JPH10298586A - ステンレス鋼板の圧延方法と圧延油の供給装置 - Google Patents

ステンレス鋼板の圧延方法と圧延油の供給装置

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JPH10298586A
JPH10298586A JP10476097A JP10476097A JPH10298586A JP H10298586 A JPH10298586 A JP H10298586A JP 10476097 A JP10476097 A JP 10476097A JP 10476097 A JP10476097 A JP 10476097A JP H10298586 A JPH10298586 A JP H10298586A
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JP
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emulsion
rolling
oil
concentration
stainless steel
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JP10476097A
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English (en)
Inventor
Hideo Yamamoto
秀男 山本
Satoru Matsushita
哲 松下
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 同一のエマルション圧延油でフェライト系、
オーステナイト系ステンレス鋼板の冷間圧延を可能にす
る技術の開発。 【解決手段】 上下層に電極を備えたエマルションタン
ク内で高濃度・大粒径エマルションと、低濃度・細粒径
エマルションに分離し、それぞれを回収してオーステナ
イト系、フェライト系ステンレス鋼板の冷間圧延油とし
て使用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エマルション油を
使用するステンレス鋼板の冷間圧延方法およびそのため
の圧延油の供給装置に関し、特に、高光沢で、かつ高能
率に圧延することを可能にするステンレス鋼板の冷間圧
延方法およびその圧延油の供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ステンレス鋼板の圧延は、圧延
された製品の表面光沢が高いことが要求される。しか
し、ステンレス鋼板はその変形抵抗が高く、加工硬化し
易いことから、そのような鋼板の圧延には圧延油の導入
量が少なく、高い圧延圧力が得られる小径ワークロール
のセンジミアミルが使用されていた。そして、それに使
用する圧延油は、低粘度の鉱油を基油とした不水溶性圧
延油 (以下、ニート油) 、あるいはこれをエマルション
化した圧延油が使用されていた。しかし、センジミアミ
ルは圧延ロールが20段と、圧延機の構造が複雑でかつロ
ール径が50〜80mmと小径であるため圧延速度が制約さ
れ、生産性が低いという問題があった。
【0003】そこで近年、生産性を向上させるため、ロ
ール径が大きいタンデムミルでの高光沢圧延が試みら
れ、特開平2−110195号公報、特開平5−305326号公報
に示すような低粘度圧延油を使用した圧延、特開平4−
118101号公報、特開平5−78690 号公報に示すような高
粘度油の細粒径エマルション油を用いた圧延がそれぞれ
行われてきた。しかし、確かに圧延能率の向上が図られ
るようになったが、センジミアミルでニート油を用いて
圧延した際と同様の高光沢度を得ることは依然としてで
きなかった。
【0004】さらに最近では、構造が簡便でかつ形状制
御機能の良い、圧延ロールが12段のクラスターミル (ロ
ール径:80〜120mm)、同じく6段のUCミルが開発さ
れ、600 mpm 以上の高速圧延が試みられている。そのよ
うな高速圧延に用いる圧延油として鉱油系のヒート油を
使用した場合には、冷却能力不足および潤滑性不足から
焼付き疵の発生、さらには破断事故時に圧延油に着火す
る等の問題があった。また高潤滑性とした場合において
は圧延ロールと圧延材との間 (ロールバイト) に導入さ
れる油量が増し、光沢性の低下が問題となる。
【0005】一方、エマルション油の場合は、着火事故
の恐れは解決するが、冷却能力が増すため、ニート油よ
りロールバイトでの圧延油粘度が高くなり、油膜が厚く
なって十分な光沢性が得られないばかりか、エマルショ
ン油の鋼板やロールへの付着の不均一、および摩耗粉が
エマルション中に取り込まれて生じる粘凋なスカムの部
分的付着による油模様が発生する等の問題があった。ま
た、エマルション油で圧延した鋼板はニート油圧延に比
べ、表面に付着した摩耗分の量が多く、圧延油に混じり
合って粘度を高め、油膜厚の増大につながっていた。
【0006】さらに、フェライト系ステンレス鋼板の圧
延時には、この摩耗粉の混入による粘度増大が光沢性低
下となり問題であった。また、オーステナイト系ステン
レス鋼板は冷間圧延による加工硬化が大きいため、少な
い圧延パスで圧延を仕上げるには、できるだけ1パス目
を高圧下率で圧延する必要がある。しかし、エマルショ
ン油はニート油に比べ酸洗後の鋼板への付着が少なく、
そのため同じ圧下率で圧延してもロール荷重が高くな
り、十分な圧下率をとることができない。特に、光沢性
を高めるために低粘度あるいは細粒径としたエマルショ
ン油では特に高圧下率の確保が必要であった。
【0007】なお、1種類のエマルション油の濃度、粒
径を変えて異なる潤滑性の要求に対応する方法として
は、特公昭58−29168 号、特開昭56−89316 号公報、特
開昭57−206514号公報等があり、例えば特公昭58−2916
8 号公報には回収エマルション圧延油からの低濃度エマ
ルション圧延油は圧延機下流に、再生したまたは新油か
らの高濃度エマルション圧延油は圧延機上流に供給する
ことが、また特開昭57−206514号公報には圧延油を冷却
水、スラッジの混合液として圧延機から回収して、油水
分離器で通電しながら潤滑油と冷却水とに分離すること
が開示されているが、これは文字通り、油水の分離を促
進するためのものである。しかしながら、いずれも圧延
摩耗粉の混入が多く、光沢むらや微小な焼付き疵の発生
が多く、高光沢で美麗な表面が要求されるステンレス鋼
板の圧延には不適当であった。
【0008】以上のように、高光沢性が必要なフェライ
ト系ステンレス鋼板を高速で圧延することはできないの
が現状であった。また、潤滑性が必要なオーステナイト
系ステンレス鋼板と同一のエマルション圧延油を用いて
高能率で圧延することもできないのが現状であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、前記
の問題点を解決する圧延方法、すなわち、エマルション
圧延油を使用する冷間圧延において、フェライト系、オ
ーステナイト系のいずれのステンレス鋼板をも同一のエ
マルション圧延油を用いて、高速圧延を行い高光沢度の
鋼板を得ることができる冷間圧延方法とそれに使用する
圧延油の供給装置とを提供することにある。
【0010】より具体的には、本発明の課題は、フェラ
イト系、オーステナイト系のいずれのステンレス鋼板に
ついても400mpm以上の高速圧延速度で圧延しても、高光
沢度が確保でき、焼付けの生じないステンレス鋼板の冷
間圧延方法とそれに使用する圧延油の供給装置とを提供
することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ノニオン
系の乳化剤に比べイオン系の乳化剤を使用したエマルシ
ョンは油粒子の表面に電荷を帯びているため粒子同士が
反発し合一し難い性質に着目して、エマルションタンク
内の上層にエマルション粒子の電荷と逆の電荷を持たせ
た電極を置き、下層に同じ電荷を持たせた電極を置いた
ところ、次のような知見を得た。
【0012】エマルション粒子の電気的反発力と大粒
径の油粒子との比重差により、エマルションタンク内で
高濃度エマルションと低濃度エマルションとに分離し、
この現象を利用することでエマルションタンクの上層と
下層でエマルションの濃度を容易に変え得ること、 上層に浮上した高濃度エマルションは簡単な攪拌で再
び均一なエマルションとなること、 このように浮上分離した濃度の異なるエマルションを
別々にポンプ等で混合器に搬送し、お互いにエマルショ
ンの流量を変えることにより、自由に濃度および粒径分
布を変更できること、そして このようにして分離されたエマルションは、上層に浮
上した高濃度エマルションにおいては摩耗粉の混入も少
なく、極めて潤滑性に優れ、下層の低濃度で細粒径のエ
マルションは圧延に使用した際の付着油量が極めて少な
く、光沢圧延に適すること。
【0013】かかる知見に基づき、本発明者らは、高光
沢性が要求されるフェライト系ステンレス鋼板を圧延す
る際には低濃度のエマルション圧延油を用いて冷間圧延
し、高潤滑性が必要なオーステナイト系ステンレス鋼板
を圧延する際には高濃度のエマルション圧延油を用いて
冷間圧延すればよく、また、イオン系乳化剤を使用する
に当たり、その種類とエマルション液のpH値によりエマ
ルションの浮上分離の様子が異なることを見出し、本発
明を完成した。
【0014】さらに、本発明者らは次の知見も得た。 (1) カチオン系乳化剤を使用する場合はエマルション液
のpHを4.0 〜6.5 の弱酸性とした際に、高濃度・大粒径
エマルションの浮上分離が著しくなり、かつ圧延摩耗粉
の混入も少ない。
【0015】(2) アニオン系乳化剤を使用する場合はエ
マルション液のpHを7.5 〜9.5 の弱アルカリ性とした際
に、高濃度・大粒径エマルションの浮上分離が著しくな
り、かつ圧延摩耗粉の混入も少ない。
【0016】以上の知見、基礎的事実を総合して、次の
ような本発明を完成するに至った。 (1) イオン系乳化剤を用いたエマルション油を使用して
ステンレス鋼板を冷間圧延するに際し、カチオン系乳化
剤を使用する場合はエマルション油のpHを4.0 〜6.5 の
弱酸性として、アニオン系乳化剤を使用する場合はエマ
ルションのpHを7.5 〜9.5 の弱アルカリ性として使用
し、エマルションタンク内において電解条件下で高濃度
・大粒径エマルションと低濃度・細粒径エマルションと
に分離させて回収した各エマルションを選択・混合して
圧延油として使用するステンレス鋼板の冷間圧延方法。
【0017】(2) ステンレス鋼板をイオン系乳化剤を用
いたエマルション圧延油を使用して冷間圧延するに際し
て使用する圧延油の供給装置であって、エマルション圧
延油を収容するエマルションタンクと、該エマルション
タンク内の上層に設けた電極と、下層に設けた電極と、
エマルション粒子の電気的反発力と比重差により該エマ
ルションタンク内で高濃度・大粒径と低濃度・細粒径に
分離したエマルションを別々に回収する手段と、それぞ
れ回収されたエマルションを選択・混合する混合器と、
該混合器からの選択・混合されたエマルション圧延油を
圧延機に供給する手段とを備えたステンレス鋼板用エマ
ルション圧延油の供給装置。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は、エマルションタンク10の
上層と下層にそれぞれ設けた電極12、14の電荷によりエ
マルション油粒子が電気的反発力と、大粒径の油粒子の
水との比重差とによりエマルションタンク10内で高濃度
・大粒径エマルションと低濃度・細粒径エマルションと
に分離する様子を示す概念図である。エマルションタン
ク10内のエマルションは圧延機から回収された冷却水お
よびスラッジを同伴するエマルション圧延油であっても
よく、新しく調製されたものであってもよい。実用上か
らは回収されたエマルション圧延油に対して新たに調製
されたエマルション油を補充したものである。なお、こ
こに言う「高、低濃度」、「大、細粒径」とはそれぞれ
上、下層における相対的程度を意味するのである。
【0019】本発明においてエマルションタンク内の
上、下層における電極に印加する電流は、高、低濃度エ
マルションに槽内で分離できれば特に制限はなく、目的
とする高、低濃度エマルションへの分離の程度に応じて
適宜決定すればよいが、一般的には、通常の圧延条件の
場合、例えば1〜50ボルトの電圧で 0.2〜20A/dm2 の直
流電流を印加すれば十分である。また電極の素材、形状
についても特に制限はなく、目的とする高、低濃度エマ
ルションへの分離が実現できればよい。図2は、イオン
系乳化剤の種類によるエマルション液のpHと圧延摩耗粉
とエマルション粒子の電気的反発性の関係を示すグラフ
である。
【0020】ここに、本発明によれば、圧延油原液と水
からなる水中油型エマルション圧延油を使用するステン
レス鋼板の冷間圧延において、高光沢で、かつ高能率に
圧延することを可能にするステンレス鋼板の圧延方法と
それに対する圧延油の供給装置が提供される。本発明に
よれば、特に400mpm以上の高速度で高能率に冷間圧延す
ることができる。なお、本明細書において圧延速度は各
パスの平均圧延速度をいう。
【0021】本発明にあっては、水中油型エマルション
圧延油における乳化剤としてはイオン系乳化剤を使用す
る。光沢性が要求されるフェライト系ステンレス鋼板の
冷間圧延にあっては、400mpm以上の高速度で冷間圧延す
る際には油膜厚さの低減が必要であり、そのため本発明
によれば、図1に示すように、エマルションタンク10内
の上層にエマルション粒子の電荷と逆の電荷を持たせた
電極12を置き、下層に同じ電荷を持たせた電極14を置い
てエマルション粒子の電気的反発力と比重差によりエマ
ルションタンク内で高濃度と低濃度に浮上分離させ、下
層の低濃度で、かつ細粒径のエマルションを供給するの
である。これによれば、光沢が向上する。
【0022】一方、高潤滑が必要なオーステナイト系ス
テンレス鋼板の圧延の場合は、図1において、浮上分離
した上層の高濃度で、かつ大粒径のエマルションを圧延
油として選択して圧延機に供給すると圧延荷重が低減
し、圧下率の増大を図ることができる。
【0023】さらに、このエマルションの油粒子を浮上
分離させる際に、エマルションとする際に使用した乳化
剤がカチオン系の場合は、図2からも分かるように、エ
マルション油のpHを4.0 〜6.5 の弱酸性とし、アニオン
系の場合はエマルションのpHを7.5 〜9.5 の弱アルカリ
性として使用し、圧延摩耗粉とエマルション粒子の電気
的反発力を高めることにより、摩耗粉の混入率の少ない
エマルションが得られ、光沢性、潤滑性ともさらに向上
する。
【0024】本発明において用いる圧延油についてさら
に詳しく説明する。イオン系乳化剤には、水に溶けた際
に親水基のついている部分がアニオン (−イオン) とな
る、具体的にはカルボン酸塩、スルホン酸塩、燐酸エス
テル塩等のアニオン系と、水に溶けた際に親水基のつい
ている部分がカチオン (+イオン)となる、具体的には
第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩等の
カチオン系がある。本発明に示す『イオン系乳化剤を用
いたエマルション油』とは乳化剤全てがイオン系でなく
てもよく、イオン系乳化剤が圧延油原液中に2wt%以上
含まれていればノニオン系乳化剤と併用していてもよ
い。
【0025】なお、ノニオン系とは水に溶けた際にイオ
ンとならないもので、高級アルコールやアルキルフェノ
ールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸や脂肪酸の多
価アルコールエステルのエチレンオキサイド付加物、ソ
ルビトールやソルビタンの脂肪酸エステルなどである。
【0026】イオン系乳化剤が圧延油原液中に2wt%以
上含まれていればエマルションとした場合に図3に示す
ような電荷をもった油粒子 (エマルション) が形成され
る。アニオン系の場合は負の電荷、カチオン系の場合は
正の電荷となり、油粒子同士がお互いに反発して合一さ
れにくい。したがって油粒子としては安定である。しか
し、油と水との比重差から、エマルションを静置してお
くと徐々に浮上分離する。
【0027】この際、エマルションタンク内の上層に油
粒子の電荷と逆の電荷をもたせた電極を置き、下層に同
じ電荷を持たせた電極を置くと油粒子との電気的反発力
と比重差との相乗効果により、より短時間に高濃度と低
濃度に浮上分離させることができる。分離した下層は低
濃度で、かつ細粒径のエマルションであり、これをフェ
ライト系ステンレス鋼板の圧延に使用すると、400mpm以
上の高速圧延においても圧延後の表面光沢が低下せず高
い値を保つことができる。一方、浮上分離した上層の高
濃度で、かつ大粒径のエマルションは高潤滑が必要なオ
ーステナイト系ステンレス鋼板の圧延の場合に使用する
と圧延荷重が低減し、圧下率の増大が図れ、圧延能率を
高めることができる。
【0028】また、同一鋼種内でも加減速時の低速圧延
部と定常時の高速圧延部で、あるいは圧下率の高いパス
と低いパスで、エマルションタンクの上層と下層から回
収するエマルション油の比率を変えることで濃度および
粒径が変わり、潤滑状態が変化し、焼付きの発生や、表
面光沢の低下を防止できる。例えば、本発明によれば、
フェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレ
ス鋼の圧延で濃度、粒径を変えるのであるが、さらに圧
下率の高いパスと低いパスなど、パス間で混合比率を変
えて濃度、粒径を変える、あるいは同一パスで圧延速度
により、濃度、粒径を変えることで最適な潤滑状態が常
に維持できるようになる。その他、圧延パスにより最高
圧延速度が変わるため、その速度に応じて高濃度油と低
濃度油の比率を変えて潤滑状態を一定に維持することも
できる。
【0029】本発明は、このように1種類の組成の圧延
油エマルションを濃度・粒径別に分離して使用可能とし
たことに意義がある。なお、イオン系乳化剤が圧延油原
液中に2wt%未満の場合および使用されていない場合は
油粒子に電荷がない、あるいは極く弱いため、相乗作用
がない。また油粒子に圧延摩耗粉が混入し、スカム等の
粘凋な原液油分となり浮上し、再乳化に時間がかかるた
め、このような圧延方法はできない。また、無理に行う
と高濃度のエマルションを使用した際に濃度のバラツキ
が大きく、スリップや焼付きを生じ圧延が安定しない。
エマルション圧延油としては、その他、濡れ性改善剤、
極圧添加剤、防錆剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜含
有してもよい。
【0030】次に、エマルション液のpHを限定した理由
について詳しく説明する。圧延時に発生した摩耗粉は圧
延材から洗い落とされ、エマルションタンクに入り込
む。かかる摩耗粉は初期には水中に分散している。この
摩耗粉も弱い電荷 (ゼータ電位) を帯びている。この電
位はエマルション液のpHが約6.5 を境に符号が変わり図
2に示す値となる。すなわち、弱アルカリでは負とな
り、弱酸性では正となる。電位の符号が油粒子と同じで
あれば反発して摩耗粉が油粒子に混じり込むことはな
い。したがって、エマルションの油粒子を浮上分離させ
るときに、エマルションとする際に使用した乳化剤がカ
チオン系の場合はエマルション油のpHを4.0 〜6.5 の弱
酸性とし、アニオン系の場合はエマルションのpHを7.5
〜9.5 の弱アルカリ性として使用することにより、圧延
摩耗粉とエマルション粒子の電気的反発力を高めること
により、摩耗粉の混入率の少ないエマルションが得ら
れ、光沢性、潤滑性ともさらに向上するのである。
【0031】なお、pHは上記範囲以上に上げたり下げて
も効果は同じであり、人体への影響、設備の腐食等の問
題から上記範囲に限定する。また、pHの調整は4.0 〜6.
5 の弱酸性とする際には、エマルション原液中あるいは
エマルション液中にカルボン酸、燐酸エステル等を添加
して調整する。また、pHを7.5 〜9.5 の弱アルカリ性と
する際には、アルキルアミンを同様にエマルション原液
中あるいはエマルション液中に添加する。
【0032】次に、本発明にかかるエマルション圧延油
の供給装置について説明する。図3は、本例において使
用する本発明にかかる圧延油供給装置の模式的説明図で
あり、圧延機からの戻りエマルション圧延油をエマルシ
ョンタンク20に収容するが、このタンクはA、Bの2槽
22、24に分かれており、B槽24の上層には電極26が、A
槽22とB槽24との下層には電極28がそれぞれ設けられて
いる。C槽30はB槽からの高濃度エマルションの回収手
段を構成し、具体的には高濃度エマルションのオーバー
フローを収容する槽である。低濃度エマルションの回収
手段はA、B槽の下層からの液を抜き出す配管系および
ポンプ等を含むものである。電極への通電によりエマル
ション粒子の電気的反発力と比重差により該エマルショ
ンタンク内で高濃度・大粒径と低濃度・細粒径に分離し
たエマルションを別々に回収する。図示例では高濃度・
大粒径エマルションはB槽からのオーバーフローによっ
てC槽に回収される。このように高、低濃度エマルショ
ンというように別々に回収されたエマルション圧延油
は、次いでそれぞれ混合器32に送られ、該混合器32から
の選択・混合されたエマルション圧延油を圧延機に供給
する。高濃度・大粒径エマルションだけを選択して使用
する場合、低濃度・細粒径エマルションだけを選択して
使用する場合、そしてそれらを適宜割合で混合して使用
する場合を含めて「選択・混合」されるという。圧延機
への供給手段はスプレーなど慣用手段であってもよく、
特に制限されない。
【0033】図4は、本発明にかかるエマルション圧延
油の供給装置の別の態様の模式的説明図であり、図中、
エマルションタンク内電極は省略して示す。図3と同様
の要素は同一符号で示す。
【0034】図4の態様では、高濃度エマルションの回
収手段として槽D40がさらに加わり、低濃度エマルショ
ンの回収手段としてはC槽からのバイパス路がさらに加
わる。高濃度エマルションのオーバフローはC槽30にお
いても行われ、高濃度エマルションのD槽40に回収され
る。最初のオーバーフローの収容槽であるC槽の下層の
エマルションはバイパスを経て低濃度エマルションに混
合される。低、高濃度エマルションはいずれも混合器32
に送られる前に、ミキサー42、42によりエマルション粒
子が均一化され、濃度計44、44においてエマルション濃
度が調整されてから所定量ずつ混合器32で選択・混合さ
れる。さらに、必要により、圧延機に供給される前に適
宜粒径調整手段によって粒径を調整してもよい。
【0035】
【実施例】次に、実施例により、本発明の作用効果をさ
らに詳しく説明する。 (実施例1)本例は、エマルション圧延油の浮上分離を説
明するものである。ここに、本例では、図3に示すA:
120 l、B:200 l、C:80 lの3槽に区切られた構造
のエマルションタンクに表1に示す組成・性状の圧延油
の濃度5vol%のエマルションを作成した。B槽にはタン
ク中央部の上層と中央部の下層には電極を配し、B槽と
C槽の下層には圧延機に供給するサクション配管が接続
され、そこから吐出量が最大70l/min で圧力が最大7
kgf/cm2 のポンプで循環供給される。B槽とC槽からの
配管は混合器に接続される。混合器から上流にサンプル
の採取口がある。
【0036】B槽に設置した電極に直流電源を接続し、
アニオン系乳化剤を使用したエマルションの場合は上層
側の電極をプラス (正) とし、カチオン系乳化剤および
ノニオン系乳化剤を使用したエマルションの場合は上層
側の電極をマイナス (負) とし、電圧3V、電流密度10
mA/cm2の電流を流した。
【0037】ここでの実験はB槽の電極に電流を流し、
B槽からは高濃度エマルションをC槽にオーバーフロー
させた。A、B槽とC槽下部からの圧延機への供給を各
々30l/minとし、30min 間循環させた後、各採取口から
エマルションを採取してエマルション濃度および粒径、
摩耗粉濃度を測定し、エマルション圧延油の浮上分離程
度を評価した。
【0038】なお、摩耗粉は別の圧延実験で発生させた
ものを回収して使用し、計算値で200 ppm となるように
添加した。また、pHの調整はオレイン酸およびジオクチ
ルアミンで行った。
【0039】
【表1】
【0040】エマルションの浮上分離試験の結果を表
2、3に示す。本発明例の場合はいずれも上層のエマル
ション粒径は5μm 以上の大粒径が得られ、下層は4μ
m 未満と小さい。また、上下層の濃度差は2%以上あっ
た。それに対し、本発明の範囲から外れる条件では濃度
差は1%未満、粒径差は1μm 未満であった。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】(実施例2)本例では、実施例1における浮
上分離した圧延油を使ってステンレス鋼板の圧延実験を
行った。
【0044】実施例1で得られた表2および表3に示す
上層および下層のエマルションを直径が100 mm、表面粗
さがRa0.13μm の材料SKD11 のワークロールとバックア
ップロールの直径が350 mmの4Hi圧延機に供給して、厚
さ:3.2 mm、幅:100 mm、長さ:500 mのSUS430および
SUS304ステンレス鋼板の熱延後焼鈍酸洗材を、表4およ
び表5に示す圧延条件で圧延を実施した。なお、SUS430
材の圧延時には下層のエマルション油のみを使用し、SU
S304材の圧延時には上層のエマルション油のみを選択し
て使用した。
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】圧延後の鋼板表面は、表面の鏡面光沢度
(JIS に規定するGs60°で測定) 、目視判定による光沢
むら、焼付およびチャタマークの発生程度を評価、表6
〜表9に示した。また、SUS304圧延時の圧延荷重につい
ては、各圧延パスの合計圧延荷重を圧延パス数で割った
平均圧延荷重を比較例5と比較した。なお、光沢むら、
焼付き、チャタマークの発生程度は表中に次の記号で表
示した。
【0048】(光沢むら) ○:確認できない、□:僅かであり品質上問題ない、
△:顕著で品質不適 (焼付発生の程度) ○:発生なし、□:軽微な発生 (許容範囲内) 、△:著
しい発生 (不良) (チャタマーク) ○:発生なし、□:軽微な発生 (許容範囲内) 、△:著
しい発生 (不良) (圧延荷重) ○:比較例より15%以上低減、□:比較例より10%以上
低減、 △:比較例と同等か5%未満の減少。
【0049】本発明の実施例では、光沢性が要求される
フェライト系ステンレス鋼板(SUS430)の圧延において、
いずれも光沢度 (Gs60°) が400 以上の光沢度が得ら
れ、かつ高速圧延を行っても焼付や光沢むらの発生がな
いか軽微である。また、高潤滑性が要求されるオーステ
ナイト系ステンレス鋼板(SUS304)の圧延において、圧延
荷重が低く、かつ焼付き疵やチャタリングの発生がな
い。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
【表9】
【0054】
【発明の効果】エマルション圧延油の油粒子の電気的反
発力と比重差により高濃度・大粒径と低濃度・細粒径に
浮上分離し、別々に混合器に供給してエマルション濃度
および粒径を圧延条件により変更する本発明方法によ
り、高光沢性が必要なフェライト系ステンレス鋼板を高
速で圧延することが可能となり、かつ、潤滑性が必要な
オーステナイト系ステンレス鋼板をも同一のエマルショ
ン圧延油を用いて高能率で圧延することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エマルション油粒子がエマルションタンク内で
高濃度と低濃度のエマルションに分離する様子の概念説
明図である。
【図2】イオン系乳化剤の種類によるエマルション液の
pHと圧延摩耗粉とエマルション粒子の電位とを示すグラ
フである。
【図3】本発明の実施例を説明する模式的説明図であ
る。
【図4】本発明の別の実施例の説明図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C10N 20:06 30:00 40:24 70:00

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオン系乳化剤を用いたエマルション油
    を使用してステンレス鋼板を冷間圧延するに際し、カチ
    オン系乳化剤を使用する場合はエマルション油のpHを4.
    0 〜6.5 の弱酸性として、アニオン系乳化剤を使用する
    場合はエマルションのpHを7.5 〜9.5 の弱アルカリ性と
    して使用し、エマルションタンク内において電解条件下
    で高濃度・大粒径エマルションと低濃度・細粒径エマル
    ションとに分離させて回収した各エマルションを選択・
    混合して圧延油として使用するステンレス鋼板の冷間圧
    延方法。
  2. 【請求項2】 ステンレス鋼板をイオン系乳化剤を用い
    たエマルション圧延油を使用して冷間圧延するに際して
    使用する圧延油の供給装置であって、エマルション圧延
    油を収容するエマルションタンクと、該エマルションタ
    ンク内の上層に設けた電極と、下層に設けた電極と、エ
    マルション粒子の電気的反発力と比重差により該エマル
    ションタンク内で高濃度・大粒径と低濃度・細粒径に分
    離したエマルションを別々に回収する手段と、それぞれ
    回収されたエマルションを選択・混合する混合器と、該
    混合器からの選択・混合されたエマルション圧延油を圧
    延機に供給する手段とを備えたステンレス鋼板用エマル
    ション圧延油の供給装置。
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