JPH1048303A - 検出コイル一体型squid - Google Patents

検出コイル一体型squid

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JPH1048303A
JPH1048303A JP8204488A JP20448896A JPH1048303A JP H1048303 A JPH1048303 A JP H1048303A JP 8204488 A JP8204488 A JP 8204488A JP 20448896 A JP20448896 A JP 20448896A JP H1048303 A JPH1048303 A JP H1048303A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 SQUID磁束計の検出コイル入力換算の磁
気雑音を低減する。 【解決手段】 1枚の基板10に超伝導体からなる検出
コイル3、3’とSQUID部分を成膜する。SQUI
Dリングは2つのジョゼフソン接合1をつなぐ2つの超
伝導体(SQUIDリングのインダクタンス)2、
2’、超伝導線2、2’に並列に検出コイル3、3’が
接続される。超伝導体3、3’は1回巻きの超伝導線、
ワッシャ型のコイルでもよい。4、4’は帰還コイル、
7はダンピング抵抗である。検出コイルは基板10の約
半分の面積を持ち、SQUIDと検出コイルの形状を基
板の中心に対して対称的な構造にする。 【効果】 ジョゼフソン接合以外のSQUIDリングの
インダクタンスは検出コイルとの結合に寄与し、形状が
対称性のためSQUIDのマイクロ波ステップの影響が
低減しSQUIDの磁束−電圧変換特性が向上し雑音が
低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は生体磁場計測用の磁
気センサなどに用いられるSQUID(超伝導量子干渉
素子)と検出コイルに関し、特に液体窒素中で超伝導特
性を持つ高温超伝導体を用いてSQUIDと検出コイル
を形成する場合に適した技術に関する。
【0002】
【従来の技術】SQUID磁束計を用いた生体磁場計測
装置に関しては、例えばReviewof Scien
tific Instrument、第53巻、第12
号、1815−1845頁に記載されている。この文献
に記載されたSQUIDは、ニオブ(Nb)や鉛(P
b)、及びこれらの合金を用いたいわゆる金属系の超伝
導体を主体として構成されており、検出コイルとともに
液体ヘリウム温度(4.2K)で動作するものであっ
た。現在では、YBa2Cu3y(YBCO)など液体
窒素温度(77K)で超伝導となるいわゆる高温超伝導
体を用いたSQUIDも開発されている。高温超伝導S
QUIDは廉価で取り扱いの容易な液体窒素を寒剤とし
て用いることができるため、生体磁場計測装置の普及に
極めて有用である。近年、高温超伝導SQUIDの性能
が向上した結果、これを用いた磁束計でも生体磁場が計
測されるようになった。
【0003】これら高温超伝導SQUID磁束計の例と
しては、Applied Physics Lette
r、第68巻、第10号、1421−1423頁(以
下、第1例という)、IEEE Transactio
n of Superconductivity、第5
巻、第2号、2919−2922頁(以下、第2例とい
う)、IEEE Transaction of Su
perconductivity、第5巻、第2号、2
927−2930頁(以下、第3例という)、Appl
ied Physics Letter、第63巻、第
16号、2271−2273頁(以下、第4例という)
などが挙げられる。
【0004】ここでは、上記第1例から第4例が全てそ
うであるようにSQUIDとしてdc−SQUID、即
ちジョゼフソン接合を2つ持つ超伝導リングを考える。
図10、11に、よく知られたSQUIDの電流−電圧
特性、磁束−電圧変換特性を示す。図10中、ΦexはS
QUIDに印加される磁束、Φ0は磁束量子、Ibは図
11の磁束−電圧変換特性を与えるバイアス電流値、n
は整数である。図10において、SQUIDのリング形
状に依存して発生するマイクロ波の共振によってΦex
(n+1/2)Φ0の場合にステップが生じる様子を図
示した。このステップにより電圧振幅ΔVに制限が生じ
ることが知られている。
【0005】金属系超伝導体のSQUID同様に、高温
超伝導体のSQUIDは基板上に成膜して形成される
が、第1例から第4例にみられるように検出コイルもま
た同一基板上に形成されるのが一般的である。これは、
高温超伝導体は金属系の超伝導体と比べて超伝導体間の
接合が困難であり、金属系の超伝導体を用いた磁束計の
ようにSQUIDと検出コイルを別個に製作して接合す
ることが難しいことが一因である。また、1枚の基板上
に高温超伝導体の多層膜を形成することも必ずしも容易
でなく、上記第3例と第4例のように高温超伝導体の1
層膜でSQUIDと検出コイルの双方を形成することが
できれば、製作ははるかに容易となり歩留まりも向上す
る。
【0006】これら第3例や第4例のSQUID磁束計
は、Direct−coupling型SQUIDと称
される。図5にその磁束計の構成を、図6にSQUID
と検出コイルを搭載した基板の構造の例を示す。図6は
図5の点線で囲まれた部分10に相当し、斜線部が超伝
導膜の部分、残余は基板が露出した部分である。図6
(b)は図6(a)中、丸で囲まれたSQUID部(*
1)の拡大図である。SQUIDリングは2つのジョゼ
フソン接合1とこれを連結する超伝導体2、2’からな
る超伝導リングである。Direct−couplin
g型SQUIDはSQUIDリングを構成する超伝導体
の一部2に並列に検出コイル3を接続した構造である。
高温超伝導SQUIDのジョゼフソン接合は、SrTi
3で代表される基板のバイクリスタル部分(結晶方向
の不連続部分)や、ステップエッジ部分(段差部分)に
形成されることが多い。バイクリスタル線は基板中央に
位置するのが一般的であるため、図6の例ではSQUI
Dや検出コイルが非対称の構造になっている。
【0007】Direct−coupling型SQU
IDにおいては第3例などに記述されているように、磁
束計の雑音がSQUID入力換算の磁束雑音でΦnであ
るとき、磁束計の感度に相当する検出コイル入力換算の
磁気雑音はΦn/Aeffとなる。ここでAeffは検出コイ
ルの磁場検出面積であり、検出コイルの実効面積Ap
検出コイルのインダクタンスLp、SQUIDリングの
全インダクタンスLsのうち検出コイルに結合する成分
cを用いて近似的にAp(Lc/Lp)で与えられる。こ
こでLc<Lsである。また、SQUID入力換算の磁束
雑音ΦnはSQUIDの磁束−電圧変換特性の電圧振幅
ΔVが大きいほど小さくなることが知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的はSQU
IDと検出コイルを1枚の基板上に形成したDirec
t−coupling型SQUIDにおいて、磁束計の
高感度化を実現することにある。ここで高感度化とは、
検出コイル入力換算の磁気雑音Φn/Aeffを低減するこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】先に述べたように、検出
コイル入力換算の磁気雑音Φn/Aeffを低減するために
は、Ap(Lc/Lp)で表される磁束計の磁場検出面積
effを大きくとり、またSQUID入力換算の磁束雑
音Φnを小さくすればよい。本発明ではこの双方を同時
に実現する。以下、これを実現する構成とその動作を説
明する。磁束計の磁場検出面積Aeffを向上するために
は、検出コイルの実効面積Apを大きくすればよいが、
これは基板の面積に制限される。従って一定面積の基板
を用いたDirect−coupling型SQUID
においては、Lc/Lpを大きくすればよい。Journ
al of Applied Physics、第73
巻、第11号、7929−7934頁等で知られている
ように、SQUIDのインダクタンスLsにも制限があ
り、Lsを大きくするほどΔVが減少するからLsをむや
みに大きくすることはできない。そこで、SQUIDリ
ングの全インダクタンスLsのうち、検出コイルとの結
合に寄与する成分Lcの割合をできるだけ大きくすれば
よい。
【0010】従来の構成では、例えば図6のようにSQ
UIDリングの全インダクタンスのうち、検出コイルと
結合するのは図6の中でジョゼフソン接合より下の部分
2だけであり、上の部分2’は結合に寄与しない。そこ
で本発明の構成では、図1に示すように、SQUIDリ
ングにおいてジョゼフソン接合をつなぐ2つの超伝導線
2、2’の双方に検出コイルを接続する。この構成では
SQUIDリングのインダクタンスのうち、ジョゼフソ
ン接合部分1以外はすべて検出コイルと結合することに
なり、Lc/Lsが大きくなって磁束計の磁場検出面積A
effが大きくとれる。
【0011】また、この構成ではSQUIDと検出コイ
ルをジョゼフソン接合に対して対称な形状にできる。図
3、図4に本発明による基板の構成例を、従来の基板の
構成例を図6に示す。本発明の構成では、SQUIDリ
ングが2つのジョゼフソン接合を結ぶ線に対して対称な
形状をしているのがわかる。これにより以下の効果が得
られる。上記第3例に記載されているように、マイクロ
波の共振によって電流−電圧特性に生じるステップの電
圧Vsは(数1)で与えられる。
【0012】
【数1】 Vs=cΦ0{√(2/(εr+1)}/(4d) …(数1) (数1)で、cは光速、εrは基板の比誘電率、dはm
icro waveの波長を決める長さで、ジョゼフソ
ン接合とSQUIDリング端間の長さで近似できる。S
QUIDの形状が、図3、図4、図6のように細長い場
合、SQUIDリングのインダクタンスLsは、ほぼS
QUIDリングの空孔の長辺の長さで決まる。従って、
図6と図3や図4でSQUIDリングのインダクタンス
sが等しいとすれば空孔の長辺の長さは等しいと考え
てよい。このとき図3や図4では、ジョゼフソン接合は
空孔の長辺の中央部に位置しているから、図6の場合と
比較するとジョゼフソン接合とSQUIDリング端間の
長さがほぼ半分になっていると考えられる。従って(数
1)を用いれば、図3、図4に示すSQUIDは図6の
従来のSQUIDに比べて電流−電圧特性に生じるステ
ップの電圧Vsが2倍程度になると考えられる。図1
0、図11を見れば明らかなように、ステップ電圧が高
いほど電圧振幅ΔVは大きくなり、SQUID入力換算
の磁束雑音Φnが小さくなって検出コイル入力換算の磁
気雑音Φn/Aeffが低減できる。
【0013】以上説明したように、SQUID磁束計の
SQUID及び検出コイルを、特に高温超伝導体の一層
膜を用いて一体形成する場合において、基板面の約半分
の面積を持つ検出コイルを2個用いることによって検出
コイルの磁場検出面積を向上させ、同時にSQUID入
力換算の磁束雑音が低減でき、検出コイル入力換算の磁
気雑音が低減できる。
【0014】以下に、本発明を要約する。SQUIDリ
ングのジョゼフソン接合を連結する2つの超伝導線の双
方に、基板面の約半分の面積を持つ検出コイルを各々結
合し、SQUIDと検出コイルの形状を基板面の中心に
対して対称的な構造にする。検出コイルの実効面積は、
SQUIDリングのインダクタンスのうち、検出コイル
との結合に寄与する成分に比例するので、本発明の構造
によれば、ジョゼフソン接合以外のSQUIDリングの
インダクタンスがすべて検出コイルとの結合に寄与する
ため検出コイルの磁場検出面積が増加すること、形状の
対称性のため、SQUIDのマイクロ波ステップの影響
が低減し、SQUIDの磁束−電圧変換特性が向上する
ことの2つの効果により、SQUID磁束計の検出コイ
ル入力換算の磁気雑音が低減する。
【0015】
【発明の実施の形態】まず、本願発明の実施例の概要に
ついて以下説明する。本願発明の検出コイル一体型SQ
UIDは、2つのジョゼフソン接合を2つの第1の超伝
導体で連結してなるSQUIDリングにおいて、ジョゼ
フソン接合を連結する2つの第1の超伝導体の双方に各
々1つづつの第2の超伝導体が連結され、双方ともに第
1の超伝導体と第2の超伝導体が1つの超伝導の閉回路
をなしている。第1の超伝導体に連結する第2の超伝導
体が、2つの第1の超伝導体の双方ともに複数あり、第
2の超伝導体の各々が第1の超伝導体と超伝導の閉回路
をなしていてもよい。この第2の超伝導体が以下で述べ
る検出コイルに相当する。複数の超伝導の閉回路の少な
くとも一つに磁気的に結合可能な第3の超伝導体を有す
るか、複数の超伝導の閉回路の少なくとも一つに磁気的
に結合する第3、第4の超伝導体を有している。
【0016】SQUID及び検出コイルは一枚の基板上
に1層膜の超伝導薄膜で形成される。SQUID及び検
出コイルは、絶対温度77ケルビンにおいて超伝導特性
を持つ高温超伝導体の膜で形成される。SQUIDリン
グの空孔部分は基板面の中心を含み、基板面にあって基
板面の中心を含む少なくとも一つの線に対して、基板面
内で対称な形状である。例えば、SQUID及び検出コ
イルが成膜される基板が、結晶方向の不連続面を有する
バイクリスタル基板であり、ジョゼフソン接合が結晶方
向の不連続面と基板面の交線として定義されるバイクリ
スタル線上に形成され、SQUID及び検出コイルが、
バイクリスタル線に対して基板面内で対称な形状を有し
ている。または、SQUID及び検出コイルが成膜され
る基板が、その表面に段差を有する基板であり、ジョゼ
フソン接合がこの段差上に形成され、SQUID及び検
出コイルが、段差の角として定義される段差線に対して
基板面内で対称な形状を有する。
【0017】上記のSQUID及び検出コイルにおい
て、上記第1の超伝導体と上記第2の超伝導体のなす複
数の超伝導の閉回路を磁場を検出する検出コイルとして
用い、公知のフラックス・ロックト・ループに接続さ
れ、フラックス・ロックト・ループの帰還磁束をSQU
ID及び検出コイルに帰還するコイルとして上記第3の
超伝導体を用いて、磁束計を構成する。さらに、上記の
SQUID及び検出コイルを少なくとも2つ有し、その
各々は上記第1の超伝導体と上記第2の超伝導体のなす
2つの超伝導の閉回路を磁場を検出する検出コイルとし
て用い、公知のフラックス・ロックト・ループに接続さ
れ、フラックス・ロックト・ループの帰還磁束をSQU
ID及び検出コイルに帰還するコイルとして上記第3の
超伝導体を用いる磁束計であって、第1の磁束計の上記
第3の超伝導体は他の磁束計の上記第4の超伝導体に直
列に結合して、差動型磁束計を構成する。この磁束計ま
たは差動型磁束計を複数個用いて、SQUID磁束計シ
ステムを構成することができる。
【0018】図1は本発明の実施例の等価回路を示す図
である。図1は、1枚の基板上に成膜する検出コイルと
SQUID部分を示し、図5に示す従来例の点線で囲ま
れた基板部分10に相当する。SQUIDリングは2つ
のジョゼフソン接合1をつなぐ2つの超伝導体(SQU
IDリングのインダクタンス)2、2’で構成される。
超伝導体2、2’は各々インダクタンスを持つがいわゆ
るコイルの形状をしている必要はない。この超伝導線
2、2’に並列に別の超伝導体(検出コイル)3、3’
が接続される。超伝導体3、3’も各々インダクタンス
を有するが、1回巻きの超伝導線でもよく、また従来よ
く知られているワッシャ型のコイルでもよい。4、4’
は帰還コイル、7はダンピング抵抗である。
【0019】図3、図4に、検出コイルとSQUIDを
搭載した基板の具体的な構成例を示す。検出コイルとS
QUIDを、15mm角のSrTiO3(STO)のバ
イクリスタル基板上に、YBa2Cu3y(YBCO)
の1層膜で形成した。図6と同様に、図3、図4におい
て斜線部が超伝導膜の部分、残余は基板が露出した部分
である。図3(a)は検出コイルとSQUIDを搭載し
た基板の全体を示す図である。丸で示すSQUID部分
の占める面積は小さいため、図3(b)にSQUID部
(*2)の拡大図を示す。SQUIDリングはホールを
持つ縦長の四辺形で表されており、バイクリスタル線5
の上で超伝導体にくびれがあり、このくびれがジョゼフ
ソン接合部であり、図3中ジョゼフソン接合の上下の超
伝導体部分が、ジョゼフソン接合を連結する2つの超伝
導体2、2’に相当する。7はダンピング抵抗であり、
Au等の金属で成膜される。SQUIDリングからはバ
イアス電流注入と信号電圧出力用の端子が出ており、パ
ッド6に接続される。図3に示す例では、検出コイル
3、3’は幅300μmの超伝導膜である。
【0020】検出コイル3、3’の外側には、帰還磁束
等を与える帰還コイル4、4’が設けられている。帰還
コイル4、4’も幅300μmの超伝導膜である。この
検出コイル3、3’とSQUIDは基板10の中心に対
して対称形をなしており、形状の非対称のために磁束−
電圧変換特性が歪むことがなく、また、図6(a)と比
較してわかるように、検出コイル3、3’が基板10の
ほぼ全面を占め、実効面積が大きくとれる。
【0021】図4では、検出コイル3、3’の形状が図
3と異なっているが、等価回路は同じく図1で表され
る。検出コイル3、3’が、中央に2.5mmx5mm
のホールを持ついわゆるワッシャリング型をしている。
このワッシャリング型の形状では、検出コイル3、3’
の実効面積Apが、図3と比較して小さくなるが、一方
検出コイル3、3’のインダクタンスLpは、図3の形
状に比べて小さくなることを利用して、検出コイルの磁
場検出面積Ap(Lc/Lp)を確保する構成である。図
4(a)は検出コイルとSQUIDを搭載した基板の全
体を示す図である。丸で示すSQUID部分の占める面
積は小さいため、図4(b)にSQUID部(*3)の
拡大図を示す。以上、材質や数値を具体的に明示して例
を述べたが、材質や数値は一例であり、異なっていても
本発明の効果は得られる。
【0022】次に、検出コイルとSQUIDを一体化し
た従来の構成で本発明と類似するものが知られているの
で、これらと比較してその差異を明らかにする。図7は
従来の技術で述べた第2例の等価回路図である。一枚の
基板10の上に搭載された複数の検出コイル3が並列に
SQUIDに接続されている。この構成はSQUIDリ
ングそのもので直接磁場を計測するものであり、この例
ではSQUIDリングを構成する超伝導体2と検出コイ
ル3は形状やインダクタンスの上で全く同じものと考え
てよい。SQUIDリングのインダクタンスをできるだ
け低減するため、複数の検出コイル3を並列にSQUI
Dに接続した構造をもつ。図1と図7の比較から明らか
なように、図1では超伝導体(SQUIDリングのイン
ダクタンス)2、2’に並列に接続される検出コイル
3、3’が各々1つであるのに対して、図7では超伝導
体2(図1の超伝導体2’に対応する)に並列に接続さ
れる検出コイル3が複数であり、下部の超伝導体2’
(図1の超伝導体2に対応する)には、別の超伝導体が
接続されていない点が本発明と異なる。図8はIEEE
Transaction of Supercondu
ctivity、第5巻、第2号、3109−3112
頁に記載された従来例の等価回路図である。この例で
は、並列に接続された2つの検出コイル3、3’がジョ
ゼフソン接合1をつなぐ超伝導体の一方(2)のみに接
続される。この例は2つの検出コイル3、3’が空間的
な差分磁場を検出する構成である。図1と図8の比較か
ら明らかなように、この例でもジョゼフソン接合1をつ
なぐ超伝導体のうち一方の2のみに検出コイル3、3’
が接続されており、超伝導体の他方2’には検出コイル
が接続されていない点が本発明と異なる。
【0023】次ぎに、Direct−coupling
型の高温超電導体SQUID磁束計の具体的な構造と実
験結果について説明する。図12に示すように、基板を
等分割する2個の検出コイルを持つ構造では、ジョゼフ
ソン接合1の部分を除く全てのSQUIDインダクタン
スLcが、検出コイル3、3’との結合に寄与するた
め、磁場の検出面積を大きくすることができ、さらにS
QUIDと検出コイル3、3’をバイクリスタル線5に
対して対称的に配置できる。図12(a)、(b)に示
す構造の検出コイル3、3’について、検出コイルの外
寸を9mm角として、内寸をa(mm)を変化させたモ
デルを製作して、検出コイルのインダクタンスLpを実
測した。本モデルはガラスエポキシ樹脂の基板の上にN
iとAuからなる2層膜を成膜して製作した。ガラスエ
ポキシ樹脂基板、2層膜はそれぞれ、実際のSQUID
磁束計においては、SrTiO3(STO)のバイクリ
スタル基板、YBa2Cu3y(YBCO)の超伝導膜
に相当する。図13は、このLpの実測値を用いて、検
出コイルの実効面積ApとLpの比(Ap/Lp)を内寸a
(mm)に対してプロットした結果である。図13にお
いて、(a)、(b)は、それぞれ図12(a)、図1
2(b)に示す構造のモデルから得た結果である。比
(Ap/Lp)は、図12(a)に示す構造が図12
(b)に示す構造よりも大きく、さらに、図12(a)
に示す構造において、検出コイルの外寸が9mm角の場
合、(Ap/Lp)は内寸a=2mm〜5mmの範囲で同
じオーダの値が得られたが、内寸a=3mmがより最適
であることが判明した。
【0024】本発明の別の実施例を図2に示す。この構
成では、図7に示す構成と同様に、検出コイル3、3’
を各々複数個(図2では各々3個)並列にSQUIDに
接続したもので、図7に示す実施例と同様に、検出コイ
ル3、3’のインダクタンスLpが低減し、Ap(Lc
p)で表される検出コイルの磁場検出面積Aeffが向上
する効果がある。
【0025】図9に、本発明をReview of S
cientific Instrument、第65
巻、第12号、3814−3819頁に記載の磁束計に
適用した差動型磁束計の実施例を示す。雑音検出用磁束
計100と信号検出用磁束計200において、検出コイ
ル3、3’とSQUIDを一体形成した基板10、1
0’を平行に配置し、信号検出用磁束計200の基板1
0’を計測対象、例えば人間の頭蓋に接近して配置す
る。雑音検出用磁束計100の帰還電流を、帰還コイル
4と同時に信号検出用磁束計200の帰還コイル4’に
も与えることにより、信号検出用磁束計200の検出コ
イル3’にも帰還磁束が導入され、信号検出用磁束計2
00の雑音磁場を消去する構成である。従来よく知られ
た微分コイルを用いた場合と同様に環境雑音が低減して
S/Nが向上した信号が、信号検出用磁束計200の出
力として得られる。
【0026】信号検出用磁束計200には通常の帰還コ
イル4のほか、雑音検出用磁束計100の帰還磁束を導
入するコイル4’が必要になるが、図3、図4に示した
基板の構成では帰還コイル4、4’に相当するコイルが
2つついており、図3、図4に示した基板の構成を、信
号検出用磁束計200用としてそのまま用いることがで
きる。一般に高温超伝導を用いたSQUID磁束計で
は、超伝導接続の困難から検出磁場方向の空間微分をと
る、いわゆる軸型グラジオメータを構成するのが困難で
ある。図9に示す構成を用いれば、超伝導接続をするこ
となく高温超伝導SQUID磁束計で軸型グラジオメー
タを容易に構成できる。
【0027】生体磁場計測装置では、心臓の刺激伝導系
や脳神経の活動位置を推定するため、体表面上に磁束計
を数十個配置する構成をとるが、以上説明した磁束計や
差動型磁束計を複数個用いることにより、従来技術に比
べて感度の高い、即ち検出コイル入力換算磁気雑音の低
い生体磁場計測装置が実現できる。
【0028】
【発明の効果】SQUID磁束計のSQUID及び検出
コイルを、同一基板上の高温超伝導体の一層膜を用いて
一体形成するとき、基板面の約半分の面積を持つ検出コ
イルを2個用いて、検出コイルの磁場検出面積を向上さ
せ、SQUID磁束計の感度を向上する(ここで感度の
向上とは検出コイル入力換算の磁気雑音の低減を意味す
る)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の等価回路を示す図。
【図2】本発明の他の実施例の等価回路を示す図。
【図3】本発明の基板の構成例を示す図(a)、その一
部の詳細図(b)。
【図4】本発明の基板の構成例を示す図(a)、その一
部の詳細図(b)。
【図5】従来例の等価回路を示す図。
【図6】従来例の基板の構成例を示す図(a)、その一
部の詳細図(b)。
【図7】従来例の等価回路を示す図。
【図8】従来例の等価回路を示す図。
【図9】本発明の差動型磁束計の等価回路の例を示す
図。
【図10】SQUIDの動作を説明する図。
【図11】SQUIDの動作を説明する図。
【図12】本発明の実施例の基板を等分割する2個の検
出コイルを持つ構造のDirect−coupling
型の高温超電導体SQUID磁束計の構造(a)、
(b)を示す図。
【図13】図12に示す構造を持つSQUID磁束計の
特性を示す図。
【符号の説明】 1…ジョゼフソン接合、2、2’…SQUIDリングの
インダクタンス、3、3’…検出コイル、4、4’…帰
還コイル、5…バイクリスタル線、6…ボンディングパ
ッド、7…ダンピング抵抗、10、10’…基板、20
…増幅器、30…フラックス・ロックト・ループ回路、
40…バイアス電流源、100…雑音検出用磁束計、2
00…信号検出用磁束計。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2つのジョゼフソン接合を2つの第1の超
    伝導体で連結してなるSQUIDリングにおいて、前記
    第1の超伝導体の各々に連結される第2の超伝導体を有
    し、前記第1の超伝導体と前記第2の超伝導体とが超伝
    導の複数の閉回路をなすことを特徴とする検出コイル一
    体型SQUID。
  2. 【請求項2】請求項1項に記載の検出コイル一体型SQ
    UIDにおいて、前記第2の超伝導体が複数であること
    を特徴とする検出コイル一体型SQUID。
  3. 【請求項3】請求項1項または第2項に記載の検出コイ
    ル一体型SQUIDにおいて、前記複数の閉回路に磁気
    的に結合可能な第3の超伝導体を有することを特徴とす
    る検出コイル一体型SQUID。
  4. 【請求項4】請求項1項または第2項に記載の検出コイ
    ル一体型SQUIDにおいて、前記複数の閉回路に磁気
    的に結合する第3、第4の超伝導体を有することを特徴
    とする検出コイル一体型SQUID。
  5. 【請求項5】請求項1項から第4項のいずれかに記載の
    検出コイル一体型SQUIDが一枚の基板上に超伝導の
    薄膜で形成されることを特徴とする検出コイル一体型S
    QUID。
  6. 【請求項6】請求項5項に記載の検出コイル一体型SQ
    UIDにおいて、前記超伝導の薄膜が1層膜であること
    を特徴とする検出コイル一体型SQUID。
  7. 【請求項7】請求項5項または第6項に記載の検出コイ
    ル一体型SQUIDにおいて、SQUID及び検出コイ
    ルが、絶対温度77ケルビンにおいて超伝導特性を持つ
    高温超伝導体の膜で形成されることを特徴とする検出コ
    イル一体型SQUID。
  8. 【請求項8】請求項5項から第7項のいずれかに記載の
    検出コイル一体型SQUIDにおいて、SQUIDリン
    グの空孔部分が基板面の中心を含み、前記基板面の中心
    を含む前記基板面の一つの線に対して、前記基板面内で
    対称な形状を有することを特徴とする検出コイル一体型
    SQUID。
  9. 【請求項9】請求項5項から第7項のいずれかに記載の
    検出コイル一体型SQUIDにおいて、SQUIDリン
    グの空孔部分が基板面の中心を含み、前記基板面の中心
    に対して前記基板面内で対称な形状を有することを特徴
    とする検出コイル一体型SQUID。
  10. 【請求項10】請求項5項から第7項のいずれかに記載
    の検出コイル一体型SQUIDにおいて、前記基板が結
    晶方向の不連続面を有するバイクリスタル基板であり、
    前記ジョゼフソン接合が、前記結晶方向の不連続面と前
    記基板面の交線であるバイクリスタル線上に形成される
    ことを特徴とする検出コイル一体型SQUID。
  11. 【請求項11】請求項5項から第7項のいずれかに記載
    の検出コイル一体型SQUIDにおいて、前記基板がそ
    の表面に段差を有する基板であり、前記ジョゼフソン接
    合が前記段差上に形成されることを特徴とする検出コイ
    ル一体型SQUID。
  12. 【請求項12】請求項10項に記載の検出コイル一体型
    SQUIDが、前記バイクリスタル線に対して前記基板
    面内で対称な形状を有することを特徴とする検出コイル
    一体型SQUID。
  13. 【請求項13】請求項11項に記載の検出コイル一体型
    SQUIDが、前記段差の角として定義される段差線に
    対して前記基板面内で対称な形状を有することを特徴と
    する検出コイル一体型SQUID。
  14. 【請求項14】請求項3項に記載の検出コイル一体型S
    QUIDにおいて、前記閉回路を磁場を検出する検出コ
    イルとして用い、フラックス・ロックト・ループに接続
    され、前記フラックス・ロックト・ループの帰還磁束を
    SQUID及び前記検出コイルに帰還するコイルとして
    前記第3の超伝導体を用いることを特徴とする磁束計。
  15. 【請求項15】請求項4項に記載の検出コイル一体型S
    QUIDから構成される第1、第2の磁束計を有し、前
    記検出コイル一体型SQUIDの各々は、前記複数の閉
    回路を磁場を検出する検出コイルとして用い、フラック
    ス・ロックト・ループに接続され、前記フラックス・ロ
    ックト・ループの帰還磁束をSQUID及び前記検出コ
    イルに帰還するコイルとして前記第3の超伝導体を用い
    る磁束計であり、前記第1の磁束計の前記第3の超伝導
    体は前記第2の磁束計の前記第4の超伝導体に直列に結
    合していることを特徴とする差動型磁束計。
  16. 【請求項16】請求項14項に記載の前記磁束計を複数
    個用いることを特徴とするSQUID磁束計システム。
  17. 【請求項17】請求項15項に記載の差動型磁束計を複
    数個用いることを特徴とするSQUID磁束計システ
    ム。
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