JPH10273824A - 太細を有するポリエステルマルチフィラメントおよびその製造方法 - Google Patents

太細を有するポリエステルマルチフィラメントおよびその製造方法

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JPH10273824A
JPH10273824A JP8175597A JP8175597A JPH10273824A JP H10273824 A JPH10273824 A JP H10273824A JP 8175597 A JP8175597 A JP 8175597A JP 8175597 A JP8175597 A JP 8175597A JP H10273824 A JPH10273824 A JP H10273824A
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貴義 恩田
Michinori Higuchi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製糸安定性に優れ、染色により霜降調の濃淡
コントラストと自然な斑感が発現し、かつ布帛表面を微
小な凹凸感を有するものとし視覚的、触感的にドライ
感、サラサラ感を有する布帛となる染色堅牢性に優れた
ポリエステルマルチフィラメントを提供する。 【解決手段】 長さ方向にウースタノーマルU%値が
1.5〜8.0%、かつ4.0%以上の太さ変動ピーク
数が10個/m(糸長)以上の太さムラを有し、さらに
試料長20cmでのストレス−ストレイン曲線で、40
%伸長点応力の標準偏差が0.3g/d以下であり、か
つ破断伸度の標準偏差が10%以下の太細を有するポリ
エステルマルチフィラメントによって達成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はドライ感、サラサラ
感を有し、染色により周期長の短い濃淡差の発現可能な
太細を有するポリエステルマルチフィラメントに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来よりポリエステル未延伸糸または高
配向未延伸糸を不完全に延伸して、長さ方向に太さが不
均一な太細糸が得られることは知られている。この太細
糸はマルチフィラメント間で太部と細部の位相が揃いや
すく、かつ太部と細部の周期長が長いために、定応力伸
長域が残存しやすいものであった。このため加工段階や
布帛製品で永久歪みが発生しやすく、取扱性や機能性が
低下するという欠点があった。したがって、特徴のある
製品は機能面で劣り、機能性で問題のない製品は特徴が
出にくいというのが、太細糸を使った商品の現状であ
る。
【0003】この機能性を改善するものとして、太細を
フィラメント間に分散し、構成フィラメント内に混在さ
せる方法が、特公昭51−7207号公報、特開昭58
−203113号公報、特開昭59−94617号公
報、特開昭59−94643号公報、特公平6−946
09号公報に提案されている。これらの方法は、いずれ
も紡糸速度が1700m/分未満の未延伸糸を用いて、
延伸前に未延伸糸を二次転移温度近傍の温度またはそれ
以上の温度で緊張熱処理した後、不完全延伸を行い太細
糸を得るものであり、太細をフィラメント間に異なった
位相で分散させることには効果があった。しかし太部の
熱脆化の課題があり、加工段階や布帛製品で太部が脱落
し、毛羽が発生しやすいという問題があった。
【0004】そこで特公平7−3012号公報には、高
配向未延伸糸を用いて、三つの加熱体と摩擦抵抗体を同
一の延伸系内に有する延伸系で自然延伸倍率以上の延伸
倍率で不完全延伸により太細糸を得ることにより前記し
た太部の熱脆化の問題を解決する方法が提案されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら該公報に
よって得られる太細糸は、染色による濃淡コントラスト
が不明瞭であり、また摩擦抵抗体の汚れや摩耗によっ
て、摩擦抵抗体と糸条の摩擦係数が変化しやすく、太細
パターンが糸条間および経時的に大きく変化し、安定的
に太細糸を製造することが困難であった。
【0006】本発明は、かかる従来技術の欠点を解決
し、ドライ感、サラサラ感と、染色による周期長の短い
濃淡コントラストの発現が可能で、霜降調の自然な斑感
を有すると共に安定的に製造可能な太細を有するポリエ
ステルマルチフィラメントを提供することを目的とする
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記した本発明の目的
は、長さ方向にウースタノーマルU%値が1.5〜8.
0%でかつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が10個/
m(糸長)以上である太さムラを有し、さらに試料長2
0cmでのストレス−ストレイン曲線で、40%伸長点
応力の標準偏差が0.3g/d以下で、かつ破断伸度の
標準偏差が10%以下であることを特徴とする太細を有
するポリエステルマルチフィラメントによって達成でき
る。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、ポリエステルマ
ルチフィラメントが長さ方向にウースターノーマルU%
値(以下U値とする)で1.5〜8.0%の太さムラを
有することで、該ポリエステルマルチフィラメントを用
いた布帛は、染色による濃淡コントラストが小さくかつ
極めて短い自然な斑感を有し、布帛表面の微小な凹凸感
により視覚的、触感的にドライ感を有する素材となる。
U値は好ましくは、1.5〜6%であり、特に好ましく
は2〜4%である。U値が1.5%未満であると、ドラ
イ感が得られなくなり、また8.0%を越えると洗濯堅
牢度、耐光堅牢度が低下する。
【0009】さらにポリエステルマルチフィラメントは
長さ方向に4%以上の太さ変動ピーク数を10個/m
(糸長)以上有することが必要であり、好ましくは15
個/m(糸長)以上である。ピーク数が10個/m(糸
長)未満であると、有効な濃淡コントラストが得られ
ず、サラサラした優雅なドライ感が得られない。
【0010】また、ポリエステルマルチフィラメントの
試料長20cmでのストレス−ストレイン曲線の40%
伸長点応力の標準偏差が0.3g/d以下であることが
必要であり、好ましくは0.2g/d以下である。特に
好ましくは0.17g/d以下である。40%伸長点応
力の標準偏差を0.3g/d以下とすることは、太細の
周期長を実質的に20cm以下とすることであり、さら
にマルチフィラメントの断面方向で太部と細部が微分散
して混在しているものである。40%伸長点応力の標準
偏差が0.3g/dを越えると加工段階や布帛製品で永
久歪みが発生しやすくなる。
【0011】さらに、ポリエステルマルチフィラメント
の試料長20cmでのストレス−ストレイン曲線で破断
伸度の標準偏差が10%以下であることが必要であり、
好ましくは8%以下である。特に好ましくは6%以下で
ある。破断伸度の標準偏差が10%を越えると、毛羽が
発生し製糸性、仮撚加工等の糸加工性、製編織等の高次
加工性に悪影響を及ぼす。
【0012】収縮率については特に限定するものではな
いが、沸水収縮率は15%未満、160℃における乾熱
収縮率は25%未満とするのが、布帛の染色仕上げ工程
での収縮やサラサラ感の点で好ましい。
【0013】なお、本発明においてポリエステルとは、
ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフ
タレートを主体とするものであれば、ホモポリエステ
ル、共重合ポリエステルのいずれであってもよい。共重
合ポリエステルの場合の共重合成分は、特に限定され
ず、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、テトラエチレングリコール、1、4−ブタンジオー
ル、ポリアルキレングリコール、1、4−シクロヘキサ
ンジメタノール、2,2´ビス(4−ヒドロキシエチル
フェニル)プロパンなどのジオール成分、アジピン酸、
セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタ
レンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル
酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸
成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジ
カルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオ
キシカルボン酸成分などがあげられる。さらに、架橋ポ
リエチレンオキサイド系ポリマなどの吸湿・吸水物質や
ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の汎用熱
可塑性樹脂が本発明の目的を阻害しない程度含有されて
いてもよい。また、酸化チタン、カーボンブラック等の
顔料のほか従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、
帯電防止剤等が添加されていてもよい。
【0014】ここでポリエステルモノフィラメントの断
面形状は丸ばかりでなく、多角、H型、π型、C型、偏
平型、偏平多葉型その他公知の異形断面でもよい。ま
た、ポリエステルマルチフィラメントは、ポリエステル
繊維と他の溶融紡糸可能な熱可塑性ポリマとの混繊繊
維、あるいは複合繊維であってもよい。布帛形態は、織
物、編物、不織布など目的に応じて適宜選択できる。
【0015】次に、本発明の太細を有するポリエステル
マルチフィラメントの好ましい製造方法について説明す
る。
【0016】本発明の太細を有するポリエステルマルチ
フィラメントは、複屈折率Δnが25×10-3〜50×
10-3であるポリエステルマルチフィラメント未延伸糸
を低倍率延伸して太細糸を製造するにあたって、供給ロ
ーラと延伸ローラの間で仮撚し、1.05〜1.7倍に
延伸し、100〜200℃で熱セットすることで製造す
ることができる。
【0017】前記した方法は特に従来困難であったポリ
エステルマルチフィラメントの周期長の短い太細糸を得
るのに極めて効果がある。さらにマルチフィラメントの
断面方向で太部と細部が混在している太細糸を得るのに
極めて効果があるものである。 ポリエステルマルチフ
ィラメント未延伸糸の複屈折率Δnが25×10-3〜5
0×100-3であるのは、大量生産において安定した品
質を得ることが可能であるためであり、複屈折率Δn
が、30×10-3〜45×10-3であることがより好ま
しい。
【0018】ここで、供給ローラの表面温度は、延伸室
環境による表面温度のバラツキが解消できる範囲で、で
きるだけ低温である方が、延伸開始点の位置を熱セット
装置の近傍および/または熱セット装置上の狭い範囲内
で変動させることができ、太細の微分散化が可能な点で
好ましく、80℃以下とするのが好ましい。より好まし
くは60℃以下であり、特に好ましくは40℃以下であ
る。
【0019】また供給ローラと延伸ローラの間で行う仮
撚の方法としては、通常の仮撚装置を使用できるが、特
に流体旋回ノズルが好ましく用いられる。流体旋回ノズ
ルは、延伸ゾーンを走行中の糸条へのダメージが極めて
小さいことから、高速製糸で太細糸を得る場合において
も糸切れすることなく製糸が可能であり、糸物性の低下
が小さく、連続生産性に優れたものである。さらに汚れ
や摩耗が極めて少なく、太細パターンが糸条間および経
時的に変化することがなく、安定的に太細糸を得ること
ができる。このような方法で得られたポリエステルマル
チフィラメントの形態は、短ピッチで微分散化した太細
部を主体的に有しているが仮撚捲縮は、ほとんど見られ
ない。
【0020】また延伸は、延伸倍率1.05〜1.7
倍、好ましくは1.1〜1.6倍という低倍率で行うも
のである。前記の範囲とすることで、延伸開始点の位置
を仮撚装置の下流側に位置する熱セット装置の近傍およ
び/または熱セット装置上の狭い範囲内で振動的に変動
させることができる。延伸倍率が1.05倍未満や1.
7倍を越えると濃淡コントラストが不明瞭となる。
【0021】熱セットの方法は特に限定されないが、例
えば加熱延伸ローラまたは加熱板、熱ピン等を用いて緊
張熱セットとする方法が好ましい。緊張熱セットとする
ことで、熱セット時の分子鎖の配向緩和が抑制され、染
色布帛を洗濯したときの洗濯堅牢性を大幅に改善できる
ことから好適である。このとき使用される加熱板として
は接触式または非接触式のものが、加熱延伸ローラ、熱
ピンとしては梨地表面のものが糸条とローラ表面の摩擦
を低摩擦化する点で好ましく使用できる。
【0022】また熱セット温度は、100℃〜200℃
であることが必要であり、好ましくは120℃〜160
℃である。ここで熱セット温度とは、接触式熱セット装
置においては、糸条に接触した熱セット装置の表面温度
であり、非接触式熱セット装置においては、糸条通過部
の雰囲気温度である。熱セット温度が、100℃未満で
あると太部と細部の位相が揃いやすく、かつ太部と細部
の周期長が長くなりやすくなる。また200℃を越える
と染色したときに濃淡差が不明瞭となる。
【0023】すなわち前記した方法は、低倍率延伸で流
体旋回ノズルを用いて延伸ゾーンを走行中の糸条に仮撚
およびバルーニングを発生させることで、まず流体旋回
ノズルの上流側の糸条には、仮撚によるねじり変形によ
って、ポリエステルマルチフィラメントを構成する単繊
維の長さ方向に微小でランダムな歪み変形を与え、引き
続いて流体旋回ノズルの下流側の糸条には、バルーニン
グが振動することによって糸条が熱セット装置に間欠的
に接触し、延伸開始点位置が熱セット装置の近傍および
/または熱セット装置上の狭い範囲内で変動するため、
マルチフィラメントの長さ方向および単糸間方向で太糸
部と細糸部が微分散化するものである。したがって、延
伸ゾーンの長さに影響されないで、周期長が20cm未
満の周期長の短い太細糸を得ることができ、このため糸
斑(U値)は小さくなり、染色時にランダムな周期長の
短い濃淡コントラストを得ることができる。このことに
よって霜降り調の杢効果が得られ、自然な斑感が得られ
る。
【0024】また前記した通り、周期長の短い太細糸を
得るために、仮撚およびバルーニングの作用が重要であ
り、この仮撚およびバルーニングを安定して付与するた
めには、仮撚装置の前後に糸道ガイドを用いることが好
ましい。
【0025】さらに前記した本発明のポリエステルマル
チフィラメントの好ましい製造方法を図を用いて説明す
る。
【0026】図1は、いったん溶融紡糸し巻取った未延
伸糸を用いて太細糸を得る製造方法を示すものである。
複屈折率が25×10-3〜50×10-3の未延伸糸1
を、フィードローラ2を介して、第1デリベリローラ
(供給ローラ)3と第2デリベリローラ(延伸ローラ)
5の間でエアー圧力0.5〜5Kg/cm2 の流体旋回
ノズル4を用いて、走行糸条に有節バルーンを発生させ
つつ、1.05〜1.7倍に低倍率延伸し、引続き第2
デリベリローラ5で100℃〜200℃で熱セットした
後、第3デリベリローラ6を介して太細糸7として巻取
るものである。
【0027】この時の延伸張力については特に限定され
ないが、0.3〜1.0g/dとするのが、流体旋回ノ
ズル4使用によるバルーニングの発生を防止し、太細の
周期長を容易にコントロールする点で好ましい。
【0028】流体旋回ノズル4を使用することで延伸ゾ
ーンの長さや流体旋回ノズルの設置位置に影響されるこ
となく、周期長の短い太細糸が得られるので、延伸ゾー
ンの長さや延伸ゾーンへの流体旋回ノズルの設置位置に
ついては特に限定されない。流体旋回ノズル4として
は、たとえばエアー仮撚用の流体旋回ノズルなどが挙げ
られる。
【0029】図2は、溶融紡糸した未延伸糸をいったん
巻取ることなく、紡糸直接延伸して太細糸を得る製造方
法を示すものである。紡糸口金8から溶融紡糸した複屈
折率が25×10-3〜50×10-3の未延伸糸10に給
油装置9で油剤を付与した後、第1デリベリローラ11
と第2デリベリローラ13の間で、エアー圧力0.5〜
5Kg/cm2 の流体旋回ノズル12を用いて、走行糸
条にバルーニングを発生させつつ、1.05〜1.7倍
に低倍率延伸し、引続き第2デリベリローラ13で10
0℃〜200℃で熱セットした後、太細糸14として巻
取るものである。
【0030】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説
明する。なお、本発明における各評価は次の通り行うも
のとする。
【0031】(1)U値:USTER TESTER MONITOR C(Zellw
eger USTER 社製)を用い、糸速度8m/分、TWIST Z
1.5 、YARN TENTION 1.5、EVALUTION TIME 1分、RANG
E 25%、測定モードはノーマル(N)で平均偏差率を測
定するとともに、波形をチャートに記録する。測定値は
試料の任意の3箇所を測定し、その平均値をU値として
用いる。
【0032】(2)太さ変動ピーク数:(1)のU値測定の際
に得られたノーマルチャートから、4%以上の太さ変動
ピーク数を測定し、糸長1m当たりのピーク数を算出す
る。測定値は試料の任意の3箇所を測定し、その平均値
を用いる。
【0033】(3)強度・伸度:強伸度はJIS-L1013 に従
い、インストロン引張試験機(TOYO BALDWIN社製のTENS
ILON UTM−III-100)で測定する。試料長20cm、引
張速度20cm/分でストレス−ストレイン曲線を得
て、別に測定した繊度から算出し、繰返し測定10回の
平均値を用いる。
【0034】(4)40%伸長点応力の標準偏差・破断伸
度の標準偏差:強度・伸度の測定で得られたストレス−
ストレイン曲線から40%伸長点応力および破断伸度を
算出し、繰返し測定10回における応力の標準偏差およ
び破断伸度の標準偏差を算出する。
【0035】(5)乾熱収縮率:JIS-L1013 A法に従い、
次の条件で測定する。すなわち、検尺機でカセ試料を作
成し、2時間放縮、調湿した後、1/30(g/d)の
荷重をかけ、30秒後に試料長を測定してL0 とする。
この試料を両端を自由状態でオーブン型乾燥機内に入れ
160℃×20分で乾熱処理する。次いで乾熱処理後の
試料をオーブンより取り出し、室内で2時間放冷、調湿
する。この放冷、調湿試料に再度1/30(g/d)の
荷重をかけ、30秒後に試料長を測定してLとする。試
料の任意の5箇所でそれぞれL0、Lを測定し、その平
均値を用い乾熱収縮率を次式により求める。
【0036】 乾熱収縮率(%)=〔(L0 −L)/L0 〕×100 (6)沸水収縮率:JIS-L1013 A法に記載の方法で測定す
る。
【0037】(7)複屈折率:OLYMPUS 社製BH−2偏光
顕微鏡を用い、コンペンセータ法で測定する。
【0038】(1)〜(7)の調湿条件はいずれも20±2
℃、相対湿度65±2%である。
【0039】(8)洗濯堅牢度:JIS - L0844 「洗濯に対
する染色堅牢度試験方法」A−2法に記載の方法で処理
した後、グレースケールにより、洗濯前後の退色の程度
を次の基準により等級判定する。4級以上を合格とす
る。
【0040】5級;全く退色が認められない。
【0041】4級;ほとんど退色しない。
【0042】3級;少し退色が認められる。
【0043】2級;退色が認められる。
【0044】1級;退色がひどい。
【0045】(9)耐光堅牢度:JIS - L0842 「カーボン
アーク灯光による染色堅牢度試験方法」に従った。10
時間照射を3級、20時間照射を4級、40時間照射を
5級とし、ブルースケールの退色を基準として、グレー
スケールによりサンプルの退色を等級判定する。4級以
上を合格とする。
【0046】なお、染色条件は次の通りである。
【0047】 染料 テラシールネーヒ゛フ゛ル SGL(CIBA-GEIGY社製) ; 0.4%owf 助剤 テトロシンPEG (山川薬品工業社製); 5%owf サンソルト#1200(三洋化成社製) ; 1%owf 浴比 ; 1:100 温度×時間 ; 90℃×20分
【0048】
【実施例】
実施例1 固有粘度0.63であるポリエチレンテレフタレートを
溶融紡糸し、紡糸速度3000m/分で巻き取られたブ
ライト、丸断面で85デニール48フィラメント、複屈
折率が32×10-3のポリエチレンテレフタレートマル
チフィラメント未延伸糸を得た。該未延伸糸を図1の延
伸装置で第1デリベリローラ(供給ローラ)3と第2デ
リベリローラ(延伸ローラ)5の間で1.2倍に延伸
し、巻取速度800m/分でポリエステルマルチフィラ
メントを得た。該ポリエステルマルチフィラメントの延
伸条件と糸質を表1に示した。ポリエステルマルチフィ
ラメントの長さ方向の太さムラはU値で3%であり、か
つ4.0%以上の太さ変動ピーク数が15個/m(糸
長)であった。さらに試料長20cmでストレス−スト
レイン曲線の40%伸長点応力の標準偏差は0.1g/
dと小さいものであり、かつ破断伸度の標準偏差も4%
と小さいものであった。また乾熱収縮率は3%であっ
た。
【0049】次に、前記ポリエステルマルチフィラメン
トを織密度90×75本/インチで平織物に製織し、常
法により精練、180℃テンターで生機セットし、分散
染料による染色、160℃テンターで仕上げセットを施
し、織物サンプルを作成した。該織物サンプルの染色堅
牢度を表1に示した。
【0050】得られた織物サンプルは、織物表面に微細
な凹凸があり、ソフトでドライ感、サラサラ感に富んだ
製品であった。さらに染色により周期長の短い霜降調の
濃淡差が発現しており、表面凹凸との相乗効果でスパン
調の自然な斑感が得られた。この織物サンプルの染色堅
牢度は洗濯堅牢度、耐光堅牢度のいずれも5級であり良
好な染色堅牢性が得られた。
【0051】比較例1 流体旋回ノズルを使用しなかったこと以外は、実施例1
と同様にポリエステルマルチフィラメントを得、織物サ
ンプルを作成した。
【0052】得られたポリエステルマルチフィラメント
の糸質を表1に示した。ポリエステルマルチフィラメン
トの長さ方向の太さムラはU値で15%であり、かつ
4.0%以上の太さ変動ピーク数が7個/m(糸長)で
あった。40%伸長点応力の標準偏差は0.5g/dで
あり、かつ破断伸度の標準偏差は15%であり極めてバ
ラツキの大きいものであった。
【0053】織物サンプルは、織物表面に凹凸があり、
このためドライ感は得られるものの、優雅なサラサラ感
が得られなかった。また染色により周期長の長い濃淡差
が発現しており、霜降調に欠けるものであった。さらに
表1に示したように染色堅牢度は洗濯堅牢度が3級、耐
光堅牢度が3〜4級であり、染色堅牢性が劣り、製品と
しての品位に劣るものであった。
【0054】比較例2 延伸ローラ温度を80℃にしたこと以外は、実施例1と
同様にポリエステルマルチフィラメントを得、延伸し織
物サンプルを作成した。
【0055】延伸条件と得られたポリエステルマルチフ
ィラメントの糸質を表1に示した。ポリエステルマルチ
フィラメントの長さ方向の太さムラはU値で18%であ
り、かつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が5個/m
(糸長)であった。40%伸長点応力の標準偏差は0.
6g/dであり、かつ破断伸度の標準偏差は20%であ
り極めてバラツキの大きいものであった。また乾熱収縮
率が20%と高いものであり、このため織物サンプル
は、織物表面に凹凸があり、ドライ感に富んだ製品であ
ったが、優雅なサラサラ感が得られず風合が粗硬であ
り、染色により周期長の長い濃淡差が発現しており、霜
降調に欠けるものであった。さらに表1に示したように
染色堅牢度は洗濯堅牢度が2〜3級、耐光堅牢度が3級
であり、染色堅牢性が劣り、製品としての品位に劣るも
のであった。
【0056】比較例3 供給ローラ温度を90℃にしたこと以外は、実施例1と
同様にポリエステルマルチフィラメントを得、織物サン
プルを作成した。
【0057】得られたポリエステルマルチフィラメント
の糸質を表1に示した。
【0058】ポリエステルマルチフィラメント長さ方向
の太さムラはU値で1.2%と小さいものであり、かつ
4.0%以上の太さ変動ピーク数が1個/m(糸長)で
あった。40%伸長点応力の標準偏差は0.2g/dで
あり、かつ破断伸度の標準偏差は3%であり極めてバラ
ツキの小さいものであった。このため織物表面に凹凸感
および染色による濃淡差が極めて小さく、ドライ感、サ
ラサラ感、および霜降調に欠けるものであった。また表
1に示したように染色堅牢度は洗濯堅牢度、耐光堅牢度
がいずれも4級であったが、製品としての品位に劣るも
のであった。
【0059】比較例4 延伸ローラ温度を210℃にしたこと以外は、実施例1
と同様にポリエステルマルチフィラメントを得、織物サ
ンプルを作成した。
【0060】得られたポリエステルマルチフィラメント
の糸質を表1に示した。
【0061】ポリエステルマルチフィラメントの長さ方
向の太さムラはU値で12%であり、かつ4.0%以上
の太さ変動ピーク数が20個/m(糸長)であった。4
0%伸長点応力の標準偏差は0.5g/d、破断伸度の
標準偏差は12%でありバラツキの大きいものであっ
た。また織物の風合が粗硬であり、染色により周期長の
長い濃淡差が発現しており、霜降調に欠けるものであっ
た。さらに表1に示したように染色堅牢度は洗濯堅牢
度、耐光堅牢度がいずれも2級であり、染色堅牢性が劣
り、製品としての品位に劣るものであった。
【0062】
【表1】 実施例2 固有粘度0.63であるポリエチレンテレフタレートを
図2の直接紡糸延伸装置で紡糸温度290℃で紡糸速度
3000m/分、延伸倍率1.3倍とし、表2に示した
条件で85デニール、48フィラメントのポリエステル
マルチフィラメントを得た。得られたポリエステルマル
チフィラメントの糸質を表2に示した。ポリエステルマ
ルチフィラメントの長さ方向の太さムラはU値で4%で
あり、かつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が17個/
m(糸長)であった。また、40%伸長点応力の標準偏
差は0.2g/d、破断伸度の標準偏差は6%と小さい
ものであった。さらに、乾熱収縮率も3%と小さいもの
であった。
【0063】次に、このポリエステルマルチフィラメン
トを織密度90×75本/インチで平織物に製織し、常
法により精練、180℃テンターで生機セットし、分散
染料による染色、仕上げセットを施し、織物サンプルを
作成した。該織物サンプルの染色堅牢度を表2に示し
た。織物サンプルは、織物表面に微細な凹凸があり、こ
のためソフトでドライ感、サラサラ感に富んだ製品であ
った。さらに染色により周期長の短い霜降調の濃淡差が
発現しており、表面凹凸との相乗効果でスパン調の自然
な斑感が得られた。この織物サンプルの染色堅牢度は洗
濯堅牢度、耐光堅牢度のいずれも5級であり良好な染色
堅牢性が得られた。
【0064】比較例5 流体旋回ノズルを使用しなかったこと以外は、実施例2
と同様にポリエステルマルチフィラメントを得、織物サ
ンプルを作成した。
【0065】得られたポリエステルマルチフィラメント
の糸質は表2に示すように、ポリエステルマルチフィラ
メントの長さ方向の太さムラはU値で22%であり、か
つ4.0%以上の太さ変動ピーク数が8個/m(糸長)
であった。40%伸長点応力の標準偏差は0.4g/
d、破断伸度の標準偏差は14%であり、太細の周期長
が長く、バラツキの大きいものであった。このため織物
サンプルは、織物表面に凹凸があり、ドライ感が得られ
るものの、優雅なサラサラ感が得られなかった。また染
色により周期長の長い濃淡差が発現しており、さらに表
2に示したように染色堅牢度は洗濯堅牢度が3級、耐光
堅牢度が3〜4級であり、染色堅牢性が劣り、製品とし
ての品位に劣るものであった。
【0066】比較例6 延伸ローラ温度を非加熱(室温)にしたこと以外は、実
施例2と同様にポリエステルマルチフィラメントを得、
織物サンプルを作成した。
【0067】得られたポリエステルマルチフィラメント
の糸質を表2に示した。ポリエステルマルチフィラメン
トの長さ方向の太さムラはU値で25%であり、かつ
4.0%以上の太さ変動ピーク数が6個/m(糸長)で
あった。40%伸長点応力の標準偏差は0.5g/dで
あり、かつ破断伸度の標準偏差は17%であり極めてバ
ラツキの大きいものであった。また乾熱収縮率が75%
と高いものであり、このため織物サンプルは、織物表面
に大きな凹凸があり、ドライ感は得られるものの、優雅
なサラサラ感が得られなかった。また染色により周期長
の長い濃淡差が発現しており、さらに表2に示したよう
に染色堅牢度は洗濯堅牢度、耐光堅牢度がいずれも2級
であり、染色堅牢性が劣り、製品としての品位に劣るも
のであった。
【0068】
【表2】 実施例3 実施例1と同様の未延伸糸を用いて、図1の延伸装置
で、第1デリベリローラ(供給ローラ)3を非加熱(室
温)、第2デリベリローラ(延伸ローラ)5を150
℃、旋回ノズルのエアー圧力を3Kg/cm2 とし、延
伸倍率を1.3倍とし巻取速度800m/分でポリエス
テルマルチフィラメントを得た。該ポリエステルマルチ
フィラメントの糸質を表3に示した。ポリエステルマル
チフィラメントの長さ方向の太さムラはU値で2.5%
であり、かつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が20個
/m(糸長)であった。さらに40%伸長点応力の標準
偏差は0.2g/dであり小さいものであり、かつ破断
伸度の標準偏差は3%であり小さいものであった。また
乾熱収縮率が4%であった。
【0069】次に、ポリエステルマルチフィラメントを
織密度90×75本/インチで平織物に製織し、常法に
より精練、180℃テンターで生機セットし、分散染料
による染色、160℃テンターで仕上げセットを施し、
織物サンプルを作成した。該織物サンプルの染色堅牢度
を表3に示した。
【0070】得られた織物サンプルは、織物表面に微細
な凹凸があり、このためソフトでドライ感、サラサラ感
に富んだ製品であった。さらに染色により周期長の短い
霜降調の濃淡差が発現しており、表面凹凸との相乗効果
でスパン調の自然な斑感が得られた。この織物サンプル
の染色堅牢度は洗濯堅牢度、耐光堅牢度のいずれも5級
であり良好な染色堅牢性が得られた。
【0071】実施例4 延伸倍率を1.6倍としたこと以外は実施例3と同様に
ポリエステルマルチフィラメントを得、織物サンプルを
作成した。
【0072】延伸条件と得られたポリエステルマルチフ
ィラメントの糸質は表3に示すように、ポリエステルマ
ルチフィラメントの長さ方向の太さムラU値が1.7%
であり、かつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が11個
/m(糸長)であった。さらに40%伸長点応力の標準
偏差は0.1g/dであり小さいものであり、かつ破断
伸度の標準偏差は2%であり小さいものであった。また
160℃乾熱収縮率が8%であった。
【0073】このとき得られた織物サンプルは、織物表
面に微細な凹凸があり、このためソフトでドライ感、サ
ラサラ感に富んだ製品であった。さらに染色により周期
長の短い霜降調の微小な濃淡差が発現しており、表面凹
凸との相乗効果でスパン調の自然な斑感が得られた。こ
の織物サンプルの染色堅牢度は表3に示したように洗濯
堅牢度、耐光堅牢度のいずれも5級であり良好な染色堅
牢性が得られた。
【0074】比較例7 延伸倍率を1.8倍としたこと以外は実施例3と同様に
ポリエステルマルチフィラメントを得、織物サンプルを
作成した。
【0075】得られたポリエステルマルチフィラメント
の糸質を表3に示した。ポリエステルマルチフィラメン
トの長さ方向の太さムラはU値で0.5%と小さいもの
であり、かつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が0個/
m(糸長)であった。40%伸長点応力の標準偏差は破
断伸度が低いために測定不可能であった。また破断伸度
の標準偏差は2%であり極めてバラツキの小さいもので
あった。
【0076】また、表3に示したように織物サンプルの
染色堅牢度は洗濯堅牢度、耐光堅牢度がいずれも5級で
あったが、織物表面に凹凸感および染色による濃淡差が
極めて小さく、ドライ感、サラサラ感、および霜降調に
欠けるものであり、製品としての品位に劣るものであっ
た。
【0077】比較例8 比較例8は延伸倍率を1.0倍(実質的に延伸しない)
としたこと以外は実施例3と同様にポリエステルマルチ
フィラメントを得、織物サンプルを作成した。
【0078】得られたポリエステルマルチフィラメント
の糸質を表3に示した。ポリエステルマルチフィラメン
トの長さ方向の太さムラはU値で0.8%と小さいもの
であり、かつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が3個/
m(糸長)であった。40%伸長点応力の標準偏差は
0.1g/dであり、かつ破断伸度の標準偏差は2%で
あり極めてバラツキの小さいものであった。
【0079】また、織物サンプルの染色堅牢度は表3に
示したように洗濯堅牢度、耐光堅牢度がいずれも3級で
あった。比較例8の織物サンプルは、熱セット斑による
染色濃淡差は少なく、織物表面の凹凸も極めて小さいも
のであり、ドライ感、サラサラ感が得られなかった。
【0080】
【表3】
【0081】
【発明の効果】本発明の太細を有するポリエステルマル
チフィラメントは、製糸工程での安定性に優れ、染色に
より霜降調の濃淡コントラストと自然な斑感の発現が可
能で、布帛表面を微小な凹凸感を有するものとし、視覚
的、触感的にドライ感、サラサラ感のある素材となり、
染色堅牢性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、溶融紡糸後、いったん巻き取った未延
伸糸から、本発明の太細を有するポリエステルマルチフ
ィラメントを製造するために、好ましく使用される装置
の例である。
【図2】図2は、紡糸直接延伸によって本発明の太細を
有するポリエステルマルチフィラメントを製造するため
に、好ましく使用される装置の例である。
【符号の説明】
1、10:未延伸糸 2:フィードロー
ラ 7、14:太細糸 6:第3デリベリ
ローラ 4、12:流体旋回ノズル 8:紡糸口金 3、11:第1デリベリローラ 9:給油装置 5、13:第2デリベリローラ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】長さ方向にウースタノーマルU%値が1.
    5〜8.0%でかつ4.0%以上の太さ変動ピーク数が
    10個/m(糸長)以上である太さムラを有し、さらに
    試料長20cmでのストレス−ストレイン曲線で、40
    %伸長点応力の標準偏差が0.3g/d以下で、かつ破
    断伸度の標準偏差が10%以下であることを特徴とする
    太細を有するポリエステルマルチフィラメント。
  2. 【請求項2】複屈折率Δnが25×10-3〜50×10
    -3であるポリエステルマルチフィラメント未延伸糸を低
    倍率延伸して太細糸を製造するにあたって、供給ローラ
    と延伸ローラの間で仮撚し、1.05〜1.7倍に延伸
    し、100〜200℃で熱セットすることを特徴とする
    太細を有するポリエステルマルチフィラメントの製造方
    法。
  3. 【請求項3】供給ローラの表面温度が80℃以下である
    ことを特徴とする請求項2記載の太細を有するポリエス
    テルマルチフィラメントの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008231625A (ja) * 2007-03-22 2008-10-02 Teijin Fibers Ltd カチオン可染ポリエステル杢調意匠糸
CN101560715A (zh) * 2008-04-17 2009-10-21 东丽纤维研究所(中国)有限公司 一种加工丝及其制造方法和用途

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