JPH1033441A - 清掃モップ用シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 不織布を拭き取り部に装着して使用するモッ
プ用シートにおいて、その極細繊維不織布の汚れ除去性
能を最大限に生かしながら、且つ繊維の脱落が少ないリ
ントフリーな性能を有し、非常に細かいダスト・埃から
髪の毛、綿ボコリやパン屑までの幅広い拭き取り性能を
有する優れた家庭用及び業務用の清掃モップ用シートを
提供することにある。 【解決手段】 ０．５〜５μｍの断面径を有する極細繊
維から少なくとも構成され、かつ三次元交絡されている
不織シートが装着されているモップ拭き取り部におい
て、該不織シートの表面が起毛部により構成されている
ことを特徴とする清掃モップ用シート。 【効果】 本発明の清掃用モップは、水性のみならず油
性の液状汚れの除去性能が極めて高いばかりか、非常に
細かい固体のダスト・埃から比較的大きな髪の毛、綿ボ
コリ、パン屑に至る非常に広範囲の形状、種類の捕集性
能及び保持性能に優れる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、極細繊維不織布を
利用した業務用及び家庭用の清掃用モップに取り付ける
不織シート関するもので、液状の汚れの拭き取りばかり
か、細かいダストから大きな綿ボコリまで幅広い汚れの
除去と同時に繊維屑などの脱落が非常に少ない清掃モッ
プ用シートに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】最近、不織布を清掃用装着具、例えば実
開昭４９ー６８２６３号公報、実開平６−６２９６０号
公報記載の清掃用装着具等に装着した清掃用モップが利
用されている。この清掃用モップに装着する不織シート
が各種考案され、販売されている。この不織シートに要
求される性能は多岐に渡るもので、固体表面の水性又は
油性の液体の汚ればかりでなく、非常に細かいダスト・
埃から髪の毛、綿ボコリやパン屑まで幅広い汚れを除去
する性能が求められている。

【０００３】極細繊維からなる不織布がこうした清掃用
モップに使用され、非常に細かいダストの捕集及び毛細
管作用による吸水性の付与効果に優れることは、実開平
１−１５７６５５号公報などにより周知である。また、
最近特殊な繊維構造を有するアクリル系繊維からなる極
細繊維不織布（特開平２−２００８５７号公報）が注目
されている。特開平２−２００８５７号公報には、繊維
の横断面において不特定な形状を有する開口を多数有し
ており、該開口の各々は繊維の内部において、繊維の長
さ方向に沿ってほぼ平行な６０μｍ以上の長さを有する
筋状の空隙（ストロー状）を形成しているアクリル系繊
維からなる不織布が記載されている。この不織布は繊維
の特殊な構造によりもたらされる優れた汚れ除去効果に
より注目されている。

【０００４】しかしながら、このアクリル系極細繊維か
らなる乾式不織布を清掃モップ用シートに適用すると、
確かに液状汚れの除去性能は今までに無い優れたもので
あるが、固体のダストや大きなゴミの捕集性能は不十分
であり、繊維強度が弱いために不織布表面の耐摩耗性が
低く、繊維が切断し、脱落し易い欠点を有している。す
なわち、畳みの表面をこの清掃モップ用シートで拭き取
ると、畳みの縁が繊維脱落で白くなるという問題が見い
だされた。また、アクリル系微細繊維からなる湿式不織
布も試みられ、繊維交絡密度をたかめる工夫がなされて
いるが、この様な高い交絡密度の極細繊維不織布は、逆
に綿ボコリ、パン屑などの大きゴミを捕集することには
逆効果となり、捕集力が低下し、また繊維長が更に短く
なったことから、繊維の脱落もかえって悪くなるという
問題がある。

【０００５】一方、極細繊維からなる不織布の耐摩耗
性、耐久性の改善策として熱溶融性繊維の融着によりア
クリル性微細繊維を一体的に結合することによる方法が
提案（特開平５−２９５６４４号公報）されている。こ
の方法では熱溶融繊維による固定の為繊維の脱落は少な
く、強度、耐久性等の改善がなされているが、融着によ
って風合いが硬くなり、極細繊維の自由度が低下するた
め、液体の汚れや細かいダストの吸着には優れるが、大
きめの固体粒子の汚れ、例えば髪の毛、綿ボコリ、パン
屑などの捕集性は著しく低下するなどの問題がある。

【０００６】また、特開平４−９６７２４号公報には極
細繊維と通常の繊維を混在させることで、極細繊維単独
のシートでは捕集できない髪の毛、糸屑、綿ボコリなど
の大きなゴミをからめ取ることで拭き取り性を改善した
掃物用物品が提案されている。この清掃用物品には薬剤
が付与されておらず、また乾式カード機により形成した
比較的長い短繊維ウェブを交絡せしめた不織布からなっ
ているが、非常に細かいダストと大きな綿ボコリやパン
屑の両方をくまなく吸塵するには十分とは言い難い。す
なわち、極細繊維の比率を多くすると細かいダストを取
るが、大きな綿ボコリの吸着性は低下する。逆に通常繊
維の比率を多くすると細かいダストの吸着が極度に低下
する等の問題が生じる。

【０００７】また、特開平７−１８４８１５号公報には
非常に弱い繊維交絡を達成することでシート表面の自由
度の高い繊維により、汚れやダストの除去性能の改善工
夫が提案されている。更に特開平５−１９２２８５号公
報には網状シートと絡合された繊維集合体に薬剤を担持
させることで、薬剤により細かなダスト等の汚れの吸着
能を高め、かつ網状シートのもつ凹凸及び自由度の高い
不織繊維の絡み効果により、綿ボコリ、糸屑、髪の毛、
パン屑等の捕集に優れる清掃用物品が提案されている。

【０００８】しかしながら、これら特開平７−１８４８
５号公報及び特開平５−１９２２８５号公報に記載の清
掃用物品は、特殊な網状シートと繊維ウェブの集合体か
らなるため、製造プロセスが複雑で生産性が低い等の問
題があり、また通常デニールの繊維からなる弱い交絡の
不織布のため、大きなゴミは自由な不織布繊維と絡まっ
て吸着するものの、非常に細かなゴミ・埃は一旦捕集さ
れたものが衝撃で直ぐに脱落するという問題がある。そ
の改良として薬剤を担持させ細かいダストを保持する工
夫が成されているが、薬剤の多量の付与はシートにベタ
ツキ感を与え、好ましくない。

【０００９】このベタツキ感、及び薬剤の移行性を改善
する目的で、特開昭５９−１４０２８２号公報におい
て、低融点ワックスと液体潤滑油を１：５〜５：１の重
量比で清掃用繊維に付与することが開示されている。清
掃用繊維のダスト・埃等細かなゴミの捕集性を向上せし
めるためには、低融点ワックスと液体用潤滑油の付着量
を多くする必要があり、そのためベタツキ感が悪化し、
これを抑える為に低融点ワックス比率を高める（例え
ば、５０重量％）必要が生じることになり、捕集性とベ
タツキ感の両方を改善するのは難しく、ゴワゴワした硬
い風合いとなったり、ベタツキ感が残る等の問題が残さ
れている。

【００１０】このように繊維脱落がなく、リントフリー
性能を有し、細かなダストから大きな綿ボコリ、パン屑
にいたるあらゆるゴミを捕集できる家庭用及び業務用に
用い得る清掃用モップは未だ得られていない。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、極細
繊維から少なくとも構成され、三次元交絡されている不
織布、特に従来の特開平２ー２００８５７号公報に記載
されている不織布を拭き取り部に装着して使用するモッ
プ用シートであって、その極細繊維不織布の汚れ除去性
能を最大限に生かしながら、かつ繊維の脱落が少ないリ
ントフリーな性能を有し、非常に細かいダスト・埃から
髪の毛、綿ボコリやパン屑までの幅広い捕集性を有する
優れた家庭用及び業務用の清掃モップ用シートを提供す
ることにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、少なくと
も特定の断面径の極細繊維から構成され、かつ三次元交
絡されている不織布の表面を起毛することで、従来極細
繊維不織布を拭き取り部に装着した清掃用モップでは困
難であった比較的大きなダスト、綿ボコリ、パン屑等の
ゴミを非常に高い密度の極細の末端繊維により、からめ
取り、離さないという優れた効果を有することを見いだ
した。さらに、清掃モップの拭き取り部の底面に装着さ
れている不織シートの両端部を部分的に帯状に起毛する
ことで、清掃モップの端部に絡み集積された綿ボコリを
しっかり捕集し離さない効果を見いだすと共に、被清掃
面と清掃モップの摩擦抵抗を弱め拭き取り抵抗を下げ、
かつ極細繊維の脱落を低減されることを見いだし本発明
を完成した。

【００１３】すなわち、本発明は、０．５〜５μｍの断
面径を有する極細繊維から少なくとも構成され、かつ三
次元交絡されている不織シートが装着されているモップ
拭き取り部において、該不織シートの表面が起毛部によ
り構成されていることを特徴とする清掃モップ用シート
であり、極細繊維が、繊維横断面において不特定な形状
を有する開口部を多数有し、該開口部の各々が繊維の内
部において繊維の長さ方向に沿って６０μｍ以上の長さ
を有する筋状（ストロー状）の空隙からなるアクリル系
合成繊維から分割されていることを特徴とする清掃モッ
プ用シートであり、上記起毛部が、特定の幅をもち、か
つモップの拭き取り部に装着された不織シートの両端部
の内側部分に帯状に設けられていることを特徴とする清
掃モップ用シートであり、上記起毛部の起毛応力が、
１．０〜５．０ｇ／ｃｍ²であることを特徴とする清掃
モップ用シートである。

【００１４】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
於いて、モップの拭き取り部に装着される不織布は断面
径が０．５〜５μｍの極細繊維から少なくとも構成さ
れ、かつ三次元交絡されている必要がある。断面径は好
ましくは０．５〜３μｍである。断面径が０．５μｍ未
満であると、繊維径が細すぎて粉状の繊維脱落を抑制で
きず好ましくない。一方、５μｍを越える場合は、非常
に細かいダスト・埃の捕集性及び保持性能が悪くなるば
かりか、表面の極細繊維の起毛密度が不足して大きな綿
ボコリを確実に捕集できなくなるため好ましくない。

【００１５】極細繊維の長さは好ましくは２〜８０ｍ
ｍ、更に好ましくは３〜６０ｍｍ、より好ましくは３〜
２０ｍｍであり、繊維長は短い方が不織布内での繊維末
端の数が多くなりダスト等の捕集性は向上するが、短く
なりすぎると逆に繊維脱落を抑制できなくなる。極細繊
維の製法は特に限定される物ではなく、従来公知の直接
紡糸による方法、海島繊維や混合繊維などの複合繊維か
ら抽出性成分を除去する方法、或いは高圧水流等の外力
によって分割型繊維、例えばＰＥＴ／Ｎ６等の割繊性複
合繊維や内部に多数の連続的な空隙を有する特殊な分割
性繊維を分割する方法などによって得られる極細繊維が
本発明に適用できる。

【００１６】更に、該極細繊維を形成する高分子ポリマ
ーとしては通常のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、
ポリアクリルニトリル繊維、ポリオレフィン繊維などの
合成繊維及びこれらの混合繊維が使用できる。例えば、
本発明に好適に用いられる極細繊維として特開平２−２
００８５７号公報に記載の不織布に用いられている特殊
なアクリル系分割性繊維から高圧水流により分割して得
られるものがある。すなわち、繊維横断面に不特定な形
状を有する開口部を多数有し、該開口の各々は繊維の内
部において繊維の長さ方向に沿って略平行な６０μｍ以
上の長さを有する筋状（ストロー状）の空隙を形成する
アクリル系合成繊維（以後、原繊維と称する）から分割
されて得られる極細繊維が最も好適に本発明に適用でき
る。

【００１７】原繊維の横断面における開口数は原繊維が
容易に分割出来る程度に多数存在することが好ましい。
開口数は、この開口の空隙の長さとの関係で一律には定
めれれないが１００個以上存在することが好ましい。こ
れより少ない場合にはこの空隙が６０μｍ以上の連続口
であっても原繊維の分割が困難になる。この空隙は原繊
維の横断面において１００個以上存在すれば、数多く存
在するほど原繊維の分割が容易になり、微細な繊維の形
成も容易となる。また、この空隙は原繊維の横断面に均
等に分散していることが原繊維の分割を容易にする点で
好ましい。

【００１８】本発明で用いられる０．５〜５μｍの極細
繊維としては、前記原繊維が不織布に製造される工程
で、柱状流パンチングにより容易に微細な繊維に分割さ
れたものである。本発明の清掃モップ用シートの拭き取
り部に装着される三次元交絡不織布は、上記の０．５〜
５μｍの断面径を有する極細繊維から少なくとも構成さ
れているものであり、前記極細繊維以外の繊維が含まれ
ても差し支えないが、前記極細繊維の構成比率は好まし
くは５重量％以上、より好ましくは１０重量％、更に好
ましくは２０重量％である。極細繊維比率が５重量％未
満では極細繊維特有の液状汚れ除去性能及び非常に細か
いダスト・埃の捕集性能が発現されず、一旦捕集された
ダスト、綿ボコリ等が脱落し易く成り好ましくない。

【００１９】三次元交絡不織布を構成する前記極細繊維
以外の繊維としては、通常不織布製造に用いることがで
きる断面径が７〜２５μｍの原糸、例えばポリエチレン
テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリ
エステル系繊維、ナイロン６、ナイロン６６、６１０な
どのポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊
維、アクリル系繊維、セルロース系繊維（ベンベルグ、
レーヨン、綿、麻）などが使用できる。本発明に於いて
三次元交絡不織布の製法は特に限定される物ではなく、
極細繊維又は極細繊維を形成する繊維からカード、エア
ーレイ等の乾式法又は湿式抄造法にてウェブを形成す
る。

【００２０】本発明は不織布表面の多数の極細繊維を含
む起毛により汚れをからめ取るものであるから、繊維末
端が多数存在する繊維長の短い湿式抄造法によるウェブ
形成がより好ましい。得られたウェブはニードルパン
チ、高圧水流等により繊維を三次元的に絡ませる方法が
とられる。極細繊維を形成する繊維を使用した場合は三
次元交絡と同時に該繊維を高圧水流等の手段で分割して
極細繊維化するか、若しくは三次元交絡不織布とした後
に抽出性成分の溶剤で処理して抽出性成分を溶解除去す
ることによって極細繊維が得られる。例えば、最も好ま
しい態様として、２０ｍｍ以下の直接紡糸法で得た極細
短繊維又は特開平２−２００８５７号公報の不織布に用
いられている分割性繊維から湿式法にて抄造シートを形
成し、高圧の柱状水流で処理することで極細繊維を少な
くとも含む三次元交絡不織布を得ることができる。この
場合、前記極細繊維又は分割性繊維と０．５〜６デニー
ル、好ましくは１〜３デニールの他の短繊維または熱融
着性繊維を混抄することは、前記極細繊維の繊維脱落を
防止し、かつ不織布の密度を下げることでより大きなダ
ストをも捕集する上で非常に好ましい。

【００２１】熱融着性繊維としては、例えばＰＥＴ／共
重合ＰＥＴ、ＰＥＴ／ＰＥ、ＰＰ／ＰＥ、Ｎ６／共重合
Ｎ６などの芯鞘型、サイドバイサイド型複合熱融着性繊
維をも用いることができる。また、ＰＥ、ＰＰ、共重合
Ｎ６などの低融点繊維を用いることもできる。この熱融
着性繊維の本発明の三次元不織布内の構成比率としては
３０〜１重量％未満、好ましくは２０〜１重量％、更に
好ましくは１０〜２重量％未満である。この熱融着性繊
維の量が多すぎると不織布が硬くなり、繊維脱落は非常
に改善されるものの、極細繊維が熱融着繊維によって固
定されるため大きな固体ゴミ、ダスト・埃、綿ボコリの
捕集性能が低下する。一方、あまり少な過ぎると繊維脱
落に抑制効果が無くなる。

【００２２】本発明の不織シートは、こうして得られた
少なくとも極細繊維を含む三次元交絡不織布の表面が起
毛された起毛部で構成しているもので、この極細繊維を
含む表面起毛繊維末端が被清掃面のダスト・埃、綿ボコ
リ等と絡み合って優れた捕集性能及び衝撃等によって捕
集した物を脱落させない保持能力を発揮するものであ
る。特に、清掃用モップの拭き取り部の全底面に装着さ
れた不織シートにおいて、拭き取り部の両端部から内側
へ特定の幅で帯状に起毛されることにより清掃効果が高
められる。また、矩形状の不織シートを用い、拭き取り
部の長辺側の両端部から内側へ特定の幅で帯状に起毛さ
れることにより、その効果は更に高められる。

【００２３】以下、この構成について説明する。図１は
モップの拭き取り部の全底面に矩形状の不織シートを装
着するため、不織シート上にモップ拭き取り部を配置し
た状態を示した、不織シート側から見た概念図である。
図１では、Ｗは不織シートの短辺長さ、ｗはモップの拭
き取り部の短辺長さ、Ｌは不織シートの長辺の両端から
内側に入り込んだ不織シートの短辺に沿った長さ、αは
モップの拭き取り部の長辺の両端から内側に入り込んだ
モップの拭き取り部の短辺に沿った長さであり、ちなみ
にこれらの関係は次式で示される。

【００２４】Ｌ＝（Ｗ−ｗ）／２＋α 上記説明の「清掃用モップの拭き取り部の全底面に装着
された不織シートにおいて、拭き取り部の両端部から内
側へ特定の幅で帯状に起毛される」部分は、図１におい
ては、ダブルハッチングされている部分を指している。
すなわち、通常Ｗの長さをもつ不織シートは、両端部か
らＬの長さ内側に入ったところまで起毛される（シング
ルハッチング部）。この不織シートがｗの長さを持つモ
ップの拭き取り部に装着され、しかも不織シートの両端
部は、モップの拭き取り部へ装着のためモップの拭き取
り部の上方に持ち上げられ、折り曲げられるため、拭き
取り時に清掃場所に接触する起毛された不織シートは、
αの幅をもつ帯状部分（ダブルハッチング）だけにな
る。

【００２５】つまり、清掃用モップの拭き取り部の底面
に装着された不織シートにおいて、上記拭き取り拭き取
り部の底面に装着された矩形状不織シートの長辺側の両
端部から内側へαの幅をもつ帯状部分が起毛されてお
り、本発明ではこの帯状部分の幅が特定の範囲になけれ
ばならない。このように、特定の範囲の幅をもつ帯状部
分が起毛されていることにより、綿ボコリなどは清掃用
モップ底面の端部に帯状に集積され、紐状になる性質を
有しているが、この紐状になった綿ボコリを起毛された
帯状部分の極細繊維で強固に絡めとることにより、綿ボ
コリなどが清掃用モップから脱落することがないという
優れた効果を発揮する。この帯状の起毛部分の特定の範
囲にある幅αは、好ましくは２０ｍｍ以内、より好まし
くは１５ｍｍ以内、さらに好ましくは１０ｍｍ以内であ
る。また、この帯状の起毛部分の幅が特定の範囲を越え
ると、極細繊維の摩擦抵抗が増大し、拭き取り抵抗が大
きくなり、繊維脱落が多くなる。

【００２６】一方、起毛部分の起毛状態の好ましい範囲
については、起毛の長さや密度を定量的に評価、検討し
た結果、後述の測定法で説明するように厚み方向の圧縮
応力を測定することで、起毛状態を表し得ることを見い
だした。すなわち、表面起毛が完全に伏せられた状態
（荷重７ｇ／ｃｍ² が加えられた時）の不織シートの厚
みに０．１ｍｍの厚みを加えたときの厚みにおける不織
シートの反発応力（以後、起毛応力）が大きい場合は起
毛が長く、密度が高いこと、逆にこの起毛応力が小さい
時は起毛が短く、起毛密度が小さいことがわかった。本
発明の不織シートの起毛応力は１．０〜５．０ｇ／ｃｍ
² が必要であり、好ましくは１．５〜４．０ｇ／ｃ
ｍ² 、より好ましくは２．０〜４．０ｇ／ｃｍ² であ
る。起毛応力が０．５ｇ／ｃｍ² 以下では綿ボコリ等の
捕集性能の向上効果が不十分である。一方、５．０ｇ／
ｃｍ² を越える様な起毛応力の場合は、拭き取り抵抗が
高く、脱落繊維も多くなるなどの問題が生じる。

【００２７】本発明の不織シートにはダスト捕集用の薬
剤が付与されていても良い。この場合、ダスト補集用の
薬剤としては流動パラフィン、鉱物油、シリコーンオイ
ル、アルキルベンゼンオイル等の合成油或いはヒマシ
油、オリーブ油、椿油等の植物油が適用できる。薬剤の
付着量としては、該不織シートに対して１〜３０重量％
が付着していることが好ましく、より好ましい範囲は３
〜２０重量％、さらに好ましくは５〜１５重量％であ
る。付着量が１重量％以下では、薬剤を保持させた効果
が顕著に現れない。一方、３０重量％を越える付着量に
なると、本発明の特殊な極細繊維に起因する優れた拭き
取り性能や静電気による毛髪の着塵性が極端に低下した
り、ベタツキ感を生じ、フロアーへの移行などの欠点を
生じることになり好ましくない。

【００２８】

【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により具体
的に説明する。なお、本発明の実施例における測定法及
び評価法は以下の方法で実施した。 （１）脱落繊維 畳縁布（巴印、純綿、コゲ茶）を板に固定する。モップ
治具に２０×３０ｃｍの試験片（不織シート）を取り付
け、前記畳縁布の上に置き、治具の上には５００ｇの重
りを載せて引張り、３往復させる。畳縁布上の繊維脱落
が一番密集しているところに５ｃｍ角の枠を載せ、枠内
にある３ｍｍ以上の繊維屑（本数）を数える。

【００２９】（２）毛髪捕集性：長さ１０ｃｍの人間女
性の毛髪１０本を３０００ｃｍ² （３０×１００ｃｍ）
の木床試験板（大倉工業、複合一種フローリング５８９
ナラ乱尺）上に出来るだけ均等に散布する。脱落繊維試
験法と同様に試験片（不織シート）を試験板の端から端
まで３往復させた後、十分に捕集されていない毛髪を除
去するため軽く試験片を３回振る。試験片に付着してい
る毛髪の本数を計測する。計測は１０回繰り返し、その
平均値を算出する。

【００３０】（３）ダスト捕集性：試験用ダスト（ＪＩ
Ｓ−Ｚ８９０１ 第７種）０．５ｇを毛髪捕集性の測定
と同様に木床試験板上に散布し、試験片（不織シート）
で同様に拭き取り、試験片に付着したダストの重量（ｍ
ｇ）を測定する。測定を３回繰り返し、平均値を算出す
る。

【００３１】（４）コットンリンター捕集性：試験用コ
ットンリンター（ＪＩＳ−Ｚ８９０１ 第１５種）０．
５ｇを用い、ダスト捕集性の測定と同様に測定し、試験
片（不織シート）に捕集されたコットンリンター重量
（ｍｇ）で表す。 （５）滑り抵抗：２０×３０ｃｍの試験片（不織シー
ト）を取り付けたモップ治具に１ｋｇの重りを載せ、木
床試験板（大倉工業、複合一種フローリング５８９ナラ
乱尺）上を引張った時の最大滑り抵抗値（ｇ）を、バネ
ばかりで測定する。試験片を毎回新しいものに交換し、
滑り抵抗測定を３回繰り返し、その平均値を算出する。

【００３２】（６）起毛応力：起毛面を柔らかい豚毛フ
ラシで逆目に整毛した試験片（不織シート）の表面圧縮
荷重ー変位曲線をＫＥＳー３圧縮試験機で測定する。す
なわち、試験片（不織シート）に荷重を加えてゆき、図
２に示す荷重ー厚み曲線を描き、この曲線において荷重
７ｇ／ｃｍ² での厚み（ｍｍ）を求め、この厚みに０．
１ｍｍを加えた厚み（ｍｍ）における応力を、荷重ー厚
み曲線から読みとり起毛応力（ｇ／ｃｍ ² ）とする。

【００３３】（７）ダスト保持率：試験用ダスト（ＪＩ
Ｓ−Ｚ８９０１ 第７種）０．５ｇを毛髪捕集性の測定
と同様に木床試験板上に散布し、試験片（不織シート）
で同様に拭き取り、試験片に付着したダストの重量（Ｇ
₀）を測定する。次いで、試験片が装着された清掃用モ
ップを高さ２０ｃｍから自然落下を３回繰り返して衝撃
を与えた後に再度、試料に残存するダスト量の重量（Ｇ
₁）を測定する。ダスト保持率（％）は（Ｇ₁/Ｇ₀×１０
０）で表される。測定を３回繰り返し、平均値を算出す
る

【００３４】

【実施例１】ＡＮ９５．０重量％、アクリル酸メチル
４．５重量％及びメタリルスルホン酸ソーダー０．５重
量％の共重合体と、ポリエチレンオキシドーポリプロピ
レンオキシドーポリエチレンオキシドのブロック型ポリ
エーテル（数平均分子量１０００００、ポリエチレンオ
キシドとポリプロピレンオキシドの割合は７０：３０）
とをジメチルホルムアミドに溶解して、アクリル系重合
体２３％、ブロック型ポリエーテル２．３％を含有する
ジメチルホルムアミド紡糸原液を調整した。この紡糸原
液を６時間静置した後、紡糸口金を通して温度３５℃、
ジメチルホルムアミド７５％の凝固浴中に押しだし、水
洗後、沸騰水中で１２倍延伸し、８０℃の熱風中で乾燥
して１．５デニールの原繊維を製造した。

【００３５】長さ１２ｍｍにカットした上記原繊維を水
中に分散させ均一スラリーとして、長網式抄紙機により
目付５０ｇ／ｍ² の繊維抄造シートを製造した。この抄
造シートを８０メッシュの金網の上に置き、直径０．１
５ｍｍ、ピッチ０．８ｍｍの１列ノズルから７５ｋｇ／
ｃｍ² の水圧で水噴射し、２０ｍ／分の速度で移動しな
がら柱状流パンチングした。次に、同様の条件でこの繊
維シートの裏側から柱状流パンチングした。この操作を
５回繰り返し繊維交絡シートとした後、８０℃のピンテ
ンター式熱風乾燥機で乾燥して不織シートを得た。この
不織シートの表面を電子顕微鏡で観察するとアクリル原
繊維から分割された断面径が０．５μｍから３μｍの範
囲の微細繊維及び未分割又は分割途中の太い繊維が相互
に三次元的に交絡しているのが観察された。

【００３６】この不織シートの表面をエメリーペーパー
で起毛処理を行い、タテ×ヨコ：２００ｍｍ×３００ｍ
ｍの大きさの不織シートに裁断した。起毛応力を測定す
ると２．１ｇ／ｃｍ² であった。得られた不織シートを
モップの取り付け部（タテ×ヨコ：１００ｍｍ×２００
ｍｍ）に装着し家庭用の清掃用モップを製作した。この
清掃用モップの拭き取り性能の評価を実施したところ、
優れた捕集性（ダスト）及びダスト保持率を示すと共
に、極細繊維の不織布では捕集性に問題があった大きな
綿ボコリ、髪の毛等の捕集性（毛髪）も優れていた。デ
ーターを表１に示した。

【００３７】

【実施例２】実施例１で得られた三次元交絡不織布をか
ら、タテ×ヨコ：２００ｍｍ×３００ｍｍの不織シート
を裁断し、エチケットブラシでこの不織シートの長辺の
両端からそれぞれ６０ｍｍ内側部分のみ起毛（起毛応力
＝２．３ｇ／ｃｍ² ）を施して、清掃モップ用不織シー
トを作成した。この時、該モップ用不織シートの中央部
８０ｍｍの幅の部分は起毛処理が無く、起毛応力＝０．
７ｇ／ｃｍ² であった。該不織シートをモップの取り付
け部（タテ×ヨコ：１００ｍｍ×２００ｍｍ）に装着し
て清掃用モップを製作したところ、清掃用モップの底面
において、その長辺側の両端から内側へ１０ｍｍの部分
（α＝１０ｍｍ）は起毛が存在し、内部は起毛が殆どな
い状態であった。この清掃用モップの拭き取り性能は、
捕集性及びダスト保持率を維持しながら、脱落繊維が抑
制改善されたものであった。データーを表１に示した。

【００３８】

【実施例３】実施例１で全面起毛処理して得られたタテ
×ヨコ：２００ｍｍ×３００ｍｍの不織シートに信越化
学(製)シリコーンオイル（ＫＦ９６ー１０００；粘度１
０００ｃｓｔ（２５℃））をロールコーター方式で不織
シートの表裏面に不織シートに対し１５重量％付着さ
せ、得られた清掃モップ用不織シートをモップ取り付け
部（タテ×ヨコ：１００ｍｍ×２００ｍｍ）に装着して
清掃用モップを製作した。捕集性及び脱落繊維性等を評
価し、表１に示した。これからシリコーンオイルの付与
によって更にダストの捕集性が改善されていることがわ
かる。

【００３９】

【実施例４】実施例２で部分的に起毛処理して得られた
タテ×ヨコ：２００ｍｍ×３００ｍｍの清掃モップ用の
不織シートに、実施例３と同様のシリコーンオイルを不
織シートに対し１５重量％付着させ、得られた不織シー
トをモップ取り付け部（タテ×ヨコ：１００ｍｍ×２０
０ｍｍ）に装着して清掃用モップを作成し、捕集性及び
脱落繊維性等を評価し、表１に示した。これから、捕集
性に優れ、脱落繊維も非常に少ないことがわかる。

【００４０】

【実施例５】実施例１の原繊維を長さ１２ｍｍにカット
した短繊維７０部と、１．５デニール、長さ１５ｍｍの
ポリエステル短繊維３０部からなる混抄シート（目付５
０ｇ／ｍ² ）を長網式抄紙機により製造した。この抄造
シートを８０メッシュの金網の上に置き、実施例１と同
様な条件で柱状流パンチング処理した後、乾燥すること
で三次元交絡不織布シートを得た。

【００４１】表面起毛を３２０メッシュのエメリーぺー
パーで全面起毛処理して、起毛率が２．５ｇ／ｃｍ² の
清掃モップ用不織シート（タテ×ヨコ：２００ｍｍ×３
００ｍｍ）を得た。実施例１と同様に清掃用モップをつ
くり、性能を評価し、結果を表２に示した。その結果、
ダストの捕集性を維持しながら、より大きなコットンリ
ンターの捕集性にも一層の改善が認められた。

【００４２】

【実施例６】実施例５で得られた交絡不織布を全面起毛
処理した不織シートに、信越化学(製)変性アミノシリコ
ーンオイル（ＫＦ８６１；粘度３５００ｃｓｔ（２５
℃））を、不織シートに対し１５重量％付着せしめた清
掃モップ用シート作成し、捕集性、及び脱落繊維性等を
評価して表２に示した。

【００４３】

【実施例７】実施例１の原繊維を長さ１２ｍｍにカット
した短繊維６０部と、１．５デニール、長さ１５ｍｍの
ポリエステル短繊維３０部、２．０デニール、長さ１５
ｍｍのＰＥＴ／共重合ＰＥＴ熱融着繊維（融着温度１１
０℃）１０部からなる目付が５０ｇ／ｃｍ² の混抄シー
トを長網式抄紙機により製造した。この抄造シートを８
０メッシュの金網の上に置き、実施例１と同様な条件で
柱状流パンチング処理した後、１４０℃で乾燥すること
で、構成繊維の一部が熱融着繊維で接着された三次元交
絡不織シートを得た。

【００４４】表面を３２０メッシュのナイロンブラシで
全面起毛処理して、起毛応力が２．８ｇ／ｃｍ² の清掃
モップ用不織シート（タテ×ヨコ：２００ｍｍ×３００
ｍｍ）を得た。実施例１と同様に清掃用モップをつく
り、性能評価を実施した結果を表２に示した。脱落繊維
性が著しく改善され、かつ０．５〜３μｍの微細繊維と
１．５デニール通常繊維からなる表面起毛が、非常に細
かいダストや液状汚ればかりでなく比較的大きなダス
ト、綿ボコリを捕集し、ダスト捕集性やコットンリンタ
ー捕集性に優れていることがわかる。

【００４５】

【実施例８】実施例７で得られた三次元交絡不織布に流
動パラフィン（粘度２０ｃｓｔ（２５℃））とクリスタ
ルワックス（融点９８℃）を９７：３の割合で混合した
組成液を調合し、グラビヤコーターで不織シートに対し
付着率１５重量％になるように付着せしめ、タテ×ヨ
コ：２００ｍｍ×３００ｍｍのシートを得た。その後、
豚毛ブラシで不織シート表面を全面ブラッシング処理を
施し、引き続き真鍮ブラシで長辺の両端からそれぞれ６
０ｍｍ内側の部分を起毛処理を施し（不織布の中央部８
０ｍｍは豚毛ブラシ起毛処理のみ）、不織シートを作成
した。

【００４６】この不織シートをモップの取り付け部（タ
テ×ヨコ：１００ｍｍ×２００ｍｍ）に装着して清掃用
モップを製作したところ、清掃用モップの底面におい
て、その長辺側の両端から内側へ１０ｍｍの部分にかけ
て起毛応力２．９ｇ／ｃｍ² の起毛が存在し、底面の中
央部は起毛応力１．５ｇ／ｃｍ² の起毛が存在してい
た。作成した清掃用モップの捕集性及び脱落繊維性等を
表３に示した。

【００４７】

【比較例１】実施例１で製造した三次元交絡不織布を起
毛処理をせずに、タテ×ヨコ：２００ｍｍ×３００ｍｍ
の不織シートに裁断し、これをモップの取り付け部（タ
テ×ヨコ：１００ｍｍ×２００ｍｍ）に装着して清掃用
モップを製作して性能評価を行った。その結果、毛髪の
捕集性は優れるものの、コットンリンターの捕集性ばか
りでなく、ダストの捕集性も十分とはいえないものであ
った（表１参照）。

【００４８】

【比較例２】１．５ｄのポりエステル繊維を１５ｍｍの
繊維長にカットし、湿式法にて抄造シートを形成し、実
施例１と同様な方法で柱状流パンチングを行い三次元交
絡不織布を形成した。この交絡不織布の表面を４００メ
ッシュのエメリーペーパーで起毛処理を行い、タテ×ヨ
コ：２００ｍｍ×３００ｍｍの不織シートに裁断して清
掃モップ用不織シートを作成した。この不織シートをモ
ップの取り付け部（タテ×ヨコ：１００ｍｍ×２００ｍ
ｍ）に装着して清掃用モップを製作して性能評価を行っ
た結果を表１に示す。

【００４９】その結果、コットンリンターの捕集性は優
れているものの、ダストや髪の毛等の捕集性はある程度
の量の捕集性をしか示さず、しかもダストの保持率は著
しく低かった。これは０．５〜５μｍの微細繊維を含ま
ないために、ダスト等が単に低密度の不織シートの空隙
に取り込まれるものの保持出来ず、衝撃により脱落し易
いものと推察される。

【００５０】

【比較例３、４】実施例５及び実施例７で三次元交絡シ
ートの表面を起毛処理しないで、タテ×ヨコ：２００ｍ
ｍ×３００ｍｍのシートに裁断し、モップの取り付け部
（タテ×ヨコ：１００ｍｍ×２００ｍｍ）に装着して清
掃用モップを製作して性能評価を行ったところ、清掃用
モップとしての脱落繊維性及び捕集性等の性能は不十分
であった（表２参照）。

【００５１】

【表１】

【００５２】

【表２】

【００５３】

【発明の効果】本発明の清掃用モップは、水性のみなら
ず油性の液状汚れの除去性能が極めて高いばかりか、非
常に細かい固体のダスト・埃から比較的大きな髪の毛、
綿ボコリ、パン屑に至る非常に広範囲の形状、種類の捕
集性能及び保持性能に優れることから、業務用及び家庭
用のフローリングワイパーに好適に使用することができ
る。

【００５４】また、本発明の清掃用モップは、繊維の脱
落が非常に少なく、畳みの縁布等への繊維脱落も非常に
少ないことから畳面の掃除も可能であり、その優れた捕
集性能は経時的に変化の少ない耐久性を有しているの
で、本発明の清掃用モップの工業的価値は極めて大き
い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のモップの拭き取り部の底面に不織シー
トが装着されている状態を不織シート側から見た概念図
である。

【図２】本発明の不織シートに荷重を加えていった時の
荷重ー厚みの関係を示す図である。

【符号の説明】

Ｗ：不織シートの短辺長さ ｗ：モップの拭き取り部の短辺長さ Ｌ：不織シートの長辺の両端から内側に入り込んだ不織
シートの短辺に沿った長さ α：モップの拭き取り部の長辺の両端から内側に入り込
んだモップの拭き取り部の短辺に沿った長さ Ｍ：モップの拭き取り部の底部 Ｂ：不織シートが起毛された部分 Ｔ：不織シートに荷重７ｇ／ｃｍ² を加えたときの厚み
（ｍｍ） Ｆ：起毛応力

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ０．５〜５μｍの断面径を有する極細繊
   維から少なくとも構成され、かつ三次元交絡されている
   不織シートが装着されているモップ拭き取り部におい
   て、該不織シートの表面が起毛部により構成されている
   ことを特徴とする清掃モップ用シート。
2. 【請求項２】 極細繊維が、繊維横断面において不特定
   な形状を有する開口部を多数有し、該開口部の各々が繊
   維の内部において繊維の長さ方向に沿って６０μｍ以上
   の長さを有する筋状（ストロー状）の空隙からなるアク
   リル系合成繊維から分割されていることを特徴とする請
   求項１記載の清掃モップ用シート。
3. 【請求項３】 起毛部が、特定の幅をもち、かつモップ
   の拭き取り部に装着された不織シートの両端部の内側部
   分に帯状に設けられていることを特徴とする請求項１ま
   たは２記載の清掃モップ用シート。
4. 【請求項４】 起毛部の起毛応力が、１．０〜５．０ｇ
   ／ｃｍ²であることを特徴とする請求項１、２または３
   記載の清掃モップ用シート。