【発明の詳細な説明】
レール車両に用いられ制動され
かつ/または駆動される輪軸を
支持し、案内しかつ舵取りする
ための装置
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、レール車両に用いられる制
動されかつ/または駆動される輪軸(Radsatz)を支持し、案内しかつ舵
取りするための装置に関する。
既に鉄道の初期の時代から、2軸式レール車両の輪軸を曲線線路においてカー
ブ半径に合わせて調節するために舵取り軸として形成することが知られている(
Pfeffer F.、Kleinhanns、G.;Budweis−Lin
z−Gmunden(1828年)、出版社Verlag J.O.Sleza
k、Wien l982年)。
英国特許第858933号明細書には、単段式にばね支承された走行機構が開
示されている。この公知の走行機構では、走行機構フレームが軸受けに支持され
ていて、シューガイドを介してこの軸受けに案内されている。この走行機構フレ
ームには、ばね装置が配置されており、このばね装置には特別に形成された上側
のばね受けを介して車体が支持されている。このばね
受けは走行機構長手方向で見て鉛直なガイドを有している。このガイドには、対
応して形成された、走行機構フレームに固く結合された鉛直な各1つのピンが係
合している。これにより、走行機構フレームのヘッド部分と車体との間に配置さ
れた舵取りロッドを介して、走行機構フレームは傾動運動防止されて安定化され
ている。このような傾動運動は、制輪子ブレーキとして形成されて走行機構フレ
ームに懸吊されている制動装置からの反動力として生じる。
上記英国特許第858933号明細書に記載の別の実施例では、輪軸伝動装置
の瞬間支持部が走行機構フレームに支持されており、この走行機構フレームは二
重のリンク機構を介して車両に対して安定化されている。
欧州特許第0082043号明細書には、2段式にばね支承された走行機構が
開示されている。この公知の走行機構では、輪軸が第1のばね段において、ほぼ
鉛直方向でばね弾性的に走行機構フレームに支承されている。この走行機構フレ
ーム自体はリンクを介して車体に案内される。カーブ半径調節、つまり輪軸をカ
ーブ半径に合わせて調節することは、車輪/レール接触ジオメトリを介して、第
2のばね段の4つの支持ばねに抗して行われる。この第2のばね段において車体
は走行機構フレームに支持されている。制動装置は制輪子ブレーキとして形成さ
れていて、走行機構フレー
ムに懸吊されており、この場合、制動モーメントは2段式のばね装置と走行機構
の枢着部とを介して車体に支持される。
しかし、上で述べた全ての実施例は、セルフ制御式の輪軸に付随する欠点が生
じる点で共通している。すなわち、カーブ半径調節は軌道状態およびこれによっ
て生ぜしめられる車輪/レール接触ジオメトリに著しく依存している。したがっ
て、路線網における種々異なるレール状態ならびに種々の不規則な軌道状態偏差
に基づき生じる誤調節を排除することができない。したがって、このような誤調
節により高められた磨耗が生じてしまう。
このような背景を考慮して、欧州特許第0295462号明細書に開示された
実施例では、輪軸が走行機構フレームに支承されて、この走行機構フレームと共
に強制制御されるようになっており、しかもカーブ半径調節のためにレールの磨
耗状態とは無関係に高さ方向軸を中心にして旋回可能である。長手方向における
走行機構の案内は、少なくとも1つの長手方向リンクを介して行われる。この長
手方向リンクは車体と走行機構フレームとの間に角度運動可能に配置されている
。走行機構のカーブ半径調節のためには、付加的な抗張エレメントおよび/また
は抗圧エレメントが設けられており、この抗張エレメントおよび/または抗圧エ
レメントを介して、先行する車両の角度運動は後続の
車両の前側輪軸の走行機構フレームへ伝達される。後側輪軸のカーブ半径調節は
、1つの車両に設けられた両走行機構の走行機構フレームの間に十字形に配置さ
れた結合リンク機構によって行われる。
役割的に見て上記欧州特許第0295462号明細書に開示された構成は、少
なくとも2つの輪軸を有するコンベンショナルなボギー台車と比較して、軽量構
造型の走行機構である。このような軽量構造型の走行機構は最近、文献に基づき
、輪軸・個別走行機構(Radsatz−Einzelfahrwerk:RE
F)もしくは個別車輪・個別走行機構(Einzelrad−Einzelfa
hrwerk:EEF)として知られている。しかしこの場合にも、当然ながら
車体を支持するために曲げビームとして形成されていなければならない走行機構
フレームの使用により、多くの不要な重量が連行される。このことはいかなる点
でも不都合であると認められる。
本発明の課題は、前記欠点が回避され、しかも重量低減の理由から従来汎用の
走行機構フレームが不要にされるような、制動されかつ/または駆動される輪軸
を支持し、案内しかつ舵取りするための装置を提供することである。
この課題は、本発明によれば請求項1の特徴部に記載の構成により解決される
。本発明の有利な構成は請求項2以下に記載されている。
本発明による装置により、前で述べた構造の公知の走行機構の重量を最小値に
まで低減させることができる。さらに、本発明による装置は走行機構フレームを
不要にしたことに基づき、低床ホーム式(niederflurig)のレール
車両の製造を助成するので有利である。
このためには、輪軸が両側で軸受けハウジングに設けられた軸受けによって支
承されており、この軸受けハウジングがリンク機構を介して案内されて、舵取り
され、さらに舵取り装置に対して支持される。この舵取り装置自体は車体に懸吊
されており、車体はばね装置を介して、前記軸受けハウジングに直接に支持され
る。軸受けハウジングには、単純でかつ軽量の構成要素フレームが弾性的に弾発
するように載置されて取り付けられている。この構成要素フレームは制動構成要
素および/または駆動構成要素を取り付けるために役立つ。この場合、生じる反
動力はリンク機構を介して車体に支持される。舵取り装置により、先行する車両
の角度運動はリンク機構を介して軸受けハウジングへ伝達されるので、輪軸は常
時、所属の構成要素フレームと共に、しかもレールの摩耗状態とは無関係にカー
ブ半径に合わせて調節される。本発明によれば、このような旋回過程時ならびに
車体の鉛直方向のバウンド(Einfedern)時または水平方向における横
方向バウンド(Querfedern)時に、輪軸と
制動構成要素もしくは駆動構成要素との間に不都合な相対運動は決して生じない
。
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
第1図は、レール車両に用いられる制動されかつ/または駆動される輪軸を支
持し、案内しかつ舵取りするための本発明による装置を示す斜視図であり、
第2図は、第1図に示した本発明による装置の別の実施例を示す斜視図であり
、
第3図は、第1に示した本発明による装置のさらに別の改良形を示す斜視図で
ある。
第1図に示した実施例では、外側支承された輪軸1(択一的に内側支承されて
いてもよい)が両側で、軸受けハウジング6;6′に設けられた軸受け5;5′
に支承されている。この軸受けハウジング6;6′は真ん中で軸受け5;5′の
上方に配置された、水平方向の各1つのばね受け面7;7′を有している。この
ばね受け面7;7′は車体2を直接に支持するための車両ばね装置8;8′(図
示しない)を取り付けるために働く。
各軸受けハウジング6;6′は走行方向で見て一方の側に、鉛直方向で上下に
配置された2つの枢着点9,10;9′,10′を有している。これらの枢着点
では、軸受けハウジング6;6′が各1つのリンク機構3;3′を介して4点支
持式に案内されて、舵取り
装置4を介して車体2に支持されている。このためには片側当たり2つの、休止
位置においてほぼ水平方向で上下に位置する長手方向リンク13,14;13′
,14′が抗張/抗圧ロッドとして形成されている。これらの長手方向リンクは
走行方向で互いにほぼ平行に、軸受けハウジング6;6′に設けられた枢着点9
,10;9′,10′と、舵取り装置4に設けられた枢着点11,12;11′
,12′との間に枢着式に配置されている。
舵取り装置4は車体2に設けられた各1つの支持部15;15′で、鉛直な軸
16;16′を中心にして旋回可能に支承部17,18;17′;18′に支承
されている。このためには、舵取り装置4の一方の側にL字形のレバー20が設
けられており、このレバー20は外側のジョイント点21でレバー20の脚部2
2を介して鉛直な軸16を中心にして旋回可能に結合されている。舵取り装置4
の他方の側にはT字形のレバー19が設けられており、このT字形のレバー19
は外側のジョイント点21′で脚部25を介して鉛直な軸16′を中心にして旋
回可能に結合されている。さらに、舵取り装置4の両側は直交方向に位置するリ
ンクロッド28を介して互いに旋回可能に結合されている。このリンクロッド2
8はL字形のレバー20と、T字形のレバー19との間で各1つの旋回支点24
;24′に配置されている。T字形のレバー19は輪
軸1をカーブ半径に合わせて調節する目的で、付加的に他方の脚部26において
、外側のジョイント点27で枢着ロッド29を介して、先行する車両(図示しな
い)に結合されている。L字形のレバー20およびT字形のレバー19の、それ
ぞれ走行方向に対して直交する横方向で外側に向けられた脚部23;23′はリ
ンク機構3;3′を取り付けるために形成されていて、枢着点11,12;11
′,12′を備えている。これらの枢着点には長手方向リンク13, 14;1
3′, 14′が枢着式に配置されている。
先行する車両の角度運動によって生ぜしめられる舵取りパルスは枢着ロッド2
9を介して舵取り装置4に伝達される。そしてT字形のレバー19が鉛直な軸1
6′を中心にして旋回させられると同時に、L字形のレバー20もリンクロッド
28を介して鉛直な軸16を中心にして平行四辺形リンク機構式に旋回させられ
る。舵取り装置4がリンク機構3;3′に連結されていることに基づき、この運
動は直接に軸受けハウジング6;6′に伝達される。この場合、T字形のレバー
19およびL字形のレバー20の同一方向の旋回運動は両側のリンク機構3;3
′の互いに逆向きの長手方向運動に変換されて、軸受けハウジング6;6′へ伝
達されるので、輪軸1は所属の構成要素フレーム30と共にレールの磨耗状態と
は無関係にカーブ半径に合わせて調節される。さらに、両側で互いに平行に配置
された長手方向リンク13,14;13′,14′の働きにより、輪軸1が案内
されて、軸受けハウジング6;6′が安定化されるようになるので、ばね受け面
7;7′は鉛直方向のバウンドの影響を受けても決して傾動運動を実施しなくな
る。
構成要素フレーム30は軸受けハウジング6;6′に、有利には弾性的に弾発
するように載置されて取り付けられており(aufsatteln)、制動構成
要素および/または駆動構成要素を取り付けるために役立つ。この場合、発生す
る反動力は構成要素フレーム30を通じて軸受けハウジング6;6′に支持され
、さらにリンク機構3;3′を通じて舵取り装置4を介して車体2に支持される
ので、車両ばね装置8;8′(図示しない)はこれによって全く影響を与えられ
ずに、反動力を受けずに済む。
さらに、車両ばね装置8;8′の鉛直方向のバウンド時でも、車体2の水平方
向における横方向バウンド(Querfedern)時でも、輪軸1と図示の制
動構成要素もしくは駆動構成要素との間に不都合な相対運動は生じない。このた
めには、構成要素フレーム30が、有利な構成ではその側壁35,35′で2つ
のハイドロ軸受け(Hydrolager)31, 32;31′,32′を介
して各軸受けハウジング6;6′に支持されている。各軸受けハウジング6;6
′はこのために対応する取付け部33,34;33′,
34′を備えている。
択一的に、ハイドロ軸受け31,32;31′,32′の代わりに自体公知の
ゴム・金属軸受けを設けることも可能である。適当な特性を有する、弾性的に弾
発する部材の使用により、この個所には有効な周波数分離(Frequenz−
Entkoppelung)が生ぜしめられる。
しかしながら、単純な変化実施例では、構成要素フレーム30が軸受けハウジ
ング6,6′に形状接続的に、つまり嵌合による係合によって結合されていても
よい。
構成要素フレーム30はさらに2つの横方向結合部材36,36′を有してい
る。両横方向結合部材36,36′は側壁35,35′を互いに結合している。
両横方向結合部材36,36′には主として制動構成要素および/または駆動構
成要素が支承されている。
制動構成要素としては、たとえばディスクブレーキ41,41′の配置が示さ
れている。このディスクブレーキは車輪・ディスクブレーキとして形成されてお
り、その構成要素としてはブレーキシリンダ43とブレーキレバー45とブレー
キシュー47とが図示されている。また、ディスクブレーキ41,41′を車軸
・ディスクブレーキとして形成することも可能である。この車軸・ディスクブレ
ーキは公知の形式で、1つの輪軸1に設けられた両車輪の間に配置されている。
この場合では、横方向結合部材36,36′が、制動構成要素、たとえばブレー
キシリンダ43、ブレーキレバー45およびブレーキシュー47を取り付けるた
めに役立つ。
同じく、構成要素フレーム30にディスクブレーキ41,41′の代わりに、
またはこのようなディスクブレーキとの組合せにおいて、自体公知の制輪子ブレ
ーキ(Klotzbremse)を設けることも考えられる。このような制輪子
ブレーキは制輪子ブレーキユニットまたはコンベンショナルな制輪子ブレーキと
して形成されていてよい。
さらに、構成要素フレーム30には、たとえば電磁吸着ブレーキ装置49,4
9′が配置されている。この電磁吸着ブレーキ装置の構成要素としては操作ユニ
ット51,51′とセンタリング装置52,52′とが図示されている。この電
磁吸着ブレーキ装置は軌間ロッド53を介して互いに結合されている。構成要素
フレーム30は最大4つまでの電磁吸着ブレーキ装置を単独か、または図示の別
の制動構成要素との組合せにおいて取り付けることを可能にする。この場合、電
磁吸着ブレーキ装置は軌道に対して正確に案内されている。なぜならば、電磁吸
着ブレーキ装置は輪軸の全ての軌間案内運動に追従することができるからである
。
構成要素フレーム30は図示の制動構成要素を取り
付けるために働くだけではなく、制動構成要素の代わりに、あるいはまた制動構
成要素との組合せにおいて、種々の駆動構成要素、たとえば駆動モータおよび/
または変速機支持部が構成要素フレーム30に支持されていてもよい。同じく、
構成要素フレーム30は列車防護のための装置(磁石、受信器等)を取り付ける
ために働くこともできる。さらに、構成要素フレームは側方集電装置(Seit
enstromabnehmer)、砂まき装置およびフランジ塗油装置を取り
付けるためにも有利に適している。本発明によれば、このことは輪軸1の支持、
案内および舵取りに関する前記の同じ効果を維持しながら行われる。
第2図および第3図には、軸受けハウジング6,6′を有利に安定化し、ひい
ては制動されかつ/または駆動される輪軸1をその構成要素フレーム30を含め
て案内しかつ舵取りするための本発明の別の実施例が示されている。このために
は、輪軸1が両側で軸受け5,5′に支承されている。この軸受け5,5′の軸
受けハウジング6,6′は真ん中でかつ軸受け5,5′の上方に、車体2を直接
に支持するための車両ばね装置8,8′(図示しない)を取り付けるための水平
方向の各1つのばね受け面7,7′を有している。
第2図の実施例では、各軸受けハウジング6;6′が走行方向で見て一方の側
で、鉛直方向で上下に配置された2つの枢着点9,10;9′,10′を有して
いる。これらの枢着点では、軸受けハウジング6;6′が各1つのリンク機構3
;3′を介して3点支持式に案内されて、舵取り装置4を介して車体2に支持さ
れている。
この場合、片側当たり各1つの、休止位置でほぼ水平方向に位置する長手方向
リンク44;44′が抗張/抗圧エレメントとして形成されており、この長手方
向リンク44;44′は軸受けハウジング6;6′に設けられた枢着点9,10
;9′,10′と、舵取り装置4に設けられた枢着点42;42′との間に枢着
式に配置されている。
第3図に示した実施例では、各軸受けハウジング6;6′が走行方向で見て一
方の側で、横方向ばねロッド55;55′として形成された長手方向リンク54
;54′に固く結合されている。この長手方向リンク54;54′の他方の端部
はそれぞれ枢着点42;42′で舵取り装置4を介して車体2に枢着式に支持さ
れている。
この場合、片側当たり各1つの、休止位置でほぼ水平方向に位置する長手方向
リンク54;54′は横方向に作用する曲げばねとして形成されているが、しか
し軸受けハウジング6;6′における固定部の範囲にでは、この軸受けハウジン
グを介して輪軸1に角度剛性的に結合されている。こうして形成された横方向ば
ねロッド55;55′は車両ばね装置8;8′を考慮
して、それぞれ所望の横方向ばね剛性ならびに輪軸1のための大きな横方向ばね
行程の簡単な実現を可能にする。
第2図および第3図において両側で舵取り装置4と軸受けハウジング6;6′
との間に配置された長手方向リンク44,44′;54,54′により、輪軸1
が案内されて、舵取りされるようになる。この場合、本発明による配置形式によ
り、軸受けハウジング6;6′は、ばね受け面7;7′が車両ばね装置8;8′
の鉛直方向のバウンドの影響を受けても決して傾動運動を実施できないように安
定化される。