【発明の詳細な説明】
フラビン蛋白質を用いる化石燃料の脱硫化方法 背景技術
化石燃料の微生物による脱硫化は、50年以上に渡る活発な研究領域である。
これらの研究の目的は、バイオテクノロジーに基づく、例えば、石炭、原油およ
び石油蒸留物等の化石燃料からの硫黄の燃焼前除去方法を開発することであった
。脱硫化方法の開発のための推進力は、化石燃料中の硫黄レベルの増加と硫黄放
出の厳密な規制の増加である。モンティセロ(Monticello)ら、「石油の生物脱
硫化における実用的研究」、IGT's 3d Intl.Symp.on Gas,Oil,Coal and Env
.Biotech.,(Dec.3-5,1990)New Orleans,LA。
参照により本願明細書に取り込まれる米国特許第5,356,801号、第5
,358,870号、第5,358,813号、第5,198.341号、第5
,132,219号、第5,344,778号、第5,104,801号および
第5,002,888号に記載のものを含む多くの生体触媒およびプロセスが、
化石燃料を脱硫化させるために開発されてきた。経済的な分析により、テクノロ
ジーの商業化における1つの限界が、例えば、脱硫化反応に含まれる細菌や酵素
等の生体触媒の反応速度および特異的活性を向上させていることが示唆される。
文献に報告されている反応速度および特異的活性(除去される硫黄/時間/生体
触媒のグラム)は、最適商業化テクノロジーに必要とされるものよりもずっと低
いものである。従って、生体触媒の寿命と特異的活性の改良が望まれている。発明の概要
本発明は、生体触媒にフラビン蛋白質を添加することにより、化石燃料の微生
物的脱硫化速度が速くなるという発見に関する。本発明は、下記工程からなる有
機硫黄化合物を含む化石燃料を脱硫化する速度を速める方法に関する: a)炭
素−硫黄結合を切断可能な生体触媒を含む水相および速度を速める量のフラビン
蛋白質と化石燃料とを接触させ、そうすることによって、化石燃料と水相との混
合物を形成させる工程;
b)生体触媒による有機硫黄分子の炭素−硫黄結合の切断に十分な条件下で、
工程(a)の混合物を維持し、そうすることによって、有機硫黄含有量の低減し
た化石燃料を得る工程;および
c)生じた水相から有機硫黄含有量の低減した化石燃料を分離する工程。
また、本発明は、有機硫黄分子を含む化石燃料を脱硫化することが可能な生体
触媒をコードする組み換えDNA分子およびフラビン蛋白質をコードする組み換
えDNA分子を1以上含む組み換え微生物に関する。
さらに、本発明は、(a)有機硫黄分子を含む化石燃料を脱硫化することが可
能な生体触媒および(b)フラビン蛋白質からなる組成物に関する。図面の簡単な説明
図1は、フラビン蛋白質の添加におけるロドコッカス種ATCC 53968
、IGTS8の抽出物によるDBTから2−HBPへの変換のグラフである。
図2は、プラスミドpEX16およびpEX44の模式図であり、図中、脱硫
化遺伝子クラスターは単独で存在、またはdsz遺伝子と直接連結してdsz遺
伝子クラスターの一部となるフラビン蛋白質遺伝子、frpと共に存在している
。
図3は、フラビン蛋白質を共発現するプラスミドを用いた場合、DBTの脱硫
化速度が増加することを示すグラフである。
図4は、ATCC 53968由来の内因性フラビン蛋白質の溶出プロフィー
ルのグラフである。
図5および6は、IGTS8の内因性フラビン蛋白質を含む画分を、dsz遺
伝子を含む大腸菌から単離されたDSZ酵素調製品に添加した場合、DBTおよ
びDBT−スルトンの脱硫化速度が増加することを示すグラフである。発明の詳細な説明
石油抽出および精製技術において、「有機硫黄」という用語は、通常、1以上
の硫黄原子(ヘテロ原子という)が共有結合により結合している炭化水素骨格を
有する有機分子をいうと解釈されている。これらの硫黄原子は、例えば、1以上
の炭素−硫黄結合により直接炭化水素骨格に結合してもよいし、例えば、スルホ
ニル基(炭素−酸素−硫黄共有結合を含む)のような炭化水素骨格に結合した置
換基に存在してもよい。1以上の硫黄ヘテロ原子を有する有機分子の一般的なク
ラスは、「有機硫黄化合物」として呼ばれることもある。これらの化合物の炭化
水素部分は、脂肪族、芳香族または一部が脂肪族で一部が芳香族であってもよい
。
芳香族炭素−硫黄結合により1以上の硫黄ヘテロ原子を炭化水素骨格中の近接
した炭素原子に連結した環式または縮合多環式有機硫黄化合物を、「硫黄含有ヘ
テロ環」という。硫黄含有ヘテロ環の多くのタイプに存在する硫黄を、硫黄ヘテ
ロ原子が存在する5員芳香環という観点から、「チオフェニック硫黄」という。
かかる硫黄含有ヘテロ環の最も単純な形は、チオフェンであり、C4H4Sという
組成を有する。
硫黄含有ヘテロ環は、例えば、水素化脱硫(HDS)等の通常の脱硫処理に対
して安定であることが知られている。硫黄含有ヘテロ環は、比較的単純な化学構
造を有してもよいし、比較的複雑な化学構造を有してもよい。複素ヘテロ環にお
いて、1以上のものがヘテロ環であってもよい多縮合芳香族環が存在する。脱硫
化の困難さは、分子の構造上の複雑さに伴って増加する。即ち、処理しにくい性
質は、ジベンゾチオフェン(DBT、C12H8S)等の複素硫黄含有ヘテロ環に
おいて最も強調される。
DBTは、5員環のチオフェン環が、2個の6員環のベンジル環を両端に隣接
している縮合多芳香族環構造を有する硫黄含有ヘテロ環である。化石燃料精製中
間体および可燃性産物中のHDS後の有機硫黄残留物の多くは、チオフェニック
硫黄である。この残留チオフェニック硫黄の大部分は、1方または両方の隣接ベ
ンジル環に存在する1以上の炭素原子に結合した1以上のアルキル基またはアリ
ール基を有するDBTおよびその誘導体中に存在する。DBTそれ自体は、チオ
フェニック硫黄を含む反応において、DBTおよびその誘導体を包含する化合物
のクラスの性質を示すモデル化合物として、関連技術分野において受けいれられ
ている。モンティセロとフィネルティ(Monticello and Finnerty)、Annual Revi
ews in Microbiology 39:371-389(1985)の372-373 を参照。DBTおよびその誘
導体は、特に原油、石炭およびビチューメンの全硫黄含有量の有意な割合を占め
ることができる。例えば、これらの硫黄含有ヘテロ環は、ウエストテキサスの原
油の全硫黄含有量の70重量%を占めることが報告されているし、いくつかの中
東原油の全硫黄含有量の40重量%まで占めることが報告されている。従って、
DBTは、特に地理学的起源の原油、石炭およびビチューメン等の化石燃料、な
らびにそれから製造される種々の精製中間体および燃料製品において見出される
チオフェニック硫黄型に対するモデル化合物として特に関連していると考えられ
る。同著者。DBTおよびその誘導体の他の特徴は、化石燃料から環境へ放出さ
れた後、これらの硫黄含有ヘテロ環は、有意な生物分解を受けることなしに、長
期間存在することである。グントラック(Gundlach)ら、Science 221:122-129(
1983)。従って、最も効果のある天然由来の微生物は、硫黄含有ヘテロ環を効果
的に代謝したり、破壊したりしない。
本発明の脱硫処理に好適な化石燃料は、有機硫黄を含むものである。かかる化
石燃料を「基質化石燃料」という。チオフェニック硫黄に富む基質化石燃料が、
本明細書に記載の方法による脱硫に特に好ましい。かかる基質化石燃料の例とし
ては、セロネグロ重原油またはオリノコ重原油;アサバスカン タールおよび他
の型のビチューメン;軽サイクルオイル、重大気ガスオイルおよびNo.1ディ
ーゼルオイル;ポカホンタス#3、ルイス−ストック、オーストラリアグレンコ
エまたはワイオダック石炭等の原料から製造された石炭由来の液体が含まれる。
生体触媒脱硫(生体触媒またはBDS)とは、生体触媒による硫黄含有ヘテロ
環等の処理しにくい有機硫黄化合物を含む有機硫黄化合物における炭素−硫黄結
合の選択的、酸化的切断の結果として、該化合物から硫黄を削除(遊離または除
去)することである。BDS処理により、例えば、分別蒸留または水抽出等の公
知の技術により互いに容易に分離可能な無機硫黄物質と共に、前記処理しにくい
有機硫黄化合物の脱硫化可燃性炭化水素骨格が得られる。例えば、DBTをBD
S処理に供すると、ヒドロキシビフェニルに変換される。単独または互いに協調
して、硫黄含有ヘテロ環を含む有機硫黄化合物中の炭素−硫黄結合を選択的に切
断することにより、該化合物からの硫黄の除去を支配する1以上の酵素を機能的
に発現する1以上の非ヒト生物(例えば、微生物);かかる微生物から得られる
1以上の酵素;またはかかる微生物および酵素の混合物からなる生体触媒により
BDSを行う。生体触媒活性を示す生物を、本明細書では、Dsz+であるとい
う。生体触媒活性を欠く生物を、本明細書では、Dsz-であるという。
本発明は、化石燃料の脱硫化が可能な生体触媒に速度を速める量のフラビン蛋
白質を添加し、触媒部位への電子輸送を容易にしたり、速めたりすることからな
る有機硫黄分子を含む化石燃料からの硫黄の改良除去に関する。
本明細書で用いられる化石燃料の脱硫化が可能な生体触媒は、通常、当該技術
分野において公知である。微生物(生存および非生存、組み換えおよび非組み換
え)および酵素調製品が含まれる。
何人かの研究者は、天然の細菌のDBTを代謝可能な変異株への遺伝学的修飾
を報告している。キルベイン(Kilbane,J.J.)、Resour.Cons.Recycl.3:69
-79(1990)、イスビスターおよびドイル(Isbister,J.D.,and R.C.Doyle)、米
国特許第4,562,156号(1985)およびハートデガン(Hartdegan,F.J.)ら
、Chem.Eng.Progress 63-67(1984)。これらの変異体の大部分は、非特異的に
DBTを脱硫し、小さな有機硫黄破壊生成物という形で、硫黄を放出させる。従
って、DBTの燃料価値の部分は、この微生物作用を通して失われる。イスビス
ターおよびドイルは、DBTから選択的に硫黄を遊離することが可能と思われ
るシュードモナスの変異株の誘導を報告したが、この反応性に応答可能なメカニ
ズムを解明しなかった。
キルベインは、酸化的経路によりDBTから選択的に硫黄を遊離することが可
能と思われるものを生成した細菌混合培養物の突然変異を報告している。この培
養物は、下水スラッジ、石油精製汚水、庭土、コールタールで汚染した土等の天
然源から得られた細菌からなり、DBTの存在下で持続的な脱硫条件下で、培養
を維持した。次いで、培養物を化学突然変異誘発物質である1−メチル−3−ニ
トロ−1−ニトロソグアニジンに曝した。この突然変異体培養物によるDBT代
謝の主な分解産物は、ヒドロキシビフェニルであった;硫黄は、無機水溶性硫黄
として放出され、分子の炭化水素部分は、モノヒドロキシビフェニルとして本質
的に無傷で残った。キルベイン(Kilbane,J.J.)、Resour.Cons.Recycl.3:
69-79(1990)の技術は、参照により本明細書に取り込まれる。
また、キルベインは、この細菌混合培養物からロドコッカスの変異株を単離し
た。この変異株、IGTS8すなわちATCCNo.53968は、本発明で用
いられる特に好ましい生体触媒である。この変異体の単離と特徴は、キルベイン
(Kilbane,J.J.)、米国特許第5,104,801号に詳細に記載され、その
技術は、参照により本明細書に取り込まれる。この微生物は、ブダペスト条約の
条件下で、米国 20852 メリーランド、ロックビレ、パークローン ドラ
イブ 12301のアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄
託され、ATCC寄託No.53968として指定された。1つの好適なATC
CNo.53968生体触媒調製品は、米国特許第5,104,801号に記載
されたように通常に調製された生存微生物および変異体またはその派生物の培養
物である。米国特許第5,132,219号および第5,358,870号に記
載されたように通常、ATCCNo.53968またはその変異体から得られた
無細胞系酵素調製品も使用可能である。生体触媒脱硫(BDS)の本発明の方法
では、芳香族硫黄含有ヘテロ環等のHDSで処理しにくい有機硫黄分子が全有機
硫黄含有量の有意な部分を占める液体石油の処理において、ATCCNo.53
968生体触媒剤を持続的脱硫プロセスに用いる。
DBTからの特異的硫黄放出を生じる、酸化的および還元的という少なくとも
2つの可能な型の経路がある。酸化的(好気的)経路を伴うことが好ましい。こ
の酸化的経路により作用する微生物としては、キルベイン(Kilbane)、Resour.C
onserv.Recycl.3:69-79に開示された微生物コンソルティウム(consortium)(
数種類の微生物の混合物)、キルベインの米国特許第5,002,888号(1
991年3月26日発行)、第5,104,801号(1992年4月14日発
行)、第5,344,778号、第5,132,219号、第5,198,34
1号、第5,356,813号、第5,356,801号、第5,358,87
0号[キルベイン(1990),生物脱硫化: 石炭のクリーニングにおける将来的展望
,in PROC,7TH ANN.INT'L.PITTSBURGH COAL CONF.373-382にも記載されてい
る]および第5,198,341号(1993年3月30日発行);およびオオ
モリ(Omori)ら、(1992),コリネバクテリウム種SY1株によるジベンゾチオフ
ェンの脱硫化,58 APPL.ENV.MICROBIOL.(No.3)911-915による;およびイズ
ミ(Izumi)ら、Applied and Environmental Microbiology 60:223-226(1994)、す
べては、参照により本明細書に取り込まれる、により開示された微生物が挙げら
れる。
前記微生物はそれぞれ、処理しにくい有機硫黄化合物から硫黄を除去する特異
的化学反応を行う1以上の酵素(蛋白質生体触媒)を産生するので、本発明にお
いて生体触媒として機能することができる。レーニンジャー(Lehninger)、PRINC
IPLES OF BIOCHEMISTRY(Worth Publishers,Inc.,1982),p.8-9;ゾベル(Zobell)
、米国特許第2,641,564号(1953年6月9日発行)およびケルン(K
ern)ら、米国特許第5,094,668号(1992年3月10日発行)を参照
。また、前記米国特許により例示された前記微生物のいずれかの突然変異または
遺伝子工学的派生物も、適当な生体触媒機能がある限り、本明細書において生体
触媒として使用することが可能である。
既報の脱硫プロセスにおける生体触媒または生体触媒源としての使用に好適な
追加の微生物は、公知の技術により天然の微生物から誘導することができる。前
述のように、これらの方法は、単独の硫黄源としての硫黄含有ヘテロ環等の処理
しにくい有機硫黄化合物の存在下で微生物が生育する選択的培養条件下、下水ス
ラッジ、石油精製汚水、庭土またはコールタールで汚染した土等の天然源から得
られた微生物の調製物を培養すること、化学的または物理的突然変異誘発物質に
微生物を曝すこと、またはこれらの方法の組み合わせを含む。かかる技術は、イ
スビスター(Isbister)およびドイル(Doyle)、米国特許第4,562,156号
(1985年12月31日発行)、キルベイン(Kilbane)、Resour.Conserb.Re
cycl.3:69-79(1990)、米国特許第5,002,888号、第5,104,80
1号および第5,198,341号;オオモリおよび共同実験者、58 APPL.ENV
.MICROBIOL.(No.3)911-915(1992)により詳細に述べられ、すべては参照により
取り込まれる。
前記説明したように、酵素は、生存細胞により作られる蛋白質生体触媒である
。酵素は、その結果として消費されるようになるそれ自体なしで、特異的化学反
応または一連の反応(経路という)の発生をプロモートし、指示しまたは容易に
する。酵素は、1以上の非修飾または翻訳後もしくは合成的に修飾されたポリペ
プチド鎖または断片またはその一部、追加の補酵素、補因子、または所望の反応
もしくは一連の反応を共同で触媒する共反応体を含むことができる。本発明に関
連した1つの反応または一連の反応は、硫黄含有ヘテロ環等の処理しにくい有機
硫黄化合物の炭化水素骨格から硫黄を切断することになる。前記処理しにくい有
機硫黄化合物の炭化水素骨格は、実質的に無傷のままである。本発明に生体触媒
として用いられる微生物または酵素は、生育のための炭素源として前記処理しに
くい有機硫黄化合物の炭化水素骨格を消費しない。結果として、BDS処理に曝
された基質化石燃料の燃料価値は、低下しない。
生存微生物(例えば、培養物)は、本明細書で生体触媒として用いることがで
きるけれども、このことは必須ではない。本発明において使用される生体触媒酵
素調製品は、通常の方法により得られ、所望の生体触媒機能を果たすことが可能
な微生物溶解物、抽出物、画分、副画分または精製産物を含む。一般に、かかる
酵素調製品は、実質的に無傷の微生物細胞を含有しない。例えば、キルベイン(K
ilbane)およびモンティセロ(Monticello)は、米国特許第5,132,219
号(1992年7月21日発行)および第5,358,870号(1992年6
月11日発行)に、本明細書で好適に用いられる酵素調製品を開示している。ラ
ンボセック(Rambosek)らは、ロドコッカス種ATCCNo.53968から技
術的に得られ、本明細書で好適に用いられる組み換え微生物および酵素調製品を
、米国特許第5,356,813号に開示している。本明細書で好適に用いられ
る酵素生体触媒調製品は、膜、フィルター、ポリマー樹脂、ガラス球もしくはビ
ーズ、またはセラミック球もしくはビーズ等の固体の支持体に固定しても構わな
い。固定した酵素調製品の使用は、処理しにくい有機硫黄化合物を枯渇させた処
理済化石燃料からの生体触媒の分離を容易にする。
生体触媒脱硫段階において、硫黄含有ヘテロ環を含む液体化石燃料を、生体触
媒およびフラビン蛋白質と結合させる。生体触媒とフラビン蛋白質と液体化石燃
料の相対量は、特定の条件に適合するように、すなわち、処理された徹底的に脱
硫化された化石燃料中の残留硫黄の特定のレベルを生じるように調整することで
きる。一定量の液体化石燃料と結合した生体触媒調製品の量は、用いる特定の生
体触媒の性質、濃度および比活性ならびに基質化石燃料に存在する無機および有
機硫黄化合物の性質および相対量ならびに求められるまたは許容されると考えら
れる脱硫度を反映するであろう。
一定の生体触媒の比活性は、質量単位当たりのその生体触媒活性の程度である
。従って、特定の生体触媒の比活性は、用いられる微生物または生体触媒酵素源
として用いられる微生物の性質または同一性、ならびに生体触媒調製品を調製お
よび/または保存するために用いられる手順に依存する。特定の生体触媒の濃度
は、特定の環境において使用するための要求に合うように調節することができる
。例えば、生存微生物(例えば、ATCC No.53968)の培養物を生体
触媒調製品として使用する場合、硫黄含有ヘテロ環以外の硫黄源を欠く好適な培
地に、好適な微生物を接種し、所望の培養濃度に達するまで発酵させることがで
きる。生じた培養物を追加の培地または別の好適な培地で希釈することが可能で
あり、あるいは培養物中に存在する微生物細胞を、例えば、遠心分離により回収
して、最初の培養物よりも濃い濃度で再懸濁させることが可能である。同様に、
微生物および酵素生体触媒の濃度も調節することができる。このようにして、予
定された比活性および/または濃度を有する適当な容量の生体触媒調製品を 得
ることができる。
本明細書で用いることができるフラビン蛋白質は、当該技術分野において通常
知られるものを含む。フラビンは、フラビンモノヌクレオチド(FMN)または
フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含む。フラビン蛋白質は、フラビ
ン還元酵素またはFMN還元酵素を含む。フラビン還元酵素またはより好ましく
はFMN還元酵素のようなフラビン蛋白質は、天然に見出されるもの(例えば、
フラビン蛋白質を含む微生物画分)として直接使用することができるし、市販品
を得ることができるし、組み換えにより作ることができる。例えば、ビブリオフ
ラビン還元酵素のDNA配列が、レイ(Lei)ら、J.Bacter.176(12):3552-3558(
1994)に示され、当該技術分野で公知の、例えば、米国特許第5,356,80
1号で検討された好適な宿主微生物を形質転換するために用いることができる。
あるいは、フラビン蛋白質は、以下に記載の無細胞画分等の脱硫生体触媒に対し
て内因性なものであることができる。
別の態様において、フラビン蛋白質は脱硫化微生物(例えば、IGTS8)に
より過剰発現させることができる。このことは、例えば、突然変異誘発により成
される。好適な突然変異誘発物質としては、例えば、紫外線等の放射線ならびに
N−メチル−N’−ニトロソグアニジン、ヒドロキシルアミン、エチルメタンス
ルホネートおよび亜硝酸等の化学突然変異誘発物質が挙げられる。突然変異誘発
は、当該技術分野で通常知られた方法により行うことができる。
フラビン蛋白質が組み換えの場合、フラビン蛋白質をコードするDNA配列を
含む組み換え微生物の添加等により、該蛋白質をイン・サイチュで作ることがで
きる。特に好ましい態様において、フラビン蛋白質をコードする組み換え微生物
も、化石燃料の脱硫化が可能な酵素を有する。例えば、フラビン蛋白質をコード
するDNAで、IGTS8または化石燃料を脱硫可能な他の微生物に形質転換す
ることができる。別の例において、フラビン蛋白質をコードするDNAで、脱硫
化生体触媒をコードするDNAともに、通常の宿主細胞に同時にまたは別々に形
質転換する。例えば、フラビン蛋白質をコードするDNAを、化石燃料を脱硫化
させることが可能な生体触媒をコードするDNAと同じまたは異なるプロモータ
ーの制御下で存在させることができる。1つの態様において、フラビン蛋白質D
NAを、脱硫化遺伝子クラスターまたはIGTS8のオペロン内に取り込ませた
り、連結させる。
フラビン蛋白質を、速度を速める量で反応混合物に添加する。本明細書におい
て定義される「速度を速める量」とは、最初に得られた生体触媒の脱硫化速度を
有意に増加させる量である。例えば、生体触媒がIGTS8、その無細胞画分ま
たはその精製酵素調製品の場合、フラビン蛋白質の「速度を速める量」は、得ら
れる生体触媒中に固有に存在するものに加え、脱硫化速度を有意に増加させるフ
ラビン蛋白質の量である。脱硫化速度を、例えば、生体触媒それ自体を用いる速
度と比較して、少なくとも25%、50%または100%増加させることができ
る。
前記要約すると、本明細書に記載の発明は、一面において、フラビン蛋白質お
よび/または有機硫黄化合物を含む化石燃料を脱硫することが可能な生体触媒を
コードする遺伝子または遺伝子群を含むDNA分子またはその断片に関連する。
DNA分子またはその断片は、例えば、天然源由来の精製および単離DNAであ
ってもよいし、例えば、非ヒト宿主生物に存在する組み換え(非相同または外来
性)DNAであってもよい。以下の検討は、本発明を限定するように解釈される
ものではなく、明確にする目的のために存在するものであるが、好適な生体触媒
活性を発現することが知られているロドコッカス種ATCCNo.53968株
由来の脱硫化生体触媒をコードするDNAの単離について詳述する。この好まし
いロドコッカス株は、その技術が参照により本明細書に取り込まれる米国特許第
5,104,801号(1992年発行)に開示され、IGTS8という文字で
引用されている。好適な生体触媒活性を発現することが知られ、従って本発明の
好適なDNA源として考えられる他の生物としては、米国特許第5,002,8
88号に記載され、ATCCNo.53969としてアメリカンタイプカルチャ
ーコレクションに寄託されているバチルス スファエリカス株およびオオモリ(O
mori)ら、Appl.Env.Microbiol.58(3):911-915(1992)に記載のコリネバクテリ
ウム株が挙げられる。
生体触媒活性を示すATCCNo.53968等のロドコッカッス株を当業者
に公知または容易に確認可能な適当な条件下で突然変異誘発物質に曝すことによ
り、炭素−硫黄結合を切断できないロドコッカッス突然変異株(Dsz-)を作
製する。好適な突然変異誘発物質としては、例えば、紫外線等の放射線ならびに
N−メチル−N’−ニトロ−ニトロソグアニジン(NTG)、ヒドロキシルアミ
ン、エチルメタンスルホネート(EMS)および亜硝酸等の化学突然変異誘発物
質が挙げられる。このように生成した突然変異体を適当な培地で生育させ、炭素
−硫黄結合切断活性でスクリーニングする。炭素−硫黄結合切断活性の正確な検
出が可能なスクリーニング方法は、本発明の方法において好適である。この活性
をスクリーニングする好適な方法は、炭素−硫黄結合を含む分子(例えば、DB
T)に種々の突然変異体を曝して、炭素−硫黄結合切断を測定することを含む。
好ましい態様において、短波長紫外線下で蛍光を発する分解産物であるヒドロキ
シビフェニル(HBP)を産生するように、突然変異体をDBTに曝す。また、
HBPは、ギブス試薬を用いる青色反応産物を通して比色的に検出することがで
きる。その他の方法としては、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィ
ー、赤外分光測定法および核磁気共鳴分光測定法が挙げられる。コダマ(Kodama
)ら、Applied and Environmental Microbiology,pp.911-915(1992)およびキル
バイン(Kilbane)とビエラガ(Bielaga)、Final Report D.O.E.Contract No.DE-
AC22-88PC8891(1991)を参照。Dsz-突然変異体を同定し、単離すれば、そのク
ローンを標準的な技術を用いて増殖させ、さらなる分析に付す。
前記Dsz+生物、ロドコッカスの培養物の突然変異誘発と同時に、同じDs
z+生物の第2の培養物の培養を続ける。Dsz+生物DNAを、このロドコッカ
スの培養物から抽出する。種々のDNA抽出方法が、この生物のDNAを単離す
るのに好適である。好適な方法としては、フェノールおよびクロロホルム抽出等
を含む。マニアティス(Maniatis)ら、Molecular Cloning,A Laboratory Manu
al,2d,Cold Spring Harbor Laboratory Press,pg 16.54(1989)、本明細書で
は、マニアティスらという。
一旦、ロドコッカスからDNAを抽出すれば、DNAを種々のキロベースの長
さの断片に切断し、好適なプラスミドシャトルベクターにクローニングすること
でまとめてDNAライブラリーを作製する。本発明のDNAを含むロドコッカス
のDNAを断片化してそこからDNAを精製する種々の方法、例えば、酵素的方
法および機械的方法などを用いることができる。TaQIまたはSau3A等の
4塩基認識制限エンドヌクレアーゼが、DNAを断片化するのに好適である。D
NAを断片化する好適な方法は、マニアティスらに見出される。
本発明の生体触媒をコードするDNA断片を単離する目的で、種々のDNA断
片を、いくつかのロドコッカスのDsz-突然変異体クローンに挿入する。Ds
z-突然変異体細胞をDsz+形質転換細胞に前もって形質転換することにより、
挿入されたDNA断片が生体触媒をコードするということが明らかとなる。該
断片の取込みと発現を可能にするDNAをロドコッカスに挿入する方法であれば
いずれも好適である。好ましい態様において、DNA断片をロドコッカスに導入
するためにエレクトロポレーションを用いる。マニアティスらを参照。
形質転換し、Dsz+突然変異体が産生されて同定されると、Dsz+生体触媒
をコードするDNA断片を同定および単離することができる。次いで、当業者に
公知で容易に利用可能な種々の方法で、単離されたDNAを用いてコードされる
生体触媒を産生することができる。また、公知の技術により、単離されたDNA
を、シーケンスおよび置換することが可能であり、および/またはマニアティス
らに記載の技術等を用いて、フラビン蛋白質をコードするDNAと連結すること
ができる。
前に示したように、本発明のDNAを単離する前記方法は、例えば、ATCC
No.53968株等のロドコッカス微生物以外のDsz+生物に適用すること
が可能である。従って、本発明のDNAの生物源として、バチルス スファエリ
カスATCCNo.53969またはコリネバクテリウム種SY1を使用するこ
とができる。さらに、一旦単離されると、本発明のDNAをDsz-突然変異体
生物源以外の非ヒト宿主生物に形質転換することができる。従って、本発明のD
NAを、例えば、大腸菌の好適な株に形質転換することができる。非ヒト宿主生
物の他のタイプしては、単細胞生物(酵母等)および多細胞生物由来の培養物と
して確立された細胞等を用いることもできる。
本発明のDNAを単離する他の方法は、前記理論的解釈における変法を含む。
例えば、IGTS8遺伝子クラスター由来の配列断片をハイブリダイゼーション
プローブとして用いて、類似のDNA分子を同定することができる。
また、本明細書に記載の技術を用いて、IGTS8の内因性フラビン蛋白質等
のフラビン蛋白質をコードするDNAを単離し、クローニングすることができる
。
本発明の組み換えDNA分子またはその断片は、選択的に炭素−硫黄結合を切
断可能な生体触媒およびフラビン蛋白質をコードする1以上の遺伝子のその鎖へ
の化学的または生物学的手段による挿入から生じ、該遺伝子はその鎖に最初から
存在しないいかなるDNAをも含むものである。組み換えDNAは、制限ヌクレ
アーゼ、核酸ハイブリダイゼーション、DNAクローニング、DNA合成または
前記のいずれかの組み合わせを用いる手段により合成されるいかなるDNAも含
む。構築方法は、マニアティスらおよび当業者に公知の他の方法に見出される。
本発明のDNAプラスミドまたはベクターの構築手順は、マニアティスらおよ
び当業者に公知の他の方法に記載のものを含む。「DNAプラスミド」および「
ベクター」という用語は、化学的または生物学的手段により挿入される外来性ま
たは外因性DNAを有し、次いで、適当な非ヒト宿主生物に形質転換されると、
外来性または外因性DNA挿入物産物を発現する(例えば、本発明の生体触媒お
よびフラビン蛋白質を発現する)ことができる複製可能ないかなるプラスミドま
たはベクターをも含むものである。また、プラスミドまたはベクターは、本発明
の遺伝子または遺伝子群、該遺伝子は有機硫黄化合物の炭素−硫黄結合を選択的
に切断する生体触媒をコードするものである、を含むDNA分子またはその断片
の挿入物に対して受容的でなければならない。DNAプラスミドベクターの構築
手順は、マニアティスらおよび当業者に公知の他のものに記載の手順を含む。
本発明のプラスミドは、フラビン蛋白質および/または有機硫黄化合物の炭素
−硫黄結合を選択的に切断する生体触媒をコードする遺伝子または遺伝子群を含
むいかなるDNA断片をも含む。「プラスミド」という用語は、いかなるDNA
断片をも含むものである。DNA断片は、例えば、形質転換または接合により宿
主微生物に伝達可能であるべきである。DNAプラスミドの構築または抽出手順
は、マニアティスらおよび当業者に公知の他のものに記載の手順を含む。
本発明の形質転換された非ヒト宿主生物は、当業者による種々の方法により創
作することができる。例えば、マニアティスらにより説明されるエレクトロポレ
ーションを用いることができる。「非ヒト宿主生物」という用語は、外来性、外
因性または組み換えDNAの取込みおよび発現が可能ないかなる非ヒト生物をも
意味する。宿主生物は、好ましくは微生物、より好ましくはシュードノマド(pse
udonomad)である。
本発明の化石燃料を脱硫化する方法は、2つの局面を含む。第1に、宿主生物
またはそれから得られた生体触媒調製品を化石燃料と接触させ、脱硫化する。こ
れは、任意に揺動または混合装置を取り付けた適当な容器中で行なうことができ
る。混合物を完全に結合させて、有機硫黄化合物の炭素−硫黄結合の有意な数の
切断が可能な充分な時間インキュベートさせておき、そうすることによって脱硫
化化石燃料を産生する。1つの態様において、生物または酵素画分の水性培養物
と化石燃料とを用いて水性エマルジョンまたはマイクロエマルジョンを産生させ
、発現した生体触媒が炭素−硫黄結合を切断する間、エマルジョン中の生物を増
殖させておく。
温度、混合速度および脱硫速度等の変数を、用いる生物生体触媒および/また
はフラビン蛋白質に従って変える。パラメーターは、単なる日常的実験を通して
決定される。
脱硫化の速度と程度をモニターするいくつかの好適な技術は、当業者に公知で
あり、容易に利用できる。ベースラインと経時的試料を、インキュベーション混
合物から採取し、化石燃料中の残留有機硫黄を測定するために調製することがで
きる。生体触媒処理に供する試料中のDBT等の有機硫黄化合物からの硫黄の消
失を、例えば、X線蛍光(XRF)または原子発光分光測定(炎光分光測定)等
を用いてモニターすることができる。例えば、ガスクロマトグラフィーにより、
試料の分子成分を最初に分離することが好ましい。
請求の範囲に記載の発明の方法および生体触媒組成物(組み換え微生物を含む
)は、比較的初期に開示された脱硫化方法以上に有意で予期せぬ改良という結果
を生じる。フラビン蛋白質の使用が、フラビン蛋白質を添加しない系と比較して
、反応速度において約100倍の改良という結果を生じることが可能であること
が示された。FADが直接DSZCに結合することを示唆する文献(Denome et a
l.,J.Bacteriol.,176:6707-6716,1994)およびNADHは系に必須の補因子で
しかないという提案(Ohshiro et al.,FEMS Microbiol.Lett.118:341-344,19
94)中の最近の議論という観点から、このことは、特に予想外である。
特別なメカニズムに限定されることなく、脱硫化反応の経路は以下の通りであ
ると信じられている:
特別な理論に限定されることなく、フラビン蛋白質は、短い電子輸送鎖であり
、NADHから還元等量を酵素、DSZC(またはSox C)および/または
DSZA(またはSox A)に送達すると信じられている。酵素DSZCは、
DBTからDBTO2への酸化反応の生体触媒に応答可能であると信じられてい
る。酵素DSZAは、DBTO2からフェノール−フェニル亜硫酸塩(PPS)
への反応に応答可能であると信じられている。
補因子FMNそれ自体を反応培地に添加することならびに電子供与体NADH
またはNADPHを添加することが、特に好ましい。例えば、NADHまたはN
ADPHの選択は、当該技術分野で公知のように、選択されるフラビン蛋白質に
依存する。下記実施例に記載のように、ビブリオフラビン蛋白質を使用する場合
は、NADPHを用いた。また、当該技術分野で公知の方法に従って、NAD+
からNADHの変換に対するNADHまたはNADPH再生系の添加が好ましい
。
本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例実施例1:FMNはDSZのインビトロ活性を高める 材料と方法
基礎塩培地中、30℃でA600が約10まで生育させた15mlのIGTS8
細菌を、遠心分離により集め、pH7.5の0.1M リン酸ナトリウム緩衝液
4mlに再懸濁させた。17,000psiでフレンチプレスセルを2回通すこ
とにより、細胞を溶解させた。界面活性剤CHAPSを、0.1%の最終濃度と
なるように細胞溶解液に添加した。次いで、この混合物を氷上15分間置き、そ
して15,000xgで15分間遠心分離した。上清画分を無細胞系酵素測定に
使用した。
酵素反応混合物は、下記成分の全部またはいくつかを含む:1.0mM DB
T、3.2mM NADH、1%レシチン(この水性混合物中でDBTの溶解性
を高めるため)、5μM FADもしくはFMNおよび0.1〜1.0mg/m
lの濃度範囲の前記細胞蛋白質抽出物。全体の反応容量は、0.6mlであり、
反応は1時間振盪させながら30℃でインキュベートした後、1mlのアセトニ
トリルを添加させることにより停止させた。次いで、混合物を遠心分離し、上清
の一部を、既知の標準に対する2−HBPの濃度に基づいてHPLCにより分析
した。蛋白質の濃度をプロテインアッセイキット(Biorad,Hercules,CA)により
決定した。結果
:
Ohshiro ら(FEMS Microbiol.Lett.18:341-344(1994))により示されるように
、DBTから2−HBPへの変換(conversion)は、インビトロ反応混合物への
NADH型の還元等価物の添加に依存する(表1)。しかし、これらの著者は、
この反応には他の補因子は作用しないと報告している。
前記のように調製したIGTS8の粗製蛋白質抽出物を、約0.16mg/m
lの蛋白質濃度に希釈した場合、該抽出物は、NADH単独存在下ではDBTか
ら2−HBPを産生する能力を失う。この場合、反応混合物へのFMN(フラビ
ンモノヌクレオチド)の添加によりこの能力を回復する。FAD(フラビンアデ
ニンジヌクレオチド)の添加は、何の効果も有しない(表1)。抽出物の透析は
、同様の効果を有する(脱硫化活性の喪失とFMNおよびNADHの添加による
回復)。これらの結果により、NADHおよびFMNは両方とも脱硫化に関与し
、反応を進行させるためにはそれらが共存しなければならないことがわかる。実施例2:精製ヘテロNADPH依存性FMN還元酵素は、IGTS8抽出物の Dsz活性を高める
実施例1に記載の実験結果により、IGTS8により触媒されるDBTの脱硫
化におけるフラビン(例えば、FMN)を含む還元酵素の関与が示唆される。こ
の仮説を試験するために、精製ヘテロFMN還元酵素の存在下で、DBT→2−
HBP反応を行った。材料と方法:
IGTS8細胞の粗製蛋白質抽出物を、実質的には実施例1に記載のように調
製した。この抽出物中の蛋白質の濃度は、12.7mg/mlであった。この抽
出物の脱硫化活性を測定するために、ビブリオ ハルベイ(Vibrio harveyi)か
ら精製したNADPH依存性FMN還元酵素の量を変化させて、67μMのDB
Tおよび5mMのNADPHをその300μlに添加した(Lei,et al.,前述)
。本明細書で使用する還元酵素の1ユニットは、NADPHを基質として用いて
1分間当たり1μモルのFMNの還元を触媒する。結果
:
前述のように、V.ハルベイ還元酵素の0〜0.090ユニットを300μl
の反応混合物に添加した場合、還元酵素による脱硫化活性の非常に強力な刺激が
ある。0.09ユニットの添加により、2倍以上活性が増加する(図1)。これ
らの結果により、本明細書に記載の脱硫化反応において、反応を触媒する抽出物
の全ポテンシャルは、フラビンを含む還元酵素の添加により実質的に上昇するこ
とがわかる。実施例3:大腸菌におけるDsz表現型の発現は、FRPに依存する 材料と方法
:
dsz発現ベクターpEX16の構築
プラスミドpEX16は、大腸菌tacプロモーター配列の転写制御下にds
zABC遺伝子を含む。このプラスミドを、下記工程により構築した:合成二本
鎖DNAオリゴヌクレオチドアダプター配列
を、エンドヌクレアーゼEcoRIおよびHindIII で予め切断しておいたプ
ラスミドpUC19(Yanisch-Perron et al.,Gene 33:103-119(1985))に連結
し、プラスミドpEX13が生じた。次いで、エンドヌクレアーゼNsi1およ
びBsiw1でpEX13を切断した。次いで、dszABC構造遺伝子を含む
プラスミドpTOXi1(米国特許第5,356,801号)由来の4.5kb
のNsi1/Bsiw1制限断片を単離し、切断pEX13DNAと連結し、プ
ラスミドpEX14が生じた。pEX14由来の4.5kbpのBg1ii/Sp
e1断片およびBAMH1/Spe1切断プラスミドpT3XI−2(Hale,K,
テトラサイクリン耐性遺伝子およびtacプロモーターを含むpKK223−3
(Pharmacia)由来)の混合物を、tacプロモーターがdszABCを直接転写
させるような向きに連結した。このプラスミドをpEX16と呼ぶ(図2)。
DSZABCおよびfrpをコードするプラスミドの構築
ビブリオ ハルベイのfrp(フラビン還元酵素)遺伝子を含むDNAの0.
9kbp断片(Lei et al.J.Bacteriology 176:3552-3558(1994))を、下記工
程を用いてプラスミドpEX16に加えた。プラスミドpFRPI(Lei,et al
.(1994))を制限エンドヌクレアーゼEar1で切断し、dNTPおよびDNA
ポリメラーゼ大断片(Klenow)を用いて末端を平滑化した。二本鎖Spe1リン
カー断片(N.E.Biolabs)をライゲーションによりこれらの平滑末端に加え、S
pe1で切断した。次いで、プラスミドpEX16をdszABC遺伝子クラス
ターの3’末端に位置するユニークSpe1部位で切断し、Spe1末端のfr
p遺伝子断片と連結した。tacプロモーターの制御下にdszABCおよびf
rp遺伝子を含む生じたクローンを、pEX44と呼ぶ(図2)。
細胞溶解液の調製およびpEX16またはpEX44を含む大腸菌の抽出物にお
けるDsz活性の測定
YT培地中37℃で生育させた大腸菌細胞の培養液(50ml)を、0.1m
MのIPTG(最終濃度)の添加によりクローン化した遺伝子の発現を誘導させ
た。細胞を遠心分離により集め、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.5)に再懸
濁させ、17,000psiでフレンチプレスセルを2回通すことにより、溶解
させた。溶解液を15,000Xgで15分間遠心分離し、上清画分を酵素測定
のために保存した。反応混合液は、最終容量300μlに、0.1Mリン酸緩衝
液、5μM FMN、0.67mM DBT、3mM NADPH、蛋白質抽出
物(12mg/ml)を含んでいた。結果
:
単独硫黄源としてのDBTに対する大腸菌の生育は、DSZABCおよびfrp
に依存する
単独硫黄源としてのDBTに対して、IGTS8は生育するであろう。大腸菌
の野生株は生育しないであろう。さらに、dszABC遺伝子を発現するプラス
ミドpEX16を有する大腸菌株を、単独硫黄源としてのDBTを含む一定の生
育培地中に置いた場合、3種の遺伝子産物を強力に発現するにも係わらず、生育
しないであろう。しかし、dszABCおよびfrpを発現するプラスミドpE
X44を有する同じ大腸菌株は、これらの条件下で生育するであろう。これらの
結果により、Dsz表現型のヘテロな発現がフラビン還元酵素蛋白質により有意
に高められていることがわかる。
プラスミドpEX16またはpEX44のいずれかを含む大腸菌株の抽出物を
調製し、前述のように、DBTから2−HBPへの変換を測定した。図3に示し
た結果は、frp遺伝子発現産物、すなわち、NADPH依存性FMN還元酵素
の抽出物中に存在することにより変換が高められたことが確定されたことから得
られるものである。実施例4:IGTS8の内因性フラビン蛋白質の単離 方法と材料
細菌株と生育
BSM/Hunters培地(Denome et al.,Applied and Environmental M
icrobiology 59(9(:2837-2843(1993))中、30℃、250rpmで振盪させる
ことにより、IGTS8を初期定常期まで生育させた(通常約85時間)。
DSZAをコードするプラスミドpSAD267−1(Denome et al.,J.Ba
ct.176:6707-6716(1994))を含む大腸菌MZ1を、0.4mg mL-1のビオ
チン、それぞれ、50mg mL-1のヒスチジン、イソロイシンおよびバリン、
100μg mL-1のアンピシリンならびに1.5mMのNa2SO4を含むBS
M/Hunters培地中で生育させた。新鮮な寒天プレート由来のシングルコ
ロニーを用いて50mLの液体培地に接種し、30℃で一晩振盪させた(250
rpm)。この培養液の10mLのアリコートを用いて500mLの同じ培地に
接種し、OD600が約0.4になるまで生育させた。この時点で、2時間、39
℃まで温度を上げることにより、DSZAの発現を誘導させ、その後、OD600
が約3に達するまで30℃に戻した。通常、3Lの細胞培養液を精製に用いた。
DSZCをコードするプラスミドpSAD269−2A(Denome et al.(199
4))を含む大腸菌MZ1を、前記MZ1::pSAD267−1で記載のように
、100μg mL-1のアンピシリンを添加したLB培地で生育させた。
カラムクロマトグラフィー
すべてのクロマトグラフィー工程は、4℃または氷上で行なった。遠心分離に
より集めたIGTS8細胞を、1mM EDTAおよび1mM DTTを含む2
5mM EPPS pH8(バッファーA)で1回洗浄し、25mM EPPS
pH8、1mM EDTA、1mM DTT、100mM NaCl、10m
M MgCl2および0.15mM PMSF中に再懸濁した。DNアーゼおよ
びRNアーゼを固体として添加した。細胞を40,000psiでAminco
フレンチプレスセル中で破壊した。細胞懸濁液を2回フレンチプレスに通し、次
いで、4℃、39,800xgで30分間遠心分離した。ペレット(破壊されな
い細胞と細胞の破片からなる)を捨てる一方、2mL min-1の流速で5%バ
ッファーB(バッファーA+2M NaCl)を含むバッファーAで平衡化させ
たPharmacia Q−セファロース ファスト フロー カラム(2.6
cm x 14cm)に、上清を負荷した。5mL min-1の流速で、溶離液
のOD280が0に近づくまで同じバッファーでカラムを充分洗浄し、180分か
けて5%〜30%バッファーBの直線グラジエント(100mM〜600mM
NaClに相当)で展開させた。約240mM NaClで、NADH:DCP
IP酸化還元酵素活性を示す黄色を帯びた画分が溶出された。
大腸菌由来のDSZAの精製を、以下にように行なった。前述のように生育さ
せた大腸菌細胞を、6,000rpm、10分間遠心分離により集め、バッファ
ーAで2回洗浄した。100mM NaCl、10mM MgCl2、0.15
mM PMSFおよびDNアーゼおよびRNアーゼを含む同じバッファー(細胞
の湿重量と等しい容量)中に、細胞を再懸濁させ、次いで、20,000psi
でフレンチプレスセル中で破壊した。溶解物を39,800xgで30分間遠心
分離して、破壊されない細胞と細胞の破片を除去した。1mL min-1の流速
で、Pharmacia Q−セファロース ファスト フロー カラム(2.
6cm x 14cm)に上清を負荷した。溶離液のOD280がベースラインに
近づくまで、カラムを5%バッファーBで洗浄し、5mL min-1の流速で、
120分かけて5%〜25%バッファーBの直線グラジエントで展開させた。D
SZAを含む画分(SDS−PAGEにより決定)をプールし、バッファーAに
対し、4℃で一晩透析した。バッファーAで平衡化したPharmacia リ
ソースQカラムとラインで接続したPharmacia ブルー セファロース
−6 ファスト フロー カラムに、透析物を負荷した。安定したベースライン
を達成した後、ブルー セファロース カラムを外し、リソースQカラムを3m
L min-1の流速で、60分間、2.5%〜25%バッファーBの直線グラジ
エントで展開させた。DSZAを含む画分(SDS−PAGEにより判定)をプ
ールし、グリセロールを10%(w/v)添加し、−20℃で保存した。この手
順により純度が95%のDSZAが得られる。
DSZCを以下のように精製した。この場合、バッファーAは、1mM ED
TAを含む10mM BES pH7.09であった。4mg mL-1のリゾチ
ームで、室温で1.5時間処理することにより、細胞を溶解させた。溶解緩衝液
は、75mM NaCl、1mM DTTおよび0.1mg mL-1 PMSF
を含んでいた。溶解が完了後、MgCl2を5mM添加し、DNアーゼおよびR
Nアーゼも添加した。まず、上清を6,000rpmで15分間遠心分離し、ペ
レットを捨て、再び上清を39000xgで1.5時間遠心分離した。次に、バ
ッファーA+3%バッファーB(2M NaClを有するバッファーA)で平衡
化したPharmacia リソースQカラムに、上清を負荷し、カラム体積の
10倍の同じバッファーで洗浄した。3mL min-1の流速で、23分間、6
0mM NaCl〜500mM NaClの直線グラジエント(3%〜25%バ
ッファーB)で展開させた。350mM NaCl付近で溶出するDSZCを含
む画分(SDS−PAGEにより決定)をプールし、Amicon セントリプ
レップ30(MWCO 30kDa)を用いて約0.7mLまで濃縮した。さら
に、移動相として10mM BES pH7を用いるPharmacia スペ
ロース12ゲル濾過カラム(流速0.3mL min-1)で、濃縮画分の0.2
5mLをクロマトグラフィーに付した。DSZCを含む画分をプールし、次いで
凍結乾燥させ、−20℃で保存した。
酵素アッセイ
NADH依存性DCPIP還元を、以下のように測定した。反応混合液(d=
1cmのキュベット中1mL)は、25mM EPPS緩衝液、pH8中100
nmolのDCPIPおよび50nmolのFMNを含んでいた。DCPIPの
還元は、600nmにおける吸光度の低下と相関する。攪拌混合物の吸光度を、
Beckman 7500ダイオードアレイ分光光度計を用いて600nmでモ
ニターした。300nmolのNADHを添加して約30秒後、DCPIPの非
酵素的還元の残存量があることが観察された。さらに約30秒後、試験対象の試
料の1〜10μLの注入により反応が開始された。酵素活性を、−OD600mi
n-1またはμM還元DCPIPmin-1(ε600=21mM-1cm-1を用いる)
のいずれかで表した。吸光度を550nmでモニターすることおよび混合物がD
CPIPの代わりに50nmolのcyt cを含むことを除いて同様の方法で
、NADH依存性cyt cの還元を測定した。フェリチトクロームcからフェ
ロチトクロームcへの還元は、550nmの吸光度の増加と相関する。
DBTのDBTO、DBTO2およびHBPへの変換ならびにDBT−スルト
ンのBHBPへの変換を、既報に従って、H2O:アセトニトリル比が1のSy
nchropak RP C18逆相カラム(100x4.6mm)を用いるH
PLCにより測定した。100mM NaPipH7.5中の反応混合物は、1
mL中に3μmolのNAD(P)H、25nmolのFMN(またはFAD)
、粗製溶解物または精製DSZC(A)および100nmolの基質を含んでい
た。10分毎に、100μLを取り除き、100μLのアセトニトリルを添加し
て反応を消光させ、基質と生成物を分析した。結果
:
IGTS8におけるフラビンを含む還元酵素の同定
IGTS8の粗製溶解物を、アニオン交換クロマトグラフィーにより分離した
後、いくつかの透明な着色した(黄色または茶色)画分を区別することが可能で
あった。図4に示されるように、NADHによるDCPIPの還元は、25番(
約240mM NaCl)付近を中心とするピークを有するこれらの画分のいく
つかで起こる。通常これらの画分は、フラビン蛋白質を含んでいることを示す画
分に対してかすかに黄色を有している。酸化還元酵素活性を充分得るためには、
外因性のフラビンを反応混合物に添加しなければならず、単離の手順の間に内因
性のフラビンが喪失してしまうことを意味する。フラビンの添加(この場合はF
MN)は、DCPIPの還元速度と程度の両方を増進させる。また、これらの画
分もNADHの酸化と共役したcyt cの還元を触媒する。
フラビン蛋白質還元酵素によるDSZAおよびDSZCの活性化
DSZAまたはDSZCのいずれかを大腸菌から精製すると、いずれも、通常
の1時間測定ではそれぞれの反応を触媒しない。図5により、黄色の画分由来の
フラビン蛋白質還元酵素を、FMNおよびNADHの共存下、精製した大腸菌D
SZAと組み合わせた場合、DBT−スルトンからBHBPへの完全な変換が起
こることがわかる。黄色の画分を、DSZC、FMNおよびNADHと結合させ
た場合(ここでは基質がDBTで生成物がDBTO2であることを除く)、同様
のパターンが観察される(図6)。これらの結果により、脱硫化を起こすために
は、DSZA、DSZBおよびDSZC蛋白質が存在するばかりでなく、補因子
としてフラビンを用い、NADHを酸化させるために反応可能な少なくとも第3
の蛋白質が経路に含まれなければならないことが示唆される。均等物
等業者であれば、単なる日常的実験手法により、本明細書に記載された発明の
具体的態様に対する多くの均等物を認識し、あるいは確認することができるであ
ろう。そのようなおよび他のすべての均等物は、下記クレームの範疇に含まれる
ものである。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年10月28日
【補正内容】
17.炭素−硫黄結合を切断可能な生体触媒および組み換えフラビン還元酵素が
、単一の微生物により産生されている請求項16記載の方法。
18.有機硫黄分子を含む化石燃料を脱硫化することが可能な生体触媒をコード
する第1のDNA配列、およびフラビン蛋白質をコードする第2のDNA配列か
らなるDNA分子。
19.フラビン蛋白質が、フラビン還元酵素である請求項18記載のDNA分子
。
20.フラビン還元酵素が、FMN還元酵素である請求項19記載のDNA分子
。
21.DNA分子が、ロドコッカス種ATCC 53968由来のDNAからな
る請求項20記載のDNA分子。
22.下記をコードする組み換えDNA分子を含む微生物:
(a)有機硫黄分子を含む化石燃料を脱硫化することが可能な生体触媒;および
(b)追加のフラビン蛋白質。
23.フラビン蛋白質が、フラビン還元酵素である請求項22記載の微生物。
24.組み換えDNAプラスミドが、ロドコッカス種ATCC 53968由来
のDNAからなる請求項23記載の微生物。
25.下記からなる組成物:
(a)有機硫黄分子を含む化石燃料を脱硫化することが可能な生体触媒;および
(b)速度を速める量のフラビン蛋白質。
26.フラビン蛋白質が、フラビン還元酵素である請求項25記載の組成物。
27.フラビン蛋白質が、FMN還元酵素である請求項26記載の組成物。
28.生体触媒が、ロドコッカス種ATCC 53968またはその酵素である
請求項27記載の組成物。
29.NADHまたはNADPHをさらに含んでなる請求項27記載の組成物。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
//(C12N 9/02
C12R 1:01)
(C12N 1/21
C12R 1:01)
(C12N 1/21
C12R 1:19)
(C12N 15/09 ZNA
C12R 1:01)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B
Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES
,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,
KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU,L
V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ
,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,
SK,TJ,TM,TT,UA,UG,US,UZ,V
N
(72)発明者 サイ,レイ
アメリカ合衆国 テキサス 77381 ザ
ウッドランズ,ウエスト スターリング
ポンド サークル 159
(72)発明者 オルテゴ,ビートライス シー.
アメリカ合衆国 テキサス 77379 スプ
リング,ケトル クリーク ドライブ
17003
(72)発明者 ポグレビンスキー,オルガ エス.
アメリカ合衆国 テキサス 77024 ヒュ
ーストン,パインロック 12611
(72)発明者 グレイ,ケビン エイ.
アメリカ合衆国 テキサス 77381 ザ
ウッドランズ,ナンバー.177,タングル
ブラッシュ 3500
(72)発明者 チャイルズ,ジョン ディー.
アメリカ合衆国 テキサス 77381 ザ
ウッドランズ,ナンバー.1202.ホリー
クリーク コート 33