【発明の詳細な説明】
溶媒系顔料配合コーティング組成物用の光沢減少剤発明の背景 1.発明の分野
本発明は、光沢減少剤(gloss reducing agent)を含む溶媒系顔料配合コーティ
ング組成物及びそのような組成物の製造方法に関する。2.関連技術の説明
熱硬化可能なコーティング組成物、特にポリエステル又はジエステル系コーテ
ィング組成物は、様々な支持体、特に金属支持体上に、塗料又は保護コーティン
グとして塗布するための材料として選択されることが多い。そのようなコーティ
ングは、硬度、柔軟性、耐溶媒性、耐腐食性、耐候性、及び光沢のような特性の
良好なバランスを与えるように配合することができる。これらの特性の改善は、
樹脂の種類、分子量、モノマー組成、及びガラス転移温度(Tg);架橋剤の種
類と量;硬化条件;硬化触媒;顔料;充填剤;及び添加剤を含む多くの要因に依
存する。これらのパラメーターを変えることによって、多くの様々な用途の要求
に適合する広範囲の様々な膜の特性を作り出すことができる。しかしながら、所
望の特性の全てを同時に最適化することが常に可能であるというわけではない。
そのような組成物において制御が必要な特性の1つは硬化したコーティングの
仕上げ光沢である。溶媒系顔料含有コーティングの開発においては光沢の調節が
重要である。最終の用途にもよるが、硬化したコーティングは、ASTM D-523に従
って60°で光沢%として測定して、高い光沢(>70)、中間の光沢(50〜60)、
半光沢(20〜40)、又は低い光沢(<15)を有するのが望ましい。
高い光沢の顔料含有コーティング組成物において光沢を抑制する公知の方法の
1つは、コーティング組成物に多量のいわゆる「艶消し剤」を配合することであ
る。艶消し剤は不規則な形状の微粉砕粒子材料であり、入射光線を散乱させるこ
とによって硬化したコーティングの表面の外観を曇らせる傾向があり、シリカ、
バライト、珪藻土、及び重金属石鹸のような材料を含む。
光沢を抑制するためにこれらの材料を使用することの幾つかの欠点は、それら
が適切な有機溶媒中の非常に微細な分散体としてコーティング組成物中に添加さ
れなければならないということであり、このことはコーティング組成物中の揮発
性溶媒の含有率を望ましくないほど多くすることになる可能性がある。それらは
また塗布されたコーティングが硬化されたときに達成できる架橋の程度に影響す
る可能性があり、特に比較的高い顔料含有量を有するコーティング組成物中にお
いてそうである。
光沢の調節はより高い顔料使用量に対してより難しいことも判明した。
粉末化されたエポキシ系コーティングにおける光沢の調節も、米国特許第4,41
9,495号に開示されているように、組成物に少量のエチレンとアクリル酸のコポ
リマーを含有させることによって行われてきた。
しかしながら、溶媒系、顔料含有、樹脂系コーティング組成物中において有効
に使用され、硬化したコーティングの物理的及び化学的特性への影響が最小であ
り、特に顔料のバインダーに対する比率が高いコーティング組成物用の、光沢抑
制剤を開発することに対する継続的な要望が存在する。発明の要約
本発明は、約400乃至約10,000の範囲内の数平均分子量を有するヒドロキシ又
はフェノール官能性樹脂、アミノ架橋剤、顔料材料、及び光沢減少剤としての多
塩基有機又は無機酸又はそれらの塩の混合物を含む硬化性組成物であって、前記
光沢減少剤が前記組成物中に硬化した組成物の光沢を減少させるのに十分な量で
存在する組成物に関する。好ましい光沢減少剤は、式D−(COOH)qを有す
るポリ(多価)カルボン酸であって、式中、Dは28乃至約2000の分子量の有機基
であり、qは2乃至4の範囲内であるポリカルボン酸、及びそれらの部分塩であ
る。
本発明は、また、そのような顔料を含むヒドロキシ又はフェノール官能性樹脂
組成物の光沢を減少させる方法であって、前記樹脂、顔料、硬化した組成物の光
沢を減少させるのに十分な量の前記光沢減少剤、及び有効量のアミノ架橋剤及び
選択的架橋触媒を含む混合物を形成すること、及び得られた組成物を加熱して架
橋することを含む方法を提供する。
本発明の組成物は、特に、有機溶媒と配合して液体の塗料及びコーティング組
成物を提供するように適用され、液体の塗料及びコーティング組成物は支持体上
に塗布され硬化されたとき、比較的高い含有率の顔料が組成物中に存在している
場合でさえ、優れた柔軟性、硬度、及び耐候性を有する丈夫な熱硬化した保護コ
ーティングを形成し、そして光沢は組成物中に配合された光沢抑制剤の種類と量
によって制御することができる。発明の詳細な説明
本発明に従って光沢減少剤として使用するのに適する多塩基酸(polybasic ac
id)には、有機と無機の酸の両方並びにそれらの塩が含まれる。無機の多塩基酸
には、燐酸、亜燐酸、ピロ燐酸、及びポリ燐酸が含まれる。有機酸には、ベンゼ
ンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ノニルベンゼンジスルホン酸、ジノニ
ルナフタレンジスルホン酸、及びドデシルベンゼンジスルホン酸のようなジスル
ホン酸、及び燐酸のC1〜C16モノエステルが含まれる。そのような酸の混合物
も使用できる。
上述の酸の幾つかは、エステル化反応においてポリエステルを製造するか又は
組成物に添加したアミノ架橋剤の架橋反応を促進するために使用される公知の触
媒である。例えば、燐酸及びジノニルナフタレンジスルホン酸のような酸は、欧
州特許公開公報第0419088号中において、エステル化反応及び/又はアミノ架橋
反応(amino crosslinking reactions)を促進するのに有用であることが開示さ
れている。所望の光沢の減少を達成するのに必要な酸の最適量は適切な架橋を達
成するのに望ましい最適量とは異なるので、ポリカルボン酸又はそれらの塩を光
沢減少剤として使用するのが望ましい。なぜならば、後者はそれ自身はアミノ架
橋反応を促進せず、従って、光沢を架橋活性とは独立して制御できるからである
。
適するポリカルボン酸には、式D−(COOH)qを有するジ、トリ、及びテ
トラカルボン酸であって、式中、Dが28乃至約2000の分子量の有機基であり、q
は2乃至4の範囲内の整数であるものが含まれる。適する酸には、アジピン酸、
コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、
アゼライン酸、セバシン酸、二量体酸(dimer acid)、シトラコン酸、クロロマ
レイン酸、メサコン酸、アコニット酸、イタコン酸、並びにそれらの無水物、及
びそれらの混合物が含まれる。
ポリカルボン酸のその他の適するカテゴリーは、低分子量ポリエステルポリカ
ルボン酸であって、上記の式中のDが、2乃至約10個の炭素原子と2乃至4個の
ヒドロキシル基を有するポリオールと過剰量の2乃至約10個の炭素原子を有する
ポリカルボン酸の1種又は混合物との反応生成物のジエステル残基であるもので
ある。これらのポリエステルポリカルボン酸は、エチレングリコール、プロピレ
ングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、グリセロール
などのようなポリオールと上述のものを含む脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸の
1種又は混合物の過剰量との間のエステル化反応によって製造できる。好ましい
ポリエステルポリカルボン酸は約260乃至2000の数平均分子量を有する。
上述の多塩基酸は酸の形態で使用でき、或いは塩の形態まで部分的に又は完全
に中和されていてもよい。塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウ
ムなどのようなアルカリ又はアルカリ土類塩が含まれ、或いは、好ましくは、ア
ンモニウム、低級アルキルアミノ、ピリジン、ピロリドン、オキサゾリンなどの
ようなより揮発性のアミン塩、及び類似の塩が含まれる。これら塩は光沢減少剤
としての効果が幾分少ないことが判明したが、この効果は後述する硬化したポリ
エステル表面において目標の光沢値をさらに制御することに関して有利であるこ
とがある。
上述の多塩基酸は、それらが少なくとも部分的に、好ましくは完全に、液体の
架橋可能なコーティング組成物中において使用される濃度で可溶性であるように
選択されなければならない。
本発明の組成物の樹脂成分として使用できるポリマーには、本明細書に記載の
アミノ架橋剤を使用して架橋可能なヒドロキシ又はフェノール官能性樹脂が含ま
れる。このような樹脂系には、少なくとも1つのヒドロキシ置換アルキル(メタ
)アクリレートと少なくとも1つの非ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレ
ートを共重合することによって製造されたヒドロキシ官能性アクリルコポリマー
樹脂;二価又は多価アルコールと二又は多塩基酸又は酸誘導体及び油、脂肪、又
はそれらの酸誘導体を反応させることによって製造されたもののようなアルキド
樹脂;ヒドロキシ末端ポリエステル又はジエステル;フェノール末端ポリエステ
ル
又はジエステル及び上述のポリエステル及びジエステル樹脂に類似のポリカーボ
ネート、及び米国特許第5,210,155号、第5,239,018号、及び第5,166,289号に開
示されているような類似の樹脂系が含まれる。
本発明の組成物中において樹脂成分として使用される好ましい樹脂は、ジカル
ボン酸又はエステル形成性のそれらの誘導体の1種又は混合物と過剰モル量の1
種以上のポリオールのエステル縮合生成物を形成することによって製造されたヒ
ドロキシ末端ポリエステル又はジエステルである。より好ましい樹脂は、カルボ
ン酸置換フェノール末端キャップされていてもよいポリエステル又はジエステル
ジオール、及び2価のフェノールで末端キャップされていてもよいポリエステル
又はジエステル二酸を含む。好ましいポリエステル樹脂は一般に約400乃至約10,
000の数平均分子量を有し、より好ましくは約1500乃至約7500の範囲内の数平均
分子量を有する。
ポリエステルジオールは、ジ又はポリオールと二又多酸の縮合反応によって形
成できる。ポリオールは、2乃至約6個、好ましくは2乃至約4個のヒドロキシ
ル基を有することに加えて、一般に2乃至約10個の炭素原子を含み、より好まし
くは約2乃至約8個の炭素原子を含む。ポリオールの好ましい例には以下のもの
の1種以上が含まれる:ネオペンチルグリコール;エチレングリコール;プロピ
レングリコール;ブタンジオール;ヘキサメチレンジオール;1,2-シクロヘキサ
ンジメタノール;1,3-シクロヘキサンジメタノール;1,4-シクロヘキサンジメタ
ノール;トリメチロールプロパン;ペンタエリトリトール;ネオペンチルグリコ
ールヒドロキシピバレート;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;
テトラエチレングリコール;ジプロピレングリコール;ポリプロピレングリコー
ル;ヘキシレングリコール;2-メチル2-エチル1,3-プロパンジオール;2-エチル
1,3-ヘキサンジオール;1,5-ペンタンジオール;チオグリコール;1,3-プロパン
ジオール;1,3-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;1,4-ブタンジオール;2,
2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオール;1,2-シクロヘキサンジオール;1,3-シク
ロヘキサンジオール;1,4-シクロヘキサンジオール;グリセロール;トリメチロ
ールプロパン;トリメチロールエタン;1,2,4-ブタントリオール;1,2,6-ヘキサ
ントリオール;ジペンタエリトリトール;トリペンタエリトリトール;マンニ
トール;ソルビトール;メチルグリコシド;2-ブチル2-エチルプロパンジオール
-1,3;及びそれらの混合物。
多酸は、脂肪族又は芳香族部分中に約2乃至34個の炭素原子を含み、そして少
なくとも2個、好ましくは4個以下のカルボキシル基を含み、或いはこれは無水
物基の形態で存在していてもよい。多酸は以下のものの1種以上であるのが好ま
しい:無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、グ
ルタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸(1,2、1,3、及
び1,4異性体を含む)、無水トリメリット酸、アゼライン酸、セバシン酸、二量
体酸、二無水ピロメリット酸、シトラコン、クロロマレイン、メサコンのような
置換されたマレイン酸又はフマル酸、及びアコニット及びイタコンのような置換
されたコハク酸。ポリオール又は多酸又は両方の混合物も使用できる。
ヒドロキシ含有モノマーによるポリエステル分子の停止は、ポリエステル形成
反応においてモル過剰量のジオールを使用することによって提供される。
硬化されたとき良好な柔軟性を示すポリエステルは、ポリオール側において脂
肪族反応体を使用し、酸側において脂肪族又は脂肪族/芳香族混合反応体を使用
して製造するのが好ましい。そのようなポリエステルの例は、アジピン酸、ネオ
ペンチルグリコール、及びフタル、イソフタル、テレフタル酸及び/又は無水フ
タル酸のヒドロキシ末端縮合生成物である。
本発明のコーティング組成物を製造するのに使用できるポリエステル樹脂のそ
の他の群は、米国特許第5,210,155号において開示されているようなフェノール
末端ジエステルであり、この特許の開示は引用によって本明細書中に組み入れら
れている。これらの材料は構造式1によって特徴付けられ、
式中、Rは2乃至40個の炭素原子を含む脂肪族の2価の炭化水素基又はそのよう
な基の混合物であるが、但し、nが0でpが0のときRは少なくとも約8個の炭
素原子を含み、R1は2乃至40個の炭素原子を含む脂肪族又は脂環式炭化水素基
又はそのような基の混合物であり、R2は2乃至40個の炭素原子を含む脂肪族、
芳香族、又は脂肪族及び芳香族炭化水素の混合物である炭化水素基であり、Aは
、フェニレン、ナフチレン、又は2つのフェニレン基がお互いに直接に又は2価
の原子又は基を介して結合されているビスフェニレンから成る群から選択される
2価の芳香族基であり、pは0又は1であり、nは0又は1乃至約40の範囲内の
整数であるが、但し、nが0のときpは0であり、nが整数のときpは1である
。
これらのジエステルは、一般に、末端カルボキシル基を有する主鎖材料と2価
フェノールのエステル化生成物であって、主鎖材料上に存在する各々の末端基が
2価フェノール上に存在するヒドロキシル基の1つと反応して、ポリマー鎖の末
端において遊離の芳香族ヒドロキシル基を含むオリゴマー又はポリマーを形成し
たものとして分類される。主鎖材料は、(a)約8乃至約40個の炭素原子を有する
脂肪族ジカルボン酸又はそのような酸の混合物であって、式1のnとpが各々0
であるもの、及び(b)カルボキシ末端ポリエステル、又は2乃至40個の炭素原子
を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸、又はそのような酸と8乃至40個の炭素
原子を有する1種以上の芳香族ジカルボン酸の混合物であって、式1において、
nが1乃至約40の範囲内の整数であり、pが1であるもの、から成ることができ
る。
上述の(a)のタイプのジエステルは以下の一般式2によって特徴付けられ、
式中、R′は約8乃至約40の炭素原子を有する脂肪族基であり、そしてAは上で
定義した通りである。
上述の(b)のタイプのジエステルは以下の一般式3によって特徴付けられ、
式中、Rは約2乃至約40の炭素原子を有する脂肪族又は脂環式基であり、nは1
乃至約40の整数であり、そしてR1、R2、及びAは上で定義した通りである。
主鎖材料中に存在する末端カルボキシル基にエステル結合によって結合できる
2価フェノールは、芳香族環に直接結合した2つのヒドロキシル置換基を有する
芳香族化合物であり、構造式:
HO-A-OH
によって表すことができ、式中、Aは、フェニレン、ナフチレン、又は構造式:
(式中、mは0又は1であり、Xは2価のC1〜C12炭化水素基、5〜12個の炭
素原子を有する2価の脂環式基、S、O、及びR4−C−R4から成る群から選択
される基であり、ここでR4は同じでも異なっていてもよく、水素、C1〜C6ア
ルキル、シクロアルキル、フェニル、及びCF3から成る群から選択され、そし
て、Y及びZは水素、ハロゲン、C1〜C4アルキル、及びC1〜C4アルコキシか
ら成る群から選択される)のビスフェニレン基から成る群から選択される2価の
基である。
好ましい2価のフェノールの例には、ヒドロキノン、レソルシノール、フェノ
ールフタレイン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、
及び2,6-ジヒドロキシナフタレンが含まれる。好ましいジフェノールの例には、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、1,1-ビス(
4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,2ビ
ス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド
、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び1,1-ビス(
4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが含まれる。
本発明において使用可能なポリエステル樹脂のもう1つのカテゴリーは、上述
の式1、2、及び3に記載されたものに類似の材料であるが、但し、芳香族フェ
ノールでエステル化されるポリエステル主鎖上に存在する末端基がカルボキシル
基ではなくヒドロキシのものである。これらのエステルーフェノールキャップさ
れた(ester-phenol capped)ポリエステルは、末端主鎖ヒドロキシ部分を、ヒ
ドロキシ安息香酸のようなヒドロキシ置換された芳香族酸でエステル化すること
によって製造される。
これらの材料は、一般に、類似の式4及び5:
によって表され、式中、n、R1、及びR2は上で定義した通りであり、Bはフェ
ニレン又はナフチレン又は置換された芳香族部分である。式5はnが0の場合の
式4である。
これらの材料及びそれらの製造方法は米国特許第5,239,018号中により詳細に
記載されており、その開示は引用によって本明細書中に組み入れられている。
上述の米国特許中において指摘されているように、エステル化反応は、通常、
約0.01乃至約2.0重量%の濃度で存在する亜燐酸又はトルエンスルホン酸のよう
なエステル化触媒を使用するか又は使用せずに、約140乃至260℃の温度において
約3乃至約15時間行われる。反応は所望により溶媒の存在下に行うことができる
。存在する場合には、溶媒は芳香族炭化水素であるのが好ましい。エステル化は
1段階プロセス又は2段階プロセスを使用して行うことができる。
好ましいポリエステル樹脂は、一般に、約55℃以下のガラス転移温度(Tg)
を有し、液体材料であるか又は芳香族炭化水素溶媒、酸素化された溶媒、又は芳
香族炭化水素溶媒と酸素化された溶媒の混合物のようなコーティング溶媒中に容
易に溶解する固体である。
熱硬化コーティング組成物を製造するのに有用なアミノ架橋剤は、ヒドロキシ
官能性樹脂と伝統的に反応する物質である。
適する物質には、アルキル化(ブチル化又はメチル化)尿素−ホルムアルデヒ
ド樹脂、アルキル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、(ヘキサメトキシメチル
メラミン又はペンタメトキシメチルメラミンとテトラメトキシメチルメラミンの
ような種々のヒドロキシメチル−メラミン−メチルエーテルの混合物)、及び高
アミノ/ポリマー性メラミンが含まれる。ヒドロキシメチルメラミンとヒドロキ
シメチル尿素は、エチル、プロピル、イソブチル、及びイソプロピルのようなメ
チル又はブチル以外のアルコールによってもエステル化できる。その他の適する
アミノ架橋樹脂は上述の米国特許中に記載されている。
最終のコーティング組成物中に配合される重量基準の架橋剤の量は、一般に、
コーティング組成物中に存在する全ての成分(顔料、その他)の合計重量に基づ
いて約2乃至約30重量%の範囲内でよい。添加の最も好ましい濃度は約3乃至約
25重量%である。これは、バインダー単独の重量に基づいて、約5乃至約45重量
%の架橋剤の含有率に相当する。本明細書中においては、「バインダー(binder)
」という用語は、樹脂と架橋剤を一緒にしたものを意味する。架橋剤の好ましい
濃度は、バインダーの重量に基づいて、5乃至約30重量%の範囲内である。
別の方法で表現すると、架橋剤の含有量は、活性な架橋基、即ち、アミノ架橋
剤のメチロール(アルコキシメチル)基のポリマー主鎖上のヒドロキシ又はフェ
ノール基に対する比率が望ましくは約1.0:1.0乃至15.0:1.0、好ましくは1.5:
1.0乃至5.0:1.0にあるようなものでなければならない。ポリエステルポリマー
の分子量が小さくなるにつれて、存在する末端ヒドロキシル基の数が大きくなり
、樹脂を適切に硬化するのに必要な架橋剤の量が多くなる。逆に、ポリエステル
ポリマーの分子量が大きくなると、末端ヒドロキシル基の数が小さくなり、樹脂
を適切に硬化するのに必要な架橋剤の量が少なくなる。
酸触媒を使用してアミノ架橋剤を含む系を硬化することができ、この目的に適
する様々な酸触媒が当業者に公知である。それらには、例えば、p-トルエンスル
ホン酸、メタンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジ
スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、燐酸、フェニルホスフェート、ブチ
ルホスフェート、ブチルマレエートなど、又はそれらの相溶性混合物が含まれる
。
これらの酸触媒は、純粋なままで、未ブロック形態で、又はアミンのような適当
なブロック剤と結合させて使用することができる。未ブロック触媒の典型的な例
Industries,Inc.)の製品である。
使用される触媒の量は、一般に、焼成スケジュールの厳しさとは逆に変化する
。より詳細には、より高い焼成温度又はより長い焼成時間に対しては通常より少
ない触媒濃度しか必要とされない。中程度の焼成条件(150℃で15乃至30分間)
に対する典型的な触媒濃度はポリマーと架橋剤固体当たり約0.1乃至0.7重量%の
触媒固体である。より低い温度又はより短い時間に対しては約2重量%までのよ
り高濃度の触媒も使用でき、より高い温度又はより長い時間の硬化は酸触媒を必
要としない。
反応体を溶解するためにポリエステルの合成中に所望により使用される同じか
又は異なる溶媒は、通常約10センチポアズ乃至10ポアズの粘度を有する組成物が
得られるように粘度を調節するためにコーティング組成物の配合中にも添加する
ことができる。1種以上の溶媒を使用することができる。多くの場合、系を可溶
化するために単独の溶媒が使用される。しかしながら、その他の場合には、最良
の可溶化を達成するために溶媒の混合物を使用することがしばしば望ましく、特
に、芳香族溶媒と酸素化された溶媒を組み合わせるのが好ましい。適する芳香族
溶媒には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、ナフタレン、及
びエクソン・ケミカル・カンパニー(Exxon Chemical Company)からAromatic 100TM
、Aromatic 150TM、及びAromatic 200TMの名前で市販されているもののような
C8〜C13芳香族を含む狭い留分の芳香族溶媒が含まれる。酸素化された溶媒は
、芳香族溶媒と非相溶性になるほど極性が大きくなってはならない。適する酸素
化かれた溶媒には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロ
ピレングリコールプロピルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート
、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコー
ルモノメチルエーテル、及び類似の物質が含まれる。このリストは限定のための
ものではなく、本発明において有用な溶媒の例である。溶媒の種類と濃度は、一
般に、コーティングの塗布と焼成に適する組成物の粘度と蒸発速度が得られる
ように選択される。組成物中の溶媒の典型的な濃度は0乃至約75重量%の範囲内
であり、好ましい範囲は約5乃至約50重量%であり、最も好ましい範囲は約10乃
至約40重量%である。高固体含有率のコーティングを製造するためには、コーテ
ィング組成物中で使用される溶媒の量が組成物の40重量%未満であるのが好まし
い。
顔料は本発明の硬化可能な組成物のもう1つの成分である。それらは一般に約
0.5乃至約5.0対1の顔料対バインダー重量比率で含まれ、バインダーという用語
はポリエステル樹脂とアミノ架橋剤の総重量を意味する。
組成物は高い顔料含有量で好適に配合でき、一般に約1.5対1乃至約5.0対1の
顔料対バインダーの範囲内の重量比率で、低顔料使用量の組成物中において見ら
れる良好な初期の光沢特性を損なうことなく配合することができる。本発明の組
成物に配合することができる適する顔料は塗料及びコーティング組成物中におい
て通常使用される不透明剤顔料であり、二酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、
ジルコン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン、カーボンブラック、並びにクロ
ムイエロー、グリーン、オレンジ、混合金属酸化物、セラミック顔料などが含ま
れる。好ましい顔料にはルチルTiO2及び特にTiO2の耐候性被覆された型の
ものが含まれる。顔料は、隠蔽力にほとんど影響を与えない適する増量材料とブ
レンドすることもできる。適する増量剤には、シリカ、バライト、硫酸カルシウ
ム、珪酸マグネシウム(タルク)、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪
酸アルミニウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム(マイカ)、珪酸カリウムア
ルミニウム、及びその他のクレー又はクレー様物質が含まれる。
より好ましい顔料/増量剤対バインダー重量比率は、バインダー1重量部当た
り、約1.5乃至約5.0重量部の顔料又は顔料と増量剤の混合物の範囲内であり、よ
り好ましくは約1.75乃至約4.75重量部であり、そして最も好ましくは約2乃至約
4.5重量部である。
硬化性ポリエステル組成物中に存在する本発明の多塩基酸又は塩によって与え
られる光沢の制御の程度は多くの要素の関数であることが判明した。
第1の要素は使用量である。一般的に述べると、光沢を抑制する酸又は塩は組
成物に、組成物の顔料含有量に基づいて、約0.05乃至約5.0重量%の濃度で添加
することができる。より多くの光沢の減少はより高水準の添加によって達成され
、より少ない光沢の減少は低水準の添加によって達成される。添加の好ましい濃
度は、組成物の顔料含有量に基づいて、約0.05乃至約3.0重量%の範囲内である
。
光沢の減少の程度に影響を与える第2の要素は、添加剤が遊離の酸の形態であ
るか又は塩(部分的又は完全な塩)の形態であるかということである。塩は遊離
の酸よりも光沢減少の効果が低いことが判明した。従って、遊離の酸の代わりに
部分又は完全塩を使用することは、所望の光沢の減少を制御又は調節するもう1
つのメカニズムである。
光沢の制御の第3の要素は、光沢制御添加剤が有機の酸又はその塩である場合
、光沢制御添加剤の酸当量(acid equivalent weight)である。酸当量は、分子
中に存在する酸基の数で割った添加剤の分子量として定義される。酸当量は、コ
ハク酸の場合の約59からポリエステルジカルボン酸のような高分子量添加剤の場
合の約1000まで変化する。一般に、酸当量が高ければ高いほど、艶消し効果又は
光沢減少効果が少なくなる。従って、最大の光沢減少が必要な組成物、例えば、
約2.5以下の顔料のバインダーに対する比率で顔料を含む組成物中においては約2
00未満の酸当量を有する有機酸光沢制御添加剤を使用するのが好ましく、高い顔
料含有率を有する組成物中においては約200より大きい酸当量を有する添加剤を
使用するのが好ましい。なぜならば、高い顔料含有率を有する組成物は硬化した
とき通常光沢が少ないからである。
光沢の制御の第4の要素は、配合工程中の光沢制御添加剤の添加の順序である
。樹脂バインダーを架橋させるために使用される触媒の添加の前に光沢制御添加
剤を添加することによって改善された光沢の減少が得られることが判明した。
光沢を減少させるために組成物に添加される化合物(艶消し剤)がアミノ架橋
触媒としての触媒活性をほとんどか又は全く有していない場合、例えば、艶消し
剤がポリカルボン酸に基づく場合、1種以上の従来的酸又は上述のタイプのブロ
ックされた酸架橋触媒と併用するのが好ましく、特に、組成物が1を越える顔料
対バインダー比を有する場合に好ましい。艶消し剤が架橋触媒活性も有する多塩
基酸又は塩である場合、例えば、艶消し剤が有機ジスルホン酸又は燐酸である場
合、所望により、艶消し特性をほとんど有していない別の架橋触媒、例えば、
一塩基性スルホン酸、と併用することができる。艶消し剤と非艶消し架橋触媒と
を併用することによって、特に、1.5乃至5.0の高い顔料対バインダー比で顔料を
含む組成物に関して、所望の光沢値と所望の架橋の程度を独立して目標とするこ
とが可能になる。
本発明のコーティング組成物は、初めに練り顔料(mill base)を形成すること
によって製造することができる。練り顔料は、顔料、樹脂、及び溶媒の混合物
speed disc disperser)中において微粉砕して顔料濃厚物を形成することによっ
て製造できる。光沢減少添加剤又はその一部を練り顔料濃厚物の形成中に添加す
ることができるが、もっと後で樹脂架橋触媒の添加の前に添加することができる
。この練り顔料を、その後、追加の樹脂、溶媒、架橋剤、(もしあれば)光沢減
少剤の残り、及び触媒を含む組成物の残りの成分と混合条件下に混合する。
本発明のコーティング組成物は、噴霧、ロールコーティング、浸漬コーティン
グなどのような適する従来技術のいずれかによって支持体上に塗布することがで
きる。組成物は液体形態で塗布することができ、有機溶媒中に分散させるのが好
ましい。組成物中の典型的な溶媒濃度は0乃至約75重量%であり、約5乃至50重
量%の範囲内が好ましく、約10乃至45重量%の範囲内が最も好ましい。
本発明の組成物用の十分な焼成スケジュールは、大きい装置の用途用の約100
℃の温度での約30分間の低温焼成からコイルコーティング(coil coating)用途
用の315乃至350℃の空気温度中の約5乃至10秒の高温焼成まで非常に広範囲にわ
たるが、これらに限定されるものではない。一般的に述べると、コイルコーティ
ング用途用の十分な焼成は、下地の金属の実際の温度が少なくとも180℃、好ま
しくは少なくとも200℃まで達したときに達成される。一般に、支持体とコーテ
ィングは、本質的に全ての溶媒が膜から蒸発してポリマーと架橋剤との間の化学
反応が所望の程度の完了まで進行するように、十分に高い温度で十分に長い時間
焼成されなければならない。所望の程度の完了も大きく変化し、与えられた用途
に対して必要な硬化した膜の特性の特定の組み合わせに依存する。
必要な焼成スケジュールは組成物に添加された触媒の種類と濃度及び塗布され
たコーティング膜の厚さにも依存する。一般に、膜が薄ければ薄いほど、そして
触媒の濃度が高ければ高いほど容易に硬化し、即ち、より短い時間及び/又はよ
り低い温度で硬化する。
架橋密度及び架橋の程度は硬化したコーティングの有機溶媒に対する不浸透性
を評価することによって監視する。この特性を評価するのに適する試験は、ASTM
D3732の段落5.2に記載されているMEK磨耗試験(MEK rub test)である。この試
験は、硬化したコーティングを支持体から完全に除去するのに必要なメチルエチ
ルケトン(MEK)を吸収した綿布2重の擦りの回数を測定する。一般的に述べると
、本発明のコーティングは、約5より大、好ましくは少なくとも15、そして最も
好ましくは50乃至100より大きいMEK磨耗値が達成させるように、十分に架橋され
る。
本発明の組成物はその他の架橋可能なポリマー材料とブレンドして後者の物理
的及び化学的特性を改善することもできる。適するそのようなブレンドポリマー
の例には、アクリル及びメタクリルポリマー及びコポリマー、エポキシ樹脂、ア
ルキド樹脂、エポキシ/フェノール樹脂、エポキシ/アクリル樹脂、芳香族及び
脂肪族ウレタンポリマー、塩素化ゴム、セルロースエステル及びその他のポリエ
ステル樹脂が含まれる。1:20乃至20:1の各々のブレンド比を使用することが
できる。
本明細書に記載の多くの組成物、特に、約1.5より大きい顔料/バインダー比
を有するエステルフェノールキャップされたポリエステルを含むものは、建築物
及び外部の耐久性を必要とするその他の物品用のコーティング法として有用であ
る。それらはコイルコーティング及び噴霧コーティング法によって塗布できる。
また、流れ調整剤、レオロジー調整剤、顔料分散剤、沈降防止剤、紫外線遮断剤
及び紫外線安定剤を含む種々の従来的コーティング添加剤(しかし、これらに限
定されるものではない)も所望により本発明の組成物に添加してそれらの物理的
及び化学的特性を改善することができる。
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定する
ためのものではない。
以下の実施例1及び2はエステルフェノールキャップされたポリエステルの製
造を示す。
実施例1
機械式攪拌機、加熱マントル、窒素散布器、10インチカラム(その上にディー
ン・スターク・トラップ(Dean Stark trap)と冷却水凝縮器がある)、及び温度
制御装置を取付けられた温度計を備えた5リットルの4つ首フラスコに、211g
の無水フタル酸(PA)、788gのイソフタル酸(IPA)、1042gのネオペンチルグ
リコール(NPG)、及び150gのAromaticTM100溶媒(エクソン・ケミカル・カン
パニーから市販されているC9〜C12芳香族の狭い留分の溶媒)を入れる。内容
物を加熱して溶融し、攪拌し、そして加熱を約170℃まで続けると、そこで溶媒
/水共沸混合物の蒸留が始まる。水の除去を使用して反応を維持する。加熱を続
け、温度を水の除去につれて220℃の最終温度まで上げる。原則的にネオペンチ
ルグリコールと水の混合物である回収された塔頂留分は243gである。反応混合
物を冷却し、486gのアジピン酸(AA)と138gのp-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)を
入れる。反応器の内容物を攪拌し、加熱を温度が約140℃に達するまで続ける。
反応の第1段階で回収された塔頂留分を、塔頂留分中に存在する水をNPGから除
去するために、滴下して加える。加熱を続け、反応により形成した水が蒸留する
につれて温度がゆっくりと250℃まで上がる。理論量の水が除去された後反応を
止めるが、それには約19時間かかる。反応生成物を冷却し酸価を測定する(7.0m
g KOH/g)。生成物をその後633gのエチル3-エトキシプロピオネート(EEP)及び5
10のAromaticTM100溶媒を添加することによって希釈する。測定された非揮発性
物質(NVM)は64.0(110℃で1時間)である。氷酢酸とメチルアミルケトン(MA
K)の50/50混合物中の樹脂(100%基準)の10%(w/v)溶液の換算粘度(reduced
viscosity)は0.175であり、数平均分子量は約4660である(計算値)。このポリ
エステルは以下のように略される。
NPG/AA/PA/IPA/PHBA:20/6.65/2.85/9.5/2.0
実施例2
機械式攪拌機、加熱マントル、窒素散布器、1インチカラム(その上にディー
ン・スターク・トラップと冷却水凝縮器がある)、及び温度制御装置を取付けら
れた温度計を備えた5リットルの4つ首フラスコに、1042gのNPG、473.1gのテ
レフタル酸(TPA)、473.1gのイソフタル酸(IPA)、138gのPHBA、及び200g
のAromaticTM150溶媒を入れた。内容物を加熱して溶融し、攪拌し、そして約190
℃まで加熱を続けると、そこで溶媒/水共沸混合物の蒸留が始まった。温度が23
0℃に達するまで水を除去しながら加熱を続けた。内容物が透明になってからさ
らに2時間この温度で維持した。その後反応混合物を約120℃まで冷却し、554.8
gのアジピン酸を反応器にいれた。反応器の内容物を攪拌し、加熱を温度が約14
0℃に達するまで続けた。反応の第1段階で回収された塔頂留分を、塔頂留分中
に存在する水を溶解したNPGから除去するために、滴下して加えた。加熱を続け
、反応により形成した水が蒸留するにつれて温度がゆっくりと250℃まで上がっ
た。理論量の水が回収された後反応を止めた。9mg KOH/g樹脂の酸価に達した。
このプロセスは約15時間かかった。生成物をその後140℃まで冷却し、425gのAr
omaticTM200溶媒と635gのEXXATETM700(ヘキシルアセテートの混合物)で希釈
した。測定されたNVMは67.64%であった。換算粘度0.229であった。このポリエ
ステルは以下のように略される。
NPG/AA/TPA/IPA/PHBA:20/7.6/5.7/5.7/2.0
以下の実施例はポリエステルジカルボン酸艶消し剤の製造を説明する。
実施例3
実施例2に記載したように装備された2リットルの4つ首フラスコに、340g
のNPG、241gのAA、477gのPA、及び200gのキシレンを入れた。内容物を窒素ガ
スでパージし、150℃まで加熱すると水の蒸留が始まった。加熱を水の形成が止
まるまでに(約3時間)190℃まで続けた。内容物をその後70℃まで冷却し、300
gの1-ブタノールで希釈した。生成物は、67.1%のNVM、174g KOH/g固体の酸
価、及び322の酸当量を有するポリエステルジカルボン酸である。
顔料配合塗料は、一般的に、バイク−ガードナーDISPERMATTMCV型のような高
速ディスクディスパーサーを使用して樹脂組成物中に二酸化チタニウムを粉砕し
て混入することにより製造された。初めに、TiO2、ポリエステル樹脂、及び
溶媒を含む練り顔料を微粉砕し、その後この練り顔料を組成物中の残りの成分と
混合する。2種類の塗料用の特定の重量を以下の実施例において与える。
実施例4〜5
練り顔料:
200.6g 実施例1のエステルフェノールキャップされた樹脂
650.0g TiO2(デュポン、TI-PURETMR-960)
149.4g 3/1の重量比率のAromaticTM200/Butyl CELLOSOLVETM混合物
マスターバッチ組成:
300.0g 練り顔料(上述のもの)
20.1g 実施例1のエステルフェノールキャップされた樹脂
13.3g ヘキサメトキシメチルメラミン(CYMELTM303)
0.56g ブタノール中で25%まで希釈されたダウーコーニング(Dow-Corning)
57シリコーン流れ調整添加剤
42.7g AromaticTM200
14.2g Butyl CELLOSOLVETM
塗料組成:
実施例4 上述のマスターバッチの50gに、0.16gのキング・インダストリー
ズのNACURETM3525(有機アミンで中和されたジノニルナフタレンジスルホン酸)
の触媒作用を施した。この例においては、NACURETM3525は艶消し剤と架橋触媒の
両方である。
実施例5 上述のマスターバッチの50gに、0.32gのキング・インダストリー
ズのNACURETM4167(有機アミンで中和された燐酸のジアルキルエステル)の触媒
作用を施した。NACURETM4167は一塩基酸である。
実施例4及び5の組成物から以下のように硬化した塗膜を形成した。
実施例4及び5に記載した組成物の薄い膜をドローダウン(draw down)により
スチール製の試験パネルに塗布した。基本的手順はASTM試験方法D833-87条件Eに
概略が説明されている。試験パネルは、Q−パネル・カンパニー(Q-Panel Compa
ny)から得られる未処理のD型又はS型冷間圧延スチールパネルであるか、又は
パーカー・アムケム・カンパニー(Parker-Amchem Company)から得られる磨
4インチ×8インチ、3インチ×6インチ、6インチ×12インチ、又は3イン
チ×5インチのいずれかである。
ワイヤーを巻いたドローダウン棒及び幾つかの場合においては精密実験用ドロ
ーダウン機械(Precision Laboratory Drawdown Machine)(いずれもポール・N.
ガードナー・カンパニー(Paul N.Gardner Company)から得られる)を使用して
手で引くドローダウン(条件E)により膜を塗布する。目標の乾燥した膜の厚さ
は1ミル(mil)である。
上述のようにして湿った膜を塗布した後、室温で約10分間パネルから溶媒を蒸
発させる。その後、膜をブルー・M・エレクトリック・クラスA(Blue M Elect
ric Class A)オーブン中で焼成することによって硬化する。蒸発と焼成の間全て
のパネルを水平の位置に置いた。
硬化したパネルの硬度、柔軟性、光沢、及び耐溶媒性を評価した。柔軟性は、
ASTM D 4145-83に記載されているT−曲げ試験(T-Bend test)によって測定した
。これは支持体上の焼成されたコーティング組成物の柔軟性と接着強度を測定す
る。T−曲げの等級付けは、コーティングされた金属を金属の周りで曲げたとき
コーティングの破壊や接着破壊を生じなくなる最小の金属の厚さである。一般に
、T−曲げ値が小さいければ小さいほど、コーティングの接着力及び柔軟性は良
好である。一般的に述べると、コイルコーティングの用途に対しては、5以下の
T−曲げ試験の結果は許容可能であると考えられる。2以下の結果は良好である
と考えられる。
ASTM D3363に従って鉛筆硬度を評価した。ASTM D3732の段落5.2に記載されて
いる一般的溶媒磨耗試験によってMEK(メチルエチルケトン)抵抗を評価した。A
STM D-523に従って光沢を60°の角度で光沢%として測定した。
データを第I表にまとめる。
第I表から分かるように、ジスルホン酸(NACURETM)は架橋を促進するだけで
なく、光沢を93から14まで減少させる。このことは、高い顔料/バインダー比率
で光沢減少添加剤を触媒として使用すると、典型的には約30単位の60°光沢であ
る望ましい水準よりも低く光沢を減少させることがあることを示している。
実施例6〜11
実施例1の樹脂から実施例4及び5に記載したのと類似の方法を使用して別の
マスターバッチと膜を製造した。この一連の実施例のために、実施例3のポリエ
ステルジカルボン酸を実施例7、9、及び11において艶消し剤として使用した。
ポリエステルジカルボン酸を触媒の添加の前にマスターバッチに入れた。データ
を第I表に示す。顔料当たりの添加剤を固体当たりの固体%として与える。
第I表から分かるように、ポリエステルジカルボン酸の添加は、顔料/バイン
ダー比率=3において顔料/バインダー比率=2の場合よりも有効に光沢を減少
させる。このため、ポリエステルジカルボン酸は顔料含有率の高い組成物の光沢
を調節するための簡便な添加剤である。また、異なる触媒は顔料含有率の高い組
成物中において異なる光沢を生じることも分かった。例えば、p-TSAの触媒作用
を受けたコーティング(実施例6)は添加剤なしに32の光沢を示したが、NACURETM
4167の触媒作用を受けたコーティング(実施例8)は79の光沢を示した。
実施例12〜16
これらの一連の実施例は実施例2の樹脂を使用して行ったが、この樹脂は実施
例1の樹脂と比較してより高い光沢のコーティングを生成した。練り顔料、マス
ターバッチ、及び膜の調製は実施例4及び5において記載したのと同様であった
。
練り顔料:
650.0g TiO2
192.2g 実施例2からの樹脂
118.3g AromaticTM200
39.5g DOWANOLTMDPM溶媒
実施例12〜16のマスターバッチ組成物を第II表に示す。各々のマスターバッチ
組成物の50gに以下のように触媒又は触媒添加剤を添加することによって塗料を
製造した。
実施例12 0.2gのNACURETM4167と実施例3からの50%樹脂溶液の0.33g。
実施例13 0.2gのNACURETM4167。
実施例14 0.16gのBYKTM-451(アミンブロックされたパラートルエンスルホ
ン酸)触媒と実施例3からの50%樹脂溶液の0.33g。
実施例15 0.16gのBYKTM-451触媒。
実施例16 0.16gのBYKTM-451触媒とメタノール中のアジピン酸の溶液(15.6
重量%のAA)の0.7g。
塗料に関するデータを第I表にまとめた。この表から分かるように、触媒を艶
消し添加剤(実施例3からの樹脂)の前に入れた場合、顔料/バインダー比率が
高くても高い光沢を有する組成物が製造されることが分かる(実施例12)。触媒
が添加剤の後に添加された同じ組成物(添加剤はマスターバッチ中に既に存在し
ている)は光沢を減少させた(実施例13)。顔料/バインダー比率=2の同じ樹
脂に基づく組成物は触媒と艶消し添加剤の添加の順序に対して特に敏感ではない
(実施例14及び15)。しかしながら、アジピン酸(73の酸当量を有する二酸)の
光沢減少添加剤としての使用は、同じ顔料/バインダー比率=2の組成物におい
て光沢をかなり減少させた(実施例16)。これらの実施例は、比較的小さい酸当
量を有する二酸添加剤が、比較的大きい酸当量を有するポリエステルジカルボン
酸よりも、より有効な光沢減少剤であることを示している。
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フロントページの続き
(72)発明者 コワリク、ラルフ・エム
アメリカ合衆国、テキサス州 77345、キ
ングウッド、オータム・ドッグウッド・ウ
ェイ 5922
(72)発明者 サシュス、ロバート・エヌ
アメリカ合衆国、ニュー・ジャージー州
08724、ブリック、レオン・ドライブ 116