【発明の詳細な説明】
3,4−エポキシ−1−ブテン、テトラヒドロフラン及び開始剤
から誘導されたポリエーテルグリコール及びアルコール
本発明は、ある種の新規なポリエーテル化合物に関する。更に詳しくは本発明
は、構造式:
の繰り返し単位を有するポリエーテルグリコール及びアルコールに関する。本発
明はまた、ある種の強酸性触媒、テトラヒドロフラン及びヒドロキシル開始剤化
合物の存在下での3,4−エポキシ−1−ブテンの重合によるポリエーテル化合
物の製造方法に関する。
米国特許第3,133,905 号には、触媒として三フッ化ホウ素を使用して、少量の
3,4−エポキシ−1−ブテンをテトラヒドロフランと共重合させて、約90モル
%のテトラヒドロフランの残基及び僅か10モル%の3,4−エポキシ−1−ブテ
ンの残基からなるコポリマーを得ることが開示されている。しかしながら、利用
できる3,4−エポキシ−1−ブテンの約三分の二のみがコポリマー中に含有さ
れ、繰り返し単位構造は開示されていない。S.S.Ivanchev他(J.Polym.Sci.
,Polym.Chem.Ed.、18巻、2051〜2059頁(1980年))は、三フッ化ホウ素エー
テラートによる3,4−エポキシ−1−ブテンの単独重合を研究し、停止反応の
速度が成長反応の速度よりも遥かに速く、多くの3,4−エポキシ−1−ブテン
を未反応のままにしておくことを開示している。本発明者等のこの化学反応の研
究によって次の結果が確認される。即ち、低収量の末端不安定の白
色物質が得られ、この物質のクロロホルム可溶性部分には残基(1)のみが含有
されている。
米国特許第3,133,905 号の開示は、多数の手段に於いて本発明とは異なってい
る。例えば、本発明のポリエーテルは、3,4−エポキシ−1−ブテンの共重合
用の開始剤として求核性化合物を使用して製造され、それでこのポリエーテルに
は求核性開始剤から誘導される残基が含有されている。他の相違は、本発明の新
規な不飽和ポリエーテル化合物が、残基(1)及び(3)に加えて、残基(2)
の繰り返し単位を含むことである。本発明の新規な不飽和ポリエーテル化合物は
、3,4−エポキシ−1−ブテンから誘導される残基(1)及び(2)の量に比
較して、少量のテトラヒドロフランから誘導される残基(3)からなる。米国特
許第3,133,905 号のポリエーテルの製造で使用された三フッ化ホウ素は、残基(
2)を与えず、3,4−エポキシ−1−ブテンの重合の間に失活を受ける。
3,4−エポキシ−1−ブテン技術の一般的状態に関する他の文献を以下に示
す。P.D.Bartlett他、J.Am.Chem.Soc.、70巻、926頁(1948年)には、1
−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−ブテンを与えるための3,4−エポキシ−1
−ブテンの硫酸触媒メタノリシスが開示されている。A.M.Rose他、J.Am.Che
m.Soc.、104 巻、1658頁(1982年)には、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン
及び1,4−ジヒドロキシ−2−ブテンの96/4比の混合物を製造するための3
,4−エポキシ−I−ブテンの酸触媒加水分解が開示されている。残基(1)及
び(2)からなるポリマーは上記引用した先行技術によって意図されず、例示さ
れた反応では過剰の求核剤が使用されている。
米国特許第2,680,109 号には、塩化第二錫及び少量の水の存在下で、3,4−
エポキシ−1−ブテンを含む不飽和1,2−エポキシ
ドの重合が開示されている。英国特許第869,112 号並びに米国特許第3,031,439
号及び同第3,417,064 号には、触媒として少量の水を含む炭酸ストロンチウムを
使用する、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの3,4−エポキシ−1
−ブテンの共重合が開示されている。
米国特許第3,158,705 号、同第3,158,581 号及び同第3,158,591 号には、触媒
として水と予め反応させたトリアルキルアルミニウム化合物を使用する、残基(
1)のみからなるポリエーテルを与えるための3,4−エポキシ−1−ブテンの
重合が開示されている。これらの特許にはまた、触媒として水と予め反応させた
トリアルキルアルミニウム化合物を使用する、3,4−エポキシ−1−ブテンと
エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びエピクロロヒドリンとの共重合が開
示されている。米国特許第3,509,118 号には、水と予め反応させたトリエチルア
ルミニウム化合物を使用し、ベンゼン中で3,4−エポキシ−1−ブテンを重合
することによって製造した高分子量ポリエーテルのn−ブチルリチウム開裂によ
り製造した残基(1)のみを含む不飽和ポリエーテルグリコールの製造が開示さ
れている。
米国特許第3,133,905 号にはまた、加圧樹脂ポット中で、開始剤としてエチレ
ングリコールを使用し、触媒として固体水酸化ナトリウムを使用する少量の3,
4−エポキシ−1−ブテンとエチレンオキシドとの共重合が開示されている。米
国特許第3,468,847 号には、触媒としてフッ化セシウムを使用する、3,4−エ
ポキシ−1−ブテン、ヘキサフルオロアセトン、エチレンオキシド及びプロピレ
ンオキシドの共重合が開示されている。
Tsuruta 他、Macromol.Chem.、111巻、236〜246 頁(1968年)には、水と予
め反応させたジエチル亜鉛によって3,4−エポキ
シ−1−ブテンが重合され、収率54%の残基(1)のみを含む高分子量ポリエー
テルが得られることが開示されている。Tsuruta 他はまた、赤外分光学による内
部二重結合[残基(2)]の証拠を有する3,4−エポキシ−1−ブテン及び触
媒としての非錯体化ジエチル亜鉛からの収率3%のポリエーテルの単離が開示さ
れている。この化学の本発明者等の研究では、単離可能なポリマーにならなかっ
た。
一連の刊行物[P.Kubisa,Makromol.Chem.,Macromol.Symp.、13/14、20
3頁(1988年);K.Brzezinska,R.Szymanski,P.Kubisa及びS.Penczek,Mak
romol.Chem.,Rapid Commun.,7巻、1頁(1986年);M.Bednarek,P.Kubis
a,及びS.Penczek,Makromol.Chem.,Suppl.、15巻、49頁(1989年);P.Ku
bisa 及びS.Penczek,Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.,Polym.Preprints
、31巻(1)、89〜90頁(1990年);及びT.Biedron,R.Szymanski,P.Kubis
a 及びS.Penzcek,Makromol.Chem.,Macromol.Symp.、32巻、155頁(1990年
)]には、三フッ化ホウ素エーテラート及びグリコール開始剤を使用するプロピ
レンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合からのポリマーミクロ構造が、立
体因子と電子因子との相互関係によって決定され、立体因子が優勢で、第二級ヒ
ドロキシル基約55%及び第一級ヒドギロキシル基45%を有するコポリエーテルが
得られることが教示されている。更に、これらには、側鎖の電子効果の主な寄与
は、成長している鎖の第二級ヒドロキシル基の塩基度へのその影響であることが
教示されている。ブチレンオキシドは、メチル基に比較したエチル基のより大き
い立体効果のために、プロピレンオキシドが与えるよりも大きい量の第二級ヒド
ロキシルを与える。
先行技術には、以下に更に詳細に記載する本発明の新規なポリエ
ーテル化合物又はこの新規なポリエーテル化合物を得ることができる方法は開示
されていない。本発明によって提供されるポリエーテル化合物は、m単位の残基
(1)、n単位の残基(2)及びp単位の残基(3)[但し、m+n+pの合計
値は5〜70であり、n/(m+n+p)の値は 0.2〜0.4 の範囲内であり、即ち
、残基(2)は、残基(1)、(2)及び(3)の合計モル数の20〜40モル%を
構成し、n/(m+n)の値は0.25〜0.45の範囲内であり、そして残基(1)、
(2)及び(3)は構造式:
を有する]からなる。本発明の不飽和ポリエーテルは更に、末端基の少なくとも
98%が、構造式:
を有することを特徴とする。それで、末端ヒドロキシル基の少なくとも98%は、
第二級ヒドロキシル基ではなくて第一級ヒドロキシル基である。
このポリエーテル化合物は、界面活性剤及び公知のポリエーテルポリマーから
誘導される組成物に類似のその他の組成物の製造又は配合で使用することができ
る。この不飽和ポリエーテルは水素化して、例えば、成形性組成物に有用なポリ
エステル−エーテルの製造に使用することができる、対応する飽和ポリマーにす
ることができる。末端ヒドロキシル基の全て又は実質的に全てが第一級であるヒ
ドロキシル末端ポリエーテルは、一層反応性であり、それで末端ヒドロキシル基
のかなりの部分が第二級ヒドロキシル基である類似のヒドロキシル末端ポリエー
テルと比較したとき優れた生成物を生成
することが知られている。例えば、Wolfe,Rubber Chemistry and Technology、
50巻(4)、688〜703 頁(1977年9月/10月)には、約1000の数平均分子量を
有するポリ(プロピレングリコール)とテレフタル酸ジメチル及び1,4−ブタ
ンジオールとのチタン酸エステル触媒溶融縮合重合によって、同様の分子量を有
するポリ(テトラメチレングリコール)及びポリ(エチレングリコール)を使用
して製造したコポリエステル/エーテルに比較して低いインヘレント粘度及び劣
った性質を有するコポリエステル−エーテルが得られることが教示されている。
この低いインヘレント粘度及び劣った性質は、ポリ(プロピレングリコール)の
比較的高い第二級ヒドロキシル基含有量に起因する。Wolfe はまた、10〜20重量
%のエチレンオキシドで末端閉鎖したポリ(プロピレングリコール)を使用する
ことによっては、インヘレント粘度に於ける最低限の改良しか実現できないので
、この問題は克服されないことを開示している。形成された第一級ヒドロキシル
の高い反応性のために、第一級ヒドロキシル含有量を増加させるために第二級末
端ヒドロキシル基を有するポリエーテルをエチレンオキシドで末端封鎖すること
は典型的に、部分的に成功するのみである。例えば65%より多い大部分の第一級
ヒドロキシル末端基を達成するために、大量のエチレンオキシドが必要であり、
これにより普通、長いエチレンブロックの随伴する形成が得られ、得られるポリ
エーテルの疎水性が低下するようになり、それ故、縮合ポリマーの製造に於ける
ポリエーテルの有用性が制限される。本発明のポリエーテルポリマーによって与
えられた第一級末端ヒドロキシル基の高い含有量によって、ポリエーテルが一層
反応性になり、従って一般的に縮合反応のために一層有用になる。
ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールは、Hytrelポリマーのような高性
能縮合ポリマー及びLycra スパンデックスポリマーの
ようなポリウレタンエーテルの製造のための工業的標準物質である。価格及び性
能の目的のためにプロピレンオキシド及びブチレンオキシドのような置換オキシ
ランを含有させるための努力は、第二級ヒドロキシル基の増加した濃度を与える
。本発明のポリエーテルは、エチレンオキシド又はオキセタンを含有させること
なくこの困難性を克服する。本発明のポリエーテルは、ポリ(テトラメチレンエ
ーテル)グリコールに比較して疎水性の増大及び熱安定性の低下を有すると予想
される、テトラヒドロフランとブチレンオキシドとのエトキシル化コポリエーテ
ルとは基本的に異なっている。
上記のポリエーテル化合物を製造するために使用される方法は、3,4−エポ
キシ−1−ブテンを、触媒量の強プロトン酸、テトラヒドロフラン及び求核性開
始剤化合物の存在下で重合させて、本発明のポリエーテル化合物を得ることを含
む。重合機構には、酸触媒が中和又は他の方法で不活性にされないと言う条件で
、リビング重合が含まれているので、3,4−エポキシ−1−ブテンモノマーの
段階的付加によってポリマー分子量に於ける段階的増加が与えられ、モノマーの
開始剤に対する化学量論によって分子量調節が容易に達成される。広範囲の種々
の分子量を得ることができるが、分子量は一般的に、ポリマー中間体として使用
するために 500〜3000の分子量を有するポリマーを与えるように制御される。
この重合方法は、コモノマー及びプロセス溶媒の両方として機能するテトラヒ
ドロフランの存在下で行われる。使用することができるテトラヒドロフランの量
は、反応溶液の5〜95重量%の範囲である。テトラヒドロフランは溶媒及びコモ
ノマーの両方として機能するが、少量のみのテトラヒドロフランがポリエーテル
中に含有され、比較的低い装入量でもテトラヒドロフランは重合が完結した後で
も反応媒体中に存在する。テトラヒドロフランの含有によって、残
基(3)に上昇が与えられ、p/(m+n+p)の値は普通0.25より小さく、典
型的に 0.1である。比較例1には、プロセス溶媒として(テトラヒドロフランで
はなく)塩化メチレンを使用すると、典型的に0.20であるn/(m+n)の低い
値が得られることが示されている。重合混合物中にテトラヒドロフランが含有す
ると、二つの有利な結果、即ち(i)n/(m+n)の値が予想されるものより
も高いこと及び(ii)n/(m+n)の値が広範囲の分子量に亘ってほぼ一定の
ままであることがもたらされる。これらの結果は顕著な潜在的有利性を提供する
。例えば、残基(1)の含有量の減少及びその結果である残基(2)及び(3)
の含有量の増加によって、水素化の際に、残基(3)の含有量に於ける随伴する
増加と共に、非常に含有量の減少した構造式:
の残基を有するポリエーテルが得られる。このような飽和ポリエーテル物質は、
例えば、熱安定性の改良のような改良された性質を有する。更に、種々の分子量
で実質的に同じ組成物を製造する能力が潜在的ユーザーにとって望ましく、テト
ラヒドロフランを使用することは、残基(1)の含有量が関心事の分子量の範囲
に亘って一層安定であるために、特に有利である。更に、不飽和ポリエーテルの
変色は、重合をテトラヒドロフランの存在下で行うとき一層容易に制御される。
重合の間にテトラヒドロフランを存在させることにより、より良い混合及び熱移
動の改良をもたらす粘度低下を生じる。テトラヒドロフランの不存在下で行う反
応(比較例3参照)とは反対に、テトラヒドロフランの存在によって、例えば、
例5に示されるようなn/(m+n)の比によって示されるように一層一定の組
成物が得られる。
比較例2には、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを開始剤として使
用するとき、残基(2)の形成のための選択性は改良されず、n/(m+n)の
値は0.21と同じ低い値のままである。それで、テトラヒドロフランが存在し、ポ
リ(テトラメチレンエーテル)が存在しないことは、3,4−エポキシ−1−ブ
テンの重合に於ける前記の利点の原因である。本発明のポリエーテル及び方法は
、(i)本発明のポリエーテルが本質的に末端第一級ヒドロキシル基のみを含有
し、(ii)本発明の方法は、非常に大過剰のテトラヒドロフランを使用するにも
拘わらず、ポリエーテル中に少量のみのテトラヒドロフランが含有される結果に
なり、(iii)本発明の方法に於いて、テトラヒドロフランが残基(2)に有利
である3,4−エポキシ−1−ブテンの重合の立体選択性への溶媒効果を示し、
そして(iv)テトラヒドロフランが、ポリエーテルへの3,4−エポキシ−1−
ブテンの転化の速度を低下させる溶媒効果を示す点で、Kubisa他により開示され
たテトラヒドロフランとオキシランとから誘導されたコポリエーテルとは異なる
。
開始剤化合物は、公開国際 PCT出願 WO 89/02883 に開示されているヒドロキ
シル化合物のような種々の求核剤から選択することができる。開始剤化合物は好
ましくは、アルコール、ポリオール、即ち2〜6個のヒドロキシル基を含有する
ポリヒドロキシル化合物並びにヒドロキシル末端ポリエーテル及びポリエステル
ポリマーのようなヒドロキシル末端ポリマーなど、種々の有機ヒドロキシル化合
物から選択される。開始剤としてアルコールを使用するとき、得られるポリマー
生成物は、主鎖の一端にヒドロキシル基(末端ヒドロキシル基)を有し、それで
ポリマー性アルコールである。このポリマー鎖の他の端部は、アルコール開始剤
の残基、例えば、式−O−R1(但し、R1はアルコールの残基、好ましくは炭素
数20以下の
アルキル基である)を有する残基で停止している。ポリヒドロキシル化合物を開
始剤として使用するとき、ポリマーは開始剤の少なくとも2個のヒドロキシル基
から成長し、続いて得られるポリマーはポリヒドロキシルポリマーである。ポリ
ヒドロキシ開始剤の残基は、式−O−R2−(但し、R2はポリヒドロキシ開始剤
の残基である)によって表すことができる。
適当なアルコールには、直鎖又は分枝鎖の脂肪族、脂環式又は芳香族であって
よい低分子量有機アルコール及びポリマー性アルコールが含まれる。第二級アル
コール又は第三級アルコールを使用することができるが、第一級アルコールが好
ましい。幾つかの典型型に有用なアルコール開始剤には、メチルアルコール、エ
チルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘ
キシルアルコール、n−デシルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアル
コール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、ノニルフェノー
ル、クレゾール等が含まれる。典型的に有用なグリコール開始剤には、エチレン
グリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−
ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4
−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジ
メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタ
ンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、
1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、ヒド
ロキノン及びレゾルシノールのようなベンゼンジオール等が含まれる。典型的に
有用なポリマー性アルコール及びグリコールには、ポリエチレングリコール、ポ
リエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプ
ロピレングリコールモノブチルエーテル
、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール等が含まれる。低分子量ヒドロキ
シル末端ポリエステルはまた、ヒドロキシル開始剤化合物として機能し得る。典
型的に有用なポリオールには、グリセリン、デンプン、スクロース、グリコース
、ペンタエリトリトール等が含まれる。水もまた開始剤として使用することがで
きる。水及び炭素数2〜6のジオール、即ちR2が炭素数2〜6のアルキレンで
あるものが、好ましい開始剤を構成する。
本明細書に記載した新規なポリエーテルの製造で使用される触媒は、強プロト
ン酸でなくてはならず、液状であるか又は固体樹脂中に導入若しくは含有させる
ことができる。この酸性触媒は、ルイス酸と水、アルコール又は弱プロトン酸と
の混合物から誘導することができる。適当な酸触媒には、テトラフルオロホウ酸
、過塩素酸、強酸性イオン交換樹脂(例えば、アンバーリスト樹脂)並びに炭素
数6以下のペルフルオロアルカンスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスル
ホン酸)、フルオロスルホン酸及びペルフロオロスルホン酸ポリマー(例えば、
ナフィオン樹脂)のようなフルオロスルホン酸類等が含まれる。フルオロスルホ
ン酸ポリマーの例は、Aldrich(カタログ番号30,938〜9)から入手できるナフィ
オン(商標)NR-50(E.I.du Pont de Nemours & Co.(商標))である。最も有
効で、それで好ましい触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸のようなペルフル
オロアルカンスルホン酸及び特に、デラウエア州RocklandのC.G.Processingか
ら入手できる、60〜100 メッシュ(170〜250 ミクロンの平均直径を有する粒子)
に極低温粉砕したナフィオン NR-50ペルフルオロスルホン酸樹脂である。
使用することができる酸性触媒の量は、例えば、プロセス条件及び使用する特
別の強酸に実質的に依存して変化させることができる。プロセスの回分式操作に
於いて、使用する触媒の量は典型的に、
開始剤の当量基準で 0.5〜1.5 モル%の範囲内である。
前記特定したように、この重合反応はコモノマー反応剤及び溶媒の両方として
機能するテトラヒドロフランの存在下で行われる。所望により、重合反応は追加
の共溶媒、例えば、炭化水素、塩素化炭化水素等のような不活性有機溶媒の存在
下で実施することができる。このような溶媒の具体例には、ベンゼン、トルエン
、キシレン、ヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム等が含まれる。重合反応は
好ましくはこのような共溶媒の不存在下で行われる。
本発明の方法は、開始剤、触媒及び圧力の選択に依存して、0〜100 ℃の範囲
内の温度で行うことができる。20〜50℃の温度が好ましい。反応圧力はこの重合
反応の重要な側面ではなく、それでこの方法は典型的に環境圧力で行われる。し
かしながら、大気圧より適度に上又は下の圧力を使用することができる。
本発明の新規な方法の操作に於いて、主反応剤である3,4−エポキシ−1−
ブテンを、酸性触媒、テトラヒドロフラン及び求核性開始剤化合物の混合物に添
加する。3,4−エポキシ−1−ブテンは、全部を一度に又は非常にゆっくり又
は段階的に増量して、触媒と開始剤との混合物に添加することができる。反応熱
及び生成物分子量を制御するために、3,4−エポキシ−1−ブテンの遅い添加
が好ましい。重合は一般的にかなり迅速であり、反応は普通、3,4−エポキシ
−1−ブテンの添加速度、使用するテトラヒドロフランの量及び触媒活性に依存
して、3,4−エポキシ−1−ブテンモノマーの添加が終わった後、直ちに又は
添加が終わって16時間以内に、完結する。
本発明に於ける重合の好ましい態様では、開始剤として水又は1,4−ブタン
ジオール、触媒として60〜100 メッシュのナフィオン(商標)NR−50(E.I.de
Pont de Nemours & Co(商標))及び1
時間当たり1〜9当量の速度で添加される3,4−エポキシ−1−ブテンの量と
ほぼ等しいか又はこれよりも僅かに多い量のテトラヒドロフランを、急速に撹拌
し、冷却して反応温度を50℃より低く維持しながら使用する。
本発明のポリエーテルポリマーは、3,4−エポキシ−1−ブテン残基に加え
て、少量又は多量の求核性開始剤化合物の残基からなっていてよいことが、前記
の方法記載から明らかである。例えば、ポリマー性開始剤、例えば、ヒドロキシ
ル末端ポリオキシアルキレンポリマーを使用すると、3,4−エポキシ−1−ブ
テン残基の繰り返し単位の数は比較的少なく、ポリマーの3,4−エポキシ−1
−ブテン残基含有量は10重量%より小さいであろう。他方、使用する開始剤がメ
タノール、エチレングリコール又は水のような低分子量化合物であると、3,4
−エポキシ−1−ブテン残基はポリマーの99重量%よりも多く構成するであろう
。ポリマーは典型的に少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の3
,4−エポキシ−1−ブテン及びテトラヒドロフラン残基からなる。開始剤化合
物の残基は典型的に、ポリエーテルポリマーの全重量の少なくとも1重量%(水
が開始剤であるときは少なくとも 0.5重量%)を構成する。
本発明者等の新規なポリエーテルポリマーは好ましくは、m単位の残基(1)
、n単位の残基(2)及びp単位の残基(3)[但し、m+n+pの合計値は10
〜40であり、n/(m+n+p)の値は 0.3〜0.4 の範囲内であり、即ち、残基
(2)は、残基(1)、(2)及び(3)の合計モル数の30〜40モル%を構成し
、n/(m+n)の値は0.35〜0.45の範囲内であり、そしてp/(m+n+p)
の値は0.15より小さく、即ち、残基(3)は、残基(1)、(2)及び(3)の
合計モル数の15モル%より小さく構成する]からなる
。このポリマーは更に、末端基の少なくとも99%が、構造式:
を有することを特徴とする。本発明のポリエーテルの NMR分析によって、どのよ
うな第二級末端ヒドロキシル基も検出できなかった。第一級ヒドロキシル基(そ
してポリマー)は、一般的に縮合重合のために一層反応性である。このポリエー
テルポリマーは通常、4より小さい、好ましくは1〜2の範囲内の多分散度値を
有する。好ましいポリエーテルには、ポリエーテルポリマーの重量基準で5〜20
重量%のヒドロキシル開始剤残基、好ましくは、式HO−R2−OH(但し、R2は炭
素数2〜6のアルキレンである)を有するジオールから誘導される式−O−R2
−を有する残基が含まれる。
本発明の新規なポリエーテルポリマーの製造及びその方法の操作を、下記の例
によって更に示す。プロトン NMRスペクトルは、内部標準物質としてテトラメチ
ルシランを含有する重水素化クロロホルムに溶解した試料で、300MHz NMR分光器
で得た。n/(m+n+p)の値は、残基(1)、(2)及び(3)の積分プロ
トン NMR吸収の比較によって決定した。数平均分子量(Mn)及び多分散度値(Mw
/Mn)は、4本の10mm PL ゲル混合床カラムを使用しテトラヒドロフラン中での
屈折率検出を有するサイズ排除クロマトグラフィーを使用して決定し、分子量分
布の狭いポリスチレン標準物質を使用して較正する。ヒドロキシル数は、試料と
無水酢酸との反応によって形成される酢酸の滴定から決定する。実施例1
窒素雰囲気、磁気撹拌棒及びサーモカップルを取り付けた50mLの反応フラスコ
に、ナフィオン NR-50樹脂(H-型、1100EW、60〜10
0 メッシュ)0.10g(0.091ミリ当量)、水0.18g(0.010モル)及びテトラヒドロフ
ラン0.94g(0.013モル)を入れる。撹拌し、氷−水浴で冷却しながら、約 1.5時
間かけて、3,4−エポキシ−1−ブテン(蒸留物、13.6g、0.194モル)を滴
下により添加する。反応混合物を濾過して触媒を除去し、減圧を使用し40℃で濾
液を濃縮して、約0.25のn/(m+n)の値、約18のm+n+pの値、約0.24の
n/(m+n+p)の値及び約0.06のp/(m+n+p)の値を有する透明で無
色の油状物13gを得る。実施例2
窒素雰囲気、磁気撹拌棒及びサーモカップルを取り付けた50mLの反応フラスコ
に、ナフィオン1100 EW樹脂(H+型、60〜100 メッシュ)0.10g(0.091ミリ当量
)、水0.18g(0.010モル)及びテトラヒドロフラン8.71g(0.121モル)を入れる。
撹拌しながら、約 1.5時間かけて、35〜40℃の反応温度を与えながら、3,4−
エポキシ−1−ブテン(蒸留物、7.79g、0.111モル)を滴下により添加する。
反応混合物を濾過して触媒を除去する。減圧を使用し40℃で濾液を濃縮して、約
0.42のn/(m+n)の値、約16のm+n+pの値、約0.33のn/(m+n+p
)の値、約0.24のp/(m+n+p)の値並びにMn=1100及びMw/Mn=2.51を有
する透明で無色の油状物8.06gを得る。実施例3
窒素雰囲気、磁気撹拌棒及びサーモカップルを取り付けた50mLの反応フラスコ
に、ナフィオン 1100 EW樹脂(H+型、60〜100 メッシュ)0.10g(0.091ミリ当
量)、水0.18g(0.010モル)及びテトラヒドロフラン10.0g(0.139モル)を入れる
。反応フラスコを氷−水浴で冷却し、撹拌しながら約 1.5時間かけて、5〜10℃
の反応温度を与えながら、3,4−エポキシ−1−ブテン(蒸留物)14.0g(0
.200モル)を滴下により添加する。反応混合物を濾過して触媒を除去し、減圧下
に40℃で濾液を濃縮して、約0.42のn/(m+n)の値、約19のm+n+pの値
、約0.37のn/(m+n+p)の値及び約0.11のp/(m+n+p)の値を有す
る透明で無色の油状物14.6gを得る。実施例4
窒素入口、還流凝縮器及び磁気撹拌棒を取り付けた250mLのフラスコに、テト
ラヒドロフラン 100mL、エチレングリコール 6.2g(0.10モル)及び3,4−エ
ポキシ−1−ブテン28g(0.40モル)を入れた。フラスコを氷−水浴で冷却し、
溶液を撹拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸2滴を添加し、溶液を
撹拌し、24時間かけて室温にまで加温した。トリエチルアミン約5滴を添加して
触媒を中和し、溶液を減圧下で蒸発させ、真空下で一夜保持して、約0.42のn/
(m+n)の値、約0.38のn/(m+n+p)の値及び約0.10のp/(m+n+
p)の値を有する薄黄色のシロップ状物38.0gを得た。比較例1
窒素雰囲気、磁気撹拌棒及びサーモカップルを取り付けた50mLの反応フラスコ
に、ナフィオン 1100 EW樹脂(H+型、60〜100 メッシュ)0.10g(0.091ミリ当
量)及び水0.18g(0.010モル)を入れる。3,4−エポキシ−1−ブテン(蒸留物
、13.6g、0.194モル)をこの触媒/水混合物に、撹拌し、氷浴で冷却しながら
約 1.5時間かけて、滴下により添加する。塩化メチレン(10mL)を添加し、混合
物を濾過して触媒を除去する。減圧を使用し、40℃で濾液を濃縮して、約16のm
+nの値及び約0.20のn/(m+n)の値を有する透明で無色の油状物10gを得
る。比較例2
窒素雰囲気、磁気撹拌棒及びサーモカップルを取り付けた50mLの反応フラスコ
に、ナフィオン 1100 EW樹脂(H+型、60〜100 メッシュ)0.10g(0.091ミリ当
量)及び250の数平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール
0.18g(0.010モル)を入れる。撹拌し、氷−水浴で冷却しながら、約 1.5時間か
けて、3,4−エポキシ−1−ブテン(蒸留物、13.6g、0.194モル)を滴下に
より添加する。塩化メチレン(10mL)を添加し、混合物を濾過して触媒を除去す
る。減圧を使用し40℃で濾液を濃縮して、約18のm+nの値、約0.21のn/(m
+n)の値、約31のm+n+pの値、約0.12のn/(m+n+p)の値及び約0.
43のp/(m+n+p)の値(但し、残基(3)のp繰り返し単位は、ポリ(テ
トラメチレンエーテル)グリコール開始剤から誘導される)を有する透明で無色
の油状物 5.8gを得る。実施例5
螺旋状櫂を有するステンレススチール製撹拌棒、ステンレススチール製冷却コ
イル及びサーモカップルを取り付けた1リットルの反応器にアルゴンを流し、次
いで水(6.48g、0.36モル)、ナフィオン 1100 EW樹脂(9.0g、9.09ミリ当量、
H+型、60〜100 メッシュ)及びテトラヒドロフラン(30mL)を順番に入れる。冷
却コイルを通して循環させた氷及び冷水(5〜10℃)で、反応器を冷却する。3
,4−エポキシ−1−ブテン(蒸留物、490g、6.99モル)を、約11〜18℃の反
応温度を与えながら、注射器により約 100g/時の速度で添加する。3,4−エ
ポキシ−1−ブテンの添加の間に、反応混合物の試料を定期的に採取し、n/(
m+n)、n/(m+n+p)、p/(m+n+p)及びm+n+pの決定のた
めにプロトン NMRにより分析する。試料は、全部で 140g(試料1)、210g(
試料2)、280g(試料3)、350g(試料4)、420g(試料
5)及び 490g(試料6)の3,4−エポキシ−1−ブテンを反応混合物に添加
した後で採取する。n/(m+n)、n/(m+n+p)、p/(m+n+p)
及びm+n+pの値を、表Iに記載する。
比較例3
テトラヒドロフランを使用しない以外は、実施例5の方法を実質的に記載通り
繰り返す。n/(m+n)及びm+nの値を、実施例5に記載したようにして採
取した試料から決定する。これらの値を表IIに示す。
実施例6
400mLのテトラヒドロフランを使用し、全部で 140g、280g、350g及び 490
gの3,4−エポキシ−1−ブテンを添加した後に試料を採取する以外は、実施
例5の方法を繰り返す。n/(m+n)、n/(m+n+p)、p/(m+n+
p)及びm+n+pの値を、表IIIに示す。
前記のように、本発明によって提供される不飽和ポリエーテルポリマーは、水
素化して、構造式:
を有する残基の繰り返し単位からなる相当する飽和ポリマーにすることができる
。この飽和ポリエーテルは、例えば、成形組成物で有用であるポリエステル−エ
ーテルの製造に使用することができる。下記の例は、使用することができる典型
的な水素化方法を示す。実施例7
実施例1で製造した不飽和ポリエーテルグリコール(10.0g)、ラネーニッケ
ル(1.0g、メタノールで予備洗浄した)及びメタノール(100mL)を、磁気撹拌棒を
取り付けた1リットルのオートクレーブに入れる。オートクレーブを窒素でパー
ジし、500psig水素で加圧し、次いで撹拌しながら80℃に加熱する。反応混合物
を80℃及び 500psigで20時間撹拌する。冷却した後、圧力を解放し、反応混合
物を取り出し、濾過し、メタノールを蒸発させることによって濃縮して、m繰り
返し単位の残基(4)及びp繰り返し単位の残基(3)(但し、m+pの値は約
18であり、p/(m+p)の値は約0.30である)からなる透明で無色の油状物 4
.0gを得る。実施例8
実施例2で製造した不飽和ポリエーテルグリコール(5.0g)、ラネーニッケル(
0.5g、メタノールで予備洗浄した)及びメタノール(100mL)を、磁気撹拌棒を取
り付けた1リットルのオートクレーブに入れる。オートクレーブを窒素でパージ
し、500psig水素で加圧し、次いで撹拌しながら80℃に加熱する。反応混合物を8
0℃及び500psigで20時間撹拌する。冷却した後、圧力を解放し、反応混合物を取
り出し、濾過し、メタノールを蒸発させることによって濃縮して、m繰り返し単
位の残基(4)及びp繰り返し単位の残基(3)(但し、m+pの値は約16であ
り、p/(m+p)の値は約0.59である)からなる透明で無色の油状物 4.0gを
得る。実施例9
実施例3で製造した不飽和ポリエーテルグリコール(10g)、ラネーニッケル
(1.0g、メタノールで予備洗浄した)及びメタノール(100mL)を、磁気撹拌棒を取
り付けた1リットルのオートクレーブに入れる。オートクレーブを窒素でパージ
し、500psig水素で加圧し、次いで撹拌しながら80℃に加熱する。反応混合物を8
0℃及び500psigで20時間撹拌する。冷却した後、圧力を解放し、反応混合物を取
り出し、濾過し、メタノールを蒸発させることによって濃縮して、m繰り返し単
位の残基(4)及びp繰り返し単位の残基(3)(但し、m+pの値は約19であ
り、p/(m+p)の値は約0.48である)からなる透明で無色の油状物 9.0gを
得る。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ハイアット,ジョン アンソニー
アメリカ合衆国,テネシー 37663,キン
グスポート,フォレスト ヒルズ ドライ
ブ 439