JPH10216214A - 医用材料 - Google Patents

医用材料

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JPH10216214A
JPH10216214A JP9311979A JP31197997A JPH10216214A JP H10216214 A JPH10216214 A JP H10216214A JP 9311979 A JP9311979 A JP 9311979A JP 31197997 A JP31197997 A JP 31197997A JP H10216214 A JPH10216214 A JP H10216214A
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JP
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collagen
artificial
tissue
skin
cartilage
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JP9311979A
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English (en)
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Katsunari Nishihara
克成 西原
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AIZU INTERNATL KK
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 軟骨魚類からの抽出物または摘出物を含
む医用材料、この抽出物とヒドロキシアパタイトとを含
む医用材料、およびこれらの製造方法を提供する。 【効果】 上記医用材料は、抗原性が低く生体適合性が
高い軟骨魚類由来の抽出物または摘出物を含むため、機
械的強度に優れ、安全性が高いばかりでなく、創傷被覆
材、人工皮膚、人工腱、人工骨、人工軟骨、または手術
用縫合糸などとして使用する際に、拒絶反応が生じず、
生体と速やかに癒合してリモデリングされやすく、治癒
後に傷痕も残りにくい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟骨魚類由来の抽
出物からなる医用材料に関する。より詳細には、軟骨魚
類からの抽出物を用いた、創傷被覆材、人工皮膚、人工
骨、人工軟骨、人工腱などの各種インプラント材に応用
可能な医用材料およびその製造方法、並びに軟骨魚類か
らの摘出物を用いた、人工皮膚、人工軟骨、および人工
筋肉などの各種インプラント材料に応用可能な医用材料
に関する。
【0002】
【従来の技術】外傷や骨腫瘍または先天性の疾患などの
病変によって、骨欠損を合併し、その補填が治療上必要
とされる場合がある。また、火傷などの外傷によって皮
膚に損傷が生じ、特に皮膚の全層または全層に近い欠損
が生じ、補填が必要となる場合がある。
【0003】従来、骨欠損を補填する場合、欠損量が大
きくなければ、腸骨や腓骨などの他の部位から採取した
自家骨移植で補われてきた。また、欠損量が大きい骨格
系の場合には、チタン、アルミナ、ジルコニアなどの金
属ないしそれらの酸化物のセラミックス、アパタイトな
どのセラミックスおよびそれらの複合材料を用いて人工
骨を作製し、これを用いて補われてきた。また、皮膚の
欠損を補填する場合には、非吸収性または吸収性の薄い
シート状の創傷被覆材や人工皮膚が用いられてきた。こ
こで、創傷被覆材とは単に皮膚損傷部を物理的にカバー
するだけの材料をいい、人工皮膚とは皮膚移植にとって
代わる可能性を持つ皮膚代替材料をいう。
【0004】非吸収性の薄いシート状の創傷被覆材とし
ては、ポリウレタン、シリコーンなどの薄い弾性のある
合成高分子シートなどを挙げることができ、吸収性のも
のとしては、凍結乾燥豚真皮、キチン、コラーゲン、ア
ルギン酸などが知られている。また、このようなシート
状の被覆材ではなく、創傷部に散布し、その上でシート
を形成させるセルロース誘導体粉末も知られている。人
工皮膚としては、細胞を用いない材料のみから構成され
た人工皮膚と、ヒトの皮膚細胞を二次元培養した培養皮
膚とが知られている。前者の人工皮膚の材料としては、
スポンジ状のコラーゲンが知られている。
【0005】上記のような用途に使用する材料は、生体
の側から見ると、積極的な機能を発揮しつつ生体になじ
む材料であること、すなわち、生体適合性があることが
求められる。生体適合性は、主に組織適合性と血液適合
性とに分けることができ、生体適合性の悪い材料を生体
内に埋植したり、生体と接触させたりすると、材料から
溶出した成分や表面から剥離した磨耗片などが、材料周
囲の組織に浸潤したり、血液循環によって全身性の組織
反応を引き起こし、組織の壊死など種々の問題を問題を
引き起こすことになる。一方、材料側から見ると、生体
との接触によっても材料自体が劣化せず、所要の機能を
満足できるような物理的・化学的性質などが所定の期間
維持されることが必要である。
【0006】さらに、これらの材料は、それらが接合さ
れる生体組織との間に機械的性質において大きな差がな
いこと、すなわち、力学的適合性を備える必要がある。
これは、接合部近傍で応力集中や変形の不適合が生じる
ことにより、この部分に破損や異常が起こり、結果的に
目的とする機能が発揮されなくなることを防ぐためであ
る。こうした材料はまた、滅菌や消毒を完全に行うこと
ができ、これらの処理に耐える性質のものであることも
要求される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の材料には、幾つかの問題点があることが指摘さ
れている。例えば、金属は非常に強度が高いため、生体
機能の代替物の骨格として欠かすことができない。しか
し、金属を骨欠損の補填に使用した場合、生体は金属を
自己の体の一部とは認識しないため長期の使用では問題
がある。また、生体とよりなじみやすいセラミックスで
金属をコーティングしても、長期の使用によってセラミ
ックスが脱落してしまうという欠点があり、実用化レベ
ルに達していない。
【0008】また、創傷被覆材や人工皮膚には、主とし
てコラーゲンが用いられているが、こうしたコラーゲン
はウシ由来のものである。こうしたウシ由来のコラーゲ
ンには、抗原性のあることが知られており、特別な処理
を行うか、抗原性のない胎児性のコラーゲンを用いる必
要がある。ヒトの血液には血液型があり、組織には主要
組織適合抗原がある。血液型が一致しない血液を輸血す
ると拒否反応が惹起されて輸血を受けた患者が死亡する
場合があることはよく知られている。こうした型として
は、ABO式、Rh式、Ii式、P式、およびMN式血液型その他
の血液型が数多く知られている。このため、輸血や骨髄
移植、生体臓器移植の際または生体組織の移植の際に個
々の患者に厳密に適合する提供者を探すことは容易では
ないが、この型を一致させることが輸血や移植を成功さ
せる上での大きな問題となる。
【0009】こうした問題は、組織と生着させるためま
たは組織の再生のためなどに用いられるインプラント材
の場合においても同様に生じる。このため、生物由来の
材料を用いると望ましい結果が得られると期待される場
合においても、組織適合性抗原の型の不適合が回避でき
ず、これらが原因となって生着や組織の再生の際に拒絶
反応が生じるといった問題がある。ここで、インプラン
ト材とは、医療を目的で体内に埋植して用いる人工デバ
イスをいう。
【0010】さらに、上述のウシ由来のコラーゲンは、
シート状やフィルム状に成型して創傷被覆材または人工
皮膚とした場合に、機械的強度がやや弱く、狭い幅で使
用すると切れ易いという問題点がある。また、これらを
人工骨や人工軟骨に使用した場合には、上記の生体適合
性の問題に加えて、脆いという問題点がある。加えて、
クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となるプリオンの効
果的な除去方法は未だ実用化されておらず、安全性の面
から、早晩、使用できなくなる可能性が大きい。
【0011】創傷被覆材もしくは人工皮膚または人工骨
以外にも、軟骨の損傷もしくは骨欠損に伴う軟骨の欠損
などによって代替材料が必要とされる場合があり、ま
た、疾病や外傷による組織の損傷によって人工筋肉など
の移植が必要とされる場合もある。しかし、これまでの
ところ、強度もしくは組織への適合性などの問題は解消
されておらず、実用化レベルにある人工筋肉や人工軟骨
はないのが現状である。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者は、以上
のような問題を解決すべく系統発生学的見地から鋭意研
究を進めた。その結果、上述した血液型物質と組織適合
抗原が進化の過程のあるステージにおいて発生したこと
を発生系統学的研究を通じて確認した。そして、進化の
段階を代表する動物について実際に組織の移植実験を行
い、拒絶反応が生じるか否かを調べたところ、軟骨魚類
の組織からの抽出物および/または摘出物を他の動物に
移植しても拒絶反応が生じないこと、およびこれら由来
の抽出物および/または摘出物が強靭であることを見出
し、本発明を完成したものである。
【0013】すなわち、本発明は、軟骨魚類の組織から
の抽出物または摘出物を含むことを特徴とする医用材料
である。ここで、上記抽出物はコラーゲンであり、上記
摘出物は、皮膚組織、筋肉組織、および軟骨からなる群
から選ばれるものであることを特徴とする。また、上記
医用材料のうち、上記軟骨魚類からの抽出物を用いる場
合には、この抽出物に加えてヒドロキシアパタイトをさ
らに含むことが好ましい。さらに、ヒアルロン酸、コン
ドロイチン硫酸、各種アミノ酸および各種核酸からなる
群から選ばれる1種以上の化合物をさらに含むものとし
てもよい。
【0014】また、本発明は、軟骨魚類の組織からの抽
出物をシート状、フィルム状、または糸状に成型するこ
とを特徴とする上記医用材料の製造方法である。さらに
また、本発明は、軟骨魚類の組織から得られた抽出物と
ヒドロキシアパタイトとを混合し、低温で焼結するこを
特徴とする上記医用材料の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の医用材料の作製に用いる
抽出物または摘出物を得るために使用する軟骨魚類とし
ては、板鰓類に属する魚類が好適であり、サメ類もしく
はエイ類などを好適に使用することができ、サメ類を最
も好適に使用することができる。サメ類としては、シロ
ザメ、ホシザメ、ドチザメ、ネコザメなどを挙げること
ができる。エイ類としては、イトヒキエイ、アカエイ、
ノコギリエイなどを挙げることができる。
【0016】これらの軟骨魚類から得られる抽出物は、
具体的には、コラーゲンである。コラーゲンは、すべて
の多細胞動物に見られる特有な繊維タンパクである。哺
乳類では最も大量に存在し、全タンパク質の25%を占め
る。これまでに、遺伝的に区別可能な7種のコラーゲン
α鎖が知られており、I、II、III、IV、およびV型が知
られている。コラーゲンは、種々の組織から抽出して得
ることができる。例えば、皮膚もしくは腱、または靭帯
などから抽出する場合には、酸で抽出を行い、脱塩して
液状コラーゲンとして得ることができる。骨や象牙質か
ら抽出する場合には、これらを粉砕し、EDTA(エチレン
ジアミン四酢酸)で脱灰し、得られた不溶性コラーゲン
を緩衝液に懸濁し、加熱処理と酵素消化などを組み合わ
せ、脱塩して液状コラーゲンとして得ることができる。
【0017】以上のようにしてサメ類から得られたコラ
ーゲンを、以下サメ由来コラーゲンといい、エイ類から
得られたものをエイ由来コラーゲンという。また、これ
らの軟骨魚類から得られる摘出物は、具体的には、皮膚
組織、筋肉組織、軟骨、およびヒレからなる群から選ば
れるものである。
【0018】本発明で使用する皮膚組織としては、上記
軟骨魚類の魚体のどの部分から摘出したものをも使用す
ることができるが、面積の大きな組織を摘出することが
できる点で、背部から腹部にかけての皮膚組織を使用す
ることが好ましい。また、皮膚組織を構成する各組織の
うち、皮下組織を使用することが、移植手技と術後管理
の点から好ましい。ここで、皮下組織とは、皮下の緩や
かな線維性組織であって、その網目に皮下粗性結合組織
層や筋組織を有し、下面で筋膜とつながりをもつものを
いう。
【0019】筋肉組織としては、上記軟骨魚類の魚体の
どの部分から摘出したものでも使用することができる
が、大きな組織を切り出せることから、背部から腹にか
けての筋肉組織を使用することが好ましい。軟骨魚類か
ら摘出した皮膚組織または筋肉組織は、大量の滅菌した
生理食塩水で洗浄し、使用時に抗生物質を含む生理食塩
水に浸漬して使用する。ここで使用する抗生物質は注射
用のものであれば特に世代や種類には制限されない。具
体的には、シオマリン、ストレプトマイシン、セフォタ
キシム、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフォペラ
ジンなどを挙げることができる。
【0020】軟骨としては、軟骨魚類は軟骨性の内骨格
と軟骨頭蓋とを有するため、どの部分の軟骨を使用する
こともできる。しかし、摘出物の大きさや摘出後の加工
性などの面から脊椎を使用することが好ましい。
【0021】これらの軟骨魚類からの抽出物もしくは摘
出物が好適なのは、現代に生きている古代生物の代表の
1つとして知られるサメ類およびエイ類由来には、抽出
物であるコラーゲンまたは摘出物である皮膚組織や筋肉
組織などの中に血液型物質や主要組織適合抗原が存在せ
ず、抗原性がないためである。さらに、サメ類やエイ類
のヒレや軟骨には、コラーゲンが単体に近い型で存在す
るため精製が容易であり、皮膚や歯からも、脱灰により
容易にコラーゲンを得ることができるという利点があ
る。
【0022】本発明の医用材料の具体例としては、上記
の軟骨魚類からの抽出物または摘出物を含む創傷被覆
材、人工皮膚、人工骨、人工軟骨、人工筋肉、人工腱、
手術用縫合糸などを挙げることができる。
【0023】創傷被覆材は、外部からの菌の侵入を阻止
して感染を防止することと内部からの水分の蒸泄を抑制
して脱水を防止することを目的とする薄いシート状のも
のであり、非吸収性のものと吸収性のものとに大別され
る。吸収性の創傷被覆材は、浸出液を吸収するとともに
材料は融解するものであり、非吸収性のものの形態はい
つまでも変わらない。
【0024】人工皮膚は、二度あるいは三度という重度
の皮膚欠損に対して用いられるもので、細胞を用いずに
材料のみから構成されたタイプと、ヒトの皮膚細胞を二
次元培養した培養皮膚と呼ばれるタイプとに大別され
る。
【0025】本発明の創傷被覆材または人工皮膚は、軟
骨魚類から抽出したコラーゲンと他の材料とを混合して
作製することもできる。他の材料としては、キチンやキ
トサンその他の適当な高分子物質を挙げることができ
る。本発明の創傷被覆材または人工皮膚は、コラーゲン
と他の物質とから作製する場合には、平膜状、スポンジ
状など種々の形状とすることができ、創傷の程度や部位
に応じて使い分けることができる。また、例えば、サメ
などの皮膚組織を摘出し、表皮を紙ヤスリやメスなどで
削って除去し、無機の酸で処理して粗性結合組織を分離
し、人工皮膚とすることもできる。ここで使用する無機
の酸としては、塩酸、次亜塩素酸などを挙げることがで
きる。
【0026】本発明の創傷被覆材および人工皮膚は、抗
原性のない軟骨魚類由来のコラーゲンまたは皮膚組織を
含むものであるため、摘出した皮膚組織を加工処理せず
に使用した場合および吸収性の創傷被覆材や前者のタイ
プの人工皮膚の素材とした場合のいずれでも、生着がよ
くまた創傷治癒後の傷跡が目立たないという利点があ
る。
【0027】人工骨は、骨の有する機能の中で主として
荷重支持、荷重伝達、形状保持の機能を代替する材料を
いう。骨組織は、体の構造を構築し維持する働きと、カ
ルシウム代謝におけるカルシウム貯蔵の2つの働きを有
する。骨は細胞と骨基質とから構成されており、この細
胞は骨基質を作る骨芽細胞と骨基質を吸収する破骨細胞
とに分けられる。この2つの細胞の働きにより骨では絶
えずリモデリングと呼ばれる形成と吸収とが行われてい
る。
【0028】骨基質は重量の20%を占める有機成分と、
80%を占める無機成分とからなる。この有機成分の90%
はI型コラーゲンであり、無機成分はヒドロキシアパタ
イトである。したがって、生体適合性の高い人工骨はコ
ラーゲンとヒドロキシアパタイトとからなるものである
ことが好ましい。また、上記のように骨は荷重支持や荷
重伝達などの機能を担うものであるため、これらの荷重
に耐える強度を有する必要がある。さらに、体内に長期
間埋めこまれて使用されるものであるため、抗原性のな
いコラーゲンを使用することが必要となる。
【0029】ヒドロキシアパタイトは、式Ca10(PO4)6(O
H)2 で表されるリン酸カルシウム系の代表的なセラミッ
クスの1つであり、歯や骨の無機質の主成分である。組
織との親和性に優れ、骨充填材、骨置換材としてすでに
市販され、その焼結体は圧縮強度や曲げ強度において骨
より優れている。一般的に、ヒドロキシアパタイト焼結
体の圧縮強度、曲げ強度およびヤング率などはヒドロキ
シアパタイトの処理条件によって異なるが、圧縮強度で
約900kg/cm2前後、曲げ強度で700 kg/cm2以上と非常に
高い値が得られているものの、衝撃に弱いという欠点が
ある。
【0030】また、ヒドロキシアパタイトの合成は、10
0℃以下の水溶液反応によってカルシウムイオンとリン
酸イオンとを反応させる湿式法、空気中または水蒸気雰
囲気中、1,000℃付近の高温でカルシウムとリン酸とを
固相反応させる乾式法、オートクレーブを用いて、高
温、高圧下の水溶液反応を利用して合成する水熱法など
によって行われる。合成されたヒドロキシアパタイト
は、金型、ラバーなどを用いた各種の成形が可能であ
り、生体材料として緻密体、顆粒、粉体、および多孔質
体がある。
【0031】本発明の医用材料の1つである人工骨は、
ヒドロキシアパタイトと抗原性のない軟骨魚類由来のコ
ラーゲンとを含む、ヒドロキシアパタイト−コラーゲン
複合体である。人工骨に強度を持たせるためには、ヒド
ロキシアパタイトとコラーゲンとを焼結する必要がある
が、通常の焼結条件(1,000℃前後)ではコラーゲンが
残らないため、後述のように低温で焼結することが必要
である。本発明においては、ヒドロキシアパタイト、コ
ラーゲンおよびその他の成分とを後述するような低温、
高圧法にて焼結する。
【0032】本発明の人工骨に使用するヒドロキシアパ
タイトは、成型および取り扱いの面から粉体、板状体ま
たは多孔体であることが好ましく、粉体であることがさ
らに好ましい。このヒドロキシアパタイト粉体の粒径
は、金型やラバーなどの治具を用いて焼結体を作製でき
る大きさであれば特に限定されないが、数μm以下であ
ると、成型も容易で強度が焼結体を得ることができる。
このようなヒドロキシアパタイト(単体)としては、ア
パセラム(旭光学社製)などを挙げることができる。低
温で焼結した本発明の人工骨は、荷重支持などに十分な
強度を有し、耐衝撃性も大きく、また、抗原性がないた
め長期間の埋め込みに対しても炎症などを起こすことが
ない。
【0033】人工軟骨は、軟骨組織からなる支持器官で
ある軟骨の代替品として使用するものをいう。軟骨は、
脊椎動物でよく発達し、一般的には生体の骨格の一部、
呼吸気道などの管状器官壁、関節の摩擦面などに見られ
る。軟骨組織は、軟骨細胞と軟骨基質とからなる繊維状
結合組織の一種で、軟骨基質の50〜60%がコラーゲンで
あり、その他ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの
グリコサミノグリカンを含む。
【0034】本発明の人工軟骨は、上記軟骨魚類からの
摘出物を使用してもよく、また、コラーゲンなどの他の
成分とヒドロキシアパタイトとを低温で焼結させて製造
してもよい。上記軟骨魚類からの摘出物を使用する場合
には、例えば、これらの脊椎を摘出して、メスなどを用
いて四角に整形するか、トレパンなどを用いて丸ぬきし
て使用することができる。また、上記のコラーゲン、ヒ
ドロキシアパタイト、その他の成分を用いて、後述する
ように作製することもできる。その他の成分としては、
ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、各種核酸類、各種
アミノ酸類などの各成分をいい、これらを少なくとも1
種以上含有すると、生体適合性に加えて潤滑性が向上す
る。
【0035】ヒアルロン酸は、0-β-D- グルクロノシル
(1→3)-N- アセチル-D- グルコサミニル(1→4)
単位の二糖だけの繰返し構造を持つグリコサミノグリカ
ンの一種である。ヒアルロン酸は多量の水と結合してゲ
ルをつくる性質を有するため、関節を潤滑に動かすため
などに必要である。本発明に用いるヒアルロン酸は、市
販品を使用することができる。
【0036】コンドロイチン硫酸は、軟骨を中心に一般
の動物の結合組織に分布するグリコサミノグリカンの1
種であり、組織の弾性や抗張力を支える。O-β-D- グル
クロノシル(1→3)-N- アセチル-D- ガラクトサミン
-4- 硫酸単位を含むものの他、硫酸基をN-アセチルガラ
クトサミンの6位に有するもの、N-アセチルガラクトサ
ミン-4,6- 二硫酸、グルクロン酸-2(または3)- 硫酸
などを含むものを使用することもできる。
【0037】ここで、各種核酸類とは、一本鎖または2
本鎖のDNAまたはRNAをいう。これらの核酸類は、直鎖状
または環状のいずれの形状であってもよく、鎖長も特に
限定されない。また、各種アミノ酸類とは、必須アミノ
酸の他、アミノアジピン酸、アミノカプロン酸、エチル
グリシン、メチルバリン、オルニチンその他の修飾アミ
ノ酸および通常のタンパク質に含まれないアミノ酸など
をいう。これらの核酸およびアミノ酸についても、シグ
マ社などからの市販品を使用することができる。
【0038】これらの成分を1種以上含有すると、抗張
力、弾力に優れた人工骨や人工軟骨、あるいはチャンバ
ーを作る上で好適である。ここで、チャンバーとは、人
工軟骨や人工骨を用いる生体内組織培養器であって、こ
のチャンバー内において生体環境を整え、組織を生存さ
せる作用を有するものをいう。上記の各成分は、ヒドロ
キシアパタイト重量の5〜10%程度を含有させると、生
体適合性が高い人工骨または潤滑性にも優れる人工軟骨
を製造する上で最も好適である。
【0039】また、本発明の軟骨魚類のコラーゲンを含
む人工皮膚や縫合糸を作製する場合には、上述の成分の
他、抗菌剤や抗生物質を含浸させることが好ましい。こ
れらを含有させることにより、抗菌効果を有する医用材
料とすることができる。抗菌剤としては、従来使用され
てきた抗菌剤を自由に使用することができる。具体的に
は、スルファジアジン銀、スルファジアジン亜鉛、スル
ファジアジンセリウムなどのサルファ系抗菌剤;硫酸ゲ
ンタマイシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸フラジオ
マイシンなどのアミノグリコシド系抗菌剤;アンピシリ
ン、メチシリンナトリウムなどのペニシリン系抗生物質
その他の抗生物質などを挙げることができる。
【0040】本発明の創傷被覆材または人工皮膚は、軟
骨魚類から抽出したコラーゲンを使用する場合には、こ
のコラーゲンと他の材料とを適宜混合して平膜としても
よく、スポンジ層として作製してもよい。また、上記コ
ラーゲンを含む層と他の材料を含む層とを重ねて作製し
てもよい。ここで使用する他の材料としては、キチン、
キトサン等の多糖類、ポリウレタンなどの高分子物質を
挙げることができる。創傷被覆材または人工皮膚として
軟骨魚類の皮膚組織を使用する場合には、上述したよう
に、表皮を除去して酸で処理し、粗性結合組織をスポン
ジ状にして作製してもよく、また、例えば、キチン、キ
トサン、ポリウレタンなどと重層して作製してもよい。
【0041】本発明の創傷被覆材および人工皮膚は、組
織の欠損部位に載せて使用する。本発明の創傷被覆材お
よび人工皮膚は、創傷部への密着性がよく、関節部位の
創傷に適用した場合にもそれら関節の動きによく追随す
る。また、浸出液が多い創傷、例えば火傷などに平膜と
した本発明の創傷被覆材および/または人工皮膚を適用
する際には、これらに適宜小孔をあけておくと機械的強
度が著しく低下することなく透湿性が確保され、浸出液
が貯留されないという利点がある。
【0042】軟骨魚類由来のコラーゲンを含む本発明の
創傷被覆材または人工皮膚を、サメ由来コラーゲンを用
いてスポンジとして作製する場合には、以下のように行
なう。まず、公知の方法によりサメ類のヒレからコラー
ゲンを抽出精製する。得られた液状コラーゲンを上述し
た所望の成分と適宜混合して希釈し、適当な大きさの容
器に流し入れて凍結乾燥させ、スポンジを作製する。ス
ポンジの大きさまたは厚みは特に限定されないが、使い
やすさおよび保存などの面から、10×10cm以下の大きさ
とすることが好ましい。5×5cm、5×2cm、または2
×1cm程度とすることがさらに好ましい。また、厚みは
機械的強度などの面から、1mm以下とすることが好まし
く、0.5 mm程度にすると、関節その他の動く部分に貼着
したときに密着性が高く、関節の動きに良く追随すると
いう利点がある。
【0043】軟骨魚類から摘出した皮膚組織やヒレを創
傷被覆材または人工皮膚とする場合には、例えば、以下
のように行う。まず、軟骨魚類(例えば、サメ)の皮膚
をのこぎりなどを用いて、粗性結合組織ごと適当な大き
さで切り出す。次に、適当な表面粗度を有する紙ヤスリ
やメスなどを用いて、硬い表皮を削り落とし、その後、
適当な濃度の次亜塩素酸などの無機の酸で処理し、スポ
ンジ状にして創傷被覆材または人工皮膚とする。この場
合にも、大きさおよび厚みは特に限定されるものではな
いが、使いやすさおよび保存の面から、大きさは5×5
cm程度とするとよく、5×2cm、または2×1cm程度と
することがさらに好ましい。また、厚みは0.5〜1mm程度
とすると、関節その他の動く部分に貼着したときに密着
性が高く、関節の動きに良く追随するという利点があ
る。
【0044】また、上述のコラーゲンから公知の方法で
繊維を作製し、これを撚り合わせて、または単繊維のま
まで手術用縫合糸として使用することもできる。また、
コラーゲンから作製した繊維を編んだり、織ってリボン
状にして、人工靭帯や人工腱として使用してもよい。作
製する繊維の太さは、用途によって適宜選択すればよ
く、特に限定されないが、人工靭帯や腱とする場合には
100μm以下、好ましくは60μm程度の繊維を束にして
編んでブレードを作製する。
【0045】軟骨魚類から摘出した腱もしくは筋肉組織
を、それぞれ人工腱、人工筋肉として使用する場合に
は、例えば、以下のように行う。人工腱とする場合に
は、例えば、軟骨魚類のヒレの付け根から腱をメスなど
を用いて適当な大きさで摘出し、2×5cm程度までの大
きさに適宜整形し、人工腱として使用する。筋肉組織の
場合にも、同様の処理を行う。2×5cm以上の大きさで
は、さらに大きな患部への適用を考えると、加工性の問
題が生じるため、これ以下の大きさで使用することが好
ましい。適用する部位の大きさや形に応じて、摘出した
腱もしくは筋肉組織をメスなどを用いて適宜整形して使
用する。
【0046】このようにして作製した人工皮膚、人工靭
帯や人工腱は、主成分である軟骨魚類由来コラーゲンお
よび上記各組織が抗原性を持たないものであるため、患
部に適用された後に、生体組織と速やかに融合し、傷跡
も残りにくい。
【0047】軟骨魚類由来のコラーゲンを加工して人工
骨や人工軟骨とする場合には、上記コラーゲン溶液と上
述したヒドロキシアパタイトとを所望の比率で混合し
て、低温高圧下で焼結する。上記コラーゲン溶液の濃度
は、1〜5%、好ましくは約2%とすることが好適であ
る。ここで使用するヒドロキシアパタイトとしては、粒
径数μm以下のものが好ましく、上述したアパセラムな
どを好適に使用することができる。
【0048】コラーゲン溶液を約5〜30倍、好ましくは
十数倍に希釈して、0.5〜1Mのリン酸溶液と混合す
る。水酸化カルシウム溶液を調製して、コラーゲン−リ
ン酸混合液と混合して水性懸濁液を調製し、ヒドロキシ
アパタイトと混合する。上記水性懸濁液とヒドロキシア
パタイトとの混合比(w/v) は、0.1:9.9〜2.0:8.0の範囲
が好ましく、1.0:9.0とすると、圧縮強度および曲げ強
度が高く、かつ脆性が小さくなるという効果を有する。
【0049】ここで生成された沈殿の含水量を、例え
ば、凍結乾燥器などを用いて減少させ、適当な容器に充
填して焼結し、人工骨を作製する。本発明の人工骨は、
水の存在下に、超高圧、低温で焼結させて作製する。具
体的には、水の存在下に、数千気圧、好ましくは約2,00
0気圧、温度は35〜45℃、好ましくは約40℃で、数時間
〜十数時間、好ましくは8時間程度焼結させると、タン
パク質であるコラーゲンの変性が起こることなく、強度
の大きい人工骨およびを得ることができる。
【0050】これらの小片を作製するためには、金型、
ラバー、ホットプレスその他の成形法によって成形す
る。例えば、金型を使用する場合には、上記の混合比の
混合物を金型に入れ、水の存在下に、超高圧、低温で焼
結させる。このような焼結体は、緻密または多孔質のい
ずれであってもよい。例えば、骨欠損の補填に使用する
場合には、4×3×3cm、3×2×2cm、1×1×1c
m、0.5×0.5×0.5 cm、および1×1×0.3 cm程度の大
きさの直方体または立方体などの各種形状を有する焼結
体の中から、適用部位に応じて適宜選択する。
【0051】また、上記の人工骨の作製の際に、ヒドロ
キシアパタイト重量の5〜10%のアミノ酸、ヒアルロン
酸、コンドロイチン硫酸などの成分を少なくとも1種類
以上添加すると、潤滑性に優れた人工軟骨を作製するこ
とができる。軟骨魚類の脊椎を摘出して使用する場合に
は、メスやトレパンなどによって角型もしくは丸型に整
形し、大量の滅菌生理食塩水で洗浄処理を行う。整形時
の大きさは、2×5cm程度までとすることが、移植手技
の都合および移植後の生着が好適となることから好まし
い。
【0052】このようにして作製された小片を骨欠損部
位や軟骨欠損部位に埋め込むと、上述した人工皮膚など
の場合と同様に、抗原性がきわめて低いために、これら
の人工骨や人工軟骨などは拒絶反応を生じさせることな
く、生体と速やかに癒合してリモデリングされる。この
結果、埋め込んだ骨が吸収され、生体由来の骨や軟骨結
合が形成されてこれらと置き換わるまでの時間が短い。
また、このようにして生体由来の骨や軟骨結合組織と置
き換わってしまうために、本発明の人工骨などを移植し
たことが原因となって、移植部位の周辺組織が壊死する
こともないという大きな利点を有する。
【0053】さらに、本発明の創傷被覆材または人工皮
膚、人工腱、人工軟骨、もしくは人工骨などは、成形後
に放射線または超高圧にて滅菌することができ、低温に
て無菌的に保存することもできる点からも医用材料とし
て好適である。具体的には、本発明の軟骨魚類由来のコ
ラーゲンを含む医用材料は、生理食塩水中にて−60℃で
6ヶ月程度保存することができる。上記軟骨魚類からの
摘出物を含む医用材料の場合にも、生理食塩水または海
水中にて−60℃の条件で、6ヶ月程度の長期保存が可能
である。したがって、本発明の医用材料を緊急かつ大量
に使用する必要が生じたときでも、十分に対処が可能で
ある。
【0054】
【実施例】以下に本発明を具体例によって具体的に説明
するが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるもの
ではない。 (実施例1)サメの皮膚の移植による拒絶反応の検討 体長60cmのネコザメ1匹および体長100 cmのドチザメ3
匹とを使用した。p-アミノ安息香酸を海水中100ppmとな
るように添加して麻酔した。これらのサメの背面の皮膚
を楯鱗ごと2×2cmの大きさで摘出した。ネコザメから
の摘出片を1匹のドチザメへ移植し、また、このドチザ
メからの摘出片をネコザメへ移植した。他の2匹のドチ
ザメは、同種間で移植を行った。対照にはドチザメを用
いた。対照のドチザメは、上記のサメと同様、2×2cm
の大きさで皮膚を楯鱗ごと摘出し、これを摘出部位に再
び戻した。
【0055】異種間および同種間の移植のいずれにおい
ても、術後2週間で各移植片は拒絶反応が生じることな
く生着した。3ヶ月後に、同種間の移植を行ったドチザ
メ間で再移植を行った。この再移植は、特に問題なく成
功した。また、ネコザメの移植片は、移植片の周囲から
ドチザメの楯鱗で完全に覆われていた。結果を表1に示
す。
【0056】
【表1】
【0057】表1に示したように、同種間のサメ、種類
の異なるサメの間における皮膚移植のいずれにおいて
も、拒絶反応は生じず、移植部位における炎症も移植片
の脱落も観察されなかった。
【0058】(実施例2)サメの筋肉の移植による拒絶
反応の検討 実施例1で使用したと同じドチザメから、5×5×8mm
の移植用筋肉片を摘出し、カエル(ゼノプス、体重30
g)の背筋部および大腿筋部の筋肉を一部摘出し、その
空間部に移植した。移植後、24時間、48時間、96時間、
14日、2月間の観察では、なんらの拒絶反応も、排除や
壊死も観察されなかった。こうした拒絶反応や炎症は、
血液型物質や主要組織適合抗原の関与によって生じるこ
とから、サメにおいてはこれらが存在しないことが示さ
れた。
【0059】(実施例3)サメ由来のコラーゲンの調製
およびスポンジシートの作製 (1)サメ由来のコラーゲンの調製 ドチザメの新鮮皮膚および軟骨を微細に粉砕し、定法に
より可溶化されたコラーゲンを沈殿させた。沈殿したコ
ラーゲンをとり、これを脱塩してサメ由来の可溶化コラ
ーゲン溶液を得た。また、サメのヒレを、定法に従って
処理して可溶性コラーゲンを得た。 (2)サメ由来のコラーゲンを用いたスポンジシートの
作製 上記のようにして得られた可溶性コラーゲンを希釈し、
容器に流し入れて−20℃で凍結乾燥させ、大きさが5×
5cm、5×2cm、および2×1cm、厚みが0.5mmのスポ
ンジシートを作製した。
【0060】(実施例4)サメ由来コラーゲンの拒絶反
応の検討 実施例3で得られたコラーゲンのスポンジシートを、イ
ヌ(成犬、30kg)の背筋部移植した。24時間、48時間、
96時間、14日、3月に摘出し病理組織学的に観察したと
ころ、なんらの炎症も惹起されていなかった。以上よ
り、サメ由来コラーゲンは、異種動物に投与した場合で
も胎児性タンパク質と同様抗原性を示さないことが明ら
かになった。すなわち、サメ由来コラーゲンには、血液
型物質などが存在しないことが示唆された。
【0061】(実施例5)人工骨の作製 実施例3で得たコラーゲン溶液のコラーゲン濃度を2%
に調製した。このコラーゲン溶液500 mLを8Lに希釈
し、0.6 Mのリン酸と混合して、コラーゲン−リン酸混
合液を調製した。1モルの炭酸カルシウム(CaCO3) を空
気中で、900℃に10時間維持した。このようにして形成
された酸化カルシウム(CaO) を乳鉢中で砕いて微細粉と
し、3Lの水と混合して水酸化カルシウム(Ca(OH)2) 水
溶液を生成させた。このCa(OH)2水溶液を激しく攪拌
し、ここに上記のコラーゲン−リン酸混合液を室温でゆ
っくりと添加し、水性懸濁液を調製した。ヒドロキシア
パタイトに対するコラーゲンの混合比は、1:10とし
た。
【0062】生成された沈殿をろ別し、沈殿の含水量が
焼結に適当な量となるまで凍結乾燥した。次いで、この
沈殿を金属製の容器に充填し、容器内の空気を排気し、
溶接して200MPa、40℃で8時間維持した。以上のように
して直径22mm、長さ50mmの人工骨を作製した。この人工
骨のみかけの密度は1.75 mg/mL、ヤング率は2GPa、圧
縮強度は6.5MPaであった。
【0063】(実施例6)人工骨の動物への埋め込み 大型の成犬(シェパード犬、体重30kg)の肋骨に孔を開
け、その孔に実施例5で得た人工骨を埋め込んだ。この
埋め込み手術の2月後に、埋込み部分の骨を取り出し
て、炎症有無および同化の状況を検査した。その結果、
何らの炎症も見られず、また、移植した人工骨はこのイ
ヌの骨と同化していることが見出された。
【0064】(実施例7)人工皮膚の移植例 ドチザメから5×5cmの皮膚組織を楯鱗ごと摘出し、表
皮をメスではがし、5%の次亜塩素酸を含む生理食塩水
溶液で約5分間浸漬処理して、粗性結合組織とした。こ
のようにして得た皮膚組織を人工皮膚として、背部の皮
膚を剥がしたSDラットに移植し、実施例4の場合と同様
に生着を観察した。その結果、上記の期間中には何らの
炎症も起こらず、生着も良好であった。また、ラットの
皮膚が移植片の周辺部から浸潤し、最終的には移植した
ドチザメの皮膚がラットの皮膚と置きかわったことが観
察された。
【0065】(実施例8)異種動物間における筋肉代替
材料の移植例 ドチザメの皮膚組織をのこぎりで切開し、筋肉組織をメ
スを用いて摘出し、これを厚さ1〜5cmに輪切りにし、
−40℃で凍結保存した。移植に際して、この凍結保存組
織を解凍し、大量の滅菌生理食塩水で洗浄した。つい
で、この組織を、50U/mLのシオマリンを含む滅菌生理食
塩水で洗って除菌処理を行い、大型の成犬(シェパー
ド、体重30kgおよび15kg各1頭)の大腿筋に移植した。
【0066】24時間、48時間、96時間、7日、14日、3
月で、実施例4の場合と同様に生着を観察した。その結
果、上記の期間中には何らの炎症も起こらず、生着も良
好であった。また、2月後には、移植したドチザメの筋
肉組織は宿主である犬の筋肉と置き換わったことが観察
された。
【0067】(実施例9)人工軟骨の作製 実施例5と同様にして、水酸化カルシウム(Ca(OH)2) 水
溶液を生成させた。コラーゲン−リン酸混合液に、ヒド
ロキシアパタイト重量の5%のヒアルロン酸および同量
のアミノ酸を添加して調製した。このCa(OH)2水溶液を
激しく攪拌し、ここに上記のコラーゲン−リン酸混合液
を室温でゆっくりと添加し、水性懸濁液を調製した。ヒ
ドロキシアパタイトに対するコラーゲンの混合比は、
1:10(v/w) とした。
【0068】生成された沈殿をろ別し、沈殿の含水量が
焼結に適当な量となるまで凍結乾燥した。次いで、この
沈殿を金属製の容器に充填し、容器内の空気を排気し、
溶接して200MPa、40℃で8時間維持した。以上のように
して直径22mm、長さ50mmの人工軟骨を作製した。
【0069】(実施例10)人口軟骨の移植 大型の成犬(シェパード、体重約30kg)の大腿部から、
実施例9で作製した人工軟骨が入る大きさの筋肉を切除
した。この部分に実施例9で作製した人工軟骨を、実施
例7と同様に殺菌処理して移植した。移植後、24時間、
48時間、96時間、7日、14日、3月に移植後の状態を調
べた。拒絶反応は見られず、また、この人工軟骨の一部
で骨化が見られた。したがって、上記の人工軟骨は、関
節部分に移植した場合には、十分に軟骨として機能する
ものと考えられた。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、人工骨、人工軟骨、人
工腱、創傷被覆材もしくは人工皮膚、および手術用縫合
糸などとして使用可能な軟骨魚類由来の抽出物または摘
出物を含む医用材料、およびこれら医用材料の製造方法
が提供される。また、本発明の医用材料は、生体適合性
が高く、使用の際に拒絶反応や炎症が生じないばかりで
なく、機械的強度、密着性などにも優れ、関節の動きに
もよく追随する。したがって、重傷の火傷、臓器の一部
切除、骨や関節の摘出後などに、生体代用品として使用
するのに好適であるとともに、治癒したときに傷痕が残
りにくいという効果がある。
【0071】本発明の方法によれば、十分な強度を有
し、生体適合性の高い人工骨や人工筋肉、潤滑性などに
優れた人工軟骨、人工腱などを得ることができる。さら
に、本発明の医用材料は、従来使用されてきたウシ由来
の材料に代わるものとして、安全性が高く、安定的に供
給されるものである。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軟骨魚類の組織からの抽出物または摘出
    物を含むことを特徴とする医用材料。
  2. 【請求項2】 前記抽出物がコラーゲンであることを特
    徴とする請求項1に記載の医用材料。
  3. 【請求項3】 前記摘出物が、皮膚組織、筋肉組織、お
    よび軟骨からなる群から選ばれることを特徴とする請求
    項1に記載の医用材料。
  4. 【請求項4】 ヒドロキシアパタイトをさらに含むこと
    を特徴とする請求項1にまたは2に記載の医用材料。
  5. 【請求項5】 ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、各
    種アミノ酸および各種核酸からなる群から選ばれる1種
    以上の化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の医用材料。
  6. 【請求項6】 軟骨魚類の組織から得られた抽出物を、
    シート状、フィルム状、または糸状に成型することを特
    徴とする請求項1または2に記載の医用材料の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 軟骨魚類の組織から得られた抽出物とヒ
    ドロキシアパタイトとを混合し、低温で焼結するこを特
    徴とする請求項4または5に記載の医用材料の製造方
    法。
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