JPH1072733A - ポリエステル紡績糸及びその製造方法 - Google Patents
ポリエステル紡績糸及びその製造方法Info
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- JPH1072733A JPH1072733A JP24418696A JP24418696A JPH1072733A JP H1072733 A JPH1072733 A JP H1072733A JP 24418696 A JP24418696 A JP 24418696A JP 24418696 A JP24418696 A JP 24418696A JP H1072733 A JPH1072733 A JP H1072733A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 耐熱性が優れ,適度な熱処理により麻様の風
合いを発現し,しかも織編物の原糸として好適なポリエ
ステル紡績糸を提供する。 【解決手段】 ポリエステルからなる主体繊維50〜8
0重量%と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,
芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク
共重合体を鞘成分とする複合短繊維50〜20重量%と
から構成された紡績糸であって,前記ポリアルキレンテ
レフタレートが下記(1)を満足し,かつ前記ブロツク
共重合体が下記(2)を満足することを特徴とするポリ
エステル紡績糸。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。
合いを発現し,しかも織編物の原糸として好適なポリエ
ステル紡績糸を提供する。 【解決手段】 ポリエステルからなる主体繊維50〜8
0重量%と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,
芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク
共重合体を鞘成分とする複合短繊維50〜20重量%と
から構成された紡績糸であって,前記ポリアルキレンテ
レフタレートが下記(1)を満足し,かつ前記ブロツク
共重合体が下記(2)を満足することを特徴とするポリ
エステル紡績糸。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,耐熱性が優れ,適
度な熱処理により麻様の風合いを発現し,しかも織編物
の原糸として好適なポリエステル紡績糸に関するもので
ある。
度な熱処理により麻様の風合いを発現し,しかも織編物
の原糸として好適なポリエステル紡績糸に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来から,通常の融点を有するポリエス
テル主体繊維と,通常の融点を有するポリエステルを芯
成分,低融点のポリエステルを鞘成分とする複合短繊維
とから構成され,熱処理によって低融点のポリエステル
を融解することにより麻様風合いを有する紡績糸を製造
し得ることが知られている。例えば,特公平1−475
69号公報には,通常の融点を有するポリエステル繊維
を主体繊維とし,これに融点が150〜200℃の共重
合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合バインダ繊維
を10〜90重量%混合してなる紡績糸が開示されてい
る。しかしながら,これらの紡績糸は,比較的低温の熱
処理で紡績糸自体の強力が向上し,しかも麻様の風合い
を発現するものの,結晶性の低い共重合ポリエステルが
鞘成分として存在するため耐熱性が劣るという問題を有
している。近年,かかる耐熱性が劣るという問題を解決
すべく,結晶性共重合ポリエステルを鞘成分とする複合
短繊維が提案されてきた。しかしながら,このような複
合短繊維も,結晶化速度が大きいために,溶融紡糸時の
細化中に結晶化が大幅に進行して糸切れが生じたり,ま
た,得られた複合短繊維の耐熱性が要求されるほどに優
れないという問題を有している。
テル主体繊維と,通常の融点を有するポリエステルを芯
成分,低融点のポリエステルを鞘成分とする複合短繊維
とから構成され,熱処理によって低融点のポリエステル
を融解することにより麻様風合いを有する紡績糸を製造
し得ることが知られている。例えば,特公平1−475
69号公報には,通常の融点を有するポリエステル繊維
を主体繊維とし,これに融点が150〜200℃の共重
合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合バインダ繊維
を10〜90重量%混合してなる紡績糸が開示されてい
る。しかしながら,これらの紡績糸は,比較的低温の熱
処理で紡績糸自体の強力が向上し,しかも麻様の風合い
を発現するものの,結晶性の低い共重合ポリエステルが
鞘成分として存在するため耐熱性が劣るという問題を有
している。近年,かかる耐熱性が劣るという問題を解決
すべく,結晶性共重合ポリエステルを鞘成分とする複合
短繊維が提案されてきた。しかしながら,このような複
合短繊維も,結晶化速度が大きいために,溶融紡糸時の
細化中に結晶化が大幅に進行して糸切れが生じたり,ま
た,得られた複合短繊維の耐熱性が要求されるほどに優
れないという問題を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,前記問題を
解決し,耐熱性が優れ,適度な熱処理により麻様の風合
いを発現し,しかも織編物の原糸として好適なポリエス
テル紡績糸を提供しようとするものである。
解決し,耐熱性が優れ,適度な熱処理により麻様の風合
いを発現し,しかも織編物の原糸として好適なポリエス
テル紡績糸を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,前記問題
を解決すべく鋭意検討の結果,本発明に到達した。すな
わち,本発明は,以下の構成をその要旨とするものであ
る。 1.ポリエステルからなる主体繊維50〜80重量%
と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,芳香族ポ
リエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体
を鞘成分とする複合短繊維50〜20重量%とから構成
された紡績糸であって,前記ポリアルキレンテレフタレ
ートが下記(1)を満足し,かつ前記ブロツク共重合体
が下記(2)を満足することを特徴とするポリエステル
紡績糸。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。 2.ポリエステルからなる主体繊維50〜80重量%
と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,芳香族ポ
リエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体
を鞘成分とし,前記ポリアルキレンテレフタレートが下
記(1)を満足し,かつ前記ブロツク共重合体が下記
(2)を満足する複合短繊維50〜20重量%とを混合
し,カーデイング工程を経てウエブとし,練条・粗紡・
精紡の各工程を経て紡績糸とした後,前記ブロツク共重
合体の〔融点〜(融点+30)〕(℃)の温度で熱処理
を行い,さらに前記ブロツク共重合体の〔結晶開始温度
〜(融点−20)〕(℃)の温度で2分間以上の耐熱化
熱処理を行うことを特徴とするポリエステル紡績糸の製
造方法。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。
を解決すべく鋭意検討の結果,本発明に到達した。すな
わち,本発明は,以下の構成をその要旨とするものであ
る。 1.ポリエステルからなる主体繊維50〜80重量%
と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,芳香族ポ
リエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体
を鞘成分とする複合短繊維50〜20重量%とから構成
された紡績糸であって,前記ポリアルキレンテレフタレ
ートが下記(1)を満足し,かつ前記ブロツク共重合体
が下記(2)を満足することを特徴とするポリエステル
紡績糸。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。 2.ポリエステルからなる主体繊維50〜80重量%
と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,芳香族ポ
リエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体
を鞘成分とし,前記ポリアルキレンテレフタレートが下
記(1)を満足し,かつ前記ブロツク共重合体が下記
(2)を満足する複合短繊維50〜20重量%とを混合
し,カーデイング工程を経てウエブとし,練条・粗紡・
精紡の各工程を経て紡績糸とした後,前記ブロツク共重
合体の〔融点〜(融点+30)〕(℃)の温度で熱処理
を行い,さらに前記ブロツク共重合体の〔結晶開始温度
〜(融点−20)〕(℃)の温度で2分間以上の耐熱化
熱処理を行うことを特徴とするポリエステル紡績糸の製
造方法。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。
【0005】
【発明の実施の形態】次に,本発明の紡績糸に関して,
詳細に説明する。本発明の紡績糸の特徴は,ポリエステ
ルからなる主体繊維に対して特定の複合短繊維を混合し
てなる点にある。より具体的には,この複合短繊維は,
融点が220℃以上のポリアルキレンテレフタレートを
芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラクトン
とのブロツク共重合体であってかつガラス転移温度が2
0〜80℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が1
30〜180℃の共重合体を鞘成分とするものである。
詳細に説明する。本発明の紡績糸の特徴は,ポリエステ
ルからなる主体繊維に対して特定の複合短繊維を混合し
てなる点にある。より具体的には,この複合短繊維は,
融点が220℃以上のポリアルキレンテレフタレートを
芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラクトン
とのブロツク共重合体であってかつガラス転移温度が2
0〜80℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が1
30〜180℃の共重合体を鞘成分とするものである。
【0006】まず,複合短繊維の芯成分を構成するポリ
アルキレンテレフタレートについてであるが,このポリ
アルキレンテレフタレートとしては,ポリエチレンテレ
フタレート(以下,PETと略称する。),ポリブチレ
ンテレフタレート(以下,PBTと略称する。)などの
ポリエステルが好ましく用いられる。また,本発明の目
的を損なわない範囲内であれば,酸成分に対して無水フ
タル酸,フタル酸,イソフタル酸,アジピン酸,セバシ
ン酸などを,グリコール成分に対してジエチレングリコ
ール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコー
ル,プロパンジオール,1,4−ブタンジオール,ペン
タンジオール,ハイドロキノン,ビスフエノールAなど
のジオールを,いずれも10モル%以下の範囲内で共重
合成分として含有させてもよい。なお,このポリアルキ
レンテレフタレートには,製糸性を損なわない範囲内で
あれば,例えば艶消し剤,顔料,難燃剤,消臭剤,帯電
防止剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤などが添加されてい
てもよい。このポリアルキレンテレフタレートは融点が
220℃以上のものであり,融点が220℃未満である
と,熱処理を施したとき強度が低下して紡績糸としての
実用性が劣ることになり,好ましくない。
アルキレンテレフタレートについてであるが,このポリ
アルキレンテレフタレートとしては,ポリエチレンテレ
フタレート(以下,PETと略称する。),ポリブチレ
ンテレフタレート(以下,PBTと略称する。)などの
ポリエステルが好ましく用いられる。また,本発明の目
的を損なわない範囲内であれば,酸成分に対して無水フ
タル酸,フタル酸,イソフタル酸,アジピン酸,セバシ
ン酸などを,グリコール成分に対してジエチレングリコ
ール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコー
ル,プロパンジオール,1,4−ブタンジオール,ペン
タンジオール,ハイドロキノン,ビスフエノールAなど
のジオールを,いずれも10モル%以下の範囲内で共重
合成分として含有させてもよい。なお,このポリアルキ
レンテレフタレートには,製糸性を損なわない範囲内で
あれば,例えば艶消し剤,顔料,難燃剤,消臭剤,帯電
防止剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤などが添加されてい
てもよい。このポリアルキレンテレフタレートは融点が
220℃以上のものであり,融点が220℃未満である
と,熱処理を施したとき強度が低下して紡績糸としての
実用性が劣ることになり,好ましくない。
【0007】次に,複合短繊維の鞘成分を構成する芳香
族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重
合体についてであるが,芳香族ポリエステルとしては,
PETやPBTなどのポリエステルが好ましく用いられ
る。また,本発明の目的を損なわない範囲内で,酸成分
に対して無水フタル酸,フタル酸,イソフタル酸,アジ
ピン酸,セバシン酸などを,グリコール成分に対してジ
エチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエ
チレングリコール,プロパンジオール,1,4−ブタン
ジオール,ペンタンジオール,ハイドロキノン,ビスフ
エノールAなどのジオールを,いずれも20モル%以下
の範囲内で共重合成分として含有させてもよい。なお,
かかる酸やジオールの共重合比が20モル%を超える
と,得られた共重合体の融点が低くなり過ぎるために高
温雰囲気下において十分な耐熱性が得られず,したがっ
て紡績糸の強力が低下することになり,好ましくない。
脂肪族ポリラクトンとしては,炭素数が4〜11のラク
トン単独重合体あるいは2種以上の共重合体が用いら
れ,特に,ポリ−ε−カプロラクトンが優れた結晶性を
有することから,チツプ化や溶融紡糸を行うに際して良
好な操業性が得られ,好ましい。かかる芳香族ポリエス
テルに対してブロツク共重合される脂肪族ポリラクトン
の共重合比は,10〜25モル%であるのが好ましい。
この共重合比が10モル%未満であると,ブロツク共重
合体の結晶性は向上するものの,融点が180℃を超え
て高くなり,得られた紡績糸に熱処理を施すに際して処
理温度を高くしなければならず,このとき必然的にブロ
ツク共重合体の熱分解が生じ,したがって紡績糸の強力
が低下することになり,好ましくない。一方,この共重
合比が25モル%を超えると,ブロツク共重合体の融点
が130℃より低くなり,このブロツク共重合体を鞘成
分とする複合短繊維を溶融紡糸するに際しての製糸性が
低下したり,またガラス転移温度が20℃より低下する
ため溶融紡出糸条が融着したりする。したがって,本発
明では,芳香族ポリエステルに対してブロツク共重合さ
れる脂肪族ポリラクトンの共重合比を10〜25モル
%,好ましくは10〜20モル%とする。
族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重
合体についてであるが,芳香族ポリエステルとしては,
PETやPBTなどのポリエステルが好ましく用いられ
る。また,本発明の目的を損なわない範囲内で,酸成分
に対して無水フタル酸,フタル酸,イソフタル酸,アジ
ピン酸,セバシン酸などを,グリコール成分に対してジ
エチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエ
チレングリコール,プロパンジオール,1,4−ブタン
ジオール,ペンタンジオール,ハイドロキノン,ビスフ
エノールAなどのジオールを,いずれも20モル%以下
の範囲内で共重合成分として含有させてもよい。なお,
かかる酸やジオールの共重合比が20モル%を超える
と,得られた共重合体の融点が低くなり過ぎるために高
温雰囲気下において十分な耐熱性が得られず,したがっ
て紡績糸の強力が低下することになり,好ましくない。
脂肪族ポリラクトンとしては,炭素数が4〜11のラク
トン単独重合体あるいは2種以上の共重合体が用いら
れ,特に,ポリ−ε−カプロラクトンが優れた結晶性を
有することから,チツプ化や溶融紡糸を行うに際して良
好な操業性が得られ,好ましい。かかる芳香族ポリエス
テルに対してブロツク共重合される脂肪族ポリラクトン
の共重合比は,10〜25モル%であるのが好ましい。
この共重合比が10モル%未満であると,ブロツク共重
合体の結晶性は向上するものの,融点が180℃を超え
て高くなり,得られた紡績糸に熱処理を施すに際して処
理温度を高くしなければならず,このとき必然的にブロ
ツク共重合体の熱分解が生じ,したがって紡績糸の強力
が低下することになり,好ましくない。一方,この共重
合比が25モル%を超えると,ブロツク共重合体の融点
が130℃より低くなり,このブロツク共重合体を鞘成
分とする複合短繊維を溶融紡糸するに際しての製糸性が
低下したり,またガラス転移温度が20℃より低下する
ため溶融紡出糸条が融着したりする。したがって,本発
明では,芳香族ポリエステルに対してブロツク共重合さ
れる脂肪族ポリラクトンの共重合比を10〜25モル
%,好ましくは10〜20モル%とする。
【0008】かかるブロツク共重合体は,上記のような
重合体組成を有するものであり,ガラス転移温度が20
〜80℃である。この共重合体において,ガラス転移温
度が20℃未満であると,上述したように溶融紡出糸条
が融着することにより製糸性が低下し,例えば通常の二
成分複合型溶融紡糸装置を用いて複合繊維を製造するこ
とが困難となる。一方,ガラス転移温度が80℃を超え
ると,得られた複合未延伸繊維を熱延伸するに際して処
理温度を高くしなければならず,このとき必然的に繊維
において部分的な結晶化が進行するが,複合繊維の鞘成
分を構成するこの共重合体と芯成分を構成する重合体と
の間で結晶度に差異が生じ,換言すれば繊維構造に斑が
発生することになり,したがって部分的な単繊維切断
や,極端なときには糸自体の切断が発生するなど,延伸
性が低下する。そして,得られた紡績糸は,このような
欠陥を有する複合短繊維を素材として有しているため,
表面毛羽等の欠点を有するものとなる。また,この共重
合体は,結晶開始温度が90〜130℃である。結晶開
始温度が90℃未満であると,得られた複合未延伸繊維
を熱延伸するに際して結晶化が進行してしまい,次の紡
績糸の耐熱化熱処理工程において安定な結晶構造を発現
させることが困難となる。そして,得られた紡績糸は,
高温雰囲気下において十分な耐熱性が得られず,したが
って強力が低下したものとなる。一方,結晶開始温度が
130℃を超えると,共重合体の融点が180℃を超え
ることになり,耐熱化熱処理工程において高温度条件を
採用しなければならず,熱処理時に重合体の熱分解が生
じるため,複合短繊維としての実用性が乏しくなる。さ
らに,この共重合体は,融点が130〜180℃であ
る。融点が130℃未満であると,得られた紡績糸はそ
の耐熱性が劣り,高温雰囲気下で用いることが困難とな
る。一方,融点が180℃を超えると,以降の紡績糸の
耐熱化熱処理工程において高温度条件を採用しなければ
ならず,熱処理時に重合体の熱分解が生じ,得られた紡
績糸は例えば強力が不均一であったり,あるいは低強力
であるなど,機械的特性が劣るものとなる。
重合体組成を有するものであり,ガラス転移温度が20
〜80℃である。この共重合体において,ガラス転移温
度が20℃未満であると,上述したように溶融紡出糸条
が融着することにより製糸性が低下し,例えば通常の二
成分複合型溶融紡糸装置を用いて複合繊維を製造するこ
とが困難となる。一方,ガラス転移温度が80℃を超え
ると,得られた複合未延伸繊維を熱延伸するに際して処
理温度を高くしなければならず,このとき必然的に繊維
において部分的な結晶化が進行するが,複合繊維の鞘成
分を構成するこの共重合体と芯成分を構成する重合体と
の間で結晶度に差異が生じ,換言すれば繊維構造に斑が
発生することになり,したがって部分的な単繊維切断
や,極端なときには糸自体の切断が発生するなど,延伸
性が低下する。そして,得られた紡績糸は,このような
欠陥を有する複合短繊維を素材として有しているため,
表面毛羽等の欠点を有するものとなる。また,この共重
合体は,結晶開始温度が90〜130℃である。結晶開
始温度が90℃未満であると,得られた複合未延伸繊維
を熱延伸するに際して結晶化が進行してしまい,次の紡
績糸の耐熱化熱処理工程において安定な結晶構造を発現
させることが困難となる。そして,得られた紡績糸は,
高温雰囲気下において十分な耐熱性が得られず,したが
って強力が低下したものとなる。一方,結晶開始温度が
130℃を超えると,共重合体の融点が180℃を超え
ることになり,耐熱化熱処理工程において高温度条件を
採用しなければならず,熱処理時に重合体の熱分解が生
じるため,複合短繊維としての実用性が乏しくなる。さ
らに,この共重合体は,融点が130〜180℃であ
る。融点が130℃未満であると,得られた紡績糸はそ
の耐熱性が劣り,高温雰囲気下で用いることが困難とな
る。一方,融点が180℃を超えると,以降の紡績糸の
耐熱化熱処理工程において高温度条件を採用しなければ
ならず,熱処理時に重合体の熱分解が生じ,得られた紡
績糸は例えば強力が不均一であったり,あるいは低強力
であるなど,機械的特性が劣るものとなる。
【0009】この複合短繊維は,ポリアルキレンテレフ
タレートを芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂肪族ポ
リラクトンとのブロツク共重合体を鞘成分とするもので
あって,その芯成分と鞘成分との複合比(重量比)は,
かかる二成分の重合体がそれぞれ所定の機能を発揮する
ように複合されていれば特に限定されるものではない
が,芯成分に対する鞘成分の重量比すなわち複合比を敢
えて限定すれば,1/2〜2/1とするのが好ましい。
芯成分2に対する鞘成分の重量比が1未満であると,紡
績糸強力が低下し,一方,芯成分1に対する鞘成分の重
量比が2を超えると,溶融紡糸時に糸条が融着すること
により製糸性が低下し,いずれも紡績糸の機械的特性と
製糸性の両特性を両立させることができず,好ましくな
い。
タレートを芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂肪族ポ
リラクトンとのブロツク共重合体を鞘成分とするもので
あって,その芯成分と鞘成分との複合比(重量比)は,
かかる二成分の重合体がそれぞれ所定の機能を発揮する
ように複合されていれば特に限定されるものではない
が,芯成分に対する鞘成分の重量比すなわち複合比を敢
えて限定すれば,1/2〜2/1とするのが好ましい。
芯成分2に対する鞘成分の重量比が1未満であると,紡
績糸強力が低下し,一方,芯成分1に対する鞘成分の重
量比が2を超えると,溶融紡糸時に糸条が融着すること
により製糸性が低下し,いずれも紡績糸の機械的特性と
製糸性の両特性を両立させることができず,好ましくな
い。
【0010】次に,主体繊維についてであるが,主体繊
維は,前記複合短繊維の鞘成分を構成するブロツク共重
合体と熱接着が可能な熱可塑性重合体であれば特に限定
されるものではなく,例えばポリエチレンテレフタレー
トやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル,ナ
イロン6やナイロン66あるいはナイロン610等のポ
リアミド,各種ポリエチレンやポリプロピレン等に代表
されるポリオレフイン等からなる繊維が採用可能である
が,ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフ
タレートあるいはこれらを主体とするコポリエステルか
らなる繊維を採用するのが主体繊維と複合短繊維の融点
差と相溶性,熱処理時の熱安定性などの観点からみて,
好ましい。なお,主体繊維の繊度は,得られる紡績糸の
要求特性や用途により適宜選択すればよいが,一般的に
は,1〜5デニール程度とすればよい。
維は,前記複合短繊維の鞘成分を構成するブロツク共重
合体と熱接着が可能な熱可塑性重合体であれば特に限定
されるものではなく,例えばポリエチレンテレフタレー
トやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル,ナ
イロン6やナイロン66あるいはナイロン610等のポ
リアミド,各種ポリエチレンやポリプロピレン等に代表
されるポリオレフイン等からなる繊維が採用可能である
が,ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフ
タレートあるいはこれらを主体とするコポリエステルか
らなる繊維を採用するのが主体繊維と複合短繊維の融点
差と相溶性,熱処理時の熱安定性などの観点からみて,
好ましい。なお,主体繊維の繊度は,得られる紡績糸の
要求特性や用途により適宜選択すればよいが,一般的に
は,1〜5デニール程度とすればよい。
【0011】本発明の紡績糸は,ポリエステルからなる
主体繊維50〜80重量%と,ポリアルキレンテレフタ
レートを芯成分,前記ブロツク共重合体を鞘成分とする
複合短繊維50〜20重量%とが混在してなるものであ
る。本発明の紡績糸では,前記複合短繊維が50〜20
重量%の範囲で存在することが必要であり,主体繊維に
対して混合される前記複合短繊維の混合比が50重量%
を超えると,耐熱性は優れるものの,糸表面が剛直にな
るため麻様の風合いを発現せず,一方,の混合比が20
重量%未満であると,この複合短繊維を介して主体繊維
同士を熱接着して形成した糸において,主体繊維の存在
が少な過ぎるため接着点が十分に形成されず,したがっ
て糸強力が低下する。したがって,本発明では,主体繊
維/前記複合短繊維の存在比(重量比)を50〜80重
量%/50〜20重量%とする。
主体繊維50〜80重量%と,ポリアルキレンテレフタ
レートを芯成分,前記ブロツク共重合体を鞘成分とする
複合短繊維50〜20重量%とが混在してなるものであ
る。本発明の紡績糸では,前記複合短繊維が50〜20
重量%の範囲で存在することが必要であり,主体繊維に
対して混合される前記複合短繊維の混合比が50重量%
を超えると,耐熱性は優れるものの,糸表面が剛直にな
るため麻様の風合いを発現せず,一方,の混合比が20
重量%未満であると,この複合短繊維を介して主体繊維
同士を熱接着して形成した糸において,主体繊維の存在
が少な過ぎるため接着点が十分に形成されず,したがっ
て糸強力が低下する。したがって,本発明では,主体繊
維/前記複合短繊維の存在比(重量比)を50〜80重
量%/50〜20重量%とする。
【0012】本発明の紡績糸は,次の方法により効率よ
く製造することができる。まず,上述したような通常の
熱可塑性重合体からなる主体繊維を製造する。すなわ
ち,重合体を複数の紡糸孔が穿設された紡糸口金から溶
融紡出し,紡出長繊維群を冷却した後引き取り,集束し
て10万デニール程度を超える未延伸トウとし,得られ
た未延伸トウを例えば複数段熱ローラ延伸装置を用い延
伸して延伸トウとし,延伸トウに押込み型捲縮付与装置
により機械捲縮を施した後,所定長に切断して短繊維と
する。このとき,単糸繊度は上述したように要求特性や
用途にもよるが,通常,1〜5デニール程度とするのが
よい。また,切断長は,30〜80mm,好ましくは4
0〜60mm程度とするのがよい。他方,上述したポリ
アルキレンテレフタレートを芯成分とし,芳香族ポリエ
ステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体を鞘
成分とする複合短繊維を製造する。すなわち,複数の芯
鞘型複合紡糸孔が穿設された複合紡糸口金からポリアル
キレンテレフタレートを芯成分とし,かつ前記ブロツク
共重合体を鞘成分として溶融紡出し,以降は主体繊維の
場合とほぼ同様にして複合短繊維を作成するのである。
次いで,得られた前記主体繊維に対し,主体繊維50〜
80重量%/複合短繊維50〜20重量%の混合比で複
合短繊維を混打綿機を用いて混綿し,得られた混合綿を
例えばローラーカード機を用い開繊してウエブとし,練
条・粗紡・精紡の各工程を経て紡績糸とする。次いで,
得られた紡績糸に熱風循環式熱処理機等の熱処理手段を
用いて前記ブロツク共重合体の〔融点〜(融点+3
0)〕(℃)の温度で熱処理を施すことにより前記複合
短繊維の鞘成分を介して各構成繊維同士を点接着させ,
さらに前記ブロツク共重合体の〔結晶開始温度〜(融点
−20)〕(℃)の温度で2分間以上の耐熱化熱処理を
施すことにより,目的の紡績糸を得ることができる。
く製造することができる。まず,上述したような通常の
熱可塑性重合体からなる主体繊維を製造する。すなわ
ち,重合体を複数の紡糸孔が穿設された紡糸口金から溶
融紡出し,紡出長繊維群を冷却した後引き取り,集束し
て10万デニール程度を超える未延伸トウとし,得られ
た未延伸トウを例えば複数段熱ローラ延伸装置を用い延
伸して延伸トウとし,延伸トウに押込み型捲縮付与装置
により機械捲縮を施した後,所定長に切断して短繊維と
する。このとき,単糸繊度は上述したように要求特性や
用途にもよるが,通常,1〜5デニール程度とするのが
よい。また,切断長は,30〜80mm,好ましくは4
0〜60mm程度とするのがよい。他方,上述したポリ
アルキレンテレフタレートを芯成分とし,芳香族ポリエ
ステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体を鞘
成分とする複合短繊維を製造する。すなわち,複数の芯
鞘型複合紡糸孔が穿設された複合紡糸口金からポリアル
キレンテレフタレートを芯成分とし,かつ前記ブロツク
共重合体を鞘成分として溶融紡出し,以降は主体繊維の
場合とほぼ同様にして複合短繊維を作成するのである。
次いで,得られた前記主体繊維に対し,主体繊維50〜
80重量%/複合短繊維50〜20重量%の混合比で複
合短繊維を混打綿機を用いて混綿し,得られた混合綿を
例えばローラーカード機を用い開繊してウエブとし,練
条・粗紡・精紡の各工程を経て紡績糸とする。次いで,
得られた紡績糸に熱風循環式熱処理機等の熱処理手段を
用いて前記ブロツク共重合体の〔融点〜(融点+3
0)〕(℃)の温度で熱処理を施すことにより前記複合
短繊維の鞘成分を介して各構成繊維同士を点接着させ,
さらに前記ブロツク共重合体の〔結晶開始温度〜(融点
−20)〕(℃)の温度で2分間以上の耐熱化熱処理を
施すことにより,目的の紡績糸を得ることができる。
【0013】本発明では,練条・粗紡・精紡の各工程を
経て得られた紡績糸に前記ブロツク共重合体の〔結晶開
始温度〜(融点−20)〕(℃)の温度で2分間以上の
耐熱化熱処理を施すが,この処理により耐熱性すなわち
高温雰囲気下での強力保持が図られる。このような耐熱
化熱処理は,複合短繊維の鞘成分を構成するブロツク共
重合体の〔結晶開始温度〜(融点−20)〕(℃)の温
度条件下で行うが,処理温度がブロツク共重合体の結晶
開始温度未満であると,耐熱性が不十分で高温雰囲気下
での紡績糸強力が低くなり,一方,処理温度がブロツク
共重合体の(融点−20)℃を超えると,ブロツク共重
合体が熱分解し始めるため紡績糸強力が低下し,いずれ
も好ましくない。したがって,本発明では,処理温度を
ブロツク共重合体の〔結晶開始温度〜(融点−20)〕
(℃),好ましくは100〜130℃とする。また,処
理時間は,2分以上とし,時間が2分未満であると耐熱
化熱処理の効果が不十分となり,得られた紡績糸の耐熱
性が向上しない。なお,処理時間は10分程度までで十
分であり,これを超えても得られた紡績糸の耐熱性は変
わらない。
経て得られた紡績糸に前記ブロツク共重合体の〔結晶開
始温度〜(融点−20)〕(℃)の温度で2分間以上の
耐熱化熱処理を施すが,この処理により耐熱性すなわち
高温雰囲気下での強力保持が図られる。このような耐熱
化熱処理は,複合短繊維の鞘成分を構成するブロツク共
重合体の〔結晶開始温度〜(融点−20)〕(℃)の温
度条件下で行うが,処理温度がブロツク共重合体の結晶
開始温度未満であると,耐熱性が不十分で高温雰囲気下
での紡績糸強力が低くなり,一方,処理温度がブロツク
共重合体の(融点−20)℃を超えると,ブロツク共重
合体が熱分解し始めるため紡績糸強力が低下し,いずれ
も好ましくない。したがって,本発明では,処理温度を
ブロツク共重合体の〔結晶開始温度〜(融点−20)〕
(℃),好ましくは100〜130℃とする。また,処
理時間は,2分以上とし,時間が2分未満であると耐熱
化熱処理の効果が不十分となり,得られた紡績糸の耐熱
性が向上しない。なお,処理時間は10分程度までで十
分であり,これを超えても得られた紡績糸の耐熱性は変
わらない。
【0014】
【作用】本発明の紡績糸は,ポリエステルからなる主体
繊維50〜80重量%と,ポリアルキレンテレフタレー
トを芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラク
トンとのブロツク共重合体を鞘成分とする複合短繊維5
0〜20重量%とから構成され,前記ポリアルキレンテ
レフタレートが上記(1)を満足し,かつ前記ブロツク
共重合体が上記(2)を満足するものである。一般に,
ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,芳香族ポリエ
ステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体を鞘
成分とする複合短繊維は,その製造に際して,ポリアル
キレンテレフタレートの融点が220℃以上であるため
熱延伸を行う必要があり,この熱延伸に際しては,芯成
分が延伸配向・結晶化して繊維構造を形成するのは勿論
であるが,鞘成分も熱延伸の影響を受けて結晶化が進行
しようとする。そして,このような複合短繊維において
鞘成分のブロツク共重合体の結晶開始温度が低いと,熱
延伸時の結晶化が大幅に進行し,その結果,複合短繊維
に芯成分の重合体が熱分解をしない範囲内の温度で熱処
理を施しても鞘成分内に一旦形成された結晶構造を崩壊
させることはできず,したがって,安定した構造を有す
る鞘成分が芯成分を拘束するために芯成分の内部歪みが
緩和されることがなく,得られた紡績糸も収縮率の大き
なものとなる。本発明では,かかる複合短繊維の鞘成分
を構成するブロツク共重合体として前記のような高い結
晶開始温度を有するものを採用するため,この複合短繊
維の熱延伸時には鞘成分は比較的低結晶性であるが,複
合短繊維を一素材として紡績糸とした後に耐熱化熱処理
を行うに際し,延伸後の低結晶性に起因して芯成分の内
部歪みを吸収・緩和した新たな結晶構造を形成し,した
がって,得られた紡績糸の収縮率が著しく小さくなるの
である。
繊維50〜80重量%と,ポリアルキレンテレフタレー
トを芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラク
トンとのブロツク共重合体を鞘成分とする複合短繊維5
0〜20重量%とから構成され,前記ポリアルキレンテ
レフタレートが上記(1)を満足し,かつ前記ブロツク
共重合体が上記(2)を満足するものである。一般に,
ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,芳香族ポリエ
ステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重合体を鞘
成分とする複合短繊維は,その製造に際して,ポリアル
キレンテレフタレートの融点が220℃以上であるため
熱延伸を行う必要があり,この熱延伸に際しては,芯成
分が延伸配向・結晶化して繊維構造を形成するのは勿論
であるが,鞘成分も熱延伸の影響を受けて結晶化が進行
しようとする。そして,このような複合短繊維において
鞘成分のブロツク共重合体の結晶開始温度が低いと,熱
延伸時の結晶化が大幅に進行し,その結果,複合短繊維
に芯成分の重合体が熱分解をしない範囲内の温度で熱処
理を施しても鞘成分内に一旦形成された結晶構造を崩壊
させることはできず,したがって,安定した構造を有す
る鞘成分が芯成分を拘束するために芯成分の内部歪みが
緩和されることがなく,得られた紡績糸も収縮率の大き
なものとなる。本発明では,かかる複合短繊維の鞘成分
を構成するブロツク共重合体として前記のような高い結
晶開始温度を有するものを採用するため,この複合短繊
維の熱延伸時には鞘成分は比較的低結晶性であるが,複
合短繊維を一素材として紡績糸とした後に耐熱化熱処理
を行うに際し,延伸後の低結晶性に起因して芯成分の内
部歪みを吸収・緩和した新たな結晶構造を形成し,した
がって,得られた紡績糸の収縮率が著しく小さくなるの
である。
【0015】
【実施例】次に,実施例に基づいて本発明を具体的に説
明するが,本発明はこれらによって何ら限定されるもの
ではない。なお,実施例における各種特性の測定及び評
価は,次の方法により実施した。 重合体の相対粘度:重合体の相対粘度を次の方法により
測定した。すなわち,フエノールと四塩化エタンとの等
重量混合液を溶媒とし,濃度0.5g/dl,温度20
℃の条件で常法により測定した。 重合体の融点(℃),結晶化温度(℃),ガラス転移温
度(℃):パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC
−2型を用いて,昇温速度20℃/分で測定した。な
お,融点は,融解吸収熱曲線の極値を与える温度を融点
(℃)とした。 紡績糸の引張強力(g):オリエンテツク社製定速伸長
型引張り試験機UTM−4−100型を用いて測定し
た。すなわち,綿番手が20で試料長が400mmの試
料を10本準備し,各試料毎に温度25℃,90℃,1
10℃かつ引張速度200mm/分で測定して最大引張
強力(g)を求め,得られた各引張強力値の平均値を,
紡績糸の引張強力(g)とした。 紡績糸の強力保持率(%):耐熱化熱処理後の紡績糸が
未熱処理の紡績糸に対して有する強力保持率を次式
(3)により算出した。なお,かかる保持率の測定・算
出は,温度90℃と110℃の2条件下で各々実施し
た。 A(%)=(B/C)×100 (3) A:強力保持率(%) B:耐熱化熱処理後の強力(g) C:耐熱化熱処理前の強力(g) 紡績糸の強力特性の評価:次の2段階で評価した。 ○:温度25℃,90℃,110℃全てについて紡績糸
強力が高い ×:温度25℃と90℃あるいは110℃の少なくとも
いずれかで紡績糸強力が低い 紡績糸の風合いの評価:紡績糸を温度130℃,処理時
間60分の条件下で染色し,染色後の麻様風合いを触感
でもって次の3段階で評価した。 ○:麻様の風合いを発現する。 △:やや硬い ×:硬直状態 紡績糸の総合評価:総合評価を次の2段階で評価した。 ○:紡績糸強力が高く,麻様の風合いを発現する。 ×:紡績糸強力が低い,あるいは強力は高いものの麻様
の風合いを発現しない。
明するが,本発明はこれらによって何ら限定されるもの
ではない。なお,実施例における各種特性の測定及び評
価は,次の方法により実施した。 重合体の相対粘度:重合体の相対粘度を次の方法により
測定した。すなわち,フエノールと四塩化エタンとの等
重量混合液を溶媒とし,濃度0.5g/dl,温度20
℃の条件で常法により測定した。 重合体の融点(℃),結晶化温度(℃),ガラス転移温
度(℃):パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC
−2型を用いて,昇温速度20℃/分で測定した。な
お,融点は,融解吸収熱曲線の極値を与える温度を融点
(℃)とした。 紡績糸の引張強力(g):オリエンテツク社製定速伸長
型引張り試験機UTM−4−100型を用いて測定し
た。すなわち,綿番手が20で試料長が400mmの試
料を10本準備し,各試料毎に温度25℃,90℃,1
10℃かつ引張速度200mm/分で測定して最大引張
強力(g)を求め,得られた各引張強力値の平均値を,
紡績糸の引張強力(g)とした。 紡績糸の強力保持率(%):耐熱化熱処理後の紡績糸が
未熱処理の紡績糸に対して有する強力保持率を次式
(3)により算出した。なお,かかる保持率の測定・算
出は,温度90℃と110℃の2条件下で各々実施し
た。 A(%)=(B/C)×100 (3) A:強力保持率(%) B:耐熱化熱処理後の強力(g) C:耐熱化熱処理前の強力(g) 紡績糸の強力特性の評価:次の2段階で評価した。 ○:温度25℃,90℃,110℃全てについて紡績糸
強力が高い ×:温度25℃と90℃あるいは110℃の少なくとも
いずれかで紡績糸強力が低い 紡績糸の風合いの評価:紡績糸を温度130℃,処理時
間60分の条件下で染色し,染色後の麻様風合いを触感
でもって次の3段階で評価した。 ○:麻様の風合いを発現する。 △:やや硬い ×:硬直状態 紡績糸の総合評価:総合評価を次の2段階で評価した。 ○:紡績糸強力が高く,麻様の風合いを発現する。 ×:紡績糸強力が低い,あるいは強力は高いものの麻様
の風合いを発現しない。
【0016】実施例1〜7 まず,複合短繊維の鞘成分として用いるところの,芳香
族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重
合体を製造した。すなわち,酸成分としてのテレフタル
酸(以下,TPAと略称する。)と,グリコール成分と
してのエチレングリコール(以下,EGと略称する。)
及び1,4ブタンジオール(以下,1,4−BDと略称
する。)とをそれぞれ100/50/50モル比で共重
合させ,これにε−カプロラクトン(以下,ε−CLと
略称する。)及びδ−バレロラクトン(以下,δ−VL
と略称する。)を表1に示す割合で共重合し,ブロツク
共重合ポリエステルを製造した。
族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク共重
合体を製造した。すなわち,酸成分としてのテレフタル
酸(以下,TPAと略称する。)と,グリコール成分と
してのエチレングリコール(以下,EGと略称する。)
及び1,4ブタンジオール(以下,1,4−BDと略称
する。)とをそれぞれ100/50/50モル比で共重
合させ,これにε−カプロラクトン(以下,ε−CLと
略称する。)及びδ−バレロラクトン(以下,δ−VL
と略称する。)を表1に示す割合で共重合し,ブロツク
共重合ポリエステルを製造した。
【0017】次に,上記で得られた共重合ポリエステル
のチツプと,相対粘度が1.38,融点が256℃のP
ETのチツプとを通常の複合溶融紡糸装置を用いて溶融
した後,同心芯鞘型複合紡糸孔が225穿孔された複合
紡糸口金を通し,紡糸温度を270℃,上記共重合ポリ
エステルが鞘成分,ポリエチレンテレフタレートが芯成
分となるごとく配し〔複合比(体積比)は1/1〕,総
吐出量を206g/分として溶融紡出し,紡出長繊維群
を冷却した後,引取り速度を700m/分として引取
り,集束して約10万デニールの未延伸トウとし,得ら
れた未延伸トウを延伸倍率3.3かつ延伸温度60℃で
延伸して延伸トウとし,引き続き延伸トウに熱ドラム装
置を用いて熱処理を施した後,機械捲縮を施し,長さ5
1mmに切断して単繊維繊度が4デニールの複合短繊維
を得た。得られた複合短繊維の鞘成分を構成する共重合
ポリエステルの特性,繊維の紡糸性を表1に示す。
のチツプと,相対粘度が1.38,融点が256℃のP
ETのチツプとを通常の複合溶融紡糸装置を用いて溶融
した後,同心芯鞘型複合紡糸孔が225穿孔された複合
紡糸口金を通し,紡糸温度を270℃,上記共重合ポリ
エステルが鞘成分,ポリエチレンテレフタレートが芯成
分となるごとく配し〔複合比(体積比)は1/1〕,総
吐出量を206g/分として溶融紡出し,紡出長繊維群
を冷却した後,引取り速度を700m/分として引取
り,集束して約10万デニールの未延伸トウとし,得ら
れた未延伸トウを延伸倍率3.3かつ延伸温度60℃で
延伸して延伸トウとし,引き続き延伸トウに熱ドラム装
置を用いて熱処理を施した後,機械捲縮を施し,長さ5
1mmに切断して単繊維繊度が4デニールの複合短繊維
を得た。得られた複合短繊維の鞘成分を構成する共重合
ポリエステルの特性,繊維の紡糸性を表1に示す。
【0018】実施例8 複合短繊維の芯成分として相対粘度が1.55,融点が
227℃のPBTを用いた以外は実施例3と同様にし
て,複合短繊維を得た。得られた複合短繊維の鞘成分を
構成する共重合ポリエステルの特性,繊維の紡糸性を表
1に示す。
227℃のPBTを用いた以外は実施例3と同様にし
て,複合短繊維を得た。得られた複合短繊維の鞘成分を
構成する共重合ポリエステルの特性,繊維の紡糸性を表
1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】実施例9 別途作成したPET繊維(長さ51mm,単繊維繊度2
デニール)を主体繊維とし,これに対し上記実施例3で
得られた複合短繊維を主体繊維/複合短繊維の混合比
(重量比)65/35で混打綿機を用いて混綿し,得ら
れた混合綿をローラーカード機を用い開繊してウエブと
し,以降,練条・粗紡・精紡の各工程を通過させて,次
いで,熱風循環式熱処理機を用い,温度160℃,処理
時間100秒の条件下で熱処理を施すことにより前記複
合短繊維の鞘成分を介して各構成繊維同士を点接着さ
せ,紡績糸を得た。さらに,熱風循環式熱処理機を用
い,上記紡績糸に温度100℃,処理時間5分の条件下
で耐熱化熱処理を施して,綿番手が20の製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
デニール)を主体繊維とし,これに対し上記実施例3で
得られた複合短繊維を主体繊維/複合短繊維の混合比
(重量比)65/35で混打綿機を用いて混綿し,得ら
れた混合綿をローラーカード機を用い開繊してウエブと
し,以降,練条・粗紡・精紡の各工程を通過させて,次
いで,熱風循環式熱処理機を用い,温度160℃,処理
時間100秒の条件下で熱処理を施すことにより前記複
合短繊維の鞘成分を介して各構成繊維同士を点接着さ
せ,紡績糸を得た。さらに,熱風循環式熱処理機を用
い,上記紡績糸に温度100℃,処理時間5分の条件下
で耐熱化熱処理を施して,綿番手が20の製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0021】実施例10及び11 練条・粗紡・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に
示したとおりに変更した以外は実施例9と同様にして製
品紡績糸を得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表
2に示す。
示したとおりに変更した以外は実施例9と同様にして製
品紡績糸を得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表
2に示す。
【0022】実施例12 実施例2で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0023】実施例13 実施例4で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0024】実施例14 実施例8で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0025】実施例15 主体繊維/複合短繊維の混合比(重量比)を80/20
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0026】実施例16 主体繊維/複合短繊維の混合比(重量比)を50/50
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0027】比較実施例1及び2 実施例4で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0028】比較実施例3 実施例5で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0029】比較実施例4 実施例6で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0030】比較実施例5 実施例7で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0031】比較実施例6 実施例1で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
・精紡の各工程通過後の熱処理温度を表2に示したとお
りに変更した以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を
得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0032】比較実施例7 主体繊維/複合短繊維の混合比(重量比)を85/15
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0033】比較実施例8 主体繊維/複合短繊維の混合比(重量比)を45/55
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
とした以外は実施例9と同様にして製品紡績糸を得た。
耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性を表2に示す。
【0034】比較実施例9 実施例3で得られた複合短繊維を用い,かつ練条・粗紡
・精紡・熱処理の各工程通過後の耐熱化熱処理時間を表
2に示したとおりに変更した以外は実施例9と同様にし
て製品紡績糸を得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性
を表2に示す。
・精紡・熱処理の各工程通過後の耐熱化熱処理時間を表
2に示したとおりに変更した以外は実施例9と同様にし
て製品紡績糸を得た。耐熱化熱処理前後の紡績糸の特性
を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】表2から明らかなように,本発明の構成要
件を満足する実施例9〜16の紡績糸は,高温度雰囲気
下での耐熱性すなわち形態安定性が優れ,しかも麻様の
風合いを発現するものである。これに対し,比較実施例
1及び2の紡績糸は,熱処理が複合短繊維の鞘成分を構
成するブロツク共重合体の融点未満の温度で施されたた
め,高温雰囲気下での強力が劣るものであった。比較実
施例3の紡績糸は,複合短繊維の鞘成分を構成するブロ
ツク共重合体の融点が130℃未満であるため耐熱性が
劣り,高温雰囲気下で用いることが困難なものであっ
た。比較実施例4の紡績糸は,複合短繊維の鞘成分を構
成するブロツク共重合体の結晶開始温度が130℃を超
え,かつ融点が180℃を超えるため熱処理工程におい
て200℃の高温度条件を採用しなければならず,この
熱処理時にブロツク共重合体の熱分解が生じ,強力が劣
るものであった。比較実施例5の紡績糸は,複合短繊維
の鞘成分を構成するブロツク共重合体の結晶開始温度が
90℃未満であるため熱延伸するに際して結晶化が進行
してしまい,次の耐熱化熱処理工程において安定な結晶
構造を発現させることが困難であって,高温雰囲気下で
の強力が劣るものであった。比較実施例6の紡績糸は,
複合短繊維の鞘成分を構成するブロツク共重合体の融点
が180℃を超えるため熱処理工程において200℃の
高温度条件を採用しなければならず,この熱処理時にブ
ロツク共重合体の熱分解が生じ,強力が劣るものであっ
た。比較実施例7の紡績糸は,主体繊維/複合短繊維の
混合比(重量比)が85/15であって複合短繊維の存
在が少なく,すなわちこの複合短繊維を介して主体繊維
同士を熱接着して形成した糸において主体繊維の存在が
少な過ぎるために接着点が十分に形成されず,したがっ
て強力が劣るものであった。比較実施例8の紡績糸は,
主体繊維/複合短繊維の混合比(重量比)が45/55
であって複合短繊維の存在が多いため耐熱性は優れるも
のの,糸表面が剛直になるため,麻様の風合いを発現し
ないものであった。比較実施例9の紡績糸は,耐熱化熱
処理時間が短く,高温雰囲気下での強力が劣るものであ
った。
件を満足する実施例9〜16の紡績糸は,高温度雰囲気
下での耐熱性すなわち形態安定性が優れ,しかも麻様の
風合いを発現するものである。これに対し,比較実施例
1及び2の紡績糸は,熱処理が複合短繊維の鞘成分を構
成するブロツク共重合体の融点未満の温度で施されたた
め,高温雰囲気下での強力が劣るものであった。比較実
施例3の紡績糸は,複合短繊維の鞘成分を構成するブロ
ツク共重合体の融点が130℃未満であるため耐熱性が
劣り,高温雰囲気下で用いることが困難なものであっ
た。比較実施例4の紡績糸は,複合短繊維の鞘成分を構
成するブロツク共重合体の結晶開始温度が130℃を超
え,かつ融点が180℃を超えるため熱処理工程におい
て200℃の高温度条件を採用しなければならず,この
熱処理時にブロツク共重合体の熱分解が生じ,強力が劣
るものであった。比較実施例5の紡績糸は,複合短繊維
の鞘成分を構成するブロツク共重合体の結晶開始温度が
90℃未満であるため熱延伸するに際して結晶化が進行
してしまい,次の耐熱化熱処理工程において安定な結晶
構造を発現させることが困難であって,高温雰囲気下で
の強力が劣るものであった。比較実施例6の紡績糸は,
複合短繊維の鞘成分を構成するブロツク共重合体の融点
が180℃を超えるため熱処理工程において200℃の
高温度条件を採用しなければならず,この熱処理時にブ
ロツク共重合体の熱分解が生じ,強力が劣るものであっ
た。比較実施例7の紡績糸は,主体繊維/複合短繊維の
混合比(重量比)が85/15であって複合短繊維の存
在が少なく,すなわちこの複合短繊維を介して主体繊維
同士を熱接着して形成した糸において主体繊維の存在が
少な過ぎるために接着点が十分に形成されず,したがっ
て強力が劣るものであった。比較実施例8の紡績糸は,
主体繊維/複合短繊維の混合比(重量比)が45/55
であって複合短繊維の存在が多いため耐熱性は優れるも
のの,糸表面が剛直になるため,麻様の風合いを発現し
ないものであった。比較実施例9の紡績糸は,耐熱化熱
処理時間が短く,高温雰囲気下での強力が劣るものであ
った。
【0037】
【発明の効果】本発明の紡績糸は,ポリエステルからな
る主体繊維50〜80重量%と,特定のポリアルキレン
テレフタレートを芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂
肪族ポリラクトンとからなる特定のブロツク共重合体を
鞘成分とする複合短繊維50〜20重量%とから構成さ
れるものであって,複合短繊維の鞘成分を構成するブロ
ツク共重合体として高い結晶開始温度を有するものが採
用されるため,この複合短繊維の熱延伸時には鞘成分は
比較的低結晶性であるが,複合短繊維を一素材として紡
績糸とした後に耐熱化熱処理を行うに際し,延伸後の低
結晶性に起因して芯成分の内部歪みを吸収・緩和した新
たな結晶構造を形成する結果,収縮率が著しく小さくな
り,耐熱性すなわち高温度と雰囲気下での形態安定性が
優れ,しかも麻様の風合いを発現する。
る主体繊維50〜80重量%と,特定のポリアルキレン
テレフタレートを芯成分とし,芳香族ポリエステルと脂
肪族ポリラクトンとからなる特定のブロツク共重合体を
鞘成分とする複合短繊維50〜20重量%とから構成さ
れるものであって,複合短繊維の鞘成分を構成するブロ
ツク共重合体として高い結晶開始温度を有するものが採
用されるため,この複合短繊維の熱延伸時には鞘成分は
比較的低結晶性であるが,複合短繊維を一素材として紡
績糸とした後に耐熱化熱処理を行うに際し,延伸後の低
結晶性に起因して芯成分の内部歪みを吸収・緩和した新
たな結晶構造を形成する結果,収縮率が著しく小さくな
り,耐熱性すなわち高温度と雰囲気下での形態安定性が
優れ,しかも麻様の風合いを発現する。
Claims (2)
- 【請求項1】 ポリエステルからなる主体繊維50〜8
0重量%と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,
芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク
共重合体を鞘成分とする複合短繊維50〜20重量%と
から構成された紡績糸であって,前記ポリアルキレンテ
レフタレートが下記(1)を満足し,かつ前記ブロツク
共重合体が下記(2)を満足することを特徴とするポリ
エステル紡績糸。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。 - 【請求項2】 ポリエステルからなる主体繊維50〜8
0重量%と,ポリアルキレンテレフタレートを芯成分,
芳香族ポリエステルと脂肪族ポリラクトンとのブロツク
共重合体を鞘成分とし,前記ポリアルキレンテレフタレ
ートが下記(1)を満足し,かつ前記ブロツク共重合体
が下記(2)を満足する複合短繊維50〜20重量%と
を混合し,カーデイング工程を経てウエブとし,練条・
粗紡・精紡の各工程を経て紡績糸とした後,前記ブロツ
ク共重合体の〔融点〜(融点+30)〕(℃)の温度で
熱処理を行い,さらに前記ブロツク共重合体の〔結晶開
始温度〜(融点−20)〕(℃)の温度で2分間以上の
耐熱化熱処理を行うことを特徴とするポリエステル紡績
糸の製造方法。 (1)ポリアルキレンテレフタレートの融点が220℃
以上である。 (2)ブロツク共重合体のガラス転移温度が20〜80
℃,結晶開始温度が90〜130℃,融点が130〜1
80℃である。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24418696A JPH1072733A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | ポリエステル紡績糸及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24418696A JPH1072733A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | ポリエステル紡績糸及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1072733A true JPH1072733A (ja) | 1998-03-17 |
Family
ID=17115058
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP24418696A Pending JPH1072733A (ja) | 1996-08-26 | 1996-08-26 | ポリエステル紡績糸及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1072733A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101092880B1 (ko) | 2009-02-18 | 2011-12-12 | 주식회사 텍스랜드앤넥스코 | 폐색성 재봉사 및 이를 이용한 직편성물의 봉목 구멍 폐색방법 |
-
1996
- 1996-08-26 JP JP24418696A patent/JPH1072733A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101092880B1 (ko) | 2009-02-18 | 2011-12-12 | 주식회사 텍스랜드앤넥스코 | 폐색성 재봉사 및 이를 이용한 직편성물의 봉목 구멍 폐색방법 |
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