【発明の詳細な説明】
アミロイドβ-タンパク質前駆体(APP)プロモーター
からの転写を調節する方法
本研究の一部は、本発明の進展中、NIHグラントAG11899、NS/AG30428-、およ
びCA42567下で、米国政府基金を利用して実施した。政府は、本発明において所
定の権利を有し得る。
発明の分野
本発明は、アミロイドβ-タンパク質前駆体(APP)プロモーターからの転写を調
節する方法に関する。
発明の背景
アミロイドβ-タンパク質前駆体(APP)は、高度に保存された膜内在性糖タンパ
ク質ファミリーのメンバーであり、現在、APPおよび2つのAPP様タンパク質(APL
P)(APLP1およびAPLP2)を含む(Wasco,W.ら、Genomics 15:237-239(1993);Wasco,
W.ら、Nat.Genet.5:95-100(1993))。APP様タンパク質は、マウス(Wasco,W.ら
、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10758-10762(1992);Slunt,H.ら、J.Biol.C
hem.269:2637-2644(1994))、ショウジョウバエ(Drosophila)(Rosen,D.ら、Pr
oc. Natl.Acad.Sci.USA 86:2478-2482(1989))、およびC.elegans(Daigle,I.
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:12045-12049(1993))においてもまた、同定
されている。しかし、APPのみが、アルツハイマー病患者の脳中の老人斑および
脳血管沈殿物において凝集する4kDaのAβペプチドを生じる(Masters,C.L.ら、
EMBO J.4:2757-2763(1985);Glenner,G.G.ら、Biochem.Biophys.Res.Comm
un.120:885-890(1984))。アミロイドプラークにおけるAβペプチドの蓄積は、
正常な年配の個体の脳中でもある程度は起こるが、アルツハイマー病およびダウ
ン症候群患者では著しく増大されている(Masters,C.L.ら、Proc.Natl.Acad.S
ci. USA 82:4245-4249(1985))。ダウン症候群の患者における第21染色体上のAPP
遺
伝子の第3のコピーの存在およびそれに伴って起こるAPP mRNAレベルの増加(Tan
zi,R.E.ら、Science 235:880-884(1987);Rumble,B.ら、New Engl.J.Med.320
:1446-1452(1989))は、APP遺伝子の過剰発現がおそらくこれらの個体におけるア
ミロイド沈着を導くことを示唆している。APP転写調節の改変はおそらく、アル
ツハイマー病患者の脳の局所における同様な状況を導き得る。トランスジェニッ
クマウスを用いた実験は、APPの過剰発現が実際にアミロイド沈着を導くことを
示した(Quonら、Nature 352:239(1991);Wiracら、Science 252:323(1991))。
このAPP遺伝子のプロモーター領域の研究は、それが典型的なTATAボックスお
よびCAATボックスを欠如し、そしてハウスキーピング遺伝子に特徴的である多数
の転写開始部位を有していること(Salbaum,J.M.ら、EMBO J.7:2807-2813(1988)
)を示している。-94位と-35位との間に位置する1つ以上のエレメントが、HeLa
細胞中での遺伝子発現の8倍の増加を担っていることが報告されている(Pollwei
n,P.ら、Nucleic.Acids.Res.20:63-68(1992))。マウスAPPプロモーターの研
究は、2つの正の調節エレメントが-100位と-37位との間に位置していること、
およびこれらのエレメントの1つがマウスのSp1因子に結合することを示してい
る(Izumi,R.ら、Gene 112:189-195(1992))。「結合した」エレメント(この中で
は、AP-4部位は、重複するAP-1部位に続いている(AP-1/AP-4部位))は、およそ-4
5位に位置しており、そしてヒト、ラット、およびマウスプロモーター中では十
分に保存されている(Izumi,R.ら、Gene 112:189-195(1992);Chernak,J.M.、Gen
e 133:255-260(1993)。ラットAPPプロモーター中のAP-1/AP-4部位を含む領域の
欠如は、PC-12細胞中での転写活性を30%減少させる(Hoffman,P.W.ら、Biochem.
Biophys.Res.Commun.201:610-617(1994))。興味深いことに、APP mRNAレベ
ルが、レチノイン酸で誘導された未発達のP19細胞の分化の間に、劇的に変化す
ることが示されている(Fukuchi,K.ら、J.Neurochem.58:1863-1873(1992))。
APP遺伝子のAP-1/AP-4部位と相互作用する未同定因子の存在が種々の系で報告
されている。HeLa細胞においては、Sp1因子が上流のGCリッチな領域と相互作用
し、そしてAP-1/AP-4部位と相互作用する因子と結合を競合することが示されて
いる(Pollwein,P.ら、Nucleic.Acids.Res.20:63-68(1992);Pollwein,P.、Bi
ochem.Biophys.Res.Commun.190:637-647(1993))。ラットAPPプロモーター中
の保存されたAP-1/AP-4部位を含む領域への未知因子の結合が、PC-11細胞および
ラット脳中で起こることが報告されている(Hoffman,P.W.ら、Biochem.Biophys.
Res.Commun.201:610-617(1994))。最終的に、Quitshkeらは、上流のGCリッチ
な領域を欠如したDNAフラグメントを用いて、未知因子がY79細胞中でAPPプロモ
ーターのAP-1/AP-4部位に結合することを見出した(Quitschke,W.W.ら、J.Biol.
Chem.267:17362-17368(1992))。この因子は公知のAP-1またはAP-4転写因子と
関係があると考えられなかった。しかし、APPプロモーターのAP-1/AP-4部位に結
合する因子(単数または複数)の同定は、未だ文献には出ていない。APP遺伝子の
転写調節に関わる因子の同定は、アミロイド沈着の形成へと導く事象に関わる重
要な手がかりを提供する。
発明の要旨
本発明は、アミロイドβ-タンパク質前駆体(APP)プロモーターからの転写を調
節する方法を提供する。上流刺激因子(USF)は、APPプロモーター中のAP-1/AP-4
部位に特異的に結合する核因子として同定されている。本発明者らは、USFがAPP
プロモーターに結合するばかりでなく、転写もまた活性化することを発見した。
従って、本発明は、APPプロモーターからの転写を活性化する方法を提供する。
本発明は、APPプロモーターに天然にまたは組換え的に生産されたUSFのいずれか
を結合させることによって転写を活性化させることを包含する。
本発明はまた、APPプロモーターからの転写を検出する方法を提供する。検出
方法は、「融合」レポータータンパク質の発現またはmRNA転写物のプライマー伸
長分析のいずれかを含み得る。本発明では、好ましくはルシフェラーゼレポータ
ータンパク質が転写物の検出に用いられる。
本発明はさらに、APPプロモーターからの転写をダウンレギュレートする方法
を提供する。本方法は、USF転写アクチベーターを、APPプロモーター中のAP-1/A
P-4部位へのUSF結合を妨害し得るUSF結合化合物と接触させる工程を包含する。
本発明では、存在するUSFおよびUSF結合化合物の相対的な量に依存して、APPプ
ロモーターからの転写は所望されるように調節され得る。APPプロモーターから
の転写をダウンレギュレートし得るUSF結合化合物の候補として、ポリクローナ
ルおよびモノクローナル抗USF抗体、Eボックスエレメントを含む核酸配列、お
よびヘリックス-ループ-ヘリックス(HLH)転写因子ファミリーのメンバーが挙げ
られる。好ましいUSF結合化合物は、APP自身、ならびにアミロイド前駆体様タン
パク質のAPLP1およびAPLP2である。これらの化合物のそれぞれが、APPプロモー
ターからの転写をダウンレギュレートし得る。
本発明はさらに、USF結合化合物がAPPプロモーターからの転写をダウンレギュ
レートし得ることを決定するためのスクリーニングアッセイを提供する。本方法
は、宿主細胞に、レポータータンパク質をコードする遺伝子に作動可能に連結し
たAPPプロモーターを含む組換え構築物をトランスフェクトする工程;宿主細胞
に、USFタンパク質を発現し得る組換え構築物をトランスフェクトする工程;APP
プロモーターへのUSF結合によって活性化されたレポータータンパク質の発現を
測定する工程;宿主細胞に、USF結合化合物の候補を含むかまたは発現し得る組
換え構築物をトランスフェクトする工程;そしてレポータータンパク質発現の減
少が、APPプロモーターへのUSF結合を妨害するUSF結合化合物によって引き起こ
されるかどうかを測定する工程、を包含する。
図面の簡単な説明
図1A-B。AP-1/AP-4部位におけるDNA-タンパク質相互作用。(A)APPプロモータ
ー近位領域の概略図。DK-1フラグメントのおおよその位置およびDK-1フラグメン
ト内の重複するAP-1/AP-4部位の位置が示される。(B)EMSAをH4核抽出物を用いて
DK-1フラグメントで実施した。競合を、増加する量(0〜50倍)の未標識DNAフラ
グメントを用いて実施した。コールド:DK-1フラグメント。
図2。AP-1およびAP-4コンセンサスエレメントならびにc-fos mAbを用いた競
合アッセイ。EMSAを増加する量(0〜50倍)の競合剤を用いて実施した。コールド
:DK-1フラグメント。
図3。USFコア配列を用いた競合アッセイ。増加する量(0〜50倍)のコールドU
SFフラグメントを有する標識DK-1フラグメント、または増加する量(0〜50倍)の
コールドDK-1フラグメントを有する標識USFフラグメントを使用したEMSA。
図4A-B。AP-1/AP-4部位上のタンパク質複合体に結合する抗USF抗血清。(A)43
kDaの形態のUSFに対して惹起した抗血清を用いた、ウエスタンブロット分析によ
るH4細胞から得た核抽出物中のUSFの検出。H4:40μgのH4細胞由来核抽出物。rU
SF:100ngの組換え43kDa USF。(B)USF抗血清を用いた競合アッセイ:標識DK-1フ
ラグメント、または標識AP-1フラグメントのいずれかを用いた、増加する量の抗
USF抗血清存在下でのEMSA。
図5。組換えUSFとAP-1/AP-4部位との間の相互作用。70〜700pgのrUSFおよび
標識DK-1フラグメントを用いたEMSA。増加する量(0〜50倍)のコールドのDK-1フ
ラグメント、またはAP-1/AP-4ランダムフラグメントのいずれかの存在下で、rUS
Fを用いたEMSA。
図6A-C。EMSAおよびHeLa抽出物を用いたAPPプロモーターからの無細胞転写。
(A)HeLa細胞核抽出物を用いたシフトパターンを示すEMSA。H4:1μg H4核抽出物
、rUSF:700pg rUSF。HeLa:1μg HeLa細胞核抽出物。(B)同じオリゴヌクレオチ
ドを用いた、プライマー伸長およびその構築物の配列決定産物との比較による、
hAPP-ルシフェラーゼ構築物のインビトロ転写産物の5'末端の決定。主要な転写
開始部位は、矢印で示される。(C)競合するDNAフラグメントの存在下でのインビ
トロ転写。1μgのhAPP-ルシフェラーゼおよび0.5μgのpMLΔ53(CA2T)テンプレ
ートを20倍モル過剰量のUSFフラグメントまたはAP-1/AP-4ランダムフラグメント
の非存在下および存在下でインキュベートした。
図7。無細胞転写アッセイにおけるUSFによるAPPプロモーターのトランス活性
化。10ngおよび100ng rUSFの非存在下および存在下で、1.5μgのhAPP-ルシフェ
ラーゼおよび1μgのpMLΔ53(CA2T)テンプレートを用いたインビトロ転写アッセ
イ。
図8。H4神経膠腫細胞を以下の3つの構築物でコトランスフェクトした:APP
プロモーター-ルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物、USF発現ベクターまたは
そのコントロールプラスミド、およびAPP/APLPファミリー発現ベクターまたはそ
れらのコントロールプラスミド。APPプロモーターからの発現に及ぼす影響が図
で示されている。
図9。マウスAPLP1オープンリーディングフレームおよび種々のcDNAクローン
の関係の概略図。2361塩基対のAPLP1cDNAのオープンリーディングフレームおよ
び非コード領域が示されている。また、11ライブラリー中に見出された2つの代
表的なcDNAクローンである69Aおよび1Aの相対的な位置が示されており、1つの
クローンはRACE手順、Jによって得られた。制限酵素部位:E=EcoRI、P=Pst
I。
図10。APLP1 cDNAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列。APLP1の合成ヌク
レオチド配列(配列番号15)および推定アミノ酸配列(配列番号16)が示されている
。推定される膜貫通領域は、下線が引かれている。RACE手順に使用されたプライ
マーの位置は、ヌクレオチド配列の上に矢印の線で示されている。抗血清の生産
に用いられたペプチド配列の位置には、二重の下線が引かれている。予想される
N-グリコシル化部位は、ねじれた線を用いて下線が引かれおり、そして潜在的
なチロシンリン酸化部位を取り囲む領域は、点による下線が引かれている。ポリ
アデニル化シグナルは太字のタイプにより示され、そして停止コドンはアスタリ
スクにより示される。
図11。APLP1(配列番号17)およびAPP(配列番号18)のアミノ酸配列の比較。マウ
スAPLP1およびヒトAPP695のUWGCGベストフィット(Bestfit)分析が示されている(
Chenら、J.Biol.Ckem.265:3116-3123(1990))。同一のものは、2つのアミノ
酸間の垂直な線によって示されている。類似のものは1つの点または2つの点に
よって示されている。ベストフィットアラインメントによって生じたギャップは
配列中に点によって示されている。βA4タンパク質配列は、APP配列中に下線が
引かれている。同一のものは、3つの領域に集中している:APLPアミノ酸21〜21
1、316〜488、および609〜654。
図12。相同性のドメイン。マウスアミロイド前駆体様タンパク質(APLP1)のア
ミノ酸配列領域(配列番号19、22、25)、ヒトアミロイド前駆体タンパク質APPの
アミノ酸配列領域(配列番号20、23、26)、ショウジョウバエアミロイド前駆体様
タンパク質(APPL1)のアミノ酸配列領域(配列番号21、24、27)、およびラット精
巣cDNA(精巣)のアミノ酸配列領域(配列番号28)が比較される。このドメイン中の
全配列中で同一のアミノ酸は、太字の大文字として示され、そしてその配列の上
の垂線(|)の存在により同定される。1つより多い配列中の同じアミノ酸は大文
字で示され、そしてその配列の上に点(°)を有している。他のいずれとも同じ
ではないアミノ酸は、小文字で示される。保存されているシステインは、配列の
下のキャレットの存在により同定される。特に保存されているアミノ酸の領域に
は下線が引かれている。N-グリコシル化シグナルは二重の下線により同定され
る。停止コドンはアスタリスクにより示され、そしてその配列のアミノ酸番号は
各列の初めに示される。
図13。マウス脳および神経芽腫RNAのノーザンブロット。神経芽腫(レーン1)
およびマウス脳(レーン2)由来のポリA+RNA(10μg)を、材料および方法に記載
のようにホルムアルデヒドを含むアガロースゲル上で分離し、そしてナイロンに
移した。そのブロットを図10(配列番号15)に示したヌクレオチド配列のヌクレオ
チド1482〜1995に対応するDNAでプローブ化した。ハイブリダイズしているメッ
セージのサイズがkbで示されている。
図14A-C。抗血清301(実施例を参照のこと)を用いたウェスタンブロット。マウ
スの脳および神経芽腫タンパク質を、材料および方法に記載のように7.5%PAGE
により分離した。
(A)マウスの脳タンパク質を、1:100の希釈の抗血清301または免疫前の血清
でプローブ化した。抗血清301の65kDaおよび33kDaタンパク質への結合は、ウサ
ギの免疫化に用いられた増加する量のペプチドQQLRELQRH(配列番号1)の存在に
よって阻害される。ペプチドを含まない免疫前の血清(レーン1);ペプチドを含
まない免疫血清(レーン2);5ng/mlのペプチドを予め吸収させた免疫血清(レー
ン3);50ng/mlのペプチドを予め吸収させた免疫血清(レーン4);500ng/mlのペ
プチドを予め吸収させた免疫血清(レーン5)。500ngの無関係な酵母β-チューブ
リンペプチドを予め吸収させたものは結合に何の影響も有しなかった(レーン6)
。
(B)神経芽腫細胞抽出物を免疫前の血清(レーン1)および抗血清301(レーン2)
でプローブ化した。両血清は1:100の希釈で用いられた。
(C)抗ペプチド(QQLRELQRH)(配列番号1)抗血清は、β-ガラクトシダーゼ-APLP
1融合タンパク質を認識する。細菌で産生されたタンパク質のウエスタンブロッ
ト。レーン1〜3はウサギ301由来の免疫前の血清で染色された。レーン4〜6
は免疫血清で染色された。レーン1および4:APLP1エピトープの生産のために
、APLP1 cDNAフラグメントに不適切な方向に融合されたβガラクトシダーゼ遺伝
子
を有するプラスミドを含む誘導細胞(温度感受性誘導およびプロモーター)。レー
ン2および5:APLPのオープンリーディングフレームにインフレームに融合した
βガラクトシダーゼ遺伝子を有するプラスミドを含む非誘導細胞。レーン3およ
び6:誘導した以外はレーン2および5と同じ細胞。誘導細胞は42℃で増殖させ
た。非誘導細胞は30℃で増殖させた。矢じりは、免疫前の血清ではなく免疫血清
によって認識されたβ-ガラクトシダーゼ-APLP1融合タンパク質を示している。
そのタンパク質は、APLP1のオープンリーディングフレームの付加的な222残基の
挿入により、予想されたように、β-ガラクトシダーゼ単独よりも約24kDa大きい
図15A-E。抗血清301を用いたマウス神経芽腫細胞の免疫蛍光染色。細胞を、材
料および方法に記載のように1:10,000の希釈で抗血清301を用いて染色した。
パネル(A)は、抗血清301で染色された神経芽腫細胞を示す。パネル(B)は、より
高い倍率の抗血清301で染色した細胞を示しており、ここで網状のパターンは明
瞭である。この染色パターンは、公知のゴルジ酵素(マンノシダーゼII)に対する
抗体がこの細胞を染色するために用いられた場合(C)に見られたものと類似して
いる。核周辺の染色は、抗原として用いられたペプチドの添加によって競合され
(D)、そしてそれは免疫前の血清の存在下では見られない(E)。a、c、d、およ
びeにおける倍率は720倍であり、そしてbにおける倍率は950倍である。
図16。体細胞ハイブリッドパネルを用いたAPLP1位のマッピング。全てのハイ
ブリッドは、以前に記載されている(Brookら、Hum.Genet.87:65-72(1991);Cha
rtier-Harlinら、Nature 353:884-846(1991);およびGeisslerら、Cell Mol.Gen
et.17:197-214(1991))。各ヒト-齧歯細胞ハイブリッドに保有されている第19染
色体の部分が図示されている。そして代表的な細胞株の名称が上に示されている
。各ハイブリッド細胞株におけるAPLP1の存在(+)または非存在(-)が、示されて
いる。
図17。APLP2(配列番号29)アミノ酸配列とAPPアミノ酸配列(配列番号30)との比
較。ヒトAPLP2アミノ酸配列およびヒトAPP695(Kangら、Nature 325:733-736(198
7))のアラインメントをUWGCG GAP分析を用いて作成した。そのアラインメントに
よって生じたギャップは、その配列中に点によって示されている。SG190プロー
ブを作製するのに用いられた4つのPCRプライマーの位置は、アミノ酸配列上の
矢印によって示されている。12個の保存されたシステインはその配列の下にキャ
レット(^)によって示され、そして亜鉛結合モチーフは二重の下線によって示さ
れている。保存された酸性リッチな領域は、APLP2のアミノ酸216とアミノ酸278
との間に位置している。N-グリコシル化シグナルは下線が引かれ、選択的にス
プライスされたエキソンは上線が引かれ、推定膜貫通領域はイタリック体で示さ
れ、そしてクラスリン結合モチーフは太字により示されている。潜在的なリン酸
化部位は、配列の上の、#記号(プロテインキナーゼc)、記号(カゼインキナー
ゼIおよびII)、または°記号(チロシンキナーゼ)によって示されている。停止コ
ドンは、アスタリスクにより示されている。
図18。APP遺伝子ファミリーのメンバーのアミノ酸配列のアラインメント(配列
番号31〜33)。ヒトAPLP2配列、マウスAPLP1配列(Wascoら、Proc.Natl.Acad.S
ci.USA 89:10758-10762(1992))が、UWGCG PILEUPプログラムによって整列され
て示されている。同一ではないかまたは保存的に置換されたアミノ酸はダッシュ
によって示されている。アラインメントによって生じたアミノ酸配列中のギャッ
プは、点によって示されている。各タンパク質の推定開始メチオニンが示され、
そして停止コドンはアスタリスクによって示されている。
図19A-B。ヒトAPLP2遺伝子転写物の分布。ヒト胎児組織(A)またはヒト成体脳(
B)由来のRNAを単離し、分画し、ナイロン膜へ移し、そして以前に記載されたよ
うに(Tanziら、Science 235:880-884(1987))、放射標識したプローブでハイブリ
ダイズした。(A)BrighamおよびWomen's Hospitalの組織調査委員会(institution
al review board)によって承認されたプロトコル下で、中絶により得られた20〜
22週齢のヒト胎児組織由来のRNA(20μg)にハイブリダイズされたAPLP2のアミノ
酸327〜490(APLP2)または3'側の1.1kbのEcoRI APP cDNAフラグメント(FB63)に
対応するPCRフラグメントのハイブリダイゼーション。(B)APLP2 PCRフラグメン
トまたはFB63のヒト成体脳の小区域由来RNA(10μg)へのハイブリダイゼーション
:A10、前頭皮質;A17、線条皮質;A18、線条外皮質(extrastriate cortex);A2
0、21、側頭連合皮質;A4、運動皮質;視床VPL、視床外側腹側核;A40、後ペル
シルビアン皮質(posterior perisylvian cortex)-上縁回(supramarginal gurus)
;A44、前ペルシルビアン皮質(anterior perisylvian cortex)-弁蓋回(opercll
ar gurus)。パネルBの下に示したものは、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒド
ロゲナーゼのcDNA(G3PD)を用いたコントロールハイブリダイゼーションである。
2つのオートラジオグラムは、同じフィルターへの独立したハイブリダイゼーシ
ョン由来のものである。
図20。正常な脳およびダウン症候群の脳、成体の正常な小脳およびADAの小脳
、ならびに前頭皮質由来の全RNAへのAPLP2のノーザンブロット。APLP2のアミノ
酸327〜490およびFB63(APP)に対応するPCRで生成させたフラグメントを、19週の
正常な脳(N)およびダウン症候群の脳(DS)、成体の正常な小脳(N Cb)、ならびに
成体の正常な前頭皮質(N Fctx)およびAD前頭皮質(AD FCtx)由来の全RNA(25μg)
へハイブリダイズした。2つのオートラジオグラムは、同じフィルターへの独立
したハイブリダイゼーション由来のものである。
図21。APLP2オリゴヌクレオチドの非アイソトープ的なインサイチュ局在性。
A)APLP2に特異的な45マーを用いるインサイチュハイブリダイゼーション(図17中
のアミノ酸74〜88に対応する(配列番号29))は、CA1錐体ニューロンの染色を示す
。プローブを、3'ターミナルトランスフェラーゼを用いてビオチン-21-dUTPで末
端標識し、そしてアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ反応によって視覚化した
(Tanziら、Mol.Brain Res.:印刷中;Hymanら、Mol.Brain Res.:印刷中;Wasco
ら、Alzheimer's disease and related disorders 1992:精選された情報(印刷中
))。
B)APLP2の同じ領域の他の鎖に対応するネガティブコントロールの45マーは顕著
な染色を示さない。倍率=16×3。
発明の詳細な説明
本発明者らは、アミロイドβ-タンパク質前駆体(APP)プロモーターにおけるAP
-1/AP-4部位が、Eボックスエレメントを含有する回文配列を含有することを認
識する。Eボックス配列は、mycおよびMyo-Dを含有するヘリックス-ループ-ヘリ
ックス(HLH)転写因子ファミリーの結合部位であり、そして発生および細胞分化
の調節を包含する(Murre,C.ら、Cell 56:777-783(1989);Tapscott,S.J.ら、Sci
ence 242:405-411(1988))。
AP-1/AP-4エレメントと結合する因子を同定することにおいて、本発明者らは
、
哺乳動物アクチベーター候補物、上流刺激因子(USF)を調査した。この因子は、
インスリン遺伝子(Read,M.L.ら、Biochem.J.295:223-237(1993))、I型プラス
ミノーゲンアクチベーター阻害遺伝子(Riccio,A.ら、Mol.Cell Biol.12:1846-
1855(1992))、およびP53腫瘍サプレッサー遺伝子(Reisman,D.ら、Nucleic.Aci
ds.Res.21:345-350(1993)を含有する、アデノウイルス主後期プロモーターと相
互作用し、そしていくつかの細胞遺伝子プロモーター中のエレメントに対して相
互作用する。
本発明者らは、USFが、APPプロモーター内のAP-1/AP-4部位と特異的に結合す
ることを発見した。さらに、本発明者らは、USFが高められたAPP mRNAのレベル
を維持するために必要であり、そして組換えUSFはAPPプロモーターからの転写レ
ベルを高めることを発見した。このことは、外因性USFがAPPプロモーターを含有
する構築物に加えられる無細胞転写系において、そしてUSFをコードし、かつ発
現し得る構築物を伴ったAPPプロモーターを含有する宿主細胞をトランスフェク
トすることによって示される。従って、本発明は、外因的に添加または組換え的
に産生されたUSFのいずれかとともにAPPプロモーターに結合することによって、
APPプロモーターからの転写の調節することに関する。本方法は、天然またはrUS
FのいずれかとともにAPPプロモーター内のAP-1/AP-4部位との結合を包含し、そ
れによってプロモーターからの転写を活性化する。
天然または組換えUSFは容易に入手できる。天然USFは、Minerら、J.Neurosci
. Res.33:10(1992)に記載されるように核抽出物を調製することによってH4神経
膠腫細胞またはHeLa細胞より得られ得る。あるいは、43kDaの形態のUSFをコード
するcDNAをクローン化し、配列決定し、そして細菌で発現させた(Gregorら、Ge
nes.Dev.4:1730(1990))。組換え的に発現した43-kDa USFは、HeLa USFの同族
体DNA配列と区別不可能な様式でその同族体DNA配列と結合することが示された(
PognonecおよびRoeder、Molecular and Cellular Biology 11:5125(1991))。ト
ランスフェクトされる宿主細胞および得られた発現レベルに依存する、適切なDN
AまたはRNA発現ベクター中にUSFをコードする遺伝子をサブクローン化すること
は、当業者の能力の範囲内である。例えば、本発明者らは、レトロウイルスのベ
クター発現系中にUSF遺伝子をサブクローン化し、そして得られた構築物を用
いてH4神経膠腫細胞をトランスフェクトした。
調節配列、発現ベクター、および形質転換方法は、USF遺伝子を発現させるた
めに使用される宿主細胞の型に依存する。一般的に、原核生物、酵母、または哺
乳動物細胞が宿主として有用である。原核生物としては、種々のE.coli株が最も
頻繁に示される。しかし、バチルスのような他の微生物株、例えば、Bacillus s
ubtilis、様々な種のPseudomonas、または他の微生物株も利用され得る。このよ
うな原核生物の系において、宿主と適合可能な種由来の複製部位または調節配列
を含有するプラスミドまたはバクテリオファージを使用する。多くの原核生物の
ための広範なベクターが知られている(Maniatisら、(1982)Molecular Cloning
:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor
、NY;Sambrookら、Molecular Cloning(1989)Molucular Cloning:A Laboratory
Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY;
Methods of Enzymology 第68、100、101、152〜155巻、Academic Press、Orland
o(1979、1983、1987)。一般的に利用される原核生物の調節配列は、必要に応じ
てオペレーターを有し、リボゾーム結合部位配列を伴う転写開始のためのプロモ
ーターを含有し、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プ
ロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系およびλ由来のPLプロモー
ターならびにN-遺伝子リボゾーム結合部位のような一般的に使用されるプロモー
ターを包含する。それは、ポータブルコントロールカセット(portable contoro
l cassette)として利用可能である(米国特許第4,711,845号)。しかし、原核
生物と適合性のあるどのようなプロモーター系も利用し得る。
細菌に加えて、例えば、酵母のような真核微生物もまたUSF発現のための宿主
として使用可能である。他の株が一般的に用いられているにも関わらず、研究室
株のSaccharomyces cerevisiae、パン酵母(Baker's yeast)が最も使用される。
2ミクロン起点の複製を用いるベクターおよび酵母発現に適切な他のプラスミド
ベクターが公知である(Maniatisら、(1982)Molecular Cloning:A Laboratory
Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY;Sambrook
ら、Molecular Cloning(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第
2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY;Methods o
f Enzymology、第68、100、101、152〜155巻、Academic Press,Orlando(1979,1
983,1987);Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual.Elsevier、Am
sterdam(1987))。酵母ベクターの調節配列は、解糖酵素の合成のためのプロモ
ーターを含有する。当該分野で公知のさらなるプロモーターには、ホスホグリセ
リン酸キナーゼおよび他の解糖酵素(例えば、グリセルアルデヒド-3-リン酸デ
ヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフル
クトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ム
ターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコー
スイソメラーゼ、およびグルコキナーゼ)のプロモーターを含有する。生育条件
によって調節される転写のさらなる利点を持つ他のプロモーターは、アルコール
デヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連
する分解酵素、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用を伴う酵素のプロ
モーター領域である。ターミネター配列は、コード配列の3’末端であることが
望ましいと考えられる。このようなターミネーターは、酵母由来の遺伝子のコー
ド配列に続く3'非翻訳配列領域内に認められている。説明したベクターの多くは
、プラスミドpeno-46を含有するエノラーゼ遺伝子由来の調節配列またはYEp13よ
り得られたLEU2遺伝子を含有するが、しかし酵母適合性プロモーター、複製起点
およびその他の調節配列を含有する任意のベクターは、適切である(Maniatisら
、(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Labor
atory、Cold Spring Harbor、NY;Sambrookら、Molecular Cloning(1989)Mole
cular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laborator
y、Cold Spring Harbor、NY;Methods of Enzymology、第68、100、101、152〜1
55巻、Academic Press、Orlando(1979、1983、1987);Pouwelsら、Cloning Ve
ctors:A Laboratory Manual.Elsevier、Amsterdam(1987))。
多細胞生物由来の真核生物宿主細胞においてUSFをコードする遺伝子の発現も
可能である(Freshly,R.I.Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Tech
nique、第2版、Alan R.Liss、New York(1987))。有用な宿主細胞株は、マウス
骨髄腫N51細胞、VERO細胞、およびHeT細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵
巣(CHO)細胞を含有する。このような細胞のベクターの発現は、通常プロモー
ターおよび哺乳動物細胞と適合性のある調節配列(例えば、一般的に使用される
シミアンウイルス40(SV40)由来の初期および後期プロモーター、またはポリオー
マ、アデノウイルス2、ウシ乳頭腫ウイルス、またはトリ肉腫ウイルス、あるい
は免疫グロブリンプロモーターおよび熱ショックプロモーター)を含有する(Ma
niatisら、(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harb
or Laboratory、Cold Spring Harbor、NY;Sambrookら、Molecular Cloning(19
89)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor L
aboratory、Cold Spring Harbor、NY; Methods of Enzymology、第68、100、101
、152〜155巻、Academic Press、Orlando(1979、1983、1987);Pouwelsら、Cl
oning Vectors:A Laboratory Manual.Elsevier、Amsterdam(1987))。哺乳動
物細胞宿主系の形質転換の一般的な局面は、Axelによって記載されている(米国
特許第4,399,216号)。複製起点は、所望ならば、ウイルスの供給源から得られ
得る。しかし、染色体への組み込みは、真核生物のDNA複製に共通する機構であ
る。最近、植物細胞はまた、宿主として有効であり、そしてノパリンシンターゼ
プロモーターおよびポリアデニル化シグナル配列のような植物細胞と適合性を持
つ調節配列が利用可能である(Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Man
ual.Elsevier、Amsterdam(1987);Methods of Enzymology、第118巻、Academic
Press、Orlando(1986);Gelvinら、Plant Molecular Biology Manual、Kluwer
Academic Publishers、Dudrecht(1990))。
使用した宿主細胞に依存して、形質転換は、標準的な技術を用いて行われる。
このような技術は、原核生物または強固な細胞壁の障壁を有する他の細胞につい
ての塩化カルシウムを用いるカルシウム処理;特定の植物細胞についてAgrobact
erium tumefaciensの感染;細胞壁を有しない哺乳動物細胞についてリン酸カル
シウム沈殿法;および、植物細胞を含有する多くの細胞へのマクロプロジェクタ
イルボンバードメント(macroprojectile bombardment)を包含する。
本発明者らは、H4神経膠腫細胞に存在するAPPプロモーターからのレポーター
タンパク質の転写が、USFを発現し得るレトロウイルス発現ベクターを用有する
細胞をトランスフェクトすることによって5倍促進され得ることを示す。従って
、様々な発現ベクターは、どのような型の細胞がAPPプロモーターを含有するか
に
依存して、USF遺伝子の発現のために使用され得ることが認識される。
APP発現を調節するためにヒトの細胞へのUSFをコードする遺伝子の送達は、当
該分野において知られる多くの公知な系の一つを用いて生じ得る。レトロウイル
スベクターは、分裂細胞のゲノム内に組み込まれ得るだけである。従って、これ
らのベクターは、分裂細胞へのUSFの選択的ターゲッティングのための有効な媒
体を提供する。レトロウイルスベクターは、宿主の範囲を限定しないという更な
る利点を提供し、そしてこれらのベクターは、すでに多数の異なった細胞型に首
尾良く感染させるのに利用されている(Cepko,C.、「レトロウイルスによる神経
細胞の系統分析および不死化」、Neuromethods、第16巻、177〜218、Clifton、N
J、The Humana Press,Inc.(1989);Gilboa,E.、BioEssays 5(6):252〜257(1
987);Friedmann,T.、Science 244:1275〜1281(1989))。一般的に、分裂細胞
への遺伝子の組み込みが有効であるレトロウイルス発現ベクターは当該分野で周
知である(Breakfieldら、Molec.Neuro.Biol.1:229(1987);Breakefiledら、T
he New Biologist 3:203(1991);Huangら、Experimental Neurology 115:303(
1992)、WO93/03743およびWO90/09441。APPは、全ての主要な組織で発現する(Sc
hmechelら、Alzheimer Dis.Assoc.Disord.2:96(1988))。脳において、APPは
、独占的ではないが、主にAPPはニューロンにおいて発現する(Schmechelら、Al
zheimer Dis.Assoc.Disord.2:96(1988))。ニューロンに感染し得る発現ベク
ターは、公知であり、単純ヘルペスウイルスを基本としたベクターらを包含する
。
APPプロモーターは、クローン化され、そして配列決定されている(Quitschke
& Goldgaber、The Journal of Biological Chemistry 267:17362(1992))。本
発明者らは、USFが、APPプロモーター中に位置するAP-1/AP-4エレメントを含有
するDNAフラグメントと結合することを発見した。明細書の実施例1は、ヒトAPP
プロモーター(Salbaum,J.M.ら、EMBO J.7:2807-2813(1988))の主要な転写部
位由来の-30から-58に広がる、そしてAP-1/AP-4エレメント(下線):
5'GGGCCGGATCAGCTGACTCGCCTGGCTCT'3(配列番号2)を含有するDK-1フラグメン
トの配列は、天然およびrUSFとの両方により特異的に結合することを示す。
好ましくは、APPプロモーターを、APPタンパク質または異種ポリペプチドのい
ずれかをコードする核酸配列と作動可能に連結する。もちろん、APPプロモータ
ーを、自然にAPPを発現する様々な細胞においてAPP遺伝子と作動可能に結合する
。他の好ましい実施様態では、APPプロモーターを、レポータータンパク質をコ
ードする核酸配列と作動可能に連結する。このような「融合」レポータータンパ
ク質は、当該分野において周知である。レポータータンパク質をコードするレポ
ーター遺伝子は、AP-1/AP-4エレメントを含有するAPPプロモーターまたはそのフ
ラグメントに融合され得る。産生されたレポーター遺伝子産物の量は、プロモー
ターの相対活性を示し得る。従って、本発明は、さらに、APPプロモーターから
の転写を検出するための方法に関する。
適切なレポータータンパク質の一例は、β-ガタクトシダーゼである。β-ガタ
クトシダーゼは、E.coli.のlacZ遺伝子によってコードされる酵素である。細胞
中でのlacZ遺伝子産物の存在は、細胞全体において定性的に測定され得、そして
無細胞抽出物中で定量的に測定され得る。包含され得る他のレポーター遺伝子:
β-ガタクトシダーゼ(MacGregorら、1987、Somatic Cell Mol.Genet.13:253
-266);ガラクトキナーゼ(例えば、Rosenbergら、1983、Science 222:734-73
9;McKenneyら、1981、Gene Amplification and Analysis 2:383-415、Elsevie
r/North-Holland、New York);MurookaおよびMitani,1985、J.Biotechnol.2:
303-316;β-グルクニダーゼ(例えば、Jeffersonら、1986、Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA 83:8447-8541);ヒト成長ホルモン(例えば、Seldonら、1986、Mol.Cel
l.Biol.6:3173-3179);クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(
CAT)(例えば、Tsukadaら、1987、J.Biol.Chem.262:8743-8747;Carbonellお
よびMiller、1987、Appl.Environ.Microbiol.53:1412-1417;Bouletら、1986
、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3599-3603;Jamesonら、1986、Endocrinology 1
19:2560-2567;Montminyら、1986、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:6682-6686)
;Tn5ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(例えば、Kaulenら、1986、EMBO
J.5:1-8;Simpsonら、1985、EMBO J.4:2723-2730)およびホタルルシフェラ
ーゼ(例えば、Owら、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4870-4874、Owら、19
86、Science 234:856-859)。
Quitschkeらは、APPプロモーター5’を融合し、そしてレポーター遺伝子、ク
ロラムフェニコールトランスフェラーゼと作動可能に連結した(Quitschkeら、T
he Journal of Biological Chemistry 267(24):17362(1992))。本発明者らは
、APPプロモーター5’を融合し、そしてルシフェラーゼレポーター遺伝子と作
動可能に連結した。ルシフェラーゼレポーター遺伝子系は、米国特許第.5,196,4
24号に詳細に議論されている。
APPプロモーターからの転写を検出するための代わりの方法は、生じる転写物
のプライマー伸長分析を包含する。プライマー伸長分析は、転写されたmRNAの一
部と相補的な配列を有するプライマーをハイブリダイズする工程およびプライマ
ー伸長を実施する工程を包含する。好ましくは、プライマーを、検出可能に標識
する。プライマー伸長分析は、当該分野で周知である。例えば、本発明者らは、
ルシフェラーゼ発現ベクターpxP2のSmaI部位(Nordeen,S.K.、Biotechniques 6
:454(1988))に2.9 EcoRI/BamHI APPプロモーターフラグメント(Salbaumら、E
MBO J.7:2807(1988))を挿入することによってAPPプロモーター−ルシフェラ
ーゼレポーター遺伝子構築物を調製した。構築物の無細胞インビトロ転写を、Di
gnamら、Nucleic Acids Res 11:1475(1983)の方法に従って実施した。次いで、
構築物由来の転写物を、APPプロモーターとレポーター遺伝子との間の多数のク
ローニング部位の部分に対応するプライマーをハイブリダイズすることによって
検出した。プライマーは以下の配列を含有した:5'-GCTCAGATCTCGAGCTCGGTAC-3'
(配列番号3)。
USFと結合する様々な化合物が存在する。これらは、抗USFポリクロナール抗体
およびモノクロナール抗体、Eボックス配列(CANNTG)を含有する核酸フラグメン
ト、ならびにヘリックス-ループ-ヘリックス(HLH)転写因子を含有する。本発明
者らは、USF結合性の特定の化合物が、APPプロモーターに結合するUSFによって
転写を妨げ、それによって転写をダウンレギュレートし得ることを発見した。「
APPプロモーターからの転写をダウンレギュレーションすること」によって、USF
結合化合物の非存在下で達成される転写レベルに関してAPPプロモーターからの
転写を減少させることが意図される。従って、本発明のさらなる局面は、1つま
たはそれ以上のUSF結合化合物を用いてAPPプロモーターからの転写をダウンレギ
ュレートすることに関する。本方法は、APPプロモーターと結合するUSFとを妨
害し得るUSF結合化合物を用いてUSF転写アクチベーターを接触させる工程を包含
する。存在するUSFおよびUSF結合化合物の相対的な量に依存して、APPプロモー
ターからの転写を、所望するように調節し得る。例えば、本発明者らは、上記の
APPプロモーター-ルシフェラーゼレポーター遺伝子の構築物を用いて宿主細胞を
トランスフェクトした。細胞を、次いで、USF遺伝子をコードする発現ベクター(
pCMV-USF)でトランスフェクトした。転写レベルに関して約5倍のAPPプロモータ
ーからの活性化された転写が、USF転写アクチベーターをコードしないコントロ
ールプラスミドの存在下で達成された。細胞を、次いで、以下のUSF結合性化合
物の一つをコードする発現ベクターでトランスフェクトした:APLP1、APLP2、お
よびAPP。APP/APLPファミリーの各メンバーの存在は、APPプロモーターからの転
写のUSF活性化レベルを少なくとも50%減少させるという結果を示した。
示されたように、APPプロモーターからのダウンレギュレーション転写をし得
るUSF結合候補物は、ポリクロナールおよびモノクロナール抗USF抗体、Eボック
ス配列(CANNTG)を含有する核酸フラグメント、およびヘリックス-ループ-ヘリッ
クス(HLH)転写因子ファミリーのメンバーを含有するが、これに限定されない。
ポリクロナールおよびモノクロナール抗体は、従来技術に従ってUSFに対して
惹起され得る。例えば、USF抗血清により、Kaulenら、Mol.Cell.Biol.11:412(
1991)に記載の方法によって調製され得る。電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA
)を用いて、本発明者らは、USF抗血清により、APPプロモーター内のAP-1/AP-4部
位によるUSF複合体形成の量が著しく減少することを示した。
Eボックス配列を含有する核酸フラグメントは、配列CANNTG(または、フラグ
メントがRNAを含む場合、CANNUG)を含有する任意のフラグメントである。ここ
で、「N」は、任意の4つの塩基(アデニン、グアニン、チミジン(ウラシル)
、またはシトシン)のいずれかを含有するヌクレオチドである。好ましくは、「
N」は、シトシンまたはグアニンのいずれかを含有するヌクレオチドである。例
えば、AP-1/AP-4部位のコア配列は、CAGCTGである。USFもまた、アデノウイルス
主要後期プロモーターのコア配列CACGTGと結合する。
本発明に従い、Eボックス配列を含有する核酸配列フラグメントを外部から添
加するか、または組換え的に産生することによって、USF結合の競合を通してAPP
プロモーターからの転写をダウンレギュレーションする。例えば、競合アッセイ
において、本発明者らは、Eボックス配列を含有するDNAフラグメントの存在が
、APPプロモーターからの転写を著しく減少させることを示した。逆に、Eボッ
クス配列がランダム配列によって置換された同じDNAフラグメントの存在は、転
写を減少させない。Eボックス配列を含有する任意の所定のDNAフラグメントが
、APPプロモーターからの転写をダウンレギュレーションし得るかどうかは、経
験的に容易に決定され得る。
USFは、塩基性のヘリックス-ループ-ヘリックス(HLH)タンパク質であり、塩基
性領域を介してDNA、およびHLHドメインを介して他のHLHタンパク質と結合する
。APP/APLPファミリーのタンパク質は、HLHドメインと相同な領域を含有するが
、前記の領域はわずかに塩基性にすぎない。APP/APLPファミリーの特徴と類似し
た特徴を示す他のHLHタンパク質は特徴付けられ、そしてUSF以上に塩基性HLHタ
ンパク質と結合することが示された。例えば、Idと呼ばれるタンパク質は、塩基
性HLH筋原性因子であるMyoDによって、転写の活性化が特異的に抑制される。USF
結合化合物の候補であるものは、APP/APLPファミリーの特徴と類似する特徴を示
す(すなわち、塩基性HLHタンパク質によって転写の活性化が調節される)これ
らタンパク質である。このような候補タンパク質、またはそれらのペプチドフラ
グメントは、下記のスクリーニングアッセイを利用してAPPプロモーターからの
転写をダウンレギュレートする能力についてスクリーニングされ得る。
本発明者らは、アミロイド前駆体様タンパク質(APLP)およびAPP自身は、AP-1/
AP-4部位と結合するUSFを妨害することによって、APPプロモーターからの転写を
ダウンレギュレートし得ることを発見した。「アミロイド前駆体様タンパク質」
(APLP)は、特にヒトの脳、アルツハイマー病の脳に由来する、APLP1およびAPLP2
を含有する、任意の種由来の、アミロイド前駆体様タンパク質、または合成APLP
を意味することが意図される。本APLPは、アミノ酸レベルにおいてAPPおよび/
またはAPLP1および/またはAPLP2に対して少なくとも40%の同一性、より好まし
くは50%の同一性を示し、そして少なくとも10個のシステイン、より好ましくは
12個のシステインからなるN末端システインリッチ領域を含有する。本発明で使
用する本用語はまた、天然に存在するAPLPのアナログ、ホモログ、変異体、また
は誘導体の任意のものを含むものとする。本用語はまた、本出願で特に開示した
ポリペプチドの生物学的または免疫学的特徴を保持する天然または合成APLPの部
分的なフラグメントのような、天然に存在するアミノ酸の数より少ない数のアミ
ノ酸を有するフラグメントを含有することを意味する。本用語はまた、天然に存
在するAPLP、または1つ以上の隣接するアミノ酸を伴うそのアナログ、もしくは
そのホモログで、依然として生物学的または免疫学的特徴を有するものの配列を
包含するために使用される。
本用語はまた、天然に存在するAPLPまたは1つ以上の隣接するアミノ酸を伴う
アナログを含有し、同一の生物学的(機能的または構造的)または免疫学的特徴
を有する任意のペプチドを包含するために使用される。
本発明の使用に適切なAPLPは、外因的、または組換えDNA技術を用いた発現に
よって投与され得る。APLPの単離、クローニング、および組換え発現を、以下で
議論する。
示されるように、本発明は、さらに、どのUSF結合化合物が、APPプロモーター
からの転写をダウンレギュレートし得るかを同定するためのスクリーニングアッ
セイに関する。本方法は、レポータータンパク質をコードする遺伝子に作動可能
に連結されたAPPプロモーターを含有するDNAまたはRNA構築物で宿主細胞をトラ
ンスフェクトする工程;USFタンパク質を発現し得るDNAまたはRNA構築物で宿主
細胞をトランスフェクトする工程;APPプロモーターへのUSF結合によって活性化
されるレポータータンパク質の発現を測定する工程;USF結合化合物を含有する
か、または発現し得るDNA構築物またはRNA構築物のいずれかで宿主細胞をトラン
スフェクトする工程;およびレポータータンパク質発現の減少が、APPプロモー
ターと結合するUSFを妨害するUSF結合化合物によって引き起こされるかどうかを
測定する工程、を包含する。
好ましくは、遺伝子はルシフェラーゼレポータータンパク質をコードし、DNA
結合化合物はAPLPであり、そして宿主細胞は、神経膠腫細胞である。より好まし
くは、APLPは、APLP-1もしくはAPLP-2、または転写を減少させ得る、それらのフ
ラグメントである。ルシフェラーゼレポータータンパク質のレベルを測定する技
術は、当該分野で周知である(例えば、米国特許第5,196,424号を参照のこと)
。
他のレポータータンパク質レベルを測定する技術もまた、当該分野で公知である
(上記で引用した参考文献を参照のこと)。その容易さのために、本発明のスク
リーニング法は、APPプロモーターからの転写を減少し得るかどうかを測定する
ための、多数のUSF結合化合物のスクリーニングに適切である。
APLPタンパク質の単離方法、クローニング方法、および発現方法の詳細な記載
が、以下に提供され、そして同時継続出願第08/007,999号は、本明細書中で参考
として援用される。
APLP1およびAPLP2の両方のアミノ酸配列が確立されると、APLP1もしくはAPLP2
またはそのフラグメントをコードするDNAまたはmRNAと相補的なヌクレオチドプ
ローブを構築し得る。本プローブは、他のAPLPの存在を決定する診断テストとし
て利用され得る。
APLP1配列およびAPLP2配列を遺伝子的に操作するプロセスは、ペプチドをコー
ドし得る遺伝子配列のクローニングおよびこの遺伝子配列の発現によって促進さ
れる。APLPタンパク質をコードし得る遺伝子配列は、様々な供給源に由来する。
これらの供給源は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAおよびそれらの組合わせを包含す
る。ゲノムDNAまたはmRNAの好しい供給源は、脳または神経芽腫細胞である。Pos
t mortem RNA法が、RNAの単離のために用いられ得る。Sajdel-Sulkowskaら、J.N
eurochem.40:670-680(1983)を参照のこと。このmRNAは、次いで、当業者に公
知の技術によってcDNAを得るために使用され得る。プローブは、当該分野で公知
の方法によって本APLPタンパク質(APLP1およびAPLP2)の公知のアミノ酸配列に
基づいて合成され得る。
APLP mRNAは、APLPを産生するかまたは発現する任意の細胞より単離され得、
そして当該分野に周知の手段によってcDNAを産生するために使用され得る(例え
ば、Guide to Molecular Cloning Techniques、S.L.Bergerら編、Academic Pres
s(1987))を参照のこと)。好ましくは、使用されるmRNAの調製は、天然に、多
量のタンパク質を産生する細胞から単離すること、もしくはインビトロ、ショ糖
密度勾配遠心分離のような、特定の配列のmRNAを富化させるために一般的に利用
されている技術のいずれかによるか、またはその両方によって、APLPをコードす
るmRNAを富化する。
ベクターへのクローニングのために、このような適切なDNA調製物(ヒトゲノ
ムDNAまたはcDNAのいずれか)は、それぞれ、ランダムに切断、または酵素的に
切断され、そして適切なベクターに連結され、組換え遺伝子(ゲノムまたはcDNA
のいずれか)ライブラリーが形成される。APLPもしくはその機能的な誘導体をコ
ードするDNA配列が、従来技術によってDNAベクター中へ挿入され得る。この技術
は、連結のための平滑末端または付着末端、適切な末端を提供するための制限酵
素消化、適切に付着末端を充填する工程、所望しない結合を回避するためのアル
カリホスファターゼ処理、および適切なリガーゼを用いる連結を包含する。この
ような操作のための技術は、Maniatisらによって開示されており(Molecular Clo
ning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories、Cold Spring
Harbor、NY、(1982)中)、そして当該分野において周知である。
APLPクローンを含有するライブラリーが、スクリーニングされ得、そして例え
ば、a)本タンパク質のDNAに特異的な配列を含む適切な核酸プローブ(単数または
複数)とのハイブリダイゼーションによる、またはb)問題のクローンとハイブリ
ダイズするネイティブなmRNAがインビトロで翻訳され、そしてさらに翻訳産生物
が特徴付けされるハイブリダイゼーション選択翻訳分析による、または、c)クロ
ーン化された遺伝子配列がそれら自身、mRNAを発現し得る場合には、そのクロー
ンを含有する宿主によって産生された翻訳APLP産物の免疫沈降によるようなAPLP
DNAを特異的に選択する任意の手段によってAPLPクローンが同定され得る。
本タンパク質に対するクローンを同定するために使用され得るAPLPに特異的な
オリゴヌクレオチドプローブは、APLP1またはAPLP2のアミノ酸配列の知識より設
計され得る。
遺伝子コードは縮重しているため、1つより多いコドンが特定のアミノ酸をコ
ードするために使用され得る(Watson,J.D.、Molecular Biology of the Gene、
第3版、W.A.Benjamin,InC.、Menlo Park、CA(1977)、356-357頁)。このペプ
チドフラグメントは、最も低い程度の縮重を有するオリゴヌクレオチドによって
コード化され得るアミノ酸の配列を同定するために分析される。これは、好まし
くは、単一のコドンのみによってコードされるアミノ酸を含む配列を同定するこ
とによって実施される。
アミノ酸は単一のオリゴヌクレオチド配列のみによってコードされ得ることも
あるが、多くの場合アミノ酸配列は、任意の1組の類似したオリゴヌクレオチド
によってコードされ得る。重要なことに、この組のメンバーの全てが、同一のペ
プチドフラグメントをコードし得るオリゴヌクレオチド配列を含み、そして、そ
れゆえ、そのペプチドフラグメントをコードする遺伝子と同一のオリゴヌクレオ
チド配列を潜在的に含み、その組のたった一つのメンバーのみが遺伝子のエキソ
ンコード配列と同一のヌクレオチド配列を含有する。このメンバーはその組に存
在し、そしてその組の他のメンバーの存在下でさえ、DNAにハイブリダイズし得
るので、そのペプチドをコードする遺伝子をクローン化するために、単一のオリ
ゴヌクレオチドを使用する場合と同じ様式で、分画していない組のオリゴヌクレ
オチドを使用することができる。
遺伝子コードを使用して(Watson,J.D.、Molecular Biology of the Gene、第
3版、W.A.Benjamin,InC.、Menlo Park、CA(1977)中)、1つ以上の異なるオ
リゴヌクレオチドが、アミノ酸配列から同定され得、そしてその各々がAPLPをコ
ードし得る。ある特定のオリゴヌクレオチドが、実は、実際のAPLPコード配列を
構成する可能性は、異常な塩基対合の関連および真核細胞中で(特定のアミノ酸
をコードするために)実際に用いられる特定のコドンを有する頻度を考慮するこ
とによって評価され得る。そのような「コドン使用規則」は、Latheら、J.Mole
c.Biol.183:1-12(1985)によって開示されている。Latheの「コドン使用規則
」を用いて、APLP配列をコードし得る、理論的に「最も可能性の高い」ヌクレオ
チド配列を含む、唯一のオリゴヌクレオチド配列、または1組のオリゴヌクレオ
チド配列が同定される。
APLP遺伝子のフラグメントをコード化し得る(または、このようなオリゴヌク
レオチド、またはオリゴヌクレオチドの組と相補的な)適切なオリゴヌクレオチ
ド、またはオリゴヌクレオチドの組が、当該分野に周知の手段(例えば、Synthe
sis and Application of DNA and RNA、S.A.Narang編、1987、Academic Press
、San Diego、CAを参照のこと)によって合成され得、そして当該分野で公知の
技術によってクローン化されたAPLP遺伝子を同定および単離するためのプローブ
として使用され得る。核酸ハイブリダイゼーションおよびクローン同定の技術は
、
Maniatisら(Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor La
boratories,Cold Spring Harbor NY、(1982)中);Bergerら、(Guide to Mole
cular Cloning Techniques、Academic Press(1988)中);Sambrookら、(Molecul
ar Cloning,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring H
arbor、NY、第2版(1989)中);およびHamesら、(Nucleic Acid Hybridization
,A Practical Approach、IRL Press、Washington、DC(1985)中)(これらの参
考文献は、本明細書中で参考として援用される)によって開示されている。次い
で、このようなハイブリダイゼーションが可能であることが見出される上記の遺
伝子ライブラリーのメンバーが分析され、それらが含むAPLPコード配列の範囲お
よび性質が決定される。
所望のAPLP DNAコード配列の検出を容易にするために、上記のDNAプローブが
検出可能な基を用いて標識される。このような検出可能な基は、検出可能な物理
的または化学的性質を有する任意の物質であり得る。このような物質は、核酸ハ
イブリダイゼーションの分野では非常に発達しており、そして一般にこのような
方法における最も有用な任意の標識が本発明に適用し得る。特に有用なのは、32
P、3H、14C、35S、125Iなどのような放射性標識である。適切なシグナルを
提供しそして十分な半減期を有する任意の放射性標識が使用され得る。オリゴヌ
クレオチドは、例えば、周知の方法による「ニックトランスレーション」(例え
ば、Rigbyら、J.Mol.Biol.113:237(1977)中に記載のように)によって、および
T4 DNAポリメラーゼ置換合成(例えば、Deenら、Anal.Biochem.135:456(1983
)に記載のように)によって放射標識され得る。
あるいは、ポリヌクレオチドはまた、ビオチン、酵素、または蛍光基のような
非放射性マーカーによって標識された場合、核酸ハイブリダイゼーションプロー
ブとして有用である。例えば、Learyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4045
(1983);Renzら、Nucl.Acids Res.12:3435(1984);およびRenzら、M.EMBO
J.6:817(1983)を参照のこと。
従って、要約すると、APLP配列の実際の同定は、理論上の「最も可能性の高い
」DNA配列、またはこのようなペプチドをコードし得る1組のそのような配列の
同定を可能にする。この理論上の配列に相補的なオリゴヌクレオチドを構築す
ることにより(または「最も可能性の高い」オリゴヌクレオチドの組に相補的な
オリゴヌクレオチドの1組を構築することによって)、APLP(すなわちAPLP1ま
たはAPLP2)遺伝子を含有するクローンの同定および単離のためのプローブ(単
数または複数)として機能し得る、DNA分子(またはDNA分子の組)を得る。
APLP遺伝子をクローニングする別の方法において、ライブラリーは、発現ベク
ターを用い、発現ベクターへクローン化したDNAまたは、より好ましくはAPLPを
発現し得る細胞より調製された発現ベクターへクローン化したcDNAにより調製さ
れる。次いで本ライブラリーは、例えば、本タンパク質に対する抗体を用いたラ
イブラリーのスクリーニングによって、APLPを発現するメンバーがスクリーニン
される。
従って、先に議論した方法は、APLPタンパク質またはAPLPタンパク質のフラグ
メントをコードし得る遺伝子配列を同定し得る。このような遺伝子配列の更なる
特徴付けのために、そして、その組換えタンパク質の産生のために、これらの配
列をコードするタンパク質を発現することが所望される。このような発現は、AP
LPの特徴を有するタンパク質を発現するこれらのクローンを同定する。このよう
な特徴は、APLP抗体と特異的に結合する能力、およびAPLPと結合し得る抗体の産
生を誘導する能力を包含し得る。
APLPを発現するためには、適切な宿主によって認識される転写および翻訳シグ
ナルが必要である。上記の方法によって得られ、そして好ましくは二本鎖形態の
クローン化APLPコード配列は、発現ベクター中で転写発現を調節する配列に作動
可能に連結され得、そして原核生物または真核生物いずれかの宿主細胞に導入さ
れ得、組換えAPLPまたはその機能的誘導体を産生し得る。APLPコード配列の鎖が
転写発現を調節する配列に作動可能に連結されることに依存して、APLPアンチセ
ンスRNAまたはその機能的な誘導体を発現することが可能である。
異なった宿主中でのAPLPの発現は、APLPの性質を変化し得る異なった翻訳後修
飾に帰着し得る。本発明は、真核細胞、そして特に哺乳動物細胞、昆虫細胞、お
よび酵母細胞中での、APLP、またはその機能的誘導体の発現を包含する。特に好
ましい真核生物の宿主は、インビボ、動物中、または組織培養物中のいずれかの
哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞は、ネイティブなAPLPに対して見出されたも
のと類似または同一の折りたたみ、および/またはグリコシル化を包含する組換
えAPLPに対する翻訳後修飾を提供する。最も好ましくは、哺乳動物宿主細胞は、
脳細胞および神経芽腫細胞を包含する。
DNAのような核酸分子は、それが、転写調節情報を含む発現調節配列を含み、
そしてそのような配列がそのポリペプチドをコードする核酸分子に「作動可能に
連結される」場合、ポリペプチドを「発現可能である」という。
作動可能な連結とは、配列が、調節配列の影響下または調節下で、配列の発現
を起こすための方法において、調節配列(1つまたは複数)に連結される結合のこ
とである。2つのDNA配列(例えば、APLPコード配列およびコード配列の5’末
端に結合したプロモーター領域配列)は、プロモーター機能の誘導がAPLPコード
配列mRNAの転写を引き起こす場合、および2つのDNA配列間の結合の性質が、(
1)フレームシフト変異を誘導しない、(2)APLP mRNA、アンチセンスRNA、ま
たはタンパク質の発現を指令する発現調節配列の能力を妨害しない、または、(
3)プロモーター領域配列によるAPLPテンプレートの転写能力を妨げない場合、
作動可能に結合されるという。従って、プロモーターがそのDNA配列の転写を影
響し得る場合、プロモーター領域はDNA配列に作動可能に連結される。
遺伝子発現に必要とされる調節領域の正確な特徴は、種間または細胞型間で変
化し得るが、一般に、必要不可欠な物として、例えば、TATAボックス、キャッピ
ング配列、CAAT配列などの翻訳開始および転写開始にそれぞれ関わる5’非転写
配列および5’非翻訳(非コード)配列を含む。特に、このような5’非転写調節
配列は、作動可能に連結した遺伝子の転写調節のためのプロモーターを含有する
領域を含む。
真核生物宿主におけるAPLPの発現には、このような宿主中で機能的な調節領域
、そして好ましくは、真核生物の調節系の使用が必要である。広範な種々の転写
および翻訳調節配列が、真核生物宿主の性質に依存して使用し得る。翻訳および
転写調節シグナルはまた、例えばアデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シ
ミアンウイルス、ヘルペスウイルスなどの真核生物に感染するウイルスのゲノム
配列由来であり得る。好ましくは、これらの調節シグナルは、宿主細胞における
高レベルの発現を可能とする特定の遺伝子と結合される。
真核生物において、転写が翻訳と連結していない場合、そのような調節領域は
、開始メチオニン(AUG)コドンを供給し得る、または供給し得ないが、これは、
クローン化された配列がこのようなメチオニンを含むかどうかに依存する。この
ような領域は、一般に、宿主細胞においてRNA合成の開始を指令するのに十分な
プロモーター領域を含む。翻訳可能なmRNA産物をコードする異種哺乳動物遺伝子
由来のプロモーターが好ましく、そして特に、アクチン、コラーゲン、ミオシン
などのプロモーターのような強力なプロモーターが使用され得、その宿主細胞中
でも、プロモーターとしての機能を提供する。上記のものに含まれる好ましい真
核生物のプロモーターとして、マウスメタロチオネインI遺伝子のプロモーター
(Hamerら、J.Mol.Appl.Gen.1:273-288(1982));ヘルペスウイルスのTKプ
ロモーター(McKnight,S.,Cell 31:355-365(1982));SV40初期プロモーター(
Benoistら、Nature(London)290:304-310(1981));酵母における、酵母gal4遺
伝子プロモーター(Johnstonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:6971-6975(198
2);Silverら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5951-5955(1984))または糖分解
遺伝子プロモーター、が挙げられ使用され得る。
広範に知られているように、真核生物のmRNA翻訳は、第一のメチオニンをコー
ドするコドンより開始される。この理由のために、真核生物のプロモーターとAP
LP、またはその機能的誘導体をコードするDNA配列との間の連結は、メチオニン
をコードし得る何ら介在するコドンも含まないことが確保されることが好ましい
。このようなコドンの存在により、融合タンパク質の形成(AUGコドンがAPLPを
コードするDNA配列と同じリーディングフレームである場合)、またはフレーム
シフト変異体の形成(AUGコドンがAPLPをコードするDNA配列と同じリーディング
フレームでない場合)のいずれかの結果になる。
所望であれば、APLPの融合産物が構築され得る。例えば、APLPをコードする配
列は、ある特定の宿主からのタンパク質の分泌、またはある特定の宿主中でのタ
ンパク質の区画化を可能にするシグナル配列に連結され得る。このようなシグナ
ル配列は、そのシグナルペプチド配列が引き続いて容易に除去されるように特異
的なプロテアーゼ部位を有してまたは有さずに設計され得る。または、このタン
パタ質に対する天然のシグナル配列が使用され得る。
抑制または活性化を可能とする転写開始調節シグナルが選択され得、それによ
り作動可能に連結された遺伝子の発現が調節され得る。対象のものは、温度を変
化させることにより、発現が抑制または開始され得るような温度感受性である、
あるいは化学的調節、例えば代謝産物に従属する調節シグナルである。また対象
のものは、その構築物中のAPLP mRNAおよびアンチセンスRNAが、転写可能な形態
で提供されるが、しかしAPLP mRNA発現の誘導が、アンチセンスRNAの発現の抑制
により達成されるような、および/またはAPLP mRNA発現の抑制が、アンチセン
スRNAの発現の誘導により達成されるような、異なるプロモーターまたは他の転
写調節エレメントを有する構築物である。
翻訳シグナルは、APLPアンチセンスRNA配列の発現が所望される場合には必要
ではない。
もし所望であれば、APLPをコードする配列の3’側の非転写および/または非
翻訳領域は、上記のクローニング方法により得られ得る。この3’非転写領域は
、この転写終結調節配列エレメントのために保有され得る;3’非翻訳領域は、
この翻訳終結調節配列エレメントのために、または真核細胞中でのポリアデニル
化を指令するエレメントのために保有され得る。天然の発現調節配列シグナルが
、宿主細胞で十分に機能しない場合、その宿主細胞中で機能する配列に置換され
得る。
本発明のベクターはさらに、例えばエンハンサー配列、または作動可能に連結
された遺伝子の組織または細胞型特異的な発現を可能とするDNAエレメントのよ
うな、他の作動連結された調節エレメントを含み得る。
本発明のDNA構築物を用いて哺乳類細胞を形質転換するために、多くのベクタ
ー系が利用可能であり、それはAPLP DNA構築物が宿主細胞染色体DNAに挿入され
ることが所望されるか、あるいは染色体外の形態で存在することを可能とするこ
とが所望されるかに依存する。
APLP DNAコード配列および作動可能に連結されたプロモーターが、非複製DNA(
またはRNA)分子として、受容真核細胞中に導入される場合、これは直鎖状分子ま
たは自己複製不可能な閉環状環状分子のいずれにかであり得、APLPの発現は導入
された配列の一時的な発現によって起こり得る。
遺伝的に安定な形質転換体は、ベクター系、または形質転換系を用いて構築さ
れ得、それによりAPLP DNAは宿主染色体に組み込まれる。このような組み込みは
、新たに細胞内で起こり得るか、あるいは最も好ましい実施態様においては、例
えば、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、または染色体へのDNA配列の
組み込みを促進する他のDNAエレメントのような、それ自身が宿主染色体に機能
的組み込まれるベクターを用いた形質転換によって補助され得る。ベクターは、
宿主哺乳類細胞染色体に所望の遺伝子配列を組み込み得るものが用いられる。
染色体に安定的に組み込まれた導入DNAを有する細胞は、染色体中に発現ベク
ターを含む宿主細胞の選択を可能とする1つ以上のマーカー、例えば、生物殺傷
物質耐性(例えば抗生物質、または銅などのような重金属に対する耐性)を提供し
得るマーカーの導入により選択される。選択可能なマーカー遺伝子は、発現され
るDNA遺伝子配列に直接連結されるか、またはコトランスフェクションにより同
一の細胞に誘導されるかのいずれかであり得る。
別の実施態様では、導入配列は、受容宿主中で自己複製し得るプラスミドベク
ターまたはウイルスベクターに取り込まれる。任意の広範な種々のベクターが以
下に概説したように、この目的のために、使用され得る。
特異的なプラスミドまたはウイルスベクターの選択における重要な因子は、以
下を包含する:ベクターを含む受容細胞が、ベクターを含まない受容細胞から認
識および選択され得る容易さ;特定の宿主中で所望されるベクターのコピー数;
および異種宿主細胞間で、ベクターを「シャトル」し得ることが所望されるかど
うか。
好ましい真核生物プラスミドは、ウシパピローマウイルス、ワクシニアウイル
ス、SV40、および酵母における2ミクロンサークルなどを含むプラスミド、また
はその誘導体を包含する。このようなプラスミドは、当該分野において周知であ
り(Botsteinら、Miami Wntr.Symp.19:265-274(1982); Broach,J.R.,The Mole
cular Biology of the Yeast Saccharomyces: Life Cycle and Inheritance,Co
ld Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,445-470頁(1981); Br
oach,J.R.,Cell 28:203-204(1982); Bollonら、J.Clin.Hematol.Oncol.10:
39-48(1980); Maniatis,T.,Cell Biology: A Comprehensive Treatise,第
3巻,「Gene Expression」Academic Press,NY,563-608頁(1980))、そして市販
されている。例えば、クローン化した遺伝子の発現を誘導するためにMSV-LTRプ
ロモーターを利用し、そしてプラスミドのコピー数を増幅、およびプラスミドを
宿主細胞染色体中に組み込むためにヘルパーウイルスを用いてコトランスフェク
トすることが可能な哺乳動物発現ベクター系が、記載されている(Perkinsら、Mo
l.Cell Biol.3:1123(1983); Clontech,Palo Alto,California)。
そのベクターまたはその構築物(単数あるいは複数)を含むDNA配列が一旦発
現用に調製されると、そのDNA構築物(単数あるいは複数)は、トランスフェク
ションを包含する任意の種々の適切な方法により、適切な宿主細胞内に導入され
る。ベクターの導入後、受容細胞は、ベクターを含む細胞の増殖用に選択される
選択培地で増殖させられる。クローン化された遺伝子配列(単数または複数)の発
現は、APLPの産生、またはこのタンパク質のフラグメントの産生をもたらす。こ
の発現は、形質転換細胞内で連続的な様式、または調節された様式で、例えば、
形質転換細胞の分化の誘導を伴う発現(例えば、ブロモデオキシウラシルを神経
芽腫細胞などへの投与による)において起こり得る。
発現されたタンパク質は、例えば、抽出、沈澱、クロマトグラフィー、アフィ
ニティークロマトグラフィー、電気泳動などの、従来の条件によって、単離およ
び精製される。
先の方法によって得られたAPLP DNAコード配列は、明らかに、APLPをコードす
る配列、および、APLPアンチセンスRNA遺伝子配列を得るために用いられ得る配
列を提供する。アンチセンスRNA配列は、ペプチドコアのmRNAを転写する鎖の反
対鎖上に見出される配列である。アンチセンスDNA鎖はまた、このベクターを用
いた形質転換が、形質転換細胞中でのAPLPアンチセンスRNAの発現を可能とする
ように発現ベクターにおいて、プロモーターに作動可能に連結され得る。アンチ
センスRNAおよびその発現は、高度に特異的な様式で、APLP遺伝子の転写または
翻訳を阻害または抑制する様式で、内生的なAPLP DNAまたはRNAとの相互作用に
用いられ得る。アンチセンスRNAプローブの、遺伝子発現ブロックへの使用は、L
ichtenstein,C.、(Nature 333:801-802(1988))で考察されている。例えば、
このようなプローブは、発現が異常である場合に、APLPの発現をブロックするた
めに用いられ得る。
本発明を一般的に記載したが、それと同じことが図によって提供される以下の
実施例を参考にすることでより容易に理解され、そしてそれは限定されることを
意図されない。
実施例
実施例1
材料および方法
細胞培養およびタンパク質抽出物
ヒト神経膠腫H4細胞を、10%ウシ胎児血清、1% L-グルタミン、および1%ペ
ニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM培地に、37℃にて、5% CO2/95%O2
を含む湿潤大気中に維持した。
核抽出物を、Minerら(Miner,L.L.ら、J.Neurosci.Res.33:10-18(1992))
に従って調製した。最終タンパク質濃度は、0.5mg/mlと2mg/mlとの間で変化し
た。
DNAフラグメントおよびプラスミド構築物の調製
2つの相補的オリゴヌクレオチドを、ゲル移動度シフトアッセイで使用される
各DNAフラグメント用に合成した。オリゴヌクレオチドをアニールし、充填反応(
fill-in reaction)によって[α-32P]dCTPで末端標識した。
DK-1フラグメント配列は、ヒトAPPプロモーター(Salbaum,J.M.ら、EMBO J.
7:2807-2813(1988))の一次転写部位の-30位〜-58位にわたり、AP-1/AP-4エレメ
ント(下線が引かれる)を含有する:5'GGGCCGGATCAGCTGACTCGCCTGGCTCT3'(配
列番号2)。DK-1フラグメントのランダム化型は、以下のように下線を引かれた
ランダム化配列を選択的に含有する:5'ランダム:5'GCTTACTGTCAGCTGACTCGCCTG
GCTCT3'(配列番号4);AP-1/AP-4ランダム:5'GGGCCGGAATCGTGCTGTCGCCTGGCTCT
3'(配列番号5);3'ランダム:5'GGGCCGGATCAGCTGACGATACCTGTCCG3'(配列番号
6)。AP-1フラグメントは、c-fos/c-jun転写因子に対するコンセンサス配列(下
線が引かれる)を含有する(Mermod,N.ら、Naturc 332:557-561(198
8)):5'GATCCAGCTGACTCATCACTAG3'(配列番号7)。AP-4転写因子(Hu,Y.-F.ら
、Genes Rev.4:1741-1752(1990))に対するコンセンサス配列は、以下の配列に
おいて下線を引いてある:5'GATCACCAGCTGTGGAATGTGTGTGATC(配列番号8)。最
終的に、USF結合部位のコア配列(Gregor,P.D.ら、Genes Dev.4:1730-1740(19
90))は、USFフラグメントに挿入される:5'GGGCCGGATCACGTGACTCGCCTGGCTCT3'
(配列番号9)。
hAPP-ルシフェラーゼ構築物を、2.9kb EcoRII/BamHI APPプロモーターフラグ
メント(Salbaumら、EMBO J.7:3807(1988))をルシフェラーゼ発現ベクターpxP
2(Nordeen,S.K.Biotechniques 6:454(1988))のSmaI部位へ挿入して調製した
。pMLΔ53(C2AT)プラスミドを、記載(Royら、Nature 354:245(1991))のように
構築した。pCMV-USF構築物を、43kDa USFタンパク質をコードする遺伝子をpCMV
ベクターに挿入して調製した。pCMV-aplp1およびpCMV-aplp2構築物を、aplp1お
よびaplp2タンパク質をコードする遺伝子(下記)をpCMVベクターに挿入して調
製した。
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
EMSAを、Minerら(Miner,L.L.ら、J.Neurosci.Res.33:10-18(1992))のよ
うに実施した。1ngのDNAフラグメントを、他に示されていなければ、1μgの核抽
出物と、20℃にて20分間インキュベートした。rUSF量(Pognonec,P.ら、Mol. C
ell Biol 11:5125-5136(1991))は、図の凡例に示されている。インキュベーシ
ョン後に、結合混合物を、25mM Tris-ホウ酸(pH8.3)、0.5mM EDTA中の4%グ
リセロールを含有する6%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを乾燥し
、そして増感スクリーンとともにKodak X-OMAT ARフィルムに曝した。
ウエスタン分析および抗体
タンパク質抽出物を、Laemmli(Laemmli,U.K.、Nature 227:680-685(1970))
に従って、8%ポリアクリルアミドゲル上でサイズ分画し、そして20mM Tris(pH
7.4)、150mMグリシン、および20%メタノール中で、4℃にて4時間、100Vにて、
電気泳動によってImmobilon P(Millipore)へ移した。膜を、10mM Tris
(pH8.0)、150mM NaCl、0.05% Tween 20、3% BSA、0.05% NaN3で、20℃にて
1時間ブロックした。USF抗血清とのインキュベーション(Kaulen,H.ら、Mol.
Cell.Biol.11.412-424(1991))後に、その膜を、発光ルミノール/西洋ワサビ
ペルオキシダーゼシステム(ECLウエスタンブロッティング;Amersham)を使用
して、製造者のプロトコールに従って免疫染色した。c-fos抗血清(Oncogene Pr
oducts,Manhasset,NY)を、c-fosタンパク質のDNA結合エピトープに対して調製
した。
インビトロ転写およびプライマー伸長
インビトロ転写を、Dignam,J.D.ら、Nucleic Acids.Res.11:1475-1489(198
3)に従って(製造者(Promega Corp.)の推奨のように改変して)実施した。プ
ライマー伸長を、Martinez,E.ら、EMBO J.13:3115-3126(1994)に記載されてい
るように、転写産物において実施した。hAPP-ルシフェラーゼ構築物に対して特
異的なプライマーは、プロモーターとレポーター遺伝子との間の多重クローニン
グ部位の部分に対応し、以下の配列を有する:5'-GCTCAGATCTCGAGCTCGGTAC-3'(
配列番号3)。MLΔ53プラスミドに対するプライマーは、19bpのG-レス(G-less
)カセットを含有する:5'-GGAAATATAGAAGAAGGAG-3'(配列番号10)。RNAおよび
末端標識プライマーを、50%ホルムアミド、10mM Tris(pH7.5)、250mM KCl、
および1mM EDTA中で、65℃にて10分間および42℃にて一晩、ハイブリダイズし
た。配列決定反応を、APPプライマー伸長オリゴヌクレオチドを使用して、製造
者(United States Biochemical Corp.)の説明に従って実施した。
結果
H4細胞核抽出物を使用するAP-1/AP-4部位でのDNA-タンパク質結合
AP-1/AP-4エレメントが、H4神経膠腫細胞の核に存在する転写因子に結合する
かどうかを試験するために、AP-1/AP-4部位を含む、29bp32P標識二本鎖DNAフラ
グメント(DK-1、図1A(配列番号2)を参照のこと)を、H4核抽出物の存在下で
インキュベートし、そして非変性ポリアクリルアミドゲルで分離した(電気泳動
移動度シフトアッセイ、EMSA)。1つの分離したバンドが認められた(図1B)。
結
合の特異性を、増加する量のコールドのフラグメントの添加によって評価した。
コールドのフラグメントは標識フラグメントに対する結合の非常に迅速な減少を
もたらした。
29bp DK-1フラグメント中の結合に関わる領域を同定するために、3つの異な
る変異二本鎖DNAフラグメントを、競合アッセイにおいて用いるために合成した
。これらの最初の1つは、AP-1/AP-4の上流領域に位置するランダム配列を含有
し、2つ目は、AP-1/AP-4エレメント自身に位置するランダム配列を含有し、3
つ目は、AP-1/AP-4から下流領域に位置するランダム配列を含有した。標識フラ
グメントへの結合は、完全なAP-1/AP-4部位をなお含有する2つの競合体フラグ
メントの存在下でのみ有意に減少したが、一方、AP-1/AP-4部位に位置するラン
ダム配列を含有する競合体フラグメントは、結合に対して効率よく競合しなかっ
た。これらの結果は、H4核抽出物が、APPプロモーターのAP-1/AP-4エレメントに
特異的に結合する因子を含有することを示す。
AP-1/AP-4部位でのDNA-タンパク質相互作用は、c-Fos/c-JunまたはAP-4因子とは
異なる因子を含む
c-fos/c-jun複合体は、AP-1配列のみに相互作用することが知られている。従
って、組合せのAP-1/AP-4部位へ結合するタンパク質が、c-fos/c-jun複合体とAP
-4因子のどちらであるかを決定するために、EMSAを、AP-1およびAP-4エレメント
に対するコンセンサス配列を含有するDNAフラグメントの存在下、およびc-fosの
DNA結合部位に対するモノクローナル抗体の存在下で実施した(図2)。これらの
因子のどれもが、本発明者らのシステムにおいて、AP-1/AP-4部位への結合に影
響しなかった。次に、AP-1コンセンサス配列への特異的結合を、このフラグメン
トを標識し、そしてそれをH4核抽出物とインキュベートすることによって、評価
した。得られたDNA-タンパク質複合体は、AP-1/AP-4エレメントを使用して認め
られたものより遅く移動し(図4Bを参照のこと)、増加する量のc-fos抗体の存
在下で特異的に減少し、そして50倍過剰のDK-1フラグメントの存在によっては影
響されなかった(データは示されていない)。まとめると、これらのデータは、
AP-1/AP-4部位での結合が、c-fos/c-jun複合体またはAP-4因子を含まないことを
示す。
AP-1/AP-4部位に結合する因子はまたUSF結合部位と相互作用する
USFに対するコンセンサスエレメントのコア配列、CACGTG、を含む二本鎖DNAフ
ラグメントを標識し、そしてH4核抽出物とインキュベートした。得られた複合体
は、コアの位置でAP-1/AP-4部位によって得られたパターンと非常に類似する移
動パターンを示し、そして、インキュベーション混合物へのコールドのDK-1フラ
グメントの添加後に、特異的かつ迅速に減少した(図3)。逆に、AP-1/AP-4エレ
メントを使用した複合体形成もまた、コールドのUSFフラグメントの存在下で迅
速に停止した。これらの実験は、AP-1/AP-4およびUSF部位で形成されたDNA-タン
パク質複合体が、同じ因子または関連因子のいずれかを含有することを示す。
USFに対して惹起された抗血清はM-1/AP-4部位上の複合体を認識する
次に、USFが、AP-1/AP-4部位で形成されたDNA-タンパク質複合体の成分である
かどうかを調べた。この目的のために、最初に、43KDaの形態のUSFに対して惹起
されたポリクローナル抗血清を用いて、H4核抽出物中のUSFの存在について試験
し、そして組換えUSFタンパク質と共移動する、43kDa付近の単一バンドの存在を
実証した(図4A)。同じ抗USF抗血清はまた、AP-1/AP-4部位上で形成された複合
体の移動速度を有意に改変する能力を有した(図4B)。それは、通常のDNA-タン
パク質複合体形成量を著しく減少し、そしてより遅く移動する新たな複合体の形
成をもたらした。この複合体は、DNA-タンパク質複合体とのUSF抗体の相互作用
の結果であり、従って、「スーパーシフト」を引き起こす。抗USF抗血清の増量
は、より遅く移動するバンドの消失をもたらした。複合体形成の特異性は、抗US
F抗血清が、AP-1部位単独上での複合体形成に影響しないこと示すことにより、
確証された。もう1つのタンパク質であるAPP751に対して惹起されたコントロー
ル抗体は、AP-1/AP-4部位上での複合体形成に影響しなかった(データは示され
ていない)。まとめると、これらのデータは、AP-1/AP-4エレメントで形成され
たDNA-タンパク質複合体中に存在する因子が、抗原性でUSFに関連することを示
す。
組換え43KDa USFはAP-1/AP-4エレメントに結合する
AP-1/AP-4部位とUSFとの間の直接相互作用を実証するために、細菌で発現し、
そして細菌から精製された43kDaの形態のUSFを使用した。この組換えUSF(rUSF
)ポリペプチドは、EMSAでそのコンセンサス配列に結合し、種々の核抽出物で得
られたパターンと非常に類似するパターンを示すことが明らかにされている(Po
gnonec,P.ら、Mol.Cell Biol 11:5125-5136(1991))。少量(350pg)のrUSFとの
DK-1フラグメントのインキュベーションは、H4核抽出物で得られるパターンと同
じ移動パターンを示す、目に見える複合体形成をもたらした(図5)。形成され
た複合体量は、増加する量のコールドのフラグメントによって減少した。rUSFの
AP-1/AP-4部位への結合の特異性は、AP-1/AP-4部位がランダム化配列に置換され
た、非放射性DK-1フラグメントを使用する競合実験を通して実証された。ランダ
ム化AP-1/AP-4部位を含有するコールドのDK-1フラグメントの添加は、標識DK-1
フラグメント上のDNA-タンパク質形成を減少できなかった(データは示されてい
ない)。これらの結果は、rUSFが、AP-1/AP-4部位に特異的に結合することを示
し、そして、H4細胞核抽出物中に存在するUSFタンパク質が、APPプロモーター中
に存在するAP-1/AP-4部位上のDNA-タンパク質複合体の形成を、部分的または全
体的に担うことを、強く示唆する。
USFの存在は、構成的APP発現の上昇レベルを維持する
USFのAPPプロモーターからの転写を調節する能力を試験するために、細胞を含
まないインビトロ転写反応を、USFに対するコンセンサスエレメントを含有する
、増加する量のDNAフラグメントの存在下で、HeLa細胞核抽出物を使用して実施
した。
HeLa細胞核抽出物中のUSFの存在は、以前に特徴付られ(Pognonec,P.ら、Mol
. Cell.Biol.11:5125-5136(1991))、そしてこの研究においてウエスタンブロ
ット分析で確認された(データは示されていない)。USFレベルは、DK-1フラグ
メントへの増加した結合によって示されるように、H4神経膠腫抽出物中よりHeLa
核抽出物中で高った(図6A)。細胞を含まない転写アッセイで、正確な転写開始
部位が、+105位のBamHI部位から下流に位置するプライマーを用いたプライマー
伸長および直接配列決定によって、hAPP-ルシフェラーゼ構築物において実証さ
れた。さらなる転写開始部位もまた見いだされ(図6B)、そしてこれは、La Fau
ci,G.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.159:297-304(1989)による報告のも
のに対応する。
2つの構築物(1つは、APPプロモーターを含有し、そして1つはUSF部位を欠
くアデノウイルス主要後期プロモーターの53bpを含有する(Roy,A.L.ら、Natur
e 354:245-248(1991))を、インビトロ転写反応で同じように使用した。図6Cは
、USFコンセンサス部位を含有するDNAフラグメントの20倍モル過剰の添加が、AP
Pプロモーターからの転写を有意に減少することを示す。逆に、AP-1/AP-4部位が
ランダム配列で置換されたDNAフラグメントの存在は、同じモル濃度での転写を
減少しない。コントロール構築物は、この反応で類似のレベルの転写効率を示し
た。これらのデータは、核抽出物中のUSFの存在が、ヒトAPPプロモーターからの
基底レベルの転写の維持に重要であることを示す。
組換え43KDa USFはAPPプロモーターからの転写を活性化する
USFが、基底レベルを超えて、APPプロモーターからの転写を増加し得るかどう
かを試験するために、100ngのrUSFを、インビトロ転写反応に添加し、その後、
プライマー伸長分析を行った(図7)。転写産物量をこれらの条件下で2倍にし
た。50ngのrUSFは、類似の増加を与えるのに十分であった(データは示されてい
ない)。HeLa核抽出物中に既に存在する高レベルのUSFは、rUSFの添加後の転写
レベルのより強い増加を隠すように作用し得る。これらの結果は、USFが、APPプ
ロモーターからの転写の活性化に関与すること、および、核中のUSFレベルが、
合成されるAPP mRNA量に強く相関することを示唆する。
組換え43KDa USFおよびAPP/APLPファミリーは、APPプロモーターからの転写を調
節する
H4神経膠腫細胞を、以下の3つの構築物とコトランスフェクトした:APPプロ
モーター-ルシフェラーゼ遺伝子構築物、USF発現ベクター(pCMV-USF)またはそ
のコントロールプラスミド、およびAPP/APLPファミリー発現ベクター(pCMV-apl
p1、pCMV-aplp2、およびpCMV-APP)またはそれらのコントロールプラスミド。結
果は、相対的なルシフェラーゼユニットに関してアッセイされ、そして神経膠腫
細胞中のUSF単独発現が、コントロールに比較してAPPプロモーターからの転写を
約5倍活性化したことを示した。しかし、APLP1、APLP2、またはAPPのいずれか
がまた細胞中で発現された場合、各場合において、APPプロモーターからの転写
のUSF活性化は、コントロールに比較して約2倍の活性化に減少した。これらの
結果は、図8に図示されている。
実施例2
材料および方法
神経芽腫NB2A細胞を、以前(Magendantzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:
6581-6585(1985))に記載されたように維持した。放射性ヌクレオチドを、New E
ngland NuclearおよびAmershamから得た。制限酵素を、New England Biolabsか
ら、そして、PCR試薬をPerkin-Elmerから得た。
λgt11ライブラリーのスクリーニング。ライブラリーの調製およびスクリーニ
ングの一般的な方法は、Maniatisら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual
, Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,第2版(1989)に
開示されている。3つの異なるライブラリーを、λgt11中のマウス脳cDNAクロー
ンを得るために使用した。ランダムプライムライブラリーおよびオリゴ-dTプラ
イムライブラリーを、Clontechから得た。オリゴ-dTプライムライブラリーは、S
tratageneから得た。ライブラリーを、ランダムプライミングによって標識され
たcDNAを使用した標準的な方法(Feinbergら、Anal.Biochem.132:6-13(1983)
)に従って、ニトロセルロース(BA85,Schleicher and Schuell)またはナイロ
ン(Hybond-N,Amersham)にハイブリダイスすることにより、スクリーニングし
た。ポジティブクローンを、New England Biolabsから得たプライマー1218およ
び1222を使用した、λgt11挿入物のPCR増幅によって、大きさによる分類を行っ
た。
組換えDNA技術
DNAフラグメントを、pBluescript(Stratagene)またはM13(New England Bio
labs)ベクター中にサブクローン化し、そして両方の鎖を、製造者の説明に従っ
て、Sequenase(U.S.Biochemical)を用いて配列決定した。配列分析は、MITの
Whitaker College Computing FacilityのUWGCGプログラムを使用して行った。
5'cDNA伸長を得るためのRACE手順
使用されたRACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)手順は、Frohmanら(F
rohmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8998-9002(1988))およびOharaら(
Oharaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5673-5677(1989))の方法の組合せで
ある。RACE手順については、プライマーは、図10(配列番号15)に示される配列
のヌクレオチド699〜719および672〜692の相補物であった。RACE産物を、pBlues
cript中にサブクローン化し、69Aの5'の120bp EcoRI-PstIフラグメントにハイブ
ルダイズしてスクリーニングし、そしてポジティブクローンを配列決定した。
RNA分析
ポリA+RNAを、Badleyら(Badleyら、BioTechniques 6:114-116(1988))のよ
うに、オリゴ-dTビーズ(Collaborative Research)を使用して調製した。ノー
ザンブロット分析には、RNAを、ホルムアルデヒドを含有するアガロースゲル上
で分離し、標準的な方法(Sambrookら、Molecular Cloning(A Laboratory Manua
l),Cold Spring Harbor Laboratory,(1989))に従ってナイロン(BioTrace,G
elman Sciences)に移し、そして、UV Crosslinker(Stratagene)を使用してナ
イロンに架橋した。ブロットを、ChurchおよびGilbert(Churchら、J.Cell Bio
l.107:1765-1772(1988))の方法に従って、ハイブリダイズおよび洗浄した。転
写物の分子量は、RNA分子量マーカーを使用して決定した。
APLPペプチドに対する抗血清の産生
配列QQLRELQRH(配列番号1)を有するペプチドを、Howard Hughes Medical In
stituteのBiopolymers laboratoryおよびMITのCenter for Cancer Researchから
得た。20mgのペプチドを、本質的にMarcantonio,C.G.およびHynes,R.O.,J.
Cell Biol.107:1765-1772(1988)に記載のように、KLHに結合し、そして4羽のN
ew Bandシロウサギの免疫化を、Schatzら(Schatzら、Mol.Cell Biol.7:3799-
3805(1987))に記載のように実施した。
タンパク質調製
神経芽腫細胞由来のタンパク質を、PBSを用いた細胞洗浄、その後のSDS試料緩
衝液中での細胞溶解、および煮沸によって単離した。マウス脳由来のタンパク質
を、RIPA緩衝液(50nM Tris pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、1% Triton X-100
、1% Naデオキシコール酸、0.1% SDS、およびプロテアーゼインヒビター)1m
l中で1つの脳をホモジナイズして単離した。ホモジネートを、4℃にて30分間
、Eppendorf遠心分離機中で遠心し、SDS試料緩衝液と合わせ、そして煮沸した。
β-ガラクトシダーゼ融合タンパク質の調製
β-ガラクトシダーゼ-APLP1融合タンパク質を、標準的な技術(Sambrookら、M
olecular Cloning(A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory,(19
89))を使用して構築した。3'コード部分の666ヌクレオチドを含有するλgt11ク
ローンからのEcoRI-EcoRIフラグメント(図10(配列番号15)のヌクレオチド1380
〜2046)、およびAPLP非翻訳領域の258ヌクレオチド(図10(配列番号15)のヌク
レオチド2047〜2305)を、pUEX5ベクターのEcoRI部位中に連結した。
これらのプラスミドを含有する細菌からの総タンパク質溶解物を調製するため
に、一晩培養物(アンピシリン補充L-broth中に1:10希釈したもの)を、30℃で1
.5〜2時間増殖させ、次に、42℃(または、非誘導試料に対しては30℃)で2.5
〜3時間誘導した。次に、細菌を遠心沈降させ、プロテアーゼインヒビターを含
有する50% SDS試料緩衝液に再懸濁し、そして超音波処理して染色体DNAを剪断
した。
ウエスタンブロット分析
タンパク質試料を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、ニトロセルロー
スに移し、そして本質的にBirgbauer(Birgbauerら、J.Cell Biol.109:1609-1
620(1989))に記載のように、ウサギ抗体および125I-標識プロテインAを使用し
て調べた。
免疫蛍光
神経芽腫細胞を、固定の約48時間前にガラスカバースリップ上に播種した。固
定の24時間前に、神経芽腫細胞培地中のウシ胎児血清の濃度を、軸索伸長を誘導
するために10%から0.1%に変化させた。固定の20分前に、カバースリップへの
細胞付着を促進するために、コンカナバリンAを20mg/ml添加した。細胞を、3.7
%ホルムアルデヒド/PBS中で固定し、アセトン中で浸透し、そして1%仔ウシ
血清を含有するPBS中で、37℃にて30分間ブロックした。一次抗体をブロック緩
衝液中に希釈し、細胞に30分間適用し、そしてFITC結合ヤギ抗ウサギ抗体で可視
化した。細胞を、Zeiss Axioplan顕微鏡で観察し、そして写真をとった。ペプチ
ド競合実験のために、ペプチドを、細胞に加える前に、ブロック緩衝液中で30分
間、一次抗体とプレインキュベーションした(Donaldsonら、J.Cell Biol.111
.2295-2306(1990)およ微Moremenら、J.Biol.Chem.260:6654-6662(1985))。
結果
APLP1の同定およびクローニング
微小管結合タンパク質(MAP)をコードするcDNAクローンのスクリーニングで
は、クローンを、APPのオープンリーディングフレームと相同なオープンリーデ
ィングフレーム(ORF)を有することが見い出されている、マウス脳cDNAライブ
ラリー(Stratagene)から単離した。スクリーニングに使用されたプローブは、
MAPに対して惹起された抗体であった。APLP1は、いずれの既知MAPにも関連しな
い。
APP相同性が最初に同定されたcDNAクローンは、C末端コード配列部分および3
'非翻訳領域部分を含有した。APLP1 ORFを5'方向に伸長するために、プローブを
、2つのClontech λgt11ライブラリーをスクリーニングするために入手可能なc
DNAクローンの5'の大部分の領域から使用した。漸次より上流のプローブを用い
た反復スクリーニングは、1.8kb cDNAクローン、69A(図9)の単離をもたらした
。
この5'末端は、APLP1のコード配列中に存在するEcoRI部位を有し、そしてこれは
cDNAライブラリーの構築の間にメチル化を免れたEcoRI部位の結果である。
69Aの5'末端由来のプローブを用いたcDNAライブラリーのスクリーングは、こ
れ以外のAPLP1クローンをなんら同定できなかったが、Frohmanら(Frohmanら、P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8998-9002(1988))およびOharaら(Oharaら、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5673-5677(1989))によって開発されたRACE手順
の変形の使用は、69Aの5'EcoRI部位を超えてAPP相同鎖に広がる、数個の独立か
つ重複したcDNAクローンの単離を可能にした。最も長いクローンであるJ(図1
)は、開始メチオニンを含有しなかった。
RACE手順を介して得られた配列情報を用いて、PCRプライマーを作製し、そし
てクローンJによってコードされる5'の大部分の100塩基対を増幅した。このPCR
産物を、多くの全長APLP1クローンをうまく同定した、Stratageneマウス脳cDNA
ライブラリーのスクリーニングにおいて、プローブとして使用した。これらのう
ちの2つを配列決定して、APLP1 cDNAの最終313の5'ヌクレオチドならびにポリ
アデニル化シグナルおよびポリAテールを得た。推定の開始メチオニンは、真核
生物コンセンサス開始配列に一致する(Kozak,M.,Nucl.Acids Res.12:857-87
2(1984))。
APLP1はAPPに関連する
cDNA配列の2361ヌクレオチドは、図10(配列番号16)に示されるように、653
アミノ酸のオープンリーディングフレームをコードする。このタンパク質は、46
アミノ酸の短い細胞内C末端、23アミノ酸の膜貫通ドメイン、およびより大きな
細胞外N末端を有することが予測される。推定アミノ酸配列およびAPLP1の全体
構造は、APPのものと類似であり、それは完全な膜タンパク質に類似する(Kang
ら、Nature 325:733-736(1987))。図11(配列番号17〜18)に示される2つのア
ミノ酸配列のアラインメントは、全APLPがAPPと42%同一および64%類似である
ことを示す。
APLP1はAPP様タンパク質ファミリーのメンバーである
APLP1とAPPとの間の同一性は、3つの異なる領域(図12(配列番号19〜28))に
集中し、そこではこれらのタンパク質は、47、54、および56%同一および67、73
、および74%類似である。これらの同じ3つの領域は、APPおよびショウジョウ
バエAPP様タンパク質(ショウジョウバエAPPL)の間で共有されることが以前に
示され、これらの研究者によって、細胞外I(EI)、細胞外II(EII)、および細
胞質(C)ドメインと呼ばれた(Rosenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2478-2
482(1989))。細胞質ドメインの相同性はまた、ラット精巣ライブラリーから単
離された部分cDNAクローンに存在する(Yanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87
:2405-2408(1990))。APPのみが、アミロイドプラーク中に見出されるβA4配列
を含有する。
図12(配列番号19〜28)は、上記の4つのタンパク質のドメインのアラインメ
ントを示す。相同なアラインメントが、ショウジョウバエAPPL1およびAPPの間の
関連性について示された(Rosenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2478-2482
(1989))。精巣cDNAは、推定アミノ酸配列のこの部分のみが既知であるので(Ya
nら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2405-2408(1990))、Cドメインの比較に
おいてのみ包含される。EIは、APLP1オープンリーディングフレームのアミノ酸2
1位から始まり、136アミノ酸にわたる。全体でこれらの136アミノ酸の102個(75
%)が、APPまたはショウジョウバエAPPLのいずれかのそれぞれの位置のアミノ
酸と同一であるか、または、それらは、3つの全てのタンパク質で同じである。
この領域内の最も顕著な保存は、3つ全ての配列中の12個のシステイン残基の保
存である。特によく保存されているアミノ酸の2つの領域(図12において下線が
引かれる(配列番号19〜28))も存在し、これはAPLP1配列中のアミノ酸237〜271
にわたるグルタミン酸および/またはアスパラギン酸から構成される、異常に酸
性の領域と同様である(図10(配列番号16))。
EIIは、マウスAPLP1配列において130アミノ酸にわたる。130個中93個のAPLP1
アミノ酸(71%)が、APPまたはショウジョウバエAPPL配列のそれらの1つまた
は両方のいずれかの対応配列と同じである。この領域はまた、3つ全てのタンパ
ク質に保存されたN-グリコシル化部位を有する。
第3のドメインは、ラット精巣cDNAの推定アミノ酸配列を含めて、全てのタン
パク質のC末端細胞質領域を包含する。このドメイン内のAPP様ファミリーメン
バー間のアミノ酸の保存は特に強い。4つのタンパク質は、推定トランスメンブ
ランドメイン内に相同性を共有しないが(図11(配列番号17〜18); Rosenら、Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 86:2478-2482(1989); Yanら、Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 87:2405-2408(1990))、それら全ては、膜の細胞質側に荷電した残基(ア
ルギニン/リジン)の3〜4アミノ酸の領域を有する(図12(配列番号19〜28))。
この特徴は、その他のタンパク質の膜-細胞質連結部にしばしば認められ、膜中
のリン脂質との相互作用を可能にするか、または膜結合タンパク質のための移行
停止シグナルを提供とすると仮定された(Blobel,G.,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 77:1796-1500(1980))。
ノーザンブロット分析
図13は、図10(配列番号15)のヌクレオチド1791〜2305に対応するDNAでプロ
ーブされた、マウス脳および神経膠腫細胞由来のポリA+RNAを含むノーザンブロ
ットのオートラジオグラフを示す。これらのブロットは、マウス脳および神経膠
腫細胞に、このプローブにハイブリダイズする約2.4および1.6kbの2つのメッセ
ージが存在することを明らかにする。より大きなメッセージは、より小さなメッ
セージより比較的多くの量で存在するようである。両メッセージは、ストリンジ
ェントな条件下でプローブおよび洗浄されるノーザンにおいて一貫して認められ
るが、そのサイズ故に、cDNAが2.4kbメッセージに対応することが明白である。
マウスAPLP1 cDNAは、使用される条件下で、3.2および3.4kb APPメッセージにハ
イブリダイズしない(「材料および方法」;Kang,J.ら、Nature 325:733-736(1
987)を参照のこと)。
APLP1ペプチドに対する抗体の生成
APLP1 cDNAによってコードされるタンパク質をさらに特徴付けるために、抗体
を、マウスAPLP1の独特な配列に対応する合成ペプチドに対して惹起した。抗原
として使用したペプチドは、APLP1タンパク質のC末端付近に位置する9アミノ酸
のセグメント(QQLRELQRH)(配列番号1)に対応し、これは4つのタンパク質が
相同でない領域である。
4羽のウサギに、「材料および方法」に記載のように、ペプチドを注射した。
4羽のウサギのうち2羽(301および302)は、適切な免疫前の血清によって認識
されない、65kDaマウス脳タンパク質を強く認識する血清を産生した(図14A)。
抗血清301によって認識される約33kDaのより小さなタンパク質は、より大きなタ
ンパク質のタンパク質分解産物であり得る。図14Aにおいて、抗体のこれらのタ
ンパク質との相互作用の特異性は、もとのペプチドで予め吸収することにより、
抗体301のこれらのタンパク質への結合をブロックする能力によって実証され(
レーン2〜5);関連性のないペプチドは、抗体と65kDaまたは33kDaタンパク質の
いずれかとの相互作用には影響しない(レーン6)。抗血清301はまた、免疫前の
血清によって認識されない、神経膠腫細胞抽出物中に存在する65kDaタンパク質
を認識する(図14B)。
抗血清301の特異性をさらに確認するために、本発明者らは抗血清が、APLP1 c
DNAによってコードされる222個のカルボキシ末端アミノ酸を有する、β-ガラク
トシダーゼ融合タンパク質を認識するかどうかを決定した。図14Cは、抗血清301
によってプローブされた、細菌産生タンパク質のウエスタンブロットを示す。こ
の図のレーン6に見られ得るように、抗血清301は、β-ガラクトシダーゼ-APLP1
融合タンパク質と特異的に相互作用する。
APPのC末端に対して生成された多数の抗体が存在する。APPおよびマウスAPLP
1の間のこの領域内での同一性が特に強いので、これらの抗血清のいくつかもま
た、マウスAPLP1と相互作用しそうである。これらの抗血清の1つであるR37(Ka
ngら、Nature 325:733-736(1987);および、Ishiiら、Neuropatolo.and Appl.N
eurobiol.15:135-147(1989))は、APPのカルボキシ末端の15アミノ酸に対して
指向しており、これは2つのタンパク質が特に類似している領域である(図12(
配列番号19〜28)を参照のこと)。R37は、β-ガラクトシダーゼ-APLP1融合タン
パク質、および、抗血清301によって認識される65kDaタンパク質と共に移動する
、65kDaのマウス脳タンパク質を認識する(データは示されていない)。抗APP抗
体を惹起するために使用された15アミノ酸配列は、抗血清301の生成に使用され
た9アミノ酸とは重複しない。これらのデータは、65kDaタンパク質が、APLP1
融合タンパク質と共通の2つのエピトープを有することを示唆する。抗体は、AP
LP1のみを認識するようになされ得る。
抗APLP1抗血清はゴルジ内のタンパク質を認識する
抗血清301によって認識されるタンパク質の細胞下局在(subcellular localiza
tion)を、免疫蛍光によってアッセイした。神経膠腫細胞を301で染色すると、観
察されるパターンは、核近傍の網状染色である(図15A、B)。染色の3次元特性
および細胞の円形の理由から、焦点の任意の平面に認められる像は、網状ではな
く斑点状に見える。同じパターンが、抗血清302を用いて認められる(データは
示されていない)。パターンそれ自体は、ゴルジ染色を連想させ、これらの細胞
が、既知のゴルジ酵素であるマンノシダーゼIIに対する抗体によって染色される
場合は、抗血清301を用いて認められるパターンにずっと類似したパターンが、
観察される(図15C)。抗体インキュベーション中にもとのペプチドを含有させ
ることにより、301染色が阻害された(図15D)。染色は、免疫前の血清が使用さ
れた場合には認められなかった(図15E)。
考察
本発明のAPLP1 cDNA配列は、APP様ファミリーの新たなメンバーをコードする
。ヒトアミロイド前駆体タンパク質のマウスホモログは、以前にクローン化され
、そしてアミノ酸レベルでヒト配列と96.8%同一ある(Yamadaら,Biochem.Bio
phys.Res.Comm.158:906-912(1987))。従って、アミノ酸レベルでアミロイド
前駆体タンパク質に42%同一である、本発明のAPLP1 cDNAは、APPのマウスホモ
ログではなく、異なるが関連するタンパク質である。
2つの配列は、3つの相同ドメインを共有する。これらのドメイン内のアミノ
酸保存は、12個のシステイン、異常に酸性の領域、潜在的なN-グリコシル化部
位、疎水性膜貫通領域、および厳密に一致する数個の特異的ブロックを包含する
。マウスAPLP、ショウジョウバエAPPL、ラット精巣タンパク質、およびAPPは、
タンパク質ファミリーを構成することが明かである。アミノ酸同一性の広範囲な
保存、およびこのタンパク質ファミリー内の全体および特異的ドメイン構造の両
方
の保存は、これらのタンパク質が共通の機能を共有することを示唆する。
APP様ファミリー内のタンパク質の細胞質テール内に位置する7アミノ酸配列
の厳密な保存に関係してなされ得る、2つの可能な興味深い観察が存在する(図
12(配列番号19〜28)の適切な部分における下線を付した配列を参照のこと)。4
つ全ての配列のカルボキシ末端から8〜9アミノ酸に、潜在的なチロシンリン酸化
部位が存在する(Tamkunら、Cell 46:271-282(1986))。APPは、形質転換未熟腎
細胞に導入されるときに、リン酸化され得(Oltersdorfら、J.Biol.Chem.265
:4492-4497(1990))、そして、細胞質ドメインの部分を含むペプチドは、インビ
トロにおいて、セリンおよびスレオニン残基でリン酸化され得るが(Gandyら、P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6218-6221(1988))、チロシンリン酸化は、いま
だに実証されていない。タンパク質リン酸化を調節することが知られている物質
は、APPの成熟型のタンパク質分解的プロセッシングの速度に影響するようであ
り(Buxbaumら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6003-6006(1990))、このこと
は、異常なタンパク質リン酸化が、βA4産生に関与し得ることを示唆する。この
チロシンの周囲の配列もまた、数個のクラスの中間フィラメント間で保存されて
いる、αヘリックスドメイン中の唯一のチロシンと相同性を共有する(Lendahl
ら、Cell 60;585-595(1990))。この潜在的にリン酸化されるチロシンの保存は
、チロシンリン酸化が、細胞増殖および分化の調節において果たすことが知られ
ている、役割の観点から興味深い。
同じチロシンは、低密度リポタンパク質レセプターのリガンド非依存性被覆小
胞媒介吸収に必要とされると考えられている、四量体配列NPxYの部分である(Ch
enら、J.Biol.Chem.265:3116-3123(1990))。このNPxY配列は、βインテグリ
ンレセプターおよびEGFレセプターファミリーのメンバーを含む、少なくとも16
のその他の細胞表面レセプター分子の細胞質テールに存在する(Chenら、J.Bio
l.Chem.265:3116-3123(1990))。
単離されたAPLP1 cDNAは、マウス脳ホモジネートおよび神経膠腫細胞抽出物中
に存在する、65kDaタンパク質と少なくとも1つのエピトープを共有し、そして
神経膠腫細胞中のゴルジに局在するタンパク質とエピトープを共有する。ショウ
ジョウバエAPPLタンパク質を認識する抗血清はまた、ゴルジ中のタンパク質を認
識する(Luoら、J.Neurosci 10:3849-3861(1990))。さらに、APPに対する抗体
は、筋肉繊維において免疫蛍光に使用された場合に、ゴルジまたはERのいずれか
の局在を示唆する、核周囲染色パターンを与える(Zimmermannら、EMBO J.7:36
7-372(1988))。ショウジョウバエAPPLタンパク質およびAPPの両方のN末端細胞
外部分は、膜またはその付近での切断を介して、分泌され得る(Weidmanら、Cel
l 57:115-126(1989); Zimmermann ら、EMBO J.7:367-372(1988);および、Palme
rtら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6338-6342(1989))。APPファミリーのタ
ンパク質の通常の機能は潜在的のままであるが、本発明の結果は、APPおよびシ
ョウジョウバエAPPLのように、APLP1が、ゴルジ中でプロセスされるか、または
ゴルジ中に存在し得ることを、示唆する。
APP様タンパク質ファミリーの存在は、これらのタンパク質が、機能を共有し
得ることを暗示する。N末端のシステインの保存は、保存された3次および/ま
たは4次構造の暗示であり、そしてこれはこれらの分子が共通の細胞外分子と相
互作用し得ることを示唆する。同様に、細胞内C末端内の強いアミノ酸保存は、
このファミリーのタンパク質が、細胞内部の共通の分子と相互作用し得ることを
示唆する。APPに対する別の生理学的役割はまだ決定されないままである。APP様
ファミリーのタンパク質の任意のメンバーの機能に対する手がかりは、APPの通
常の機能およびプロセッシングおよび調節を解明する助けになるはずである。
実施例3
APLP1をコードするヒト染色体遺伝子座のマッピング
マウス脳cDNAの部分およびヒト脳cDNAライブラリーから単離された1.8kbの部
分cDNAを、APLP1をコードするヒト染色体遺伝子座をマッピングするために使用
した。ヒト染色体APLP1フラグメントの選択同定のための最良の制限消化を決定
するために、ヒト、マウス、およびハムスターのゲノムDNAを、EcoRI、HindIII
、PstI、およびTaqIによる消化後に、ヒト部分cDNAクローンを使用したサザンブ
ロットハイブリダイゼーションによって分析した。齧歯類から明白に見分けられ
た、ヒトDNAフラグメント(約8kbおよび3.3kb、データは示されていない)を生
じたので、EcoRIをさらなる分析のために選択した。既知の核型の31のヒト−齧
歯類
体細胞株(Geisslerら、Somat.Cell Mol.Genet.17:197-214(1991))由来のDNA
のパネルをEcoRIで消化した。次に、これらのDNAを、ヒトAPLP1 cDNAクローンで
プローブし、そしてハイブリダイゼーションパターンは、APLP1遺伝子座の第19
染色体への割当てに一致した。
第19染色体上のAPLP1遺伝子座の局部的な位置を決定するために、全長のマウ
ス脳APLP1 cDNAを、ヒト第19染色体のみ、またはこの常染色体の特定のフラグメ
ント、およびその他の染色体を含有する多数の体細胞ハイブリッド由来のEcoRI
消化ゲノムDNAにハイブリダイズさせた(G35CCB、G35F3B、GM89A99c7B、G24B2AM
、FON1A4、TVB1D、1016A、および5HL94;図16)。GM89A99c7B以外のこれらの全
ハイブリッド株は、2つのヒト特異的APLP1バンドを有する。GM89A99c7Bは、908
K1、G35F3、およびG35FCCに生じる、X:19転座の相互部分を有する(図16)。こ
れらの結果は、第19染色体の短腕からAPLP1遺伝子座を排除し、それを19q13.2と
セントロメア間に置く。
考察
APLP1について生理学的役割は決定されなかったが、そのマップ位置は、アル
ツハイマー病(AD)とのその潜在的な関係の観点で興味深い。アルツハイマー関
連アミロイドの主要成分は、第21染色体上の遺伝子によってコードされる、より
大きなアミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来する、39〜43アミノ酸のβA4
ペプチドである(Kangら、Nature 325:733-736(1987); Robakisら、Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 84:4190-4194(1987); Tanziら、Science 235:880-884(1987))
。家族性アルツハイマー病(FAD)の早発(>65才)型に対する遺伝子欠損は、
第21染色体にマッピングされ(St.George-Hyslopら、Science 235:885-889(198
7))、そして低い割合(<3%)のFADが、APP遺伝子内の変異に起因するようで
ある(Chartier-Harlinら、Nature 353:884-846(1991); Goateら、Nature 349:7
04-706(1991); Murrellら、Science 254.97-99(1991))。遺伝子的不均質性もま
たFADについて報告され(St.George-Hyslopら、Nature 347:194-197(1990))、
そしてFAD家系の一連の遅発(>65才)が、第19染色体に関連することが最近実
証された(Pericak-Vanceら、Am.J.Hum.Genet.48:1034-1050(19
91))。APLP1の19qの近位部分への染色体局在化(regional chromosomal localiz
ation)、およびこの遺伝子のAPPに対する有意な相同性の故に、APLP1は、FADの
遅発型を担う遺伝子欠損の候補である。
実施例4
アルツハイマー関連アミロイドBタンパク質前駆体のホモログをコードするヒトA
PLP2遺伝子の単離および特徴付け
APPタンパク質ファミリーのその他のメンバーを単離する試みにおいて、相同
配列についてGenbankデータベースを検索するために、マウスAPLP1配列を最初に
使用した。APP、APPLおよびマウス精巣由来の部分cDNAに対するマッチを得るこ
とに加えて、無名の274塩基対のヒト脳cDNAエントリー(Genbank受託番号M78104
)とのマッチが、注目された。有意であったがマウスAPLP1と同じではない(63
%同一)このマッチは、M78104が、第2のAPLPをコードするcDNAの小さな断片で
あったことを示した。APP様遺伝子ファミリーをさらに詳細に特徴づけるために
、この第2のAPLPであるAPLP2に対する全長cDNAを単離した。ヒト脳由来のAPLP2
cDNAクローンの単離および特徴付けは、APPが、高度に保存された遺伝子ファミ
リーのメンバーであるという仮説に対して、さらなる支持を提供する。
ヒト脳前頭皮質λZapII cDNAライブラリー(Stratagene)を、Genbankで同定
された274塩基対部分cDNA配列の一部分を増幅するために設計されたプライマー
を用いて生成された、PCR産物からなるプローブでスクリーニングした。プロー
ブを調製するために、プライマーセット(5'GCAACCGAATGGACAGGGTA3'(配列番号1
1))および5'CAAGGCAGCCAGGTAGTTCTC3'(配列番号12);図17を参照のこと)を
、ヒト後頭皮質cDNAライブラリーから232塩基対産物を増幅するために使用した
。PCR産物を、その同一性を確認するために配列決定し、そして内部プライマー
セット(5'GTAAAGAAGGAATGGGAAGAGGC3'(配列番号13)および5'CCATCCGACGGCGGTCA
TTCAGC3'(配列番号14);図17を参照のこと)を設計し、そしてヒト脳ライブラリ
ーのスクリーニング用に使用した185塩基対PCRフラグメント(SG190)を増幅する
ために使用した。全長cDNAを含む、SG190-ポジティブクローンのスクリーニング
、精製、および配列決定を、標準的な条件に従って実施した(Wascoら、Proc.N
at
l.Acad.Sci.USA 89:10758-10762(1992))。
ヒトAPLP2は、全体構造およびアミノ酸配列においてAPPおよびAPLP1に類似す
る、706アミノ酸配列によってコードされる。APLP2は、APP695に対して52%同一
、69%類似であり(図17)(配列番号29〜30)、APLP1に対して43%同一、63%
類似である。APP、APPL、およびAPLP1を特徴づける、実質的に全ての同定された
ドメインおよびモチーフが、APLP2に存在する。詳細には、N末端システインリ
ッチ領域(12個のシステインからなる)、新規亜鉛結合モチーフ(Bushら、Neur
obiol.Aging 13(補遺1):A.331(1992))、酸性リッチドメイン、N-グリコシル
化部位、疎水性膜貫通ドメイン、ならびにクラスリン結合モチーフおよび潜在的
なセリン/スレオニン、カゼインキナーゼ(casine kinase)I、II、およびチロシ
ンリン酸化部位を含有する細胞質ドメインが、APLP2において保存されている(
図17)。図18(配列番号31〜33)は、APLP2、APP、およびAPLP1において同一で
あるかまたは保存的に置換されているアミノ酸を示し、これは、これらのタンパ
ク質間の非常に高度な保存を実証する。図18(配列番号31〜33)に示されている相
同アミノ酸のこれら広がりのうちのいくつかは、このタンパク質ファミリーの機
能に密接に関係する、潜在的なコンセンサスモチーフを含有し得る。
APLP2遺伝子の染色体位置
APLP2遺伝子の染色体位置を決定するために、cDNAプローブを、個別のまたは
特定の組のいずれかのヒト染色体を有する、43のヒト−齧歯類体細胞ハイブリッ
ド株のパネル由来のHindIII消化DNAを有するフィルターに、ハイブリダイズさせ
た(Pelletierら、Genomics 10:1079-1082(1991); Geisslerら、Som Cell Gen17
:207-214(1991))。プローブは、体細胞ハイブリッド株中に特異的ヒトAPLP2バ
ンドを検出し、これはAPLP2遺伝子座のヒト第11染色体への割当てに一致する。
詳細には、ヒトAPLP2に対するポジティブシグナルが、その唯一のヒト物質とし
て第11染色体由来のDNAを有する体細胞ハイブリッド様において、そして第11染
色体および3つのその他のヒト染色体を有するハイブリッドにおいて得られた。
ヒトAPLP2 cDNAクローンの配列決定の間に、12アミノ酸の広がりをコードする
エキソンを有する、1つのオルタナティブスプライシング型(alternatively sp
liced form)が同定され、これは、APPのように、APLP2がオルタナティブ転写さ
れることを示す(図17)。マウス胚から単離されたAPLP2 cDNAの一部分は、APP
中のものと類似のKPIドメインを有したが、このようなドメインを有する成体ヒ
トAPLP2の型は、まだ検出されていない。
ノーザンブロット分析
胎児末梢組織および成体脳領域のノーザンブロット分析により、APLP2メッセ
ージが約4kbの大きさであることが実証された(図19)。約3kbおよび2kbのよ
り小さいバンドは、APP/APLPファミリーのその他のメンバー由来の交差ハイブリ
ダイズするメッセージ、または、いまだに単離されていないAPLP2オルタナティ
ブ転写物のメッセージを表し得る。APLP2転写物は、試験した全ての末梢および
中枢神経系組織において変動するレベルで検出され、そしてそれは、APPのもの
と非常に類似する発現のレベルおよびパターンを示した(図19A)。両転写物は
、脳、心臓、および腎臓で比較的多量に発現され、そして肝臓および胸腺ではよ
り低レベルで発現される。しかし、APPとは対照的に、APLP2は、小腸および肺で
、比較的高レベルで発現される。
ヒト成体脳でのAPLP2転写物の分布を決定するために、ノーザンブロット分析
を、11の異なる脳領域由来のmRNAについて実施した(図19B)。この同じブロッ
トは、以前にAPPにハイブリダイズされたので、従って、これは2つの遺伝子の
発現の直接比較を可能にする(Tanziら、Science 235:880-884(1987); Tanziら
、Nature 331:528-530(1988))。APLP2 mRNAレベルは、側頭連合皮質(A20、Tan
ziら、Nature 331:528-530(1988))、後ペルシルビアン皮質−上縁回(A40)、
前ペルシルビアン皮質−弁蓋回(A44)、および皮質前頭極(A10)において、最
も高かった。AD患者の脳において特に影響されるこれらの領域は、正常には、比
較的多量のAPP RNAを含有する。中程度なハイブリダイゼーションが、小脳皮質
および尾形被殻に検出された。比較的より弱いハイブリダイゼーションが、線条
皮質、線条外皮質、および運動皮質(A17、A18、およびA4)、海馬、ならびに視
床に認められた。いくつかの相違は認められたが、全体に、APLP2は、APPと非常
に類似する発現パターンを示した(図19B; Tanziら、Science 235:880-884(198
7); Tanziら、Nasture 331:528-530(1988))。例えば、APLP2は、視床においてA
PPより比較的高いレベルで発現されるが、一方、APPの発現は、Brodman領域A40
において、APLP2の発現より高かった。
図20は、正常およびダウン症候群(DS)の胎児の脳由来のRNA、ならびに正常
およびADの成体の脳由来のRNAに対する、APLP2およびAPP cDNAプローブのノーザ
ンブロットハイブリダイゼーションの結果を示す。APP発現は、DS試料において
より高いが、APLP2発現は、有意に変化しない。この結果は、DS患者において存
在する第21染色体の余分のコピーを前提とすれば、予想外ではない。APP発現は
、正常成体小脳に対してADにおいてわずかにより低く、そして正常前頭皮質に比
較してAD前頭皮質において劇的に減少する(図20)。APP発現のこの減少は、お
そらく、前頭皮質において特に増強される、この領域でのAD関連ニューロン消失
の反映である。驚くべきことに、APP発現は、正常小脳に比較して、AD小脳にお
いていくぶん減少するが、APLP2発現は、この同じAD小脳試料において明白に増
加することが、ここで見出された(図20)。1つの可能性は、これが、APPのよ
り低いレベルに対応したAPLP2発現の代償的増加を反映し得るということである
。APLP2の増加した発現が、APPメッセージの減少に先行したことが、同様に考え
られ得る。
本発明の発明者らは、APLPが、成熟およびプロセッシングに関与する因子につ
いて、APPと競合し得ることを発見した(Wascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
89:0758-10762(1992))。このことは、2つのタンパク質が、同一の細胞集団内
で、産生およびプロセッシングされることを必要とする。この問題点に対処する
ために、海馬形成(ADにおいて重篤に影響される領域)内でAPLP2 mRNA転写物を
局在化するために設計された、非アイソトープインサイチュハイブリダイゼーシ
ョン研究を、使用した。APLP2に対するmRNAが、体細胞、およびある程度まで、
海馬形成における錐体ニューロンのニューロン突起の両方に含有されることが、
見出された(図21)。ずっと少ないハイブリダイゼーションが、より小さい介在
ニューロン、神経膠細胞、および内皮細胞において観察された。細胞下局在化は
、同じインサイチュハイブリダイゼーション手順を用いて、APPおよびAPLP1メッ
セージについて認められたものと同様である(Tanziら、Mol.Brain Res.印刷
中;Hymanら、Mol.Brain Res.印刷中;Wascoら、Alzheimer's disease and rel
ated disorders 1992:selected communications(印刷中))。さらに、APLPメッ
セージの細胞特異性および局在分布もまた、APPのものと非常に類似しており、
このことは、APPおよびAPLPが、海馬形成において同じニューロンのセット内に
位置することを示す。
APP遺伝子ファミリー内でのアミノ酸配列およびドメイン構造の全体の保存に
基づいて、これらのタンパク質は、共通機能を共有し得、そしておそらく同様に
プロセッシングされ得る(Wascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10758-107
62(1992))。最近のデータはさらに、APLP2およびAPPが同様なプロセッシングを
経ることを示す(未公表データ)。APP、APLP1およびAPLPに対する抗体は、ゴル
ジ内のタンパク質を認識する(Wascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10758
-10762(1992); Zimmermannら、EMBO J.7:367-372(1988); Palaciosら、Mol.Br
ain Res.15:195-206(1992); Luoら、J.Neurosci.10:3849-3861(1990))。同様
に、APLP2は、ゴルジ装置に結合しているようである(未公表データ)。このこ
とは、これらのタンパク質のゴルジでの成熟が、共通の因子との相互作用を非常
に包含しそうであることを示唆する。APPおよびAPLP2のプロセッシングおよび成
熟における明白な類似性は、APLP2またはその他のAPLPの変化された発現が、こ
れらの遺伝子が同時発現される細胞内で、APPの翻訳後の修飾および代謝に影響
し得る可能性を生じる。APLP2またはその他のAPLPが、APPの適切な成熟(例えば
、N-またはO-グリコシル化)を妨害するのであれば、APPは、アミロイド形成へ
傾向付けられる経路を含む、別の経路に迂回され得る。これらの同じ線に沿って
、APPのプロセッシングを担う代謝機構が、APLPファミリーのメンバーによって
過剰に負担をかけられると、APPの変化された代謝が生じ得、それは、おそらく
、アミロイド生成フラグメントの増加された産生をもたらす。従って、APLP2お
よびAPLP1は、Aβドメインを有さないが、それらは未だに最終的に、APPの成熟
および/または代謝に影響し得る。
本発明が、組成物、濃度、投与様式、および条件の広範囲の等価パラメーター
内で、本発明またはそのすべての実施態様の精神または範囲を逸脱することなく
、実施され得ることは、当業者に理解される。
本明細書に記載の全ての参考文献、特許出願、および特許の開示は、本明細書
に参考として援用されている。