JPH10331060A - 電磁選択装置およびこれを有する編みツール制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 先願発明（特願平７−２８７８６３号）より
も優れた電磁選択装置およびこれを利用した丸編機にお
けるジャカード編地の制御装置を提供する。 【解決手段】 左右端部に設けられた第１、第２被吸着
部（５ａ，５ｂ）を有する揺動片（５）と、この揺動片
の第１、第２被吸着部を選択的に吸着する磁石部材を有
する。前記磁石部材は、永久磁石（２０）と、その両側
に直列に接続された第１、第２電磁石（１３ａ，１３
ｂ）からなる。前記第１、第２電磁石は第１、第２コア
（１３２ａ，１３２ｂ）と第１，第２コイル（１３１
ａ，１３１ｂ）からなる。前記永久磁石（２０）から伸
展する中央先端部（２２）はさらに左右に伸展する外向
き傾斜部（２２ａ，２２ｂ）を有する。前記被吸着部
（５ａ，５ｂ）の長さは、前記第１、第２コア（１３２
ａ，１３２ｂ）の上端の大部分と前記外向き傾斜部（２
２ａ，２２ｂ）の少なくとも一部をカバーするものであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、永久磁石と電磁石を併
用し、少ない電力で強い吸着力を発揮する電磁選択装置
及びこれを有する編みツール制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】丸編機においてジャカード編成を行なう
ためには選針が必要であり、そのために特定の編針を作
用または非作用状態に切替える必要がある。この目的の
ために、永久磁石と電磁石を組み合わせた電磁選針装置
が広く用いられている。例えば、特開平６−２０７３５
２号、特開平４−２８９２５０号、特公平２−６０７７
７号、特開昭６２−２９９５５４号、アメリカ特許第３
５１８８４５号、アメリカ特許第３２８３５４１号など
が知られている。また、アメリカ特許第３５１８８４５
号、同第３２８３５４１号の装置では、編みツールを作
用又は非作用位置に切替えるため、複数の制御電磁石が
配置されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】前者の永久磁石と電磁
石を併用した従来の装置は、永久磁石の磁力を電磁石で
消磁し、編みツールを制御していた。そのため、永久磁
石の磁力よりも強い磁力を発生させることはできず、十
分な吸着力を得るには永久磁石と電磁石を共に大きくす
る必要があり、スペースの限られた編機選針部等に多数
装着するのが困難であった。

【０００４】後者の複数の制御電磁石を使用する従来の
装置は、編みツールを作用位置に制御する制御部と非作
用位置に制御する制御部が別々の制御装置を必要とし、
そのため制御装置が大きくなり、製造コストも高くなる
という問題があった。

【０００５】この問題を解決するため本出願人は、本願
明細書において比較実験の対象とした先願発明を行なっ
た（現在未公開の特願平７−２８７８６３号）。本発明
はこの先願発明の改良発明であり、先願よりさらに優れ
た電磁選択装置およびこれを利用した丸編機におけるジ
ャカード編地の制御装置を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の電磁選択装置
は、左右端部に設けられた第１、第２被吸着部を有する
揺動片と、この揺動片の第１、第２被吸着部を選択的に
吸着する磁石部材とを有し、前記磁石部材は、永久磁石
と、その両側に直列に接続された第１、第２電磁石から
なり、前記第１、第２電磁石は第１、第２コアと第１，
第２コイルからなる電磁選択装置において、前記永久磁
石から伸展する中央先端部はさらに左右に伸展する外向
き傾斜部を有し、前記被吸着部の長さは、前記第１、第
２コアの上端の大部分と前記外向き傾斜部の少なくとも
一部をカバーするものであることを特徴とする。好まし
くは、前記第１、第２コアと前記外向き傾斜部の先端部
の隙間は０．５〜２．０ｍｍであり、より好ましくは
１．０〜１．５ｍｍである。好ましくは、前記第１、第
２コアの前記傾斜部の傾斜角度は、前記外向き傾斜部の
前記傾斜角度とほぼ同一であり、第１、第２コアの上端
線と外向き傾斜部の上端線とが一直線となるように設定
し、しかも揺動片の最大揺動角度に一致させる。さらに
好ましくは、第１、第２コアの選針吸着斜面内部に第２
永久磁石を設ける。

【０００７】本発明の編みツール制御装置は、編みツー
ルが移動可能に装着された、丸編機におけるジャカード
編地の編成装置に使用するものであって、前記編みツー
ルと同一溝に装着され、編みツールを制御する揺動片母
材と、前記揺動片母材により揺動自在に支持された少な
くとも１個の揺動片と、前記揺動片の両端にそれぞれ対
応した、少なくとも一対の吸着部材を有する磁石部と、
前記揺動片を上昇させる少なくとも１個の揺動片レージ
ングカムと、前記編みツールを制御する制御カムと、揺
動片母材を制御する中間カムとからなり、前記磁石部
が、永久磁石と、その両側に直列に接続された第１、第
２電磁石からなり、前記第１、第２電磁石は第１、第２
コアと第１，第２コイルからなり、しかも、前記永久磁
石から伸展する先端部はさらに左右に伸展する外向き傾
斜部を有し、前記被吸着部の長さは、前記第１、第２コ
アの上端と前記外向き傾斜部の一部をカバーするもので
あることを特徴とする。

【０００８】

【作用】本発明の電磁選択装置によれば、前記第１電磁
石が第１被吸着部を吸着するときには、永久磁石による
第２磁束が第２電磁石によって発生した第２磁束によっ
て遮断され、遮断された永久磁石による第２磁束は永久
磁石による第１磁束と第１電磁石によって発生した第１
磁束に付加し、より強い磁界を発生させる。

【０００９】一方、前記第２電磁石が第２被吸着部を吸
着するときには、永久磁石による第１磁束が第１電磁石
によって発生した第１磁束によって遮断され、遮断され
た永久磁石による第１磁束は永久磁石による第２磁束と
第２電磁石によって発生した第２磁束に付加し、より強
い磁界を発生させる。

【００１０】本発明の編みツール制御装置によれば、柄
情報信号に基づいて吸着部材によって吸着された揺動片
が揺動片レージングカムと係合し揺動片をピボット支持
している揺動片母材と共に押し出す。揺動片母材の内側
のシンカー溝に挿入されている中間部材を揺動片母材が
押し出し、中間部材を上昇（前進）させる。上昇（前
進）した中間部材のバットが中間部材レージングカムと
係合し、中間部材はさらに上昇（前進）する。中間部材
は中間部材の内側のシンカー溝に挿入されている編みツ
ールを上昇（前進）させる。上昇（前進）した編みツー
ルにより、ジャカード編地が形成される。

【００１１】

【実施例】以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例
を説明する。

【００１２】図１、２に示すように、１条の溝（図示せ
ず）の中で薄板状の揺動片５が薄板状の揺動片母材４の
下部に揺動可能に嵌合されている。揺動片母材４の下部
は半円状のくぼみ４ｅとなっている。このくぼみ４ｅに
対応するように、揺動片５の中央上端部から円形の突起
部５ｅが突出し、前記くぼみ４ｅと突起部５ｅはピボッ
ト的に支点連結されている。揺動片５の左右端部は、左
右対称であり、上方にくさび部５ｃ、５ｄを、下方に被
吸着部５ａ、５ｂを形成している。被吸着部５ａ、５ｂ
の間で前記円形突起５ｅの他端部にはなだらかな曲線か
らなる揺動支点５ｆが形成されている。

【００１３】前記揺動片５に対向して、本発明の電磁選
択装置が固定的に設けられる。この装置は、中央に永久
磁石２０が、その両隣に第１、第２電磁石１３ａ、１３
ｂが設けられ、下方に配設された支持部材２１により各
位置が固定されている。

【００１４】永久磁石２０と当接する中央先端部２２は
前記揺動支点５ｆと接し、揺動片５の揺動を安定的なも
のとしている。中央先端部２２は左右に伸展して外向き
傾斜部２２ａ，２２ｂとなっている。外向き傾斜部２２
ａ，２２ｂは左右先端部２２１ａ，２２１ｂへ行くほど
先細りとなっている。中央先端部２２及びその外向き傾
斜部２２ａ，２２ｂは少なくとも磁性体である必要があ
るが、それ自体が永久磁石であってもよい。

【００１５】各電磁石１３ａ，１３ｂは、永久磁石２０
の両隣に位置する第１、第２励磁コイル１３１ａ，１３
１ｂと、その励磁コイルの内部及び左右両端に位置する
第１、第２コア１３２ａ，１３２ｂから構成されてい
る。図２に示すように、第１、第２電磁石１３ａ、１３
ｂは直列に配列されている。第１、第２コア１３２ａ，
１３２ｂの先端は外向き傾斜部とするのが、大きな揺動
を可能とするので好ましい。

【００１６】第１、第２コア１３２ａ，１３２ｂと前記
外向き傾斜部２２ａ，２２ｂの先端部２２１ａ，２２１
ｂは出来るだけ接近させるのが好ましく、例えばその隙
間は０．５〜２．０ｍｍ程度とする。このようにするこ
とにより、永久磁石の外向き傾斜部から第１，第２コア
にそれぞれ向かう磁束の流れが吸着部により接近するた
め、吸着部に近い位置では前記先願発明に比べて磁束密
度が密になり、磁力が増加する。

【００１７】また、第１、第２コア１３２ａ，１３２ｂ
の前記傾斜部の傾斜角度は、前記外向き傾斜部２２ａ，
２２ｂの前記傾斜角度と同一とするのが好ましい。ま
た、第１、第２コア１３２ａ，１３２ｂの上端線と外向
き傾斜部２２ａ，２２ｂの上端線とが一直線となるよう
に設定し、しかも揺動片５の最大揺動角度に一致させる
のが好ましい。

【００１８】さらに、被吸着部５ａ，５ｂの長さは、第
１、第２コア１３２ａ，１３２ｂの上端の大部分と外向
き傾斜部２２ａ，２２ｂの一部をカバーするものとする
ことが好ましい。

【００１９】図６，図７は、本発明の第２実施例に係る
電磁選択装置の平面図およびＢ−Ｂ断面図である。第１
実施例と異なるのは、第１、第２コア１３２ａ，１３２
ｂの選針吸着斜面１３３ｃ内部に第２永久磁石２３を設
けていることである。この第２永久磁石２３を設けるこ
とにより、電磁石に次の揺動片の信号が送られても、第
２永久磁石２３によって揺動片の被吸着部はさらに吸着
され続ける。その結果、後記する丸編機の編みツール制
御装置において、選針された後に次の選針信号の影響を
受けることがなく、特に高速運転においても選針ミスが
発生しにくくなるという効果がある。（後述の［００４
５］参照）

【００２０】図１７、図１８は、本発明の第3実施例に
係る電磁選択装置である。図１７は、図６のＢ−Ｂ断面
図にほぼ相当する位置の断面図であり、図１８は図１７
のＡ部拡大図である。第３実施例が第１、第２実施例と
異なるのは、第１、第２コア１３２ａ，１３２ｂと外向
き傾斜部２２ａ，２２ｂの先端部２２１ａ，２２１ｂの
左右の隙間に第３永久磁石３０がそれぞれ嵌めこまれて
いることである。嵌めこむ第３永久磁石３０の形状は、
外向き傾斜部２２ａ，２２ｂの輪郭延長線によって形取
られるものとすることが好ましく、その結果、第1、第2
コア１３２ａ, １３２ｂと外向き傾斜部２２ａ，２２
ｂの先端部２２１ａ，２２１ｂの上端線は一直線とな
る。嵌めこみの方法は、たとえば接着剤による接合であ
る。嵌めこまれる左右の第３永久磁石３０の磁極は左右
対称となっている。この構成を採用することにより、第
１実施例のものと比較して選針部分の磁束密度が１２０
０ガウスから１６００ガウスに向上した(後述の[００４
５]参照)。

【００２１】第１，第２実施例において、直列に配列さ
れた第１、第２電磁石１３ａ，１３ｂの配線の両端に正
電圧又は負電圧をかけることにより、これらの第１、第
２電磁石の第１、第２コア部分１３２ａ，１３２ｂが揺
動片５の被吸着部５ａ、５ｂを選択的に吸着する。

【００２２】例えば、図３のように、ＡからＢに正電圧
がかけられたとき、永久磁石２０による第１磁界２０ａ
が第１電磁石１３ａによって発生した磁束によって遮断
され、永久磁石２０による第２磁束２０ｂに第２電磁石
１３ｂによって発生した磁束と遮断された第１磁界２０
ａが付加され、より強い磁界が発生する。このとき、第
２電磁石１３ｂの第２コア１３２ｂが揺動片５の被吸着
部５ｂを選択的に吸着する。

【００２３】また、図４のように、ＡからＢに負電圧が
かけられたとき、永久磁石２０による第２磁束２０ｂが
第２電磁石１３ｂによって発生した磁束によって遮断さ
れ、永久磁石２０による第１磁束２０ａに第１電磁石１
３ａによって発生した磁束と遮断された第２磁界２０ｂ
が付加され、より強い磁界が発生する。このとき、第１
電磁石１３ａの第１コア１３２ａが揺動片５の被吸着部
５ａを選択的に吸着する。

【００２４】本発明の電磁選択装置は、例えば丸編機の
シンカー制御装置において使用することが出来る。使用
方法は、例えば、特開平９−２１０４２号及び前記未公
開先願明細書と同様であり、後者について繰り返せば次
の通りである。

【００２５】図８〜１４は、そのシンカー制御装置の要
部である。図８はカム、シンカー２、中間部材（中間ジ
ャック）３、揺動片母材４、揺動片５の配列図及び編針
１とシンカー２の動作線１Ｌ、２Ｌを示す。

【００２６】図９に示すように、丸編機の回転シリンダ
ー１５の上部にシンカーダイヤル１６が固着され、シン
カーダイヤル１６の上部には半径方向にシンカー溝があ
り、シンカー溝には、シンカー２が設定されている。

【００２７】シンカー２の上部に、パイル編成における
グランド糸ＧＹとパイル糸ＰＹの２種類の編糸を編針に
供給するヤーンキャリア６（図８，図９−１３参照）が
設けられている。ヤーンキャリア６には、グランド糸Ｇ
Ｙを供給するグランド糸供給口６ａとパイル糸ＰＹを供
給するパイル糸供給口６ｂとが固着されている。

【００２８】前記シンカー２は、シンカーダイヤル１６
に対応するシンカーキャップ１７に取り付けられている
インナーシンカーカム７、アウターシンカーカム８の作
用によりシンカー溝を半径方向に摺動する。シンカー２
は、その縦縁部２ｅ、２ｄがインナーシンカーカム７の
側端部７ａ、７ｂにより挟持され、さらにそのバット２
ａがカムトラックＴ２（図８参照）により制御されてい
る。

【００２９】シンカー２の外周方向のシンカー溝には、
中間部材３が設定されている。中間部材３には、少なく
とも１つのバット３ａがあり、対向するシンカーキャッ
プ１７に取り付けられているアウターシンカーカム８と
第１中間カム１０によって形成されたカムトラックＴ３
（図８参照）に沿ってシンカー溝内を半径方向に摺動す
る。

【００３０】中間部材レージングカム９（図８，図１３
参照）は、中間部材３のバットを作用・非作用の位置に
制御する。中間部材レージングカム９が作用位置にある
場合には、パイルまたは非パイルの選択が可能で、非作
用位置では非パイルのみとなる。

【００３１】図８および図１５に最も明瞭に示されてい
るように、中間部材３の外周方向のシンカー溝に本発明
に係る電磁選択装置が設定されている。揺動片母材４
は、第１中間カム１０と第２中間カム１１によって形成
されたカムトラックＴ４により制御される少なくとも１
つのバット４ａを持つ。

【００３２】前記揺動片５に対向して、磁石部の吸着部
材１３ａ、１３ｂ（図８，図１０参照）がシンカーキャ
ップ１７に取り付けられている。予め設定した所定の柄
情報によってコントローラから出力された信号に基づ
き、これらの吸着部材１３ａ、１３ｂが揺動片５の被吸
着部５ａ、５ｂを選択的に吸着する。なお、揺動片５が
吸着部材１３ａ、１３ｂに進入する前に、揺動自由な状
態にある揺動片５を揺動片キャンセルカム１４（図８参
照）の傾斜面により水平に揃え、その後、揺動片５が吸
着部材１３ａ、１３ｂを通過することが望ましい。ま
た、キャンセルカムに非磁性体を使用し、永久磁石から
の洩れ磁力を減少させることが望ましい。

【００３３】シンカー２を前進させる時は、吸着部材１
３ｂにコントローラから信号を送り、吸着部材１３ｂに
対応した揺動片５の被吸着部５ｂを吸着させる（図１０
＜図８のＢ−Ｂ断面図＞参照）。このときまでに、前記
グランド糸供給口６ａからグランド糸ＧＹが前記シンカ
ー２のシンカートップ２ｆ上を跨いで編針１に供給され
ている。

【００３４】前記被吸着部５ｂが吸着部材１３ｂを通過
後、揺動片５のくさび部５ｄが揺動片レージングカム１
２の台形断面の昇り傾斜部１２ａと係合し、揺動片５は
揺動片母材４と共に編機の中心方向に押し出される（図
１１Ａ＜図８のＣ−Ｃ断面図＞参照）。

【００３５】押し出された揺動片母材４の前側端部４ｂ
は中間部材３の後側端部３ｂを押し出す。中間部材３の
バット３ａは中間部材レージングカム９の昇り傾斜部９
ａに係合し、中間部材３は編機の中心方向に押し出され
る（図１２Ａ＜図８のＤ−Ｄ断面図＞参照）。

【００３６】押し出された中間部材３の前側端部３ｃに
よりシンカー２の後側端部２ｃが押し出される。中間部
材３が中間部材レージングカム９の頂点９ｂに達したと
きに、押出された中間部材３によってシンカー２がシン
カーノーズ２ｂ上でパイルループを編成できる位置まで
前進する（図１３Ａ＜図８のＥ−Ｅ断面図＞参照）。こ
のとき、前記パイル糸供給口６ｂからパイル糸ＰＹが前
記シンカー２のシンカーノーズ２ｂ上を跨いで編針１に
供給される。図１４（図８のＦ−Ｆ断面）は、前進した
シンカー２によりシンカーノーズ２ｂ上でパイルループ
ＰＬを編成している状態を示している。

【００３７】なお、中間部材レージングカム９の頂点９
ｂでは、押し出されたシンカー２のノーズ２ｂの先端部
が編針の円周動作線より内側に０．３ｍｍ以上移動する
ように設定することが好ましい。このように設定するこ
とにより、シンカーノーズ２ｂの先端より０．３ｍｍ以
上離れた位置でパイルループを確実に形成することがで
きるからである。

【００３８】揺動片母材４により中間部材３が中間部材
レージングカム９に係合する位置に押し出された後、揺
動片母材４のバット４ａが第１中間カム１０の下り傾斜
部１０ｂに係合し、揺動片母材４は揺動片５と共に非パ
イル位置まで戻される。

【００３９】上記構成において、中間部材３と中間部材
制御カムを省略することも可能である。その場合、揺動
片レージングカム１２が揺動片５を揺動片母材４と共に
押し出し、揺動片母材４が直接シンカー２を押し出すこ
とになる。

【００４０】シンカー２を前進させない時は、吸着部材
１３ａにコントローラから信号を送り、吸着部材１３ａ
に対応した揺動片５の被吸着部５ａを吸着する（図１０
参照）。なお、図１０では、作図上の限界により、被吸
着部５ａ，５ｂのいずれが、吸着部材１３ａ，１３ｂの
いずれに吸着されているかが明瞭ではない。

【００４１】吸着部材１３ａに吸着された揺動片５は、
揺動片レージングカム１２の昇り傾斜部１２ａと係合し
ないで、揺動片５は揺動片レージングカムの昇り傾斜部
１２ａの下側を通過し、揺動片５・揺動片母材４・中間
部材３は、前後方向に移動しないで円周方向を進む（図
１１Ｂ，図９Ｂ，図１３Ｂ参照）。シンカー２は、中間
部材３と係合せずに、シンカーカム７、８のみで制御さ
れる。このとき、パイル糸ＰＹを供給してもシンカート
ップ２ｆ上で編まれるためパイルループＰＬを形成しな
い。グランド糸ＧＹはパイル糸ＰＹと共に前記シンカー
２のシンカートップ２ｆ上を跨いで編針１に供給される
（図１３Ｂ＜図８のＥ−Ｅ断面図＞参照）。

【００４２】このように、本発明のシンカー制御装置を
使用することにより、コントローラから出力した柄信号
に基づいてパイルと非パイルの選択を行い、凹凸のジャ
カードパイル編地を編成することができるのである。し
かし、本発明はジャカードパイル編地を製造する装置に
限定されるものではない。シンカー・シリンダー針・ダ
イアル針・ジャック等の編みツールを少なくとも２種類
の通路において選択的に制御する装置には幅広く利用す
ることが可能である。

【００４３】なお、図２，７の電磁選択装置では、永久
磁石のＮ極が外向きでＳ極が内向きに配設されている
が、この装置を丸編機のシンカー制御装置に採用する場
合、１フィーダおきに極性を逆に配設すれば、揺動片に
発生する残留磁気を防止することができる。このとき、
電磁石にかける正電圧または負電圧を１フィーダおきに
逆にする（例えば、図１６のように、１フィーダおきに
直列に配列された第１、第２電磁石の両端を交差させ
る）と、制御装置からの作用又は非作用の制御信号は、
各フィーダ同じ極性方向でよい。

【００４４】

【発明の効果】本発明による電磁選択装置と前記先願発
明による電磁選択装置との性能比較を行なった。

【００４５】電磁選択装置により選針される選針ポイン
トで、１番目の揺動片が１番目の信号を受けた後、この
１番目の揺動片を編機の回転方向にある距離移動し、次
に１番目の揺動片が受けた１番目の信号とは逆の２番目
の信号（２番目の揺動片のための信号）を電磁選択装置
に送った時に、１番目の揺動片が２番目の信号の影響を
受けた場合、選針ミスとなる。一般的に、移動距離が長
いほど、つまり編機の揺動片間のピッチが長いほど、ま
た、電磁選択装置への選針電流が低いほど、前後の信号
の影響を受けないために選針が安定する。テストでは選
針が安定するのに要する移動距離を測定した。

【００４６】本願発明の性能テスト結果を表１に、前記
先願発明の性能テスト結果を表２に示す。

【表１】

【表２】

【００４７】これらの表から、先願発明では、移動距離
が０．８ｍｍで選針が安定するのに対して、本願発明で
は、移動距離が０．２ｍｍで選針が安定していることが
分かる。

【００４８】このことは、揺動片間のピッチが短いファ
インゲージ（３２ゲージ以上：１インチ当り３２本の針
＝ピッチ距離０．７９ｍｍ）での高速運転（３０インチ
の編機で毎分２５回転）を実現可能とする。

【００４９】なお、参考として、第１、第２コアと前記
永久磁石の外向き傾斜部の先端部の間の隙間の好ましい
距離および永久磁石についての実験結果を図５に掲げ
る。横軸は電流値、縦軸は吸着力（ｇ）である。モデル
３（隙間５．０ｍｍ、永久磁石１個）よりも、モデル１
（隙間１．０ｍｍ、永久磁石１個）の方が吸着力が強
く、モデル２（隙間１．０ｍｍ、永久磁石２個）が最高
であることが分かる。

【００５０】本発明の電磁選択装置を使用したジャカー
ド丸編機の編みツール制御装置によれば、コンパクトな
電磁選択装置を使用しているので、装置のスペースの節
約を図ることが出来る。また、この電磁選択装置は強力
な磁界を有するので、選針ミスも少なくなった。

【００５１】さらに、揺動片は吸着された揺動片の被吸
着部の端部にあるくさび形をしたくさび部が台形断面の
揺動片レージングカムと確実に係合する。そのため、揺
動片レージングカムと係合した揺動片は揺動片レージン
グカムから外れることがなく選択ミスのない制御が可能
である。そして、揺動片は突出したバットを設けていな
いため、制御ミスが発生してもバット折れの危険性が皆
無に近い。

【００５２】さらに、単一種類の制御部材である揺動片
を制御するため、制御装置の吸着部材も小型化でき、ま
た、コンピュータによってジャカード柄を制御している
ため、柄範囲の広い編地を製造することが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の電磁選択装置の断面図である。

【図２】 通電時における本発明の電磁選択装置の側面
図である。

【図３】 ＡからＢへ正電圧をかけた時における本発明
の電磁選択装置の磁力線の状態を示す概略図である。

【図４】 ＡからＢへ負電圧をかけた時における本発明
の電磁選択装置の磁力線の状態を示す概略図である。

【図５】 電磁選択装置の形状の変化による揺動片の吸
着力の影響を示したグラフである。

【図６】 本発明の第２実施例に係る電磁選択装置の断
面図である。

【図７】 本発明の第２実施例に係る電磁選択装置の側
面図である。

【図８】 この発明の電磁選択装置を使用した編みツー
ル制御装置の一例を示すカム・針・シンカー・中間部材
・揺動片・揺動片母材の配列図である。

【図９】 図８のＡ−Ａ断面におけるシンカー制御過程
を示す断面図である。

【図１０】 図８のＢ−Ｂ断面におけるシンカー制御過
程を示す断面図である。

【図１１】 図８のＣ−Ｃ断面におけるシンカー制御過
程を示す断面図であり、図１１Ａはパイル選択、図１１
Ｂは非パイル選択を示す。

【図１２】 図８のＤ−Ｄ断面におけるシンカー制御過
程を示す断面図であり、図１２Ａはパイル選択、図１２
Ｂは非パイル選択を示す。

【図１３】 図８のＥ−Ｅ断面におけるシンカー制御過
程を示す断面図であり、図１３Ａはパイル選択、図１３
Ｂは非パイル選択を示す。

【図１４】 図８のＦ−Ｆ断面におけるシンカー制御過
程を示す断面図である。

【図１５】 揺動片制御部における揺動片キャンセルカ
ム、吸着部材、揺動片レージングカムおよび揺動片と揺
動片母材の関係を示した斜視図である。

【図１６】 本発明の別実施例に係る配線状態であり、
（Ａ）は偶数フィーダ、（Ｂ）は奇数フィーダである。

【図１７】 本発明の第３実施例に係る電磁選択装置で
あり、図６のＢ−Ｂ断面図にほぼ相当する位置の断面図
である。

【図１８】 図１７のＡ部拡大図である。

【符号の説明】

１ 編針 ２ シンカー ２ｂ シンカーノーズ ３ 中間部材 ４ 揺動片母材 ４ｅ くぼみ ５ 揺動片 ５ａ，５ｂ 被吸着部 ５ｃ，５ｄ くさび部 ５ｅ 突起部 ６ ヤーンキャリア ７ インナーシンカーカム ８ アウターシンカーカム ９ 中間部材レージングカム １０ 第１中間カム １０ｂ 下り傾斜部 １１ 第２中間カム １２ 揺動片レージングカム １２ａ 昇り傾斜部 １３ａ，１３ｂ 吸着部材 １３１ａ，１３１ｂ 励磁コイル １３２ａ，１３２ｂ コア １４ 揺動片キャンセルカム ２０ 永久磁石 ２２ 永久磁石先端部 ２２ａ，２２ｂ 外向き傾斜部 ２３ 第２永久磁石 ３０ 第３永久磁石 ＧＹ グランドヤーン ＰＬ パイルループ ＰＹ パイルヤーン

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 左右端部に設けられた第１、第２被吸着
   部（５ａ，５ｂ）を有する揺動片（５）と、この揺動片
   の第１、第２被吸着部を選択的に吸着する磁石部材とを
   有し、前記磁石部材は、永久磁石（２０）と、その両側
   に直列に接続された第１、第２電磁石（１３ａ，１３
   ｂ）からなり、前記第１、第２電磁石（１３ａ，１３
   ｂ）は第１、第２コア（１３２ａ，１３２ｂ）と第１，
   第２コイル（１３１ａ，１３１ｂ）からなる電磁選択装
   置において、 前記永久磁石（２０）から伸展する中央先端部（２２）
   はさらに左右に伸展する外向き傾斜部（２２ａ，２２
   ｂ）を有し、 前記被吸着部（５ａ，５ｂ）の長さは、前記第１、第２
   コア（１３２ａ，１３２ｂ）の上端の大部分と前記外向
   き傾斜部（２２ａ，２２ｂ）の少なくとも一部をカバー
   するものであることを特徴とする電磁選択装置。
2. 【請求項２】 前記第１、第２コア（１３２ａ，１３２
   ｂ）と前記外向き傾斜部（２２ａ，２２ｂ）の先端部
   （２２１ａ，２２１ｂ）の隙間が０．５〜２．０ｍｍで
   ある請求項１記載の電磁選択装置。
3. 【請求項３】 前記第１、第２コア（１３２ａ，１３２
   ｂ）の前記傾斜部の傾斜角度は、前記外向き傾斜部（２
   ２ａ，２２ｂ）の前記傾斜角度とほぼ同一であり、第
   １、第２コア（１３２ａ，１３２ｂ）の上端線と外向き
   傾斜部（２２ａ，２２ｂ）の上端線とが一直線となるよ
   うに設定し、しかも揺動片（５）の最大揺動角度に一致
   させた請求項１ないし２のいずれかに記載の電磁選択装
   置。
4. 【請求項４】 第１、第２コア（１３２ａ，１３２ｂ）
   の選針吸着斜面（１３３ｃ）内部に第２永久磁石（２
   ３）が設けられている請求項１ないし３のいずれかに記
   載の電磁選択装置。
5. 【請求項５】 第１、第２コア（１３２ａ，１３２ｂ）
   と外向き傾斜部（２２ａ，２２ｂ）の先端部（２２１
   ａ，２２１ｂ）の隙間に第３永久磁石（３０）がそれぞ
   れ嵌めこまれている請求項1記載の装置。
6. 【請求項６】 編みツール（２）が移動可能に装着され
   た、丸編機におけるジャカード編地の編成装置に使用す
   る編みツール制御装置であって、 前記編みツールと同一溝に装着され、編みツールを制御
   する揺動片母材（４）と、 前記揺動片母材（４）により揺動自在に支持された少な
   くとも１個の揺動片（５）と、 前記揺動片（５）の両端にそれぞれ対応した、少なくと
   も一対の吸着部材（１３ａ、１３ｂ）を有する磁石部
   と、 前記揺動片（５）を上昇させる少なくとも１個の揺動片
   レージングカム（１２）と、 前記編みツールを制御する制御カム（７、８）と、 揺動片母材（４）を制御する中間カム（１０、１１）と
   を有し、 前記磁石部が、永久磁石（２０）と、その両側に直列に
   接続された第１、第２電磁石（１３ａ，１３ｂ）からな
   り、前記第１、第２電磁石（１３ａ，１３ｂ）は第１、
   第２コア（１３２ａ，１３２ｂ）と第１，第２コイル
   （１３１ａ，１３１ｂ）からなり、 しかも、前記永久磁石（２０）から伸展する中央先端部
   （２２）はさらに左右に伸展する外向き傾斜部（２２
   ａ，２２ｂ）を有し、 前記被吸着部（５ａ，５ｂ）の長さは、前記第１、第２
   コア（１３２ａ，１３２ｂ）の上端の大部分と前記外向
   き傾斜部（２２ａ，２２ｂ）の一部をカバーするもので
   あることを特徴とする丸編機における編みツール制御装
   置。