JPH10268013A - 磁性体濃度の検出方法及び装置 - Google Patents

磁性体濃度の検出方法及び装置

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JPH10268013A
JPH10268013A JP9091736A JP9173697A JPH10268013A JP H10268013 A JPH10268013 A JP H10268013A JP 9091736 A JP9091736 A JP 9091736A JP 9173697 A JP9173697 A JP 9173697A JP H10268013 A JPH10268013 A JP H10268013A
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竜起 永石
Hideo Itozaki
秀夫 糸▲崎▼
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    • G01N27/72Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating magnetic variables
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 物質に微量に含有される磁性体元素成分の濃
度を、非接触状態で即自に精度よく測定する方法及び装
置の提供。 【解決手段】 物質(1)は、非磁性体からなる管路
(2)を通流させられ、先ず、含有される磁性体成分が
磁場印加手段(3)により磁化され、次に、超電導量子
干渉素子(SQUID)による磁気センサ(8)を含む
磁気計測手段(8,10)によって、磁化された磁性体
成分による磁場のみが検出される。1つの例では、磁気
センサ(8)及びその近傍の管路(2)が磁気シールド
(4)によって、外部磁気ノイズ(Mo)の侵入が防止
され、他の例では、磁気センサ(8)内に管路に近接す
るSQUID及び管路から離れたSQUIDが設けら
れ、計測回路(10)で両SQUID出力が差分され
て、外部磁気ノイズ(Mo)が相殺される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性体密度の評価
技術、より詳細には、物質中に微量に含有される磁性体
成分の濃度計測において、超電導量子干渉素子(SQU
ID:uperconducting Quantum nterference
evice )を用いる磁性体濃度計測方法及び装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】例えば、セラミックスの成形加工プロセ
スにおいては、概略的には、図1に示されるような工程
が採用される。入荷されたセラミック用原料粉は、種々
の厳重な粉体チェックを受けた後、分散工程Aにて、水
或いはアルコール液に分散させてスラリーとされる。こ
のスラリーは、次の攪拌・細粒化工程Bで、例えばプロ
ペラ状の攪拌刃を備えた攪拌装置によって、攪拌され且
つ粉体粒子が更に微細にされる。その後、乾燥工程Cに
おいて、「スプレードライ」と呼ばれる方法で水或いは
アルコールが蒸発させられて、完粉が得られる。そし
て、この完粉は、成形工程D、仮焼結工程E及び本焼結
工程Fを経て、所望のセラミック成形品となる。
【0003】このようなプロセスにおいて原料となるセ
ラミック用原料粉は、それ自体に不純物成分として鉄や
ニッケル等の磁性体元素が含有されている。つまり、こ
のような原料物質は、原料粉の製造過程において、原料
粉体を構成する成分に既に鉄等の固溶した磁性体元素が
不純物成分として取り込まれていることが多い。例え
ば、窒化ケイ素の粉体を購入したときには純度分析表等
が添付されることがあるが、鉄等の磁性体元素は、この
分析表の中に記載される不純物成分の一つとして挙げら
れているほどである。
【0004】このように原料物質自体に不純物の一つと
して含有される鉄等の磁性体元素成分は、ミクロレベル
で観察すると、例えば、窒化ケイ素粉体を構成する結晶
粒界内に存在したり、或いは、この結晶粒そのものに含
有され、その含有量は、例えばppmオーダであって極
く微量ではあるが、製品の品質管理のために正確に認知
しておく必要がある。従って、原料物質自体に不純物の
一つとして含有される鉄等の磁性体元素成分は、プロセ
スの実施段階で、でき得る限り早い時期、例えば、分散
工程Aの前に、実際に磁性体濃度を高精度に計測・評価
し、鉄等の磁性体元素成分の含有量を確認し正しく把握
する必要がある。
【0005】このようなプロセスと同様に、例えば、ア
ルミニウム等の金属材料粉末の処理プロセスにおいて
も、アルミニウム等の金属材料粉末には、鉄等の磁性体
元素が微量ではあるが不所望な不純物成分として含まれ
ることがあり、この場合にも、原料粉の段階で、実際に
磁性体濃度の計測・評価を行い、鉄等の磁性体元素の含
有量を確認し不純物成分として精確に把握しておく必要
がある。
【0006】従来、このような非磁性物質内に不純物と
して微量に含まれる鉄等磁性体元素成分の濃度(密度)
を評価するには、被測定物質を一旦抽出した後、例え
ば、誘導結合プラズマ原子分光分析法(Inductively Co
upled Plasma-atomic EmissionSpectroscopy )や分解
濃度滴定法等により、専ら、化学的な手法を用いて磁性
体濃度を測定している。例えば、プラズマ分光を用いた
ICP法を用いた場合では、被測定物質を溶液に溶かし
た後濃度計測を行っている。
【0007】このような破壊的な検査方法では、被測定
物質の一部を抜き取って所定の操作を行った後検査する
必要があるので、検査には最低でも数時間かかり、ま
た、濃度検出を連続的に行うことができない。
【0008】これに対して、磁性体原料が相当量混在す
る液状物質については、非破壊的な検査手法を適用して
磁性体原料に関係する物理量を計測することが既に知ら
れており、例えば、特開平6−204068号公報に
は、磁性体原料である酸化物磁性粉末スラリーの水分率
をオンラインで短時間かつ容易に測定することができる
水分測定装置が記載されている。
【0009】また、鉄粒子乃至鉄粉のような独立した鉄
成分に関係する物理量の計測に関しては、例えば、特開
平7−5137号公報に、循環流体媒体中の鉄粒子を磁
気吸引力で捕獲し測定する装置が記載され、特開平7−
260912号公報にも、永久磁石と2つのサンプルホ
ルダーを使用して飽和磁束密度を測定する技術が記載さ
れている。
【0010】しかしながら、このような磁性体原料や鉄
粉等のもつ磁気的性質を利用する従来の測定技術は、磁
性体原料や鉄粉等自体が有する相当量の磁力に基づいて
おり、また、検出手段として、主としてコイルのインダ
クタンス変化或いはホール素子等の検出素子が使用され
ており、個々の磁性体粒子に対してパルス状に過敏に応
答して目的とする計測が行われなくなってしまう事態と
しないためには、検出感度を比較的低く抑えておく必要
がある。従って、前述したように原料物質内に不純物と
して極く微量にしかも平均化して含まれる鉄等の磁性体
元素成分の濃度を計測するには、このような測定技術を
適用することは到底できない。それ故、原料物質に極く
微量に含まれる磁性体を精度よく評価するには、やは
り、前述したような化学的な手法に頼らざるを得なかっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主たる目的
は、物質に微小に含まれる鉄等の磁性体元素成分の密度
を評価するために、磁気センサとして超電導量子干渉素
子(SQUID)を用い、この磁気センサを検査される
物質とは非接触状態とした状態で、しかも、被検査物質
に微量に含有される磁性体の密度を比較的高い精度をも
って非破壊的に計測することができる磁性体密度計測方
法及び装置を提供することにある。
【0012】本発明は、また、連続的な計測を行うこと
ができ、生産ライン等におけるモニタとして活用するこ
とができる磁性体密度計測方法及び装置を提供すること
を目的とする。
【0013】本発明は、さらに、実時間での分析を可能
とし、測定時間を大幅に短縮することができる磁性体密
度計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【0014】
【問題を解決するための手段】上述した課題は、本発明
に従い、被検査物質中の濃度(密度)測定されるべき磁
性体を所定の磁場のもとで磁化し、地磁気などの外部磁
気ノイズの影響を排除して、磁化された磁性体の密度に
応じて発生する磁場の強さのみを、高感度の磁気センサ
を用いて計測することができるように構成することによ
って達成される。この磁気センサには超電導量子干渉素
子(SQUID)が用いられ、磁性体密度と磁気センサ
出力との相関関係をあらかじめ計測して換算値を設定し
ておくことにより、被測定物に触れること無しに瞬時に
磁性体密度を検出することができる。
【0015】本発明は、種々の物質に微量に含まれる鉄
等の磁性体元素成分の濃度評価に適用することができ、
連続的な計測に適合させるために被検査物質を微粉末状
或いは液状化し流動可能な状態にして実施することがで
きる。
【0016】例えば、図1のプロセスでは、原料粉或い
はその細粒化粉を水やアルコール液等の液体に含ませた
状態で実施され、分散工程Aや攪拌・細粒化工程Bの前
又は後に適用して連続工程の一つとして工程間に介挿す
ることができる。しかしながら、攪拌・細粒化工程Bに
おいて、例えば攪拌刃などの作動体から磨耗した鉄分等
が混入されたりおそれがあるので、原料粉中の磁性体元
素成分の正確な濃度を計測するためには、分散工程Aの
前後というような、なるべく早い工程で実施する方がよ
い。本発明を分散工程Aの前段で実施する場合には、濃
度測定に適した所定の分散状態とした上で元原料粉中の
濃度を正確に測定することができる。分散工程Aの前段
で実施すると、連続工程の一つとして工程A−B間にそ
のまま介挿することができるので好適である。なお、攪
拌・細粒化工程Bにおいて攪拌刃などから混入された磨
耗した鉄分等は、他の適当な方法によって検出すること
ができる。
【0017】また、前述したアルミニウム等の金属材料
粉末に不純物として微量に含まれる鉄等の磁性体元素成
分の濃度評価にも、もちろん、適用することができる。
【0018】本発明では、また、被検査物質を一旦取り
出すことなく実プロセス中に、例えば、上記工程A−B
間或いはB−C間に、組み込んだ形態で実施することが
できるので、連続的な計測を行うことができ、生産ライ
ン等におけるモニタとして活用することができる。
【0019】図2には、代表的な各種磁気センサの感度
が概略的に示されている。図2からも理解されるよう
に、前述の従来技術で使用される磁気センサは、例え
ば、ホール素子に代表され、磁性体原料や鉄粉等自体が
有する相当量の磁力に基づく比較的大きい磁気を計測し
ようとしている。これに対して、本発明では、物質に微
量に含まれる鉄等の磁性体元素成分を測定するのに、地
磁気に比べてさえ十分に小さい磁気を検出することがで
きる高感度の超電導量子干渉素子(SQUID)が利用
される。
【0020】従って、本発明によれば、前記したような
種々のプロセスにおいて、物質に含まれる微量に含まれ
る鉄等の磁性体元素成分の濃度を、外部磁気ノイズの影
響を排除した状態で良好に計測することができ、且つ、
実時間での分析が可能となり測定時間を大幅に短縮する
ことができる。。
【0021】本発明によると、物質に含有される磁性体
元素成分の濃度を計測するのに、物質を非磁性体からな
る管路内に通流させ、磁場印加手段によって、管路の外
部から磁場を印加して物質に含有される磁性体成分を磁
化し、超電導量子干渉素子を有する磁気センサ及び信号
処理回路によって、管路の下流側における磁化された磁
性体からの磁場の強さのみが実質的に検出される。好ま
しくは、超電導量子干渉素子として所謂「高温超電導S
QUID」が使用され、これによって、実施のための装
備を小型化することができる。
【0022】本発明による一つの方法及び装置において
は、磁気センサ及びその近傍の管路を包囲する磁気シー
ルドが設けられ、これによって、外部磁気ノイズが実質
的に遮断されるので、磁化された磁性体からの磁場の強
さのみを検出することができる。
【0023】本発明による他の方法及び装置において
は、磁気センサ内に、管路のより近傍に第1の超電導量
子干渉素子が配置され、管路のより遠方に第2の超電導
量子干渉素子が配置され、電子計測回路の差動回路によ
って、これらの超電導量子干渉素子の出力が差分され
る。これによって、外部磁気ノイズが実質的に除去され
た検出信号を得ることができるので、磁化された磁性体
からの磁場の強さのみを検出することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】図3には、本発明の第一の実施例
による方法を実施するための装置が示されている。本発
明においては、検査されるべき物質1が液状乃至微粉末
状の流動可能な状態とされて非磁性体管路2を通流する
ことができるようになっており、例えば、図1のプロセ
スの攪拌・細粒化工程Bを経た後、この管路5に導くよ
うにすることができる。この非磁性体製の管路2は、例
えば、内径3ミリ、外径5ミリの太さを有するビニール
製のチューブであり、先ず、磁場印加手段3の間を通
る。
【0025】磁場印加手段3は、例えば、永久磁石で構
成され、被検査物質1中に含有される磁性体元素成分
を、所定の強さの磁場で磁化させることができるように
なっており、望ましくは、被検査物質1中に含有される
磁性体の飽和磁界以上の磁場の強さで磁化させる。磁場
印加手段3として、この例では永久磁石が使用されてい
るが、電磁石を使用することもできる。
【0026】磁場印加手段3の直ぐ下流には、磁気シー
ルド4で覆われたデュワ(Dewar )7が設けられてお
り、このデュワ7は、例えば、液体窒素のような冷却媒
体が内部に充填されており、底面には磁気センサ8が設
置されている。非磁性体管路2は、磁気シールド4の一
部に開けられた2つの貫通孔5,6を挿通し、この磁気
シールド4内で磁気センサ7の直下を通っており、被検
査物質1が磁気センサ8の極く近傍を通過することがで
きるように構成されている。
【0027】本発明においては、磁気センサ8として、
超電導量子干渉素子(SQUID)が用いられ、好まし
くは、「高温超電導体」と呼ばれる酸化物系の超電導量
子干渉素子が用いられる。酸化物系の高温超電導体を用
いると、安価で取扱いが簡単な液体窒素温度(−196
℃,77K)で動作することができるので、高価で取扱
いが難しかい液体ヘリウム(−269℃)を使用する金
属系超電導量子干渉素子を使用するシステムに比べて取
扱いが大幅に簡単になる。
【0028】なお、このような酸化物系の超電導量子干
渉素子は、例えば、レーザ蒸着法によってSr Ti O3
製の基板上にYBa2Cu37-x 或いはHo Ba2Cu3
7-x 薄膜等で形成され、その心臓部となる超電導接合
は、例えば、基板の表面に 0.2ミクロンの段差を設けそ
の上に超電導膜を成長させて形成される。そして、この
ような超電導量子干渉素子の性能は、例えば、地磁気の
五千万分の一程度という高い分解能をもっており、きわ
めて微弱な磁場を極めて高感度に計測することができ
る。
【0029】SQUID磁気センサ8は、前述のよう
に、液体窒素のような冷却媒体が充填されたデュワ7の
底面に設置されており、非磁性体管路2内を通流する被
検査物質1が、SQUID磁気センサ8のできるだけ近
傍、例えば、超電導量子干渉素子から約10mmのとこ
ろを通過することができるようになっている。
【0030】
【第一の実施例】本発明の一実施例においては、また、
SQUID磁気センサ8に対する地磁気やその他の環境
磁気ノイズ(以下、「外部磁気ノイズ」ということがあ
る。)Moを低減するために、デュワ7及びその近傍の
管路5は、例えば、パーマロイ材で作られた磁気シール
ド4で包囲されている。磁気シールド4は、貫通孔5,
6の箇所で、シールド外部の管路2をも覆うように、筒
状に外部に所定長だけ延長する構造を採用することがで
きる。この構造を採用することによって、外部磁気ノイ
ズMoの侵入をより効果的に低減することができる。
【0031】SQUID磁気センサ8は信号ケーブル9
を介して電子計測回路10と信号授受を行う。この電子
計測回路10は、例えば、SQUID磁気センサ8と共
に「FLL(Flux Locked Loop)方式」と略称される磁
束ロック方式のセンサ回路を形成し、SQUID磁気セ
ンサ8の出力は、その磁束帰還回路から電圧として得ら
れ、例えば、ペンレコーダのような記録器乃至他の適当
な表示器である計測結果出力手段11に与えられるよう
になっている。
【0032】このように構成された本発明の一実施例の
原理的な動作を説明する。この例では、被検査物質1と
して窒化ケイ素(Si3 4 )粉体溶液が用いられ、こ
の溶液は、例えば、磁性体元素成分である鉄を数〜数百
ppm含む窒化ケイ素粉体のアルコール溶液(濃度30
〜50%)であり、その粘度は100〜1000CPS
(centipoise:センチポアズ。「cP」とも表記す
る。)である。このような被検査物質1が非磁性体管路
2内に圧力をかけて導入される。
【0033】導入された被検査物質1は、先ず、計測直
前に、永久磁石で構成された磁場印加手段3により、例
えば、 0.1テスラ〔T〕程度の磁場が与えられ、これに
よって、被検査物質1中に含有される磁性体元素成分が
飽和磁界以上の磁場で磁化される。
【0034】被検査物質1は、含有される磁性体成分が
このようにして所定の強さの磁場で磁化された後、続い
て磁気シールド4内に入り、SQUID磁気センサ8か
ら約10mmのセンサ近傍を通過する。この通過による
SQUID磁気センサ8の超電導量子干渉素子の出力
は、電子計測回路10により検出され、その磁束帰還回
路から、被検査物質1に含有される磁性体成分の磁化に
応答する電圧Voとして得られる。そして、得られた出
力電圧Voは、例えば、ベンレコーダのような計測結果
出力手段11に与えられ、出力電圧Vo或いはこれに対
応する磁性体濃度Cfが計測結果として表示される。
【0035】図4には、被検査物質1を液状化して鉄
(磁性体)成分含有濃度が10ppmで粘度が500C
PSの窒化ケイ素粉体アルコール溶液(濃度40%)と
した場合に、電子計測回路10により得られる出力電圧
Voについての時間tに関する特性図が示されている。
この図に示されるように、出力電圧Voは、被検査物質
1が磁気センサ8内の超電導量子干渉素子近傍を通過し
始めると上昇を開始し、被検査物質1の通過中はほぼ一
定の電圧となる。そして、被検査物質1の通過が終了す
ると、出力電圧Voは当初の電圧に戻る。
【0036】図5には、被検査物質1として鉄(磁性
体)成分の含有量が異なる種々の窒化ケイ素粉体アルコ
ール溶液を用い、これらの溶液について出力電圧Voと
鉄含有濃度Cfとの相関関係が示されている。この図に
示されるように、超電導量子干渉素子の出力電圧Vo
は、被検査物質1に含有される磁性体成分との間に、1
次の相関関係を有していることが分かる。
【0037】従って、このような1次の相関関係を用い
ることによって、鉄などの磁性体成分の含有濃度が未知
の溶液について、その磁性体含有量を簡単に知ることが
できる。また、前述したように、SQUID磁気センサ
8デュワ7及び及びその近傍の管路5は磁気シールド4
で包囲されているので、地磁気やその他の環境磁気ノイ
ズMoが磁性体成分の磁化に対して無視し得る程度に低
減されるために、微量の磁性体元素成分を極めて高精度
に検出することができる。
【0038】実際に、被検査物質1として10種の異な
る試料溶液を用意し、これらの試料溶液について、先
ず、このような本発明によるSQUID磁気センサ方式
で、磁性体濃度測定を行い、その後、同一試料溶液を化
学的な濃度滴定による精確な測定を行った。そして、こ
れらの測定結果を比較すると、本発明による測定誤差は
±5%程度であったが、これは、実用上支障のない程度
に高い精度ということができる。
【0039】本発明による方法及び装置を実施するに
は、上述したように、磁性体濃度Cfが予め精確に測定
された種々の基準試料溶液について、SQUID磁気セ
ンサの出力電圧Voを測定することにより、センサ出力
電圧Voと磁性体濃度Cfとの関係を示す換算テーブル
或いは換算式を作成し、この換算テーブル或いは換算式
を計測結果出力手段11に用意しておく等のよく知られ
た手法を適用することができる。この場合、計測結果出
力手段11は、磁性体濃度が未知であった被検査物質6
について、電子計測回路10からSQUID磁気センサ
の出力電圧Voを受けると、この換算テーブル或いは換
算式を用いてこの出力電圧Voに対応する磁性体濃度C
fを測定結果としてグラフや数値の形式で瞬時に出力す
る。そして、これによって、未知の被検査物質6の磁性
体濃度Cfの測定結果を直ちに視認することができる。
【0040】
【第二の実施例】本発明の第二の実施例では、第一の実
施例で使用される磁気シールド4が不要とされ、その代
わりに、SQUID磁気センサ8に2個の超電導量子干
渉素子を用いた構成を採用することによって、第一の実
施例と同様に精度のよい結果が得られるようにしてい
る。図6には、本発明の第二の実施例の動作原理を説明
するためのSQUID磁気センサの概略的な素子配置が
示されている。
【0041】この例では、SQUID磁気センサ8が2
個の超電導量子干渉素子S1,S2で構成され、これら
の素子は、非磁性体管路(ビニール製チューブ)2の長
手方向即ち被検査物質1の流れに垂直な方向に、所定の
間隔d2を隔てて同軸的に設置されている。第1の超電
導量子干渉素子S1は、第一の実施例と同様に、被検査
物質1が流れている非磁性体管路2に十分接近した距離
d1のところ、例えば、非磁性体管路2から約10mmのと
ころに設けられる。ここで、両超電導量子干渉素子d
1,d2間の間隔d2は、この距離d1に対して十分大
きい値、例えば、100mm程度の値とされる。そして、
2個の超電導量子干渉素子S1,S2の出力は電子計測
回路10に与えられる。
【0042】電子計測回路10においては、両超電導量
子干渉素子S1,S2の出力がオペアンプにより差分さ
れる。この差分によって、両超電導量子干渉素子S1,
S2に共通に印加される地磁気やその他の環境磁気ノイ
ズMoが低減され、実質的に被検査物質1から第1の超
電導量子干渉素子S1に作用する磁気Mに応答する信号
のみが検出される。
【0043】つまり、両超電導量子干渉素子S1,S2
には、被検査物質1中の磁化された磁性体成分による磁
気Mと共に、地磁気やその他の環境磁気ノイズMoが作
用する。このような外部磁気ノイズMoは、両素子S
1,S2に対して一様に等しく作用する。これに対し
て、磁性体による磁気Mについては、一定に磁場の強さ
は磁場発生源からの距離の3乗に反比例するという原理
に従って、遠方にある第2の超電導量子干渉素子S2が
被検査物質1から得る磁場の強さは、近接する第1の超
電導量子干渉素子S1が得る磁場の強さに比べて、大
略、距離比(d1/d2)の3乗つまり1/103 程度に低
下し、十分に無視し得る大きさとなる。従って、このよ
うな両超電導量子干渉素子S1,S2の出力をオペアン
プにより差分することによって、外部磁気ノイズMoが
相殺され、実質上、被検査物質1から第1の超電導量子
干渉素子S1に作用する磁場の強さのみを表す出力が得
られる。
【0044】このようにして、オペアンプでの差分によ
って、両超電導量子干渉素子S1,S2に共通に印加さ
れる外部磁気ノイズMoを低減した出力が得られる。そ
して、得られた出力電圧は、第一の実施例と同様に、計
測結果出力手段11に与えられ、出力電圧Vo或いはこ
れに対応する磁性体濃度Cfが計測結果として表示され
る。
【0045】実際に、オペアンプの出力電圧を1〜1000
倍の増幅機能を有するアンプを通し、これを微調整する
ことにより第一の実施例と同じ被検査物質に対し同等の
出力電圧が得られるようにした。その結果、第一の実施
例の場合と比べ、濃度誤差は、±6%に増加したが、実
用上問題ないことが判明した。
【0046】
【別の実施例】測定対象である磁性体元素成分は被検査
物質に微量にしか含有されないので、装置の形状や配置
を工夫することによって、磁化された磁性体成分の磁場
ができるかぎり効果的に超電導量子干渉素子に作用する
ことが望まれる。そのために、例えば、図5のように、
少なくともSQUID磁気センサ5の近傍では管路2の
形状を扁平にする構造と採用することができる。このよ
うな扁平な管路2を採用することによって、d1’で示
されるように、管路2の中心線とSQUID磁気センサ
5内の超電導量子干渉素子Sとの間の距離が狭められる
(d1’<dl)ので、被検査物質1は全体的として超
電導量子干渉素子Sのより近傍を通過し、磁化された磁
性体成分の磁場を効果的に超電導量子干渉素子Sに作用
することができる。なお、この扁平部の断面積を必要に
応じて円形部より増大乃至減少することによって所望の
流速を得たり、扁平部と円形部とのテーパを調整するこ
とにより所望の流れとすることができる。
【0047】
【発明の有利な効果】本発明によると、高感度磁気セン
サである超電導量子干渉素子を地磁気やその他の環境磁
気ノイズMoが低減された状態で利用することによっ
て、物質に微量に含有される磁性体元素成分の濃度を、
非接触でしかも精度よく測定することができる。そし
て、これにより、実時間での分析が可能となり、測定時
間を大幅に短縮することが可能となる。また、連続的に
データを収集することができるので、生産ライン等にお
けるモニターとして活用することが十分に期待すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用することができるセラミック成形
加工プロセスを示す図。
【図2】各種磁気センサの感度を概略的に示す図。
【図3】本発明の第一の実施例による方法を実施するた
めの装置を示す図。
【図4】本発明の第一の実施例により得られる出力−時
間特性の一例を示す図。
【図5】本発明の第一の実施例により得られる出力−濃
度特性の一例を示す図。
【図6】本発明の第二の実施例の動作原理を説明するた
めのSQUID磁気センサの概略的な素子配置を示す
図。
【図7】管路形状を変形した本発明の別の実施形態を示
す図。
【符号の説明】
1 被検査物質、 2 非磁性体管路、 3 磁場印加手段、 4 磁気シールド、 5,6 貫通孔、 7 デュワ、 8 SQUID磁気センサ、 9 信号ケーブル、 10 電子計測回路 11 計測出力手段、 Mo 地磁気やその他の環境磁気ノイズ(外部磁気ノイ
ズ)、 S1,S 第1又は磁場検出用の超電導量子干渉素子、 S2 第2の超電導量子干渉素子、 d1,d1’ 第1又は磁場検出用の超電導量子干渉素
子と管路との距離、 M 被検査物質からの磁気。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 物質に含有される磁性体の濃度を計測す
    る方法であって、 物質が通流する通路の外部からこの物質に磁場を印加
    し、該物質に含有される磁性体を磁化するステップ、及
    び、 超電導量子干渉素子を有する磁気センサにより前記管路
    の下流側における前記磁化された磁性体からの磁場の強
    さのみを実質的に検出するステップから成ることを特徴
    とする磁性体濃度計測方法。
  2. 【請求項2】 前記磁場の強さの検出は、前記磁気セン
    サ及びその近傍の前記管路を包囲する磁気シールドによ
    り、外部磁気ノイズを実質的に遮断した状態でなされる
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁性体濃度計測方
    法。
  3. 【請求項3】 前記磁場の強さの検出は、前記磁気セン
    サ内に前記管路のより近傍及びより遠方にそれぞれ超電
    導量子干渉素子を配置し、これらの超電導量子干渉素子
    の出力を差分して外部磁気ノイズを実質的に除去するよ
    うにすることにより、なされることを特徴とする請求項
    1に記載の磁性体濃度計測方法。
  4. 【請求項4】 前記超電導量子干渉素子には高温超電導
    素子が用いられることを特徴とする請求項1〜3の何れ
    か一項に記載の磁性体濃度計測方法。
  5. 【請求項5】 物質に含有される磁性体の濃度を計測す
    る装置であって、 物質を通流するための非磁性体製の管路、 前記管路の外部から磁場を印加して、前記物質に含有さ
    れる磁性体を磁化するための磁場印加手段、並びに、 前記非磁性体製の管路の下流側においてこの管路に近接
    して設けられた超電導量子干渉素子を有する磁気セン
    サ、及び、この磁気センサの出力を処理する信号処理回
    路を備え、前記磁化された磁性体からの磁場の強さのみ
    を実質的に検出するための磁気計測手段を具備すること
    を特徴とする磁性体濃度計測装置。
  6. 【請求項6】 前記磁気計測手段は、前記超電導量子干
    渉素子及びその近傍の前記管路を包囲し、外部磁気ノイ
    ズを実質的に遮断するための磁気シールドを備えること
    を特徴とする請求項5に記載の磁性体濃度計測装置。
  7. 【請求項7】 前記磁気センサは、前記管路のより近傍
    に配置された超電導量子干渉素子及び前記管路のより遠
    方に配置された超電導量子干渉素子を有し、前記信号処
    理回路は、これらの超電導量子干渉素子の出力を差分す
    る回路を有し、これによって、外部磁気ノイズが実質的
    に除去された検出信号が得られるようにすることを特徴
    とする請求項5に記載の磁性体濃度計測方法。
  8. 【請求項8】 前記超電導量子干渉素子には高温超電導
    素子が用いられることを特徴とする請求項5〜7の何れ
    か一項に記載の磁性体濃度計測装置。から成ることを特
    徴とする磁性体濃度計測装置。
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