JPH10291283A - ゴム製品被覆用シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】軟質合成樹脂層が変色することのない耐久性の
良い軟質合成樹脂製のゴム製品被覆用カバーを提供す
る。 【解決手段】織布１の表面に軟質合成樹脂層２を設けた
ゴム製品被覆用カバーであって、その織布の裏面にポリ
オレフィン層３及びポリアミド層４を順次形成させたゴ
ム製品被覆用シートである。織布１の裏面、ポリアミド
−ポリオレフィン複合フィルムのポリオレフィン層を融
着させて作るのが好ましい。ポリアミド層４がゴム老化
防止剤移行阻止の作用をなす。軟質合成樹脂層はポリ塩
化ビニル層などである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のスペアタ
イヤのカバーなど各種のゴム製品の被覆に用いるシート
に関する。

【０００２】

【従来技術及び発明が解決しようとする課題】織布の片
面にポリ塩化ビニル層などの軟質合成樹脂層を設けたシ
ート（以下、軟質合成樹脂レザーともいう）は自動車内
装材、袋物、ソファー表材など各方面で多用されてい
る。その用途の一つとして、自動車のスペアタイヤのカ
バーがある。しかし、この軟質合成樹脂レザーをゴム製
品と接触させて長く使用すると、ゴム製品中のアミン系
の老化防止剤が軟質合成樹脂に移行し、軟質合成樹脂を
変色させる。特にタイヤ用ゴムはオゾン劣化への要求性
が高いので、Ｎ−イソプロピル−Ｎ’−フェニル−Ｐ−
フェニレンジアミン等のＰ−フェニレンジアミン誘導体
が老化防止剤として使用されるが、これらの化合物は殊
更に軟質合成樹脂層に移行し、これを変色しやすい。

【０００３】そして、この老化防止剤の移行によって軟
質合成樹脂レザーの表面が変色し、その装飾性を損わな
いようにするため、従来種々の方法が提案されている。
例えば、表化粧層が軟質合成樹脂層、中間層がエチレン
−ビニルアルコール共重合体層又はポリビニルアルコー
ル層、裏面が軟質ポリ塩化ビニル層として積層一体化
し、必要に応じて織布を裏貼り基布として貼着したゴム
製品被覆用装飾シートが提案されている（実公昭４−４
６９２３号公報）。この提案されたゴム製品被覆用装飾
シートでは、中間層に老化防止剤の移行を阻止するため
のエチレン−ビニルアルコール共重合体層又はポリビニ
ルアルコール層を設けるので、シート製造工程中にエチ
レン−ビニルアルコール共重合体層又はポリビニルアル
コール層を設ける工程を組み込む必要がある。

【０００４】ところで、既に出来上がり製品化された軟
質合成樹脂レザーに老化防止剤の移行を阻止する手段を
施すようにすると、軟質合成樹脂レザーの製造工程を変
更する必要がなく効率的であり、更には例えば市販され
ている軟質合成樹脂レザーに老化防止剤の移行を阻止す
る手段を施すようにすると模様などに多様性が出せて大
変便利である。そこで本発明者は、軟質合成樹脂レザー
に老化防止剤移行阻止手段を施すことについて検討し、
先に、織布の片面にポリ塩化ビニル層を設けたゴム製品
被覆用カバー（すなわち、ポリ塩化ビニルレザー製ゴム
製品被覆用カバー）であって、その織布面に目止め層を
有し、該目止め層の上にゴム老化防止剤移行阻止フィル
ム層を有することを特徴とするゴム製品被覆用シートを
提案した（特願平７−２７７７９４号）。

【０００５】上記の提案の発明における目止め層には、
エチレン−ビニルアセテート共重合体エマルジョンやア
クリル系樹脂エマルジョンの焼き付け層が採用され、ゴ
ム老化防止剤移行阻止フィルム層には、エチレン−ビニ
ルアルコール共重合体フィルム層やエチレン−テトラフ
ルオロエチレン共重合体フィルムが採用されている。こ
のように目止め層を設けることによって、エチレン−ビ
ニルアルコール共重合体フィルムやエチレン−テトラフ
ルオロエチレン共重合体フィルムが薄いフィルムであっ
ても、破れなく耐久性に富んだものとすることができ、
したがって、シートの柔軟性を損ねることがない。本発
明は、軟質合成樹脂レザーに、破れなく耐久性に富み、
且つシートの柔軟性を損ねることのない老化防止剤移行
阻止層を簡単に形成させたゴム製品被覆用シートを提供
することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、織
布の表面に軟質合成樹脂層を設けたゴム製品被覆用カバ
ーであって、その織布の裏面にポリオレフィン層及びポ
リアミド層が順次形成されていることを特徴とするゴム
製品被覆用シートである。また本発明は、織布の表面に
軟質合成樹脂層を設けたゴム製品被覆用カバーであっ
て、その織布の裏面に、ポリアミド−ポリオレフィン複
合フィルムのポリオレフィン層を融着させてなることを
特徴とするゴム製品被覆用シートである。織布の裏面
に、ポリアミド−ポリオレフィン複合フィルムのポリオ
レフィン層を融着させるにあたっては、全面にわたって
融着してもよいし、シートの周縁部で融着して織布と複
合フィルム間に間隙を設けてもよい。

【０００７】

【発明の実施の形態】図１は本発明のゴム製品被覆用シ
ートの一例の断面図である。１は織布、２は織布表面に
形成させた軟質合成樹脂層、３はポリオレフィン層であ
り、このポリオレフィン層は織布に融着しており、その
一部は織布の織り目間隙に入り込んで強固に結合してい
る。４はポリアミド層でポリオレフィン層に融着してい
る。このポリアミド層４はゴム老化防止剤移行阻止作用
を有する。織布１の表面に軟質合成樹脂層２を設けたシ
ート（軟質合成樹脂レザー）は、従来既知のものが使用
できる。すなわち、織布は織物でも、編物でも不織布で
もよい。素材の繊維としてはポリエステル繊維、ポリア
ミド繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、木綿、レーヨ
ンなどの繊維が用いられる。軟質合成樹脂としては軟質
塩化ビニル、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、
エチレン−メチルメタクリレート共重合体などが用いら
れる。そして、この軟質合成樹脂レザー、例えばポリ塩
化ビニルレザーは、織布の片面にポリ塩化ビニルペース
トを下塗し、その上に軟質ポリ塩化ビニル層をカレンダ
ーなどにより形成させ、その表面にプリント処理、表面
処理、絞押し処理などの仕上げ処理を施す従来既知の方
法で製造される。

【０００８】本発明におけるゴム製品被覆用シートは、
軟質合成樹脂レザーの織布の裏面にポリオレフィン層を
溶融押出塗布によって設けたり、ポリオレフィンフィル
ムの融着によって設け、その上面にポリアミドフィルム
を融着させてポリアミド層を形成させて製造することが
できる。このとき必要に応じてポリオレフィンフィルム
にプライマー処理を施して接着性を改善する。また、軟
質合成樹脂レザーの織布の裏面に、ポリアミド−ポリオ
レフィン複合フィルムのポリオレフィン層を融着させて
製造することもできる。この複合フィルムを用いると簡
単にゴム製品被覆用シートを製造できるので好ましい。
このとき用いるポリアミド−ポリオレフィン複合フィル
ムは、ポリアミドフィルム層とポリオレフィンフィルム
層とを積層したフィルムである。ポリアミド層を構成す
るポリアミドとしてはナイロン６、ナイロン６６、ナイ
ロン６，１０、ナイロン１０などが用いられる。ポリオ
レフィン層を構成するポリオレフィンとしてはポリエチ
レン、ポリプロピレンなどが用いられるが、ポリオレフ
ィンと他の単量体との共重合体も使用できる。このポリ
オレフィンは、ポリ塩化ビニル及びポリアミドより融点
が低く、ポリアミド−ポリオレフィン複合フィルムを織
布に融着させるときに、軟質合成樹脂層及びポリアミド
層を熱的に損傷することなく融着できるものであればよ
い。ポリアミド−ポリオレフィン複合フィルムにおける
各層の厚さは限定されないが、ポリアミド層の厚さは１
０〜３０μｍが好ましく、ポリオレフィン層の厚さは２
０〜５０μｍが好ましい。

【０００９】ポリアミドとポリオレフィンとは接着性が
悪いので、ポリアミドフィルムとポリオレフィンフィル
ムとが積層した複合フィルムを製造するには、ポリアミ
ドフィルムの表面の接着性を改善するのが好ましい。こ
の接着性改善は、例えば、ポリアミドフィルムの表面
に、エチレン−（メタ）アクリル酸共重合体、エチレン
−エチルアクリレート−（メタ）アクリル酸共重合体、
エチレン−（メタ）アクリル酸−金属メタクリレート相
互共重合体などのエチレン−酸性単量体共重合体とポリ
オレフィンとの混合物の層を形成させるなどする。この
層の形成は、ポリアミドと、エチレン−酸性単量体共重
合体とポリオレフィンとの混合物とを共押出成形するこ
とにより行うのが好ましい。更に、押出機を３台用い、
ポリアミド、エチレン−酸性単量体共重合体とポリオレ
フィンとの混合物、及びポリオレフィンをこの順に並べ
て共押出成形してポリアミド−ポリオレフィン複合フィ
ルムを製造してもよい。

【００１０】軟質合成樹脂レザーの織布面にポリアミド
−ポリオレフィン複合フィルムを融着させるには、軟質
合成樹脂レザーの織布面とポリアミド−ポリオレフィン
複合フィルムのポリオレフィン面とを接しさせながら一
対の加圧加熱ロール間を通すことによって行なう。一対
の加圧加熱ロールは、軟質合成樹脂レザー側を圧着ロー
ルにし、複合フィルム側を加熱ロールにする。加熱ロー
ルの温度はポリオレフィン層の溶融温度にもよるが、通
常１１０〜１７０℃、好ましくは１３０〜１５０℃であ
る。加熱ロールの表面にフッ素樹脂被膜を施しておくと
離型性がよく円滑な作業が行なえる。融着時にポリオレ
フィン層の一部が織布の織り目間隙に入り込むので、強
固な結合がおこなえる。この融着は、軟質合成樹脂レザ
ーの織布面全面にわたって行なうが、トリミング後に融
着する場合は、周縁部のみを融着して軟質合成樹脂レザ
ーとポリアミド−ポリオレフィン複合フィルムの間に間
隙が存在するような状態にしてもよい。後者の場合は周
縁部以外も部分的に融着してもよい。後者の場合は、軟
質合成樹脂レザーの織布面とポリアミド−ポリオレフィ
ン複合フィルムとの間に間隙が存在するので柔軟性のよ
い被覆用シートが得られる。

【００１１】また、軟質合成樹脂レザーの織布面に目止
め層を施し、その上にポリアミド−ポリオレフィン複合
フィルムを溶着してもよい。この場合も、ポリアミド−
ポリオレフィン複合フィルムのポリオレフィン面を織布
の目止め層に当接して融着させる。また、ポリアミド−
ポリオレフィン複合フィルムのポリオレフィン層にイソ
シアネート基を含む反応型ポリウレタンなどでプライマ
ー処理をしておき、このプライマー処理面を目止め層に
重ね合わせ熱接着してもよい。軟質合成樹脂レザーの織
布面に設ける目止め層にはエチレン−ビニルアセテート
共重合体、又はアクリル樹脂を用いる。エチレン−ビニ
ルアセテート共重合体はエチレンと酢酸ビニルとの共重
合体である。またアクリル樹脂はアクリル酸とメタクリ
酸メチルとの共重合体などが好ましい。

【００１２】これらの樹脂はエマルジョン型にして、軟
質合成樹脂レザーの織布面に塗布して目止め層を形成さ
せる。エマルジョン型にして用いると、塗布後の焼き付
け（キュアー）が低温で行え、焼き付け時に軟質合成樹
脂レザーを損傷することがないからである。また、この
エマルジョンを機械的に泡立てて用いるのが好ましい。
泡立てて用いることによって、塗布量を減らすころがで
き、また目止め層を柔軟性にすることができる。塗布の
際には、織布の間隙がなくなり、平坦な状態になるよう
に塗布する。塗布量は織布の組織、糸の番手にもよる
が、通常固形分として１０〜５０ｇ／ｍ²程度である。
塗布後の焼き付け処理は５０℃程度の炉で風量を多くし
て行う。この焼き付け処理によって、塗布された樹脂エ
マルジョンは膜化し、目止め層が形成される。

【００１３】本発明のゴム製品被覆用シートは、上記の
ように、軟質合成樹脂レザーの織布側にポリエチレン層
を介してポリアミド層が形成されている。このシートで
ゴム製品の被覆、例えばタイヤのカバーに用いるには、
ポリアミド層側がゴム製品に接するようにする。ゴム製
品中のゴム老化防止剤はポリアミド層で阻止されて軟質
合成樹脂層に移行することがない。そのため、ゴム老化
防止剤の移行によって軟質合成樹脂レザーの表面が変色
したり、その装飾性が損われることがない。

【００１４】

【実施例】

実施例１ ２０番手のナイロン６６捲縮糸で編成したメリヤス布の
表面にポリ塩化ビニルペーストを固形分で２０ｇ／ｍ²
になるように塗布した。重合度１１００のポリ塩化ビニ
ル１００部、可塑剤（ＤＯＰ）７５部、エポキシ化大豆
油３部、安定剤（Ｃａ−Ｚｎ系）２部、充填剤（ＣａＣ
Ｏ₃）３０部及び顔料４部からなる軟質ポリ塩化ビニル
配合物を混練した。この混練配合物をカレンダーにて、
上記のポリ塩化ビニルペースト塗布面に０．３５ｍｍの
厚さに付与し、軟質ポリ塩化ビニル層を形成した。この
ポリ塩化ビニル層の表面にマーブルプリント及び表面処
理を施し、最後に絞押し処理して、ポリ塩化ビニルレザ
ーを製造した。

【００１５】ポリアミド層が１５μｍ、ポリエチレン層
が４０μｍのポリアミド−ポリエチレン複合フィルムを
作成し、この複合フィルムのポリエチレン面と前記ポリ
塩化ビニルレザーのメリヤス布面とを接しさせながら一
対の加圧加熱ロール間を通し、ポリエチレン層をメリヤ
ス布に融着した。一対の加圧加熱ロールは、ポリ塩化ビ
ニルレザー側を圧着ロール、複合フィルム側をフッ素樹
脂被膜加熱ロールにした。加熱ロールの温度は１４５℃
にした。斯くして、ポリ塩化ビニルレザーのメリヤス布
側に、ポリエチレン層を介してポリアミド層を形成した
本発明のゴム製品被覆用シートが得られた。また、軟質
合成樹脂層がポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層
である軟質合成樹脂レザーの織布面及び軟質合成樹脂層
がエチレン−メチルメタクリレート共重合体層である軟
質合成樹脂レザーの織布面に、それぞれ上記と同様にし
て、ポリエチレン層を介してポリアミド層を形成させ本
発明のゴム製品被覆用シートを製造した。

【００１６】鉄板の上に一辺が５ｃｍの正方形のゴム板
を置き、このゴム板の上に一辺が５ｃｍの正方形の上記
の被覆用シートを、ポリアミド層がゴム板と接するよう
に置き、更にその上に５００ｇの重しを置いた。この状
態で１００℃で１００時間放置してゴム老化防止剤の移
行試験を行なった。この移行試験を上記の各被覆用シー
トについて行なったところ、各被覆用シートのポリ塩化
ビニル層、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー層、
エチレン−メチルメタクリレート共重合体層は共に変色
しなかった。ポリアミド層を設けない軟質合成樹脂レザ
ーについてもそれぞれ上記と同様に移行テストをしたと
ころ、各被覆用シートのポリ塩化ビニル層、ポリオレフ
ィン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑
性エラストマー層、エチレン−メチルメタクリレート共
重合体層は共に黒色に変色した。

【００１７】

【発明の効果】本発明の軟質合成樹脂層を有するゴム製
品被覆用シートは、ゴム製品に配合されている老化防止
剤の軟質合成樹脂層への移行を阻止する性質が優れてお
り、そのため該シートでゴム製品を覆った場合には、い
つまでも軟質合成樹脂層が変色することがない。また、
既に出来上がった軟質合成樹脂レザーに、ポリアミド−
ポリオレフィン複合フィルムを融着するだけでよいの
で、極めて簡単にゴム老化防止剤の移行阻止性を付与で
き、多様な製品を製造できる利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のゴム製品被覆用シートの断面図

【符号の説明】

１ 織布、２ 軟質合成樹脂層、３ ポリオレフィン
層、４ ポリアミド層

フロントページの続き (72)発明者 鶴橋 寿美子 静岡県榛原郡吉田町片岡1563−６ エステ ート片岡102

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】織布の表面に軟質合成樹脂層を設けたゴム
   製品被覆用カバーであって、その織布の裏面にポリオレ
   フィン層及びポリアミド層が順次形成されていることを
   特徴とするゴム製品被覆用シート。
2. 【請求項２】織布の表面に軟質合成樹脂層を設けたゴム
   製品被覆用カバーであって、その織布の裏面に、ポリア
   ミド−ポリオレフィン複合フィルムのポリオレフィン層
   を融着させてなることを特徴とするゴム製品被覆用シー
   ト。
3. 【請求項３】織布の裏面に、ポリアミド−ポリオレフィ
   ン複合フィルムのポリオレフィン層を全面で融着させて
   なることを特徴とする請求項１記載のゴム製品被覆用シ
   ート。
4. 【請求項４】織布の裏面に、ポリアミド−ポリオレフィ
   ン複合フィルムのポリオレフィン層をその周縁部で融着
   し、織布と複合フィルム間に間隙を設けたことを特徴と
   する請求項１記載のゴム製品被覆用シート。