JPH10263069A - 医用生体材料 - Google Patents

医用生体材料

Info

Publication number
JPH10263069A
JPH10263069A JP9072041A JP7204197A JPH10263069A JP H10263069 A JPH10263069 A JP H10263069A JP 9072041 A JP9072041 A JP 9072041A JP 7204197 A JP7204197 A JP 7204197A JP H10263069 A JPH10263069 A JP H10263069A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
artificial
bone
skin
tissue
medical
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9072041A
Other languages
English (en)
Inventor
Katsunari Nishihara
克成 西原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP9072041A priority Critical patent/JPH10263069A/ja
Publication of JPH10263069A publication Critical patent/JPH10263069A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 硬骨魚類または円口類からの摘出物を含
む医用生体材料を提供する。 【効果】 上記医用生体材料は、抗原性が低く生体適合
性が高い、硬骨魚類または円口類由来の摘出物を含むた
め、機械的強度に優れ、安全性が高いばかりでなく、創
傷被覆材、人工皮膚、人工骨、人工神経または人工角膜
などとして使用できる。そして、その際に、拒絶反応が
生じず、よく生着し、生体と速やかに癒合してリモデリ
ングされやすく、治癒後に傷痕も残りにくい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硬骨魚類または円
口類由来の摘出物からなる医用生体材料に関する。より
詳細には、硬骨魚類からの摘出物を含む、創傷被覆材、
人工皮膚、人工骨、人工器官または角膜などの各種イン
プラント材に応用可能な医用生体材料、および円口類か
らの摘出物を含む、創傷被覆材、人工皮膚または人工角
膜などの各種インプラント材料に応用可能な医用生体材
料に関する。
【0002】
【従来の技術】外傷や骨腫瘍または先天性の疾患などの
病変によって、骨欠損を合併し、その補填が治療上必要
とされる場合がある。また、火傷などの外傷によって皮
膚に損傷が生じ、特に皮膚の全層または全層に近い欠損
が生じ、補填が必要となる場合がある。
【0003】従来、骨欠損を補填する場合、欠損量が大
きくなければ、腸骨や腓骨などの他の部位から採取した
自家骨移植で補われてきた。また、欠損量が大きい骨格
系の場合には、チタン、アルミナ、ジルコニアなどの金
属ないしそれらの酸化物のセラミックス、アパタイトな
どのセラミックスおよびそれらの複合材料を用いて人工
骨を作製し、これを用いて補われてきた。
【0004】また、皮膚の欠損を補填する場合には、非
吸収性または吸収性の薄いシート状の創傷被覆材や人工
皮膚が用いられてきた。ここで、創傷被覆材とは単に皮
膚損傷部を物理的にカバーするだけの材料をいい、人工
皮膚とは皮膚移植にとって代わる可能性を持つ皮膚代替
材料をいう。
【0005】非吸収性の薄いシート状の創傷被覆材とし
ては、ポリウレタン、シリコーンなどの薄い弾性のある
合成高分子シートなどを挙げることができ、吸収性のも
のとしては、凍結乾燥豚真皮、キチン、コラーゲン、ア
ルギン酸などが知られている。また、このようなシート
状の被覆材ではなく、創傷部に散布し、その上でシート
を形成させるセルロース誘導体粉末も知られている。人
工皮膚としては、細胞を用いない材料のみから構成され
た人工皮膚と、ヒトの皮膚細胞を二次元培養した培養皮
膚とが知られている。前者の人工皮膚の材料としては、
スポンジ状のコラーゲンが知られている。
【0006】上記のような用途に使用する材料は、生体
の側から見ると、積極的な機能を発揮しつつ生体になじ
む材料であること、すなわち、生体適合性があることが
求められる。生体適合性は、主に組織適合性と血液適合
性とに分けることができ、生体適合性の悪い材料を生体
内に埋植したり、生体と接触させたりすると、材料から
溶出した成分や表面から剥離した磨耗片などが、材料周
囲の組織に浸潤したり、血液循環によって全身性の組織
反応を引き起こし、組織の壊死など種々の問題を問題を
引き起こすことになる。一方、材料側から見ると、生体
との接触によっても材料自体が劣化せず、所要の機能を
満足できるような物理的・化学的性質などが所定の期間
維持されることが必要である。
【0007】さらに、これらの材料は、それらが接合さ
れる生体組織との間に機械的性質において大きな差がな
いこと、すなわち、力学的適合性を備える必要がある。
これは、接合部近傍で応力集中や変形の不適合が生じる
ことにより、この部分に破損や異常が起こり、結果的に
目的とする機能が発揮されなくなることを防ぐためであ
る。こうした材料はまた、滅菌や消毒を十分に行うこと
ができ、安全性が高いものであることも要求される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の材料には、幾つかの問題点があることが指摘さ
れている。例えば、金属は非常に強度が高いため、生体
機能の代替物の骨格として欠かすことができない。しか
し、金属を骨欠損の補填に使用した場合、生体は金属を
自己の体の一部とは認識としないため長期の使用では問
題がある。また、生体とよりなじみやすいセラミックス
で金属をコーティングしても、長期の使用によってセラ
ミックスが脱落してしまうという欠点があり、実用化レ
ベルに達していない。
【0009】また、創傷被覆材や人工皮膚には、主とし
てコラーゲンが用いられている。創傷被覆材や人工皮膚
に用いられているコラーゲンはウシ由来のものである
が、こうしたウシ由来のコラーゲンには、抗原性のある
ことが知られており、特別な処理を行うか、抗原性のな
い胎児性のコラーゲンを用いる必要がある。
【0010】ヒトの血液には血液型があり、組織には主
要組織適合抗原がある。血液型が一致しない血液を輸血
すると拒否反応が惹起されて輸血を受けた患者が死亡す
る場合があることはよく知られている。こうした型とし
ては、ABO式、Rh式、Ii式、P式、およびMN式
血液型その他の血液型が数多く知られている。このた
め、輸血や骨髄移植、生体臓器移植の際または生体組織
の移植の際に個々の患者に厳密に適合する提供者を探す
ことは容易ではないが、この型を一致させることが輸血
や移植を成功させる上での大きな問題となる。
【0011】こうした問題は、組織と生着させるためま
たは組織の再生のためなどに用いられるインプラント材
の場合においても同様に生じる。このため、生物由来の
材料を用いると望ましい結果が得られると期待される場
合においても、組織適合抗原の型の不適合が回避でき
ず、これらが原因となって生着や組織の再生の際に拒絶
反応が生じるといった問題がある。ここで、インプラン
ト材とは、医療を目的で体内に埋植して用いる人工デバ
イスをいう。
【0012】さらに、上述のウシ由来のコラーゲンは、
シート状やフィルム状に成型した場合に、機械的強度が
やや弱く、狭い幅で使用すると切れ易いという問題点が
ある。また、これらを人工骨や人工軟骨に使用した場合
には、上記の生体適合性の問題に加えて、脆いという問
題点がある。加えて、クロイツフェルト・ヤコブ病の原
因となるプリオンの効果的な除去方法は未だ実用化され
ておらず、安全性の面から、早晩、使用できなくなる可
能性が大きい。
【0013】また、従来使用されてきたヒト硬膜につい
ても、各種のウイルスなどの除去を完全に行うことがで
きないため、安全性に問題があることから、輸入も国内
生産もできなくなっている。さらにまた、人工骨や人工
皮膚以外にも、神経や角膜の損傷もしくは欠損、各種器
官の機能不全や外科的切除などによって代替材料が必要
とされる場合もある。しかし、従来使用されてきた代替
材料では、強度もしくは組織への適合性などの問題は解
決されていない。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者は、以上
のような問題を解決すべく系統発生学的見地から鋭意研
究を進めた。その結果、上述した血液型物質と組織適合
抗原が進化の過程のあるステージにおいて発生したこと
を系統発生学的研究を通じて確認した。そして、進化の
段階を代表する動物について実際に組織の移植実験を行
い、拒絶反応が生じるか否かを調べたところ、硬骨魚類
または円口類の組織からの摘出物を他の動物に移植して
も拒絶反応が生じないこと、およびこれら由来の摘出物
が強靭であることを見出し、本発明を完成したものであ
る。
【0015】すなわち、本発明は、硬骨魚類または円口
類の組織からの摘出物またはこれらを含むことを特徴と
する医用生体材料である。ここで、上記摘出物は、硬骨
魚類一般の場合には骨であり、小型硬骨魚類の場合に
は、骨または角膜であることを特徴とし、これらから摘
出した骨を人工骨として、また、角膜を人工角膜として
使用する。円口類の場合には、上記摘出物は、皮膚組
織、神経組織、各種器官(肝、消化管など)または角膜
であることを特徴とし、これらを人工皮膚、人工神経、
人工器官または人工角膜としてそれぞれ使用する。
【0016】ここで、本発明の人工骨とは、硬骨魚類か
ら得られた骨またはこの骨を加工したものをいう。骨を
加工したものとは、硬骨魚から得られた骨を適用部位に
合わせて、加工・整形処理したものをいう。
【0017】また、本発明の創傷被覆材とは、単に皮膚
損傷部を物理的にカバーするだけの材料をいい、人工皮
膚とは皮膚移植にとって代わる可能性を持つ皮膚代替材
料をいうが、上記円口類に属する魚類から得られた皮膚
組織片を加工したものをいう。皮膚組織片を加工したも
のとは、例えば、上記皮膚組織のうちの粗性結合組織を
取り出し、これをコラーゲンやキチンなどのシートと重
層したものをいう。
【0018】人工神経組織とは、円口類から摘出した脊
髄神経組織自体をいう。人工器官とは、円口類から摘出
した肝、消化管、膵臓などを指し、場合によっては、こ
れらの組織をゼラチンやコラーゲンなどで被覆したもの
をいう。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の医用生体材料の作製に用
いる摘出物を得るために使用する魚類は、硬骨魚類また
は円口類である。ここで、硬骨魚類とは、少なくとも一
部が骨性の内骨格を有し、多くの骨膜で覆われる頭蓋を
有する魚類をいい、大型のものと小型のものとに大別さ
れる。大型の硬骨魚類としては、具体的には、マグロ、
カツオ、スズキなどを挙げることができる。小型の硬骨
魚類としては、シロザケなどのサケ類、マダイ、イシダ
イなどのタイ類、キンメダイ、ヒカリキンメダイなどの
キンメダイ類、マガレイ、ダルマガレイなどのカレイ
類、ハマチ、ブリ、もしくはニシンなどを挙げることが
できる。
【0020】円口類とは、無顎類に属するヤツメウナギ
目およびメクラウナギ目の魚類をいい、具体的には、ヤ
ツメウナギ、メクラウナギ、ヌタウナギなどを挙げるこ
とができる。
【0021】上記の大型の硬骨魚類から得られる摘出物
は骨であり、小型の硬骨魚類からは得られる摘出物は骨
または角膜である。ここで骨を摘出する部位は、大型の
硬骨魚の場合には特に限定されないため、適用する患部
の大きさに応じて、適宜、選択することができる。大型
の硬骨魚類、例えば、マグロなどの場合には、開腹して
解体し、骨を取り出す。ここで得られた骨のうち、適当
な大きさを有する部分(例えば、脊椎)から、大型のメ
スや電気エンジンなどを用いて、本発明の医用生体材料
として使用する骨を摘出する。小型の硬骨魚の場合に
は、脊椎など、ある程度の大きさを有する骨を摘出する
ことが好ましい。摘出した骨は、その後、必要に応じて
のこぎり、メスもしくは出刃包丁を用いて適宜整形し、
生理食塩水で洗浄処理するか、または、放射線などによ
って滅菌して患部に適用する。
【0022】角膜は、メスなどを用いて摘出し、本発明
の医用生体材料として使用する。摘出した角膜は、骨と
同様に、生理食塩水に浸漬処理して使用する。滅菌は、
まず、大量の生理食塩水で洗浄し、ついで第三世代の抗
生物質を含む生理食塩水で使用前に洗浄することによっ
て行う。角膜は、固有層と内層とから構成されている
が、大型の硬骨魚類の角膜は厚みがありすぎ、また、こ
れらの層を削って使用することはできないため、小型の
硬骨魚類からのものを使用することが好適である。
【0023】円口類から摘出される組織は、皮膚組織、
神経組織、ある種の器官(肝、膵または消化管など)ま
たは角膜である。本発明で使用する皮膚組織としては、
上記円口類の魚体のどの部分から摘出したものでも使用
することができるが、面積の大きな組織を摘出すること
ができる点で、背部から腹部にかけての皮膚組織を使用
することが好ましい。また、皮膚組織を構成する各組織
のうち、皮下組織を使用することが好ましい。ここで、
皮下組織とは、皮下の緩やかな線維性組織であって、そ
の網目に皮下粗性結合組織や筋組織を有し、下面で筋膜
とつながりをもつものをいう。
【0024】神経組織としては、円口軟類の脊髄の神経
組織を使用することが、10cm程度の長さの組織が得られ
るために好適である。円口類の神経組織の摘出につい
て、ヌタウナギを例に挙げて説明する。体長数十cmのヌ
タウナギの脳の部分を開いて延髄を切開した後に脊柱を
引っ張り出し、この脊柱から脊髄を取り出す。取り出し
た脊髄を、大量の生理食塩水で洗浄し、皮膚と同様に浸
漬処理することによって滅菌する。器官としては、肝、
膵または消化管などを挙げることができる。消化管とし
ては、胃から腸にかけての部分を使用する。
【0025】角膜については、上述した小型の硬骨魚類
と同様に摘出し、使用する。これらの硬骨魚類および円
口類からの摘出物が好適なのは、これらの魚類の摘出物
である皮膚組織や神経組織などの中に血液型物質や主要
組織適合抗原が存在せず、抗原性がないことによる。さ
らに、大型の硬骨魚類の骨は、生体適合性が高く、移植
後速やかにリモデリングされ、かつ、強度が高いので大
きな欠損部に使用できるという利点がある。また、入手
も容易である。本発明の医用生体材料の具体例として
は、創傷被覆材、人工皮膚、人工骨、人工軟骨、人工神
経、人工器官(人工膵臓や人工肝臓など)または人工角
膜などを挙げることができる。
【0026】創傷被覆材は、外部からの菌の侵入を阻止
して感染を防止することと内部からの水分の蒸泄を抑制
して脱水を防止することを目的とする薄いシート状のも
のであり、非吸収性のものと吸収性のものとに大別され
る。吸収性の創傷被覆材は、浸出液を吸収するとともに
材料は融解するものであり、非吸収性のものの形態はい
つまでも変わらない。
【0027】人工皮膚は、二度あるいは三度という重度
の皮膚欠損に対して用いられるもので、細胞を用いずに
材料のみから構成されたタイプと、ヒトの皮膚細胞を二
次元培養した培養皮膚と呼ばれるタイプとに大別され
る。本発明の医用生体材料は、抗原性のない円口類の皮
膚組織を含むものであるため、摘出した皮膚組織を加工
処理せずに使用した場合、および吸収性の創傷被覆材や
前者のタイプの人工皮膚の素材として加工した場合のい
ずれでも、生着がよくまた創傷治癒後の傷跡が目立たな
いという利点がある。
【0028】人工骨は、骨の有する機能の中で主として
荷重支持、荷重伝達、形状保持の機能を代替する材料を
いう。骨組織は、体の構造を構築し維持する働きと、カ
ルシウム代謝におけるカルシウム貯蔵の2つの働きを有
する。骨には細胞と骨基質とから構成されており、この
細胞は骨基質を作る骨芽細胞と骨基質を吸収する破骨細
胞とに分けられ、この2つの細胞の働きにより骨では絶
えずリモデリングと呼ばれる形成と吸収とが行われてい
る。
【0029】本発明の医用生体材料の1つである人工骨
は、硬骨魚類の骨を含むものである。人工骨は上記のよ
う高い強度を有する必要があるが、硬骨魚類の骨は、上
記の強度を有するために好適に使用することができる。
さらに、本発明の人工骨は、荷重支持などに十分な強度
を有し、抗原性がないため長期間の埋め込みに対しても
炎症などを起こすことがない。骨欠損の補填に使用する
場合には、例えば、4×3×3cm、3×2×2cm、1×
1×1cm、0.5×0.5×0.5cm、および1×1×0.3cm程度
の大きさの直方体または立方体とするとよい。
【0030】人工神経は、神経細胞からなる各種のシグ
ナルの伝達器官である神経系の欠損などについて使用す
ることができる。円口類から摘出する神経は、ある程度
の長さのものが必要であるために、脊髄を使用すること
が好適である。例えば、体長20cm程度のヌタウナギを使
用すると、15cm程度の長さの神経組織を得ることができ
る。このようにして得られた神経組織を人工神経として
使用する場合には、その長さを0.2〜15cm程度まで、好
ましくは、0.5cm×10cm程度とすると、摘出の際の損傷
も少なく、移植時の取り扱いが容易であり、かつ、保存
性がよいという利点を有する。また、本発明の人工神経
は、損傷された神経細胞の周囲の神経細胞にシグナルを
伝達し、神経組織の速やかな再生を促すことができる。
【0031】人工器官としては、肝、膵または消化管な
どを挙げることができる。これらの器官のうち、肝につ
いては、ヒトと円口類では代謝酵素のアイソザイムが異
なるが、解毒という点では問題なく使用することができ
る。膵については、ランゲルハンス島を取り出し、これ
を必要に応じてゲラチンやコラーゲンなどで巻いて移植
し、インシュリン産生のために使用することができる。
消化管としては、胃から腸にかけての部分を用い、これ
らを人工食道などとして使用することができる。
【0032】本発明の創傷被覆材または人工皮膚は、円
口類から摘出した皮膚組織を用いる場合には、上記皮下
組織を分離して整形し、適用部位の大きさに合致する大
きさに加工し、適用部位に載せて使用することができ
る。また、キチン、キトサン、ポリウレタンなどと上記
皮下組織とを重層して創傷被覆材または人工皮膚として
もよい。大きさおよび厚みは特に限定されるものではな
いが、使いやすさおよび保存の面から、例えば、大きさ
は5×5cm程度までとするとよい。また、厚みは0.5〜
1mm程度とすると、関節その他の動く部分に貼着したと
きに密着性が高く、関節の動きに良く追随するという利
点がある。また、浸出液が多い創傷、例えば火傷など、
が生じた部位に載せて使用する場合には、本発明の創傷
被覆材または人工皮膚に適宜小孔をあけておくことによ
り、機械的強度が著しく低下することなく透湿性が確保
され、浸出液が貯留されないという利点がある。
【0033】このようにして作製した創傷被覆材、人工
皮膚、人工骨または人工角膜、および人工神経は、抗原
性が低いために適用後に生体組織と速やかに融合し、傷
跡も残りにくい。また、上述した医用生体材料が人工骨
の場合にはリモデリングされやすいため、埋め込んだ骨
が吸収され、生体由来の骨が形成されてこれらと置き換
わるまでの時間が短く、また、このようにして生体由来
の骨と置き換わってしまうために、従来の金属を含む人
工骨と異なり、移植に起因する移植部位の周辺組織の壊
死が長期間の使用によっても起こらないという大きな利
点を有する。したがって、重傷の火傷、臓器の一部切
除、骨や関節の摘出後などに、生体代用品として使用す
るのに好適である。
【0034】さらに、本発明の医用生体材料は、創傷被
覆材、人工皮膚、人工骨、人工神経組織もしくは角膜な
どに成形した後に、放射線または超高圧(例えば、200M
pa)にて滅菌することができ、低温にて無菌的に保存す
ることもできる点からも医用生体材料として好適であ
る。
【0035】本発明の医用生体材料を保存する場合に
は、具体的には、生理食塩水または海水中にて−60℃の
条件で、6ヶ月程度の長期保存が可能である。したがっ
て、緊急に使用する必要が生じたときでも、十分に対処
が可能である。本発明の医用生体材料は、従来使用され
てきたウシやヒト由来の材料とは異なり、ウイルスによ
る感染症などのおそれはなく、また、安定して供給され
るため、ウシやヒト由来の代替品として好適である。
【0036】
【実施例】以下に本発明を具体例によって具体的に説明
するが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるもの
ではない。 (実施例1)ヌタウナギの皮膚の移植による拒絶反応の
検討 体長40〜50cmのヌタウナギ10匹を使用した。p-アミノ安
息香酸を海水中100ppmとなるように添加して麻酔
した。これらのヌタウナギの背面の皮膚を2×2cmの
大きさで摘出した。ヌタウナギの摘出片を同種間で移植
し、また、同じ大きさのヤツメウナギの摘出片をヌタウ
ナギへ移植した。対照にはヤツメウナギを用いた。対照
のヤツメウナギでは、上記のヌタウナギと同様、2×2
cmの大きさで皮膚を摘出し、これを摘出部位に再び戻し
た。
【0037】異種間および同種間の移植のいずれにおい
ても、術後2週間で各移植片は拒絶反応が生じることな
く生着した。3ヶ月後に、同種間の移植を行ったヤツメ
ウナギ間で再移植を行った。この再移植は、特に問題な
く成功した。また、ヌタウナギの移植片は、移植片の周
囲から組織と完全に同化していた。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】 表 1 移植型 移植片 移植動物 拒絶反応の有無 生着率 (%) 異種 ヌタウナギ皮膚 ヤツメウナギ なし 100 同種 ヌタウナギ皮膚 ヌタウナギ なし 100
【0039】表1に示したように、同種間においても、
種類の異なる円口類の間における皮膚移植においても、
拒絶反応は生じず、移植部位における炎症も移植片の脱
落も観察されなかった。
【0040】(実施例2)ヌタウナギの皮膚の移植によ
る拒絶反応の検討−2 実施例1で使用したと同じヌタウナギから、5×5×8
mmの移植用皮膚組織片を摘出し、カエル(ゼノプス、
体重30g)の背筋部および大腿筋部の筋肉を一部摘出
し、その空間部に移植した。移植後、24時間、48時間、
96時間、14日、2月間の観察では、なんらの拒絶反応
も、排除や壊死も観察されなかった。こうした拒絶反応
や炎症は、血液型物質や主要組織適合抗原の関与によっ
て生じることから、サメにおいてはこれらが存在しない
ことが示された。
【0041】(実施例3)ヌタウナギ由来皮膚組織の拒
絶反応の検討 実施例3で得られた皮膚組織を、イヌ3頭(ビーグル成
犬、雄、30kg)の背筋部に移植した。24時間、48時間、
96時間、14日、3月で観察し、移植後3ヶ月で摘出し病
理組織学的に観察したところ、なんらの炎症も惹起され
ていなかった。また、イヌ本来の皮膚組織が移植した部
分の周囲から造成されることが確認された。以上より、
ヌタウナギの皮膚組織は、異種動物に移植した場合でも
胎児性タンパク質と同様抗原性を示さないことが明らか
になった。すなわち、ヌタウナギの皮膚組織には、血液
型物質などが存在しないことが示唆された。
【0042】(実施例4)人工骨の作製と動物への埋め
込み 体長約2mのマグロを解体し、電気エンジンで脊椎を切
断して取り出し、適用する患部の大きさに合わせて大型
のメスを用いて整形して、2×2×5cmの人工骨とし
た。この人工骨を、大量の生理食塩水で洗浄し、0.5g/1
00mLのチエナムを含む生理食塩水に浸漬処理して殺菌し
た。大型の成犬(シェパード犬、体重40kg)の肋骨に孔
を開け、その孔に上記の人工骨を埋め込んだ。この埋め
込み手術の2月後に、埋込み部分の骨を取り出して、炎
症有無および同化の状況を検査した。その結果、何らの
炎症も見られず、また、移植した人工骨はこのイヌの骨
と同化していることが見出された。
【0043】(実施例5)体長40〜50cmのヌタウナギの
脳の部分を開いて、延髄の部分を1cm位切開し、ここか
ら脊椎を引っ張り出す。この脊椎から脊髄を取り出し、
0.5×10cmの神経組織を得た。この神経組織をマウス、
ラット、トリなどの哺乳動物に皮下移植して、生着を観
察した。
【0044】24時間、48時間、96時間、14日、3月に、
移植した組織を摘出して病理組織学的に観察し、また、
神経細胞の形態の観察も同時に行った。移植した神経細
胞と移植部分の周囲との間には特に炎症などの拒絶反応
は見られず、また、移植後少なくとも2ヶ月程度は神経
細胞の形態も保たれていた。以上より、ヌタウナギの神
経組織を人工神経として使用できることが示された。
【0045】(実施例6)ブリの眼からメスを用いて角
膜を5×5mmで摘出し、大量の生理食塩水で洗浄処理し
て人工角膜とした。移植前に、0.5g/100mLのチエナムを
含む生理食塩水でこの人工角膜を浸漬処理して殺菌し、
その後ウサギの眼に移植して生着を観察した。24時間〜
3ヶ月間観察したところ、特に、炎症や拒絶反応は認め
られなかった。以上より、上記の角膜を哺乳類のための
人工角膜として使用できることが示された。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、人工骨、創傷被覆材、
人工皮膚、人工神経、人工器官もしくは人工角膜などと
して使用可能な硬骨魚類由来の摘出物、円口類からの摘
出物を含む医用生体材料が提供される。本発明の医用生
体材料は、十分な強度を有し、生体適合性が高いため、
拒絶反応や炎症が生じない。さらに、各種のウイルスな
どの感染症の危険もなく、安全性に優れ、供給量も安定
している。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硬骨魚類の組織からの摘出物を含むこと
    を特徴とする医用生体材料。
  2. 【請求項2】 前記硬骨魚類が大型の硬骨魚類であり、
    前記摘出物が骨であることを特徴とする請求項1に記載
    の医用生体材料。
  3. 【請求項3】 前記硬骨魚類が小型の硬骨魚類であり、
    前記摘出物が骨または角膜であることを特徴とする請求
    項1に記載の医用生体材料。
  4. 【請求項4】 円口類の組織からの摘出物を含むことを
    特徴とする医用生体材料。
  5. 【請求項5】 前記摘出物が、皮膚組織、神経組織、
    肝、消化管および角膜からなる群から選ばれることを特
    徴とする請求項4に記載の医用生体材料。
JP9072041A 1997-03-25 1997-03-25 医用生体材料 Pending JPH10263069A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9072041A JPH10263069A (ja) 1997-03-25 1997-03-25 医用生体材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9072041A JPH10263069A (ja) 1997-03-25 1997-03-25 医用生体材料

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10263069A true JPH10263069A (ja) 1998-10-06

Family

ID=13477924

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9072041A Pending JPH10263069A (ja) 1997-03-25 1997-03-25 医用生体材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10263069A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6361562B1 (en) 1997-11-12 2002-03-26 Katsunari Nishihara Biomaterials

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6361562B1 (en) 1997-11-12 2002-03-26 Katsunari Nishihara Biomaterials

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5053470B2 (ja) グラフト・プロテーゼとその材料及び方法
Kesting et al. Amniotic membrane in oral and maxillofacial surgery
Zantop et al. Extracellular matrix scaffolds are repopulated by bone marrow‐derived cells in a mouse model of achilles tendon reconstruction
DE60026586T2 (de) Zellulare matrix
EP0091953B1 (en) Cell-seeding into fibrous lattices by means of centrifugation
US5990381A (en) Biomedical materials
US20020183857A1 (en) Vascular tissue composition
US7507254B2 (en) Inorganic bone graft materials using animal bone and method for preparing thereof
JP5789799B2 (ja) 多孔質体の製造方法、細胞又は組織供給用支持体の製造方法、及び組織供給体の製造方法
KR20100046037A (ko) 생체 내에서 유강장기 또는 유강장기의 일부분의 재생을 증진하기 위한 보철기구
JP6765540B2 (ja) 生着率を増加させた移植用真皮層及びその製造方法
JP2006230749A (ja) 軟骨組織に補綴材を固定するための材料
KR101229436B1 (ko) 골재생재 및 그 제조방법
Kumar et al. Reconstruction of large ventrolateral hernia in a buffalo with acellular dermal matrix: a method for treating large hernias in animals-a case report
US5916553A (en) Complex for inducing bone growth in the mastoid cavity
JPH10216214A (ja) 医用材料
CA2285161A1 (en) In vitro cultured ligament tissue and method of making same
JPH10263069A (ja) 医用生体材料
KR100644078B1 (ko) 양막과 생분해성 고분자로 구성된 이식용 진피대체물,이의 제조방법 및 용도
RU2433828C1 (ru) Инъекционный гетерогенный биополимерный гидрогель для заместительной и регенеративной хирургии и способ его получения
US6361562B1 (en) Biomaterials
US20230022665A1 (en) Preshaped biologic scaffolds
KR102673609B1 (ko) 생체 적합성 고분자를 사용한 조직의 섬유화 억제제
JP2000342677A (ja) 医用生体材料
KR20190036882A (ko) 생체 이식 또는 삽입용 무세포 진피의 제조방법