JPH1052209A - 水田雑草の発生を防止する方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 除草剤を使用せず、費用と労力を節減し、肥
料としての効果をあげ、地力の向上を図りながら、水田
雑草の発生を防止する。 【構成】 田植期の水田に、微生物に分解されやすい炭
水化物材料を多量に投与すると、急激な環境の変化がお
こる。このときの現象を利用することによって、雑草の
発生を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、稲の栽培方法に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】稲の栽培で、雑草の駆除は欠くことので
きない技術である。古くから手作業で、更には除草機具
で行われたが、今日では除草剤によるのが一般的であ
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】近年、稲の無農薬栽培
に対する期待が大きくなっているが、手作業による除草
は大変な労力を必要とするし、除草機具を使用したり、
その他の方法でもそれなりの労力を要し、また、完全に
雑草を駆除することが困難である。

【０００４】本発明は、田植と同時、あるいは田植直後
に、炭水化物材料を田面に散布することにより、雑草の
発生を防止しようとするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明では、炭水化物材料として澱粉含量の多い屑
小麦等を用いる。

【０００６】上記の材料は、微生物によって速やかに分
解されやすくするため、粉砕等の加工を行う方が効果的
である。

【０００７】

【作用】前記、材料が田面に散布されると、炭水化物は
微生物によって分解されるが、分解の過程で表土および
田面水中の酸素が消費される。

【０００８】田植前あるいは田植直後に、発芽を始めた
雑草の種子は、前記の現象による酸素欠乏のため窒息死
する。

【０００９】前記、炭水化物の分解によって、土壌の還
元がおこり、遊離した鉄が水面の酸素と結合して再び酸
化鉄となり、水中を浮遊して田面水の透明度を悪くす
る。

【００１０】前記、炭水化物材料は、分解が進むにつれ
て組織が崩壊し、構成物質の一部はコロイド状となって
田面水中を浮遊する。

【００１１】前記、分解作用は、地表面の土壌組織にも
影響を及ぼし、粒子の結合がゆるんで土壌コロイドが田
面水中を浮遊する。

【００１２】前記、遊離した酸化鉄、炭水化物材料の組
織のコロイド、土壌コロイド等の集合体が田面水の透明
度を低下させ、太陽光線を遮断して、多年生雑草の生育
を抑制する。

【００１３】前記、炭水化物材料は、種類によって含有
する成分量は異なるが、稲の養分として必要な、窒素化
合物、燐、カリウムその他を含んでいる。したがって、
材料の組合せ、配合の割合を考慮すれば、雑草の発生を
防止する役割を果たしながら、施肥効果をあげることが
できる。

【００１４】

【実施例】平成８年５月１日、守山市小島町三ノ坪の水
田土を採取、径２２ｃｍの処理区・対照区の各ポットに
７ｋｇの土と２ｇの硫酸アンモニアを混合投入した。水
深３ｃｍに入水し、４．５令期の水稲苗を植え付けた。
処理区には直ちに破砕した屑小麦７．５ｇ（２０ｋｇ／
ａ）を散布した。

【００１５】試験ポットは温室内に置いた。５月１０日
頃から無処理区に雑草の発芽が見られた。１ヶ月後の調
査で雑草の数は種類別で、アゼムシロは無数、コナギ
（２２）、ミズカヤツリ（１１）、ヒメミソハギ
（４）、アゼナ（１）、ツユクサ（１）であった。

【００１６】処理区は徐々に水が濁りはじめ、数日で不
透明な状態となった。前記の雑草発生の調査期日におい
て、どの種類の雑草の発生も認められなかった。

【００１７】処理区の稲は、初期生育が抑制され、草丈
が短く、分げつ数も少なかったが、生育の中期からは無
処理区と栄養状態に差が認められなかった。

【００１８】前記と同じ水田の土で、苗を植えずに処理
を行ったポットも処理後５０日を経過しても雑草の発生
がなかった。このポットの表土（約１０ｍｍ）をとり、
風乾後、再度発芽試験を行ったが、１６０ｃｍ²のポッ
トからコナギ１本の発芽をみたのみであった。

【００１９】前記の発芽試験の結果、当初から存在して
いた地表近くの雑草の種子は、発芽能力を失っていると
いえる。

【００２０】平成８年６月６日より、野洲町南桜の休耕
田の土を用いて材料別の比較試験を行った。ポットの大
きさは内径１４．６ｃｍで、Ａポットは飼料用のへんぺ
いとうもろこしを粉砕したもの、Ｂポットは屑小麦の粉
砕したものをそれぞれ１．７ｇずつを、ポットに土と水
を入れ攪拌した後、水深を３ｃｍとして、水面上に散布
した。Ｃポットは対照として土と水のみである。（施用
量は１ａ換算で約１０ｋｇ）

【００２１】試験開始後６日目ですでにコナギの発生が
みられた。発生数が多いため、コナギのみは順次引き抜
いて数を調べた。７月２０日で試験を終了したが、それ
までに発生した雑草の種類と数は以下の通りであった。
コナギ（６３）、ヒメミソソバ（２１）、アゼナ
（９）、エノキグサ（１）、チョウジクサ（１）、ミズ
カヤツリ（１）。

【００２２】上記のように、対照のＣポットに極めて多
数の発生がみられたのに対し、Ａポットは７月２０日に
至っても、全く発生が認められず、Ｂポットはコナギ
（５）、ミズカヤツリ（１）が発生していた。

【００２３】上記のように、Ａポットのへんぺいとうも
ろこしとＢポットの屑小麦は同量を施用したにもかかわ
らず、その効果にはかなり差異が認められた。これは、
へんぺいとうもろこしが、製品となる過程で、蒸し加工
がなされており、含有炭水化物が微生物に分解されやす
くなっていたためと考えられる。

【００２４】

【発明の効果】本発明は、以上説明した通りであるが、
以下に記載されるような効果がある。

【００２５】除草剤を使用しなくても、雑草発生防止の
効果が極めて大きい。

【００２６】無農薬栽培を行う場合、労力の節減が多大
である。

【００２７】施用する材料の中に蛋白質その他の成分を
含有するため、肥料としての効果もあり、また、地力の
向上に役立つ。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水田の表層および、田面水中の酸素を欠
   乏させることによって、水田雑草の発芽並びに、生長を
   防止する方法。
2. 【請求項２】 田面水の透明度を悪くして光線を遮断
   し、それによって、雑草の生育を抑制する方法。
3. 【請求項３】 施肥目的と、雑草の発生防止を、同一材
   料・同一手段によって達成する稲の栽培方法。