JPH1066577A - 核酸プールおよびその製造方法 - Google Patents

核酸プールおよびその製造方法

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JPH1066577A
JPH1066577A JP8208423A JP20842396A JPH1066577A JP H1066577 A JPH1066577 A JP H1066577A JP 8208423 A JP8208423 A JP 8208423A JP 20842396 A JP20842396 A JP 20842396A JP H1066577 A JPH1066577 A JP H1066577A
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nucleic acid
gene
acid pool
block
blocks
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JP8208423A
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Yoshiaki Miyoda
喜昭 御代田
Shiro Fukuyama
志朗 福山
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Novo Nordisk AS
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Novo Nordisk AS
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 天然に存在する塩基配列空間とは大きく
異なった空間に存在する塩基配列の効率的な提供。 【解決手段】 1個または2個以上の遺伝子の全体また
は一部を3個以上のブロックに分割し、これらのブロッ
クの全部または一部を分割前とは異なる配列で連結して
構成される、2種類以上の核酸を含有する核酸プール、
その製造方法、およびその核酸プールに存在する遺伝情
報を発現させることによって得られる遺伝子産物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オリゴヌクレオチ
ドをランダムに連結することによって生成される核酸プ
ールとその製造方法、及びそのプールの中に存在する核
酸を遺伝子として発現させることによって得られる遺伝
子産物に関する。
【0002】
【従来技術】天然に存在するタンパク質を人間にとって
より有用に改良するタンパク質工学の1つのアプローチ
として、部位特異的変異によるタンパク質の改良があ
り、いくつかの成果が得られている(特開平5-91876 号
公報)。しかし、これには標的タンパク質の立体構造が
判明していることが必要であり、立体構造の解析に多く
の労力が必要である。また、立体構造が判明していても
構造と機能の関係にはまだ不明なことが多く、狙った機
能を確実に付与することは依然として困難である。
【0003】これらの困難を回避するために、ランダム
変異とスクリーニングからなる方法や、生物の進化を利
用した進化分子工学が脚光を浴びており、非常に有用で
あることが示されている(Proc. Natl. Acad. Sci. US
A, 83, 576 (1986))。しかしながら、現在行なわれて
いる方法は、多くて数個のアミノ酸置換が専らである。
WO 95/22625 には、複数の遺伝子をランダムに分割し、
相同的組み換えによって遺伝子を再構築し、新規な遺伝
子を作成する方法が記載されている。しかし、この方法
はキメラ遺伝子作成の一方法であり、作成される遺伝子
は当初の遺伝子と類似しており、塩基配列の大枠は維持
されている。
【0004】このような既存の方法では生物が進化の過
程で獲得できなかった機能の付与を望むことは困難であ
る。自然界に存在するタンパク質等の遺伝子産物と機能
が大きく異なる遺伝子産物を取得するためには、天然に
存在する塩基配列空間とは大きく異なった核酸のプール
を作り、その中から目的の機能を有する遺伝子産物を取
得することが有効と考えられる。
【0005】そのための一つの方法として、全ての塩基
の組合せからなる核酸プールを作ることが考えられる。
しかし、100アミノ酸からなる比較的小さなタンパク
質をコードする塩基配列(300塩基(bp))の総数
でさえ、4の300乗(およそ10の180乗)通りと
いう巨大な数となり、そのすべてを含む核酸プールを調
製することは実際上、不可能である。
【0006】ある種のタンパク質についてモジュールと
呼ばれるサブ構造に着目し、各モジュールに対応する塩
基配列ブロックの順番を入れ換えて、モジュールの順番
を変えた変異体を作り出す試みもなされている(Viva O
rigino vol. 23, No.1 (1995) 86-87)。しかし、この試
みでは、それぞれの変異体について個別に遺伝子配列の
並べ換えが行われており、順番が入れ替わった全ての分
子種を含む核酸プールを作成すること、およびそのプー
ルから所望の性質の産物を発現する遺伝子を取得するこ
とは未だなされていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、天然
に存在する塩基配列空間とは大きく異なった空間に存在
する塩基配列を効率的に得る方法、およびこのようにし
て得られた天然には存在しない核酸配列を遺伝子として
発現させることによって得られる遺伝子産物を提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】遺伝子の配列空間はA、
G、C、Tの塩基を用いて理論的に作り得る全配列から
なる。例えば、n個のアミノ酸からなるタンパク質をコ
ードする塩基配列は、4つの塩基の中から任意の1つを
3n回選択して順次並べることにより構成され、4の3
n乗通り存在する。100アミノ酸のタンパク質であれ
ば、前述の通り、およそ10の180乗通りの対応する
塩基配列が存在する。実際にはタンパク質を構成するア
ミノ酸の数に制限は存在しないので、配列空間は無限の
広がりを持つことになる。生物は進化の過程では、この
配列空間のごく一部を試験したにすぎず、それ以外の大
きな配列空間に極めて優れた機能を持つタンパク質をコ
ードする配列がある可能性が大きい。現在多くの研究機
関で行われているタンパク質工学的取り組みも天然に存
在するタンパク質より機能において勝るタンパク質を創
造することを目的としており、その主たるアプローチ
は、上述の通りアミノ酸置換である。しかしながら、ア
ミノ酸置換は進化において生物が行なった主要な手法、
つまり、生物の模倣であり、生物が試験した配列のごく
近傍を探索するにすぎない。また、そうして得られた配
列は過去において淘汰された配列である可能性もある。
【0009】本発明者らは、生物の試験した配列空間の
近傍から大きく離れるには、生物が行ない得なかったこ
とを実践すれば可能であると考えた。そして、遺伝子を
数個のブロックに分け、それらの順番を変えることが、
生物内で起きるには致死的であることから、この目的に
適した方法であると結論し、鋭意研究を重ねた結果、天
然に存在する塩基配列空間とは大きな隔たりを有するこ
とを確認するとともに、それらの配列からなる分子プー
ルを作成することに成功し、本発明を完成するに至っ
た。すなわち本発明は以下の記載によって特定される核
酸プール、その製造方法、および当該核酸プールに含ま
れる核酸が遺伝子として発現することにより得られる遺
伝子産物を提供する。
【0010】1) 1個または2個以上の遺伝子の全体
または一部を3個以上のブロックに分割し、これらのブ
ロックの全部または一部を分割前とは異なる配列で連結
して構成される、2種類以上の核酸を含有する核酸プー
ル。 2) 10種類以上の核酸を含有する前記1に記載の核
酸プール。 3) 前記ブロックをn個(nは分割により生成する相
異なるブロックの個数)再配列することにより構成され
る塩基配列の核酸をすべて含有する前記1または2に記
載の核酸プール。 4) 遺伝子がタンパク質をコードする遺伝子であり、
各ブロックによりコードされるアミノ酸配列がもとの遺
伝子上で相当部分によりコードされるアミノ酸配列と一
致する前記1乃至3のいずれかに記載の核酸プール。 5) 遺伝子が酵素機能をコードする遺伝子またはその
制御遺伝子である前記1乃至4のいずれかに記載の核酸
プール。
【0011】6) 遺伝子がプロテアーゼ、リパーゼ、
セルラーゼ、アミラーゼ、カタラーゼ、キシラナーゼ、
オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシゲナーゼ、レ
ダクターゼのうちいずれかをコードする遺伝子である前
記5に記載の核酸プール。 7) 遺伝子が原核生物由来である前記1乃至6のいず
れかに記載の核酸プール。 8) 遺伝子がバチルス属細菌由来である前記7に記載
の核酸プール。 9) 遺伝子がプロテアーゼAPI21遺伝子である前
記8に記載の核酸プール。 10) 各ブロックがオリゴヌクレオチドである前記1
乃至9のいずれかに記載の核酸プール。 11) 核酸が1本鎖ポリヌクレオチドである前記10
に記載の核酸プール。 12) 核酸が2本鎖ポリヌクレオチドである前記10
に記載の核酸プール。
【0012】13) 1個または2個以上の遺伝子の全
体または一部を3個以上のオリゴヌクレオチド・ブロッ
クに分割するか、該ブロックに相当するオリゴヌクレオ
チドを合成し、これらのブロックの全部または一部を遺
伝子上での配列とは異なる配列で連結して構成すること
による、2種類以上の核酸を含有する核酸プールの製造
方法。 14) 下記a)〜c)の工程を有する前記13に記載
の核酸プールの製造方法:a)1個または2個以上の遺
伝子の全体または一部に対応する塩基配列を有する1本
鎖オリゴヌクレオチドからなる3個以上のブロックを、
遺伝子の分割または該塩基配列を有するオリゴヌクレオ
チド鎖の合成により調製する工程; b)工程a)で得られた各オリゴヌクレオチド鎖ブロッ
クについて、3’末端がデオキシリボヌクレオチドであ
るブロックの3’末端にはリボヌクレオチドを、5’末
端が水酸基であるブロックの5’末端にはリン酸基を付
加する工程; c)工程b)で得られたオリゴヌクレオチド鎖ブロック
を、1のブロックの3’末端のリボヌクレオチドと他の
ブロックの5’末端のリン酸基とを反応させることによ
り、任意の配列で連結する工程。 15) 工程a)で調製されるブロックの数が3個以上
である前記14に記載の核酸プールの製造方法。 16) 工程b)で、少なくとも1個のブロックについ
ては5’末端を水酸基のまま残すことにより、該ブロッ
クを5’末端に有する核酸を選択的に得る前記14また
は15に記載の核酸プールの製造方法。
【0013】17) 工程b)で、少なくとも1個のブ
ロックについては3’末端をデオキシリボヌクレオチド
のまま残すことにより、該ブロックを3’末端に有する
核酸を選択的に得る前記14乃至16のいずれかに記載
の核酸プールの製造方法。 18) 各ブロックによりコードされるアミノ酸配列が
もとの遺伝子上で相当部分によりコードされるアミノ酸
配列と一致するようにブロックの調製が行なわれる前記
14乃至17のいずれかに記載の核酸プールの製造方
法。 19) 工程a)で、遺伝子上の読み枠の開始点から数
えて(3p+1)番目から(3q+2)番目(p,qは
ブロックごとに独立して決められる整数。但し、p≦q
である。)までの塩基配列を有するブロックを調製し、
工程b)で、同じく(3q+3)番目の塩基または当該
位置においてコードするアミノ酸を変えない塩基に対応
するリボヌクレオチドを該ブロックの3’末端に付加す
る、前記18に記載の核酸プールの製造方法。 20) 工程c)の連結が、アデノシン三リン酸及び2
価の金属イオンの存在下、RNAリガーゼを用いて行な
われる前記14乃至19のいずれかに記載の核酸プール
の製造方法。 21) 前記14乃至20により得られる1本鎖核酸を
ポリメラーゼ反応により2本鎖化してなる2本鎖核酸プ
ールの製造方法。 22) 前記1乃至12記載の核酸プールに存在する遺
伝情報を発現させることによって得られる遺伝子産物。 以下、本発明をより詳細に説明する。
【0014】[核酸プール]本発明において「核酸プー
ル」とは、2種類以上の核酸を高密度で含む混合物を意
味する。核酸は、DNAおよびRNAを含有する1本鎖
または2本鎖のポリヌクレオチドである。本発明の核酸
プールは、特定の数以上、例えば10種類以上の相異な
る構造を有する核酸分子を含有するものとすることがで
きる。生化学的な操作ないし反応に混合物のまま使用し
たときに複数の核酸成分について反応が進行し得る状態
にあることが望ましいが、溶液状態、乾燥状態等の状態
は問わない。本発明の核酸プールは、1個または2個以
上の遺伝子の全体または一部を3個以上のブロックに分
割し、これらのブロックの全部または一部を分割前とは
異なる配列で連結して構成される、分割前の塩基配列と
は異なる塩基配列を有する核酸を複数含有することを特
徴とする。ここで、「分割前とは異なる配列で連結す
る」とは、(i) ブロックを分割前とは異なる順番に並べ
換えること、(ii)同一のブロックを連続的にまたは非連
続的に重複して連結すること、(iii) 少なくとも一つの
ブロックを除いて再連結すること、および(iv)これら
(i) 〜(iii) の組み合わせを含む。なお、本発明におけ
る、遺伝子を分割しこれを任意に配列し直す操作を、以
下、シャフリング(shuffling) という。
【0015】例えば、1個の遺伝子が式 (1):
【化1】A−a1 −a2 −……−an −B (1) (始端部Aおよび/または終端部Bはなくてもよい。)
のようにn個のブロックの連結部分を含む配列で表され
る場合に、本発明のシャフリングは式 (2):
【化2】A−a1'−a2'−……−ax −B (2) (式中、a1',a2',……,ax は、a1 ,a2 ,…
…,an からなる群よりそれぞれ独立に選ばれるブロッ
クである。但し、a1',a2',……,ax のブロックの
総数はa1 ,a2 ,……,an のブロックの総数に一致
しなくてもよい。)で表される核酸の混合物を与える。
【0016】シャフリングが実効をもたらすためには、
1個または2個以上の遺伝子を3個以上に分割する必要
がある。2個のブロックへの分割では、並べ換え体は1
つしか生じないため多様な核酸が得られず、核酸プール
としての有効性が乏しいからである。5個以上のブロッ
クへの分割が好ましい。シャフリングの単位となるブロ
ック(上記式 (1)におけるa1 ,a2 ,……,an 等)
は、2個以上のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチ
ドまたはポリヌクレオチド(以下、単に「オリゴヌクレ
オチド」という。)である。ブロック長が短すぎると操
作が繁雑になるため、通常は、21個以上のヌクレオチ
ド単位を含有することが好ましく、45個以上のヌクレ
オチド単位を含有することがより好ましい。ブロック長
の上限は1遺伝子の長さより短ければ特に限定されない
が、ブロック長が長すぎると変異のない塩基配列部分が
多く含まれることになるため、通常は遺伝子の長さの5
〜30%以下が好ましい。
【0017】ブロックへの分割は遺伝子上の任意の部位
で行なうことができる。すなわち、エクソンごとあるい
はコードするタンパク質のドメインまたはモジュールに
対応するセグメントごとへの分割を排除するものではな
いが、このような部位でのシャフリングは過去において
自然界で試験された可能性がある。従来、自然界で試験
されていない塩基配列を得るためには、エクソン内部、
あるいはコードするタンパク質のドメインまたはモジュ
ール内に相当する部位での分割が好ましい。
【0018】また、シャフリング、特にその連結に際
し、もとの遺伝子に含まれないオリゴヌクレチドブロッ
クの導入、あるいはヌクレオチドの挿入や欠失も許容さ
れる。もっとも、シャフリングされる遺伝子がタンパク
質をコードする遺伝子である場合、遺伝子ブロックであ
るオリゴヌクレオチドは、分割前後で読み枠が合うこと
が望ましい。つまり、シャフルされる遺伝子ブロック
は、シャフリング後、相対的にどの位置に来てもそのブ
ロック部分が翻訳されて生ずるアミノ酸配列は同じであ
るように設計することが望ましい。このような手法を採
ることにより、全体としては天然のタンパク質とは構造
が異なるが、部分的には自然界において有用であること
が確認されているアミノ酸配列を含むタンパク質を得る
ことができ、完全にランダムに合成するよりも有用なタ
ンパク質を得る確率が高くなる。
【0019】シャフリングにおける再配列は、上述の通
り、a1 ,a2 ,……,an の各ブロックを重複および
省略を許して任意個連結する操作であるが、連結により
得られる核酸プールは、少なくとも分割により生成した
ブロックの数と同一程度の個数のブロックから構成され
る核酸をすべて含むことが好ましい。例えば、5個のブ
ロック、a1 ,a2 ,a3 ,a4 およびa5 に分割した
場合には、5個のブロックからなる組み合わせを実質的
にすべて含むことが好ましい。すなわち、a1 −a3
2 −a4 −a5 (a2 とa3 が互換されている。)、
1 −a4 −a2 −a3 −a5 (a2 とa3 とa4 が並
べ換えられている。)のような単純な並べ換え体のすべ
て、より好ましくは、このような並べ換え体に加え、a
1 −a3 −a2 −a1 −a5 のような重複を有する再配
列体を含有することが好ましい。ブロック数nに対し、
前者はn!個、後者はnn 個存在する。5!(5×4×
3×2×1)でも120通り、55 ではその総数は3125
通りに及ぶ。このように、本発明にしたがって遺伝子を
シャフリングにすることにより生成した核酸プールは、
もとの遺伝子と異なる塩基配列の核酸分子を極めて多数
含有し得る。
【0020】シャフリングの対象とする遺伝子の種類は
特に限定されない。ポリヌクレオチド鎖から構成され、
タンパク質またはRNAを発現するのに必要なコード領
域であればよい。ヌクレオチド単位はデオキシリボヌク
レオチドまたはリボヌクレオチドのいずれの分子を含む
ものでもよい。有用な塩基配列を見出すという目的から
は、タンパク質、特に酵素をコードする遺伝子または酵
素機能の制御遺伝子が好ましい。このような酵素の例と
しては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラ
ーゼ、カタラーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、デヒ
ドロゲナーゼ、オキシゲナーゼ、レダクターゼ等が挙げ
られる。
【0021】遺伝子は生命体からクローニングしたも
の、人工合成したもの、また、生命体からクローニング
し、それに人工的に変異を加えたもの等、それを適当な
宿主に導入すれば当該遺伝子の発現により遺伝子産物を
生産するものであれば種類を問わない。生命体由来とす
る場合には、酵素産生能力の明確な原核生物を用いるこ
とができる。このような原核生物の例としては、バチル
ス属細菌が挙げられ、かかる細菌に由来の遺伝子の例と
しては、バチルスNKS−21(受託番号:FERM
BP−93−1)に由来するプロテアーゼAPI 21遺伝子
(特開平 5ー91876号公報)(配列番号1)が挙げられ
る。
【0022】[核酸プールの製造方法]本発明はまた、
1個または2個以上の遺伝子の全体または一部を3個以
上のブロックに分割し、これらのブロックの全部または
一部を分割前とは異なる配列で連結して構成される、分
割前の塩基配列とは異なる塩基配列を有する核酸を2種
類以上含有することを特徴とする核酸プールの製造方法
を提供する。ブロックへの分割は、核酸プールに対し必
要とされる上述の条件を満たすものであれば任意の方法
により行なうことができる。例えば、遺伝子の分割は制
限酵素を用いて行なうことができる。任意の制限酵素が
使用できるが、例えば、EcoRI、Hind III、B
amHI、PstI、KpnI、XbaI、SmaI、
SacI、ClaI、AluI、HaeIII 、RsaI
等を用いることができる。塩基配列が既知の遺伝子につ
いてシャフリングを行なう場合は、上述の条件にしたが
って各ブロックを合成により得てもよい。再配列はこれ
らのブロックの混合により、連結はリガーゼを用いて行
なうことができる。
【0023】以下、1本鎖核酸プール、2本鎖核酸プー
ルのそれぞれについて好適な製造方法を詳述する。 (1)1本鎖核酸プールの製造方法 本発明による核酸プールの好ましい製造方法は、ブロッ
クの3’末端をリボヌクレオチドとし、RNAリガーゼ
を用いて各ブロックを連結する方法である。この方法
は、以下のa)〜c)の工程を有する。 a)1個または2個以上の遺伝子の全体または一部に対
応する塩基配列を有する1本鎖オリゴヌクレオチドから
なる3個以上のブロックを、遺伝子の分割または該塩基
配列を有するオリゴヌクレオチド鎖の合成により調製す
る工程; b)工程a)で得られた各オリゴヌクレオチド鎖ブロッ
クについて、3’末端がリボヌクレオチドを有しないブ
ロックの3’末端にはリボヌクレオチドを、5’末端が
リン酸基を有しないブロックの5’末端にはリン酸基を
付加する工程; c)工程b)で得られたオリゴヌクレオチド鎖ブロック
を、1のブロックの3’末端のリボヌクレオチドと他の
ブロックの5’末端のリン酸基とを反応させることによ
り、任意の配列で連結する工程。
【0024】図1に、1個の遺伝子のシャフリングにつ
いて上記の各工程を模式的に示す。この例では4つのブ
ロック(a1 ,a2 ,a3 ,a4 )への分割例を示して
いる。なお、説明の便宜上、遺伝子および核酸のいずれ
についても、図中では塩基配列のみで表わしている。、
A、G、C、T等はそれぞれの塩基を含むヌクレオチド
単位である。rGはGMPを、(P)および(OH)は
ヌクレオチド鎖の末端に現われているリン酸基および水
酸基をそれぞれ表わす。
【0025】工程a 工程a)における分割は制限酵素を用いて行なうことが
できる。分割後、熱またはアルカリ等により変性して1
本鎖のオリゴヌクレオチドとする。遺伝子配列が既知の
場合は、慣用の装置および手法を用いて1本鎖のオリゴ
ヌクレオチドブロックを合成する。
【0026】工程b 工程a)で得られたブロックの3’末端がデオキシリボ
ヌクレオチドである場合には、その3’末端にリボヌク
レオチドを付加する(工程b)。これは、ヌクレオシド
三リン酸(ATP、GTP、CTP、UTP)の存在下
に、前記各ブロックにターミナルデオキシヌクレオチジ
ルトランスフェラーゼを作用させることにより行なうこ
とができる。付加されるリボヌクレオチド(AMP、G
MP、CMP、UMP)は、用いるヌクレオシド三リン
酸に対応する塩基(A、G、C、U)を含む。よって、
ヌクレオシド三リン酸を選択することにより3’末端を
所望のリボヌクレオチドとすることができる。図1で
は、ブロック混合物にGMP(図中、下線を付したrG
で表わす。)を付加する例を示してあるが、各ブロック
を個別に合成するなど、それぞれのブロックが個別に得
られる場合は、それぞれについて異なるリボヌクレオチ
ドを付加することができる。ヌクレオシド三リン酸は各
ブロックに対しモル比で2〜10倍程度を用いる。反応
温度は30〜40℃程度であり反応時間は30分〜2時
間程度である。
【0027】工程b)ではまた、ブロックの5’末端に
リン酸基を付加する。これはATPの存在下にポリヌク
レオチドキナーゼを作用させて行なうことができる。A
TPは各ブロックに対しモル比で2〜10倍程度を用い
る。反応温度は30〜40℃程度であり、反応時間は1
0分〜1時間程度である。pH7〜9程度が最適であ
る。
【0028】工程c 工程c)におけるオリゴヌクレオチド鎖ブロックの連結
は、このようにして得られたブロックの混合物に、AT
Pと2価金属イオンの存在下にRNAリガーゼを作用さ
せて行なうことができる(特開平5-292967号公報)。有
用な2価の金属イオンはマグネシウムイオン、マンガン
イオン等で好ましくはマグネシウムイオンである。リガ
ーゼとしてはRNAリガーゼを用いることができる。R
NAリガーゼは5’リン酸基末端のポリヌクレオチドと
3’水酸基末端のポリヌクレオチドを連結させる酵素で
ある。RNAリガーゼの基質は本来はRNAであるが、
5’リン酸基末端のポリデオキシリボヌクレオチドと
3’端のみがリボヌクレオチドであるポリデオキシリボ
ヌクレオチドも効率的に連結する。好ましくはT4RN
Aリガーゼを用いる。反応は、通常、緩衝液中、pH7
〜9、10〜40℃の温度で30〜180分間かけて行
なわれる。例えば、50mM Tris−HCl(pH
8.0)、10mM MgCl2 、0.1 mM ATP、1
0mg/l BSA、1mM ヘキサアンミンコバルト
クロライド(HCC)、25%ポリエチレングリコール
6000溶液中、25℃で60分以上反応させる。
【0029】読み枠の調整 工程a)で調製されるブロックがコドン単位の整数倍で
ない場合、あるいは工程b)でヌクレオチドの挿入や欠
失が生じる場合は、シャフリング後の位置により各ブロ
ックのコードするアミノ酸配列は異なるものとなる。し
かし、上述のように、シャフリングが個々のブロックの
コードするアミノ酸配列を変化させない方が望ましい場
合もある。この目的のためには図2に模式的に示す変法
が有効である。
【0030】この方法では、最初の工程(工程a′)に
おいて、遺伝子上の読み枠の開始点から数えて(3p+
1)番目から(3q+2)番目(p,qはブロックごと
に独立して決められる整数。但し、p≦qである。)ま
での塩基配列を有するブロックを調製し、工程b)で、
同じく(3q+3)番目の塩基に対応するリボヌクレオ
チドまたは当該位置においてコードするアミノ酸を変え
ない塩基に対応するリボヌクレオチドを該ブロックの
3’末端に付加する。図2の例では、はじめに、工程
a′で、シャフリングする遺伝子からブロックa1 (p
=0,q=2)、a2 (p=3,q=5)、a3 (p=
6,q=9)およびa4 が合成されている(分割して単
離してもよい。)。a4 には次項に述べる理由で3’末
端へのリボヌクレオチド付加をしていない。
【0031】次に、工程b′で、a1 とa2 にはGMP
(図中、下線を付したrGで表わす。)を、a3 にはA
MP(下線を付したrAで表わす。)を付加する。リボ
ヌクレオチドの付加は、前記の工程b)と同様であり、
ヌクレオシド三リン酸とターミナルデオキシヌクレオチ
ジルトランスフェラーゼ(TDT)による。あるいは、
合成時に末端のみリボヌクレオチドとする方法を採って
もよい。この結果、これらのブロックによりコードされ
るアミノ酸配列は、遺伝子上でのそれと同一のものとな
る。しかる後、前記工程b′)と同様にポリヌクレオチ
ドキナーゼ(PNK)を用いてリン酸化を行ない(工程
bの後半)、その後、工程c)と同様に再配列・連結す
る(工程c′)。
【0032】末端配列の特定化 図2に示すように、一部のブロック(この例ではa4
については3’端のリボヌクレオチド処理を行なわない
ことも可能である。このようにした上でRNAリガーゼ
を作用させると、当該ブロックの3’端には他のブロッ
クが連結されないため、核酸プール中の核酸の3’末端
は実質的にすべてこのブロックにより占められることに
なる。同様に、特定のブロックについてリン酸化を行な
わないことにより、核酸プール中の核酸の5’末端を実
質的にすべて特定のブロックで占めることができる。
【0033】かかる方法を採ることにより、特定のブロ
ックを所定の末端位置に配置し、なおかつ、中間部にお
いてはランダムな再配列がなされた核酸からなる核酸プ
ールを調製することが容易に可能となる。このような方
法は、特定のアミノ酸配置を末端に有するタンパク質変
異体の製造や特定の制御機能の発現を図る上で特に有利
である。
【0034】(2)2本鎖核酸プールの製造方法 前節の方法により得られた分子は一本鎖であるが、以後
の遺伝子操作を行なうに当たり2本鎖にすることが可能
である。このためにはまず、ブロック混合物中に、5’
リン酸基を持ち、3’リボヌクレオチド基を有しないオ
リゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチドAとする。図2
のa4 がこれにあたる。)を存在させる。この結果、前
節の最後で述べたように、核酸プールを構成する核酸分
子は実質的に全てが3’末端部分がオリゴヌクレオチド
Aの配列となる。次いで、オリゴヌクレオチドAと相補
的な配列を含むデカマー(10マー)以上好ましくはヘ
プタデカマー(17マー)以上のオリゴヌクレオチドを
プライマーとし、常法に従いDNA伸長反応を行う。用
いる酵素はTaqポリメラーゼ、クレノー断片(Klenow
Fragment)、DNAポリメラーゼI等DNA伸長反応を
触媒する酵素ならば種類を問わない。
【0035】この目的のためにPCR(ポリメラーゼ連
鎖反応)を利用しても良い。PCRを利用する場合に
は、プール作成時に、前記のオリゴヌクレオチドAに加
えて、5’リン酸基を持たず、3’リボヌクレオチド基
を有するオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチドBと
する。)をブロック混合物中に存在させる。こうするこ
とにより、プールを構成する実質的に全ての分子の3’
端はオリゴヌクレオチドAとなり、5’端はオリゴヌク
レオチドBとなる。しかる後、ポリヌクレオチドAと相
補的な配列を含む10マ−以上、好ましくは17マー以
上のポリヌクレオチドとポリヌクレオチドBと同じ配列
を含む10マー以上好ましくは17マー以上のポリヌク
レオチドをプライマーとしてPCRを行えば、二本鎖化
と同時に遺伝子の増幅もでき、後の操作に便利である。
なお、オリゴヌクレオチドAおよび/またはBは、もと
の遺伝子上のブロックを利用してもよいし、必要なら
ば、当該遺伝子にはないブロックを用いてもよい。
【0036】[核酸プール中の遺伝情報の発現]このよ
うにして二本鎖化した核酸を、平滑化後、DNAリガー
ゼを用い、任意のベクター、好ましくはpKK223−
3の如き発現ベクターに連結する。また、両端に位置す
るポリヌクレオチドA、Bに適当な制限酵素認識部位を
作ることにより、その制限酵素を利用してベクターに連
結することも可能である。次に、上記の如く作成したベ
クターライブラリーを適当な宿主に導入し、その遺伝情
報を発現させることによって、好ましい性質を持つ遺伝
子産物、およびそれをコードする遺伝子を取得すること
が出来る。宿主は慣用のものでよい。好ましい例として
は、大腸菌E.coli、バチルス属細菌、酵母、乳酸菌等が
挙げられる。
【0037】但し、試験管内転写系、翻訳系を使用する
ことも可能であり、その場合は、ベクターに連結しなく
ても遺伝情報の発現が可能である。なお、「遺伝情報」
とはDNAまたはRNAによって担われ、それ単独で、
または他の配列からなるDNAまたはRNAと連結する
ことによって、適当な生体内でタンパク質に翻訳され
る、あるいはRNAに転写されるものを言う。本発明の
方法により発現が期待される遺伝情報は特に限定されな
いが、各種の遺伝子産物、例えば、酵素、抗体、ホルモ
ン、レセプタータンパク質、リボザイム等あるいは、各
種の制御機能、例えば、オペレーター、プロモーター、
アテニュエーター等がその例として挙げられる。
【0038】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、これらは本発明を限定するものではない。実施例1:1本鎖核酸プールの製造 配列番号1に示すプロテアーゼ API21(バチルスNKS
ー21(受託番号:FERM BP−93−1)からク
ローニングされた野生型アルカリプロテアーゼ(特開平
5-91876 号公報))に基づく核酸プールを以下の手順によ
り製造した。 (1) 工程a:オリゴヌクレオチドブロックの調製 パーキンエルマー社のDNA自動合成機モデル392を
用い、5種のオリゴヌクレオチド: オリゴA (配列番号2。配列表1の436〜455
番目の塩基配列に相当する。)、 オリゴ1 (配列番号3。配列表1の457〜503
番目)、 オリゴ2 (配列番号4。配列表1の505〜551
番目)、 オリゴ3 (配列番号5。配列表1の553〜596
番目)、および オリゴB (配列番号6。配列表1の598〜618
番目)を合成した。オリゴA、オリゴ1〜3およびオリ
ゴBは、プロテアーゼAPI21遺伝子の一部である。
その位置関係は上に示す通りである。各オリゴヌクレオ
チドの合成は、DMトリチルオンで行ない(すなわち、
ジメトキシトリチル基で5’水酸基を保護し)、OPC
カラムで精製した。試薬はパーキンエルマー社から購入
したものを用いた。
【0039】(2) 工程b:オリゴヌクレオチドブロック
の処理 (2-1) リボヌクレオチドの付加 下記の組成: 50mM トリスーHCl緩衝液(pH 8.0) 10mM MgCl2 5mM DTT(ジチオスレイトール) 25% PEG6000 1mM HCC(ヘキサアンミンコバルトクロライド) 10μg/ml BSA(牛血清アルブミン) を有する標準溶液に、オリゴAを500pmol、UT
Pを1nmol及びターミナルデオキシヌクレオチジル
トランスフェラーゼを10ユニット添加し全量を10μ
lとした。これを37℃で1時間放置した。同様の操作
をオリゴ1、オリゴ2についても行った。また、オリゴ
3については、UTPの代わりにATPを用いて同じ操
作を行った。この操作により3’末端にリボヌクレオチ
ドを付加したオリゴヌクレオチドブロックをそれぞれオ
リゴAr、オリゴ1r、オリゴ2r、オリゴ3rと呼
ぶ。
【0040】(2-2) リン酸化 オリゴ1rを500pmol、ATPを1nmol及
び、10ユニットのポリヌクレオチドキナーゼを前記と
同じ組成の標準溶液に溶解して全量を10μlにした。
この溶液を37℃で1時間放置した。同様の操作をオリ
ゴ2r、オリゴ3r、オリゴBについても行なった。こ
の操作で生成したポリヌクレオチドを、それぞれオリゴ
1pr、オリゴ2pr、オリゴ3pr、オリゴBpと呼
ぶ。
【0041】(3) 工程c:オリゴヌクレオチドブロック
の連結 前記で得られた、オリゴAr、オリゴ1pr、オリゴ2
pr、オリゴ3prおよびオリゴBpを各500pmol、
ATPを1nmol及び、T4RNAリガーゼ50ユニット
を前記標準溶液に添加し全量を10μlとして、25℃
で4時間反応させた。続いて反応産物のポリアクリルア
ミド電気泳動を行ない、鎖長が180塩基近傍をゲルか
ら回収した。これによってオリゴArとオリゴBpの間
でオリゴ1pr、オリゴ2pr、オリゴ3prがランダ
ムな順番に連結した一本鎖核酸プールが得られた。
【0042】実施例2:2本鎖核酸プールの製造 オリゴBの相補鎖であるオリゴB′(配列番号7にその
配列を示す。)を実施例1と同様にして合成した。実施
例1で得られた一本鎖核酸プールを構成するDNAをま
とめて、すなわち、個別のDNAに分離することなくオ
リゴB′10pmolと混合し、MgCl2 およびDTT
(ジチオスレイトール)を含むトリス−HCl緩衝液に
添加し全量20μlとなるように調整した。調整後の最
終濃度は以下の通り:10mMトリス−HCl緩衝液
(pH7.5)、7mM MgCl2 、0.1 mM DTT。
75℃5分加熱後、30℃まで徐冷した。続いて、クレ
ノー断片(Klenow Fragment) 1ユニットを加え、37℃
で2時間維持し、二本鎖化を行なった。これによってオ
リゴArとオリゴBpの間でオリゴ1pr、オリゴ2p
r、オリゴ3prがランダムな順番に連結した二本鎖核
酸プールが得られた。
【0043】実施例3:核酸プールによる大腸菌の形質
転換 プラスミド pHSG396のClaI切断部位にバチ
ルスNKSー21からクローニングされた野生型アルカ
リプロテアーゼの遺伝子が挿入されているプラスミドp
SDT812(特開平1-141596号公報)を制限酵素Cl
aIで消化し、市販の平滑化試薬(宝酒造株式会社製Bl
unting Kit)を用いて末端を平滑化した。これを、制限
酵素EcoRI、Hind IIIで消化し上記と同様に末
端を平滑化し、アルカリフォスファターゼ処理をしたヤ
クルト本社製のプラスミドpHY300PLKと混合
し、市販のライゲーションキット(宝酒造株式会社製)
を用いて連結した。このDNAを用い、大腸菌JM10
5を形質転換し、テトラサイクリン耐性の形質転換体を
選択した。これらの形質転換体から常法によりプラスミ
ドDNAを抽出、精製、分析を行い、pHY300PL
Kと野生型アルカリプロテアーゼが連結したプラスミド
pHY812(図3)を得た。次に上記で作成したpH
Y812を制限酵素Hind III及びSphIで消化
し、続いて、BAP処理した(a)。また、実施例3で
作成した二本鎖核酸プールを構成するDNAをまとめて
制限酵素Hind III及びSphIで消化した(b)。
aとbを上記と同様にライゲーションキットを用いて連
結し、これを用いて、大腸菌JM105を形質転換し
た。形質転換体はアンピシリンを含むLプレートで選別
した。
【0044】実施例4 実施例3で選別したコロニーからプラスミドDNAを調
製し、Hind III、SphIでの消化によって160
塩基対程度の断片を生ずるか否かを確認した。目的の長
さの断片を生ずる95クローンの塩基配列を解析し、オ
リゴ1、2、3に相当する遺伝子部分のシャフリングを
確認した。表1に各シャフルの種類とそれぞれのクロー
ン数を記した。
【0045】
【表1】 シャフルの種類 数 シャフルの種類 数 111 3 223 3 112 4 231 6 113 2 232 2 121 5 233 3 122 3 311 3 123 6 312 5 131 2 313 3 132 7 321 7 133 3 322 3 211 2 323 4 212 3 331 2 213 5 332 5 221 2 333 1 222 1
【0046】このように、本発明の方法によって遺伝子
中の3つのブロックをシャフリングした場合、これらの
ブロックを重複を許して3個選択してなる全ての組合せ
のクローンが得られることが確認された。
【0047】実施例5 実施例4で調製したプラスミドDNAを混合しこれを用
いて、枯草菌(Bacill us subtilis )UOTO999 を形質転
換した。テトラサイクリン耐性で形質転換体を選択し
た。形質転換体300種をスキムミルク含有プレートに
レプリカしたところ、15形質転換体のコロニーの周り
にクリアゾーンを確認できた。これによって、シャフリ
ングされた遺伝子によってコードされた酵素を活性によ
って選別出来ることが分かる。これらクリアゾーンを形
成する15形質転換体からプラスミドDNAを調製し、
塩基配列を解析した結果、これらは野生型と同じブロッ
ク順になっていることがわかった。
【0048】実施例6 実施例5で得られた10形質転換体(うち1つはクリア
ゾーン形成、9つは非形成)及び、プラスミドを持たな
い枯草菌(Bacillus subtilis )UOTO999 からそれぞれ
全RNAを調製した。また以後のハイブリダイゼーショ
ンでプラスミドの影響を除くためにリボヌクレアーゼフ
リーのデオキシリボヌクレアーゼ処理をした。続いて、
プローブにオリゴB′を用い、常法に従ってノザーンハ
イブリダイゼーションを行った。その結果、形質転換体
のRNAに対応するレーンには、すべてバンドが検出で
きたが、宿主のRNAに対応するレーンにはバンドが検
出できなかった。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、天然の塩基配列空間と
は大きく離れた多様な塩基配列を含む核酸プールを簡単
な手順で得ることができるため、従来の方法では得られ
ない、また、過去、生物により試験されたことのない優
れた遺伝子産物、例えば、タンパク質や酵素を得ること
が可能である。また、本発明の核酸プール製造方法で
は、必要に応じ、中間部ではランダムなシャフリングを
実行しながら末端配置は所望の配列に固定した核酸の混
合物を得ることが可能であり、また、各ブロックにより
コードされるアミノ酸配列は変更せずにそのシャフリン
グを行なうことが可能であるため、完全にランダムな核
酸プール製造方法と比較して、有用な遺伝子産物を生成
する確率が高い。
【0050】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:1122 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 起源:バチルスNKS-21(受託番号:FERM BP−9
3−1) 配列の特徴 特徴を表わす記号:sig peptide 存在位置:1..93 特徴を決定した方法:S 特徴を表す記号:mat peptide 存在位置:104..1112 特徴を決定した方法:S 配列 ATG AAT CTT CAA AAA ATA GCC TCA GCG TTG AAG GTT AAG CAA TCG GCA 48 Met Asn Leu Gln Lys Ile Ala Ser Ala Leu Lys Val Lys Gln Ser Ala -100 -95 -90 TTG GTC AGC AGT TTA ACT ATT TTG TTT CTA ATC ATG CTA GTA GGT ACG 96 Leu Val Ser Ser Leu Thr Ile Leu Phe Leu Ile Met Leu Val Gly Thr -85 -80 -75 ACT AGT GCA AAT GGT GCG AAG CAA GAG TAC TTA ATT GGT TTC AAC TCA 144 Thr Ser Ala Asn Gly Ala Lys Gln Glu Tyr Leu Ile Gly Phe Asn Ser -70 -65 -60 -55 GAC AAG GCA AAA GGA CTT ATC CAA AAT GCA GGT GGA GAA ATT CAT CAT 192 Asp Lys Ala Lys Gly Leu Ile Gln Asn Ala Gly Gly Glu Ile His His -50 -45 -40 GAA TAT ACA GAG TTT CCA GTT ATC TAT GCA GAG CTT CCA GAA GCA GCG 240 Glu Tyr Thr Glu Phe Pro Val Ile Tyr Ala Glu Leu Pro Glu Ala Ala -35 -30 -25 GTA AGT GGA TTG AAA AAT AAT CCT CAT ATT GAT TTT ATT GAG GAA AAC 288 Val Ser Gly Leu Lys Asn Asn Pro His Ile Asp Phe Ile Glu Glu Asn -20 -15 -10 GAA GAA GTT GAA ATT GCA CAG ACT GTT CCT TGG GGA ATC CCT TAT ATT 336 Glu Glu Val Glu Ile Ala Gln Thr Val Pro Trp Gly Ile Pro Tyr Ile -5 1 5 10 TAC TCG GAT GTT GTT CAT CGT CAA GGT TAC TTT GGG AAC GGA GTA AAA 384 Tyr Ser Asp Val Val His Arg Gln Gly Tyr Phe Gly Asn Gly Val Lys 15 20 25 GTA GCA GTA CTT GAT ACA GGA GTG GCT CCT CAT CCT GAT TTA CAT ATT 432 Val Ala Val Leu Asp Thr Gly Val Ala Pro His Pro Asp Leu His Ile 30 35 40 AGA GGA GGA GTA AGC TTT ATC TCT ACA GAA AAC ACT TAT GTG GAT TAT 480 Arg Gly Gly Val Ser Phe Ile Ser Thr Glu Asn Thr Tyr Val Asp Tyr 45 50 55 AAT GGT CAC GGT ACT CAC GTA GCT GGT ACT GTA GCT GCC CTA AAC AAT 528 Asn Gly His Gly Thr His Val Ala Gly Thr Val Ala Ala Leu Asn Asn 60 65 70 TCA TAT GGC GTA TTG GGA GTG GCT CCT GGA GCT GAA CTA TAT GCT GTT 576 Ser Tyr Gly Val Leu Gly Val Ala Pro Gly Ala Glu Leu Tyr Ala Val 75 80 85 90 AAA GTT CTT GAT CGT AAC GGA AGC GGT TCG CAT GCA TCC ATT GCT CAA 624 Lys Val Leu Asp Arg Asn Gly Ser Gly Ser His Ala Ser Ile Ala Gln 95 100 105 GGA ATT GAA TGG GCG ATG AAT AAT GGG ATG GAT ATT GCC AAC ATG AGT 672 Gly Ile Glu Trp Ala Met Asn Asn Gly Met Asp Ile Ala Asn Met Ser 110 115 120 TTA GGA AGT CCT TCT GGG TCT ACA ACC CTG CAA TTA GCA GCA GAC CGC 720 Leu Gly Ser Pro Ser Gly Ser Thr Thr Leu Gln Leu Ala Ala Asp Arg 125 130 135 GCT AGG AAT GCA GGT GTC TTA TTA ATT GGG GCG GCT GGA AAC TCA GGA 768 Ala Arg Asn Ala Gly Val Leu Leu Ile Gly Ala Ala Gly Asn Ser Gly 140 145 150 CAA CAA GGC GGC TCG AAT AAC ATG GGC TAC CCA GCG CGC TAT GCA TCT 816 Gln Gln Gly Gly Ser Asn Asn Met Gly Tyr Pro Ala Arg Tyr Ala Ser 155 160 165 170 GTC ATG GCT GTT GGA GCG GTG GAC CAA AAT GGA AAT AGA GCG AAC TTT 864 Val Met Ala Val Gly Ala Val Asp Gln Asn Gly Asn Arg Ala Asn Phe 175 180 185 TCA AGC TAT GGA TCA GAA CTT GAG ATT ATG GCG CCT GGT GTC AAT ATT 912 Ser Ser Tyr Gly Ser Glu Leu Glu Ile Met Ala Pro Gly Val Asn Ile 190 195 200 AAC AGT ACG TAT TTA AAT AAC GGA TAT CGC AGT TTA AAT GGT ACG TCA 960 Asn Ser Thr Tyr Leu Asn Asn Gly Tyr Arg Ser Leu Asn Gly Thr Ser 205 210 215 ATG GCA TCT CCA CAT GTT GCT GGG GTA GCT GCA TTA GTT AAA CAA AAA 1008 Met Ala Ser Pro His Val Ala Gly Val Ala Ala Leu Val Lys Gln Lys 220 225 230 CAC CCT CAC TTA ACG GCG GCA CAA ATT CGT AAT CGT ATG AAT CAA ACA 1056 His Pro His Leu Thr Ala Ala Gln Ile Arg Asn Arg Met Asn Gln Thr 235 240 245 250 GCA ATT CCG CTT GGT AAC AGC ACG TAT TAT GGA AAT GGC TTA GTG GAT 1104 Ala Ile Pro Leu Gly Asn Ser Thr Tyr Tyr Gly Asn Gly Leu Val Asp 255 260 265 GCT GAG TAT GCG GCT CAA 1122 Ala Glu Tyr Ala Ala Gln 270 272
【0051】配列番号:2 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GGAGGAGTAA GCTTTATCTC
【0052】配列番号:3 配列の長さ:47 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 ACAGAAAACA CTTATGTGGA TTATAATGGT CACGGTACTC ACGTAGC
【0053】配列番号:4 配列の長さ:47 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GGTACTGTA GCTGCCCTAA ACAATTCATA TGGCGTATTG GGAGTGGC
【0054】配列番号:5 配列の長さ:44 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CCTGGAGCTG AACTATATGC TGTTAAAGTT CTTGATCGTA ACGG
【0055】配列番号:6 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 AGCGGTTCGC ATGCATCCAT T
【0056】配列番号:7 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列の長さ: 配列 AATGGATGCA TGCGAACCGCT
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の核酸プール製造方法の一態様を説明
する模式図。
【図2】 本発明の核酸プール製造方法の他の態様を説
明する模式図。
【図3】 バチルスNKS−21に由来するアルカリプ
ロテアーゼ遺伝子とプラスミドpHY300PLKが連
結してなるプラスミドpHY812の制限酵素切断点地
図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 1/21 C12N 1/21 C12P 21/02 C12P 21/02 C (C12N 15/09 ZNA C12R 1:07) (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19)

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1個または2個以上の遺伝子の全体また
    は一部を3個以上のブロックに分割し、これらのブロッ
    クの全部または一部を分割前とは異なる配列で連結して
    構成される、2種類以上の核酸を含有する核酸プール。
  2. 【請求項2】 10種類以上の核酸を含有する請求項1
    に記載の核酸プール。
  3. 【請求項3】 前記ブロックをn個(nは分割により生
    成する相異なるブロックの個数)再配列することにより
    構成される塩基配列の核酸をすべて含有する請求項1ま
    たは2に記載の核酸プール。
  4. 【請求項4】 遺伝子がタンパク質をコードする遺伝子
    であり、各ブロックによりコードされるアミノ酸配列が
    もとの遺伝子上で相当部分によりコードされるアミノ酸
    配列と一致する請求項1乃至3のいずれかに記載の核酸
    プール。
  5. 【請求項5】 遺伝子が酵素機能をコードする遺伝子ま
    たはその制御遺伝子である請求項1乃至4のいずれかに
    記載の核酸プール。
  6. 【請求項6】 遺伝子がプロテアーゼ、リパーゼ、セル
    ラーゼ、アミラーゼ、カタラーゼ、キシラナーゼ、オキ
    シダーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシゲナーゼ、レダク
    ターゼのうちいずれかをコードする遺伝子である請求項
    5に記載の核酸プール。
  7. 【請求項7】 遺伝子が原核生物由来である請求項1乃
    至6のいずれかに記載の核酸プール。
  8. 【請求項8】 遺伝子がバチルス属細菌由来である請求
    項7に記載の核酸プール。
  9. 【請求項9】 遺伝子がプロテアーゼAPI21遺伝子
    である請求項8に記載の核酸プール。
  10. 【請求項10】 各ブロックがオリゴヌクレオチドであ
    る請求項1乃至9のいずれかに記載の核酸プール。
  11. 【請求項11】 核酸が1本鎖ポリヌクレオチドである
    請求項10に記載の核酸プール。
  12. 【請求項12】 核酸が2本鎖ポリヌクレオチドである
    請求項10に記載の核酸プール。
  13. 【請求項13】 1個または2個以上の遺伝子の全体ま
    たは一部を3個以上のオリゴヌクレオチド・ブロックに
    分割するか、該ブロックに相当するオリゴヌクレオチド
    を合成し、これらのブロックの全部または一部を遺伝子
    上での配列とは異なる配列で連結して構成することによ
    る、2種類以上の核酸を含有する核酸プールの製造方
    法。
  14. 【請求項14】 下記a)〜c)の工程を有する請求項
    13に記載の核酸プールの製造方法: a)1個または2個以上の遺伝子の全体または一部に対
    応する塩基配列を有する1本鎖オリゴヌクレオチドから
    なる3個以上のブロックを、遺伝子の分割または該塩基
    配列を有するオリゴヌクレオチド鎖の合成により調製す
    る工程; b)工程a)で得られた各オリゴヌクレオチド鎖ブロッ
    クについて、3’末端がデオキシリボヌクレオチドであ
    るブロックの3’末端にはリボヌクレオチドを、5’末
    端が水酸基であるブロックの5’末端にはリン酸基を付
    加する工程; c)工程b)で得られたオリゴヌクレオチド鎖ブロック
    を、1のブロックの3’末端のリボヌクレオチドと他の
    ブロックの5’末端のリン酸基とを反応させることによ
    り、任意の配列で連結する工程。
  15. 【請求項15】 工程a)で調製されるブロックの数が
    3個以上である請求項14に記載の核酸プールの製造方
    法。
  16. 【請求項16】 工程b)で、少なくとも1個のブロッ
    クについては5’末端を水酸基のまま残すことにより、
    該ブロックを5’末端に有する核酸を選択的に得る請求
    項14または15に記載の核酸プールの製造方法。
  17. 【請求項17】 工程b)で、少なくとも1個のブロッ
    クについては3’末端をデオキシリボヌクレオチドのま
    ま残すことにより、該ブロックを3’末端に有する核酸
    を選択的に得る請求項14乃至16のいずれかに記載の
    核酸プールの製造方法。
  18. 【請求項18】 各ブロックによりコードされるアミノ
    酸配列がもとの遺伝子上で相当部分によりコードされる
    アミノ酸配列と一致するようにブロックの調製が行なわ
    れる請求項14乃至17のいずれかに記載の核酸プール
    の製造方法。
  19. 【請求項19】 工程a)で、遺伝子上の読み枠の開始
    点から数えて(3p+1)番目から(3q+2)番目
    (p,qはブロックごとに独立して決められる整数。但
    し、p≦qである。)までの塩基配列を有するブロック
    を調製し、工程b)で、同じく(3q+3)番目の塩基
    または当該位置においてコードするアミノ酸を変えない
    塩基に対応するリボヌクレオチドを該ブロックの3’末
    端に付加する、請求項18に記載の核酸プールの製造方
    法。
  20. 【請求項20】 工程c)の連結が、アデノシン三リン
    酸及び2価の金属イオンの存在下、RNAリガーゼを用
    いて行なわれる請求項14乃至19のいずれかに記載の
    核酸プールの製造方法。
  21. 【請求項21】 請求項14乃至20により得られる1
    本鎖核酸をポリメラーゼ反応により2本鎖化してなる2
    本鎖核酸プールの製造方法。
  22. 【請求項22】 請求項1乃至12記載の核酸プールに
    存在する遺伝情報を発現させることによって得られる遺
    伝子産物。
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