JPH1076543A - 低温機器の保冷施工方法及びそれに用いる発泡成形体 - Google Patents

低温機器の保冷施工方法及びそれに用いる発泡成形体

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JPH1076543A
JPH1076543A JP8248512A JP24851296A JPH1076543A JP H1076543 A JPH1076543 A JP H1076543A JP 8248512 A JP8248512 A JP 8248512A JP 24851296 A JP24851296 A JP 24851296A JP H1076543 A JPH1076543 A JP H1076543A
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cold
heat insulating
pipe cover
low
temperature
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JP8248512A
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Akira Fujie
昭 富士栄
Hiroshi Iwahashi
拓 岩橋
Kaoru Goto
薫 後藤
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Asahi Kasei Corp
Osaka Gas Co Ltd
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Asahi Kasei Corp
Osaka Gas Co Ltd
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保冷性能が長期に亘り高い信頼性を有し、単
一素材からなるため成形加工が容易で、かつ施工の簡略
化、及び施工に要する工数の削減が計れる優れた低温用
保冷材の施工方法を提供する。 【解決手段】 塩化ビニリデン系樹脂発泡粒子の相互を
融着一体化させてなる発泡成形体からなり、低透湿性、
低吸水性、及び圧縮回復性に優れる保冷材を低温用接着
剤、及び硬質ポリウレタン発泡性原液とを用いて互いに
接合して一体構成とする低温機器の保冷施工方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、配管や容器等の低
温機器の保冷材施工方法に関し、さらに詳しくは、塩化
ビニリデン系樹脂発泡粒子の相互が融着一体化された発
泡成形体を用いることによる低透湿性、機械強度、圧縮
回復性、耐熱衝撃性、及び耐候性に優れた低温機器の保
冷施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】低温機器の保冷施工方法については、ク
ラックや他の欠陥の発生がなく、長期に亘って保冷効果
を得るように構成することが必要である。従来、低温機
器の保冷施工は、保冷材料の選択とその施工方法の工夫
とによってその目的を達成してきた。被保冷機器の保冷
材、特に極低温用保冷材としては、単一素材によるもの
はなく、硬質ポリウレタンフォームを主とした複合材料
が専ら使用されてきた。
【0003】例えば、低温流体配管用のパイプカバーに
おいては、低温側の内表面はガラスメッシュや不織布フ
ェルト等で含浸強化された表皮とし、また、外気に接触
する外表面はアルミ箔とポリエステル樹脂とのラミネー
トシート材料が貼り合わされた硬質ポリウレタンフォー
ムが代表的である。また、上記材料を用いて低温機器の
保冷施工を行う場合は、施工の面からも工夫がなされて
おり、保冷材を被保冷機器に装着し、該保冷材と該機器
は接着させずに止着して自由な状態にしておき、該保冷
材の外表面にさらに保冷材を装着する方法等の多層構造
に施工する方法が取られてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のような複雑な構
造を有する保冷材を採用し、かつ多層構造に施工するの
は、特に極低温機器の保冷材に必要な特性の要求水準が
高く、単一素材での達成が難しいことに帰因している。
即ち、低温用保冷材として用いるには、熱伝導率が低く
て断熱に必要な厚みが薄くでき、経済的に有利であるこ
とに加え、 ・透湿性や吸水性が低い材料であること、 ・低温機器と保冷材の線膨張係数の差や保冷材自体の温
度勾配に起因する熱応力に耐える材料(機械的強度、耐
熱衝撃性等)であること、が必要となってくる。
【0005】硬質ポリウレタンフォームは、合成樹脂発
泡体の中でも、熱伝導率が最も低く、優れた断熱材であ
るが、基材樹脂がウレタン結合で構成されているため、
親水性を有し、合成樹脂発泡体の中でも透湿率が高く、
低温保冷材として用いた場合には、温度差により生じる
水蒸気分圧差のために保冷材中に水分の蓄積が生じる。
すなわち、大気中から透湿現象で蓄積された水分によ
り、保冷材内部に結露や結氷が起こり、該フォームの熱
伝導率が増大して、断熱性能の劣化をもたらし易い。
【0006】また、雨水や表面結露水が直接保冷材樹脂
中に溶解して吸水する現象も起こり易い。そのため、単
一素材で低温用保冷材として用いることはできない。か
かる欠点を防止する目的から、硬質ポリウレタンフォー
ムにおいては、難透湿性のアルミ箔とポリエステル樹脂
とのラミネートシートからなる防湿層を外表面に設ける
ことで対応しており、そのため成形加工時の工程数が増
え、煩雑性が避けられなく、生産性に劣る欠点があっ
た。
【0007】また、被保冷機器が冷却された場合には、
被保冷機器と保冷材の線膨張係数の差による大きな収縮
率の差が生じ、熱応力が発生する。硬質ポリウレタンフ
ォームは、ポリイソシアネートとポリオールの反応熱を
利用して発泡成形するため、内部の温度はかなりの高温
に至る場合もあり、成形時の残留応力や部分的な巣やボ
イドが発生し易い。上記熱応力が、こうした欠陥部に応
力集中し、被保冷機器表面からの剥離や保冷材内部にク
ラックが発生する等の材料の持つ本質的な欠陥がある。
この問題を避けるために、硬質ポリウレタンフォームで
は、低温機器と接する内表面にガラスメッシュや不織布
フェルト等を含浸処理し、強化することが行われてお
り、成形加工の煩雑性を高め、生産性に劣る欠点があっ
た。
【0008】また、従来、多層構造の施工が余儀なくさ
れていたのは、上記のような材料強化手法を取り入れて
も、保冷材料の欠陥部への応力集中による材料破壊の懸
念が払拭できないため、第1層目の保冷材を接着固定す
ることなく自由に移動し得る状態を維持することで保証
を得るもので、保冷材相互間の接着は第2層目以上の層
で行い、気密性を確保するものである。しかしながら、
一方で施工作業の煩雑性や作業工数の増大をもたらすと
いう欠点があった。
【0009】このように単一素材で上記要求特性を満足
でき、長期的な保冷効果の信頼性に優れ、生産性に優れ
た保冷材は今までなく、出現が特に切望されている。本
発明の目的は、極低温機器の保冷材として使用しても吸
水や透湿現象による保冷材内部への水分蓄積が極めて低
く、断熱性能の劣化が極めて小さく、単層で使用しても
耐熱衝撃性に優れ、クラック等の発生がなく長期の耐久
性に優れ、施工作業を容易にし、作業工数の低減を計る
ことのできる低温機器の保冷施工方法を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、次の構成を有する。すなわち、本発明は、
被保冷機器を該被保冷機器の外表面を2以上に分割する
2以上の保冷材で覆った後、該保冷材相互を接合して一
体化する低温機器の保冷施工方法であって、該保冷材と
して、塩化ビニリデン系樹脂発泡粒子の相互を熱融着一
体化させてなり、透湿率が1×10ー5〜4×10ー4g/
m・h・mmHg、圧縮回復率が60〜98%、かつ吸
水量が0.01〜0.5g/100cm2である発泡成
形体を用いることを特徴とする低温機器の保冷施工方
法、であり、その際、保冷材と被保冷機器との間を止着
した後、ー50℃における引張破断伸びが1〜300%
である接着剤及び/又は硬質ポリウレタン発泡性原液を
用いて、該保冷材相互を接合して一体構成とすること、
保冷材が単層であること、保冷材が該保冷材相互の接合
部にあいじゃくり構造を有することを特徴とする低温機
器の保冷施工方法、である。
【0011】以下、本発明の内容を説明する。本発明に
用いる保冷材の基材樹脂である塩化ビニリデン系樹脂の
特長は、合成樹脂の中でも気体のバリアー性が特に優れ
ている。このため、塩化ビニリデン系樹脂に熱伝導率の
低い気体を含有させて発泡体とすれば、長期間に亘って
熱伝導率が低い発泡断熱材となること、及び、該樹脂は
疎水性のユニット単位から構成されるため、環境湿度に
影響されることなく優れた水蒸気バリアー性を有し、該
樹脂からなる発泡体は既存の合成樹脂発泡体の中で最も
透湿率が低い発泡体にもなることは本発明者らが、既に
明らかにしている
【0012】まず、本発明の第1の特徴である発泡成形
体の透湿率について述べる。低温用保冷材として、長期
に亘ってその断熱性能を維持する上で最も重要な特性は
保冷材自体の含水現象であり、保冷材内部に結露水や結
氷が発生するとその熱伝導率は増大し、断熱機能を喪失
するに至る。保冷材の含水現象は、主として保冷材内部
の温度と外気温度との差が水蒸気分圧差を発生させ、大
気中の水蒸気が気体状態のまま保冷材である発泡体の気
泡膜を透過して保冷材内部に水が蓄積していくことによ
るものである。
【0013】保冷材として施工されれば、10年ないし
20年に亘る長期の使用に耐える必要がある。上記現象
は保冷材が外気と接触する外表面から起こる現象のた
め、外表面を非透湿性、非透水性の材料で被覆された保
冷材を用いれば解決できる。しかし、実際のプラント配
管等では保冷材同士を接合する目地部や分岐、エルボ、
バルブ、フランジ等の施工を含むものであり、これら全
てに対して非透湿の材料で被覆処理を欠陥無く行うこと
は極めて難度の高いことである。
【0014】目地部や上記部分の防湿、防水処理に欠陥
等が発生すると上述の原因による含水現象が進行するこ
とになる。従来の硬質ポリウレタンフォームでは、比較
的親水性の高い樹脂であるが故に水分溶解度も高く、透
湿率も大きいため、急速な含水が起こり、水分が配管表
面に至り凍結することがある。従って、保冷材自体が難
吸水性、難透湿性であることはこうした現象を回避する
点において必要な条件となる。
【0015】ここで、保冷材が透湿含水した結果として
発生する問題は、保冷材自身の熱伝導率が上昇し、熱量
損失が大きくなることにある。熱量損失が許容できる範
囲としては、少なくとも熱伝導率の上昇が初期値の1.
5倍以下であることが必要である。この観点から本発明
の塩化ビニリデン系樹脂からなる発泡成形体を見ると、
図4ー(a)に示す結果から、熱伝導率を初期値の1.
5倍以下に押さえるためには、透湿含水量が約20容量
%以下であれば良いことが外挿される。
【0016】一方、温度と相対湿度を設定すれば、水蒸
気分圧差から透湿による含水量は概略計算ができる。地
域によって、温度や湿度は異なるが、平均的に観て10
〜20年に亘って、保冷材の含水量を20容量%以下に
維持するためには、保冷材に用いる発泡体の透湿率は4
×10ー4g/m・h・mmHg以下である必要がある。
透湿率が4×10ー4g/m・h・mmHgを越えると保
冷材の経年的な透湿含水量が大きくなり、熱伝導率の大
幅な上昇が起こり、実用に供することができない。
【0017】なお、透湿率が1×10ー5g/m・h・m
mHg未満の発泡体は発泡倍率を低くせざるを得なくな
り、保冷材自体の熱伝導率が上昇して本来の保冷機能を
発現できなくなる。即ち、保冷材の透湿率は1×10ー5
〜4×10ー4g/m・h・mmHgの範囲である必要が
ある。さらに、長期に亘る含水による熱伝導率の経年劣
化を抑制するためには、より好ましい透湿率の範囲とし
て2.0×10ー5〜3.0×10ー4g/m・h・mmH
gの透湿率であることが良い。
【0018】保冷材の透湿率が上述のように低い範囲に
あると、従来の合成樹脂発泡体にはない特性であり、極
低温用保冷材の施工において専ら行われてきた2以上の
多層構造による保冷施工を変更することができる。即
ち、本発明の発泡成形体を用いることにより、単層構造
による保冷施工を今まで達成し得なかった高い信頼性を
持って行うことができるようになる。このような低い透
湿率を、他素材との複合化を必要とせず、単体で発現で
き、かつ、熱伝導率の低い発泡体を工業的に供給できる
ものは、本発明の塩化ビニリデン系樹脂発泡粒子相互を
融着一体化させた発泡成形体を除いてはないのが現状で
ある。
【0019】本発明の第2の特長は、塩化ビニリデン系
樹脂発泡粒子からなる発泡成形体の保冷材において、圧
縮回復率が60%以上であることにある。本発明の目的
の1つは、単一素材で構成される保冷材によって、成形
加工、及び保冷施工の簡略化を計ることにある。そのた
めには、保冷材を成形加工した後の取り扱い、輸送過
程、施工時の取り扱い、及び施工後の低温機器の置かれ
る環境や取り扱いによって損壊し易いものであってはな
らない。
【0020】即ち、従来の保冷材のように表面を高強度
材料で補強する必要がなく、従来材料のように圧縮変形
によって坐屈等の永久変形を起こし易いものであっては
ならなく、取り扱い上の充分な機械的強度を有し、特に
大きな圧縮歪みを受けても回復し、永久歪みとして残留
しない特性が必要である。例えば、保冷材を機器に止着
固定する場合にステンレス帯鋼等で緊縛することはよく
行われることであり、これによって保冷材が坐屈変形す
ることなく変形回復し、目的の保冷性能を充分に満足で
きる状態にあることが必要である。
【0021】上述のような変形歪みを受けた際の回復特
性を表す尺度として圧縮回復率がある。本発明では、7
5%の圧縮歪みを受けた際の圧縮回復率として60%以
上の値を有する必要がある。75%の圧縮歪みを受けた
際の圧縮回復率が60%未満であると気泡構造の破壊を
招くことがある。即ち、取り扱いや施工時に保冷材が受
ける種々の変形に対して坐屈等の永久変形が残ることに
なり、その結果、当初設計の保冷機能を発現できなくな
り、また多大な材料ロスによる経済的な不利をもたら
す。なお、合成樹脂発泡体では75%もの圧縮歪を受け
た場合に完全に変形回復することは望めなく、発泡倍率
によって変化はするが、98%以下の圧縮回復率となる
ことが実状である。従って、圧縮回復率の適正な範囲と
しては、60〜98%の範囲である。
【0022】本発明の第3の特長は、吸水量が0.01
〜0.5g/100cm2 となる発泡成形体を保冷材に
用いることにある。この特長、即ち吸水量が少ないこと
は、特に発泡体のような樹脂と気体との複合材料におい
てはしばしば問題となる発泡体内部の残留応力やボイド
等の不均質部分が少なくなることであり、低温熱衝撃時
の熱応力集中による材料破壊が起こり難いことになる。
特に低温用保冷材として用いる場合には極めて好ましい
特性である。
【0023】これを実施例1の結果で説明すると、3.
5mのスパンで支持固定された6Bステンレス配管(外
径165.2mm、厚み5.0mm)に1.5m長さの
塩化ビニリデン系樹脂発泡成形体からなる保冷パイプカ
バー2本を用いて、両パイプカバーの両端50mm幅を
ウレタン系接着剤で配管に接着固定した上で両パイプカ
バーを互いに接着接合して3m長さの保冷施工を行っ
た。配管内に液体窒素(沸点ー196℃)を注ぎ込み熱
衝撃性を観察した。配管は、上下の温度差によりボウイ
ング現象(弓なり状の変形)を起こし、最大曲げ寸法で
14〜20mmの変形が観測された。
【0024】つまり保冷材は、配管材料と保冷材との線
膨張係数の差により発生する熱応力に加え、ボウイング
現象による曲げ変形を受けることになったが、保冷パイ
プカバーの外観異常や破損、接合部の破損等の異常は認
められなかった。さらに、保冷材を解体して内部の観察
を行ってもクラック等の異常はなんら観察されなかっ
た。上記変形量を実プラントの9mスパンの支持間隔に
換算すれば、約92mmの最大曲げ寸法に至る変形量に
おいても異常はないことになり、熱衝撃に対してかなり
高い安全性を有することが確認できている。
【0025】保冷材は、目的とする形状の金型内に通常
その容積の60〜65%を発泡粒子が占める状態の最密
充填状態にした後、加熱膨張させて、発泡粒子間に形成
されていた空隙部分(金型容積の35〜40%)を埋め
ると同時に融着一体化された発泡成形体とするものであ
る。もし発泡粒子の充填が部分的に不良となれば、その
部分は過剰発泡し、他の部分に比べて本来の形状発現が
できないか、または、ヒケが発生し易く、外観で容易に
識別できるため不適合品として即座に区別ができる。
【0026】即ち、等方的に自由発泡した発泡粒子を金
型内に確実に充填して発泡成形体とするため、得られる
発泡成形体中に巣やボイド等の欠陥部分が形成されない
こと、及び、等方的な発泡であり、個々の発泡粒子間の
空隙部を直接熱媒で加熱するため発泡成形体内部の場所
による不均一性が発生し難いという特長がある。その結
果、大きな温度差によって生じる熱応力が集中するよう
な保冷材中の欠陥部や不均一部がなく、剥離やクラック
の発生が起こり難い。このような欠陥部の有無を検出す
る最も適切な方法としては、保冷材の試験片を水中に浸
漬してその増加重量による吸水量を測定する方法があ
る。
【0027】本発明の目的には保冷材として用いる発泡
体の吸水量は0.01〜0.5g/100cm2 である
ことが肝要である。吸水量が0.5g/100cm2
越えることは、連続気泡構造を有するか、独立気泡構造
の発泡体であるにも関わらず粗大なボイドや巣が存在す
るということであり、熱応力の集中箇所が存在し、耐熱
衝撃に劣るという問題がある。また、0.01g/10
0cm2 未満ということは、試験片の切り出し時に表面
に現れる微細な開放気泡の存在を考えると表面付着水も
あるために測定下限界にあるということである。上記条
件を保冷材の任意の箇所で常に満足する本発明の発泡成
形体は耐熱衝撃性に優れた低温用保冷材に好適な材料で
ある。
【0028】次に、本発明の保冷材同士を接合する接着
剤、及び硬質ポリウレタン発泡性原液について述べる。
ここで言う接着剤とは低温機器を保冷する保冷材同士を
接合して目地処理するために使用するものであり、その
目的は保冷材同士の接着を行うと同時に隙間なく目地処
理して冷気の対流による伝熱、及び水蒸気の透過を抑制
するためのシールを行うものである。
【0029】また、硬質ポリウレタン発泡性原液とは、
ポリイソシアネート液とポリオール液、及び発泡剤を混
合した液のことであり、調合後数分で反応が進行してそ
の反応熱による発泡剤の気化を利用することにより発泡
を行うものである。該発泡性原液は、主として保冷材を
施工していく過程、あるいは施工上の理由で発生してく
る10〜50mm程度の間隙やバルブ部分等の保冷材が
追従し難い異形部分に発生する間隙を充填処理するもの
で、上記原液を現場にて注入発泡して保冷材同士を接合
するものであり、従来の保冷材の施工においても行われ
ていたものである。
【0030】プラント等の実際の低温機器類を定形サイ
ズの保冷材で保冷施工していく過程では、継ぎ目、取り
合い部等の処理、工作、施工上の理由から部分的な間隙
の発生は避けられなく、硬質ポリウレタン発泡性原液に
よる現場での注入発泡で部分的な間隙を充填処理するこ
とは他に替わるものがなく必須の施工方法である。
【0031】これに対して、定形サイズの保冷材同士を
接合していく過程で極めて重要なものが目地処理の方法
である。特に極低温用保冷材の目地処理においては、低
温機器を構成する材料と保冷材の線膨張係数の差によっ
て生じる熱応力による圧縮、引張に追随することができ
ず、ついには目地処理部に隙間を生じるか、接着剤の硬
度が増加して伸度を失いクラックを生じることがある。
その結果、冷気の対流による著しい断熱性能の低下を招
き保冷材の外表面に結露または結霜を生じるなどの問題
を起こす。
【0032】本発明では、先述のように保冷材自体の線
膨張係数が低く、熱応力の集中も起こり難く、耐熱衝撃
性が優れるため、従来の保冷材と比べると使用しうる低
温用接着剤の範囲が広く選択できる。この理由から本発
明では保冷材同士を接合する接着剤は、ー50℃におけ
る引張破断伸びが1〜300%の範囲にあるものを使用
する。ー50℃における引張破断伸びが1%未満の接着
剤では、特に極低温の保冷材として用いた場合に接着剤
自体にクラックが発生したり、接合部の破断剥離を起こ
す危険性がある。また、引張破断伸びが300%を越え
る接着剤は工業的な入手が困難であったり、経済的に不
利である。
【0033】本発明の目的に使用できる接着剤はポリウ
レタンエラストマー系が好適であり、市販のものとして
は、例えば、「ソフランネート5050」(東洋ゴム
(株)製品:商品名)、「エアーライトフォーム20
6」(日清紡(株)製品:商品名)、「EX−21A/
EX205B」(ポリウレタン化成(株)製品:商品
名)等がある。
【0034】以上の説明のように、本発明の塩化ビニリ
デン系樹脂発泡粒子相互を融着一体化させた発泡成形体
を用いることで保冷材自体の低透湿性、圧縮回復性、及
び耐熱衝撃性は大きく改善されるが、低温機器の保冷施
工では、保冷材同士を接合して一体構成とするため、接
合部の構造についても全体の保冷性能に大きく関与す
る。従って、従来、目地部の重なりを避けることで目地
部での熱短絡を防止し、透湿現象を低減する2以上の多
層構造による施工を採用してきた。
【0035】一方、施工の簡略化が計れる単層施工で
は、接合部の目地処理の良否が保冷施工全体の機能に影
響する。従って、単層構造で施工する場合には、接合部
での熱短絡の防止、透湿現象を低減するために、あいじ
ゃくり構造を付加加工することが好ましい。本発明の塩
化ビニリデン系樹脂発泡粒子では、複雑な形状の金型で
も対応できるため、融着一体化と同時にあいじゃくり構
造を付加した発泡成形体とすることが容易にできるもの
である。
【0036】あいじゃくり構造とは、例えば低温流体配
管の2つ割した割筒型保冷パイプカバーであれば、図1
に示すように円周方向端面、及び長手方向分割面が互い
に勘合しあうような段差形状に加工された構造のことを
言う。段差の深さ(2、7)は保冷材の肉厚によっても
適宜選択できるが、保冷材の成形加工の容易性と内円周
面と配管表面との空隙低減の目的から、通常10〜50
mm程度が好ましい。また、段差の位置は目的によって
任意に選択できるが、勘合に際し寸法精度が要求される
ためできるだけ等価な分割が良く、保冷材の肉厚中心近
傍が好ましい。
【0037】次に、本発明で用いる保冷材の製造方法に
ついて述べる。塩化ビニリデン系樹脂発泡粒子とは、塩
化ビニリデン、及び、これらと共重合可能なビニルモノ
マー1種以上とからなり、塩化ビニリデンを30重量%
以上を含み、ガラス転移点が85℃以上である塩化ビニ
リデン系共重合体に有機揮発性発泡剤を含有せしめた樹
脂粒子を加熱発泡することにより得られる独立気泡構造
の発泡粒子をいい、詳細には特開昭63ー170433
号公報、特開昭63ー170434号公報に開示される
ものである。
【0038】該樹脂発泡粒子は加熱により発泡、膨張す
る性質を有し、所望する任意形状の金型に、金型容積の
60〜65%を該粒子が占めるよう最密充填した後、ス
チーム等の加熱媒体を吹き込んで加熱し、個々の発泡粒
子が膨張し互いに隣接する発泡粒子同士が互いに押圧し
合いながら発泡粒子間の空隙を埋め、相互が融着一体化
された発泡成形体を構成するものである。
【0039】塩化ビニリデン系樹脂発泡体の特徴は、基
材樹脂のガスバリアー性が極めて優れているため、用い
得る発泡剤の選択幅が広く、独立気泡構造内部に発泡剤
ガスを種々の環境下で長期間維持できることにあり、発
泡剤ガスの性質を付加した発泡成形体とすることができ
る。例えば、熱伝導率の低い発泡剤ガスの性質を付加す
れば、低熱伝導率の優れた発泡断熱材が得られる。
【0040】今後は地球環境問題の点からオゾン破壊係
数がゼロであるもの、および温暖化への影響が低い発泡
剤への転換が必要となってくるが、この対応について
も、硬質ポリウレタンフォーム等の反応型の熱硬化性樹
脂発泡体では反応熱による発泡剤の気化を利用すること
から気泡膜の樹脂化速度と発泡剤の気化速度のバランス
があり、発泡剤の沸点からの制約がある。一方、本発明
の塩化ビニリデン系樹脂発泡体ではこうした制約が少な
くより容易に対応できる長所も発現できる。また、塩化
ビニリデン系樹脂発泡体の大きな特徴として耐候性に優
れる点もある。これは、保冷材として製造されたものが
施工工事が完了するまで、屋外で保管しても著しい変色
や反り、曲がり等の形状変形が極めて小さいこと、基材
樹脂の劣化が非常に少ないことがある。
【0041】本発明でいう低温機器とは、常温以下の温
度に調節する必要のある機器類のことであり、通常は2
0℃以下、ー200℃程度の極低温領域までを含むもの
である。また、機器類とは流体等の輸送用配管、圧力容
器、貯槽等であり、フランジ、エルボ、バルブ、サポー
ト、レデューサ、T字管、ボス、キャップ等を含むもの
である。本発明の施工方法をより明確にするために、極
低温流体配管の単層による保冷施工方法についての1例
を図で説明する。
【0042】図1に示すような2つ割になる半円筒状の
保冷パイプカバーをあいじゃくり構造を持たせて成形
し、長手方向分割面1、2、3、および内表面4の円周
両端面から50mm幅に先述の接着剤を1〜5mmの厚
みで塗布してから、図2に実施態様で示す如く、極低温
配管9の外周10に2つを一対にして内表面を内側にし
て相互に接合させ、これをステンレス製帯鋼等で止めて
固定させる。続いて他の一対のパイプカバーを同様にし
て、さらに施工済みの円周端面の凸型あいじゃくり接合
部6、7に接着剤を塗布して同様にして固定させる。こ
れらの工程を繰り返して極低温配管に保冷パイプカバー
を被覆する。接着剤の硬化完了後、長手方向目地部1
1、及び円周端面目地部12に防水、防湿テープを張り
付け被覆して保冷施工を行う。
【0043】また、配管の曲がり部(エルボ)について
は、図3に示すような2つ割になるエルボカバーをあい
じゃくり構造を持たせて成形し、曲がり方向分割面1
3、14、15、および内表面16の円周端面から50
mm幅に接着剤を塗布し、上記同様に固定させ、目地部
を防水、防湿テープ被覆を行う。エルボカバーの両端面
は共に凸型あいじゃくり構造とした成形体とし、続いて
図1の保冷パイプカバーを施工していくことが作業上好
ましい。
【0044】さらに、実際の施工の場合には、分岐やフ
ランジ、バルブ等の取り合い部分では定形サイズのパイ
プカバーを切断して継ぎ合わせることもしばしば発生す
る。このような場合は、継ぎ合わせる両端面を切断し、
10〜50mmの間隙を形成させ、硬質ポリウレタン発
泡性原液を注入して発泡硬化させて継ぎ合わせる。ま
た、フランジ部分の場合には、図6に示す如く2つ割に
なるフランジカバーとスペーサーとで被覆し、次いで間
隙部分に硬質ポリウレタン発泡性原液を注入して発泡体
で満たし、さらに、バルブ部分においては、板状体で被
覆し、次いで間隙部分をフランジ部分と同様に発泡体で
満たすことは好ましいことであり、これらは共に本発明
の範囲に含まれる。
【0045】本発明により従来技術では種々の材料を複
合して成形していた低温用保冷材が単一素材で成形加工
することができ、加工工程の簡略、省力化が可能とな
り、保冷材の施工においても、特に極低温機器の保冷施
工で安定性、信頼性のより高い単層施工が容易になり、
作業の簡略化、工数の低減が可能となる。また経年的な
透湿吸水等による断熱性能の劣化が極めて少なく耐久性
に優れ、信頼性の高い施工が可能となる。
【0046】
【実施例】以下、実施例等を用いて本発明を更に詳しく
説明する。なお、本発明で用いた評価方法は次の通りで
ある。 (1)透湿率 : JIS A 9511に基づいて測
定する。より具体的にはJIS Z 0208(防湿包
装材料の透湿度試験法)において恒温恒湿装置の条件B
に基づく。 (2)吸水量 : JIS A 9511に基づいて測
定する。 (3)含水量 : 発泡体中に含まれている水分量を測
定する方法であって、上記(2)の吸水量とは異なり、
含水した発泡体試験片50×50×50mmの初期重量
を測定した後、60℃の条件下に置き、所定時間(24
時間)毎に重量計測を行い、重量変化が見られなくなっ
たことを確認しながら20日間の乾燥処理を行う。乾燥
処理後の重量を測定して、発泡体中の水分量を容量%で
求める。 (4)密度 : JIS A 9511に基づいて測定
する。より具体的にはJIS K 7222(硬質発泡
プラスチックの密度試験方法)に基づく。
【0047】(5)熱伝導率 : JIS A 141
2(熱絶縁材の熱伝導率及び熱抵抗の測定方法)に基づ
いて測定する。 (6)圧縮回復率 : 厚み25mm、長さ、及び幅1
00mmの試験片を10mm/minの速度で試験片の
元の厚さ(L0 )の75%までそれぞれ圧縮した後、直
ちに同速度で荷重を取り除き圧縮応力・歪み曲線を測定
記録する。圧縮回復率は次式で求める。 回復率 = (1ーL/L0 )×100 ここに、Lは圧縮荷重を取り除いた時の試験片厚みの変
形長さを示す。 (7)引張破断伸び(接着剤硬化物) : JIS K
7113に準拠し、試験速度は50mm/minにて
測定する。但し、試験片の作製は、厚み1mmの2号型
試験片寸法と同様の金型を作製し、その型内に接着剤製
造者の取り扱い要領書に基づいて調合した組成物を充填
した後、23℃で2週間硬化養生して試験片とした。
【0048】(実施例1)塩化ビニリデン、N−フェニ
ルマレイミド、アクリロニトリル、及び、スチレンをそ
れぞれ42、2.4、44.3、11.3モル%の組成
比の混合物100重量部に対して0.02重量部のジビ
ニルベンゼンを加えて懸濁重合して共重合体樹脂粒子を
得た。該樹脂粒子にモノクロロジフルオロエタンを70
℃にて24時間かけて含浸処理を行い、発泡性樹脂粒子
を得た。
【0049】この発泡性樹脂粒子を0.2kg/cm2
ーGのスチームにより加熱発泡して予備発泡粒子を得
た。この予備発泡粒子を汎用の発泡スチロール自動成形
機にてパイプカバー用金型に投入し、一方加熱を0.3
kg/cm2 のスチームで10秒間、続いて両面加熱を
0.5kg/cm2 のスチームで60秒間行い、水冷し
たのち、離型して図1に示す保冷パイプカバーを得た。
パイプカバーのみかけ密度は40kg/m3 であり、寸
法は、内径6B、肉厚100mm、長さ1000mm
で、あいじゃくり構造部の段差は、肉厚の中心部、外表
面、及び内表面から50mmの箇所に設け、段差高さは
30mmとした。
【0050】このパイプカバーより切り出した試験片
で、透湿率、及び吸水量を求めた結果、それぞれ9.5
×10ー5g/m・h・mmHg、0.05g/100c
2 であった。上記パイプカバーを3セット準備し、内
1セットを半分の長さに切断し、500mm長さのもの
を2セット作製した。1000mm長と500mm長の
半円筒状のパイプカバーそれぞれのあいじゃくり部分に
ー50℃における引張り伸び率が110%である低温用
ウレタン系接着剤(東洋ゴム(株)製「ソフランネート
5050」)を塗布して互いに接着させて1500mm
長の半円筒状パイプカバーを2セット作製した。
【0051】3500mmのスパンで固定支持された6
BのSUS配管を準備し、上記1500mm長の2分割
型パイプカバー1セットを分割面のあいじゃくり部全
面、及び内表面の円周端面から50mm幅の部分に上記
ウレタン系接着剤を塗布して、6B、SUS配管に、図
2に示すような一対のパイプカバーを相互に接合させ
て、ステンレス製帯鋼で止めて配管自体に接着固定し
た。同様にしてもう一対の1500mm長のパイプカバ
ーをあいじゃくり部分で接着勘合させて3000mm長
さの配管保冷施工を行った。
【0052】接着剤を十分に硬化養生させた後、6Bの
SUS配管内部に液体窒素(ー196℃)を注ぎ込み、
約3時間かけて配管内部を液体窒素で充満させ、その後
内部の液体窒素が自然蒸発するまで熱衝撃挙動を観察し
た。その間、保冷材外表面、及び接合部のクラックや剥
離等の異常は全く観察されなかった。また、実験終了後
に保冷材を解体し、保冷材内表面の観察を行ったが、保
冷材のクラックや破損、及び目地接合部の隙間発生等の
異常は全く観察されなかった。
【0053】また、液体窒素を注入途中で配管の上下部
に生ずる温度差によって配管のボウイング現象(弓なり
状の反り)が発生し、最大曲げ寸法が20mmにも達し
ていた。即ち、本実験ではSUS配管と保冷材の線膨張
係数の差により発生する熱応力に加え、上記ボウイング
による曲げ応力も付加された厳しい熱衝撃性試験となっ
ていたが、なんら異常は観察されず、塩化ビニリデン系
樹脂発泡粒子の相互が融着一体化した発泡成形体が極低
温用保冷材としての優れた適正を有することが確認され
た。
【0054】(実施例2)低温室と高温室とが隔壁を介
して隣接し、低温室はドライアイスを用いてー60℃に
制御し、高温室は55℃に維持して、かつ該温度におけ
る飽和水蒸気圧が常に存在するように調整できるよう断
熱材で構成された装置を準備する。実施例1と同様にし
て、見かけ密度が40kg/cm3 、 透湿率が9.5×
10ー5g/m・h・mmHg、吸水量が0.05g/10
0 cm2 である200×200×50mmの板状の塩化
ビニリデン系樹脂発泡体を作製し、その片面を水蒸気不
透過性のアルミ板(厚み0.1mm)を貼り付けた試験
体を準備する。
【0055】この試験体の初期重量を測定した後、該試
験体を上記装置の隔壁として、アルミ板を貼り付けた側
を低温室側に、他の側面を高温高湿度室側になるように
設置し、上記条件下で促進加湿試験を行った。試験体中
には透湿現象により吸湿し、内部で結露や結氷が起こり
水が蓄積されていく。この蓄積含水量の実測値と経過時
間との関係、及び含水した状態での試験体の40℃にお
ける熱伝導率を測定し、試験体中の含水量と熱伝導率と
の相関を求めた。
【0056】また、試験体中の蓄積含水量については、
試験体の透湿率から計算推定ができる。即ち、試験体の
両側の室温が一定であるから、試験体を厚み方向に数分
割し、その各層における温度が試験体の平均熱伝導率か
ら計算でき、それぞれの層(温度)における飽和水蒸気
圧が決定される。各点の水蒸気分圧差Δpと透湿率Pと
からその点における透湿量Qが式Q=(P・A・Δp・
t)/Lから計算できる。各分割層における流入湿流と
流出湿流の差から蓄積含水量を計算し、その総和を求め
て算出する。ここに、Aは透湿面積、tは時間を表す。
【0057】以上の結果を表1、および蓄積含水量と熱
伝導率の相関を図4の直線(a)に示す。温度差による
保冷材内部への蓄積含水量の実測値と上記計算値とは良
い一致を示しており、計算による推定が保冷材の寿命推
定に精度よく使用できることが分かる。
【0058】
【表1】
【0059】(比較例1)試験体の発泡断熱材を従来か
ら極低温用として用いられている硬質ポリウレタンフォ
ーム(PUF)とする以外は実施例2とまったく同様の
試験を行った。硬質ポリウレタンフォーム(PUF)は
見かけ密度が38kg/m3 、透湿率が2.0×10ー3
g/m・h・mmHg(東洋ゴム(株)製品)のものを
用いた。その結果を同じく表2、および図4の直線
(b)に示す。
【0060】また、旭化成工業(株)の水島工場のエチ
レンプラントの液化エチレンの配管の一部において、外
装鋼板表面に結氷、結霜が発生しており、保冷性能が劣
化していたため、解体して種々の解析を試みた。保冷材
は従来の硬質ポリウレタンフォームを用いて2層工法で
施工され、最外層の外表面にはアスファルト系マスチッ
クで防湿処理された保冷施工後20年を経過したもので
ある。この一部を解体し、種々の部分からサンプリング
して、含水量と熱伝導率の相関を測定し、その結果を同
じく図4の(c)に示す。
【0061】
【表2】
【0062】(実施例3)実施例1と同様にして、発泡
倍率の異なる塩化ビニリデン系樹脂の予備発泡粒子を得
て、密度が33、40、100、200kg/m3 であ
る300×300×25mmの板状の発泡成形体を作製
した。これらの発泡成形体の透湿率、及び吸水量を測定
し、また、この透湿率から内温ー160℃ の低温容器
に120mm厚みの平面状保冷施工をした場合に想定さ
れる透湿現象による10年間の蓄積含水量を算出した。
これらの結果を表3に示す。
【0063】推定計算は次の方法によった。1年間を夏
期(30℃、80%RH)、冬期(10℃、65%R
H)の2期に分け、温度、及び相対湿度を括弧内のよう
に設定した。保冷材の厚み方向を層状に20分割し、各
層表面の温度で決定される水蒸気分圧を求め、層間に生
じる水蒸気分圧差を用いて各層の流入湿流と流出湿流の
差を蓄積含水量として求めた。全ての層について総和し
て蓄積含水量を求め、保冷材1m2 当たりの総蓄積含水
量を保冷材単位容積当たりの容量%として表した。
【0064】上記計算では、保冷材内部に蓄積された水
分は系外へ放散することはないという前提での計算であ
る。表3の結果から透湿率が9.5×10ー5、2.0×
10ー4g/m・h・mmHgの場合、10年間使用後に
おいてそれぞれ5.3、及び11容量%の蓄積含水量と
なることが推定される。一方、図4の直線(a)の結果
において約10容量%の吸水では著しい熱伝導率の上昇
はなく、十分に使用に耐え得るものであることが分か
る。
【0065】
【表3】
【0066】(実施例4)実施例1と同じ塩化ビニリデ
ン系樹脂からなる発泡成形体のパイプカバーを準備し
た。この上記パイプカバーより試験片を切り出し、圧縮
回復率を測定したところ82%の結果が得られた。その
圧縮応力・圧縮歪み曲線を図5(a)に示す。パイプカ
バーを6Bのステンレス配管に実施例1と同様にして施
工してステンレス帯鋼で緊縛したところ緊縛箇所での変
形による気泡構造の坐屈破壊は発生せず、該帯鋼を取り
除いても初期の表面外観を保持していた。また、実施例
3、実験No.9と同じサンプルから切り出した試験片
では圧縮回復率が38%であった。
【0067】(比較例2)比較例1と同一素材からなる
6B配管用パイプカバーを入手し、試験片を切り出し、
圧縮回復率を測定した。同一パイプカバーから切り出し
た2片の圧縮回復率はそれぞれ38%、43%を示し
た。その圧縮応力・歪み曲線を図5(b)、(c)に示
す。実施例4と同様にしてパイプカバーを配管に施工し
て、ステンレス帯鋼で緊縛したところフォームの坐屈変
形が起こり、気泡構造の破壊が発生した。
【0068】図5に示す圧縮応力・歪み曲線から本発明
の発泡成形体では、降伏点を持たず、圧縮荷重を取り除
いた後の永久歪みが小さく回復性に優れることが分か
る。一方、従来用いられてきた硬質ポリウレタンフォー
ムでは、約8%以上の歪みが加わると降伏点に至り、そ
れ以降は坐屈変形を起こし回復率に極めて劣るため単一
素材では実用に耐えなく、他素材との複合による強化を
計らねばならないことが分かる。
【0069】(実施例5)実施例1と同様にして、密度
が40kg/m3 である300×300×50mmの板
状の塩化ビニリデン系樹脂発泡成形体を作製した。ま
た、厚みが2mm、長さ305mm、幅70mmのステ
ンレス板を2枚、及び厚み2mm、長さ300mm、幅
70mmのステンレス板を2枚準備した。発泡成形体の
4端面(300×50mmの側面)に表4に示す低温用
ポリウレタン系接着剤を約1mmの厚みで塗布した後、
上記ステンレス板を止着してステンレス帯鋼で固定して
7日間の養生硬化を行った。
【0070】用いた接着剤は表4に示したものであり、
前述の評価方法(6)によって測定したー50℃におけ
る引張破断伸びの値も一緒に表4に示した。出来上がり
の形状は、ステンレス板が側面フレームを形成し、発泡
成形体が底面となる深さ20mmの空間部を形成する容
器状のものである。養生硬化後に、容器空間部に液体窒
素(ー196℃)を注ぎ込み、約2時間の間、その状況
変化を観測した。
【0071】接着剤の低温脆化、及びステンレスと発泡
成形体との線膨張係数の差による、接着剤と発泡成形体
間に発生する熱応力により、接着剤のクラック発生、ま
たは発泡体と接着剤の界面近傍での剥離が発生すること
がある。その状況を下記の3段階に分けて評価した。 ・接着剤にクラックや剥離の発生が観測されない。 ‥‥‥‥‥‥ ○ ・接着剤近傍に部分的な剥離は発生するが、発泡体の厚み方向に貫通することは ない(液体窒素の漏洩は無い)。 ‥‥‥‥‥‥ △ ・接着剤のクラックや接着剤近傍に剥離が発生し、発泡体厚み方向に貫通する (液体窒素の漏洩が起きる) ‥‥‥‥‥‥ × 以上の結果を表4に示す。この結果から低温熱衝撃試験
では引張破断伸びの大きな接着剤ほどクラックや剥離の
発生は抑制できる傾向にあるが、低温用のウレタン系接
着剤を使用する限りにおいては著しい剥離現象が観測さ
れないことが確認される。
【0072】
【表4】
【0073】
【発明の効果】本発明の塩化ビニリデン系樹脂発泡粒子
を融着一体化させた発泡成形体からなる保冷材の施工方
法は、長期の保冷効果に優れ、特に低温熱衝撃性、かつ
透湿抵抗に優れ、他素材との複合成形が不要な単体での
使用が可能であり、単層での施工もできる経済的に優れ
た保冷施工方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の保冷材パイプカバーの一態様を示す模
式図である。
【図2】本発明の保冷施工方法の実施態様の一例を示す
模式図である。
【図3】本発明の保冷材エルボカバーの一態様を示す模
式図である。
【図4】保冷材中に蓄積された含水量とその熱伝導率と
の相関を示す図である。
【図5】保冷材に使用する発泡成形体の圧縮応力・歪み
曲線を示す図である。
【図6】本発明の保冷施工方法の他の実施態様の例を示
す模式図である。
【符号の説明】
1 長手方向の分割面 2 同上 3 同上 4 内表面 5 外表面 6 円周方向分割面 7 同上 8 同上 9 極低温配管 10 極低温配管の外周 11 長手方向目地部 12 円周方向目地部 13 曲り方向の分割面 14 同上 15 同上 16 内表面 17 外表面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 富士栄 昭 三重県鈴鹿市平田中町1番1号 旭化成工 業株式会社内 (72)発明者 岩橋 拓 和歌山県橋本市三石台3−29−2−1410 (72)発明者 後藤 薫 千葉県市原市山田橋732−2

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被保冷機器を該被保冷機器の外表面を2
    以上に分割する2以上の保冷材で覆った後、該保冷材相
    互を接合して一体化する低温機器の保冷施工方法であっ
    て、該保冷材として、塩化ビニリデン系樹脂発泡粒子の
    相互を熱融着一体化させてなり、透湿率が1×10ー5
    4×10ー4g/m・h・mmHg、圧縮回復率が60〜
    98%、かつ、吸水量が0.01〜0.5g/100c
    2 である発泡成形体を用いることを特徴とする低温機
    器の保冷施工方法。
  2. 【請求項2】 保冷材と被保冷機器との間を止着した
    後、ー50℃における引張破断伸びが1〜300%であ
    る接着剤及び/又は硬質ポリウレタン発泡性原液を用い
    て、該保冷材相互を接合して一体構成とすることを特徴
    とする請求項1記載の低温機器の保冷施工方法。
  3. 【請求項3】 保冷材が単層であることを特徴とする特
    許請求項1または2記載の低温機器の保冷施工方法。
  4. 【請求項4】 保冷材が、該保冷材相互の接合部にあい
    じゃくり構造を有することを特徴とする請求項1〜3い
    ずれかに記載の低温機器の保冷施工方法。
  5. 【請求項5】 塩化ビニリデン系樹脂発泡粒子の相互を
    熱融着一体化させてなり、透湿率が1×10ー5〜4×1
    ー4g/m・h・mmHg、圧縮回復率が60〜98
    %、かつ、吸水量が0.01〜0.5g/100cm2
    であることを特徴とする保冷施工方法に用いる発泡成形
    体。
JP8248512A 1996-09-02 1996-09-02 低温機器の保冷施工方法及びそれに用いる発泡成形体 Withdrawn JPH1076543A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024071394A1 (ja) * 2022-09-30 2024-04-04 明星工業株式会社 発泡樹脂断熱材及びその製法

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WO2024071394A1 (ja) * 2022-09-30 2024-04-04 明星工業株式会社 発泡樹脂断熱材及びその製法

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