JPH10263679A - ダイス - Google Patents
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- JPH10263679A JPH10263679A JP7014597A JP7014597A JPH10263679A JP H10263679 A JPH10263679 A JP H10263679A JP 7014597 A JP7014597 A JP 7014597A JP 7014597 A JP7014597 A JP 7014597A JP H10263679 A JPH10263679 A JP H10263679A
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- Japan
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- die
- coating
- film
- wire
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- Metal Extraction Processes (AREA)
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 従来品よりも耐用寿命がきわめて長く、金属
成形品の表面に無用な傷をつけることもないダイスを提
供すること。 【解決手段】 ダイス1は、クロムモリブデン鋼製のケ
ース部3と、ケース部3に嵌め込まれた超硬合金製のチ
ップ部5とを備え、チップ部5には、加工面としてリダ
クション部5aとベアリング部5bが形成されている。
リダクション部5aおよびベアリング部5bを含むチッ
プ部5の表面には、Cr−N系化合物からなる被膜7が
形成されている。この被膜7は、リダクション部5aに
おいて膜厚が約4μmあり、ベアリング部5bでは、リ
ダクション部5aよりも膜厚が薄くなっており、ビッカ
ース硬度Hvは約1800である。
成形品の表面に無用な傷をつけることもないダイスを提
供すること。 【解決手段】 ダイス1は、クロムモリブデン鋼製のケ
ース部3と、ケース部3に嵌め込まれた超硬合金製のチ
ップ部5とを備え、チップ部5には、加工面としてリダ
クション部5aとベアリング部5bが形成されている。
リダクション部5aおよびベアリング部5bを含むチッ
プ部5の表面には、Cr−N系化合物からなる被膜7が
形成されている。この被膜7は、リダクション部5aに
おいて膜厚が約4μmあり、ベアリング部5bでは、リ
ダクション部5aよりも膜厚が薄くなっており、ビッカ
ース硬度Hvは約1800である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工面に圧接する
金属材料を塑性変形させて所定形状に成形加工するダイ
スに関する。
金属材料を塑性変形させて所定形状に成形加工するダイ
スに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、金属材料の成形加工方法の一
つとして、金属材料をダイスの加工面に圧接させて塑性
変形させることにより、特定形状に成形加工する方法が
知られている。こうした成形加工で用いられるダイスの
形状は、例えば成形加工後の金属成形品の形態(例え
ば、線材、管材、圧造品など)によって異なり、また、
金属材料をダイスの加工面に圧接させる方法(例えば、
引抜き、押出し、絞り加工、圧造など)によっても異な
るが、如何なる形状のダイスであっても、ダイスの加工
面にはきわめて大きな圧力や摩擦力が作用するのが通常
である。
つとして、金属材料をダイスの加工面に圧接させて塑性
変形させることにより、特定形状に成形加工する方法が
知られている。こうした成形加工で用いられるダイスの
形状は、例えば成形加工後の金属成形品の形態(例え
ば、線材、管材、圧造品など)によって異なり、また、
金属材料をダイスの加工面に圧接させる方法(例えば、
引抜き、押出し、絞り加工、圧造など)によっても異な
るが、如何なる形状のダイスであっても、ダイスの加工
面にはきわめて大きな圧力や摩擦力が作用するのが通常
である。
【0003】そのため、従来は、ダイスの構造を、加工
面を有するチップ部、およびそのチップ部が嵌め込まれ
るケース部からなる構造とし、チップ部については、例
えば超硬合金などによって作製して、加工面の強度を確
保するようにしていた。
面を有するチップ部、およびそのチップ部が嵌め込まれ
るケース部からなる構造とし、チップ部については、例
えば超硬合金などによって作製して、加工面の強度を確
保するようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにチップ部を超硬合金製にしたダイスであっても、
十分に満足な耐摩耗性、耐食性等を備えるには至ってお
らず、市場では更に耐用寿命の長いダイスが望まれてい
た。
ようにチップ部を超硬合金製にしたダイスであっても、
十分に満足な耐摩耗性、耐食性等を備えるには至ってお
らず、市場では更に耐用寿命の長いダイスが望まれてい
た。
【0005】こうした要望に対し、過去には、ダイスの
加工面にTi−N系化合物からなる被膜(以下、Ti−
N被膜という)を形成して、加工面を硬質化することも
行われていた。しかし、このようなTi−N被膜を有す
るダイスは、耐摩耗性は優れているものの、被膜が摩滅
するより早い時期に一部の被膜が剥離したり欠損したり
しやすい傾向があったため、期待するほどにダイスの耐
用寿命が延びることはなく、むしろ、このような被膜の
欠損や、被膜形成時の成膜不良等が原因で、金属成形品
の表面が粗くなりやすいという欠点があり、場合によっ
ては、金属成形品の表面に無用な傷をつけるという問題
もあった。
加工面にTi−N系化合物からなる被膜(以下、Ti−
N被膜という)を形成して、加工面を硬質化することも
行われていた。しかし、このようなTi−N被膜を有す
るダイスは、耐摩耗性は優れているものの、被膜が摩滅
するより早い時期に一部の被膜が剥離したり欠損したり
しやすい傾向があったため、期待するほどにダイスの耐
用寿命が延びることはなく、むしろ、このような被膜の
欠損や、被膜形成時の成膜不良等が原因で、金属成形品
の表面が粗くなりやすいという欠点があり、場合によっ
ては、金属成形品の表面に無用な傷をつけるという問題
もあった。
【0006】本発明は、上記問題を解決するためになさ
れたものであり、その目的は、従来品よりも耐用寿命が
きわめて長く、金属成形品の表面に無用な傷をつけるこ
ともないダイスを提供することにある。
れたものであり、その目的は、従来品よりも耐用寿命が
きわめて長く、金属成形品の表面に無用な傷をつけるこ
ともないダイスを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段、および発明の効果】上述
の目的を達成するために、上記請求項1記載の発明は、
加工面に圧接する金属材料を塑性変形させて所定形状に
成形加工するダイスにおいて、前記加工面にCr−N系
化合物からなる被膜が形成されていることを特徴とす
る。
の目的を達成するために、上記請求項1記載の発明は、
加工面に圧接する金属材料を塑性変形させて所定形状に
成形加工するダイスにおいて、前記加工面にCr−N系
化合物からなる被膜が形成されていることを特徴とす
る。
【0008】本発明において、Cr−N系化合物とは、
クロム(Cr)と窒素(N)を主成分とする化合物のこ
とであり、より具体的には、CrN、Cr2 Nはもちろ
んのこと、CrおよびNからなる固溶体や、これらの混
合物なども、ここでいうCr−N系化合物に含まれる。
クロム(Cr)と窒素(N)を主成分とする化合物のこ
とであり、より具体的には、CrN、Cr2 Nはもちろ
んのこと、CrおよびNからなる固溶体や、これらの混
合物なども、ここでいうCr−N系化合物に含まれる。
【0009】このようなCr−N被膜を有するダイスに
よれば、従来のダイス(例えば超硬合金製のもの等)よ
りも耐用寿命がきわめて長い。耐用寿命が長くなる理由
については、明確に解明されてはいないが、例えば、C
r−N被膜が超硬合金等に比べて優れた摺動性を有する
ため、従来のダイスよりも加工面と金属材料との滑りが
良好になる、Cr−N被膜が優れた耐摩耗性を有するた
め、従来のダイスよりも加工面の摩耗が抑制される、C
r−N被膜が優れた耐熱性および熱伝導性を有するた
め、熱による劣化等を生じることなく従来のダイスより
も高い放熱効果がある、Cr−N被膜が優れた耐食性を
有するため、金属材料とともに加工液が導入されるよう
な湿式加工の場合にも、被膜自体あるいは被膜に覆われ
た加工面が、従来のダイスよりも加工液によって侵食さ
れにくい、といったことが推察され、いずれにしても、
これらが単独または複合的に作用する結果、ダイスの耐
用寿命が延びるものと考えられる。
よれば、従来のダイス(例えば超硬合金製のもの等)よ
りも耐用寿命がきわめて長い。耐用寿命が長くなる理由
については、明確に解明されてはいないが、例えば、C
r−N被膜が超硬合金等に比べて優れた摺動性を有する
ため、従来のダイスよりも加工面と金属材料との滑りが
良好になる、Cr−N被膜が優れた耐摩耗性を有するた
め、従来のダイスよりも加工面の摩耗が抑制される、C
r−N被膜が優れた耐熱性および熱伝導性を有するた
め、熱による劣化等を生じることなく従来のダイスより
も高い放熱効果がある、Cr−N被膜が優れた耐食性を
有するため、金属材料とともに加工液が導入されるよう
な湿式加工の場合にも、被膜自体あるいは被膜に覆われ
た加工面が、従来のダイスよりも加工液によって侵食さ
れにくい、といったことが推察され、いずれにしても、
これらが単独または複合的に作用する結果、ダイスの耐
用寿命が延びるものと考えられる。
【0010】また、このようなCr−N被膜を有するダ
イスは、Ti−N被膜が施されたダイスと比較しても耐
用寿命が長い。これは、Cr−N被膜が、Ti−N被膜
に比べて優れた密着性を有しているため、Ti−N被膜
よりもCr−N被膜の方が摩耗しやすいものの、被膜の
剥離、欠損といったダイスにとって致命的な問題は、T
i−N被膜よりも発生しにくいためであると考えられ
る。
イスは、Ti−N被膜が施されたダイスと比較しても耐
用寿命が長い。これは、Cr−N被膜が、Ti−N被膜
に比べて優れた密着性を有しているため、Ti−N被膜
よりもCr−N被膜の方が摩耗しやすいものの、被膜の
剥離、欠損といったダイスにとって致命的な問題は、T
i−N被膜よりも発生しにくいためであると考えられ
る。
【0011】さらに、被膜に微細な傷がついたとして
も、Cr−N被膜はTi−N被膜ほど硬い膜ではないた
め、傷を含む部分が適度に摩滅してゆき、Ti−N被膜
のように傷がいつまでも残ったり、被膜の剥離を伴って
傷が拡大したりしないため、金属成形品の表面に荒れが
生じたり、傷がついたりすることもない。
も、Cr−N被膜はTi−N被膜ほど硬い膜ではないた
め、傷を含む部分が適度に摩滅してゆき、Ti−N被膜
のように傷がいつまでも残ったり、被膜の剥離を伴って
傷が拡大したりしないため、金属成形品の表面に荒れが
生じたり、傷がついたりすることもない。
【0012】なお、このようなCr−N系化合物からな
る被膜(以下、Cr−N被膜ともいう)は、イオンプレ
ーティング法やスパッタリング法など、各種PVD(Ph
ysical Vapor Deposition )法によって形成可能である
が、この他にも、CVD(Chemical Vapor Deposition
)法による成膜も考えられ、本発明においては、これ
らCr−N被膜の成膜方法については特に限定されな
い。
る被膜(以下、Cr−N被膜ともいう)は、イオンプレ
ーティング法やスパッタリング法など、各種PVD(Ph
ysical Vapor Deposition )法によって形成可能である
が、この他にも、CVD(Chemical Vapor Deposition
)法による成膜も考えられ、本発明においては、これ
らCr−N被膜の成膜方法については特に限定されな
い。
【0013】また、本発明のダイスは、加工面に圧接す
る金属材料を塑性変形させて所定形状に成形加工するも
のであればよく、例えば、線材加工用の線引きダイス、
管材加工用の管引きダイス、板材等に対する絞り加工用
の絞りダイス、棒材等に対するヘッダー加工用のヘッダ
ーダイスなど、様々なタイプのダイスに適用できると考
えられるが、特に引抜き加工や押出し加工で使われるダ
イスのように、加工面と金属材料との摩擦が発生しやす
い形態のダイスほど、優れた効果がより顕著に現れるも
のと期待される。
る金属材料を塑性変形させて所定形状に成形加工するも
のであればよく、例えば、線材加工用の線引きダイス、
管材加工用の管引きダイス、板材等に対する絞り加工用
の絞りダイス、棒材等に対するヘッダー加工用のヘッダ
ーダイスなど、様々なタイプのダイスに適用できると考
えられるが、特に引抜き加工や押出し加工で使われるダ
イスのように、加工面と金属材料との摩擦が発生しやす
い形態のダイスほど、優れた効果がより顕著に現れるも
のと期待される。
【0014】こうした引抜き加工や押出し加工で使われ
るダイスは、通常、加工面として、入口側から導入され
る金属材料を所定断面形状に絞り込むリダクション部
と、リダクション部を通過した金属材料の断面形状を整
えて出口側へと導出するベアリング部とを備えている
が、このようなダイスでは、リダクション部に作用する
摩擦力が最も大きくなりやすいと考えられるので、特に
上記請求項2に記載のように、被膜が、少なくともリダ
クション部に形成されているとよい。
るダイスは、通常、加工面として、入口側から導入され
る金属材料を所定断面形状に絞り込むリダクション部
と、リダクション部を通過した金属材料の断面形状を整
えて出口側へと導出するベアリング部とを備えている
が、このようなダイスでは、リダクション部に作用する
摩擦力が最も大きくなりやすいと考えられるので、特に
上記請求項2に記載のように、被膜が、少なくともリダ
クション部に形成されているとよい。
【0015】このようにすれば、リダクション部につい
ては、Cr−N被膜の作用によって耐用寿命が長くな
る。一方、ベアリング部については、そもそも過大な負
荷がかかりにくいので、Cr−N被膜の有無は大きな問
題ではなく、むしろ、ベアリング部に対しては十分な被
膜が施されていなくてもよいので、その分、成膜加工が
容易になり、加工面全体に十分なCr−N被膜を施すの
に比べ、加工コストを低減することができる。
ては、Cr−N被膜の作用によって耐用寿命が長くな
る。一方、ベアリング部については、そもそも過大な負
荷がかかりにくいので、Cr−N被膜の有無は大きな問
題ではなく、むしろ、ベアリング部に対しては十分な被
膜が施されていなくてもよいので、その分、成膜加工が
容易になり、加工面全体に十分なCr−N被膜を施すの
に比べ、加工コストを低減することができる。
【0016】また、PVD法等によってCr−N被膜を
形成する場合、被膜形成時のクロム源と窒素源との比な
どを調整することによって、被膜中のCr:Nの組成比
や結晶構造を制御でき、その結果、被膜の硬さに影響が
現れるが、最適なCr−N被膜の硬さは、金属材料の種
類や種々の加工条件などによっても変わるため、一概に
は特定できない。但し、あまり柔らかい被膜では被膜を
設けた意味がなく、その一方、あまり硬い被膜では、T
i−N被膜と同様に金属加工品側に傷をつける原因にな
る恐れがあるので、これらのことを考慮すると、上記請
求項3記載のように、被膜の硬さは、ビッカース硬度で
Hv1500〜2300に調整されているとよい。
形成する場合、被膜形成時のクロム源と窒素源との比な
どを調整することによって、被膜中のCr:Nの組成比
や結晶構造を制御でき、その結果、被膜の硬さに影響が
現れるが、最適なCr−N被膜の硬さは、金属材料の種
類や種々の加工条件などによっても変わるため、一概に
は特定できない。但し、あまり柔らかい被膜では被膜を
設けた意味がなく、その一方、あまり硬い被膜では、T
i−N被膜と同様に金属加工品側に傷をつける原因にな
る恐れがあるので、これらのことを考慮すると、上記請
求項3記載のように、被膜の硬さは、ビッカース硬度で
Hv1500〜2300に調整されているとよい。
【0017】このような硬さのCr−N被膜であれば、
超硬合金製のチップと同程度の硬さを確保しながら、C
r−N被膜ならではの優れた耐摩耗性等を有するものと
なり、しかも、Ti−N被膜(ビッカース硬度Hv30
00程度)のように硬すぎることもないため、金属加工
品を傷つけることもない。
超硬合金製のチップと同程度の硬さを確保しながら、C
r−N被膜ならではの優れた耐摩耗性等を有するものと
なり、しかも、Ti−N被膜(ビッカース硬度Hv30
00程度)のように硬すぎることもないため、金属加工
品を傷つけることもない。
【0018】さらに、Cr−N被膜を形成する場合、成
膜処理時間等に応じて被膜の厚さを変えることができる
が、Cr−N被膜は密着性に優れているため、比較的厚
い膜を成膜することができる。より具体的には、厚さ1
μm〜数十μm程度の被膜を形成することができ、膜厚
によらずダイスの性能を改善できる。但し、ダイスの使
用に伴って被膜は摩耗してゆくため、被膜が厚いものほ
ど耐用寿命が延びるものと期待される。
膜処理時間等に応じて被膜の厚さを変えることができる
が、Cr−N被膜は密着性に優れているため、比較的厚
い膜を成膜することができる。より具体的には、厚さ1
μm〜数十μm程度の被膜を形成することができ、膜厚
によらずダイスの性能を改善できる。但し、ダイスの使
用に伴って被膜は摩耗してゆくため、被膜が厚いものほ
ど耐用寿命が延びるものと期待される。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について
一例を挙げて説明する。実施形態として図1(a)、同
図(b)に示すダイス1は、伸線加工用のダイスであ
る。このダイス1は、クロムモリブデン鋼製のケース部
3と、ケース部3に嵌め込まれた超硬合金製のチップ部
5とを備え、チップ部5には、加工面としてリダクショ
ン部5aとベアリング部5bが形成されている。
一例を挙げて説明する。実施形態として図1(a)、同
図(b)に示すダイス1は、伸線加工用のダイスであ
る。このダイス1は、クロムモリブデン鋼製のケース部
3と、ケース部3に嵌め込まれた超硬合金製のチップ部
5とを備え、チップ部5には、加工面としてリダクショ
ン部5aとベアリング部5bが形成されている。
【0020】また、このダイス1の特徴的な構成とし
て、リダクション部5aおよびベアリング部5bを含む
チップ部5の表面には、Cr−N系化合物からなる被膜
7が形成されている。この被膜7は、リダクション部5
aにおいて膜厚が約4μmあり、ベアリング部5bで
は、リダクション部5aよりも膜厚が薄くなっており、
ビッカース硬度Hvは約1800であった。
て、リダクション部5aおよびベアリング部5bを含む
チップ部5の表面には、Cr−N系化合物からなる被膜
7が形成されている。この被膜7は、リダクション部5
aにおいて膜厚が約4μmあり、ベアリング部5bで
は、リダクション部5aよりも膜厚が薄くなっており、
ビッカース硬度Hvは約1800であった。
【0021】なお、この被膜7は、周知のPVD法の一
つであるAIP(Arc Ion Plating)法を用いて形成し
たものである。AIP法は、簡単に説明すると、AIP
処理装置の真空容器内にチップ部5を設置して、その真
空容器内で真空アーク放電を利用して金属Crを蒸発さ
せ、チップ部5に負の電圧を印加すると同時に、真空容
器内にN2 ガスを導入することによって、CrおよびN
をチップ部5の表面に引き寄せて、チップ部5に被膜7
を形成する方法であり、金属Crの蒸発量とN 2 ガスの
導入量を制御することによって、被膜7の硬さを調節す
ることができ、また、処理時間を調節することによって
被膜7の厚さを変えることができる。
つであるAIP(Arc Ion Plating)法を用いて形成し
たものである。AIP法は、簡単に説明すると、AIP
処理装置の真空容器内にチップ部5を設置して、その真
空容器内で真空アーク放電を利用して金属Crを蒸発さ
せ、チップ部5に負の電圧を印加すると同時に、真空容
器内にN2 ガスを導入することによって、CrおよびN
をチップ部5の表面に引き寄せて、チップ部5に被膜7
を形成する方法であり、金属Crの蒸発量とN 2 ガスの
導入量を制御することによって、被膜7の硬さを調節す
ることができ、また、処理時間を調節することによって
被膜7の厚さを変えることができる。
【0022】このように構成されたダイス1において、
チップ部5の穴径Dが異なるもの5つ(以下、ダイス#
1〜#5という)を使って乾式連続伸線を行った。すな
わち、ダイス#1へ母材を導入し、ダイス#1から導出
される線材をダイス#2へ導入し、以下、ダイス#3、
#4、#5についても順に導入/導出を繰り返して伸線
を行った。ダイス#1〜#5によって成形される線材の
標準線径は、下記表1の通りであり、ダイス#1に導入
する母材となる線材には、5.50mm径のキルド鋼線
を用いた。なお、伸線速度は毎分900〜1000mと
した。
チップ部5の穴径Dが異なるもの5つ(以下、ダイス#
1〜#5という)を使って乾式連続伸線を行った。すな
わち、ダイス#1へ母材を導入し、ダイス#1から導出
される線材をダイス#2へ導入し、以下、ダイス#3、
#4、#5についても順に導入/導出を繰り返して伸線
を行った。ダイス#1〜#5によって成形される線材の
標準線径は、下記表1の通りであり、ダイス#1に導入
する母材となる線材には、5.50mm径のキルド鋼線
を用いた。なお、伸線速度は毎分900〜1000mと
した。
【0023】
【表1】
【0024】以上の条件で連続伸線を行った際の各ダイ
スの線径変化と伸線量を表2に示す。
スの線径変化と伸線量を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】表2に示すように、上記ダイス1によれ
ば、上記伸線条件下で、146tの線材を生産すること
ができた。但し、被膜7の摩耗によってダイスの穴径が
拡大し、最終線径が標準公差外(2.73mm)となっ
たため、ここで伸線を中止した。
ば、上記伸線条件下で、146tの線材を生産すること
ができた。但し、被膜7の摩耗によってダイスの穴径が
拡大し、最終線径が標準公差外(2.73mm)となっ
たため、ここで伸線を中止した。
【0027】この時、被膜7には、線材に悪影響を及ぼ
すような傷や欠損はなく、線材には肌荒れ、偏平などの
問題も生じていなかった。また、ベアリング部5bでは
被膜7の初期厚さが薄かったため、ほとんど被膜7が残
っていない状態になっていたが、それにもかかわらず、
線材表面の面粗度は非常に良いものであった。このこと
から、リダクション部5aにおいて絞られた時点で、線
材表面の面粗度が十分に良好なものとなっていることが
推察され、リダクション部5aに十分な被膜7が施され
ていれば、ベアリング部5bには被膜7が施されていな
くても足りると考えられる。
すような傷や欠損はなく、線材には肌荒れ、偏平などの
問題も生じていなかった。また、ベアリング部5bでは
被膜7の初期厚さが薄かったため、ほとんど被膜7が残
っていない状態になっていたが、それにもかかわらず、
線材表面の面粗度は非常に良いものであった。このこと
から、リダクション部5aにおいて絞られた時点で、線
材表面の面粗度が十分に良好なものとなっていることが
推察され、リダクション部5aに十分な被膜7が施され
ていれば、ベアリング部5bには被膜7が施されていな
くても足りると考えられる。
【0028】次に、比較のため、上記ダイス1と全く同
形状のダイスで、被膜のない超硬合金製のチップ部とし
たもの5つ(以下、ダイス#6〜#10という)を用意
して、同条件で連続伸線を行った。その時の各ダイスの
線径変化と伸線量を表3に示す。
形状のダイスで、被膜のない超硬合金製のチップ部とし
たもの5つ(以下、ダイス#6〜#10という)を用意
して、同条件で連続伸線を行った。その時の各ダイスの
線径変化と伸線量を表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】表3に示すように、被膜のないダイスは、
上記伸線条件下で18tの線材を生産した時点で、摩耗
によってダイスの穴径が拡大し、最終線径が標準公差外
(2.73mm)となり、伸線を中止することになっ
た。すなわち、Cr−N系化合物からなる被膜7を有す
るダイス1の方が、8倍を超える量の連続伸線を実施で
きることになる。また、この被膜のないダイスは、ダイ
ス穴が偏摩耗して真円度が低下しており、線材に多少の
偏平が見受けられた。
上記伸線条件下で18tの線材を生産した時点で、摩耗
によってダイスの穴径が拡大し、最終線径が標準公差外
(2.73mm)となり、伸線を中止することになっ
た。すなわち、Cr−N系化合物からなる被膜7を有す
るダイス1の方が、8倍を超える量の連続伸線を実施で
きることになる。また、この被膜のないダイスは、ダイ
ス穴が偏摩耗して真円度が低下しており、線材に多少の
偏平が見受けられた。
【0031】次に、更に比較のため、上記ダイス1と全
く同形状のダイスで、加工面にTi−N被膜が施された
チップ部としたもの5つ(以下、ダイス#11〜#15
という)を用意して、同条件で連続伸線を行った。その
時の各ダイスの線径変化と伸線量を表4に示す。
く同形状のダイスで、加工面にTi−N被膜が施された
チップ部としたもの5つ(以下、ダイス#11〜#15
という)を用意して、同条件で連続伸線を行った。その
時の各ダイスの線径変化と伸線量を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】表4に示すように、Ti−N被膜を有する
ダイスは、被膜に欠損が生じ、所定寸法の線材が生産で
きなくなったため、その時点で伸線を中止せざるを得
ず、上記伸線条件下では76tの線材しか生産できなか
った。すなわち、Cr−N系化合物からなる被膜7を有
するダイス1の方が、2倍近い量の連続伸線を実施でき
ることになる。
ダイスは、被膜に欠損が生じ、所定寸法の線材が生産で
きなくなったため、その時点で伸線を中止せざるを得
ず、上記伸線条件下では76tの線材しか生産できなか
った。すなわち、Cr−N系化合物からなる被膜7を有
するダイス1の方が、2倍近い量の連続伸線を実施でき
ることになる。
【0034】このようにCr−N系化合物からなる被膜
7を有するダイス1によれば、従来のダイスよりも格段
に耐用寿命が延び、Ti−N被膜のような欠損も発生し
ない。そのため、ダイス自体にかかるコストが低減され
るのはもちろんのこと、ダイスの交換回数が減る分だ
け、長時間にわたって伸線機を連続運転することがで
き、線材の製造コストを大幅に低減することができる。
7を有するダイス1によれば、従来のダイスよりも格段
に耐用寿命が延び、Ti−N被膜のような欠損も発生し
ない。そのため、ダイス自体にかかるコストが低減され
るのはもちろんのこと、ダイスの交換回数が減る分だ
け、長時間にわたって伸線機を連続運転することがで
き、線材の製造コストを大幅に低減することができる。
【0035】以上、本発明の実施形態について説明した
が、本発明の実施形態については上記一例以外にも種々
考えられる。例えば、上記説明では、鋼線を乾式伸線す
る例を示したが、鋼線以外の金属材料や湿式伸線におい
ても、上記ダイス1を利用することができ、所期の効果
を得ることができる。
が、本発明の実施形態については上記一例以外にも種々
考えられる。例えば、上記説明では、鋼線を乾式伸線す
る例を示したが、鋼線以外の金属材料や湿式伸線におい
ても、上記ダイス1を利用することができ、所期の効果
を得ることができる。
【0036】より具体的には、銅線、黄銅線などの伸線
加工では、線材を特殊な溶剤で処理した後に伸線するた
め、通常の超硬合金製のチップ部を有するダイスでは、
ダイスの肌荒れがひどく、頻繁にダイスを交換しなけれ
ばならないことがあるが、Cr−N系化合物からなる被
膜7を有するダイス1によれば、ダイスの肌荒れが抑制
されるため、従来品よりも耐用寿命を延ばすことができ
る。ちなみに、実験的には、従来品よりも約4倍程度ま
で耐用寿命を延ばすことができることが確認されてい
る。また、上記の他にも、ステンレス線を伸線加工した
事例では、従来のダイスで1tの伸線を行うのに、約1
00個ものダイスを必要とすることがあったものが、C
r−N系化合物からなる被膜7を有するダイス1によれ
ば、無交換のまま1tの伸線を行えるケースがあること
も確認されている。これらのことから、本発明のダイス
が、金属材料の種類を問わず、良好な効果が得られるこ
とがわかる。
加工では、線材を特殊な溶剤で処理した後に伸線するた
め、通常の超硬合金製のチップ部を有するダイスでは、
ダイスの肌荒れがひどく、頻繁にダイスを交換しなけれ
ばならないことがあるが、Cr−N系化合物からなる被
膜7を有するダイス1によれば、ダイスの肌荒れが抑制
されるため、従来品よりも耐用寿命を延ばすことができ
る。ちなみに、実験的には、従来品よりも約4倍程度ま
で耐用寿命を延ばすことができることが確認されてい
る。また、上記の他にも、ステンレス線を伸線加工した
事例では、従来のダイスで1tの伸線を行うのに、約1
00個ものダイスを必要とすることがあったものが、C
r−N系化合物からなる被膜7を有するダイス1によれ
ば、無交換のまま1tの伸線を行えるケースがあること
も確認されている。これらのことから、本発明のダイス
が、金属材料の種類を問わず、良好な効果が得られるこ
とがわかる。
【0037】さらに、上記例では伸線加工の事例を挙げ
て説明したが、本発明のダイスは、金属材料と加工面と
の間の接触状態を改善することによって、その良好な作
用・効果を奏するものであり、このことからすれば、伸
線加工以外で用いられるダイスにおいて加工面にCr−
N被膜を施しても、金属材料と加工面との間の接触状態
を改善できるものと期待できる。
て説明したが、本発明のダイスは、金属材料と加工面と
の間の接触状態を改善することによって、その良好な作
用・効果を奏するものであり、このことからすれば、伸
線加工以外で用いられるダイスにおいて加工面にCr−
N被膜を施しても、金属材料と加工面との間の接触状態
を改善できるものと期待できる。
【図1】 実施形態としてのダイスを示し、(a)はそ
の正面図、(b)はそのA−A線断面図である。
の正面図、(b)はそのA−A線断面図である。
1・・・ダイス、3・・・ケース部、5・・・チップ
部、5a・・・リダクション部、5b・・・ベアリング
部、7・・・被膜。
部、5a・・・リダクション部、5b・・・ベアリング
部、7・・・被膜。
Claims (3)
- 【請求項1】 加工面に圧接する金属材料を塑性変形さ
せて所定形状に成形加工するダイスにおいて、 前記加工面にCr−N系化合物からなる被膜が形成され
ていることを特徴とするダイス。 - 【請求項2】 請求項1記載のダイスにおいて、 前記加工面として、入口側から導入される金属材料を所
定断面形状に絞り込むリダクション部と、該リダクショ
ン部を通過した金属材料の断面形状を整えて出口側へと
導出するベアリング部とを備え、 前記被膜が、少なくとも前記リダクション部に形成され
ていることを特徴とするダイス。 - 【請求項3】 請求項1または請求項2記載のダイスに
おいて、 前記被膜の硬さが、ビッカース硬度でHv1500〜2
300に調整されていることを特徴とするダイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7014597A JPH10263679A (ja) | 1997-03-24 | 1997-03-24 | ダイス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7014597A JPH10263679A (ja) | 1997-03-24 | 1997-03-24 | ダイス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10263679A true JPH10263679A (ja) | 1998-10-06 |
Family
ID=13423124
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7014597A Pending JPH10263679A (ja) | 1997-03-24 | 1997-03-24 | ダイス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10263679A (ja) |
-
1997
- 1997-03-24 JP JP7014597A patent/JPH10263679A/ja active Pending
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