JPH10271920A - 農業用マルチシート - Google Patents

農業用マルチシート

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JPH10271920A
JPH10271920A JP11498797A JP11498797A JPH10271920A JP H10271920 A JPH10271920 A JP H10271920A JP 11498797 A JP11498797 A JP 11498797A JP 11498797 A JP11498797 A JP 11498797A JP H10271920 A JPH10271920 A JP H10271920A
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sheet
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Yukio Maenishi
征雄 前西
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Abstract

(57)【要約】 【課題】野菜の栽培において、光合成に必要な可視光線
を透過しさらに、発芽直後の芽の低温障害を防止可能で
しかも、圃場からマルチシートの基材を除去せずにその
まま耕起する事が出来るマルチシートを提供する事を目
的とする。 【解決手段】木材パルプまたはその他の天然セルロース
繊維を原料とする紙からなる基材に、可視光線を透過す
る開孔部を設け、透明フィルム層によって該開孔部を覆
いかつ、透明フィルム層を基材に疑似接着させる事によ
って、透明フィルム層が容易にかつ完全に前記の基材か
ら剥離出来る事を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物の栽培におい
て、発芽を促進しかつ、発芽直後の芽の低温障害を防止
出来る、圃場の土壌を覆う様に敷設して用いる農業用マ
ルチシート(以後はマルチシートと称す)に関し、特に
透明フィルム層を基材から容易にかつ完全に剥離する事
で、圃場からマルチシートの基材を除去せずに耕起が出
来るマルチシートに関する。
【0002】
【従来の技術】近年の野菜栽培において、野菜の発芽条
件を整えたり、適正な生育環境を作り出すために、各種
のマルチシートが使用されている。しかし、それらのマ
ルチシートには色々な問題点があった。
【0003】例えば、圃場の土壌温度を上昇させ、植物
の発芽を促進させる透明ポリエチレンフィルム製のマル
チシートや、雑草の繁茂を抑制する黒色のポリエチレン
フィルム製のマルチシートは、極めて堅牢なため、土壌
菌、微生物および太陽光線に含まれる紫外線でも分解出
来ず、長期にわたり圃場に残留してしまうため、圃場に
放置する事ができず、耕起の前に、多大の労力をかけて
圃場から除去、回収しなければならないという問題点が
あった。
【0004】そこで、これらの問題点を解決するため
に、マルチシートの基材に生分解性フィルムを使用する
事が提案された。しかし、生分解性フィルムといえど
も、完全に分解する事は容易ではなく、冬季に敷設した
場合等は、生分解性フィルムが充分に分解されないた
め、生分解性フィルムごと耕起すると、フィルムが紐状
に撚れて、耕うん機の回転部分に絡みつき、耕うん機を
破損させるという事故が発生した。そればかりか、一度
紐状に撚れた生分解性フィルムは分解が非常に困難にな
るため、圃場にいつまでも紐状のまま残り、農作業の邪
魔になるばかりか農作業上非常に危険であった。生分解
性フィルムであっても、気象条件によっては、多大の労
力をかけて圃場から除去、回収しなければならないとい
う問題点があった。
【0005】近年、これらの問題を解決するために、紙
を用いたマルチシート(特開平6−62680号公報参
照、特開平6−62681号公報参照)、紙に生分解性
樹脂を施したマルチシート(特開平7−123876号
公報参照)等が提案された。しかし、上記した紙を用い
たマルチシートも、紙に生分解性樹脂を施したマルチシ
ートも、材質が不透明なため、植物が光合成を行うため
に不可欠な可視光線を遮断してしまい、植物の生育を阻
害するという大きな問題が生じた。
【0006】材質が不透明なマルチシートの場合、植物
に可視光線を供給するためにはマルチシートの基材に所
定の大きさの開孔部を設けて透光部分を形成しなければ
ならない。しかし、マルチシートに開孔部を設けると、
発芽直後の芽は外気と直接触れる事になり、抵抗力の乏
しい発芽直後の芽は、寒気や霜による低温障害を受けや
すいという難点があった。
【0007】例えば、低温感応性植物の一種である大根
などは、発芽から2週間位の間に5℃以下の寒気にある
一定時間以上触れると低温障害を起こすと言われてい
る。発芽直後に低温障害を起こした大根は、外見からは
見分けが困難で、数カ月後の収穫まじかの頃に抽台にな
った事で、発芽直後に低温障害を起こした事が判明す
る。抽台した大根は、中央に固い芯が存在し、商品価値
が著しく低下する。早春の播種の場合、発芽直後の突然
の寒気や季節外れの霜によって、圃場の大根が全て抽台
してしまう事もまれな事ではなかった。
【0008】そこで、上記の問題点を解決するために、
マルチシートの基材に設けらた開孔部に、接着させる保
護フィルム(特開平7−111834号公報参照)、透
明フィルムを接着したマルチシート(実開平7−393
79号公報参照)が提案された。しかし、上記の2方法
は、植物が生長すると、透明フィルムをミシン目から切
断て除去するため、マルチシートの基材に、接着剤と接
着されたままの透明フィルムが残される事になる。接着
剤と接着されたままの透明フィルムは自然に分解される
事はないので、やはりマルチシートの基材を圃場から除
去、回収しなければならないという問題点が残った。
【0009】つまり、発芽直後の芽に可視光線を供給し
つつ、低温障害や霜害から保護し、マルチシートを圃場
から除去、回収せずに、耕起可能なマルチシートは、農
業従事者の間で長い間切望されてきたが、未だかつて存
在しなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本件発明はマ
ルチシートにおける上記の問題点を一挙に解決するため
になされたもので、発芽の促進、雑草の繁茂の抑制に加
え、発芽直後の芽に光合成に必要な可視光線を供給しさ
らに、低温障害を防止しつつ、マルチシートの基材から
透明フィルム層を容易にかつ完全に剥離する事で、圃場
からマルチシートの基材を除去せずにそのまま耕起する
事が出来るマルチシートを提供する事を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明(請求項1)は、開孔部が設けられた紙か
らなる基材と、該基材の上面に形成された透明フィルム
層とを具備するマルチシートにおいて、透明フィルム層
は、開孔部を覆うとともに、幅方向の端部が基材の幅方
向の端部よりマルチシートの中央側になるように形成さ
れており、透明フィルム層の全面あるいは一部分が、基
材の上面に疑似接着されている事を特徴とするマルチシ
ートを提供する。
【0012】また、本発明(請求項2)は、請求項1の
マルチシートにおいて、透明フィルム層と基材の間の全
面あるいは一部分に接着層を設けた事を特徴とするマル
チシートを提供する。
【0013】また、本発明(請求項3)は、請求項2の
マルチシートにおいて、接着層と基材の間の全面あるい
は一部分に接着力調整層を設けた事を特徴とするマルチ
シートを提供する。
【0014】また、本発明(請求項4)は、請求項1の
マルチシートにおいて、透明フィルム層と基材の間の全
面あるいは一部分に接着阻害層を設けた事を特徴とする
マルチシートを提供する。
【0015】また、本発明(請求項5)は、請求項1の
マルチシートにおいて、透明フィルム層と基材の間の全
面あるいは一部分に貼着層を設けかつ、透明フィルム層
と該貼着層の間の全面あるいは一部分に剥離層を設けた
事を特徴とするマルチシートを提供する。
【0016】また、本発明(請求項6)は、請求項1、
2、3、4または5のマルチシートにおいて、透明フィ
ルム層と基材との接着強さが3〜500gf/25mm
である事を特徴とするマルチシートを提供する。
【0017】また、本発明(請求項7)は、請求項1、
2、3、4、5または6のマルチシートにおいて、透明
フィルム層が基材に縫着、鋲着または融着されている事
を特徴とするマルチシートを提供する。
【0018】また、本発明(請求項8)は、請求項1、
2、3、4、5、6または7のマルチシートにおいて、
透明フィルム層の、380〜780nmの波長の太陽光
線の透過率が、25%以上である事を特徴とするマルチ
シートを提供する。
【0019】また、本発明(請求項9)は、請求項1、
2、3、4、5、6、7または8のマルチシートにおい
て、透明フィルム層の開孔部を覆っている部分には、1
つまたは、2つ以上の交差する切れ目もしくはミシン目
が施されかつ、切れ目もしくはミシン目の交差する部分
が、透明フィルム層の自重で著しく下に垂れ下がらない
事を特徴とするマルチシートを提供する。
【0020】また、本発明(請求項10)は、請求項
1、2、3、4、5、6、7、8または9のマルチシー
トにおいて、基材の、380〜780nmの波長の太陽
光線の透過率が、25%以下であることを特徴とするマ
ルチシートを提供する。
【0021】また、本発明(請求項11)は、請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のマル
チシートにおいて、基材の、350〜2100nmの波
長の太陽光線の反射率が、50%以下である事を特徴と
するマルチシートを提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明において、マルチシートの基
材は、木材パルプまたはその他の天然セルロース繊維を
原料とする紙からなり、土壌菌または微生物等によって
分解可能である物質からなっている。例えば、上質紙、
中質紙、更、クレイコート紙、グラビア紙、純白ロール
紙、クラフト紙、模造紙、薄葉紙、加工紙、ライナー
紙、和紙およびクレープ紙等を用いる事が出来、紙の厚
さは30〜500μm位が好ましい。分解可能な紙なら
ば基材として使用出来、上記の紙の種類は本発明を何ら
限定するものではないが、圃場の畝に敷設する際、畝の
土壌表面に馴染み易くするために柔軟性に富んだクレー
プ紙等が好適である。逆に、土壌菌または微生物等によ
って分解されないフィルム等を貼り合わせたフィルムラ
ミネート紙や、土壌菌または微生物等によって分解され
ない樹脂等を塗布または含浸させたコート紙および含浸
紙は不向きである。
【0023】マルチシートの基材に設けられた開孔部
は、基材の幅方向のほぼ中央付近に基材の長手方向にそ
って列状に形成されており、該開孔部の大きさ、形状お
よび間隔は、栽培植物の種類、播種の時期、圃場の状態
等によって設定される。また、農作業を効率的に行うた
めに、基材の長手方向に沿った開孔部の列を複数形成す
る事も可能である。
【0024】マルチシートの基材上面に形成されている
透明フィルム層は、基材に設けられた開孔部を覆いさら
に、幅方向の端部が基材の幅方向の端部よりマルチシー
トの中央側になるように形成されている。例えば、透明
フィルム層としては、ポリエステル系、ポリプロピレン
系、ポリエチレン系、塩化ビニル系、セロハン系、アセ
テート系、ポリスチレン系、ポリカーボネイト系およ
び、ポリアミド系等のフィルムを用いる事が出来、透明
フィルム層の厚さは10〜500μm位が望ましい。3
80〜780nmの波長の太陽光線(以後は可視光線と
称す)を透過するフィルムなら該透明フィルム層として
使用出来、上記のフィルムの種類は本発明を何ら限定す
るものではない。
【0025】透明フィルム層あるいは基材を著しく破損
せずに、透明フィルム層を基材から剥離するためには、
透明フィルム層および基材の破壊強さよりも、透明フィ
ルム層と基材との間の接着強さを軽微に設定して剥離し
易くするいわゆる疑似接着にする事が望ましい。ただ
し、透明フィルム層を基材から剥離した際、透明フィル
ム層の若干の伸びまたはカール、マルチシートの形状を
維持する事に全く支障が無い程度の基材表面の軽微な破
損および限定された場所に発生した傷や破れは、上記の
著しい破損とは見なさない。ここでは、透明フィルム層
および基材の破壊強さとは、層間剥離強さ、引き裂き強
さおよび引っ張り強さ等を意味する。
【0026】透明フィルム層と基材を疑似接着する方法
として、図1に示す構成の様に、熱により溶融された樹
脂を押し出し機によって基材表面に直接展着しながら急
激に冷却する事によって、基材の上面に透明フィルム層
を形成する押し出し法や、溶剤により溶解された樹脂を
基材表面に直接塗布後乾燥して、基材の上面に透明フィ
ルム層を形成する樹脂塗工法等が選択出来る。押し出し
法の場合、樹脂の種類、樹脂の溶融温度、冷却温度、基
材表面の粗さ等によって疑似接着力を制御する事が出来
る。樹脂塗工法の場合、樹脂の種類、溶剤の種類、乾燥
温度、基材表面の粗さ等によって疑似接着力を制御する
事が出来る。押し出し法の場合も樹脂塗工法の場合も、
透明フィルム層を疑似接着する際、透明フィルム層を施
す面の裏面に当たる基材表面に、透明フィルム層とは接
着しずらい工程紙(図示せず)を用いる事が望ましい。
例えば、工程紙としては、シリコーン樹脂が施された剥
離ライナー等が好適であり、繰り返し使用可能である。
【0027】また、透明フィルム層と基材との疑似接着
力が不足している場合や、疑似接着力が不安定の場合
に、図2が示すように、透明フィルム層と基材の間に接
着層を設ける事でより安定した疑似接着力を得る事が出
来る。前記の押し出し法の場合、透明フィルム層を形成
するための樹脂と基材との間に、接着層となる透明性樹
脂を熱溶融して、透明フィルム層と同時に押し出し基材
に展着させる事により、透明フィルム層と基材の間に接
着層を設ける事が出来る。接着層となる樹脂は、透明フ
ィルム層を形成するための樹脂より低融点の樹脂で、厚
さは5〜50μm位が望ましい。例えば、透明フィルム
層にポリアミド系フィルムを用いる場合は、ポリエチレ
ン系樹脂を接着層として用いる。また、透明フィルム層
に既に成型済の透明フィルムを用いた場合も該透明フィ
ルムと基材の間に、押し出し機によって熱溶融させた樹
脂を施し、接着層とし、疑似接着する方法を用いる事が
出来る。また、接着層となる樹脂を押し出し方向と平行
にかつ、ストライプ状に押し出す事で、接着層を部分的
に設ける事が出来、疑似接着力を調整する事が可能であ
る。
【0028】また、既に成型済の透明フィルムを基材に
疑似接着する場合には、透明フィルム表面にコーティン
グ法等によって粘着剤または接着剤を塗布して接着層と
し、基材と疑似接着する貼り合わせ法を用いる事も有効
である。粘着剤としては、主成分がアクリル系、ウレタ
ン系、ゴム系、デンプン系、または酢酸ビニル系等の粘
着剤を用いる事が出来、乾燥膜厚は、5〜50μm位が
望ましい。また、接着剤としては、主成分がエポキシ
系、フェノール系、メラミン系、ウレタン系、ポリエス
ル系、アクリル系またはビニール系等の接着剤を用いる
事が出来、硬化膜厚は、0.1〜10μm位が望まし
い。その際、粘着剤または接着剤にシリカ粒子、シリコ
ーンパウダー、シリコーンオイルまたはイソシア系硬化
剤等を適量添加して疑似接着力を調整する事が出来る。
シリカ粒子、シリコーンパウダー、シリコーンオイルま
たはイソシア系硬化剤等の添加量は、透明フィルム、基
材および接着剤や粘着剤の種類によっても異なるが、接
着剤や粘着剤のコーティング後の乾燥重量または硬化重
量に対し重量比0.1〜50%が適量である。また、貼
り合わせ法の場合も、押し出し法の場合と同様に、接着
層を透明フィルムと基材の間に、部分的に設ける事で、
疑似接着力を調整する事が出来る。
【0029】図3が示す様に、接着層と基材の間に接着
力調整層を設ける事で疑似接着力をさらに微調整する事
が可能となり、より安定した疑似接着力を得る事が出来
る。前記の押し出し法の場合や前記の樹脂塗工法の場合
には、透明フィルム層を疑似接着させる基材の表面に油
脂類、シリカ粒子の分散液、シリコーンパウダーの分散
液、シリコーンオイルまたはシリコーン樹脂等を塗布す
る事で接着力調整層を設ける事が出来る。油脂類の塗布
量は、1〜5g/m位、シリカ粒子、シリコーンパウ
ダー、シリコーンオイルまたはシリコーン樹脂の場合は
乾燥重量で0.1〜5g/mが適量である。また、既
に成型済の透明フィルムを用い、貼り合わせ法にて疑似
接着する場合も、押し出し法や樹脂塗工法の場合と同様
に、基材表面に油脂類、シリカ粒子の分散液、シリコー
ンパウダーの分散液、シリコーンオイルまたはシリコー
ン樹脂等を塗布する事で、接着力調整層を設ける事が出
来る。この場合、透明フィルム層を剥離した後、基材表
面に接着力調整層が残留するため、接着力調整層には、
圃場を汚染しにくいシリカ粒子やシロキサン結合のシリ
コーン樹脂が好適である。また、接着力調整層を接着層
と基材の間に部分的に設ける事で、疑似接着力の微調整
と材料費の削減が出来る。
【0030】また、図4が示す構成の様に、透明フィル
ム層と基材の間に接着阻害層を設ける方法は、前記の押
し出し法や樹脂塗工法において、最も簡便に疑似接着力
を調整する方法である。前記の押し出し法や樹脂塗工法
において、透明フィルム層と基材との疑似接着力は、溶
融または溶解した樹脂が、基材表面の凹凸や基材の紙の
繊維間の隙間に流入した後、冷却または溶剤が乾燥して
固化した事による投錨効果に起因するところが大きい。
よって、基材の表面に目止効果を有する接着阻害層を設
ける事で、表面の凹凸や紙繊維間の隙間を減少させる事
により疑似接着力を軽減させる事が出来る。目止効果を
有する接着阻害層を設ける方法として、クレイコート、
顔料インキの印刷またはシリカ粒子の分散液の塗布等が
簡便である。その他、基材表面に油脂類、シリコーンパ
ウダーの分散液、シリコーンオイルまたはシリコーン樹
脂等を塗布して接着阻害層を設ける事が出来る。シリコ
ーン樹脂はシロキサン結合のものを選択する事で圃場を
汚染しずらい。
【0031】また、図5が示す様に、既に成型された透
明フィルムと基材の間に貼着層を設けかつ、透明フィル
ムと該貼着層との間に剥離層を設ける事で疑似接着力を
調整する事が出来る。貼着層には前記の粘着剤または接
着剤等から選定する事が出来る。剥離層にはセルロース
系、シリコン系、ウレタン系、酢酸ビニル系の樹脂また
はそれらの樹脂の合成物が使用出来る。剥離層の乾燥後
の塗布膜厚は1.0〜10.0μm位が好ましい。剥離
層は貼着層とは強固に接着されているが、透明フィルム
層とは軽微な力で接着されているため、透明フィルム層
は剥離層の界面から容易に剥離する事が出来る。ただ
し、上記構成のマルチシートの場合、透明フィルム層を
基材から剥離すると、剥離層と貼着層が基材上に残留す
るため、剥離層および貼着層には、圃場を汚染しずらい
物質を選択する事が好ましい。よって、剥離層には、セ
ルロース系かシロキサン結合のシリコーン系の樹脂が、
貼着層には、天然ゴム系かデンプン系の粘着剤等が好適
である。
【0032】因みに、透明フィルム層と基材との接着強
さは、3〜500gf/25mm位が農作業を行う上で
都合がよい。接着強さが3gf/25mmを下まわる
と、マルチシートの敷設作業中に透明フィルムが剥離す
る恐れがある。透明フィルム層を基材から剥離する際、
透明フィルム層および基材を著しく破損せずに透明フィ
ルム層を剥離出来た場合も、接着強さが500gf/2
5mmを超えると、マルチシートの基材自体が土壌から
引き抜かれる恐れがある。
【0033】ここで、接着強さの測定方法を述べる。測
定環境は標準状態とし、25mm幅の短冊状に張り合わ
せられたサンプルを、180度の方向に、300mm/
分の速度で剥離した場合の荷重を測定した。
【0034】既に成型された透明フィルムと基材を疑似
接着する方法として、ステープルやピン等で仮止めする
鋲着法、糸で部分的に縫合する縫着法、加熱したローラ
ーや押し鏝によって、透明フィルムを溶融させて基材に
貼り付ける融着法等が選択出来る。上記の鋲着法、縫着
法、融着法等を用いた場合、透明フィルムを基材から剥
離する際、透明フィルムあるいは基材が若干破損する
が、透明フィルムと基材の破壊強さを考慮して部分的に
鋲着、縫着、融着する事で透明フィルムと基材の著しい
破損は容易に回避可能である。例えば、ステープルによ
って、基材と透明フィルムを鋲着した実験では、ステー
プルを透明フィルムの幅方向の両端に、マルチシートの
長手方向に約20cmの間隔でかつ、ステープルの針の
向きがマルチシートの長手方向と直角になる様に施す
と、透明フィルムを剥離する際、基材の破損が非常に軽
微であった。また、上記の鋲着法、縫着法、融着法等
は、樹脂を塗布して疑似接着力を制御する方法と全く異
なり、経時で疑似接着力が変化しないため、前記の押し
出し法、前記の樹脂塗工法および前記の貼り合わせ法を
用いた疑似接着法と同時に使用すると非常に安定した物
性が得られる。
【0035】植物が発芽するまでは土壌温度が重要な要
素であるが、発芽後は芽の周囲の気温が生育状態を大き
く左右する。発芽したばかりの芽は周囲の環境に影響さ
れ易く、特に早春や晩秋に発芽した芽は低温障害や霜害
を受けやすい。例えば、麦類は発芽から、穂先の長さが
10cm位までの幼穂形成期の間が低温障害や霜害を受
け易いし、桑や茶などは種子の時より発芽以後低温に対
する抵抗力が低下して3〜4葉の展開期の頃が最も低温
障害や霜害を受けやすく、5〜6葉の展開期以後は寒さ
への抵抗力が増加する。つまり、低温障害を防止するた
めには、発芽直後の芽を1〜2週間の間寒気や霜から守
ってやる事が非常に有効である。
【0036】そこで、発芽直後の芽が寒気や霜に直接触
れない様に、本発明のマルチシート基材に施され開孔部
を、透明フィルム層で覆った。開孔部の直下の圃場の土
壌には、植物が発芽後1〜2週間で伸長する長さより若
干深い播種用の凹部や凹溝を構築し、その最深部に播種
する。播種後、数日で発芽した芽は、マルチシートの開
孔部を覆っている透明フィルム層と、圃場の土壌に包囲
され、低温障害及びに霜害から保護されながら、寒気に
対する抵抗力が増大するまでの1〜2週間の間生育され
る。
【0037】透明フィルム層は太陽光を透過させるた
め、太陽の放射エネルギーは開孔部下部の土壌表面に到
達し、一時的に土壌に吸収されるが、2100〜100
00nmの波長のふく射熱となって、再び放射され透明
フィルム層と土壌に包囲された空間の空気の熱エネルギ
ー量を増大させる。かつ、透明フィルム層と土壌に包囲
された空間の空気は、外気と遮断されているため、風に
よる熱の乱流拡散がなく、透明フィルム層と土壌に包囲
された空間の空気から、大気に散逸する熱エネルギー量
は、太陽光から供給される熱エネルギー量より少ないた
め、透明フィルム層と土壌に包囲された空間の空気の温
度は上昇し、外気より高温になる。加えて、夜間及び早
朝は透明フィルム層によって、霜害も回避する事が可能
である。
【0038】ここで、透明フィルム層の可視光線透過率
の違いによる、透明フィルム層と土壌に包囲された空間
の空気温度の実測データのグラフを図6に記す。図6中
の〇の記号は透明フィルム層の可視光線透過率が85%
場合、△の記号は25%の場合、◇の記号は10%の場
合の透明フィルム層と土壌に包囲された空間の空気温度
を、×の記号は気温を表す。実測は、平成8年4月23
日宮城県加美郡小野田町の圃場にて実施した。圃場にお
ける実測当日の気象は、晴天、南西の弱風、最高気温1
2℃、最低気温2℃であった。透明フィルム層と土壌に
包囲された空間の平均温度は、外気の平均気温より3〜
10℃上昇した。
【0039】この透明フィルム層は、植物の育成に不可
欠な可視光線を25%以上透過するため、植物の光合成
を停止させる事はない。植物の光合成に必要な可視光線
の量は、植物の生育程度、気温、二酸化炭素濃度によっ
て異なるが、発芽から1〜2週間位の期間の植物の生育
程度ならば可視光線透過率が25%以上であれば、特に
問題は無い。
【0040】また、透明フィルム層の可視光線透過率の
違いによる、発芽直後の芽の生育状態を実測したデータ
のグラフを図7に記す。図7中の〇の記号は透明フィル
ムの可視光線透過率が85%場合、△の記号は25%の
場合、◇の記号は10%の場合、×の記号はマルチシー
トを使用していない場合の芽の生育状態を表す。発芽か
ら2週間位の期間は、可視光線の透過率が25%以上あ
れば、生育に問題が無い事が確かめられた。実測は、平
成8年4月下旬か5月中旬までの約2週間、宮城県加美
郡小野田町の圃場にて実施した。上記試験に用いた作物
は、低温感応性植物である大根を選択した。
【0041】発芽した芽は、開孔部を覆っている透明フ
ィルム層を透過した可視光線によって光合成を行いつ
つ、透明フィルム層と、圃場の土壌に包囲され寒気や霜
から保護されながら、低温障害に対する抵抗力が増大す
るまでの1〜2週間の間生育される。芽が、低温障害に
対する抵抗力が増大し、背丈が透明フィルム層に接触間
近かの頃、本発明のマルチシートの基材から透明フィル
ム層を分離及び除去する事が望ましい。
【0042】本発明のマルチシートの開孔部を覆ってい
る透明フィルム層は、マルチシートの基材に疑似接着さ
れているため、マルチシートの長手方向に沿って容易に
剥離しながら巻き取る事が出来るので、非常に簡便にか
つ短時間でマルチシートの基材から分離および除去する
事が可能となった。透明フィルム層をマルチシートの基
材から分離および除去した後は、植物は基材に施された
開孔部から自由に伸長して行く事が出来る。圃場に残さ
れたマルチシートの基材は、主成分が紙であるため、収
穫後マルチシートを圃場から掘り起こしながら除去及び
回収せずに、マルチシートごと耕起する事が可能であ
る。
【0043】さらに、マルチシートの基材上面に形成さ
れている透明フィルム層のうち、開孔部を覆っている部
分には、切れ目もしくはミシン目を設けた事で、マルチ
シートを圃場に敷設した後に播種を行う事が可能になっ
た。例えば、圃場に敷設した後に、切れ目もしくはミシ
ン目の上部から圧力をを加え、透明フィルム層に施され
たミシン目を切断し、播種する事ができる。播種用の穴
の最深部は土壌が圧縮されているため、その中央部に播
種しすれば浸透圧の原理により、土壌の水分の集中を促
し、発芽に有利である。播種した種子は少量の土で被覆
することが望ましい。切れ目もしくはミシン目の上部か
ら加えられた圧力を開放すれば、透明フィルム層は自ら
の弾性力により復元し、再び開孔部を覆う事が出来る。
【0044】もし、透明フィルムに切れ目もしくはミシ
ン目が無ければ、透明フィルム層を開孔部毎に切り裂き
ながら播種するか、播種の後にマルチシートを圃場に敷
設せざるおえない。前者の場合、切れ目が自らの弾性力
により復元し、再び開孔部を覆う事が可能なフィルム層
は破断強度も強く、フィルム層を切り裂きながら播種す
る事は大変労力が必要である。後者の場合、播種の後に
マルチシートを圃場に敷設すると、播種した種子の位置
とマルチシートの開孔部の位置を完全に合わせる事は非
常に困難である。
【0045】加えて、透明フィルム層に施された切れ目
もしくはミシン目は、透明フィルム層と圃場の土壌に包
囲された空間の温度が上昇した際、土壌から発生する水
蒸気によって透明フィルム層の内側がくもって太陽光線
の透過率が低下しない様に、適度なガス交換を行う事が
できる。
【0046】透明フィルム層のに施された切れ目もしく
はミシン目の大きさ、形、数は栽培する植物の種類や播
種の方法により開孔部の大きさが異なるため、一概に規
定出来るものではない。例えば、大根を栽培する場合、
開孔部の直径は約10〜15cm位の円形に設計し、透
明フィルム層の切れ目もしくはミシン目の長さは、開孔
部の直径より若干短く設計して、切れ目もしくはミシン
目が、中央で交差して×印になる様に配置する事が好ま
しい。ただし、上記の例は本発明において、開孔部の形
や大きさ、切れ目もしくはミシン目の長さ、数、および
配置を何ら限定するものでは無い。
【0047】ただし、本発明のマルチシートの開孔部を
覆っている透明フィルム層は、透明フィルム層の切れ目
の交差する部分が、透明フィルム層の自重で下に垂れ下
がらない程度に適度な厚さを有する事が望ましい。も
し、透明フィルム層の切れ目の交差する部分が、著しく
下に垂れ下がった場合は、透明フィルム層と土壌に包囲
された空間の空気と、外気との対流が活発になり、透明
フィルム層と土壌に包囲された空間の温度上昇の支障と
なる。
【0048】本発明のマルチシートは、基材の可視光線
透過率を25%以下にする事で、マルチシートの基材下
部からの雑草の繁茂を抑制出来る。一般的に、植物は発
芽直後は、光合成に大量の可視光線を必要としないた
め、マルチシートの基材下部の雑草も一時的に発芽及び
生長する種類もあるが、基材の可視光線透過率が25%
以下だから、生長につれて光合性に必要な可視光線が不
足して、経時的に生長が阻害され、最終的には生長が停
止するため雑草の繁茂を抑制する事が出来る。可視光線
透過率が25%を超える基材の場合は、可視光線遮断層
を施す。可視光線遮断層を施す方法は、印刷法等により
基材表面に着色層またはコート層を施こす事が簡便であ
る。ここで、着色剤、コート剤およびそれらを施す方法
は本発明を何ら制限するものでは無いが、着色剤として
は印刷インキや、カーボンブラックを分散させた水性エ
マルジョン液等、コート剤としてはクレイコート剤等を
用いる事が出来る。表1にマルチシートの基材の可視光
線透過率と雑草の繁茂状態の実測データを記す。表1中
の×の記号は雑草が発芽していない状態、△の記号は発
芽しても生育が停滞している状態、□の記号は生育途中
の状態、〇の記号は雑草が完全に繁茂している状態を表
す。実測は、平成8年4月25日から平成8年7月25
日までの3ケ月の期間宮城県加美郡小野田町の圃場にて
実施した。可視光線の透過率が25%以下ならば、充分
に雑草の繁茂を防止出来る事を圃場にて確認した。
【0049】
【表1】
【0050】本発明のマルチシートは、基材における3
50〜2100nmの波長の太陽光線の反射率を50%
以下にする事で、圃場の土壌温度を上昇させる効果を得
た。実際、地上に到達する太陽光線は、ほとんどが35
0〜2100nmの波長の光であるので、土壌の温度を
上昇させるために、上記の波長の光に対する、基材の反
射率を限定した。通常の黒色土壌の太陽光線の反射率は
10〜20%位であるが、マルチシートを土壌に敷設す
る事で、風による土壌表面の熱エネルギーの乱流拡散が
減少するため、マルチシートの基材の太陽光線の反射率
は50%以下ならば、土壌温度の上昇に効果があった。
基材の太陽光線反射率を50%以下にする方法は、印刷
法等により基材表面に着色層を施す方法が簡便である。
着色剤としては、カーボンブラックを分散させた水性エ
マルジョン液等が使用出来る。ここで、着色剤および着
色方法は本発明を何ら制限するものでは無い。マルチシ
ートの基材の太陽光線反射率の違いによる、地中3cm
の土壌温度の実測データのグラフを図8に記す。図8中
の○の記号は基材の太陽光線反射率が5%の場合、□の
記号は50%の場合、◇の記号は80%の場合、×の記
号はマルチシートを使用していない場合を表す。実測
は、平成8年4月23日宮城県加美郡小野田町の圃場に
て実施した。圃場における実測当日の気象は、晴天、南
西の弱風、最高気温12℃、最低気温2℃であった。
【0051】
【実施例】以下に本発明の実施例を具体的に説明する。
基材として、純白ロール紙の白夜(商品名、王子製紙株
式会社製)の65g/mを選択して、基材幅は約14
00mmとした。白夜の可視光線透過率は25%以下で
あるが、太陽光線の反射率を低減するため、カーボンブ
ラック水性エマルジョン液を用い、印刷法にて黒色に着
色して、太陽光線の反射率を50%以下に設定した。カ
ーボンブラック水性エマルジョン液は、DCブラック7
100(商品名、大日精化工業株式会社製)を用い、乾
燥塗布量を0.5〜1.0g/mになる様に塗布し
た。
【0052】次に、黒色に着色された基材に開孔部を施
した。開孔部は直径12cmの円形とし、マルチシート
の長手方向に沿って列状に2列設け、長手方向に開孔部
の中心の間隔300mm、幅方向に開孔部の中心の間隔
390mmとした。
【0053】次に、開孔部を覆う透明フィルム層とし
て、ポリエチレンテレフタレートフィル(以後はPET
と称す)を選択した。PETは100μmの厚さのルミ
ラー(商品名、東レ株式会社製)のSタイプとした。前
記PETは透明性が良好でかつ、こしが有るためミシン
目の交差する部分が自重で垂れ下がる事が無いので好適
である。前記PETは可視光線の透過率が約85%であ
り、これをマルチシートの基材上面に疑似接着した物を
実施例1とした。また、黒色に着色して可視光線の透過
率を約25%に設定したPETを、マルチシートの基材
上面に疑似接着した物を実施例2とした。PETへの着
色は、印刷法を用い、ウレタン系のインクであるラミス
ター(商品名、東洋インキ製造株式会社製)の黒色イン
クを乾燥塗布量0.5〜1.0g/mになる様に塗布
した。
【0054】次に、PETを約200mmの幅にスリッ
トし、基材に施された開孔部をマルチシートの長手方向
に連続して1列毎に覆いかつ疑似接着した。マルチシー
トの基材とPETの間に部分的に接着層を設けかつ、該
接着層と基材の間に接着力調整層を設けて疑似接着し
た。具体的には、200mm幅のPETの幅方向の両端
部に、10mmの幅で、マルチシートの長手方向に連続
して、溶剤型アクリル系粘着剤を乾燥塗布量が15〜2
0g/mになる様に塗布し、80℃で1分間乾燥し
た。かつ、基材表面の上記の粘着剤と接する部分に、2
0mmの幅で、マルチシートの長手方向に連続して、シ
リコーン樹脂を乾燥塗布量が0.8〜1.0g/m
なる様に塗布し、120℃で30秒間硬化させた。PE
T表面の粘着剤と、基材表面のシリコーン樹脂面が接触
する様に合わせて適度な圧力を加えて疑似接着した。基
材の表面に塗布したシリコーン樹脂の幅を粘着剤の幅よ
り広く設定したのはPETと基材を貼り合わせる際の、
幅方向のずれを考慮したためである。粘着剤はオリバイ
ンBPS5127(商品名、東洋インキ製造株式会社
製)を選択した。シリコーン樹脂は、基材表面に残留す
るから、圃場を汚染しないために、シロキサン結合のシ
リコーン樹脂が望ましいので、KS778(商品名、信
越化学工業株式会社製)を選択した。シリコーン樹脂の
触媒としてはPL−8(商品名、信越化学工業株式会社
製)を、KS778を100重量部に対し1重量部添加
した。基材表面は目止塗工やアンカー塗工を行っていな
いため、シリコーン樹脂が基材の紙の繊維間へしみ込
み、剥離が重くなる傾向がみられ、PETと基材の接着
強さを実測したら約20〜150g/25mm位になっ
た。
【0055】次に、PETの開孔部を覆っている部分に
切れ目もしくはミシン目を施した。切れ目もしくはミシ
ン目は長さ10cmとし、中央で交差して×印になる様
に2本配置した。ミシン目は4.5mm切り込み、0.
5mm切り込み無しの5.0mmピッチとした。切れ目
もしくはミシン目の両端部に、直径3mm位の孔を穿設
して、切れ目の余分な伝播を防止した。本発明の実施例
のマルチシートを圃場の畝に敷設後、透明フィルム層を
剥離する状況を図9に示す。
【0056】
【発明の効果】本発明のマルチシートを圃場に敷設して
効果の確認を行った。効果の確認は宮城県加美郡小野田
町の圃場で行った。栽培植物は大根とし、銘柄は喜太一
(商品名、雪印種苗株式会社)とした。本発明のマルチ
シートの圃場への敷設作業は平成8年4月中旬に行い、
マルチシート端部を約10〜20cm土壌に埋設した。
敷設後に、開孔部を覆っているPETに施されている切
れ目もしくはミシン目の上部から圧力を加え、ミシン目
を切断し、播種用の凹部を構築した。上記の方法を用
い、播種用の土壌の凹部は直径10cm、深さ10cm
として、播種は凹部の最下部の中央に行い、種子の上に
少量の土を被せた。切れ目もしくはミシン目の上部から
加えられた圧力を開放すると、PETは自らの弾性力に
より復元し、再び開孔部を覆った。播種用の凹部1つ当
たり、1粒づつ播種し、4月末〜5月末までに3回に分
けて播種した。また、同一圃場内に対照区として、本発
明のマルチシートを敷設しない畝を設け、本発明のマル
チシートを敷設した畝と同日に同銘柄の種子を播種し
た。
【0057】本発明のマルチシートを敷設した畝は、播
種した数日後に発芽した。発芽後約2週間位で、芽が約
8〜9cmに成長したので、マルチシートの基材に疑似
接着させた透明フィルム層に用いたPETを基材から剥
離した。PETは、基材に対し約60〜170゜の剥離
角度で、マルチシートの長手方向に、巻取りながら容易
にかつ完全に基材から剥離出来た。播種からPETの剥
離までの期間、透明フィルムと土壌に包囲された空間の
平均温度は気温の平均温度より常に5〜10℃高温であ
った。
【0058】効果の確認の方法として、本発明のマルチ
シートを敷設しなかった対照区の大根の平均固体重量が
1.0Kgに成った時点を収穫時期と定め、その時点で
の抽台した固体数、雑草の繁茂状態および平均固体重量
によって評価した。マルチシートの種類および、播種日
の各水準毎に評価用固体数は100〜120とし、本発
明のマルチシートを敷設しなかった対照区のみ除草作業
を行った。本発明のマルチシートの効果の確認の試験結
果を表2に記す。
【0059】
【表2】
【0060】表2の試験結果から以下の効果が確認出来
た。本発明のマルチシートを用いた事により、発芽率の
向上、抽台の割合の激減、雑草の繁茂の抑制および固体
重量の増大に著しい効果があった。よって、収穫量が増
加する事による農業収入の増収、除草作業が不要になっ
た事での労力の軽減、除草剤を必要としない事による環
境衛生面での改善がなされた。対照区において、4月2
5日および5月14日に播種した大根はほとんど抽台し
てしまい、5月25日に播種したものしか商品とならな
かったの対し、本発明のマルチシートを使用した畝の大
根は、4月25日に播種したものも抽台せずに商品とな
った。つまり、本発明のマルチシートを用いた事で、約
20日早く収穫が出来た。また、基材は紙が主成分のた
め収穫後に圃場からマルチシートを掘り起こしながら除
去、回収せずに、マルチシートの基材ごと耕起が可能で
ある。収穫後、マルチシートの基材ごと耕起を行った
が、基材は小さな紙片となり土壌に埋没した。耕起した
4ケ月後、小さな紙片となったマルチシートの基材片
は、土壌と見分けが困難になる位に、土壌菌や微生物に
よって分解されていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマルチシートの、層構成の例を示す、
開孔部を含む幅方向の断面図。
【図2】本発明のマルチシートの、接着層を設けた層構
成の例を示す、開孔部を含む幅方向の断面図。
【図3】本発明のマルチシートの、接着層と接着力調整
層を設けた層構成の例を示す、開孔部を含む幅方向の断
面図。
【図4】本発明のマルチシートの、接着阻害層をもうけ
た層構成の例を示す、開孔部を含む幅方向の断面図。
【図5】本発明のマルチシートの、貼着層と剥離層を設
けた層構成の例を示す、開孔部を含む幅方向の断面図。
【図6】本発明のマルチシートにおける、透明フィルム
層の可視光線透過率の違いによる、透明フィルム層と土
壌に包囲された空間の温度上昇グラフ。
【図7】本発明のマルチシートにおける、透明フィルム
層の可視光線透過率の違いによる、発芽直後の芽の生育
状態のグラフ。
【図8】本発明のマルチシートにおける、基材の太陽光
線の反射率の違いによる、土壌の温度上昇グラフ。
【図9】本発明のマルチシートにおける、圃場の畝に敷
設後、透明フィルム層を剥離する状況の斜視図。
【符号の説明】
1・・・基材、2・・・透明フィルム層、3・・・開孔
部、4・・・畝、5・・・凹部、6・・・芽、7・・・
切れ目もしくはミシン目、8・・・接着層、9・・・接
着力調整層、10・・・接着阻害層、11・・・貼着
層、12・・剥離層。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】開孔部が設けられた紙からなる基材と、該
    基材の上面に形成された透明フィルム層とを具備する農
    業用マルチシートにおいて、透明フィルム層は、開孔部
    を覆うとともに、幅方向の端部が基材の幅方向の端部よ
    りマルチシートの中央側になるように形成されており、
    透明フィルム層の全面あるいは一部分が、基材の上面に
    疑似接着されている事を特徴とする農業用マルチシー
    ト。
  2. 【請求項2】前記の透明フィルム層と前記の基材の間の
    全面あるいは一部分に接着層を設けた事を特徴とする請
    求項1の農業用マルチシート。
  3. 【請求項3】前記の接着層と前記の基材の間の全面ある
    いは一部分に接着力調整層を設けた事を特徴とする請求
    項2の農業用マルチシート。
  4. 【請求項4】前記の透明フィルム層と前記の基材の間の
    全面あるいは一部分に接着阻害層を設けた事を特徴とす
    る請求項1の農業用マルチシート
  5. 【請求項5】前記の透明フィルム層と前記の基材の間の
    全面あるいは一部分に貼着層を設けかつ、前記の透明フ
    ィルム層と該貼着層の間の全面あるいは一部分に剥離層
    を設けた事を特徴とする請求項1の農業用マルチシー
    ト。
  6. 【請求項6】前記の透明フィルム層と前記の基材との接
    着強さが3〜500gf/25mmである事を特徴とす
    る請求項1、2、3、4または5の農業用マルチシー
    ト。
  7. 【請求項7】前記の透明フィルム層と前記の基材が、縫
    着、鋲着または融着されている事を特徴とする請求項
    1、2、3、4、5または6の農業用マルチシート。
  8. 【請求項8】前記の透明フィルム層は、380〜780
    nmの波長の太陽光線の透過率が、25%以上であるこ
    とを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7
    の農業用マルチシート。
  9. 【請求項9】前記の透明フィルム層の開孔部を覆ってい
    る部分には、1つまたは、2つ以上の交差する切れ目も
    しくはミシン目が施されかつ、切れ目もしくはミシン目
    の交差する部分が、透明フィルム層の自重で著しく下に
    垂れ下がらない事を特徴とする請求項1、2、3、4、
    5、6、7または8の農業用マルチシート。
  10. 【請求項10】前記の基材は、380〜780nmの波
    長の太陽光線の透過率が、25%以下であることを特徴
    とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9
    の農業用マルチシート。
  11. 【請求項11】前記の基材は、350〜2100nmの
    波長の太陽光線の反射率が、50%以下であることを特
    徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又
    は10の農業用マルチシート
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010130909A (ja) * 2008-12-02 2010-06-17 Taiheiyo Materials Corp 植物育成用保護材とその栽培方法
US20150027356A1 (en) * 2010-08-26 2015-01-29 Green Earth Greens Company Produce production system and process
JP2018000168A (ja) * 2016-07-08 2018-01-11 みかど化工株式会社 農業用生分解性マルチフィルム及び使用済農業用生分解性マルチフィルムの廃棄方法

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