JPH10328292A - 生体材料および生体材料の製造方法 - Google Patents

生体材料および生体材料の製造方法

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JPH10328292A
JPH10328292A JP9154470A JP15447097A JPH10328292A JP H10328292 A JPH10328292 A JP H10328292A JP 9154470 A JP9154470 A JP 9154470A JP 15447097 A JP15447097 A JP 15447097A JP H10328292 A JPH10328292 A JP H10328292A
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JP
Japan
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film
apatite
amorphous
apatite film
biomaterial
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JP9154470A
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English (en)
Inventor
Takashi Ebisawa
孝 海老沢
Katsuyuki Araki
克之 荒木
Hideaki Ito
秀明 伊藤
Tatsuaki Sakakawa
竜昭 坂川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Steel Works Ltd
Original Assignee
Japan Steel Works Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材にアパタイトを被膜した生体材料の
耐久性を向上させる。 【解決手段】 生体材料用基材1の表面に直接または間
接的にアモルファスアパタイト膜2を形成し、その最表
層にC軸配向結晶アパタイト膜3を形成する。 【効果】 アパタイト被膜の内部応力が緩和されて
剥離や損壊が防止され、その表面では生体に対する親和
性が高く、しかも体液に容易に溶出しない皮膜が得られ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工関節や人工歯
根、人工血管等の生体材料の基材に、生体との癒着性を
向上させるためにハイドロキシアパタイト薄膜を被覆し
た生体材料および該生体材料の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】人工歯根等の生体材料では、生体との親
和性を高めるために基材の表面にアパタイト膜を被覆し
たものが用いられている。上記アパタイト膜の形成方法
としてはプラズマ溶射法やスパッタ法等のいくつかの方
法が提案、実施されているが、実用的にはプラズマ溶射
法が一般に行われている。このプラズマ溶射法は比較的
厚い結晶性の膜を効率よく形成することができるが、被
膜組織の制御が難しく、アモルファスとc軸配向結晶と
が混在した層になりやすい。一方、スパッタ法による薄
膜はプラズマ溶射法に比べ、成膜効率は劣るものの、密
着性や生体との親和性が良好であるとともに、緻密な構
造を有し、表面も比較的平滑であるため、生体細胞に対
する刺激が小さいという利点を有している。ところで、
通常のスパッタではアモルファス状のアパタイト膜が形
成されるが、アモルファスアパタイト膜は体液との接触
により容易に体液中に溶出するという問題がある。一
方、c軸配向した結晶性のアパタイト膜は上記溶出が殆
どないことが知られており、このc軸配向結晶アパタイ
ト膜はスパッタ時の基材温度を高温にすることにより得
られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のスパ
ッタ法により得られたc軸配向結晶アパタイト膜は、基
材との密着性が悪い上に機械的強度が弱くて破損しやす
く、さらに内部応力が大きいため厚さを厚くする(例え
ば5μm厚越)と剥離しやすいという問題がある。ま
た、プラズマ溶射法により形成されたアパタイト膜は、
基材の表面に溶射粒子が乗った状態のため、その表層部
の凹凸形状が激しく、アパタイトが元々機械的強度が弱
いことも相まって表層部において破損しやすいという問
題がある。本発明は、上記事情を背景としてなされたも
のであり、基材との密着性に優れ、かつ破損、剥離がな
く、さらに体液への溶出も少ないアパタイト薄膜が形成
された生体材料およびその製造方法を提供することを目
的とする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記課題を解決するた
め、本発明の生体材料のうち第1の発明は、生体材料用
基材の表面に直接または間接的にアモルファスアパタイ
ト膜が形成されているとともに、その最表層にc軸配向
結晶アパタイト膜が形成されていることを特徴とする。
第2の発明の生体材料は、下層のアモルファスアパタイ
ト膜から上層の結晶アパタイト膜に至る間が、結晶アパ
タイト膜とアモルファス膜とを交互に積層したものであ
ることを特徴とする。第3の発明の生体材料は、第1ま
たは第2の発明において、アモルファスアパタイト膜と
結晶アパタイト膜との間が、アパタイトのアモルファス
と結晶との混在した層であってその結晶比率が結晶アパ
タイト膜に向かうに従って段階的または連続的に増加し
ていることを特徴とする。
【0005】第4の発明の生体材料は、第1〜第3の発
明において、生体材料用基材の表面にプラズマ溶射によ
るアパタイト膜が形成されており、その表層にアモルフ
ァスアパタイト膜が形成されていることを特徴とする。
第5の発明の生体材料は、第4の発明において、プラズ
マ溶射アパタイト膜の表層に形成されるアモルファスア
パタイト膜に変えて中間薄膜が形成されていることを特
徴とする
【0006】第6の発明の生体材料の製造方法は、第1
〜第5発明の生体材料を製造する際にアパタイト膜をス
パッタにより成膜する方法であって、アモルファスアパ
タイト膜成膜時の基材加熱温度を50℃以下、結晶アパ
タイト膜成膜時の基材加熱温度を250℃以上、500
℃以下としたことを特徴とする。第7の発明の生体材料
の製造方法は、第6の発明において、アモルファスと結
晶との混在アパタイト層を成膜する際の基材加熱温度を
50℃越〜250℃未満の温度範囲にするとともに、成
膜中途の表層の結晶比率の増加に伴って上記基材加熱温
度を上昇させることを特徴とする。第8の発明の生体材
料の製造方法は、第6または第7の発明において、最表
層のc軸配向結晶アパタイト膜の成膜後、500〜60
0℃で5〜60分加熱する熱処理を行うことを特徴とす
る。
【0007】本発明の生体材料では、その基材としてセ
ラミックス、金属等適宜の材料を選定することができ、
その用途も人工関節、人工歯根、人工血管等の広範囲に
亘り、生体材料である限りは特定用途に限定されるもの
ではない。この基材に形成されるアパタイト膜は、実質
的にハイドロキシアパタイトからなるものであればよ
く、少量の他成分を含むことは許容される。なお、本発
明では、上記基材表面に直接または間接的にアモルファ
スアパタイト膜を形成する。
【0008】したがって、アモルファスアパタイト膜を
直接基材に形成する他に、他材料によって膜を形成した
上層にアモルファスアパタイト膜を形成するものであっ
てもよい。上記他材料膜にはセラミックスや金属材料を
使用することができる。この材料は、機械的強度が強
く、基材に対する接合性が良好なものが望ましく、さら
には、生体への有害性が少ないものが望ましい。これら
の要求を満たす材料としては、ZrO、Al23やT
i、Ti合金が挙げられる。また、後述するように基材
表面にプラズマ溶射によるアパタイト膜を形成したもの
であってもよい。そして、最表層にはc軸に配向した結
晶アパタイト膜を形成するが、最表層以外の結晶アパタ
イト膜では、必ずしもc軸に配向していることは必要で
なく、a軸に配向したものや、特定軸に配向していない
ものであってもよい。
【0009】上記アモルファスアパタイト膜や結晶アパ
タイト膜(c軸配向のものを含む)、混在アパタイト
層、中間薄膜、その他材料膜は、プラズマ溶射膜を除い
てはスパッタ法により形成することができる。ただし、
本発明としては、スパッタ法の採用やスパッタ法により
形成された膜であることが必須となるものではなく、上
記薄膜の形成には、その他の薄膜形成法、例えば真空蒸
着法、CVD法、ゾル・ゲル法等を採用することも可能
であり、また各膜毎に異なる膜形成方法を採用すること
も可能である。ただし、基材の加熱温度の変更により、
厚さ方向において組織を容易に制御できるという点でス
パッタ法が有利である。
【0010】なお、上記スパッタ法により成膜する際に
は、各薄膜の厚さは、0.1〜5μmの範囲内とするの
が望ましい。これは、あまりに厚さが薄いと、所望の厚
さの薄膜を得るのに多くの層が必要になり、製造作業が
繁雑で効率が悪いためであり、また、5μmを越えると
内部応力が大きくなって剥離やクラックが生じやすくな
るためである。ただし、基材に直接成膜するアモルファ
ス膜では基材との密着性を確保するため、また最表層の
c軸配向結晶アパタイト膜では体液への溶出を有効に防
止するため、上記範囲内において、さらに、それぞれ
0.5μm以上の厚さとするのが望ましい。
【0011】また、アモルファスアパタイト膜と結晶ア
パタイト膜との間に混在アパタイト層を形成する場合に
は、混在アパタイト層は、厚さ方向に徐々に性質が変化
するため内部応力の緩和作用が大きく、したがって膜厚
も比較的厚くすることができる。ただし、あまり厚くす
ると剥離の問題が生じることから、混在アパタイト層の
厚さは、上記膜厚の望ましい範囲に拘わらず、さらに、
10μmまでは許容される。なお、剥離を確実に回避す
るという点では8μm以下とするのが望ましい。なお、
本発明では、各薄膜の厚さを上記範囲にすることにより
全体としては5μmを越える場合があるが、従来例と異
なり、性質の異なるスパッタ膜が積層された状態にある
ため内部応力が緩和されて剥離が有効に防止される。し
たがって、従来例のように剥離防止のために全体の膜厚
が5μm以下に制約されるという問題が解消される。
【0012】また、上記スパッタ膜の形成においては、
基材の加熱温度を変えることによって容易にアモルファ
ス膜や結晶アパタイト膜を得ることができ、この加熱温
度を段階的または連続的に昇温させることによってアモ
ルファスアパタイト膜から結晶アパタイト膜に至る間を
結晶アパタイト膜に向かうに従って結晶比率が上昇する
混在アパタイト層とすることができる。これと逆に段階
的また連続的に降温させれば、結晶アパタイト膜からア
モルファスアパタイト膜に至る間をアモルファス膜に向
かうに従って結晶比率が減少する混在アパタイト層とす
ることができる。そして基材を50℃以下にすることに
より所望のアモルファスアパタイト膜が得られ、50越
〜250℃未満の間で加熱することにより混在アパタイ
ト層が得られ、250℃以上500℃以下とすることに
より結晶アパタイト膜が得られる。なお、結晶アパタイ
ト膜の形成において基材加熱温度を500℃以下にする
のが望ましいのは、500℃を越える温度で基材を加熱
してスパッタ膜を形成すると、それ以前に形成されてい
るアモルファスアパタイト膜や混在アパタイト層が熱影
響を受け、それらが結晶化したり結晶比率が上昇してし
まうためである。なお、上記アモルファス膜から混在ア
パタイト層を経て結晶アパタイト膜に至る皮膜は、1層
であってもよいが、第2の発明に従ってアモルファスア
パタイト膜と結晶アパタイト膜を交互に積層する際に、
それぞれのアモルファスアパタイト膜と結晶アパタイト
膜との間に上記混在アパタイト層を介在させることも可
能である。なお、所望により内層にc軸配向結晶を得る
場合や最表層にc軸配向結晶を形成する場合には、成膜
速度等の調整により結晶を配向させることができる。
【0013】また、基材表面にプラズマ溶射膜を形成す
る場合、その厚さは特に限定されないが、効率的に厚膜
を形成でき、また形成された膜が適度な強度を保つよう
に、50〜500μmの厚さとするのが望ましい。な
お、この溶射膜は均一に成膜できないのでむらになり、
薄い場合は基材の地肌が出ていることもあるが、上層の
薄膜によりこれらの部分を覆うことができるので、プラ
ズマ溶射膜単層に比べて膜厚の制約は受けにくい。上記
プラズマ溶射膜を形成する場合、通常は、その上層に上
述したアモルファスアパタイト膜を形成するが、これに
変えて中間薄膜を形成したものであってもよい。この中
間薄膜は、前述した、基材表面に形成する他材料膜と同
様の観点から選定された材料で形成することができ、前
記と同様に、ZrO、Al23やTi、Ti合金で膜を
構成することができる。
【0014】また、最表層にc軸配向結晶アパタイト膜
を形成した後、この結晶膜の結晶性を向上させるために
生体材料を熱処理することも可能であり、この際の加熱
温度は500〜600℃、加熱時間は5〜60分で行う
のが望ましい。これは、500℃未満であると、結晶性
の改善効果が十分に得られず、一方、600℃を越える
と、上述したように、アモルファス膜や混在アパタイト
層に悪影響を与えるためである。また、熱処理が5分未
満であると熱処理の効果が十分ではなく、一方、60分
を越えても熱処理の効果は飽和するため上記範囲内とす
る。なお、上記熱処理を行う際には、膜内の熱応力が大
きくなる傾向があるため、結晶アパタイト膜(最表層に
限らず)の厚さは、前記した膜厚の範囲内でさらに、1
μm以下とするのが望ましい。
【0015】すなわち、本発明によれば、基材側に基材
との接合性が優れ、また機械的強度にも優れた膜が得ら
れ、最表層には、生体との親和性に優れ、また体液への
溶出も少ないc軸配向結晶アパタイト膜が得られるの
で、耐久性に優れた良質の被膜を有する生体材料が得ら
れる。さらに、下層のアモルファス膜と最表層のc軸配
向結晶アパタイト膜との間で、アモルファス膜と結晶ア
パタイト膜を交互に積層すれば、性質の異なる材料の積
層により内部応力が緩和され、強度が増す作用がある。
また、結晶アパタイト膜が複数層積層されているので、
万一、最表層の結晶膜が損傷しても、次々と被膜の溶出
が起こることがなく、次の結晶膜によって溶出が阻止さ
れる効果もある。この効果をより大きくするためには内
層の結晶膜もc軸配向とする。また、アモルファス膜と
結晶アパタイト膜との間を結晶比率が連続的または段階
的に変わる混在アパタイト層で構成すれば、性質を徐々
に変えることができ、内部応力の緩和を一層効果的にす
る。
【0016】さらに、基材の表面にプラズマ溶射膜を形
成するものでは、溶射の利点を生かして、安価(装置コ
ストが低い、成膜時間短い等)な方法で被膜を形成する
ことができる。そして、プラズマ溶射膜における凹凸表
面には、その上層へのアモルファスアパタイト膜やこれ
に変わる中間層および最表層のc軸配向結晶が形成され
ているので、凹凸形状が緩和されるとともに最表層に緻
密層が形成されて、表面部が強化され損傷が防止され
る。なお、プラズマ溶射膜上に上記薄膜を形成する際
に、前記した薄膜の望ましい範囲内の厚さ(0.1〜5
μm)にすれば、表面に若干の凹凸形状が残り、生体と
の親和性が増す効果もある。これは、アパタイト上に再
成する骨や密着する皮膚などは癒着面に凹凸があり、表
面積が大きい方が強く接合されるのと、凹凸によるアン
カー効果が働き、さらに接合強度が上がるからである。
【0017】
【発明の実施形態】以下に本発明の実施形態を説明す
る。 (実施形態1)図1に示すように、適宜の材料からなる
基材1上に、スパッタにより0.1〜5μm厚のアモル
ファスアパタイト膜2とc軸配向結晶アパタイト膜3と
を積層する。なお、スパッタに際しては、アモルファス
アパタイト膜2を形成するときに基材1は50℃以下
(例えば室温)にし、c軸配向結晶アパタイト膜3を形
成するときには、基材1を250〜500℃に加熱す
る。上記により、基材1には、接合強度の大きいアモル
ファスアパタイト膜2が形成されるために接合性の良好
な被膜が形成され、さらに最表層には生体との親和性に
優れ、体液への溶出が少ないc軸配向結晶アパタイト膜
3が形成されるため、良質で耐久性に優れた被膜を有す
る生体材料が得られる。
【0018】(実施形態2)図2に示すように、基材1
上に、スパッタにより0.1〜5μm厚のアモルファス
アパタイト膜2a、2bとc軸配向結晶アパタイト膜3
a、3bとを交互に積層する。なお、スパッタに際して
の基材1の加熱温度は、実施形態1と同様に、アモルフ
ァスアパタイト膜2a、2bを形成するときは50℃以
下、c軸配向結晶アパタイト膜3a、3bを形成すると
きには、250〜500℃とする。上記により、実施形
態1と同様に接合強度が高く、良質で耐久性に優れたア
パタイト被膜を有する生体材料が得られる。またアモル
ファスアパタイト膜とc軸配向結晶アパタイト膜を交互
に積層することにより、内部応力が緩和され、機械的強
度が向上し、剥離が有効に防止される。また、最表層の
c軸配向結晶アパタイト膜3bが損傷を受けた場合、ア
モルファスアパタイト膜2bは溶出し易いものの、次層
のc軸配向結晶アパタイト膜3aによって溶出がくい止
められ、基材1にまで損傷が達してその結果、基材1が
露出するのを有効に防止できる。
【0019】(実施形態3)この実施形態では、図3に
示すように、50℃以下にした該基材1上に、スパッタ
により0.1〜5μm厚のアモルファスアパタイト膜2
を形成し、その後、基材1の加熱温度を50越〜250
℃未満の範囲で段階的に昇温させて(例えば150℃、
200℃)、アモルファスとc軸配向結晶とが混在した
混在アパタイト層213、223を順次形成する。この
混在アパタイト層213と混在アパタイト層223との
比較では、混在アパタイト層223の結晶比率は混在ア
パタイト層213よりも大きい。さらに、混在アパタイ
ト層223の上層であって最表層には、基材1を250
〜500℃に加熱してスパッタすることによりc軸配向
結晶アパタイト膜3を形成する。この実施形態では、実
施形態2に示したように、接合強度が高く、良質で耐久
性に優れ、しかも内部応力も緩和されて強度が増した被
膜が得られる。さらに、この実施形態では、アモルファ
ス膜からc軸配向結晶アパタイト膜に至る間が混在アパ
タイト層によって段階的に特性が変わるので、応力緩和
による強度向上がより顕著になる。
【0020】(実施形態4)この実施形態では、図4に
示すように、50℃以下にした基材1上に、スパッタに
より0.1〜5μm厚のアモルファスアパタイト膜2を
形成し、その後、基材1の加熱温度を50越〜250℃
未満の範囲で連続的に徐々に昇温させてアモルファスと
c軸配向結晶が混在した混在アパタイト層23形成す
る。この混在アパタイト層23は、c軸配向結晶アパタ
イト膜3に向かうに従い結晶比率が増大している。さら
に、混在アパタイト層23の上層であって、最表層には
基材1を250〜500℃に加熱してc軸配向結晶アパ
タイト膜3を形成する。この実施形態では実施形態3に
示した効果が得られるとともに、アモルファス膜からc
軸配向結晶アパタイト膜に至る間が混在アパタイト層に
よって徐々に特性が変わるので、応力緩和による強度向
上が一層顕著になる。
【0021】(実施形態5)この実施形態では、図5に
示すように基材1上にセラミックス薄膜(Al23
4、セラミックス薄膜(ZrO)5を形成し、その上層
に実施形態1と同様にしてアモルファスアパタイト膜
2、c軸配向結晶アパタイト膜3を順次形成したもので
あり、アモルファスアパタイト膜2を基材1上に間接的
に形成したものに相当する。この実施形態では、実施形
態1と同様に良質で耐久性の高い被膜を有する生体材料
が得られる。しかも、基材1の接合強度は、上記セラミ
ックス薄膜4、5の形成により十分なものとなってい
る。なお、この実施形態では、基材1上に2層のセラミ
ックス薄膜を形成したが、その層数は特に限定されるも
のではなく、1層でも3層以上でもよい。また、セラミ
ックス薄膜でなく、金属薄膜でもよく、またこれらを積
層したものであってもよい。
【0022】(実施形態6)この実施形態は、図6に示
すように、基材1上にプラズマ溶射膜60を形成し、こ
の溶射膜60の上層に基材1を50℃以下にして0.1
〜5μm厚のアモルファスアパタイト膜62をスパッタ
により形成し、さらに基材1を250℃〜500℃に加
熱して上記アパタイト膜62上に0.1〜5μm厚のc
軸配向結晶アパタイト膜63を形成したものである。こ
の実施形態では、プラズマ溶射膜の性質を利用して、効
率的に厚膜のアパタイト被膜を形成することができ、さ
らには、上記各実施形態と同様に良質で耐久性に優れた
生体材料が得られる。なお、この実施形態では、プラズ
マ溶射膜60上にアモルファスアパタイト膜62および
c軸配向結晶アパタイト膜63が形成されているため、
プラズマ溶射膜60の凹凸形状は緩和されるものの若干
の凹凸形状は残っている。この凹凸形状は、生体との親
和性を増す効果がある。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の生体材料
によれば、生体材料用基材の表面に直接または間接的に
アモルファスアパタイト膜を形成するとともに、その最
表層にc軸配向結晶アパタイト膜を形成するので、被膜
の内部応力が緩和されて剥離や損壊が防止されるととも
に、その表面では生体に対する親和性が高く、また体液
に容易に溶出しない皮膜が得られる。
【0024】また、下層のアモルファスアパタイト膜か
ら上層の結晶アパタイト膜に至る間を、結晶アパタイト
膜とアモルファス膜とを交互に積層したもので構成すれ
ば、上記内部応力がより緩和され、また、アモルファス
アパタイト膜と結晶アパタイト膜との間を、アパタイト
のアモルファスと結晶とが混在した層であってその結晶
比率が結晶アパタイト膜に向かうに従って段階的または
連続的に増加する混在アパタイト層で構成すれば、内部
応力は一層緩和される。
【0025】さらに、生体材料用基材の表面にプラズマ
溶射によるアパタイト膜を形成し、該アパタイト膜の表
層にアモルファスアパタイト膜またはこれに変わる中間
層を形成し、最表層にc軸配向結晶アパタイト膜を形成
すれば、上記効果が得られるとともに、被膜を効率的か
つ安価に製造でき、厚膜化も容易である。
【0026】なお、上記各生体材料を製造する際に、ア
モルファスアパタイト膜成膜時の基材加熱温度を50℃
以下、結晶アパタイト膜成膜時の基材加熱温度を250
℃以上、500℃以下にしてスパッタすれば、基材上に
上記アモルファスアパタイト膜と結晶アパタイト膜を容
易に形成することができる。
【0027】さらに、アモルファスと結晶との混在アパ
タイト層を成膜する際に基材加熱温度を50℃越〜25
0℃未満の温度範囲にするとともに、成膜中途の表層の
結晶比率の増加に伴って上記基材加熱温度を上昇させて
スパッタすれば、所望の結晶比率分布を有する混在アパ
タイト層を容易に形成することができる。
【0028】また、最表層のc軸配向結晶アパタイト膜
の成膜後、500〜600℃で5〜60分加熱する熱処
理を行えば、アモルファス膜、混在アパタイト層に悪影
響を与えることなくc軸配向結晶アパタイト膜の性質を
向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の概略断面図である。
【図2】 同じく他の実施形態の概略断面図である。
【図3】 同じく他の実施形態の概略断面図である。
【図4】 同じく他の実施形態の概略断面図である。
【図5】 同じく他の実施形態の概略断面図である。
【図6】 同じく他の実施形態の概略断面図である。
【符号の説明】
1 基材 2 アモルファスアパタイト膜 2a アモルファスアパタイト膜 2b アモルファスアパタイト膜 213 混在アパタイト層 223 混在アパタイト層 23 混在アパタイト層 3 c軸配向結晶アパタイト膜 3a c軸配向結晶アパタイト膜 3b c軸配向結晶アパタイト膜 4 セラミックス薄膜(Al23) 5 セラミックス薄膜(ZrO) 60 プラズマ溶射膜 62 アモルファスアパタイト膜 63 c軸配向結晶アパタイト膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂川 竜昭 北海道室蘭市茶津町4番地 株式会社日本 製鋼所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生体材料用基材の表面に直接または間接
    的にアモルファスアパタイト膜が形成されているととも
    に、その最表層にc軸配向結晶アパタイト膜が形成され
    ていることを特徴とする生体材料
  2. 【請求項2】 下層のアモルファスアパタイト膜から上
    層のc軸配向結晶アパタイト膜に至る間が、結晶アパタ
    イト膜とアモルファス膜とを交互に積層したものである
    ことを特徴とする請求項1に記載の生体材料
  3. 【請求項3】 アモルファスアパタイト膜と結晶アパタ
    イト膜との間が、アパタイトのアモルファスと結晶とが
    混在した層であってその結晶比率が結晶アパタイト膜に
    向かうに従って段階的または連続的に増加していること
    を特徴とする請求項1または2に記載の生体材料
  4. 【請求項4】 生体材料用基材の表面にプラズマ溶射に
    よるアパタイト膜が形成されており、その表層にアモル
    ファスアパタイト膜が形成されていることを特徴とする
    請求項1〜3に記載の生体材料
  5. 【請求項5】 プラズマ溶射アパタイト膜の表層に形成
    されるアモルファスアパタイト膜に変えて中間薄膜が形
    成されていることを特徴とする請求項4に記載の生体材
  6. 【請求項6】 請求項1〜5に記載の生体材料を製造す
    る際にアパタイト膜をスパッタにより成膜する方法であ
    って、アモルファスアパタイト膜成膜時の基材加熱温度
    を50℃以下、結晶アパタイト膜成膜時の基材加熱温度
    を250℃以上、500℃以下としたことを特徴とする
    生体材料の製造方法
  7. 【請求項7】 アモルファスと結晶との混在アパタイト
    層を成膜する際の基材加熱温度を50℃越〜250℃未
    満の温度範囲にするとともに、成膜中途の表層の結晶比
    率の増加に伴って上記基材加熱温度を上昇させることを
    特徴とする請求項6記載の生体材料の製造方法
  8. 【請求項8】 最表層のc軸配向結晶アパタイト膜の成
    膜後、500〜600℃で5〜60分加熱する熱処理を
    行うことを特徴とする請求項6または7に記載の生体材
    料の製造方法
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