JPH1084981A - 乳腺発現用ベクター - Google Patents

乳腺発現用ベクター

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JPH1084981A
JPH1084981A JP9215610A JP21561097A JPH1084981A JP H1084981 A JPH1084981 A JP H1084981A JP 9215610 A JP9215610 A JP 9215610A JP 21561097 A JP21561097 A JP 21561097A JP H1084981 A JPH1084981 A JP H1084981A
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gene
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yac
mammary gland
dna
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JP9215610A
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English (en)
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Yoshihiro Fujiwara
義博 藤原
Masami Miwa
雅美 三輪
Riichi Takahashi
利一 高橋
Masumi Hirabayashi
真澄 平林
Takashige Suzuki
高成 鈴木
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Y S NEW TECHNOL KENKYUSHO KK
Original Assignee
Y S NEW TECHNOL KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 乳腺において外来遺伝子を発現し、乳汁中に
有用物質生産を行う家畜を作出するにあたり、導入した
遺伝子を該家畜の乳腺で確実に発現させる発現ベクター
の提供。 【解決手段】 乳蛋白質遺伝子プロモーターを含む広い
範囲のDNA領域が挿入された酵母人工染色体(YA
C)からなる乳腺発現用ベクターを用いる。本発明によ
り、導入した遺伝子を動物の乳腺で確実に発現させ、所
望する有用蛋白質を生産する動物を効率的に作出するこ
とができる。このため、乳汁中に有用物質を生産するト
ランスジェニック動物の作出費用を大幅に低減すること
ができ、安価な作出方法を提供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外来遺伝子を導入
した動物(トランスジェニック動物)の乳腺において該
遺伝子を発現させ、乳汁中に該遺伝子で規定される蛋白
質を生産する動物を作出する場合に使用する乳腺発現用
ベクターに関する。特に、本発明は、乳腺特異的に発現
する乳蛋白遺伝子の制御領域を含む広範囲のDNA領域
を酵母人工染色体(YAC) ベクターに挿入して作製された
乳腺発現用ベクターに関する。さらに詳しくは、YAC
ベクターに挿入された乳蛋白遺伝子の広範囲のDNA領
域が、約 210kbのヒトαラクトアルブミン遺伝子の広範
囲領域のゲノムDNAを制御領域とし、YACベクター
の右アームが、pBR322を骨格として作製されたベクター
pYAC4(ATCC No.67379)の右アーム、及び左アームが転換
ベクター pCGS990(ATCC No.77417) から構築されるYA
Cベクターである乳腺発現用ベクターに関する。本発明
により提供される発現ベクターは、増幅エレメントを持
ち、酵母内で目的の乳腺発現用ベクターを増幅させるこ
とができるため、動物に導入する目的遺伝子の発現ベク
ターを容易に調製することが出来る。本発現ベクターを
用いて導入した目的の遺伝子を、乳腺において確実に発
現させることができるため、乳汁中に目的とする有用物
質を生産するトランスジェニック動物を効率的に作出す
ることができる。
【0002】
【従来の技術】遺伝子操作技術の確立により、過去には
得られなかった稀少なヒト蛋白質を組換え微生物や組換
え動物細胞で生産した医薬品(バイオ医薬品)が開発さ
れ、その優れた有効性が医療の場で認められている。し
かし、バイオ医薬品の製造では、導入遺伝子で規定され
た目的の蛋白質を高い効率で生産することが難しく、製
造費用が高額になるという欠点がある。そこで、哺乳動
物の有する優れた蛋白質合成能力を活用して乳汁中にバ
イオ医薬品等の有用蛋白質を効率的に生産する技術(ト
ランスジェニックミルク)に関する開発研究が行われて
いる。例えば、Bio/Technology 9, 830-834 (1991)には
ヒツジ乳汁中へのヒト・α1-アンチトリプシンの生産、
WO 公開94/05796号公報にはブタ乳汁中へのヒト・プロ
テインCの生産、Bio/Technology 12, 699-702 (1994)
にはヤギ乳汁中へのヒト・tPA の生産等が報告されてい
る。これらの動物では乳汁中で有用物質を効率的に生産
(高濃度生産) することができるため、非常に安価な有
用物質の製造方法を提供することが期待されている。
【0003】しかし、これらのトランスジェニックミル
クを生産する家畜の作出にあたっては、克服すべき課題
も残されている。すなわち、家畜での遺伝子の導入効率
がブタやヒツジで約1%、ウシでは 0.1%と低い。更
に、遺伝子が例え導入されても、導入した遺伝子の発現
を認める個体はその一部しかない。低い導入効率に加
え、遺伝子を導入された動物の一部しか導入した遺伝子
を発現しないことが、トランスジェニックミルクを生産
する家畜の作出をさらに難しくしている。又、トランス
ジェニックミルクを生産する家畜の選抜においては、乳
汁(トランスジェニックミルク)を採取して導入した遺
伝子の発現を確認しなければならない。従って、性成熟
し、出産して搾乳ができるまでは、 トランスジェニック
ミルクを生産しない家畜も飼育しなければならない。家
畜が成熟、妊娠、出産して泌乳するまでの期間は、作出
したトランスジェニック動物 (G0のファウンダー) が雌
の場合でも、出生してからブタで約1年、ウシでは約2
年を要する。ファウンダーが雄の場合ではさらにもう一
世代を経て雌のトランスジェニック個体を得る期間が必
要となる。小型の実験動物のマウスやラットと異なり、
長い期間の飼育をしなければならず、作出したトランス
ジェニック家畜の大半を占める導入した遺伝子を発現し
ない家畜のこの間の飼育費用は多大である。低い作出効
率に加え、導入した遺伝子を発現しない家畜の飼育費用
が所望する家畜の作出費用を莫大なものにしている。
【0004】この様にトランスジェニックミルク生産の
ための家畜の作出に莫大な費用を要することが、有用物
質の生産における安価な生産費用というトランスジェニ
ックミルクのメリットを活かし得なくすることが懸念さ
れる。本発明者らは、すでに導入した遺伝子を発現しな
い動物を、導入した遺伝子の発現を評価する泌乳期まで
飼育することなく早期に淘汰する方法(特願平7-32805
9) を開発して改善を図ることができた。しかし、導入
した遺伝子が所望した発現を示す確率が低いことは依然
として解決できていない。そこで、導入した遺伝子の発
現する確率を高めて、所望する発現を示す動物を高い効
率で作出する方法の開発が切望されている。すなわち、
導入した遺伝子を確実に発現させることができる発現ベ
クターの開発が望まれる。導入した遺伝子を乳腺におい
て確実に発現させることができる発現ベクターが開発で
きれば、トランスジェニックミルクを生産する家畜の作
出費用を大幅に低減することができるため安価な作出方
法を提供することができ、トランスジェニックミルクに
よる有用物質の生産方法をすぐれた方法とすることがで
きる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】家畜に導入した遺伝子
を確実に乳腺で発現させる手段を確立するためには、導
入した遺伝子を乳腺において確実に発現させることがで
きるベクターを作製する必要がある。従って、本発明
は、乳腺において導入した遺伝子を確実に発現させるこ
とができる、乳腺発現用ベクターを提供することを課題
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、外来遺伝子を
導入した動物の乳腺において該遺伝子を発現させ、乳汁
中で該遺伝子で規定される蛋白質を生産する動物を作出
する場合に使用する乳腺発現用ベクターにおいて、乳腺
特異的に発現する乳蛋白遺伝子の制御領域を含む広範囲
のDNA領域を酵母人工染色体(YAC) ベクターに挿入し
て作製したものであることを特徴とする乳腺発現用ベク
ターに関する。詳しくは、YACベクターに挿入された
乳蛋白遺伝子の広範囲のDNA領域が、約 210kbのヒト
αラクトアルブミン遺伝子の広範囲領域のゲノムDNA
を制御領域とし、YACベクターの右アームが、pBR322
を骨格として作製されたベクターpYAC4の右アー
ム、及び左アームが転換ベクターpCGS990 から構築され
るYACベクターである乳腺発現用ベクターに関する。
本発明では、約 210kbのヒトαラクトアルブミン遺伝子
の広範囲領域のゲノムDNAのヒトαラクトアルブミン
の構造遺伝子領域をヒト成長ホルモンの構造遺伝子、そ
の他の遺伝子に置換してもよい。本発明により提供され
る発現ベクターは、増幅エレメントを持ち、酵母内で目
的の乳腺発現用ベクターを増幅させることができるた
め、動物に導入する目的の遺伝子発現ベクターを容易に
調製することが出来る。本発現ベクターを用いて導入し
た目的の遺伝子を、乳腺において確実に発現させること
ができるため、乳汁中で目的とする有用物質を生産する
トランスジェニック動物を効率的に作出することができ
る。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明における導入した遺伝子を
乳腺で発現させ、乳汁中に該遺伝子により規定される蛋
白質を生産させるための発現ベクターの構築は次の様に
して実施できる。まず、乳腺において導入した遺伝子を
発現させることは、乳腺特異的に発現する乳蛋白質遺伝
子のプロモーターの支配下で導入遺伝子を発現させるこ
とにより実施できる。例えば、ヒトαラクトアルブミン
遺伝子、ヒトカゼイン(α,β)遺伝子、ウシαラクト
アルブミン遺伝子、ウシβラクトグロブリン遺伝子、ウ
シカゼイン(α,β)遺伝子のプロモーターや、ヤギ、
ヒツジ、ブタ等の同様の乳蛋白質遺伝子のプロモーター
等があげられる。しかし、これらプロモーターの支配下
での発現は、 mRNAの安定性に関る3'側の非翻訳領域
や導入した遺伝子におけるイントロン部位の存否やさら
に導入された遺伝子の染色体上の導入位置(位置効果に
よる発現の抑制) 等により発現の可否あるいは強弱が影
響されることが報告されている。更に、導入した遺伝子
の発現を支配するプロモーターの活力を制御するエンハ
ンサー、MAR(matrix attached regions) 、SCS
(specialized chromatin sequences)、LCR (locus c
ontrol region) 等の種々のDNA配列が関与して、導
入した遺伝子の発現能力に影響を及ぼすことが報告され
ている (J. Biotechnology 34, 269-287 (1994))。
【0008】一方、トランスジェニック動物において高
い確率で導入した遺伝子を発現させる方法として上述の
各種発現制御配列を含む広範囲のDNA領域を利用する
方法が提案されている (J. Biotechnology 34, 269-287
(1994))。具体的には、数百キロベースのDNA領域を
導入することができる酵母の人工染色体(YAC) の利用が
有効であることが提案されている (Proc. Natil. Acad.
Sci. USA, 90, 7909-7911 (1993))。又、 WO 公開94/2
3049号公報にはβアミロイド前駆蛋白質遺伝子の広範囲
領域を挿入した酵母人工染色体DNA (YAC−DN
A) を用いたアルツハイマー病の疾患モデルマウスの作
出方法が報告されている。しかしながら、乳蛋白質遺伝
子の広範囲領域を挿入したYAC−DNAを動物個体に
導入して乳腺で発現させたトランスジェニック動物で期
待どおりの発現が得られるか否かに関する報告はない。
【0009】本発明者らは、ヒト・ゲノムDNAのYA
Cライブラリーより調製した乳蛋白質遺伝子の広範囲の
DNA領域が挿入されたYAC−DNAをラットの前核
期受精卵に導入して作出したトランスジェニックラット
の乳腺において、導入した遺伝子が確実に発現し、乳汁
中に期待した量の蛋白質が生産されることを確認して有
効な発現ベクターを構築した。例えば、ヒトαラクトア
ルブミン遺伝子の広範囲の領域のゲノムDNAを導入し
て作出したトランスジェニックラットでは、ヒトαラク
トアルブミンを乳汁中に期待どおりに生産する個体が確
実に得られることを確認した。本発明の発現ベクターを
用いれば、構造遺伝子部位を所望する有用蛋白質の遺伝
子に置換することにより、所望の有用蛋白質を乳汁中に
容易に生産することができる。例えば構造遺伝子部位を
ヒト成長ホルモンの構造遺伝子に置換することによって
ヒト成長ホルモンを乳汁中に容易に生産することができ
る。又、遺伝子の発現を直接支配するプロモーター部位
をヒトαラクトアルブミン遺伝子プロモーターからウシ
αS1カゼイン遺伝子プロモーター等のさらに強力な乳
蛋白質遺伝子のプロモーターに置換することにより、さ
らに高い生産能力を得ることができる。
【0010】本発明の発現ベクターは、以下の様にして
作製される。すなわち、ヒトのゲノムDNAが挿入され
たYACライブラリーより乳蛋白質遺伝子(例えば、α
ラクトアルブミン遺伝子)が挿入されたYACクローン
を選出した。その中から、乳蛋白質遺伝子の種々の遺伝
子発現調節配列を含む広範囲領域が挿入され、かつトラ
ンスジェニック動物の作出に適した大きさのYAC−D
NA (数百kb) を得るか、または巨大DNA断片が挿入
されたYAC−DNAから断片化して調製した乳蛋白質
遺伝子の広範囲領域が挿入されたYAC−DNA (数百
kb) を取得し、目的のYAC−DNAを酵母において調
製することを容易にするための増幅エレメントを導入し
て、有効な遺伝子発現ベクターを構築した。得られたベ
クターの構造遺伝子部位を所望の有用蛋白質の構造遺伝
子またはcDNAに置換して、有用蛋白質生産用の発現
ベクターを作製することができる。更に、より高い効率
で所望する蛋白質の生産を行うために、ヒトαラクトア
ルブミン遺伝子のプロモーター領域をさらに強力な乳蛋
白質遺伝子のプロモーター領域に置換して(例えば、ヒ
トαラクトアルブミンプロモーターからウシαS1カゼ
インプロモーターに置換)発現ベクターを構築して高い
生産効率を実現することができる。このようにして構築
された発現ベクターを、哺乳動物の受精卵、例えばラッ
ト前核期受精卵の雄性前核に注入し、仮親に移植して出
産させると導入遺伝子が組み込まれ、導入した遺伝子を
乳腺で発現するトランスジェニックラットを高い確率で
得ることができる。そして、この雌のトランスジェニッ
クラットを健常雄ラットと交配させ、妊娠、出産させる
と、その乳汁中から導入遺伝子で規定された蛋白質を高
収率で得ることができる。
【0011】
【実施例】以下の実施例によって本発明をより詳細に説
明するが、これらは単に例示したのみであり、本発明は
これらにより何ら限定されるものではない。
【0012】
【実施例1】ヒト・ゲノムDNAの酵母人工染色体(YAC)ライブ
ラリーからのヒトαラクトアルブミン遺伝子の選択方法 ヒトYACライブラリー(CEPH"A"、リサーチジェネティ
クス社製)からヒトαラクトアルブミン (HuαLA) 遺伝
子をPCR法により選択した。メーカーのプロトコール
に従ってPCR選択を行った。プライマーは、LAEX4A
(5'-TCTGCACTGAGAAGCTGGAA-3'; HuαLA遺伝子の塩基配
列 (Hall L. et al., Biochem. J., 242,735-742 (198
7)) の2047-2066 の位置に相当)と LAEX4B (5'-GGCTC
AGAGACAGATAAGCT-3';Hu αLA遺伝子の塩基配列の2184-2
203 の位置に相当)を使用した。PCR反応はパーキン
エルマー社製DNAサーマルサイクラー モデル 480を
使用し、酵素反応は 10mM トリス塩酸 (pH8.3), 50mM K
Cl, 1.5mM MgCl2, 0.01%ゼラチン、 200nM各dNTP, 12
0nM 各プライマーDNA, 10unit/mL Taq DNA polymerase
(ベーリンガー社製)の反応液下で3μL のヒトYAC
ライブラリーDNAを使用し、全量25μL で94℃ (30
秒)-55℃ (30秒)-72℃ (30秒), 40 サイクルの反応を行
った。電気泳動(アドバンス社製 Mupid II を使用し、
2%アガロースゲル, 40mMトリス−アセテート/1mM EDT
A (pH8), 8.3V/cm-15min泳動)後、 0.1%エチジウムブ
ロマイド染色で目的のDNA断片を検出して選択を行っ
た。選択は先ず、"Block pool"プレートでブロック# を
決定し、次に "Block#" プレートでPlate#, Row#, Colu
mn# を決定した。その結果、Block#/Plate#/Row#/Colum
n#を(14)/(8)/(C)/(3)と決定した。本クローンをαLA
C3と命名し、このYACクローン (yhCEPH724C3)を取
得した。このYACクローンは、YACベクターpYA
C4にHuαLA遺伝子を含むヒトゲノムDNAが挿入され
たYACベクター (YAC-αLAC3) である。このベクター
は宿主の酵母AB1380(Saccharomyces cerevisiaeAB138
0, ATCC No.20843) に導入できる。
【0013】
【実施例2】選択したヒトαラクトアルブミン遺伝子が挿入されたY
ACベクター(YAC-αLAC3)の解析
【0014】(1) DNAプラグの作製 実施例1で取得したYACクローン yhCEPH724C3 (YAC-
αLAC3/AB1380)を SC-Ura-Trp 選択培地(6.7g/L yeast
nitrogen base w/o amino acids, 20g/L デキストロー
ス, 10mg/L 硫酸アデニン, 10mg/L メチオニン, 20m
g/L 塩酸アルギニン, 20mg/L 塩酸ヒスチヂン, 40mg/
L 塩酸リシン, 50mg/L チロシン、 60mg/L フェニルア
ラニン, 60mg/L ロイシン, 60mg/L イソロイシン、10
0mg/L スレオニン, 5mM Na2HPO4 (pH7))に接種し、約
2X107 cells/mL になるまで30℃で振盪培養した。遠心
(3,000rpm, 5min, 室温) により集菌し、50mM EDTA(pH
8)に懸濁して細胞数を計測した。集菌し、 3〜5X108 ce
lls/mlになるようにYRB[yeast resuspension buffe
r; 1.2M ソルビトール, 20mM EDTA(pH8), 10mM トリ
ス−塩酸(pH7.5), 10mM ジチオスレイトール] に懸濁し
た。溶菌酵素(lyticase) (Arthrobacter luteus由来)
を20units/mLになるようにを加え、37℃で保温して80%
以上がスフェロプラストになる様に調製した。予め42℃
に温めたYRBに溶解した 1%のInCert Agarose(タカ
ラ/FMC社製) を等量加えてピペットで良く混ぜ、パルス
フィールド電気泳動用のプラグ作製用鋳型に静かに流し
込み、冷蔵庫内で一時間以上保持して固めた。鋳型から
プラグを 2〜3 倍容量のYLB [yeast lysis buffer;
10mMトリス−塩酸 (pH8), 100mM EDTA (pH8), 1%リチ
ウムドデシル サルフェート(lithiumdodecyl sulphat
e)]中に押し出し、室温で静かに 1〜2 時間振り洗浄し
た。静かに洗浄液を取り除き、10倍容量のYLBを加え
て40〜50℃で一晩保温して細胞膜を破壊した。次にTE
50[10mM トリス−塩酸(pH7.5), 50mM EDTA] に入れ30分
間室温で静置し、TE50を除去して洗浄した。3回洗浄
した後、4℃で保存した。
【0015】(2) PCRによるヒトαラクトアルブミン
遺伝子の確認 上記の作製したプラグのTE50を取り除き、10倍容量の
PCR反応液を加え、加温することによりプラブを溶解
した。実施例1に記載した方法に準じ、PCR反応及び
電気泳動を行いYACクローン (YAC-αLAC3) がヒトα
ラクトアルブミン遺伝子を持ち、実施例1で選択したク
ローンαLAC3が所望したヒトαラクトアルブミン遺伝子
が挿入されたYAC-DNA であり、取得したYACクローン
yhCEPH724C3 は、該YAC-DNA を持つ酵母 (YAC-αLAC3/A
B1380)であることを確認した。
【0016】(3) 選出したクローン、αLAC3、の解
析−制限酵素地図の作成 前記(1) で作製したプラグ(プラグ 1個の容量は 100μ
L)に10倍容量のTE[10mM トリス−塩酸(pH7), 1mM EDT
A]を加えて、4℃で20分間静置する方法で3回洗浄し
た。更に、蒸留水で 1回洗浄した。少量 (約0.5ml)の制
限酵素反応用バッファーを加え、氷上で30分間冷却して
バッファー置換を行った。過剰のバッファーを取り除
き、プラグが隠れる程度の容量に 4段階量の制限酵素
(0.01, 0.1, 1,20 units)を加えて氷上に30分間静置し
た後、37℃で一時間保持して酵素反応を行った。 5μL
の 0.5M EDTA(pH8) を加えて氷上に置き、1mL のTEを
加えて30分以上保持した。制限酵素は、BssH II, MluI,
NruI, SalI, SfiI を使用した。プラグをパルスフィー
ルドゲル電気泳動のゲルに乗せて泳動を行った[Bio-Rad
社製 CHEF-DR II を使用し、1%アガロース(pulsed fi
eld certified Agarose, #162-0137、バイオラッド社
製)、0.5XTBE (45mM トリス−ボレート1mM EDTA(pH
8))、6V/cm 、14℃、24時間、switch time 60-120秒の
条件で泳動] 。泳動後、DNAをナイロン膜 (Hybond N
+ 、アマシャム社製)に転写した。YACベクターの右
アーム及び左アームの検出用プローブには、それぞれpB
R322の PuvII-SalI断片(1.4kb) と PuvII-EcoRI断片(2.
1kb) を使用した。又、ヒトαラクトアルブミン遺伝子
の検出用プローブには実施例1で取得したクローンαLA
C3のYAC-DNAを鋳型にして aLA5 Xho [5'-GGCTCGAGCTCCG
CTCCTTGGGTA-3';HuαLA遺伝子の塩基配列の 1694-1707
位置に相当] と LAEX4B をプライマーにして増幅した D
NA断片を pT7Blue(タカラ/Novagen社製) に導入して作
製したSalI-EcoRI断片(0.5kb)を使用した。得られたプ
ローブDNAの[32P]-dCTP標識にはアマシャム社のレデ
ィプライム (rediprime DNA labelling system) を用い
た。サザンハイブリダイゼーション解析は実験マニュア
ル [Sambrook J. et al., Molecular Cloning,2nd e
d.,Cold Springs Harbor Laboratory Press (1989)]に
従った。制限酵素地図を図1に示した。
【0017】(4) YACクローン yhCEPH724C3のホスト
の変更 フラグメント化によるヒトαラクトアルブミン遺伝子の
方向解析及びαラクトアルブミン遺伝子が挿入されたY
ACベクターのYAC−DNAを調製するためにホスト
の変更を行った。即ち、酵母AB1380(Saccharomyces ce
revisiae AB1380, ATCC No.20843) から酵母 YPH925 (S
accharomyces cerevisiae YPH925, ATCC No.90834)
に、更に酵母YPH925から酵母 CGY2516(Saccharomyces
cerevisiaeCGY2516, ATCC No.74013)に変更した。先
ず、酵母AB1380から酵母YPH925へホストを変更した。AB
1380をホストとして、ヒトαラクトアルブミン遺伝子が
挿入されたYAC-ベクター(YAC- αLAC3) を持つ選択した
クローン(yhCEPH724C3) を SC-Ura-Trp 選択培地で、酵
母YPH925を YPD培地(10g/L yeast extract, 20g/L バク
トペプトン, 20g/L デキストロース)で培養した。集菌
し、1mL YPD 培地に各々5X106cellsを混ぜて 6〜8 時間
30℃で培養した。3μg/mL シクロヘキシミドを含む S
D6-Ura選択培地プレート(6.7g/L yeast nitrogen base
w/o amino acids, 20g/L デキストロース, 20mg/L 硫
酸アデニン, 30mg/L 塩酸リシン, 20mg/L 塩酸ヒスチ
ジン, 30mg/L ロイシン, 20mg/L トリプトファン, 20
g/L 寒天)に 0.1, 0.3, 0.5mlずつ接種した。4〜6日
後に得られたコロニーを 3μg/mL シクロヘキシミド(c
ycloheximide) を含む SD6-Ura選択培地プレートに接種
して 2日間30℃で培養した。次に、 3μg/mL シクロヘ
キシミドを含む SD6-Ura-Trp選択培地プレート[6.7g/L
yeast nitrogen base w/o amino acids, 20g/L デキス
トロース, 20mg/L 硫酸アデニン,30mg/L 塩酸リシン,
20mg/L 塩酸ヒスチジン, 30mg/L ロイシン, 20g/L 寒
天] と 3μg/mL シクロヘキシミドを含む SD6-His選択
培地プレート[6.7g/L yeast nitrogen base w/o amino
acids, 20g/L デキストロース, 20mg/L 硫酸アデニ
ン, 20mg/L ウラシル, 20mg/L トリプトファン, 30m
g/L 塩酸リシン, 30mg/L ロイシン, 20g/L 寒天] 及び
SD6-Leu選択培地プレート [6.7g/L yeast nitrogen ba
se w/o amino acids, 20g/L デキストロース, 20mg/L
硫酸アデニン,20mg/L ウラシル, 20mg/Lトリプトファ
ン, 30mg/L 塩酸リシン, 20mg/L ヒスチジン塩酸塩,
20g/L 寒天] の 3種のプレートにレプリカして CyhR U
ra+ Trp+ His- Leu- のコロニーを選出し、ホストを
酵母AB1380 (MATa ura3 lys2-1ocade2-101c trp1 his5a
m can1-100oc Ile- Thr- ) から酵母YPH925 (MATa ur
a3-52 lys2-801 ade2-101trp1Δ63his3Δ200 leu2Δ1 c
yh2R ) に変更して、YACクローン(YAC-αLAC3/YPH9
25)を得た。次に、ホストを酵母YPH925から酵母CGY2516
に変更した。酵母CGY2516 は60μg/mLのカナバニン(ca
navanine)を含む SD6培地プレート[6.7g/L yeast nitro
genbase w/o amino acids, 20g/L デキストロース,20m
g/L 硫酸アデニン, 20mg/L ウラシル, 20mg/L トリプ
トファン, 30mg/L 塩酸リシン, 20mg/L 塩酸ヒスチジ
ン, 30mg/L ロイシン] で一晩培養し、カナバニン耐性
クローンを得た。YACクローン(YAC-αLAC3/YPH925)
をSD6-Ura-Trp 選択培地で、CGY2516 を60μg/mL カナ
バニンを含む SD6培地で培養した。集菌し、各々 5X106
cells を 1mLの SD6培地に混ぜて 6〜8 時間30℃で培養
した。60μg/mL カナバニンを含む SD6-Ura選択培地プ
レートに 0.1, 0.3, 0.5mlずつ接種した。 4〜6 日後に
得られたコロニーを60μg/mLカナバニンを含むSD6-Ura-
Trp 選択培地プレートに接種して2日間30℃で培養し
た。次に、60μg/mL カナバニンを含むSD6-Ura-Trp 選
択培地プレートと 3μg/mL シクロヘキシミドを含む S
D6-Ura-Trp選択培地プレートと96穴マイクロプレートの
穴中に固めた Galインジケーター培地(indicator mediu
m)[10g/L yeast extract, 10g/Lバクトペプトン, 20g/
L 寒天, 80mg/L BTB, 2g/L ガラクトース] に接種し、
Can R CyhS Ura+ Trp+ Gal+ のコロニーを選択し、
YACクローン (YAC-αLAC3/CGY2516) を得た。
【0018】(5) YACクローン (YAC-αLAC3/CGY251
6) の解析−ヒトαラクトアルブミン遺伝子の方向の決
ヒトαラクトアルブミンの構造遺伝子の部分塩基配列を
標的部位としてホモロガスリコンビネーションによるY
ACクローンのフラグメント化を行った。標的部位のD
NA断片はクローンαLAC3の YAC-DNAを鋳型にして LAE
X2A [5'-TGATCTGTACCATGTTTCAC-3';HuαLA遺伝子の塩基
配列の807-821 の位置に相当] と LAEX2B [5'-TCTCACAG
GAGATGTCACAG-3';HuαLA遺伝子の塩基配列の946-965 の
位置に相当] をプライマーにして増幅した DNA断片をpT
7Blue にクローニングしてXbaI-BamHI断片(159b)及びSa
lI-EcoRI断片(159b)を調製した。調製した前記の標的部
位のDNA断片を Fragmentation vector pBP103[Pavan
W.J. et al., Gene, 106,125-127 (1991),ATCC No.770
87]の XbaI-BamHI に導入してpBP-αLa-Lを、後者をSal
I-EcoRI部位に導入してpBP-αLa-Rを作製し、ヒトαラ
クトアルブミンの構造遺伝子の部分塩基配列を標的とし
た解析用の両方向の形質転換ベクターを作製した。これ
らの 2種の両方向のベクターを用いてクローンαLAC
3 (YAC-αLAC3) のフラグメント化を行った。酵母の形
質転換は酢酸リチウム法により行った。YACクローン
(YAC-αLAC3/CGY2516) を 100mLのSC-Ura-Trp選択培地
で 1〜2X107 cells/mLまで培養し、遠心 (1500g, 5分
間) により集菌した。20mLの蒸留水で懸濁後、遠心して
洗浄し、1mL の蒸留水に懸濁してエッペンドルフチュー
ブに入れ、更に、遠心して集菌した。約 300μL の100m
M 酢酸リチウム溶液で懸濁し、容量を測定し、100mM 酢
酸リチウム溶液を加えて 2X109 cells/mL に調製して30
℃で15分間保持した。別のチューブに5 μg の形質転換
用フラグメンテーションベクターDNA (pBP-αLa-Lま
たはpBP-αLa-R) に、予め沸騰水中で10分間加熱し氷水
冷却して調製した変性キャリアDNA (仔ウシ胸腺DNA)
50μg を入れ、先に調製した酵母懸濁液50μL(1X108 ce
lls)を加えてボルテックスミキサーで軽く混ぜた。次に
300μL のPEG/LiAc液(0.1M 酢酸リチウム, 40%PEG3000)を
加えて軽く混ぜ、30℃で30分間、更に42℃で20分間保持
したのち、10秒ほど遠心して上清液を除去した。蒸留水
に酵母を懸濁して、SC-His-5'-FOA 選択培地プレート
[6.7g/L yeast nitrogen base w/o amino acids, 20g/L
デキストロース, 10mg/L 硫酸アデニン, 40mg/L ウ
ラシル, 10mg/L メチオニン, 20mg/L 塩酸アルギニ
ン,40mg/L 塩酸リシン, 40mg/L トリプトファン, 50m
g/L チロシン, 60mg/L フェニルアラニン, 60mg/L ロ
イシン, 60mg/L 塩酸イソロイシン, 100mg/Lスレオニ
ン, 5mM Na2HPO4 (pH7),800mg/L 5'- フルオロオルチン
酸 20g/L寒天]に接種し、30℃で2〜3日培養して形質
転換コロニーを得た。即ち、YAC-αLAC3とフラグメンテ
ーションベクターがヒトαラクトアルブミンの構造遺伝
子の部位で正しくホモロガスリコンビネーションが行わ
れた場合のみに形質転換コロニーが得られる。得られた
コロニーよりYAC-DNA を調製した。ヒトαラクトアルブ
ミン遺伝子の5'端側のプライマーとして LAEX1A [5'-CT
GAGTGATGCTTCCATTTC-3';HuαLA遺伝子の塩基配列の -15
〜5 の位置に相当] と LAEX1B [5'-GATGCCTCCATAACCATC
TA-3';HuαLA遺伝子の塩基配列の 125〜146 の位置に相
当] を使用し、3'端側のプライマーとして LAEX4A と L
AEX4B を使用してPCR法により増幅DNA断片を検出
して5'端側或いは3'端側の増幅DNA断片を検出し、ホ
モロガスリコンビネーションが正しく行われていること
を確認し、YACベクターに導入されたヒトαラクトア
ルブミン遺伝子の方向を決定した。又、本実施例3に記
載した方法に準じて、得られた形質転換コロニーのDN
AをPFGE (パルスフィールドゲル電気泳動) で分離
し、ナイロン膜にDNAを転写してYACベクターの左
アームをプローブとしてサザンハイブリダイゼーション
解析して導入されたDNAの大きさを決定した。実施例
2-(3)及び実施例2-(5)の結果から得られたYAC-αLAC3
の制限酵素地図並びにヒトαラクトアルブミン遺伝子の
方向を図1に示した。尚、ヒトαラクトアルブミンの構
造遺伝子は約 3kbのため、図中には大まかな位置を矢印
で示した。
【0019】
【実施例3】ヒトαラクトアルブミン遺伝子発現ベクターの調製方法 ヒトαラクトアルブミン遺伝子もつYACベクター (YA
C-αLAC3) に Amplificationelement (pCGS990) [Smith
D.R., Mammalian Genome 4: 141-147 (1993)ATCC No.7
7417]を導入してヒトαラクトアルブミン遺伝子発現ベ
クターを調製した。1μg の pCGS990を制限酵素SalIで
消化して開裂した。形質転換は実施例2(5)に記載し
た酢酸リチウム法により行った。即ち、YACクローン
(YAC-αLAC3/CGY2516) を 1〜2X107 cells/mLまで培養
し、集菌、蒸留水洗浄し、100mM 酢酸リチウム溶液で2X
109 cells/mLに懸濁し、30℃で15分間保持した。別のチ
ューブに 100ngの形質転換ベクターpCGS990 と、予め沸
騰水中で10分間加熱し氷水冷却して調製した変性キャリ
アDNA (仔ウシ胸腺DNA)50μg を入れ、先に調製した
酵母懸濁液50μL(1X108 cells)を加えボルテックスミキ
サーで軽く混ぜた。次に 300μL のPEG/LiAc液を加えて
軽く混ぜ、30℃で30分間、更に42℃で20分間保持したの
ち、10秒ほど遠心して上清液を除去した。蒸留水に酵母
を懸濁して、SC-Lys選択培地プレート[6.7g/L yeast ni
trogen base w/o amino acids, 20g/Lデキストロース,
10mg/L 硫酸アデニン, 20mg/L ウラシル, 10mg/L
メチオニン, 20mg/L 塩酸アルギニン, 20mg/L 塩酸ヒ
スチジン, 40mg/L トリプトファン, 50 mg/L チロシ
ン, 60mg/L フェニルアラニン, 60mg/L ロイシン, 6
0mg/L イソロイシン, 100mg/L スレオニン, 5mM Na2HPO
4(pH7), 20g/L agar] に接種し、30℃で2〜3日培養し
た。生育したコロニーをSC-Trp-Ura選択培地プレートと
SC-Lys-Ura選択培地プレート[6.7g/L yeast nitrogen b
ase w/o amino acids,20g/L デキストロース, 10mg/L
硫酸アデニン, 10mg/L メチオニン, 20mg/L 塩酸アル
ギニン, 20mg/L 塩酸ヒスチジン, 40mg/L トリプトフ
ァン, 50mg/L チロシン, 60mg/L フェニルアラニン,
60mg/L ロイシン, 60mg/L イソロイシン, 100mg/L ス
レオニン, 5mM Na2HPO4(pH7), 20% agar]に接種し、 T
rp- Lys+ Ura+ コロニーを選出し、ヒトαラクトアル
ブミン遺伝子発現ベクター(YAC-CGS990-αLAC3) を持つ
形質転換コロニーを得た。作製したヒトαラクトアルブ
ミン遺伝子発現ベクター(YAC-CGS990-αLAC3) の概略並
びにヒトαラクトアルブミン遺伝子の方向を図2に示し
た。ヒトαラクトアルブミンの構造遺伝子は約 3kbのた
め、図中には大まかな位置を矢印で示した。
【0020】
【実施例4】ヒトαラクトアルブミン遺伝子発現ベクターDNAの調
製方法 受精卵に注入するヒトαラクトアルブミン遺伝子発現ベ
クター(YAC-CGS990-αLAC3) DNAを調製した。 YAC-C
GS990-αLAC3を持つ酵母GAY2516(YAC-CGS990-αLAC3/CG
Y-2516)を amplification medium [6.7g/L bacto-yeast
nitrogen base w/o amino acids with ammonium sulfa
te, 10g/L カザミノ酸, 30g/L ガラクトース, 40mg/L
トリプトファン, 50mg/L 塩酸ヒスチジン, 50mg/mL
メチオニン, 100mg/L 硫酸アデニン, 800mg/L チミジ
ン, 5mL/L サルファニルアミド ストック (200mg/ml s
ulfanilamide in N,N-dimethylformamide), 10mg/L メ
トトレキセート](500ml)で増やし、実施例2(1) に記載
した方法に準じて、プラグDNA(最終濃度 5X108〜3X
109 cells/mL) を調製した。プラグをパルスフィールド
ゲル電気泳動のゲル[1% Sea Plaque GTG agarose(タカ
ラ/FMC社製)]に乗せ、泳動を行った[Bio-Rad社製 CHEF-
DRII, 0.5XTBE, 6V/cm, 14℃, 20時間、switchtime 40
秒] 。ゲルの端をエチジウムブロマイド染色して目的の
部分を切り出し洗浄用バッファーTEN[10mM トリス−
塩酸(pH7.5), 250μM EDTA, 100mM NaCl] で洗浄し、4
℃で保存した。上記のアガロースゲル 0.4g をチューブ
に取り、68℃で溶解し10分間保持した。チューブを42℃
に移し、あらかじめ42℃に温めた 200μL のTENに希
釈した4 unitのβアガラーゼ(New England Biolabs #3
925)を加え、2時間以上分解した。ゲルが溶けたことを
確認し、未分解のアガロースを遠心(15,000 rpm, 15 分
間) して除去した。UF膜(Ultrafree-MC filter unit,
分画分子量30,000、ミリポア社製)で約 400μL から80
μL に遠心濃縮 (7000 rpm, 5 分間, 室温) した。得ら
れた80μL のDNA溶液を室温で 1時間保持した後、ピ
ペットで混ぜて、新しいチューブに移した。DNA濃度
をサランラップ法(2μg/mLのエチジウムブロマイド液 5
μL と 2, 4, 6, 8, 10ng/μL の DNA液 5μL をサラン
ラップの上で混ぜ写真を撮って濃度を推定) 測定した。
DNA濃度は5ng/μL であった。
【0021】
【実施例5】ヒトαラクトアルブミンを乳汁に生産するトランスジェ
ニックラットの作出 (1) 注入用DNAの調製 実施例4で調製した精製DNAを、TEN(10mM Tris-H
Cl pH7.5), 250μM EDTA, 100mM NaCl) で1〜3 ng/μ
L なるように調製した。
【0022】(2) トランスジェニックラットの作出 ラット前核期受精卵へのDNAの注入は以下の要領で行
った。8週齢のWistarラットを購入 (日本チャールスリ
バー社) し、明暗サイクル12時間 (4:00〜16:00 を明時
間) 、温度23±2 ℃、湿度55±5%で飼育し、膣スメア
により雌の性周期を観察しホルモン処理日を選択した。
先ず、雌ラットに 150 IU/kgの妊馬血清性性腺刺激ホル
モン [日本ゼンヤク社:PMS全薬(pregnant mare serum g
onadotropin; PMSG)] を腹腔内投与して過剰排卵処理を
行い、その48時間後に75 IU/kgのヒト絨毛性性腺刺激ホ
ルモン [三共臓器社:プべローゲン(human chorionic g
onadotropin; hCG)]を投与した後、雄との同居により交
配した。 hCG投与32時間後に卵管灌流により前核期受精
卵を採取した。卵管灌流及び卵の培養には mKRB 液[Yos
hida Y. and Chang M.C., J. Reprod. Fertil. 36, 9-2
2(1974)] を使用した。採取した受精卵を O.1%ヒアル
ロニダーゼ(シグマ社製; H3606)を含む mKRB 液中で37
℃、5分間の酵素処理を行い、卵丘細胞を除去した後、
mKRB液で3 回洗浄して酵素を除去し、DNA注入操作ま
でC02-インキュベーター内(5% CO2-95 % Air, 37℃,
飽和湿度)に保存した。この様にして準備したWistarラ
ットの受精卵の雄性前核に顕微注入法によりDNAを注
入した。508 個の注入操作した卵を 9匹の仮親に移植し
て出産させ、152 匹の産仔を得た。得られた産仔は離乳
直後に尻尾を切断し、得られた尻尾にDNA抽出用バッ
ファー [50mM Tris-HCl(pH8), 100mM EDTA, 100mM NaC
l,1% SDS) を加えて、プロテイナーゼK(500μg/mL)
とプロナーゼ(500μg/mL) を加えて55℃で一晩攪拌して
溶解した。フェノール/クロロホルム法によりDNAを
抽出した。得られたDNAを用いてPCR法により検定
[使用プライマーはLAEX4Aと LA1B (5'-AGACAGAGGTGAAA
TCTGTG-3';HuαLA遺伝子の塩基配列の2318-2337 に相
当)]した。結果、導入遺伝子を認めた3匹の雌(G0; #11
04-3, #1103-3, #1107-12)及び7匹の雄(G0; #1099-7,
#1101-3,#1101-9, #1103-1, #1107-1, #1108-5, #1112-
1) のトランスジェニックラットを得た。
【0023】
【実施例6】ヒトαラクトアルブミン遺伝子発現ベクター(YAC-CGS99
0-αLAC3) を導入したトランスジェニックラットの乳汁
中のヒトαラクトアルブミンの生産 実施例5で得た3系統の雌トランスジェニックラットが
性成熟期間を経過した12週令に、健常雄Wistarラット
を交配したところ、すべてが妊娠した。出産後10日目に
搾乳して得られた乳汁中に生産されたヒトαラクトアル
ブミン量を、SDSポリアクリルアミド電気泳動におけ
るバンドの染色率より推定した。3 匹全てにおいてヒト
αラクトアルブミンを検出し、その乳汁中の濃度は、3
系統の#1104-3, #1103-3, #1107-12でそれぞれ2.5mg/m
L、1.8mg/mL、3.5mg/mLであり、ヒト乳汁中の濃度に相
当する濃度のヒトαラクトアルブミンが生産されること
を認めた。
【0024】従来の報告[Ninomiya T. et al., Mol. R
eprod. Dev., 37, 276-283 (1994)]では、発現に用いた
プロモーターの持つ発現能力に相当する発現を乳汁中で
示す個体は遺伝子導入された個体の一部であるのに比較
して、本実施例の発現ベクターを用いた場合は確実な発
現を認め、本発明のベクターが乳腺発現に優れたベクタ
ーであることが分かる。
【0025】
【実施例7】導入したヒトαラクトアルブミン遺伝子の発現の特性 実施例5で得た雌ラット(G0; #1104-3, #1103-3, #1107
-12)を交配して得た次世代の雌のトランスジェニックラ
ットの中から 2系統(G1; #1104-3-9, #1107-12-7) につ
いて出産させ、出産後10日目の個体の種々の組織 (脳、
顎下腺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、皮膚、筋肉、乳腺)
を採取し、Acidic guanidine phenol 法(ニッポンジー
ン社製ISOGENを使用) により全RANを抽出し、ノーザ
ンブロット解析を行い、それら組織における導入遺伝子
(HuαLA) の発現を検定した。導入した遺伝子が乳腺に
おいて特異的に発現することを確認した。
【0026】得られた結果は、本発明の発現ベクターを
使用する方法は、本発明の発現ベクターにより導入され
る遺伝子を確実に発現する以外に、導入した遺伝子の発
現を乳腺に限定でき、乳汁中に生産された物質を搾乳す
ることにより生体内から、速やかに除去し、トランスジ
ェニック動物個体と遺伝子の発現産物の不必要な接触を
最低限に抑えることが出来るすぐれた方法であることを
示すものである。
【0027】
【実施例8】ヒト成長ホルモン遺伝子を導入したYACベクターの作
実施例1で得たヒトαラクトアルブミン (HuαLA) 遺伝
子を持つYACベクター(YAC-αLAC3) のHuαLA遺伝子
の構造遺伝子領域をヒト成長ホルモン(HuGH)の構造遺
伝子に置換することによりヒト成長ホルモン遺伝子を導
入したYACベクターを作製した。
【0028】(1) HuαLA遺伝子の5'側と3'側のDN
A断片の調製 HuαLA遺伝子の構造遺伝子部分をホモローガスリコンビ
ネーション法で HuGH遺伝子の構造遺伝子に置換するた
め、HuαLA遺伝子の5'側部位のDNA断片と3'側部位の
DNA断片をYAC-αLAC3のDNAを鋳型としてPCR法
で増幅して取得した。5'側部位のDNA断片の調製には
2種のプライマー、αLA3Hind (5'-GGAAGCTTCAGTCATGAG
CTACCA-3'; Hu αLA遺伝子の塩基配列 [Hall L. et a
l., Biochem. J., 242, 735-742 (1987)] の -537 〜 -
519 の相当位置にHindIII の制限酵素認識部位を結合し
たもの)とαLA6Bam(5'-AAGGATCCTGGAAGCATCACTCAG-
3'; HuαLA遺伝子の塩基配列の-15 〜 +1 の相当位置に
BamHIの制限酵素認識部位を結合したもの)を使用し
た。3'側部位のDNA断片の調製には2種のプライマ
ー、αLA5Xho (5'-GGCTCGAGCTCCGCTCCTTGGTA-3'; Huα
LA遺伝子の塩基配列の 1694〜1709の相当位置に XhoI
の制限酵素認識部位を結合したもの)とLAEX4B (5'-GGC
TCAGAGACAGATAAGCT-3'; HuαLA遺伝子の塩基配列の2148
〜2203の相当位置)を使用した。PCR反応はパーキン
グエルマ社製DNAサーマルサイクラー・モデル480 を
使用し、酵素反応は 10mM トリス塩酸(pH8.3), 50mM KC
l, 1.5mM MgCl2, 0.01%ゼラチン, 200nM 各dNTP, 120n
M 各プライマーDNA, 10 unit/mL Taq DNA polymerase
(ベーリンガー社製) の反応液下で1μL のYAC-αLAC3
のDNA(約1μg/mL) を使用し、全量25μl で94℃
(30秒)-55℃ (30秒)-72℃ (30秒), 40 サイクルの反応
を行った。電気泳動[アドバンス社製 MupidIIを使用
し、1%アガロースゲル, 40mMトリス−アセテート/1mM
EDTA (pH8), 泳動速度 8.3V/cm-15min]後、0.1 %エ
チジウムブロマイド染色で目的のDNA断片を検出して
ゲルを切り出した。DNAの回収は、GENECLEAN キット
(Bio101社製, La Jolla,USA)を用いて行った。
【0029】(2) 形質転換用ベクター(pRS405αLA-HuG
H ;HuGH遺伝子転換用ベクター)の調製 上記で得られた5'側部位のDNA断片約 500ngを制限酵
素で切断し、HindIII-BamHI 断片を、同様に3'側部位の
DNA断片約 500ngを制限酵素で切断し、HindIII-XhoI
断片をそれぞれ調製した。先ず、得られたHindIII-BamH
I 断片をベクターpRS405 (Clontech社製, Palo Alto, U
SA)のHindIII-BamHI 部位に導入した。次に、HindIII-
XhoI断片を得られたベクターのHindIII-XhoI部位に導入
した。更に、HuGH遺伝子を持つベクターp0GH (Nicholas
Institute Dianostics社製,San Juan Capistrano, US
A)を制限酵素で切断し、HuGH遺伝子を含むBamHI-XbaI
切断を調製し、上記の調製したベクターのBamHI-XbaI部
位にこれを導入してHuGH遺伝子転換用ベクター (pRS405
αLA-HuGH)を作製した。概略を図3に示す。
【0030】(3) HuGH遺伝子発現YACベクターの
作製(形質転換ベクターpRS405αLA-HuGH によるYAC-α
LAC3/CGY2516の形質転換) 酵母CGY2516 に導入したヒトαラクトアルブミン遺伝子
のYACベクター(YAC-αLAC3)を持つYACクローン
(YAC-αLA3/CGY2516)を予め制限酵素 HindIIIで切断し
て開環した形質転換ベクターpRS405αLA-HuGH(図3)を
用いて、酢酸リチウム法で形質転換した。実施例2で得
たYACクローン (YAC-αLA3/CGY2516)を100mL のSC-U
ra-Trp選択培地で 1〜2X107 cells/mLまで培養し、遠心
(1500g,5分間) により集菌した。20mLの蒸留水で懸濁
後、遠心して洗浄し、1mLの蒸留水に懸濁してエッペン
ドルフチューブに入れ、更に、遠心して集菌した。約 3
00μL の100mM 酢酸リチウム溶液で懸濁し、容量を測定
し、100mM 酢酸リチウム溶液を加えて 2X109 cells/mL
に調整して30℃で15分間保持した。別のチューブに上記
の方法(2) で調製した形質転換ベクター pRS405 αLA-H
uGH のDNA100ngを制限酵素 HindIIIで切断して調製した
DNAに、予め沸騰水中で10分間加熱し氷水冷却して調
製した変性キャリアDNA (仔ウシ胸腺DNA)50μgを入
れ、先に調製した酵母懸濁液50μL(1X108 cells)を加え
てボルテックスミキサーで軽く混ぜた。次に 300μL の
PEG/LiAc 液(0.1M 酢酸リチウム, 40% PEG3000) を加
えて軽く混ぜ、30℃で30分間、更に42℃で20分間保持し
たのち、10秒ほど遠心して上清液を除去した。蒸留水に
酵母を懸濁して、SC-Leu選択培地プレート [6.7g/L yea
st nitrogen base w/o amino acids, 20g/L デキストロ
ース, 10mg/L 硫酸アデニン, 40mg/L ウラシル, 10m
g/L メチオニン, 20mg/L 塩酸アルギニン, 40mg/L 塩
酸リジン, 40mg/L トリプトファン, 50mg/L チロシ
ン, 60mg/L フェニルアラニン, 40mg/L ヒスチジン,
60mg/L 塩酸イソロイシン, 100mg/L スレオニン, 5mM
Na2HSO4(pH7), 20g/L agar] に接種し、30℃で2〜3日
培養して形質転換コロニーを得た。得られたコロニーが
正しい位置でホモロガスリコンビネーションが行われた
かをPCR法により調べた。プライマーは、5'側がαL
A1(5'-TATTCTATTCTTATTTCTGAGC-3'; HuαLA遺伝子の
塩基配列の-560〜-540の位置に相当)とHGH104(5-AAGA
CACTCCTGAGGAACTGCACGG-3'; HuGH遺伝子(Genbank acces
sion No. V00520)の塩基配列の1236〜1260の位置に相
当)を使用した。また、3'側はT3 (5'-AATTAACCCTCACTA
AAGGG-3'; pRS405の塩基配列の3246〜3265の位置に相
当)とLA1B (5'-TATACCTAGGAGACAGAGGTGAAATCTGTG-3';
HuαLA遺伝子の塩基配列の2318〜2337の位置に相当)を
使用した。これらのプライマーでPCR産物を確認し、
正しい部位でホモロガスレコンビネーションが起こり、
ヒトαラクトアルブミン遺伝子の構造遺伝子部分がヒト
成長ホルモン遺伝子の構造遺伝子に置き換わったものを
選出し目的のYACクローン(YAC-αLAC3ー405GH/CGY25
16) を得た。得られたヒト成長ホルモン遺伝子を持つY
ACベクター(YAC-αLAC3-405GH)の概略を図4に示し
た。尚、置換したヒト成長ホルモンの構造遺伝子を含む
pRS405 αLA-HuGH は約 8.5kbのため、置換部位は矢印
で図中に大まかな位置を示した。
【0031】
【実施例9】ヒト成長ホルモン遺伝子発現ベクターの調製方法 実施例8で作製したヒト成長ホルモン遺伝子をもつYA
Cベクター (YAC-αLAC3-405GH) にAmplification elem
ent (pCGS990) [Smith D.R., Mammalian Genome 4: 141
-147(1993)] を導入してヒト成長ホルモン遺伝子発現ベ
クターを調製した。1μgの pCGS990を制限酵素SalIで
消化して開環した。形質転換は実施例2に記載した酢
酸リチウム法により行った。即ち、YACクローン (YA
C-αLAC3-405GH/CGY2516) を 1〜2X107cells/mL に培養
し、集菌、蒸留水洗浄し、100mM 酢酸リチウム溶液で 2
X109cells/mLに懸濁し、30℃で15分間保持した。別のチ
ューブに 100ngの形質転換ベクターpCGS990 と、予め沸
騰水中で10分間加熱し氷水冷却して調製した変性キャリ
アDNA (仔ウシ胸腺DNA)50μgを入れ、先に調製した
酵母懸濁液50μL(1X108 cells)を加えボルテックスミキ
サーで軽く混ぜた。次に 300μL のPEG/LiAc液を加えて
軽く混ぜ、30℃で30分間、更に42℃で20分間保持したの
ち、10秒ほど遠心して上清液を除去した。蒸留水に酵母
を懸濁して、SC-Lys選択培地プレート[6.7g/L yeast ni
trogen base w/o amino acids, 20g/Lデキストロース,
10mg/L 硫酸アデニン, 20mg/L ウラシル, 10mg/L メ
チオニン, 20mg/L 塩酸アルギニン, 20mg/L 塩酸ヒシ
チジン, 40mg/L トリプトファン, 50mg/L チロシン,
60mg/L フェニルアラニン, 60mg/L ロイシン, 60mg/
Lイソロイシン, 100mg/L スレオニン, 5mM Na2HSO4(pH
7), 20g/L agar] に接種し、30℃で2〜3日培養した。
生育したコロニーをSC-Trp-Ura選択培地プレートとSC-L
ys-Ura選択培地プレート [6.7g/L yeast nitrogen base
w/o amino acids,20g/L デキストロース, 10mg/L 硫
酸アデニン, 10mg/L メチオニン, 20mg/L塩酸アルギ
ニン, 20mg/L 塩酸ヒスチジン, 40mg/L トリプトファ
ン, 50mg/Lチロシン, 60mg/L フェニルアラニン, 60
mg/L ロイシン, 60mg/L イソロイシン, 100mg/L スレ
オニン, 5mM Na2HSO4(pH7), 20% agar]に接種し、 Trp
- Lys+ Ura+ コロニーを選出し、ヒト成長ホルモン遺
伝子発現ベクター(YAC-CGS990-αLAC3-405GH) を持つ形
質転換コロニー(YAC-CGS990-αLAC3-405GH/CGY2516)を
得た。作製したヒト成長ホルモン遺伝子発現ベクター(Y
AC-CGS990-αLAC3-405GH) の概略並びにヒト成長ホルモ
ン遺伝子の方向を図5に示した。尚、置換したヒト成長
ホルモンの構造遺伝子を含むpRS405αLA-HuGH は約 8.5
kbのため、置換部位は図中に矢印で大まかな位置を示し
た。
【0032】
【実施例10】ヒト成長ホルモン遺伝子発現ベクターDNAの調製方法 受精卵に注入するヒト成長ホルモン遺伝子発現ベクター
(YAC-CGS990-αLAC3-405GH) DNAを調製した。 YAC-C
GS990-αLAC3-405GHを持つ酵母をamplification medium
[6.7g/L bacto-yeast nitrogen base w/o amino acids
with ammoniumsulfate, 10g/L カザミノ酸, 30g/L ガ
ラクトース, 40mg/L トリプトファン,50mg/L 塩酸ヒス
チジン, 50mg/mL メチオニン, 100mg/L 硫酸アデニン,
800mg/L チミジン, 5mL/L サルファニルアミドストック
(200mg/ml sulfanilamide inN,N-dimethylformamide),
10mg/L methotrexate](500ml) で増やし、実施例2(1)
に記載した方法に準じて、プラグDNA(最終濃度 5X
108〜3X109 cells/mL)を調製した。プラグをパルスフィ
ールドゲル電気泳動のゲル[1% SeaPlaque GTGagarose
(タカラ/FMC社製)]に乗せ、泳動を行った[Bio-Rad社製 CHE
F-DRII、0.5XTBE 、6V/cm 、14℃、20時間、switch tim
e 40秒] 。ゲルの端をエチジウムブロマイド染色して目
的の部分を切り出しマイクロインジェクション用バッフ
ァー(MIbuffer ; 30μM spermin, 70μM spermidin,
10mM Tris-HCl(pH7.5), 250μMEDTA, 100mM NaCl)で洗
浄し、4℃で保存した。上記のアガロースゲル0.4gをチ
ューブに取り、68℃で溶解し10分間保持した。チューブ
を42℃に移し、あらがじめ42℃に温めた 200μL のMI
用bufferに希釈した4 unit のβアガラーゼ(New Engla
nd Biolabs #3925)を加え、2時間以上分解した。ゲル
が溶けたことを確認し、未分解のアガロースを遠心(15,
000 rpm,15分間) して除去した。UF膜 (ミリポア社
製, Ultrafree-MC filter unit,分画分子量30,000) で
約 400μL から80μL に遠心濃縮(7000rpm, 5分間, 室
温) した。得られた80μL のDNA溶液を室温で1時間
で保持した後、ピペットで混ぜて新しいチューブに移し
た。MI用bufferで一晩透析した後、DNA濃度をサラ
ンラップ法(2μg/mLのエチジウムブロマイド液 5μL と
2, 4, 6, 8, 10ng/μL のDNA液 5μL をサランラッ
プの上で混ぜ写真を撮って濃度を推定) 測定した。
【0033】
【実施例11】ヒト成長ホルモンを乳汁に生産するトランスジェニック
ラットの作出 (1) 注入用DNAの調製 実施例10で調製した精製DNAをMI用bufferで1μ
g/mLになるように調製した。 (2) トランスジェニックラットの作出 ラット前核期受精卵へのDNAの注入は以下の要領で行
った。8週齢の Wistar ラットを購入 (日本チャールス
リバー社) し、明暗サイクル12時間 (4:00〜16:00 を明
時間) 、温度23±2℃、湿度55±5%で飼育し、膣スメ
アにより雌の性周期を観察しホルモン処理日を選択し
た。先ず、雌ラットに 150 IU/kgの妊馬血清性性腺刺激
ホルモン [日本ゼンヤク: PMS 全薬(pregnant mare ser
um gonadotropin; PMSG)] を腹腔内投与して過剰排卵処
理を行い、その48時間後に75 IU/kgのヒト絨毛性性腺刺
激ホルモン [三共臓器:プべローゲン(human chorionic
gonadotropin; hCG)]を投与した後、雄との同居により
交配した。hCG投与32時間後に卵管灌流により前核期
受精卵を採取した。卵管灌流および卵の培養にはmKRB液
[Yoshida Y. and Chang M.C., J. Reprod. Fertil., 3
6, 9-22(1974)]を使用した。採取した受精卵を 0.1%ヒ
アルロニダーゼ(シグマ社製; H3606)を含むmKRB液中で
37℃、5分間の酵素処理を行い、卵丘細胞を除去した
後、mKRB液で3回洗浄して酵素を除去し、DNA注入操
作までC02-インキュベーター内(5% CO2-, 95% Ai
r, 37℃, 飽和湿度)に保存した。この様にして準備し
たWistarラットの受精卵の雄性前核に顕微注入法により
DNAを注入した。248 個の卵に注入操作を行い、得ら
れた 186個の卵を8匹の仮親に移植して出産させ22匹の
産仔を得た。得られた産仔は離乳直後に尻尾を切断し、
得られた尻尾にDNA抽出用バッファー [50mM Tris-HC
l(pH8), 100mM EDTA, 100mM NaCl,1% SDS) 、プロテ
イナーゼK(500μg/mL) およびプロナーゼ(500μg/mL)
を加えて55℃で一晩攪拌して溶解した。フェノール/ク
ロロホルム法によりDNAを抽出した。得られたDNA
を用いてPCR法により検定(使用プライマーはαLA5X
ho ; 5'-GGCTCGAGCTCCGCTCCTTGGTA-3'[GGCTCGAにHuαLA
の塩基配列の1694〜1709に相当部位を付加] および LAE
X4B ; 5'-GGCTCAGAGACAGATAAGCT-3' [HuαLAの塩基配列
の2184〜2203に相当] )した。結果、導入遺伝子を認め
た1匹の雌(G0;#1403-4) と3匹の雄 (G0; #1403-1, #1
403-3, #1403-5)のトランスジェニックラットを得た。
【0034】
【実施例12】ヒト成長ホルモン遺伝子発現ベクター(YAC-CGS990-αLA
C3-405GH) を導入したトランスジェニックラットの乳汁
中のヒト成長ホルモンの生産 実施例11で得た雌のトランスジェニックラットが性成
熟期間を経過した12週齢に健常雄Wistarラットを交配し
た。出産後10日目に搾乳して得られた乳汁中に生産され
たヒト成長ホルモン量をベーリンガー社の hGH ELISAキ
ットを用いて測定した。その結果約0.3mg/mLのヒト成長
ホルモンを検出した。本結果は構造遺伝子置換されたヒ
ト成長ホルモン遺伝子がヒトαラクトアルブミンプロモ
ーターの支配下で発現し、ヒト成長ホルモンを生産した
ことを示した。
【0035】
【実施例13】導入したヒト成長ホルモン遺伝子の発現特性 実施例11で得た雌ラット(G0; #1403-4) を交配して得
た次世代の雌のトランスジェニックラット(G1; #1403-
4-14)を用いて導入したヒト成長ホルモン遺伝子の詳細
な発現特性を調べた。本雌ラット(#1403-4-14 ) が性成
熟期間を経過した12週齢に交配し、出産させた。出産
後10日目の乳汁中のヒト成長ホルモン量を測定したとこ
ろ、4.6mg/mLであった。本生産量は、ヒト乳汁中のヒト
αラクトアルブミン濃度に相当するもので、ヒトαラク
トアルブミンプロモーターの支配下で置換されたヒト成
長ホルモンの構造遺伝子が、次世代においても安定した
発現を示した。次に、種々の組織 (脳、唾液腺、心臓、
肺、肝臓、脾臓、腎臓、皮膚、筋肉、乳腺) を採取し、
Acidic guanidine phenol 法 (ニッポンジーン社製ISOG
EN を使用) により全RANを抽出し、RT-PCR法により
各組織におけるHuGH遺伝子の発現を検定した。調製
した全RNA各4μgを使用し、ファルマシア社製 Fi
rst strand cDNA synthesis kit を用いてcDNAを合
成した。得られたcDNAを鋳型にしてPCRを行いヒ
ト成長ホルモンのmRNAを検出した。尚、PCRに使
用したプライマーは、GH3 (5'-TTGACACCTACCAGGAGTTTGA
AG-3';HuGH cDNA [Genebank accession No. V00519 ]
の 191〜214 の位置に相当)とGH4 (5'-TGCGGAGCAGCTCT
AGGTTGGAT-3'; HuGH cDNA の 328〜350 の位置に相当)
を用いた。その結果、乳腺以外の組織では脳において僅
かな発現を認めたが、その他の組織での発現は認めず、
乳腺特異的な非常に強い発現であった。本結果は、本特
許に記載した発現ベクターを使用する方法により、本発
現ベクターで導入した遺伝子を確実に、且つ、乳腺に限
定して発現できことを示すものであった。
【0036】
【発明の効果】本発明で提供される乳腺発現用ベクター
を用いて導入した遺伝子は、該遺伝子が導入されたトラ
ンスジェニック動物の乳腺において有効に機能し、該遺
伝子プロモーターの能力を確実に機能させ、乳汁中に有
用物質の生産を行うことができるため、トランスジェニ
ックミルクの生産を行う動物の効率的な作出方法を提供
することができる非常に有用な乳腺発現用ベクターであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】YAC-αLAC3の概略を示す。括弧内の数値はYA
Cベクターに挿入されたαLA遺伝子の左端からの距離
(Kb)を示す。 制限酵素サイトの略:Bs; BssHII, Mu; MluI, NR; Nru
I, Sa; SalI, Sf; SfiI
【図2】YAC-CGS990-αLAC3の概略を示す。括弧内の数
値はYACベクターに挿入されたαLA遺伝子の左端か
らの距離(Kb)を示す。 制限酵素サイトの略:Bs; BssHII, Mu; MluI, NR; Nru
I, Sa; SalI, Sf; SfiI
【図3】pRS405αLA-HuGH の概略を示す。 制限酵素サイトの略:Hi; HindIII, Ba; BamHI, Xb; X
baI, Xh; XhoI
【図4】YAC-αLAC3-405GHの概略を示す。 制限酵素サイトの略:Bs; BssHII, Mu; MulI, NR; Nru
I, Sa; SalI, Sf; SfiI,Hi; HindIII, Ba; BamHI, Xb;
XbaI, Xh; XhoI
【図5】YAC-CGS990-αLAC3-405GHの概略を示す。 制限酵素サイトの略:Bs; BssHII, Mu; MulI, NR; Nru
I, Sa; SalI, Sf; SfiI
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平林 真澄 栃木県宇都宮市兵庫塚2−19−11 (72)発明者 鈴木 高成 栃木県河内郡南河内町祇園二丁目18番1 ダイアパレス2−306

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外来遺伝子を導入した動物の乳腺におい
    て該遺伝子を発現させ、乳汁中に該遺伝子で規定される
    蛋白質を生産する動物を作出する場合に使用する乳腺発
    現用ベクターであって、乳腺特異的に発現する乳蛋白遺
    伝子の制御領域を含む広範囲のDNA領域を酵母人工染
    色体(YAC) ベクターに挿入して作製されたものであるこ
    とを特徴とする乳腺発現用ベクター。
  2. 【請求項2】 YACベクターに挿入された乳蛋白遺伝
    子の広範囲のDNA領域が、約 210kbのヒトαラクトア
    ルブミン遺伝子の広範囲領域のゲノムDNAである、請
    求項1記載の乳腺発現用ベクター。
  3. 【請求項3】 約 210kbのヒトαラクトアルブミン遺伝
    子の広範囲領域のゲノムDNAのヒトαラクトアルブミ
    ンの構造遺伝子領域をヒト成長ホルモンの構造遺伝子に
    置換した、請求項2記載の乳腺発現用ベクター。
  4. 【請求項4】 YACベクターが、ベクターpYAC4 の右
    アーム及び転換ベクターpCGS990 の左アームから構築さ
    れるベクターである、請求項1〜3のいずれかに記載の
    乳腺発現用ベクター。
  5. 【請求項5】 右アームにテトラヒメナのテロメア(TE
    L) とウラシル選択マーカー(URA3)を、左アームにテト
    ラヒメナのテロメア(TEL) 、酵母のセントロメア(CEN
    4)、複製開始点(ARS1)、リジン選択マーカー(LYS2)、増
    幅エレメント(TK,Gal1 promoter) を持つ、請求項4記
    載の乳腺発現用ベクター。
JP9215610A 1996-07-26 1997-07-25 乳腺発現用ベクター Pending JPH1084981A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002534077A (ja) * 1999-01-06 2002-10-15 アトランティック バイオファーマシューティカルズ インコーポレイティッド トランスジェニック動物における分泌型ヒトアルファ−フェト蛋白質の発現
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