌体あるいは細胞の細胞壁あるいは細胞
膜を破砕し、濾過や遠心分離などの方法により目的とす
る蛋白質やペプチド断片を含む粗抽出液を得る。バッフ
ァー中に尿素や塩酸グアニジンなどの変性剤や、膜画分
を可溶化するトリトンX-100などの界面活性剤を含める
こともある。一方、培養液中に目的とする蛋白質やペプ
チド断片が分泌される場合には、培養後、常法により菌
体あるいは細胞と培養上清とを分離する。得られた上清
や上記の粗抽出液中に含まれる目的とする蛋白質やペプ
チド断片の精製は、自体公知の分離・精製法を適宜組み
合わせて行うことができる。分離、精製方法としては、
たとえば塩析、溶媒沈殿法等の溶解度を利用する方法、
透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム-
ポリアクリルアミドゲル電気泳動など分子量の差を利用
する方法、イオン交換クロマトグラフィーやヒドロキシ
ルアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電の差を利用
する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特
異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラ
フィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳
動などの等電点の差を利用する方法などがあげられる。
【0037】本発明の、N-WASP、ホモローグ、アナロー
グ、部分ペプチドフラグメント、およびそれらの他の蛋
白質、ペプチドとの融合体の個々に結合能のある抗体は
常法により作製することができ、ポリクローナル抗体お
よびモノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体に
は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどいずれのイムノ
グロブリンクラスに属するモノクローナル抗体も含み、
好適にはIgGまたはIgMイムノグロブリンクラスのモノク
ローナル抗体があげられる。製法としてはマウス、ラッ
ト、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、
ウマ、ウシなどの動物の皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、
静脈内に上記蛋白質やペプチド類を複数回、フロイント
完全アジュバントやフロイント不完全アジュバントとと
もに接種し、あるいはキーホールリンペットヘモシアニ
ン、BSA、グルタルアルデヒドなどとコンジュゲートに
して接種し、十分に免疫した後、これら動物から採血
し、血清を分離して、ポリクローナル抗体が得られる。
モノクローナル抗体は、上記蛋白質やペプチド類を免疫
したマウス、ラット等の脾細胞と入手可能なマウスある
いはラットのミエローマ細胞との細胞融合により得られ
るハイブリドーマを作製後、該ハイブリドーマの培養上
清、または該ハイブリドーマを移入したマウスあるいは
ラットの腹水から調製することができる。これらの抗体
は、ヒト等生体試料中の本発明のN-WASPおよび関連蛋白
質、部分ペプチドの存在の同定と存在量を定量すること
などに用いうる。本発明の抗体は必要に応じてF(ab')
2、Fab'、Fabなどのフラグメントおよびそれらの修飾体
として使用してもよい。またキメラ抗体、ヒト化抗体、
ヒト抗体にも変換して疾病の診断・治療にも応用でき
る。本発明の上記抗体を用いて、RIA、EIA、FIA、受身
凝集反応法などの測定系を確立することができる。
【0038】本発明のN-WASP、ホモローグ、アナロー
グ、部分ペプチドならびにこれら蛋白質、ペプチド類を
コードするDNA断片の治療への応用の可能性について
は、今後の研究の進展に待つところが大である。蛋白
質、ペプチド類をそのまま生体に投与することについて
は不確定な要素があるが、DNAを生体に投与することは
今日の医療水準から考えて手の届くところに来つつある
療法と考えられる。本発明のN-WASPの作用・活性の異常
あるいはN-WASPの欠乏ないしアミノ酸残基の変異・欠損
など、神経疾患をはじめ種々の疾患の原因である場合、
本発明のN-WASP類あるいはその部分ペプチドをコード
するDNAを、そのような患者に投与し発現させることに
よって、あるいは脳細胞などに本発明のN-WASP類ある
いはその部分ペプチドをコードするDNAを挿入し発現さ
せた後に、該脳細胞を該患者に移植することなどによっ
て、該患者の脳細胞におけるN-WASP類あるいはその部分
ペプチドの量を増加させ、その作用を充分に発揮させる
ことができる。したがって、本発明のN-WASP類あるいは
その部分ペプチドをコードするDNAは、安全で低毒性の
本発明のN-WASP欠乏症などの予防・治療剤として用いる
ことができる。
【0039】本発明のDNA断片を上記治療剤として使用
する場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベク
ター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシ
エーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿
入した後、常套の手段に従って実施することができる。
例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、
エリキシル剤、ドリンク剤などとして経口的に、あるい
は水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌
性溶液、または懸濁液剤などの注射剤やエアゾール、ペ
レットの形で非経口的に使用できる。たとえば、本発明
のDNAを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、
ビヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に
認められた製剤実施に必要とされる単位用量形態で混和
することによって製造することができる。これら製剤に
おける有効成分量は、指示された範囲の適当な治療用量
が得られるようにするものである。
【0040】錠剤、カプセル剤などに混和することがで
きる添加剤としては、たとえばゼラチン、コーンスター
チ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性
セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチ
ン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグ
ネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリ
ンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチ
ェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態
がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに
油脂のような液状担体を含有することができる。注射の
ための無菌組成物は注射用水のようなビヒクル中の活性
物質、ごま油、ヤシ油のような天然産出植物油などを溶
解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって
処方することができる。注射用の水性液としては生理食
塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(たとえ
ば、乳糖、シュークロース、D-ソルビトール、D-マンニ
トール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な
溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノー
ル)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤
(たとえばポリソルベート80(TM)、HCO-50)などと併用
してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげ
られ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルア
ルコールなどと併用してもよい。
【0041】また、緩衝剤(たとえば、リン酸塩緩衝
液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(たとえば、塩
化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤
(たとえば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコ
ールなど)、保存液(たとえば、ベンジルアルコール、
フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。
調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填され
る。このようにして得られる製剤は安全で低毒性である
ので、たとえば温血哺乳動物(たとえば、ラット、モル
モット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウ
シ、ネコ、イヌ、サル、ヒトなど)や魚類に対して投与
することができる。該DNAの投与量は、症状などにより
差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(60kgと
して)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好まし
くは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対
象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なる
が、たとえば注射剤の形では通常成人(60kgとして)に
おいては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約
0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈
注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合
も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0042】本発明により生体から新規に見出されたN-
WASPのアミノ酸配列をWASPと比較し図1に示す。N-WASP
のアミノ末端には前記のPHドメインが存在する(図
2)。PHドメインはシグナルトランスダクションや細胞
骨格形成に関与する多数の他の蛋白質に存在することが
報告されている(図2)。WAS患者において見出せる多く
のミスセンス点変異はこのPHドメインで起こっていると
いう(Derry,J. M. J. et al., Cell 78, 635, 1994お
よびKwan, S.-P. et al., Proc. Natl.Acad. Sci. USA9
2, 4706, 1995)。さらに変異が生じているアミノ酸残
基がN-WASPで高度に保存されていることはWASPやN-WASP
の機能におけるPHドメインの重要性を示唆するものであ
る。N-WASPのアミノ酸配列中には、他に様々な短いペプ
チド断片モチーフが存在する。まずIQ-モチーフがN-WAS
Pに存在するが、WASPには存在しない(図3)。IQ-モチ
ーフはカルモジュリンに結合すると考えられている。こ
のことはN-WASPがCa2+-シグナルリングによっても調節
されている可能性を示す。ついでバープロリン(verpro
lin)およびコフィリン(cofilin)相同領域がN-WASPで
もWASPにもC末端に見出せる(図4および図5)。バープ
ロリンはアクチン細胞骨格の構築に関わる酵母蛋白質で
あり、またコフィリンはpH依存性アクチン脱重合活性を
有するアクチン結合蛋白質であることから、N-WASPもWA
SPもアクチン細胞骨格を制御することが示唆される。
【0043】N-WASPの組織分布を調べるために、前記の
ようにラットの種々の組織からmRNAを採取し、ノーザン
ハイブリダイゼーション解析を行ったところ、図7Aに示
すようにN-WASPのmRNA(6.5kb)は脳には強く、肺、心
臓、結腸には弱く、他の組織ではかすかに検出された。
また4kbのmRNAのシグナルも検出され、睾丸では特にそ
れが強かった。
【0044】脳より抽出し、分離・精製したN-WASPに対
する抗体を作製し、脳中の65-kDa蛋白質や大腸菌で発現
させた組換え蛋白質との反応をみたところ、特異的に反
応することがわかった。この抗体を用いてラットの種々
の組織の溶解物に対してウエスタンブロット解析を行っ
た。N-WASPは脳に豊富にまた肺や心臓に中程度に存在し
たが、他の組織では陽性の染色は見られなかった(図7
B)。この結果はノーザンハイブリダイゼーションの結
果と一致している。図7Cに示すように、脳においてN-WA
SPはシナプトゾームにおいてダイナミンと共濃縮される
ことがわかり、この知見はN-WASPがこの画分で役割を演
じていることを示唆している。
【0045】これまでのところ、SH3ドメインを介してA
sh/Grb2に結合する蛋白質はいくつかのプロリン残基と
それに続くアルギニン残基からなるプロリンリッチモチ
ーフをいくつか持っている(Miki, H. et al., J. Bio
l. Chem. 269, 5489, 1994など)。N-WASP中にはこの基
準に合う6つのモチーフが存在する(図1)。そこで本発
明者らはGST-Ash/Grb2欠損コンストラクトをいろいろ作
製し、SH3を介してN-WASPがAsh/Grb2と結合しているの
か検討したところ、アミノ末端のSH3ドメインとC末端の
SH3ドメインがN-WASPの結合サイトであり、SH2ドメイン
はそうではないことが明らかとなった。予想される6つ
のAsh/Grb2結合サイトは1つのPPPPRR(タイプI)と5つ
のPPPPXR(X=S、AあるいはN)(タイプII)に分類され
る。前者のPPPPRRモチーフはN-WASPのアミノ末端に存在
するPHドメインに局在している。また5つのPPPPXRモチ
ーフはN-WASPのプロリンリッチ領域に存在する。どのモ
チーフがAsh/Grb2への結合に重要であるか調べるため
に、QQQPPPPRRVT(5-15)とRQAPPPPPPSR(275-285)の2
つのペプチドを化学合成した。
【0046】次に本発明のN-WASPがカルモジュリンやア
クチンともまた会合する知見を示す。N-WASPのシグナル
伝達を検討するため本発明者らは図8Aに示すような様々
なN-WASPの欠損コンストラクトをGST融合蛋白質として
作製し、大腸菌でそれらを発現させた。G-PH、G-IQ、G-
ProおよびG-VCAのコンストラクトを用いて、[35S]メ
チオニンで前もってラベルしたPC12細胞の溶解物におい
てN-WASPと結合する蛋白質を調べた。図8Bに示すよう
に、いくつかの蛋白質がこれらの組換え蛋白質に特異的
に結合することがわかった。G-IQとは18-kDa蛋白質が、
G-Proとは28-kDa蛋白質(Ash/Grb2である)が、G-VCAと
は42-kDa蛋白質が結合することが注目された。42-kDa蛋
白質については、本発明者はそれを牛脳サイトゾールよ
り精製して、その部分アミノ酸配列からそれがアクチン
であることを同定した。実際、アクチンがN-WASPと免疫
学的に共沈することが明らかとなり、これらがin vivo
で会合することが示唆された(図8C)。G-VCAコンスト
ラクトには2つのバープロリン-および1つのコフィリン-
相同領域そして1つの酸性アミノ酸残基リッチ領域を含
む。これらの領域で正確なアクチン結合サイトを決める
ため、N-WASPの2つのGST融合蛋白質を構築し(図8AのG-
VCおよびG-V)、アクチン結合アッセイを行った。GST自
身はそれ自体全くアクチンとは結合しなかった。C末端
の高酸性領域を欠く変異ミュータント(G-VC)はもとの
組換え蛋白質(G-VCA)と比較してほぼ同量のアクチン
と結合しうることがわかった。しかし、コフィリン-相
同領域のないさらに欠損したミュータント(G-V)は結
合能を劇的に減少させた。このことはこの領域の結合能
に関しての重要性を示唆した。一方、バープロリン-相
同領域は、より効果はなかったが、アクチンと結合した
ので、このサイトはアクチン結合において、部分的に役
割を果たしていると考えられる。バープロリン-および
コフィリン-相同領域はWASPにおいても高度に保存され
ており、一人の患者で、これら領域の欠損をおこす変異
を持っていることが明らかとなった(前掲のKwanらの報
告)。このことはアクチン結合能もまたこの分子の生理
学的機能のためにきわめて重要であることを示唆するも
のである。
【0047】ついで、本発明者らはG-IQコンストラクト
と結合する18-kDa蛋白質を同定しようと試みた。IQ-モ
チーフはカルモジュリンとの結合サイトと考えられたの
で、抗カルモジュリン抗体を用いてそれを検討した。図
8Dに示すようにカルモジュリンがN-WASPと免疫学的に共
沈殿し、G-IQコンストラクトと結合した。さらにこの結
合が、50mMのEGTAを含むバッファー中で洗浄によって完
全に阻害されたことはこの結合のCa2+依存性を示唆する
ものである。
【0048】次に、本発明者はN-WASPがin vivoで細胞
表層部のアクチンフィラメントの構築を制御しているこ
とを示す。N-WASPのインビボでの機能を解析するため
に、本発明者らは図9Aに示すように野生型のN-WASP(全
長)とそのミュータント型(ΔVCAおよびC38W)をCOS細
胞において組換えプラスミドのエレクトロポーレーショ
ンによって強制発現させた。ΔVCAミュータントはアク
チン結合領域を欠落している。C38Wにおいては、もとの
N-WASPのPHドメインに存在する38番システイン(C)残
基がPHトリプトファン残基(W)に置換している。WASP
の残基に対応するこの変異が一人のWAS患者で生じてい
ることが報告されている(Kwanらの上掲の報告)。それ
故、本発明者らはこの変異がまたN-WASPを失活させてい
ると考えている。蛋白発現レベルは抗N-WASP抗体による
ウエスタンブロットにより分析した。コントロールベク
ターのみでトランスフェクトされたCOS7においては、N-
WASPはごく少量しか発現していなかった。一方、全長コ
ンストラクトでトランスフェクトしたCOS細胞では65-kD
a陽性シグナルが顕著であった。C38WおよびΔVCAコンス
トラクトをトランスフェクトさせた場合、それぞれ65-k
Daおよび50-kDaの位置に強いシグナルが観察された。
【0049】次に抗N-WASP抗体とファロイジンを用いて
細胞の免疫蛍光染色を行った。血清含有条件下で培養し
た細胞に全長コンストラクトを導入した場合は、いくつ
かの細胞が固定後、強く染色された。細胞表層部が強く
シグナルを出し、またいくつかのN-WASPが核に存在し
た。これと対比して、ΔVCAおよびC38Wは核にのみ観察
されたことはPHドメインとアクチン結合活性の両方の正
常の機能が、N-WASPの正常な機能に必要であることを示
唆する。おそらくこれら領域はこの分子の正常な位置で
の存在に必須なものと考えられる。アクチンフィラメン
トへの効果をみるため細胞をローダミンラベルのファロ
イジン(phalloidin)で2重染色した。2つのミュータン
トでトランスフェクトされた細胞においてはアクチン線
維に変化が観察されなかったのに対して、野生型N-WASP
を発現する細胞では細胞内のストレスファイバーが破壊
され、激減し、そのかわりに表層部にアクチンフィラメ
ントが集積した。このアクチンフィラメントがN-WASPと
明瞭に共存したことはN-WASPが膜周辺で表層アクチン線
維の制御および維持に直接関与していることを強く示唆
する。即ちPHドメイン内にミスセンス変異を導入したC3
8Wコンストラクトを発現した細胞では、N-WASPがほとん
どすべて核に集積するようになったことは、N-WASPのPH
ドメインが膜へのアンカーとして機能していることを示
唆している。
【0050】N-WASPは本発明者によりAsh/Grb2に結合す
る蛋白質として発見されたのであり、このことはチロシ
ンキナーゼ系のシグナル伝達にN-WASPが関与しているこ
とを意味する。その知見を以下に示す。上皮増殖因子
(EGF)の効果を調べるため、N-WASP発現細胞をまず無
血清状態におくと、ほとんどのN-WASPは細胞膜に局在
し、核には存在しなかった。ついでEGFで刺激すると、
多くのアクチンフィラメントの糸状突起(マイクロスパ
イク)が見られた。マイクロスパイクの形成は、N-WASP
発現細胞にのみ観察され、まわりのN-WASP非発現細胞で
は見られなかった。図9Cに示すように、COS細胞のEGF処
理により、内在性のEGFレセプターのチロシンリン酸化
とレセプターのN-WASPとの会合がおこることがわかる。
これに反して、N-WASPはEGF処理には依存せず、Ash/Grb
2と免疫学的に共沈殿するので、Ash/Grb2はアダプター
としてN-WASPをEGFレセプターに引き寄せるべく機能し
ていることが示唆される。またマイクロスパイク形成に
低分子量G蛋白質の1つCdc42/Racが関与していることが
知られており、N-WASP中にCdc42/Racとの結合部位(GBD
/CRIBモチーフ)が存在することから、N-WASPはCdc42の
直接の標的分子であることが推測される。
【0051】次にN-WASPのPHドメインはPIP2と結合する
こと、またC38Wミスセンス変異はこの結合能を減少させ
ることを記述する。いくつかのPHドメインがPIP2と会合
することにより分子類を膜に集めるものと考えられてい
る。N-WASPのPHドメインやC38W不活性ミュータントがPI
P2と会合するかどうか、抗-PIP2抗体を用いて試験し
た。野生型N-WASPのPHドメインを含むG-PH組換え蛋白質
がGSTのみと比較してPIP2とずっと多く結合できるのに
対して、G-PH-C38WのPIP2との結合はより弱いことがわ
かる(図10A)。G-PHとG-PH-C38Wとの間に電荷に差はな
いので(システインもトリプトファンも電荷がない)、
静電的な変化によってこの減弱が引き起こされたわけで
はない。これらの結果はN-WASPがPHドメインとPIP2間の
相互作用でもって膜に引き寄せられていることを示して
いる。
【0052】ついで本発明者らは、PHドメインのホスホ
リピド類との結合能をいくつかのホスホリピド間で比較
した。即ち、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチ
ジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(P
I)、ホスファチジルイノシトール-4-リン酸(PIP)そ
してPIP2である。これら脂質類を96穴プレートにコート
した上で、GST融合蛋白質をウエルに加え培養した。結
合蛋白量を抗GST抗体を用いて測定した。図10Bに示すよ
うにG-PH蛋白質はPIP2と強く結合し、PIPとの結合は弱
かったことは、PHドメインのPIP2への特異的結合にはポ
リリン酸化された頭部イノシトール残基が重要であるこ
とを示す。
【0053】次にN-WASPのアクチンへの作用を分子レベ
ルで検討するため、アクチン結合活性を持つ組換えG-VC
A蛋白質を用いてアクチン重合への効果を調べた。精製
アクチンをG-VCA蛋白質と混ぜ、これらに50mM KCl、1mM
MgCl2そして1mM ATPを加えて重合する状態においた。
室温でインキュベートし、超遠心によりF-アクチン(沈
殿)とG-アクチン(上清)とに分離した。図11Aに示す
ように、G-VCA蛋白の添加により、用量依存的にG-アク
チンの量が増加した。これに対して、コントロールのGS
T蛋白質は何の作用もなかった。ついでG-VCA蛋白質がア
クチンフィラメントを脱重合しうるかを調べた。アクチ
ンを上記のように重合させた後、G-VCA蛋白質を加えて
インキュベートした。G-VCAの添加によりG-アクチンが
きわめて増加したことはG-VCA蛋白質はアクチンフィラ
メントを脱重合しうることを示すものである。アクチン
修飾蛋白質のいくつかの活性はPIP2により制御されてい
ることが知られている。そこでPIP2の、G-VCA蛋白質の
アクチン脱重合活性への作用を検討したところ、PIP2
この活性に影響を与えなかったことは、PIP2はG-VCAに
結合はせず、N-WASPにおいてはアクチン脱重合活性は別
のメカニズムで制御されていることが示唆される。
【0054】N-WASPのアクチンフィラメントへの結合の
実態を明らかにするため、天然の(変性のない)N-WASP
を牛脳より硫酸アンモニウム沈殿とQ-Fast Flow、Blue-
Sepharose、Superdex200、カルモジュリン-セファロー
スやヘパリン-セファロースのような担体を充填したカ
ラムでクロマトグラフィーを行い精製し、調製した(図
12A)。
【0055】以上、本発明により、本発明者らがSH3-SH
2-SH3という構造を持ち、細胞内情報伝達系の受容体チ
ロシンキナーゼの下流に存在し、Rasの上流に存在する
ことを以前に明らかにしたAsh/Grb2のSH3に結合し、下
流に位置するシグナルたる蛋白質の1つとして、本発明
記載のN-WASPが存在することを牛脳抽出物より明らかに
することができた。AshはSH2ドメインを介してEGF、NG
F、Insulin受容体などのチロシンリン酸化部位、pY-X-N
-Xを認識して結合する。さらにSH3ドメインを介してRas
の活性化因子(Sos)やダイナミンに結合する。
【0056】N-WASPは、前記のようにヒトX-染色体連鎖
の免疫不全など(血小板減少、形態異常が主たる症状)
を生じるWiskott-Aldrich syndromeの原因遺伝子産物WA
SPと50%の相同性があり、前記のように脳にほぼ特異的
に豊富に発現・存在していることが本発明により明らか
にされた。N-WASPはアクチンと結合し、細胞骨格系を調
節する新しい蛋白で、チロシンキナーゼの下流にあり、
Ashと結合して突起形成などの細胞膜におけるアクチン
線維の調節にかかわっていることが本発明により明らか
となり、神経突起の形成、神経成長に関与していると考
えられる。また本発明者らは前記のようにWASP中にPHド
メインの存在することを見出した。PHドメインはPIP2
の結合活性を持つものとして見出され、現在90に及ぶ蛋
白中に認められるドメインである。そこでWASP中の、WA
S患者で変異が生じている部分のアミノ酸を患者と同じ
アミノ酸に変換したコンストラクトを作製し、PIP2の結
合活性を測ったところ、変異WASPでは著明な活性低下が
認められた。患者のアミノ酸配列の変異は主にPHドメイ
ンで生じており、PIP2との結合活性の低下が病気の原因
と考えられる。PIP2はそのもの自身で多くの蛋白の活性
を調節していると考えられるが、PHドメインがPIP2と結
合し、活性に必要な膜へのアンカーリングを行っている
と考えられる。非常に多くの情報伝達に関わる蛋白(た
とえばPLC、dynaminなど)にPHドメインが存在すること
からこの部位の異常で生じる病気は多数存在すると考え
られ、本発明のN-WASPの作用・活性の異常や、N-WASPの
欠乏ないし、N-WASPのアミノ酸残基変異、欠損などの個
々の原因に対応する疾患が、今後本発明に基づいて明ら
かにされてこよう。
【0057】
【実施例】以下に実施例・実験例・参考例をもって本発
明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定され
ない。
【0058】実施例1 牛脳サイトゾール画分からのAsh/Grb2結合タンパク質
(N-WASP)の精製 牛脳サイトゾール画分からAsh/Grb2結合タンパク質をア
フィニティー精製するため、三木らの方法(Miki, H. e
t al., J. Biol. Chem. 269, 5489, 1994)に従い、大
腸菌で発現したGST-Ash/Grb2融合タンパク質を用いた。
Ash/Grb2結合セファロースを充填したカラムに牛脳サイ
トゾール含有バッファーをアプライし、結合したAsh/Gr
b2結合タンパク質を同一のバッファーで溶出した。この
結合タンパク画分をソジウムドデシルサルフェイト−ポ
リアクリルアミド ゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離
し、さらにポリビニリデン ジフルオロード(PVDF)膜
にトランスファーした。ついでポンソー−S(Ponceau-
S)で染色後、65-kDa領域を切り取り、リジルエンドペ
プチターゼで処理した。酵素処理後のペプチド混合物を
逆相C18カラムにアプライし、0.1%トリフルオロ酢酸
中、O−60%のアセトニトリルの濃度勾配溶液で溶出
し、いくつかのペプチドを分画した。分画したペプチド
のいくつかをApplied Biosystems Peptide Sequencerで
アミノ酸配列を決定した。2つのペプチドのアミノ酸配
列はN-NPEITTNRFYGPQINNISHT-CとN-RRDPPNGPNLPMATV-C
であった。
【0059】実施例2 ウシN-WASPのcDNAクローニング 実施例1でアミノ酸配列を決定した後者のペプチド断片
に対応する合成ヌクレオチド5'-ACIGTIGCCATIGGIARRTTI
GG-3'(RはAおよびG)を作製し、牛脳λgt10、cDNAライ
ブラリー(大阪大学医学部 高井義美教授より恵与を受
けた)のスクリーニングのためのプローブとして用いる
ためT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて[γ-32P]AT
Pで標識した。プラークハイブリダイゼーションは前掲
のMolecularCloningに記載されている方法で行ったとこ
ろ、3種の陽性クローンを得た。陽性ファージクローン
に挿入されたDNA断片をEcoRIで切り出し、T4 DNAリガー
ゼを用いて、あらかじめEcoRI処理、脱リン酸化処理を
ほどこしたpBluescriptII KS(-)(Stratagene社)に連
結することによりサブクローニングした。3つのクロー
ンについて通常のジデオキシ法により塩基配列を決定し
た。1つのcDNAは505個のアミノ酸からなるオープンリ
ーディングフレームをコードしていた(図1)。
【0060】実施例3 ラットN-WASP mRNAのノザンハイブリダイゼイション分
析 ラットの種々の組織からグアニジウム法により全RNAを
抽出し、オリゴ(dT)セルロースカラムにより精製し、
ポリ(A)+RNA画分を得た。各サンプル1μgを電気泳動で
用い、ナイロン膜にトランスファーした。実施例2で得
たN-WASP cDNAを[α-32P]dCTPを用い、マルチプライ
ム法によりラベルしてプローブとして用いた。上記のサ
ンプルを分離した膜をこのプローブで一夜ハイブリダイ
ズした。2×SSC、0.1%SDSで室温での洗浄を軽く2回行
い、次に30分間同じ条件で洗った。更に、0.2×SSC、0.
1%SDSで室温で15分間2回洗った後、次第に温度を上
げ、最終的に65℃で15分間洗った。X線フィルム上で増
感紙を用いてオートラジオグラフィーを一夜行った。結
果を図7Aに示すが、6.5-kbのN-WASP mRNAが脳に強く発
現しており、また肺、心臓および結腸に弱く発現し、試
験した他の組織ではかすかに検出された。陽性のシグナ
ルが4-kb mRNAにおいてもまた検出され、睾丸で多く見
られた。この4-kb mRNAはN-WASP mRNAのオールタナティ
ブにスプライスされた産物に対応するものと考えられ
た。
【0061】実施例4 抗体作製 実施例1で得た精製N-WASPタンパク質を含むPVDF膜をウ
サギ皮下に埋め込み、免疫した。4週後に採血し、抗原
を含むPVDF膜でアフィニティー精製し、以下の実施例で
用いる抗N-WASP抗体とした。作製した本抗N-WASP抗体は
ウシ脳抽出物の65-kDaタンパク質と反応し、また実施例
7で作製した、大腸菌で発現したリコンビナントN-WASP
タンパク質や実施例8で作製した、COS7細胞で発現させ
たリコンビナントN-WASPタンパク質と反応した。
【0062】参考例1 抗-GST抗体は大腸菌で発現したリコンビナントGSTタン
パク質でウサギを免疫して採血後、硫安沈殿法により精
製して作製した。抗ダイナミン抗体は三木らの前掲の報
告に記述された方法で作製した。抗-アクチン抗体は千
葉大学理学部のT. Endo博士より恵与を受けた。抗-カル
モジュリン抗体はUpstate Biotechnology, Inc.より購
入した。抗PIP2抗体は松岡らにより報告された(Matsuo
ka, K. etal.,Science 239, 640, 1988)方法により作
製した。抗Ash/Grb2抗体は三木らの前掲の報告に記述さ
れた方法で作製した。
【0063】実施例5 ラットN-WASPのウエスタンブロット解析 ラットの種々の組織を40mMトリス/HCl(pH7.6)、150mM
NaCl、2mM EDTA、1%TritonX-100、0.1%SDS、0.5%デ
オキシコーレート、10%グリセロール、0.1mMフェニル
メチルスルフォニルフルオリド(PMSF)、0.1mMジイソ
プロピルフルオロホスフェイト(DIFP)、1mg/mlのアプ
ロチニン(Bayer社)および1mg/mlのロイペプチン(ペ
プチド研究所)の混合溶液中でホモジナイズし、105×g
で30分遠沈した。得られた上清画分をSDS-PAGEの処理を
行いPVDF膜に電気的にトランスファーした。ついで5%
のスキムミルクと1%牛血清アルブミンを含むリン酸緩
衝生食でブロックした後、膜を実施例4で作製した抗-N
-WASP抗体とインキュベートし、その後アルカリホスフ
ァターゼ-結合抗-ウサギIgG抗体(ヤギ、Promega社製)
とインキュベートした。検出は4-ニトロブル-テトラゾ
リウムクロリドおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル
-ホスフェートで行った。このウエスタンブロット分析
で、N-WASPタンパク質は脳に豊富に存在すること、肺と
心臓にかなり存在すること、そして他の組織ではほとん
ど陽性染色が見られないことが明らかにされた(図7
B)。この結果はノザンハイブリダイゼイション分析の
結果と一致するものであった。脳においては、N-WASPは
シナプトゾーム中でダイナミンと共濃縮(co-concentra
ted)されることがわかり、このことはN-WASPがシナプ
トゾームで何らかの役割を果たしていることが示唆され
た。
【0064】実施例6 N-WASPアミノ酸配列中のプロリンリッチ部分ペプチドの
化学合成 N-WASPタンパク質のSH3ドメインを介したAsh/Grb2との
結合部位を、様々のGST-Ash/Grb2欠失コンストラクトを
用いて決めたところ、SH2ドメインではなく、Ash/Grb2
のN末およびC末両方のSH3ドメインがN-WASPとの結合部
位であることが示された。これまでの研究で、SH3を介
するAsh/Grb2-結合タンパク質は、いくつかのプロリン
残基とそれに続くアルギニン残基からなるいくつものプ
ロリンリッチモチーフを持つことが知られている(Roza
kis-Adcock M. et al., Nature, 360, 689, 1992.およ
びMiki, H.の前掲論文)。N-WASPにはこの基準に適合す
る6つのモチーフが見られる(図1の下線部分)。この6
つのモチーフは2群に分類できる。1群は1つのPPPPRRで
あり、もう1群には5つのPPPPXR(X=S、AあるいはN)が
属する。PPPPRRモチーフはN-WASP N末端に位置するPHド
メインに存在し、また5つのPPPPXRモチーフはN-WASPの
プロリンリッチ領域に位置する。どのモチーフがAsh/Gr
b2との結合に重要であるかを調べるために2つのペプチ
ド断片、即ちQQQPPPPRRVT(5-15)およびRQAPPPPPPSR
(275-285)を化学的にApplied Biosystems社のペプチ
ド合成機を用いて合成した。
【0065】実施例7 N-WASPタンパク質および各種部分ペプチド断片の大腸菌
での発現 実施例1の操作で得たN-WASPの遺伝子構築物(construc
t)およびそれを用いて作製した遺伝子一部欠損コンス
トラクトとを大腸菌に組み換えて、目的のタンパク質N-
WASPおよび部分ペプチド断片をGSTとの融合体として発
現させた(図8A)。GST-Ash/Grb2は三木らの前掲の報告
の方法で構築した。N-WASPの種々のGST-融合タンパク質
は下記のように作製した。図1にボックスで示した領域
をコードするDNA断片、即ちPH、IQ、Pro、VCA、VC、Vを
合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、pBluescr
ipt中のN-WASP cDNAをテンプレートとしてPCR法により
増幅し、そしてpGEX 3-X(Pharmacia LKB Biotechnolog
y社製)のSma I siteに挿入した。このリコンビナント
プラスミドを大腸菌XL-1 Blue株に形質転換し、アンピ
シリンで選択することにより、種々のGST-融合蛋白を発
現する形質転換体を得た。形質転換体をLB培地で一晩培
養し、翌日100倍希釈してLB培地に植え継ぎ、更に3時間
培養した。終濃度1mMになるようにIPTGを加え、1.5時間
培養して、目的のGST-融合タンパクを発現させた。タン
パク発現菌を遠沈により集め、菌体を大腸菌溶菌緩衝液
(40mM トリス/HCl(pH7.5)5mM EDTA, 0.1mM PMSF, 0.1m
M DIFPおよび1%Triton X-100混合液)に懸濁させた。
激しく超音波破砕を行ったのち、105×g、30分の遠沈を
行った。得られた上清はGST融合タンパクを含む粗抽出
液として蓄えた。これら蓄積粗抽出液はグルタチオン-
アガロースビーズで精製して実験に使用した。即ち、大
腸菌で発現した様々のGST-融合タンパク質はグルタチオ
ン-アガロースビーズと混ぜ、同じバッファーで洗うこ
とにより、GST-融合タンパク質のみをビーズ上に不動化
して、PC12細胞や脳ホモジネートなどのタンパク質サン
プルと混ぜた。ついでバッファーで洗浄後、このビーズ
をSDSサンプルバッファー中で浮遊させた後、SDS-PAGE
でタンパクを分離し、ウエスタンブロット分析を行っ
た。
【0066】実施例8 N-WASPおよびその変異体のCOS 7細胞での発現 N-WASP全長およびVCA部位欠損変異体作製のための遺伝
子コンストラクトは次のように調製した。タンパク発現
領域をコードするDNA断片は、GST-融合コンストラクト
の生産に用いたプライマーを用いて、pBluescript中のN
-WASP cDNAを鋳型にしてPCRにより増幅した。これらDNA
断片を一旦pBluescriptのHindIIIサイトにサブクローニ
ングした後、それをXho-IとEcoRIで切り出し、pcDL-SR
αII哺乳類発現ベクターにライゲートした。C38Wコンス
トラクトについては、変異オリゴヌクレオチドプライマ
ーを用いてsequential PCRによりTGTをTGGに(38位シス
テインをトリプトファンに)ポイントミューテーション
を導入し、ついでコーディング領域の全長を増幅し、C3
8W変異のN-WASP cDNAをまず作製し、これを鋳型にして
同様にpcDL-SRαIIベクターにライゲートした。これら
種々のリコンビナントプラスミドを大腸菌に形質転換し
て導入し、得られた形質転換体を10mlのLB培地で一晩培
養し、アルカリ溶解法とポリエチレングリコール沈殿法
によりトランスフェクション用のリコンビナントプラス
ミドを調製した。20μgずつ各プラスミドを1×107の細
胞と混ぜ合わせ、この混合物を230V、960μFでエレクト
ロポーレーションの処置を行った(Bio-Rad社製)。こ
の細胞を再度プレートにまき、10%牛胎児血清を補った
ダルベッコーズモディファイドイーグル培養液で培養し
た。48ないし72時間後、細胞はウエスタンブロット分析
および間接蛍光抗体法により解析した。全長を発現させ
た細胞に関してはエレクトロポレーションの36時間後
に、血清を含まない培養液にかえ、15時間後にEGF(100
ng/ml、Gibco)処理した。処理しないものも同様に解析
した。
【0067】実施例9 変性のない状態でのN-WASPの精製 牛脳サイトゾール画分を45%飽和硫安で沈殿した。沈殿
を10%グリセロール(バッファーA)を含む20mMトリス/
塩酸(pH7.6)に溶解し、バッファーAで透析した。この
サンプルをHiload Q-セファロース高速カラムにのせ、0
から1Mの直線濃度勾配のNaClで溶出した。N-WASPは抗-N
-WASP抗体で検出した。N-WASPは約0.6MのNaClで溶出し
た。この画分を集め、10%グリセロールを含む20mMヘペ
ス/NaOH(pH6.8)(バッファーB)で2倍に希釈してBlue
セファロースにアプライした。そして0から2MのNaClを
含むバッファーBで溶出した。N-WASPは1.2M NaClで溶出
した。ついでこのようにして得たサンプルを150mM NaCl
を含むバッファーAで平衡化したHiload Superdex200に
アプライした。溶出したN-WASP画分をバッファーAに対
して透析し、Ca2+が1mMになるように加えたあとカルモ
ジュリン-セファロース(Sigma社製)カラムにのせた。
それから2mM EGTAを含むバッファーAで溶出を行い、得
られたサンプルをヘパリン-セファロースにかけ、0から
1Mの勾配のNaClを含むバッファーBで溶出し、N-WASP標
品とした。
【0068】
【発明の効果】本発明に示した如く、本発明のN-WASP
は、生体の外的刺激に対する細胞内情報伝達系において
きわめて重要な生物活性を持つ分子であること、細胞骨
格形成におけるアクチンの重合、脱重合の制御にN-WASP
が関与していることが明らかにされた。N-WASPは脳をは
じめとする生体各組織において、イノシトールリン脂質
代謝、細胞増殖、細胞膜輸送、細胞運動、細胞の走化
性、細胞の形態・機能の維持、転写因子としての機能な
どに関与しているものと考えられる。たとえば神経終末
での顆粒の輸送・分泌に必要とされるアクチン線維の再
構成(配列)を、N-WASPはチロシンキナーゼなどを介す
る外来シグナルに応答して、制御しているものと考えら
れる。細胞内の多岐にわたる生命現象に関与するN-WASP
に作用してN-WASPの機能を修飾するような分子や薬物を
探索することにより新たなジャンルの医薬を創製するこ
とが可能となろう。
【0069】
【配列表】
配列番号1 配列の長さ:1518 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA to mRNA 起源 生物名:ボスタウルス 直接の起源 ライブラリー名:ウシ脳λgt10 cDNAライブラリー 配列 ATG AGC TCC GGC CAG CAG CAG CCG CCG CCG CCG CGG AGG GTC ACC AAC 48 Met Ser Ser Gly Gln Gln Gln Pro Pro Pro Pro Arg Arg Val Thr Asn 10 GTG GGG TCC CTG CTG CTC ACC CCG CAG GAG AAC GAG TCC CTC TTC ACC 96 Val Gly Ser Leu Leu Leu Thr Pro Gln Glu Asn Glu Ser Leu Phe Thr 20 30 TTC CTC GGC AAG AAA TGT GTG ACC ATG TCT TCG GCA GTG GTA CAG TTA 144 Phe Leu Gly Lys Lys Cys Val Thr Met Ser Ser Ala Val Val Gln Leu 40 TAT GCA GCA GAT CGG AAC TGT ATG TGG TCA AAG AAG TGC AGT GGT GTT 192 Tyr Ala Ala Asp Arg Asn Cys Met Trp Ser Lys Lys Cys Ser Gly Val 50 60 GCT TGT CTT GTT AAG GAC AAT CCA CAG AGA TCT TAT TTT TTA AGA ATA 240 Ala Cys Leu Val Lys Asp Asn Pro Gln Arg Ser Tyr Phe Leu Arg Ile 70 80 TTT GAT ATC AAG GAT GGG AAA CTA TTG TGG GAA CAA GAG CTA TAC AAT 288 Phe Asp Ile Lys Asp Gly Lys Leu Leu Trp Glu Gln Glu Leu Tyr Asn 90 AAC TTT GTA TAT AAT AGT CCT AGA GGA TAT TTT CAT ACC TTT GCT GGA 336 Asn Phe Val Tyr Asn Ser Pro Arg Gly Tyr Phe His Thr Phe Ala Gly 100 110 GAT ACC TGT CAA GTT GCT CTT AAT TTT GCC AAT GAA GAA GAA GCA AAA 384 Asp Thr Cys Gln Val Ala Leu Asn Phe Ala Asn Glu Glu Glu Ala Lys 120 AAA TTC CGA AAA GCA GTT ACA GAC TTG TTG GGA CGA CGA CAA AGG AAA 432 Lys Phe Arg Lys Ala Val Thr Asp Leu Leu Gly Arg Arg Gln Arg Lys 130 140 TCT GAG AAA AGA CGA GAC CCC CCA AAT GGT CCT AAT CTA CCC ATG GCA 480 Ser Glu Lys Arg Arg Asp Pro Pro Asn Gly Pro Asn Leu Pro Met Ala 150 160 ACA GTT GAC ATA AAA AAT CCA GAA ATT ACA ACA AAT AGA TTT TAT GGT 528 Thr Val Asp Ile Lys Asn Pro Glu Ile Thr Thr Asn Arg Phe Tyr Gly 170 CCG CAA ATC AAC AAC ATC TCC CAT ACC AAA GAA AAG AAA AAA GGA AAA 576 Pro Gln Ile Asn Asn Ile Ser His Thr Lys Glu Lys Lys Lys Gly Lys 180 190 GCT AAA AAG AAG AGG TTA ACT AAG GCA GAT ATT GGA ACA CCA AGC AAT 624 Ala Lys Lys Lys Arg Leu Thr Lys Ala Asp Ile Gly Thr Pro Ser Asn 200 TTC CAA CAC ATT GGA CAT GTG GGT TGG GAT CCG AAT ACT GGC TTT GAT 672 Phe Gln His Ile Gly His Val Gly Trp Asp Pro Asn Thr Gly Phe Asp 210 220 CTG AAT AAT TTG GAT CCA GAA TTG AAG AAT CTT TTT GAT ATG TGT GGA 720 Leu Asn Asn Leu Asp Pro Glu Leu Lys Asn Leu Phe Asp Met Cys Gly 230 240 ATC TCA GAG GCA CAA CTT AAA GAC AGA GAA ACA TCA AAA GTT ATA TAT 768 Ile Ser Glu Ala Gln Leu Lys Asp Arg Glu Thr Ser Lys Val Ile Tyr 250 GAC TTC ATT GAA AAA ACA GGA GGT GTT GAA GCT GTT AAA AAT GAA CTG 816 Asp Phe Ile Glu Lys Thr Gly Gly Val Glu Ala Val Lys Asn Glu Leu 260 270 CGA AGG CAA GCA CCA CCA CCT CCA CCA CCA TCA AGG GGA GGG CCG CCC 864 Arg Arg Gln Ala Pro Pro Pro Pro Pro Pro Ser Arg Gly Gly Pro Pro 280 CCT CCT CCC CCG CCT CCA CAT AGC TCG GGC CCT CCT CCC CCT CCT GCC 912 Pro Pro Pro Pro Pro Pro His Ser Ser Gly Pro Pro Pro Pro Pro Ala 290 300 AGG GGA AGA GGG GCT CCT CCT CCA CCA CCT TCA AGA GCT CCC ACA GCT 960 Arg Gly Arg Gly Ala Pro Pro Pro Pro Pro Ser Arg Ala Pro Thr Ala 310 320 GCA CCG CCA CCA CCG CCT CCA TCC AGG CCA GGT GTA GGA GCC CCT CCA 1008 Ala Pro Pro Pro Pro Pro Pro Ser Arg Pro Gly Val Gly Ala Pro Pro 330 CCA CCG CCA AAC AGG ATG TAC CCT CCT CCA CTT CCA GCT CTT CCC TCC 1056 Pro Pro Pro Asn Arg Met Tyr Pro Pro Pro Leu Pro Ala Leu Pro Ser 340 350 TCA GCA CCT TCA GGG CCT CCA CCA CCA CCT CCA CCT CTG TCA GTG AGC 1104 Ser Ala Pro Ser Gly Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Leu Ser Val Ser 360 GGG TCA GTG GCA CCA CCA CCT CCG CCG CCA CCT CCA CCT CCA CCA GGG 1152 Gly Ser Val Ala Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Pro Gly 370 380 CCA CCA CCT CCC CCT GGC CTC CCT TCT GAT GGT GAC CAC CAA GTT CCA 1200 Pro Pro Pro Pro Pro Gly Leu Pro Ser Asp Gly Asp His Gln Val Pro 390 400 ACT CCT GCA GGA AGC AAA GCA GCT CTT TTA GAT CAA ATT AGA GAG GGT 1248 Thr Pro Ala Gly Ser Lys Ala Ala Leu Leu Asp Gln Ile Arg Glu Gly 410 GCT CAG CTA AAA AAA GTG GAA CAG AAC AGT CGG CCG GTG TCC TGC TCT 1296 Ala Gln Leu Lys Lys Val Glu Gln Asn Ser Arg Pro Val Ser Cys Ser 420 430 GGA AGG GAT GCA CTT TTA GAC CAG ATA CGA CAG GGT ATT CAA CTG AAA 1344 Gly Arg Asp Ala Leu Leu Asp Gln Ile Arg Gln Gly Ile Gln Leu Lys 440 TCT GTA ACT GAT GCC CCA GAG TCT ACA CCA CCA GCA CCT GCA CCC ACT 1392 Ser Val Thr Asp Ala Pro Glu Ser Thr Pro Pro Ala Pro Ala Pro Thr 450 460 TCA GGA ATT GTA GGT GCA TTA ATG GAA GTG ATG CAG AAG AGG AGC AAA 1440 Ser Gly Ile Val Gly Ala Leu Met Glu Val Met Gln Lys Arg Ser Lys 470 480 GCC ATT CAT TCT TCA GAC GAA GAT GAG GAT GAA GAT GAT GAT GAA GAT 1488 Ala Ile His Ser Ser Asp Glu Asp Glu Asp Glu Asp Asp Asp Glu Asp 490 TTT GAG GAT GAT GAT GAA TGG GAA GAC TGA 1518 Phe Glu Asp Asp Asp Glu Trp Glu Asp *** 500
【図面の簡単な説明】
【図1】N-WASPのアミノ酸配列の整列図で、ウシN-WASP
とヒトWASPとの比較を示し、同一残基は太字で示す。
【図2】PHドメインの配列の整列図を示し、類似の保存
残基は太字で示す。
【図3】IQ-モチーフの配列比較を示す。
【図4】バープロリン相同領域の配列比較を示す。
【図5】コフィリンファミリー蛋白質の高度に保存され
た領域の配列比較を示す。
【図6】GBD/CRIBモチーフの配列比較を示す。
【図7】ラットの各組織のN-WASP mRNAおよび蛋白質の
発現分布を示す。Aはノザンハイブリダイゼーション解
析を示す。Bはウエスタンブロット分析を示す。
【図8】N-WASPとAsh/Grb2、カルモジュリンおよびアク
チンと特異領域での会合を示す図。 A 本発明で用いた組換えGST融合蛋白質を示す。 B N-WASPのいくつかの欠損組換え蛋白質に結合するPC12
ライセート蛋白質のSDS-PAGEでの解析を示す図。 C アクチンとN-WASPとのインビボ(左パネル)およびイ
ンビトロ(右パネル)での会合を示す図。 D カルモジュリンとN-WASPとのインビボ(左パネル)お
よびインビトロ(右パネル)での会合を示す図。
【図9】N-WASPとそのミュータントのCOS7細胞での過剰
発現を示す写真(図にかわる)。 A 全長、C38WあるいはΔVCAコンストラクトをトランス
フェクトされた細胞の間接蛍光抗体法による解析を示
す。N-WASPのFITCシグナルを上段、アクチンフィラメン
トのローダミンシグナルを下段に示す。 B 全長N-WASP発現細胞への血清除去およびEGF刺激の影
響を示す写真(図にかわる)。上段はFITCシグナル、下
段はローダミンシグナルを示す。 C N-WASPとEGFレセプターとのAsh/Grb2を介するEGF-依
存会合をウエスタンブロットにより示す図。
【図10】N-WASPのPHドメインがPIP2と結合することを
示す図。 A PIP2のG-PHへの結合とC38W点変異の効果を示す図。 B G-PHのPIP2との特異的結合を示す図。
【図11】G-VCAによるアクチンの脱重合を示す図。 A アクチンフィラメントのG-VCAによる用量依存的脱重
合を示す図。 B G-VCAによるアクチン脱重合の時間経過を示す図。
【図12】N-WASPの分離・精製の操作の各ステップで精
製度が上がることを示す図。
【図13】pGEX-3Xベクターを用いての発現コンストラ
クトを構築する各段階を示す概略図。
【図14】pSRαベクターを用いての発現コンストラク
トを構築する各段階を示す概略図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12P 21/02 C12P 21/08 21/08 C12Q 1/68 A C12Q 1/68 C12N 15/00 ZNAA // A61K 38/00 AAA A61K 37/02 AAA ABB ABB ABN ABN ABY ABY ACD ACD ACV ACV ADU ADU AED AED (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12N 15/09 ZNA C12R 1:91) (C12P 21/02 C12R 1:19)

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号1に記載のアミノ酸配列の全部
    を含む蛋白質ウシN-Wiskott-Aldrich syndrome protein
    (以下N-WASP)、そのホモローグ、またはアミノ酸配列
    の一部を含むその部分ペプチドフラグメントまたはその
    フラグメントのホモローグ。
  2. 【請求項2】 配列番号1に記載のアミノ酸配列のう
    ち、1もしくは複数のアミノ酸が、付加、欠失もしくは
    置換されたアミノ酸配列の全部を含む蛋白質N-WASP、そ
    のホモローグ、または該アミノ酸配列の一部を含むその
    部分ペプチドフラグメントまたはそのフラグメントのホ
    モローグ。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載されたアミノ酸配列の全
    部または一部の部分ペプチドフラグメントをコードする
    DNA断片。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載されたアミノ酸配列の全
    部または一部の部分ペプチドフラグメントをコードする
    DNA断片。
  5. 【請求項5】 配列番号1に記載の塩基配列を有する請
    求項3の、アミノ酸配列の全部または一部の部分ペプチ
    ドフラグメントをコードするDNA断片。
  6. 【請求項6】 請求項3、4または5に記載されたDNA
    断片を含む複製または発現ベクター。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載された複製または発現ベ
    クターで形質転換された宿主細胞。
  8. 【請求項8】 配列番号1に記載のアミノ酸配列または
    その1もしくは複数の複数のアミノ酸が、付加、欠失も
    しくは置換されたアミノ酸配列の全部を含む蛋白質また
    はその部分ペプチドフラグメントあるいはそれらのホモ
    ローグを発現させるための条件下で、請求項7に記載さ
    れた宿主細胞を培養し、発現産物を回収することからな
    る該蛋白質または部分ペプチドフラグメントの製造方
    法。
  9. 【請求項9】 請求項1または2に記載された蛋白質ま
    たは部分ペプチドフラグメントと結合する抗体。
  10. 【請求項10】 請求項3、4または5に記載されたDN
    A断片の全部または一部、あるいはその作用をかえない
    程度に塩基配列を変換されたDNA断片を含むものからな
    るDNAプローブ。
  11. 【請求項11】 請求項3、4または5に記載されたDN
    A断片の全部または一部、あるいはその作用をかえない
    程度に塩基配列を変換されたDNA断片を含むものからな
    るDNAプライマー。
  12. 【請求項12】 請求項1または2に記載された蛋白質
    または部分ペプチドフラグメント、あるいは請求項9に
    記載された抗体、あるいは請求項3、4または5に記載
    されたDNA断片、および薬学的に許容される塩、賦形剤
    および/または担体を含有することを特徴とする薬学的
    組成物。
  13. 【請求項13】 請求項10または11に記載されたプ
    ローブまたはプライマーを被験DNAとハイブリダイズさ
    せることを特徴とするN-WASPの遺伝子解析方法。
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