JPH1072638A - 回転電機用ロータシャフト及びその製造法とその高強度低合金鋼 - Google Patents

回転電機用ロータシャフト及びその製造法とその高強度低合金鋼

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JPH1072638A
JPH1072638A JP21161297A JP21161297A JPH1072638A JP H1072638 A JPH1072638 A JP H1072638A JP 21161297 A JP21161297 A JP 21161297A JP 21161297 A JP21161297 A JP 21161297A JP H1072638 A JPH1072638 A JP H1072638A
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光男 栗山
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誉延 森
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寛 福井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的は、高強度,高靭性で高い磁気特
性を備えた回転電機用ロータシャフト及びその製造法と
その高強度低合金鋼を提供することにある。 【構成】本発明は、重量で、C0.15〜0.30%,S
i0.1%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,C
r2.0〜3.0%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜
0.35% 及び残部が実質的にFeである高強度低合金
鋼及びそれを用いた回転電機用ロータシャフトである。
更に、Al0.01%以下,P,S,Sn,Sb,As
の総量を0.025%以下とし、IIa族元素,IIIa族元
素を0.1%以下、IVa 族元素,Nb,Ta及びWを0.
2% 以下含有させることができる。これにより、容量
900MVA以上の大容量発電機、及び回転数5000
rpm以上の電動機が製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な回転電機用ロータ
シャフトとその製造法及びその高強度低合金鋼に関す
る。
【0002】
【従来の技術】容量800MVAまでのタービン発電機
のロータシャフト材としては、ASTM規格材Ni−Cr−
Mo鋼(A469−88,Class 6〜8)が使用されて
いる。近年、エネルギ多様化の観点から石油代替エネル
ギである石炭火力への移行並びに電源立地面積の有効活
用の要求から、タービン発電機は大容量化の傾向にあ
る。
【0003】タービン発電機の大容量化に伴って、ロー
タシャフトの使用条件も厳しくなり、上記の現用AST
M規格材では強度不足になってきた。
【0004】一般に、強度を高めれば靭性が低下する傾
向にあるので、現用材よりも高強度高靭性のロータシャ
フト材の出現が望まれている。
【0005】ASTM規格クラス6〜8はC0.28%
以下,Mn0.60%以下,P0.015%以下,S0.01
5%以下,Si0.15〜0.30%,Ni3.25〜4.
00%,Cr1.25〜2.00%,Mo0.30〜0.6
0%,V0.05〜0.15%,残部が実質的にFeから
なり、クラス8が最も高い強度を有するもので、引張強
さ84kg/mm2 以上、0.02%耐力70.4kg/mm2
上,伸び率16%以上,絞り率45%以上,50%破面
遷移温度4℃以下等が規定されている。
【0006】特公昭47−25248 号公報には、C0.14
〜0.20%,Si0.05〜0.4%,Mn0.1〜0.
6%,Ni1.5〜2.8%,Cr0.75〜1.8%,M
o0.1〜0.5% ,V0.01〜0.12%及び残部Fe
からなる発電機ロータシャフト用低合金鋼が示されてい
る。
【0007】特公昭60−230965号公報には、C0.13
〜0.30%,Si0.10%以下 ,Mn0.60〜2.
00%,P0.010%以下 ,Cr0.40〜2.00
%,Ni0.20〜2.50%,Mo0.10〜0.50
%,V0.05〜0.15%,Al0.005〜0.04
%,N0.0050〜0.0150%,Ni+2Mn+2
Crが4〜8%、残部Feからなるタービン発電機軸用
低合金鋼が示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】容量900MVA以上
の発電機のロータシャフト材としては、引張強さ93kg
/mm2 以上,0.02% 耐力74kg/mm2 以上,破面遷
移温度(以下FATTと略称する)0℃以下の機械的性
質と21000ガウスにおける磁化力990AT/cm以
下の磁気特性が要求される。
【0009】更に、1200MVA級発電機のロータシ
ャフト材としては、引張強さ100kg/mm2 以上130
0MVA級発電機のロータシャフト材としては、引張強
さ104kg/mm2 以上が要求される。
【0010】ASTM規格材(A469−Class 8)及
び従来技術で開示されたものでは、引張強さ≧84.1k
g/mm2,0.02%耐力 ≧70.4kg/mm2,FATT≦
4℃であり、900MVA以上の発電機用ロータシャフ
ト材としては強度及び靭性が不足であり、破壊に対する
安全性が確保できない。
【0011】更に、従来強度を高めると靭性が低下し、
強度と靭性との両方を満足するものが得られなかった。
【0012】本発明の目的は、高強度,高靭性で高い磁
気特性を備えた回転電機用ロータシャフト及びその製造
法と、その高強度低合金鋼を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量で、C
0.15〜0.30%,Si0.1%以下,Mn1%以下,
Ni3.0〜5.0%,Cr2.0〜3.0%,Mo0.1
〜1.0%,V0.03〜0.35% 及び残部が実質的に
Feであることを特徴とする回転電機用ロータシャフト
にある。
【0014】本発明は、重量で、C0.15〜0.35
%,Si0.1%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0
%,Cr1.5〜3.5%,Mo0.1〜1.0%,V0.
03〜0.35%及び残部が実質的にFeであり、前記
(Ni/Cr)比が1.2〜2.0であることを特徴とする
回転電機用ロータシャフトにある。
【0015】本発明は、重量で、C0.15〜0.30
%,Si0.3%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0
%,Cr2.05〜3.0%,Mo0.1〜1.0%,V
0.03〜0.35% ,A10.006% 以下及び残部
が実質的にFeであることを特徴とする回転電機用ロー
タシャフトにある。
【0016】本発明は、前述したNi−Cr−Mo−V
鋼の室温の引張強さ93kg/mm2 以上,50%破面遷移
温度0℃以下、及び焼戻ベーナイト組織を有することを
特徴とする回転電機用ロータシャフトである。
【0017】本発明は、前述の鋼にIIa族元素及びIII
a 族元素の少なくとも1つを0.001〜0.1%含有する
ものである。
【0018】本発明は、前述の鋼に更にIVa族元素,N
b,Ta及びWの少なくとも1つの元素を0.2%以下
含有するものである。
【0019】本発明は、21kGにおける磁化率990
AT/cm以下とするのが好ましく、更に焼戻ベーナイト
組織を有する前述の組成のNi−Cr−Mo−V合金鋼
からなるものである。
【0020】本発明は、重量で、C0.15〜0.30
%,Si0.1〜0.3%以下,Mn0.5%以下,Ni
3.25〜4.5%,Cr2.05〜2.60%,Mo0.
25〜0.60% ,V0.05〜0.20%,Al0.0
1% 以下及び残部が実質的にFeであり、焼戻ベーナ
イト組織を有することを特徴とする回転電機用ロータシ
ャフトにある。
【0021】本発明は、重量で、C0.15〜0.30
%,Si0.3%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0
% ,Cr2.0〜3.0%,Mo0.1〜1.0%及びV
0.03〜0.35% を含有する合金鋼を大気中溶解し
た後、取鍋精錬,真空脱ガス処理等を行い、次いで該溶
湯を鋳型に注湯して造塊後あるいはさらに大気溶解後エ
レクトロスラグ溶解して造塊後熱間鍛造し、800〜9
00℃にて焼入れ後550〜650℃にて10時間以上
保持する焼戻し処理を行うことを特徴とする回転電機用
ロータシャフトの製造法にある。
【0022】本発明は、軸方向にコイルを埋込むスロッ
トを有する胴部,動力の伝達を授受するフランジ部及び
軸受部を備えた前述の組成を有する回転電機用ロータシ
ャフトにあり、該シャフトは室温引張強さ93kg/mm2
以上,50%破面遷移温度0℃以下及び21kGにおけ
る磁化力が990AT/cm以下及び20kGにおける磁
化力が400AT/cm以下であり、前記胴部直径が1m
以上及び前記胴部長さが前記胴部直径の5.5〜6.5倍
とすることが好ましい。
【0023】本発明は、前記シャフトとして前記胴部直
径が1m以上、胴部長さが前記胴部直径の5.5〜6.5
倍である前述の高強度Ni−Cr−Mo−V合金鋼より
なり、前記胴部直径D(mm)は電機容量1MVA当り
0.2mm に1000mmを加えた値以下及び前記発電機容
量1MVA当り0.2mm に900mmを加えた値以上とす
ることが好ましい。
【0024】本発明は、前述のシャフトは前記胴部直径
D(mm)が1m以上、胴部長さが前記胴部直径の5.5
〜6.5倍である前述の高強度Ni−Cr−Mo−V合
金鋼よりなり、該シャフトの回転数R(rpm)との関係か
ら求められる(D2×R2)の値が1.0×107〜3.0
×107となるように前記回転数に対して前記胴部直径
を設定することが好ましい。
【0025】本発明は、重量で、C0.15〜0.30
%,Si0.3%以下,Mn0.5%以下,Ni3.0〜
5.0%,Cr2.0〜3.5%,Mo0.1〜1.0%,
V0.03〜0.35%,Al0.006% 以下、P,S,
Sn,Sb及びAsの総量0.025%以下、前記(Ni/
Cr)比2.1 以下である低合金鋼からなることを特徴
とする回転電機用ロータシャフトにある。
【0026】本発明は、室温引張強さ93kg/mm2
上,50%破面遷移温度0℃以下,21kGにおける磁
化力が990AT/cm以下,20kGにおける磁化力4
00AT/cm以下を有する前述の高強度高靭性Ni−C
r−Mo−V合金鋼よりなる一体中実シャフトによって
構成されている回転電機用ロータシャフトとするのが好
ましい。
【0027】本発明は、重量で、C0.15〜0.30
%,Si0.01〜0.05%,Mn0.05〜0.5%,
Ni3.0〜5.0%,Cr2.0〜3.5%,Mo0.1
〜1.0%,V0.03〜0.35%,Al0.0005〜
0.006%、P,S,Sn,Sb及びAsの総量0.0
01〜0.025%、残部が実質的にFeよりなること
を特徴とする回転電機用ロータシャフトにある。
【0028】本発明は、コイルが埋込まれた積層鉄心か
らなる固定子,該固定子内を回転する回転子を備え容量
900MVA以上の大容量回転電機に好適であり、前記
回転子としては前述の高強度Ni−Cr−Mo−V低合
金鋼よりなるシャフト胴部にコイルが埋込まれ、該胴部
直径が1m以上、該胴部長さが胴部直径の5.5〜6.5倍
であり、3000rpm又は360rpmの回転を受け、回転
電機の床面積が前記電機容量1MVA当りの0.08〜
0.12m2 とするものが好ましいものである。本発明
は、電機容量900MVA以上,固定子電流が前記電機
容量1MVA当り19.0〜24A、前記固定子が直接
水冷、回転子が電機容量1MVA当り0.003〜0.0
06kg/cm2 の水素圧力にて冷却され、該回転子シャフ
トの胴部直径が1.0m 以上である前述の高強度Ni−
Cr−Mo−V合金鋼よりなる大容量回転電機とするの
が好ましい。
【0029】本発明は、定格容量1,120,000KVA にお
いて、固定子を直接水冷,回転子を水素冷却とし、回転
子胴部直径を1.15〜1.35mとし、胴部長さを胴部
直径の5.5〜6.5倍であり、3600rpm の回転を受
けるものが好ましい。特に、マシンサイズとして9〜1
0m3 とするのが好ましい。
【0030】本発明は、重量で、C0.15〜0.30
%,Si0.3%以下,Mn0.5%以下,Ni3.0〜
5.0%,Cr2.0〜3.5%,Mo0.1〜1.0%,
V0.03〜0.35%,Al0.010% 以下、P,S,
Sn,Sb及びAsの総量0.025%以下、前記(Ni/
Cr)比2.3 以下である低合金鋼からなることを特徴
とする回転電機用ロータシャフトにある。
【0031】
【作用】Cは強度の向上になくてはならないもので、そ
のため0.15% 以下では十分な焼入性が得られず、ロ
ータ中心に軟らかいフェライト組織が生成し、十分な引
張強さ及び耐力が得られない。また、0.3% 以上にな
ると靭性を低下させるので、Cの範囲は0.15〜0.3
%に限定される。(Ni/Cr)比を1.2〜2.0とすれ
ば、0.15〜0.35とすることができる。特に、Cは
0.20〜0.28%の範囲が好ましい。
【0032】Si及びMnは従来、脱酸材として添加し
ていたが、真空取鍋精錬によるC脱酸法及びエレクトロ
スラグ再溶解法などの製鋼技術により、特に添加しなく
とも健全なロータが溶製可能である。焼もどし脆化防止
の点から、Si及びMnは低めにすべきであり、それぞ
れ0.1% 及び1.0% 以下に限定され、特にSi≦
0.05% ,Mn≦0.25% より0.20% 以下が好
ましい。Siは添加しないときでも不純物として0.0
19〜0.1%含有される。Mnは若干加えた方が好ま
しく、0.05%以上、より好ましくは0.1%以上とす
る。
【0033】Niは焼入性を向上させ、靭性を向上させ
るのに不可欠の元素である。3.0%未満では靭性向上
効果が十分でない。又、5%を越える多量添加は有害な
残留オーステナイト組織が出て、均一な焼もどしベーナ
イト組織が得られない。特に、3.25% 以上、より
3.5% を越え4.5%までの範囲が好ましい。
【0034】Crは焼入性を向上させ、靭性を顕著に向
上させる効果がある。また、耐食性も向上させる効果が
ある。1.5% 以下ではこれらの効果が十分でなく、
3.0%を越える多量の添加は有害な残留オーステナイ
ト組織がでて、均一な焼もどしベーナイト組織が得られ
ない。とくに、2.05〜2.60%の範囲が好ましい。
Moは焼もどし処理中に結晶粒内に微細炭化物を析出さ
せ、炭化物分散強化作用により、引張強さ及び0.02
% 耐力を高める効果がある。また、焼もどし中に不純
物元素が結晶粒界に偏析するのを抑制する作用があるの
で焼もどし脆化防止効果がある。0.1% 未満では、こ
れらの効果が十分でなく、1.0% を越えて多量に添加
しても効果が飽和する傾向がある。特に、0.25〜0.
6%、より0.35〜0.45%が好ましい。
【0035】Vは焼もどし処理中に結晶粒界に微細炭化
物を析出させ、炭化物分散強化作用により引張強さ及び
0.02%耐力を高める効果がある。0.03%未満では
これらの効果が十分でなく、0.35% を越える多量添
加は効果が飽和する傾向がある。特に、0.05〜0.2
%、より0.10〜0.15%の範囲が好ましい。
【0036】Alは靭性、磁気特性を低下させるので、
低めにすべきである。Alの低減は靭性、及び磁気特性
向上効果が大きい。Alは特に、靭性確保の点から0.
01%を上限とする。特に、0.005% 以下が好まし
い。Alを全くなくすると逆に強度を低めることにもな
るので、製鋼上の限界の点からも0.0005% 以上特
に、0.001% 以上とすることがよい。
【0037】更に、不純物としてP,S,Sn,Sb及
びAsがあり、これらは靭性、磁気的特性を低下させる
ので、これらの元素を低める必要がある。特に、これら
の元素はSiとの相関があり、Si量とこれら元素の総
和とを乗算した値を30×10-4以下とするのが好まし
い。特に15×10-4以下が好ましい。また、Siを除
くこれらの元素の総和量を0.030% 以下、より0.
025% 以下が好ましい。これらの不純物を皆無にす
ることは困難であり、特に総量の下限として0.001
%、より0.010%とする。
【0038】(Ni/Cr)比は引張強さに関係し、そ
の値を2.1 以下とすることにより高い強度が得られ
る。その値が同じ場合にはNi量が高いほど強度が高
く、3%を越えるNi量ではより高い強度が得られる。
特に、3%以上のNi含有量に対して(Ni/Cr)比
を1.2〜2.0、より1.4〜1.9とすることが好まし
い。
【0039】IIa族元素(Be,Mg,Ca),IIIa
族元素(Sc,Y,ランタノイド元素)の少なくとも1
種又は2種以上を0.1% 以下含有する。これらの元素
は強力な脱酸剤として作用し、靭性の向上,磁気特性の
向上に顕著な効果が得られる。特に、0.001〜0.0
5%とするのが好ましい。これらは非放射性元素であ
り、放射性元素は取扱い上好ましくない。
【0040】IVa族元素(Ti,Zr,Hf),Nb,
Ta,Wの炭化物形成元素は少なくとも1つを0.2%
以下含有させることにより靭性を低めることなく強度を
高める。特に、0.02〜0.1%が好ましい。WはMo
と同等の作用をするので、Moの一部をWで置換するこ
とができる。従って、Mo+W量を0.1〜1.0%とし
て、W量の上限を0.5%とし、Mo量の半分以下とす
るのがよい。
【0041】本発明に係る低合金鋼は焼戻ベーナイト組
織を有するもので、5%以下のフェライトを含むことが
できるが、全ベーナイト組織とすることが強度及び靭性
の点で好ましい。
【0042】本発明に係る低合金鋼はSi不純物を顕著
に少なくすることによって強度,靭性を高めるとともに
磁気特性を高めることができるもので、そのために大気
溶解後エレクトロスラグ再溶解又は大気中溶解した後真
空取鍋精錬によって溶湯を形成するものである。溶湯は
金型にて鋳造され、熱間鍛造により所定の形状にされ
る。その後800〜900℃で焼入れが施され、次いで
550〜650℃にて10h以上の焼戻しが施される。
焼入温度は鋼のAc3 点より30〜70℃高い温度で行
われ、特に、Ac3 より50℃高い温度で行うのが好ま
しい。焼戻しは靭性を高めるもので、550〜650
℃、特に、560〜600℃が好ましく、10〜60h
保持するのが好ましい。焼戻後切削加工によって最終形
状となるが、その切削加工によって内部応力が発生する
ので、応力除去焼純が焼戻温度より低い温度で行われ
る。また、鍛造後均一化焼純が行われ、焼入温度より約
50℃高い温度で行い、除冷される。焼入時の冷却速度
はシャフト中心部で50〜150℃/hが好ましい。これ
によってベーナイト組織が得られ、特に全ベーナイト組
織が得られる。
【0043】また、Si量は前述のAl量を0.01%
以下にすることにより0.1〜0.3%とすることがで
き、更にP,S,Sn,Sb及びAs量を0.025%
以下にすることにより高Siでも良好な特性を得ること
ができる。
【0044】前述の合金鋼を用いることにより回転電機
用ロータシャフトはコイルが埋込まれる胴部の直径を1
m以上とし、その胴部長さを直径の5.5〜6.5倍とす
ることにより装置全体をコンパクトにできる。5.5未
満及び6.5を越える比率にする回転子はその振動感度
上好ましくない。特に、5.6〜6.0が好ましい。
【0045】その胴部直径は発電機容量に応じて大きく
する必要があるが、容量1MVA当り0.2mmに100
0mmが加えた値以下とし、1MVA当り0.2mmに90
0mmを加えた値以上とすることが好ましい。
【0046】更に、胴部直径D(m)は回転子の回転数
R(rpm)とによっても設定されるが、(D2×R2)の値
を1.0×107以上となるように設定するのが好まし
い。特に、上限は3.0×107とするのが好ましい。特
に1.5〜2.2×107 が好ましく、1.8〜2.0×1
7がよい。
【0047】本発明においては、発電機及び電動機は容
量の増加により大型化するのが、前述の如く高強度合金
鋼を用いることによりコンパクトな装置とすることがで
き、特に床面積として容量1MVA当り0.08〜0.1
2m2 とすることができる。そしてエネルギー損失が小
さくできるので、効率がより高められる。その固定子電
流も容量当り小さくできるので、電動機又は発電機容量
1MVA当り19.0〜24Aとすることができ、特に
容量の増大につれて単位容量当りの電流を小さくでき
る。容量2000MVAに対しては約19.0〜20.0
Aでできる。そのときの回転子は水素によって冷却され
るが、発電機出力に応じて水素圧力を高める必要がある
が、その圧力を1MVA当り0.003〜0.006kg/
cm2・g とすることができる。特に、0.004〜0.0
05kg/cm2・g が好ましい。
【0048】本発明は、発電機及び電動機に適用される
が、電動機としては同期電動機,同期発電電動機,誘導
同期電動機がある。電動機及び発電機の構造はほぼ同じ
ものである。特に、電動機として5000〜6000rp
m の回転数を有する高速回転のモータにおいて好ましい
ものである。
【0049】本発明におけるロータシャフトの引張強さ
は93kg/mm2 以上が好ましく、より100kg/mm2
上で、特に104kg/mm2以上を得るように成分調整す
るのが好ましい。同時に、50%破面遷移温度を0℃以
下とし、より好ましくは−50℃以下が好ましい。結晶
粒の大きさはASTMの結晶粒度番号で4以上とするこ
とが好ましい。更に、磁気特性として磁束密度21kG
における磁化力990AT/cm以下とすること、20k
Gにおける磁化力を400AT/cm以下とするのが好ま
しく、特に前者で500AT/cm以下とするのが好まし
い。
【0050】
【実施例】
実施例1 表1は供試鋼の化学組織を示す。試料は高周波溶解炉で
各20kg造塊し、温度850〜1150℃厚さ30mm,
幅90mmに熱間鍛造した。試料No.2〜6及び15は本
発明材である。試料No.1は発明材と比較のために溶製
したものである。No.1は発電機ロータシャフト材のA
STM規格A469−88class 8相当材であり、No.
5は高Al鋼である。これらの試料には、大容量発電機
の大形ロータシャフト中心部の条件をシミュレートした
熱処理を施した。まず、840℃まで加熱してオーステ
ナイト化後100℃/hの速度で冷却し焼入した。つい
で、575〜590℃にて32時間加熱保持後15℃/
hの速度で冷却した。焼もどし処理は、引張強さが10
0〜105kg/mm2 の範囲に入る温度を各試料ごとに選
んで行った。
【0051】No.7〜12は比較鋼で、820℃で16
〜34時間加熱保持後同じく100℃/hの速度で焼入
した後、625〜635℃で40〜50時間加熱保持
後、15℃/hの速度の炉冷による焼戻し処理を行っ
た。
【0052】No.13及び14は比較鋼で、900℃で
2時間加熱後炉冷の均一化焼純を行い、次いで850℃
で2時間加熱後120℃/hの速度で冷却する焼入を行
い、更に575℃で60時間加熱保持後40℃/hの速
度で冷却する焼戻しを行った。
【0053】
【表1】
【0054】本発明に係るNi−Cr−Mo−V鋼のN
o.2〜6及び15はいずれも初析フェライトを含まず、
均一な焼戻ベーナイト組織を有していた。また、旧オー
ステナイト結晶粒度番号がいずれも7番であった。他の
合金のNo.1,5及び14も均一な焼戻ベーナイト組織
であった。No.13には5%程度の初析フェライトが見
られる。
【0055】表2は引張試験,衝撃試験,磁気特性,電
気特性結果を示すものである。表中、磁化力は20kG
及び21kGにおけるものを求めた。表に記載のものは
21kGにおけるものである。
【0056】
【表2】
【0057】表に示すように、本発明に係る低合金鋼N
o.2〜6及び15は引張強さが100kg/mm2 以上,0.0
2% 耐力が78kg/mm2 以上であり、更に50℃破面
遷移温度が0℃以下をはるかに低い−50℃以下であ
り、強度と靭性がともに高いことがわかる。更に、磁化
力は900MVA以上の発電機用ロータシャフトに要求
される21kGにおける磁化力として990AT/cm以
下を十分に満足するものであり、電気抵抗も高Cr含有
する本発明に係るものが30μΩcm以上の高い値とな
り、900MVA以上の大容量発電機ロータシャフト材
として極めて有用である。
【0058】図2は引張強さに及ぼすCr含有量の影響
を示す線図である。図に示すようにNi量2.60〜4.
15%においてCr量の増加によって引張強さは高くな
る。特に、Cr量が1.4%を越えると急激に高くな
り、Crの効果が大きい。2.0%を越えると引張強さ
が100kg/mm2 以上の高い値が得られる。
【0059】図3は同じく(Ni/Cr)比との関係を
示す線図である。図に示すように(Ni/Cr)比が大
きくなるほど引張強さが低下する。特に、(Ni/C
r)比が2.1 以下とすることにより高い強度が得られ
る。Ni量との関係もあり、3.50%以上の高Niと
することにより100kg/mm2以上の高強度のものが得
られる。目標とする引張強さの93kg/mm2 以上に対し
ては(Ni/Cr)比は2.3以下とし、Ni3.5%以
下とすることにより得られる。Ni3%未満では得られ
にくい。
【0060】図4は同じくSi量との関係を示すもの
で、Si量の増加によって強度が高められることがわか
る。Si量を0.17%以上にすれば93kg/mm2以上が
Cr1.3〜1.8%,Ni2.6〜3.5%で得られが、
Cr2%を越えるものでは0.1% 以下の低Siで93
kg/mm2 以上、特に100kg/mm2 以上が得られる。
【0061】図5は50%破面遷移温度に及ぼすNi又
はCr量の影響を示す線図である。図に示すようにNi
及びCrのいずれもその含有量の増加によってFATT
が低くなり、特に、低Siの0.1%以下ではCr量を
0.5%以上含有させれば0℃以下のFATTが得られ
る。特に0.1% を越えるSi量ではNi及びCrを高
めても0℃以下のFATTは得られにくい。
【0062】図6は同じくFATTに及ぼすSi量の影
響を示す線図である。図に示す如く、Si量を下げるこ
とによってFATTは低くなり高靭性が得られる。特
に、Ni2.5〜3.0%及びCr1.3〜1.8%付近で
はSi量を0.08% 以下、Ni3.5〜4.0%及びC
r1.5〜2.2%付近では0.13% 以下とすることに
より0℃以下とすることができる。Cr2.2%を越
え、Ni3.5%以上のものでは0.20% 以下で0℃
以下とすることが可能である。
【0063】図7は同じくFATTとAl量との関係を
示す線図である。Alの含有もFATTを高める元素である
ので、Cr2.05〜2.2%及びNi3〜4%付近では
0.014%以下、Cr2.2〜2.5%及びNi3.5〜
4.5%付近では0.018%以下で0℃以下とすることがで
きる。Cr1.65%付近ではNi量が3.5%と高くて
もAl量を下げても0℃以下は得られにくい。
【0064】図8は磁化力とSi量との関係を示すもの
である。図に示すようにSi量の増加は磁化力を高める
ので、低い方がよい。特に、Cr1.5〜2.5%及びN
i2.5〜4.5%付近ではSi量を0.18% 以下とす
ることにより21kGにおける磁化力900AT/cm以
下とすることができる。特に、Si量を0.1% 以下で
は700AT/cm以下の磁化力で得られる。
【0065】図9に同じく磁化力とP,S,Sn,S
b,Asの総量との関係を示す線図である。これらの不
純物は磁化力を高めるので好ましくなく、990AT/
cm以下にするには0.040% 以下にすべきである。特
に、700AT/cm以下にするには0.03% 以下がよ
い。
【0066】図10は同じく磁化力とAl量との関係を
示すものである。図に示す如く、Alは磁化力を高める
ので好ましくないものである。前述のCr,Ni量及び
Si0.1% 以下においてAl量は990AT/cm以下
の磁化力とするには0.025% 以下とすべきで、特に
700AT/cm以下とするには0.015%以下が好ま
しい。0.1% を越えるSiではAl量を0.01% 以
下にするのがよい。
【0067】図11は同じく磁化力に及ぼすSiと
(P,S,Sn,Sb,Asの総量)と乗算した値の影
響を示すもので、この値の高いものほど磁化力を高める
のでまずい。70×10-4以下の値にすれば990AT
/cm以下とすることができる。
【0068】実施例2 表3は、本発明鋼No.2〜4,6 を高強度化した(実
施例1よりも焼戻し温度を5℃低くした)試料の引張試
験,衝撃試験及び磁気特性試験結果を示す。
【0069】表から明らかなように本発明材は、引張強
さ105kg/mm2 以上,0.02%耐力82kg/mm2
上,FATT−44℃以下,磁化力400AT/cm以下
で、1200MVA級及び1300MVA級発電機ロー
タシャフト材に要求される機械的性質及び磁気特性を十
分満足する。従って、本発明材は1200MVA以上の
大容量発電機用ロータシャフトとして極めて有用である
と言える。
【0070】
【表3】
【0071】実施例3 本実施例は実施例1及び2の材料からなるロータシャフ
トを適用した火力、または原子力によって駆動される交
流のタービン発電機は、通常2極または4極の円筒回転
界磁形同期発電機の例である。
【0072】火力用タービン発電機はほとんどが2極の
高速機であり、回転速度は50Hzで3,000rpm,6
0Hzで3,600rpmとなる。これは高速のほうがター
ビンの効率が良く小形となるためである。1軸で出力を
出すタンデムコンパウンド形がほとんどであるが、大容
量機では2軸で出力を出すクロスコンパウンド形も採用
される。
【0073】原子力用タービン発電機は通常4極で1,
500rpmまたは1,800rpmで使用される。原子炉の
発生蒸気が火力に比べて多量・低温・低圧で、タービン
が長翼・低回転速度となるためである。
【0074】タービン発電機の冷却方式としては間接冷
却方式と直接冷却方式があり、冷却媒体には、空気・水
素・水が主として使用される。
【0075】水素冷却は大容量で用いられ、間接・直接
両方式があり、すべてガス冷却器が発電機本体内に組み
込まれた防爆密閉構造となる。また、水冷却の場合は直
接冷却方式となり、大容量機では固定子・回転子の両方
を水冷却方式とすることもある。
【0076】図12は本発明に係る固定子コイル直接水
冷却形タービン発電機の一例である。
【0077】(固定子)固定子わくは溶接構造鋼板など
でつくられ通風路を形成し、鉄心を支えるとともに振動
を防ぐように強固につくられる。磁気吸引力により鉄心
はだ円に変形し、回転子の回転に伴い二倍周波数の振動
が発生する。この振動は大形機ほど大きくなるので、鉄
心と固定子わくとをばねを介して取り付ける弾性支持構
造とする。
【0078】固定子鉄心2には、0.35または0.5mm
厚のけい素鋼板が用いられ、方向性けい素鋼板が使用さ
れる。鉄心は軸方向に50〜60mm程度ずつ積層され、
間に通風ダクトを形成するようにI形鋼の間隔片を入れ
る。
【0079】固定子巻線7は通常2層巻が用いられる
が、2極機の場合、特に巻線端部が長くなるため強固に
保持しなければならない。漂遊負荷損が大きくなるの
で、端部の構造物には非磁性材を使用する。
【0080】(回転子)タービン発電機の大きな特徴は
高速回転することであり、遠心力が大きくなるので回転
子直径が制限される。回転子構造材料に機械的強度を確
保するとともに、危険速度を避け振動を抑えるため一体
鍛造され、図14に示すスロット16を加工し、その中
に界磁巻線がおさめられる。回転子1の形状を図13に
示す。
【0081】主軸の材料は本発明に係るNi−Cr−M
o−V鋼からなる。図中には示されていないが、フラン
ジ15とセンタリング18との間にファン20の取付け
用リング17が設けられる。
【0082】界磁巻線3は銅帯を平巻きに成形してティ
ース12間に形成された回転子鉄心スロット内に分布巻
きし、導体の1ターンごとに層間絶縁を注入する。巻線
の端部は保持環(リティニングリング)9で押える。コ
イルには通常の銅の代りにクリープ特性の良好な銀入銅
が使用される。
【0083】保持環9はC0.1% 以下,N0.4% 以
上,10〜25%Mn,15〜20%Crを含む非磁性
ステンレス鋼が用いられる。巻線3がスロット16に埋
込まれた後、スロット16の最も広い部分に超ジュラル
ミン合金によるウェッジ13がはめ込まれることによっ
て固定される。エンドダンパリング14には端部又は全
長ダンパが用いられ、端部Al合金,胴部銀入銅合金が
用いられる。8はシャフト、11は磁極、15はカップ
リングである。
【0084】(通風方式)1000MVA級以上の大形
機で鉄心長が長くなると均一に冷却することがむずかし
いため、複式通風方式をとる。
【0085】この方式では、鉄心背後の固定子わく内に
数区分の給気室および排気室が軸方向に交互に配列され
ており、冷却空気は発電機両端より固定子わく内の風胴
を経て各給気室に集められ、これより固定子鉄心を冷却
し、回転子内部を冷却した気体とともに外径側に流れ、
冷却器を経てファンの吸気側に至り循環する。
【0086】水素冷却のガス圧は間接水素冷却機で2at
g ,直接水素冷却機で2〜5atg が使用される。水素ガ
ス圧を上げた場合、熱伝達率が向上するとともにガスの
熱容量が密度に比例して増加するので、ガス自身の温度
上昇がガスの絶対圧力に逆比例して減少し、冷却効果が
増大する。同一寸法の機械の出力は一般に間接冷却形
0.05atgのときの出力を100とすれば1atg で11
5,2atg で125の出力となる。
【0087】水素冷却方式は、空気と混合した場合水素
の容積が10〜70%の範囲では爆発性になる。これを
防ぐため自動的に水素純度を約90%以上に維持するよ
うにしているが、このため機内水素ガスが軸に沿って機
外に漏れないように軸受の内側に油膜による密封装置を
備えている。軸の狭いすき間に機内の水素ガスより高い
圧力の油を流すことにより、機内からのガス漏れを防い
でいる。
【0088】水素冷却タービン発電機において固定子を
間接冷却とする場合でも、回転子は直接冷却とする場合
が多い。
【0089】(直接冷却)発電機コイルの導体最高温度
が出力を制限する場合、その温度上昇中に大きな割合を
占める絶縁物内での温度差を除くために、導体を直接冷
却媒体で冷却する。
【0090】冷却媒体としては、水素ガスや油・水など
の液体がある。水は空気の場合の約50倍の熱伝達能力
を有し、冷却媒体として優れている。
【0091】(1)水素ガス直接冷却固定子コイルの例
を示し、素線の間にはさんだ四角なベントチューブの内
部にガスを通して導体を直接冷却する。導体の発生熱量
の一部は熱抵抗の大きな主絶縁を通って鉄心に伝わり冷
却されるが、大部分は熱抵抗の小さな冷却管を通って水
素ガスが持ち去る。
【0092】液体冷却には、比熱が大きく、かつ対流に
よる熱伝達率も非常に大きい純水が使用される。
【0093】液体通路となる配管には、ステンレス鋼が
使用され、コイルおよびコイル端部のクリップなどには
無酸素銅または脱酸銅が使用される。絶縁接続管には機
械的強度が高く、たわみ性に富み、絶縁性の良いテフロ
ン管が普通使用される。固定子コイルの断面は素線を中
空とし、この中を液体が流れるようにしている。
【0094】(2)回転子の冷却媒体としては水素ガス
又は水が使用され、次の方式がある。 エンドフィード
方式には回転子端部より回転子コイル内に押し込まれた
水素ガスは、回転子中央部にあけられた穴よりエアギャ
ップに放出される。また、回転子の一端よりコイル銅帯
に入り他端より出る方式も好ましい。
【0095】回転子コイルの断面形状は側路式と中空銅
帯式とのいずれでもよい。この方式をとった場合は、固
定子コイルにもガス直接冷却が採用し、高圧のブロワが
回転子の一端に取り付けられる。
【0096】エアギャップピックアップ方式においては
回転子表面に吸入および排出の穴部を交互に設けて、回
転による風速を利用して、エアギャップ部における水素
ガスをコイルウェッジ表面より吸入し、コイル銅帯内を
一定距離流して発生熱を奪い、排気穴を通ってエアギャ
ップ部に出る方式、或いは回転子の水冷却技術において
回転体中に水を通す方式がある。
【0097】水冷却方式は、水素ガス冷却方式に比較し
て構造が複雑であるために、信頼性上は不利となるが、
発電機の重量が15〜25%程度軽くなり、また部分負
荷での効率を向上させることができる。
【0098】図中、15はタービンに結合されるフラン
ジ、20はファン、21は固定子コイル、22はブラ
シ、23はスリップリングである。
【0099】図1は本発明からなる材料を用いたタービ
ン出力1000MW級(発電機容量1120MVA級)
以上の大型タービン発電機用ロータシャフトの斜視図で
ある。本発明に係るロータシャフトを次の様に製造し
た。
【0100】実施例1に記載のNo.2とほぼ同じ組成を
目標に大気溶解後真空取鍋精錬によって製造した約15
0tの溶湯を金型に鋳造した。次いで、プレスによる熱
間鍛造を行い、据込み(鍛造比1/2U)後鍛伸(鍛造
比3S)を行った。更に、900℃で均一化焼純を行
い、所定の形状に切削加工した後、840℃で全体を2
0時間たて型炉で加熱保持した後、水噴霧によって中心
孔で100℃/hの冷却速度で冷却する焼入をした。次
いで580℃で60h加熱保持後15℃/hの速度で冷
却する焼戻処理を施した。その後、図1に示す最終形状
に切削加工を施した。本実施例は2極用で、11は磁
極、12はティース、17はファン取付用リング、18
はリティニングリング取付け用センタリングリング、1
9は中心孔である。この部分で材料の機械的性質,電気
的性質,磁気的性質を検査するための試料を採取した。
センタリングリング18はシャフト形成時一体となって
いるが、リング状に切削された後リティニングリングが
焼ばめされる。
【0101】本実施例では全長約15m,ティース12
が設けられる胴部直径が1.2m ,胴部長さが約7m
で、胴部直径約5.7倍 である。このもののマシンサイ
ズは約10m3 で、このようにすることにより回転子の
振動感度を低くし、同相アンバランス感度を低く押える
ことができるとともに、軸のフレキシビリティが低下し
軸受安定性が高いものが得られる。
【0102】マシンサイズは(回転子胴部外径)2×(回
転子胴長)で表わされる。
【0103】本発明におけるロータシャフトのマシンサ
イズと発電機容量(MVA)との関係は次式数1と数2
の範囲内が好ましい。
【0104】 マシンサイズ(m3)=4.7+3.2×10-3×発電機容量(MVA) …(1) マシンサイズ(m3)=4.5+5.7×10-3×発電機容量(MVA) …(2) 本実施例における機械的特性,磁気的特性及び電気的特
性は実施例1のNo.2の合金の値と同等のものであっ
た。
【0105】本実施例における仕様は次の通りである。
【0106】発電機容量:1120MVA,固定子電
流:発電機容量1MVA当り22A,力率:0.9,回
転数3600rpm,周波数60Hz,固定子:直接水冷
却,回転子:直接水素冷却(発電機容量1MVA当り0.
0047kg/cm2・g),ケーシング材:SM41鋼,鉄
心材:方向性ケイ素鋼板,コイル:電気銅,絶縁材料,
エポキシレジン及びマイカ,コイル埋込み部の胴長/胴
径=5.83 ,リティニング材:C0.1% 以下,N
0.7 以上,Si1%以下の18%Mn−18%Cr
鋼,全長ダンパ,回転子コイル:銀入銅,軸受:炭素鋼
鋳鋼,全体寸法:長さ16m,幅6m,床面積96
2
【0107】以上の構造とすることにより、1000M
W級のタービン出力に対し、発電機容量1120MVA
が得られ、1MVA当りの発電機の床面積が0.086
2であり、従来の700MW級タービンの発電機(容
量800MVA)の1MVA当りの床面積0.098m2
より約13%コンパクト化できる。この床面積は発電機
容量1MVA当り0.08〜0.09m2とすることがで
きる。
【0108】また、本発明の低合金鋼によれば、胴部直
径は上限及び下限を前述のマシンサイズの値から求めら
れる値とし、更に上限の直径D(mm)を次の数3によって
求められる値及び下限の直径を数4によって求められる
値とすることが好ましい。胴部長さはその直径の5.5
〜6.5倍が好ましい。
【0109】 胴部直径D(mm)=0.2×発電機容量(MVA)+1000 …(3) 胴部直径D(mm)=0.2×発電機容量(MVA)+900 …(4) 以上の構造とすることにより回転子の振動感度が小さ
く、発電機全体をコンパクトにできる。
【0110】
【発明の効果】本発明によれば、室温引張強さ93kg/
mm2 以上,50%破面遷移温度0℃以下,21kGにお
ける磁化力が990AT/cm以下の特性が得られ、発電
機容量900MVA以上の大容量発電機或いは回転数5
000rpm 以上の同期電動機がコンパクトに製造でき
る。これにより、設置面積の有効活用ができ、特に発電
においては石油,石炭,原子力のエネルギの多様化に貢
献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転電機用ロータシャフトの斜視
図。
【図2】引張強さとCrとの関係を示す図。
【図3】引張強さと(Ni/Cr)比との関係を示す
図。
【図4】引張強さとSiとの関係を示す図。
【図5】FATTとNi又はCrとの関係を示す図。
【図6】FATTとSiとの関係を示す図。
【図7】FATTとAlとの関係を示す図。
【図8】磁化力とSiとの関係を示す図。
【図9】磁化力とP+S+Sn+Sb+Asとの関係を
示す図。
【図10】磁化力とAlとの関係を示す図。
【図11】磁化力とSi×(P+S+Sn+Sb+A
s)との関係を示す図。
【図12】タービン発電機の断面図。
【図13】タービン発電機用回転子の斜視図。
【図14】回転子のスロット断面図。
【符号の説明】
1…回転子、2…固定子、3…界磁巻線、4…軸受ブラ
ケット、5…固定子フレーム、6…軸受、8…シャフ
ト、9…リティニングリング、10…クロス・スロッ
ト、11…磁極、12…ティース、13…ウェッジ、1
4…エンドタンパリング、15…カップリング、16…
スロット、17…ファン取付け用リング、18…センタ
リングリング、19…中心孔、20…ファン、21…固
定子コイル、22…ブラシ(黒鉛)、23…スリップリ
ング。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福井 寛 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内 (72)発明者 石塚 達郎 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    1%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,Cr
    2.0%を越え3.0以下,Mo0.1〜1.0%,V0.
    03〜0.35%及び残部が実質的にFeであることを
    特徴とする回転電機用ロータシャフト。
  2. 【請求項2】重量で、C0.15〜0.35%,Si0.
    1%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,Cr
    1.5〜3.5%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜0.
    35%及び残部が実質的にFeであり、前記(Ni/C
    r)比が1.2〜2.0であることを特徴とする回転電機
    用ロータシャフト。
  3. 【請求項3】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    3%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,Cr
    2.05〜3.0%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜
    0.35%,A10.006% 以下及び残部が実質的に
    Feであることを特徴とする回転電機用ロータシャフ
    ト。
  4. 【請求項4】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    2%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,Cr
    2.0〜3.0%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜0.
    35%及び残部が実質的にFeであり、室温の引張強さ
    93kg/mm2 以上,50%破面遷移温度0℃以下、及び
    焼戻ベーナイト組織を有することを特徴とする回転電機
    用ロータシャフト。
  5. 【請求項5】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    1%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,Cr
    2.0〜3.0%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜0.
    35%,IIa族元素及びIIIa 族元素の少なくとも1つ
    の元素0.001〜0.1%及び残部が実質的にFeであ
    ることを特徴とする回転電機用ロータシャフト。
  6. 【請求項6】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    1%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,Cr
    2.0〜3.0%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜0.
    35%及び残部が実質的にFeであり、21kGにおけ
    る磁化率が990AT/cm以下及び焼戻ベーナイト組織
    を有することを特徴とする回転電機用ロータシャフト。
  7. 【請求項7】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    1%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,Cr
    2.0〜3.0%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜0.
    35%,IVa族元素,Nb,Ta及びWの少なくとも1
    つの元素0.2% 以下及び残部が実質的にFeであるこ
    とを特徴とする回転電機用ロータシャフト。
  8. 【請求項8】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    1〜0.3%,Mn0.5%以下,Ni3.25〜4.5
    %,Cr2.05〜2.60%,Mo0.25〜0.60
    %,V0.05〜0.20%,Al0.01%以下及び残部が
    実質的にFeであり、焼戻ベーナイト組織を有すること
    を特徴とする回転電機用ロータシャフト。
  9. 【請求項9】重量で、C0.15〜0.30%,Si0.
    3%以下,Mn0.5%以下,Ni3.0〜5.0%,C
    r1.5〜3.5%,Mo0.1〜1.0%,V0.03〜
    0.35%,Al0.01%以下、P,S,Sn,Sb及び
    Asの総量0.03%以下、前記(Ni/Cr)比2.1
    以下である低合金鋼からなることを特徴とする回転電
    機用ロータシャフト。
  10. 【請求項10】重量で、C0.15〜0.30%,Si
    0.01〜0.30%,Mn0.05〜0.5%,Ni3.0
    〜5.0%,Cr2.0〜3.5%,Mo0.1〜1.0
    %,V0.03〜0.35% ,Al0.0005〜0.006
    %、P,S,Sn,Sb及びAsの総量0.001〜0.
    025%、残部が実質的にFeよりなることを特徴とす
    る回転電機用ロータシャフト。
  11. 【請求項11】重量で、C0.15〜0.30%,Si
    0.3%以下,Mn1%以下,Ni3.0〜5.0%,C
    r2.0〜3.0%,Mo0.1〜1.0%及びV0.03
    〜0.35%を含有する合金鋼を大気中溶解した後取鍋
    精錬真空脱ガス処理等を行い次いで該溶湯を鋳型に注湯
    して造塊後あるいは大気溶解後エレクトロスラグ溶解し
    て造塊後熱間鍛造し、800〜900℃にて焼入れ後5
    50〜650℃にて10時間以上保持する焼戻し処理を
    行うことを特徴とする回転電機用ロータシャフトの製造
    法。
  12. 【請求項12】重量で、C0.15〜0.30%,Si
    0.3%以下,Mn1.0%以下,Ni3.0〜5.0%,
    Cr2.0〜3.5%,Mo0.1〜1.0%及びV0.0
    3〜0.35%,Al0.010%以下、P,S,Sn,
    Sb及びAsの総量0.025%以下及び残部が実質的にF
    eであり、前記(Ni/Cr)比が2.3 以下であるこ
    とを特徴とする高強度低合金鋼。
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KR101355737B1 (ko) * 2011-09-28 2014-01-28 현대제철 주식회사 형강 및 그 제조 방법
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