JPH1056291A - 電磁波シールド材、およびこれを用いた無線式通話装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 音の伝播や冷却風の排出等のような機能を有
する開口に単に設置することとしても、開口の所要の機
能を損なわず、同時に電磁波に対する高いシールド性能
を発揮することのできる電磁波シールド材を提供する。 【解決手段】 多孔質金属材からなり、この金属材に形
成されている多数の細孔は金属材の両面間を屈曲した経
路を介して連通していることを特徴とする電磁波シール
ド材である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、電磁波に対する
高いシールド性能を有する電磁波シールド材と、この電
磁波シールド材を用いた無線式通話装置に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】電気機器のケーシングには内部との音の
出入りや冷却風の吸排等のための開口が形成されてお
り、電気機器には内部に電磁波源を内蔵するものがあ
る。

【０００３】このように電磁波源を内蔵する電気機器に
おいては、そのケーシングに形成された開口からは電磁
波が漏洩している。

【０００４】ところで、近時電磁波や電波による人体へ
の悪影響が懸念されており、このような電磁波源を内蔵
する電気機器からの漏洩する電磁波をシールド（遮蔽）
することが求められている。

【０００５】一方、電磁波シールド材によって電磁波に
対して高いシールド性能を実現するには、使用するシー
ルド部材の厚さ寸法を厚くし，かつそのシールド部材に
は電磁波を漏洩するような孔が存在しないことが必要で
ある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】電磁波に対する高いシ
ールド性能を有する前記のような電磁波シールド部材
を、電気機器のケーシングの前記の開口に設置すると、
電磁波シールド部材の両面間での空気の流通が妨げら
れ、音の伝播や冷却風の吸排等の開口本来の所要の機能
が阻害されることになるので、電気機器の前記のような
開口には格別の電磁シールド部材は配置されていない。

【０００７】かかる状況は、電磁波源を人体頭部に近接
して使用することにより頭部への悪影響が強く懸念され
ている，携帯電話機等の無線式通話装置においても同様
であり、無線式通話装置の送受話器部の開口から漏洩す
る強い電磁波に対して頭部を十分に保護するものとはな
っていないのが現状である。

【０００８】本願の発明はこのような事情に基づいてな
されたもので、請求項１または２記載の発明は、音の伝
播や冷却風の排出等のような機能を有する開口に単に設
置することとしても、開口の所要の機能を損なわず、同
時に電磁波に対する高いシールド性能を発揮することの
できる電磁波シールド材を提供することを課題とするも
のである。

【０００９】また、請求項３ないし５記載の発明は、無
線式通話装置の送受話器部に形成される開口での電磁波
シールド性能を高め、人体頭部を無線式通話装置に内蔵
された電磁波源から漏洩される電磁波から保護すること
を課題とするものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】このような課題を解決す
るために、請求項１記載の発明は、多孔質金属材からな
り、この金属材に形成されている多数の細孔は金属材の
両面間を屈曲した経路を介して連通していることを特徴
とする電磁波シールド材である。

【００１１】また、請求項２記載の発明は、多孔質金属
材の材質が、パーマロイ，アルミニウム合金，銅合金の
いずれかであることを特徴とする請求項１記載の電磁波
シールド材である。

【００１２】また、請求項３記載の発明は、無線式通話
装置の本体部ケーシングで、送話器部と受話器部とに開
口が形成され、その開口は、請求項１または２記載の電
磁波シールド材からなる電磁波シールド部材で覆われて
いることを特徴とする無線式通話装置である。

【００１３】また、請求項４記載の発明は、無線式通話
装置のケーシングは、本体部ケーシングとそれに開閉自
在に装着された蓋体部ケーシングとからなり、蓋体部ケ
ーシングには蓋体部ケーシングを閉じたときに本体部ケ
ーシングの送話器部と受話器部とに形成されている開口
に対向するように透孔を形成し、当該透孔は請求項１ま
たは２記載の電磁波シールド材からなる電磁波シールド
部材で覆われていることを特徴とする無線式通話装置で
ある。

【００１４】また、請求項５記載の発明は、前記電磁波
シールド部材を形成する電磁波シールド材において、そ
のセル数を８〜１３の範囲内としてあることを特徴とす
る請求項３または４記載の無線式通話装置である。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下、図面により実施の形態を説
明するが、この実施の形態の電磁波シールド材は図３に
示す製造方法で製造されたものであり、まず、その製造
方法を図３の（ａ）から（ｇ）までに沿って工程順に説
明する。

【００１６】（ａ）水溶液製造工程 容器１に水を入れ、その中に粉末状のアルギン酸ナトリ
ウムを水に対して約1.7重量％の割合で添加して撹拌機
２で撹拌混合する。これにより、粘性のあるアルギン酸
ナトリウム水溶液３が得られる。

【００１７】（ｂ）スラリー製造工程 前記のアルギン酸ナトリウム水溶液500CCを容器４に移
し、これに平均粒径10μｍのパーマロイ粉末1kgを添加
し、撹拌機５で撹拌混合してスラリー６を得る。

【００１８】（ｃ）スラリー吸着工程 このようにして得られたスラリー６を浅い容器７に移
し、この容器７内で所要の形状に形成した多孔材８をス
ラリー６に浸漬させて、多孔材８にスラリー６を含浸さ
せる。なお、多孔材８としては、例えば、連続気泡の発
泡ポリウレタンを用いればよい。

【００１９】（ｄ）圧搾工程 スラリー６を含浸した多孔材８を絞りローラ１１で圧搾
して、スラリー６の含有量を適量に調整する。

【００２０】（ｅ）乾燥工程 このように適量のスラリー６を含有した状態に調整され
た多孔材８は、天日あるいは乾燥機により水分が除去さ
れて、乾燥した多孔材８が得られる。なお、この乾燥工
程は次の焼結工程の焼結炉１２内で前工程として行なっ
てもよい。

【００２１】（ｆ）焼結工程 乾燥した多孔材８は、焼結炉１２に送り込まれ、真空雰
囲気で約1250℃で約120分間焼結される。この焼結工程
において、発泡ポリウレタン等からなる多孔材８自体は
焼失する。

【００２２】（ｇ）製品取出工程 多孔材８の焼失した焼結体１３が焼結炉１２から取り出
される。

【００２３】このようにして得られた焼結体１３は、本
願でいう電磁波シールド材に該当するものである。この
実施の形態にあってはパーマロイからなる多孔質金属材
となっている。

【００２４】このようにして得られた焼結体３は、金属
製であるので電磁波のシールド性能を有し、この実施の
形態においては金属としてパーマロイを用いたものであ
るので、電磁波のシールド性能が高いものである。な
お、この実施の形態においてはパーマロイを用いたが、
これに限らず、アルミニウムあるいは銅やこれらの各合
金等、その他の導電性に富んだ金属をパーマロイに代え
て用いてもよい。

【００２５】また、このようにして得られた焼結体１３
が、多孔質金属材を形成し、その断面は図３の（ｇ）に
拡大して示すように三次元の網目構造となっている。

【００２６】そのため、この焼結体１３の表面には多数
の細孔が形成されており、これらの細孔の多くは屈曲し
た経路１４を通じて互いに連通し、後述する電磁波シー
ルド部材とした場合の表面側に開口する細孔の多くは裏
面に開口した多数の細孔に連通したものとなる。

【００２７】したがって、この焼結体１３は、表面に形
成されている多数の細孔を通じて焼結体３の裏面側との
間での空気の流通が可能である。

【００２８】本願発明者らは、このような焼結体１３の
電磁波シールド性と通気度とについて、次のような実験
を行い、図４に示す結果を得た。

【００２９】すなわち、焼結体１３の電磁波シールド性
と通気度とについての実験は、前記製造方法において用
いる多孔材８のセル数（細孔についての目の粗さ）を変
化させることによって、セル数の異なる多数の種類の焼
結体の試料を得て、これらを用いて100MHzでの電界シー
ルド性と，100MHzでの磁界シールド性と，風速1m/secで
の通気度および風速2m/secでの通気度とを測定したもの
である。なお、焼結体の試料は、厚さ9mmの板材であ
る。

【００３０】このような実験の結果、図４に示すよう
に、焼結体の電磁波シールド性については、電界シール
ド性（○印）および磁界シールド性（●印）ともにセル
数が大きくなるほどシールド性が高まり、セル数が小さ
いほどシールド性が低くなっている。

【００３１】また、焼結体の通気度については、風速1m
/secでの通気度（△印）および風速2m/secでの通気度
（▲印）のいずれにおいても、セル数が小さいほど通気
度が高く，セル数が大きいほど通気度が低くなってい
る。

【００３２】このように、焼結体の電磁波シールド性と
通気度とが焼結体のセル数に関して逆の傾向を有してい
るので、焼結体のセル数が ８個／インチ〜１３個／イ
ンチの範囲が一般的な用途において電磁波シールド性と
通気度とが両立する範囲として好適である。なお、電磁
波シールド性を重視する用途や逆に通気度を重視する用
途においては、前記以外の範囲の焼結体を用いることが
できるのはもちろんである。

【００３３】次に、このようにして得られた焼結体１３
は、例えば、図１および図２に示すように携帯電話機の
ケーシングに用いられる。

【００３４】図２において、２１は携帯電話機を示し、
２２はケーシング、２３はアンテナである。

【００３５】ケーシング２２は、例えば、アルミニウム
や酸化亜鉛等の電磁波シールド性のある金属材料粉末を
添加した合成樹脂を射出成形したものである。

【００３６】このケーシング２２の表面側には、送話器
部２４と受話器部２５と操作ボタン部２６とが設けられ
ており、このケーシング２２内には電磁波源である不図
示の発信装置が内蔵されている。

【００３７】そして、この実施の形態のケーシング２２
においては、前記送話器部２４と受話器部２５とには、
開口２４ａ，２５ａが形成されており、これらの開口２
４ａ，２５ａにはこれらを閉塞して覆うように前記焼結
体１３を所定の形状に切断加工してなる電磁波シールド
部材２４ｂ，２５ｂが装着されている。

【００３８】なお、図１は受話器部２５の中央断面を示
すものであるが、送話器部２４の断面もこれと同様であ
る。

【００３９】前記のように携帯電話機２１の送話器部２
４で外部の音声を内部に伝播させるための開口２４ａ
と，受話器部２５で内部からの音声を外部に伝播させる
ための開口２５ａとのそれぞれに、前記焼結体１３から
なる電磁波シールド部材２４ｂ，２５ｂが装着されてい
ても、これらの電磁波シールド部材２４ｂ，２５ｂは表
面と裏面との間を多数の細孔で連通しているので、音の
伝播は損なわれない。

【００４０】そして、これらの電磁波シールド部材２４
ｂ，２５ｂで表面と裏面との間を連通する多数の細孔
は、屈曲した経路１４を介して連通するものであるの
で、電磁波の漏洩が抑制されており、携帯電話機２１を
使用する場合に、頭部を前記送話器部２４および受話器
部２５に近付けても、電磁波による頭部への悪影響が解
消されている。

【００４１】この実施の形態のケーシング２２において
は、前記したように電磁波シールド性のある金属材料粉
末を添加した合成樹脂を用いて形成したものであるの
で、ケーシング２２を通じての電磁波の漏洩も軽減して
おり、電磁波からの頭部保護が一層促進されている。

【００４２】なお、以上説明した携帯電話機２１におい
ては、送話器部２４と受話器部２５との双方に電磁波シ
ールド部材２４ｂ，２５ｂを設置したものであるが、ア
ンテナ２３に近接した受話器部２５側にのみ電磁波シー
ルド部材を設置することとしてもよい。

【００４３】これは、例えばＰＨＳ（簡易型携帯電話
機）においては、電波発信出力が小さいので発生する電
磁波そのものが小さく、そのような場合に本願を安価に
実施するうえで有益となるからである。

【００４４】さらに、前記のようにして得られた焼結体
１３からなる電磁波シールド材は図５および図６に示す
ようにして携帯電話機のケーシングに用いることもでき
る。

【００４５】図５に示す携帯電話機３１のケーシング３
２は、本体部ケーシング３３と蓋体部ケーシング３４と
からなるものであり、蓋体部ケーシング３４はヒンジ３
５を介して本体部ケーシング３３の表面側に開閉自在に
装着されている。

【００４６】本体部ケーシング３３は、前記した携帯電
話機２１のケーシング２２と同様のものであるが、場合
によっては電磁波シールド性のある金属材料粉末の添加
を省略して単なる合成樹脂で成形したものであってもよ
い。

【００４７】そして、この本体部ケーシング３３の表面
側には、送話器部３６と受話器部３７と操作ボタン部２
６が設けられており、この送話器部３６と受話器部３７
においては、複数の小穴からなる開口３６ａ，３７ａが
形成されて本体部ケーシング３３の内外での音の伝播が
確保されている。

【００４８】なお、本体部ケーシング３３内に電磁波源
である不図示の発信装置が内蔵されていることは前記の
ものと同様であり、そのため、前記の開口３６ａ，３７
ａから電磁波が漏洩するようになっている。

【００４９】一方、蓋体部ケーシング３４は、アルミニ
ウム合金製板材からなる蓋板部３８を有し、蓋体部ケー
シング３４を本体部ケーシング３３の表面に沿わせるよ
うに閉じた場合に蓋板部３８で前記送話器部３６と受話
器部３７に対向して位置する部位にそれぞれ透孔４１が
形成され、これらの透孔４１には前記焼結体１３からな
る電磁波シールド部材４２が装着されて閉塞している。

【００５０】したがって、かかる蓋体部ケーシング３４
を閉じた状態においては、前記送話器部３６の開口３６
ａおよび受話器部３７の開口３７ａは蓋体部ケーシング
３４に装着された電磁波シールド部材４２によって覆わ
れた状態となる（図６参照）。

【００５１】なお、図６は受話器部３７についての断面
を示すものであるが、送話器部３６についても同様であ
る。

【００５２】この携帯電話機３１においては、その使用
に際して、まず、蓋体部ケーシング３４を開いて操作ボ
タン部２６を操作し、所要の操作が完了した後は、蓋体
部ケーシング３４を閉じた状態として通話を行なうもの
である。

【００５３】したがって、この携帯電話機３１の通話状
態では蓋体部ケーシング３３を閉じた状態であり、この
状態においては本体部ケーシング３３内の電磁波源であ
る発信装置と携帯電話機３１を供用する頭部との間に、
電磁波シールド性のあるアルミニウム合金製板材からな
る蓋体部ケーシング３４が位置し、しかも、その蓋板部
３８の透孔４１には電磁波シールド部材４２が位置して
いる。

【００５４】そのため、この携帯電話機３１において
も、前記と同様に電磁波シールド部材４２を通じて音の
伝播が確保され、同時に開口３６ａ，３７ａからの漏洩
した電磁波が頭部に達するのを軽減することができる。

【００５５】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１または２
記載の発明によれば、電磁波に対する高いシールド性と
通気性とを有する電磁波シールド材を得ることができ、
音の伝播や冷却風の排出等のような機能を有する開口に
単に設置することにより電磁シールド性を付与すること
ができる。

【００５６】とくに、請求項２記載の発明によれば、多
孔質金属材の材質が、パーマロイ，アルミニウム合金，
銅合金のいずれかであるので、導電性が高く，電界シー
ルド性が良好となる。

【００５７】また、請求項３ないし５記載の発明によれ
ば、無線式通話装置の送受話器部に形成される開口での
電磁波シールド性を高め、人体頭部を無線式通話装置に
内蔵された電磁波源から漏洩される電磁波からの保護を
改善することができる。

【００５８】とくに、請求項４記載の発明によれば、蓋
体部ケーシングを本体部ケーシングに装着することによ
り電磁波シールド性を確保することができるので、既存
の携帯電話機に適用することが容易である。

【００５９】さらに、請求項５記載の発明によれば、電
磁波シールド性と通気度とがともに適度に確保されてお
り、携帯電話機についての電磁波シールド部材として好
適である。

【図面の簡単な説明】

【図１】図２のＡ−Ａ線に沿う断面図である。

【図２】携帯電話機の概略斜視図である。

【図３】（ａ）〜（ｇ）は電磁波シールド材の製造方法
の各工程の説明図である。

【図４】本願の電磁波シールド材についてのセル数の変
化による電磁波シールド性と通気度の変化を示す図であ
る。

【図５】他の実施の形態である携帯電話機の蓋体部ケー
シングを開いた状態の斜視図である。

【図６】図５に示した携帯電話機の蓋体部ケーシングを
閉じた状態での図１に相当する断面図である。

【符号の説明】

１３ 焼結体（電磁波シールド材） １４ 経路 ２１，３１ 携帯電話機（無線式通話装置） ２４ａ，２５ａ，３６ａ，３７ａ 開口 ２４ｂ，２５ｂ，４２ 電磁波シールド部材

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 多孔質金属材からなり、この金属材に形
   成されている多数の細孔は金属材の両面間を屈曲した経
   路を介して連通していることを特徴とする電磁波シール
   ド材。
2. 【請求項２】 多孔質金属材の材質が、パーマロイ，ア
   ルミニウム合金，銅合金のいずれかであることを特徴と
   する請求項１記載の電磁波シールド材。
3. 【請求項３】 無線式通話装置の本体部ケーシングで、
   送話器部と受話器部とに開口が形成され、その開口は、
   請求項１または２記載の電磁波シールド材からなる電磁
   波シールド部材で覆われていることを特徴とする無線式
   通話装置。
4. 【請求項４】 無線式通話装置のケーシングは、本体部
   ケーシングとそれに開閉自在に装着された蓋体部ケーシ
   ングとからなり、蓋体部ケーシングには蓋体部ケーシン
   グを閉じたときに本体部ケーシングの送話器部と受話器
   部とに形成されている開口に対向するように透孔を形成
   し、当該透孔は請求項１または２記載の電磁波シールド
   材からなる電磁波シールド部材で覆われていることを特
   徴とする無線式通話装置。
5. 【請求項５】 前記電磁波シールド部材を形成する電磁
   波シールド材において、そのセル数を８〜１３の範囲内
   としてあることを特徴とする請求項３または４記載の無
   線式通話装置。