JPH10249808A - 合板、単板積層材、ランバーコア合板、集成材及びパーティクルボードから成る楽器用部品、並びにこれらの製造方法 - Google Patents

合板、単板積層材、ランバーコア合板、集成材及びパーティクルボードから成る楽器用部品、並びにこれらの製造方法

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JPH10249808A
JPH10249808A JP6294097A JP6294097A JPH10249808A JP H10249808 A JPH10249808 A JP H10249808A JP 6294097 A JP6294097 A JP 6294097A JP 6294097 A JP6294097 A JP 6294097A JP H10249808 A JPH10249808 A JP H10249808A
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azelaic acid
compound
wood
plywood
musical instrument
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JP6294097A
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Riichi Kitajima
理一 北島
Kenji Yoshisue
健治 吉末
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Kawai Musical Instrument Manufacturing Co Ltd
Original Assignee
Kawai Musical Instrument Manufacturing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高い寸法安定性を有し、反りや狂いの少ない合
板、単板積層材、ランバーコア合板、集成材及びパーテ
ィクルボードから成る楽器用部品を提供する。 【解決手段】合板、単板積層材、ランバーコア合板、集
成材あるいはパーティクルボードから成る楽器用部品に
は、アゼライン酸又はその化合物が含浸されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、寸法安定性に優れ
た合板、単板積層材、ランバーコア合板、集成材及びパ
ーティクルボードから成る楽器用部品、並びにこれらの
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合板は、木材を薄く切削した単板を主と
して、隣接する単板の繊維方向が略直交するように積層
接着した板状製品である。単板積層材は、木材を切削し
た単板を主として、繊維方向が略平行になるように積層
接着した板状製品である。また、ランバーコア合板は、
挽板から成る芯材の両面に単板を積層した板状製品であ
る。集成材とは、ひき板又は小角材等をその繊維方向を
互いにほぼ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成
接着した板状製品である。パーティクルボードは、木材
その他の植物繊維質の小片を主原料として、接着剤をも
って成形熱圧した、密度0.5g/cm3〜0.9g/
cm3の板状製品である。ここで、小片とは、パーティ
クルとも呼ばれ、チップ、フレーク、ウエハー、ストラ
ンドの総称である。
【0003】合板、単板積層材、ランバーコア合板、集
成材あるいはパーティクルボード(以下、場合によって
は、板状製品と総称する)は、木材特有の利点に加え、
引き板等の製材された板(以下、製材品と呼ぶ)にはな
い種々の優れた特性を有しており、様々な分野で使用さ
れている。例えば、楽器の分野では、これらの板状製品
は、木製楽器の原材料あるいは楽器用の木製部品の原材
料として使用されている。以下、板状製品から成る楽器
用部品を、単に楽器用部品と呼び、板状製品から成る楽
器用部品を構成部品として含む楽器を、単に楽器と呼ぶ
場合がある。
【0004】板状製品は優れた特性を有する反面、木材
の性質がそのまま残されているので、木材と同じ欠点を
有する。例えば、一般に、木材は大気中の水分を吸収す
ることにより狂いが生じる。この性質は、板状製品にそ
のまま引き継がれる。
【0005】合板の膨張・収縮率は、単板の繊維方向の
膨張・収縮率の2〜3倍である。一方、単板の繊維方向
と直角方向の単板の膨張・収縮率の1/10〜1/20
倍である。積層すべき単板のそれぞれの厚さを同一にし
た場合、得られた合板の幅方向及び長さ方向の異方性は
極めて少なくなるが、単板の厚さが異なる場合には、得
られた合板の幅方向及び長さ方向の膨張・収縮率に差が
生ずる。この差は、合板の狂いの一因となる。尚、合板
の厚さ方向については、幅方向及び長さ方向の膨張・収
縮が抑えられる結果、単板より大きい値を示す傾向にあ
る。
【0006】また、単板積層材、ランバーコア合板ある
いは集成材は、製材品と比較すれば、寸法安定性は遥か
に優れている。しかしながら、単板積層材は、各単板の
繊維方向が同じとなるように積層されている。そのた
め、単板積層材の幅方向及び長さ方向の膨張・収縮率は
製材品と同様の傾向にあり、製材品と同様の狂いが生じ
る。ランバーコア合板や集成材においても、やはり、製
材品と同様に狂いが生じる。
【0007】雰囲気の変化に伴い、パーティクルボード
の含水率及び寸法が変化する結果、狂いが生じる。平板
プレスを用いて成形熱圧したパーティクルボードにおい
ては、小片の繊維方向がパーティクルボードの表面に平
行となる傾向にある。そのため、湿気の授受に伴う伸縮
の大きい小片の繊維方向と直角の方向が、パーティクル
ボードの厚さ方向と平行になり易く、その上、成形熱圧
の際、厚さ方向に圧縮応力が加わるため、特に吸湿時に
パーティクルボードの厚さ方向の膨張が大きくなる。
【0008】以上のような性質を有するため、板状製品
から成る楽器用部品あるいは楽器の形状は、大気中の水
分を吸収することにより変化し易い。楽器用部品あるい
は楽器に形状変化が生じると、種々の問題が生じる。例
えば、楽器の形状変化は、楽器の音質やピッチを変化さ
せる原因となる。また、楽器用部品の形状が変化する結
果、例えば部品と部品との摩擦が大きくなり、耐久性が
低下したり、楽器を調整してもすぐに狂いが生じてしま
う。また、楽器の形状が変化すると、割れが発生して雑
音の原因となる。更には、楽器の外観を形成する楽器用
部品の形状が変化すると、外観品質が低下し、楽器の商
品価値が低下する。
【0009】特に、ピアノやチェンバロといった多数の
木製部品から構成された鍵盤楽器では、楽器用部品の形
状が変化すると、所望の機能・性能を発揮できなくな
る。従って、かかる鍵盤楽器を構成する楽器用部品に
は、特に高い寸法安定性が要求される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、木材の形状
変化を抑えて高い寸法安定性を付与するための一般的な
技術として、例えば、フェノール樹脂処理、アセチル化
処理、ホルマール化処理、ポリエチレングリコール処
理、クリオキザール樹脂処理、エーテル化処理等の化学
処理方法が知られている。
【0011】この中でも、特にホルマール化処理は、A
SEによる寸法安定化度が82〜87%程度であり、最
も高い寸法安定性が得られるとされているが、毒性が高
く、処理材が脆くなる等の欠点があるので、実用化は困
難である。その他の方法でも、木材の変色防止、薬品の
毒性の除去、廃液の処理方法等の問題を解決しなければ
ならない。尚、ASE(抗膨潤(収縮)能: antiswell
ing efficiency, antishrink efficiency)は下式で定
義される。ここで、VCは無処理材の容積膨潤(収縮)
率であり、VTは処理材の容積膨潤(収縮)率である。 ASE=(VC−VT)/VC
【0012】従って、本発明の目的は、高い寸法安定性
を有し、反りや狂いの少ない合板、単板積層材、ランバ
ーコア合板、集成材及びパーティクルボードから成る楽
器用部品、並びに、これらの製造方法を提供することに
ある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の合板、単板積層材、ランバーコア合板、集成
材あるいはパーティクルボードから成る楽器用部品は、
アゼライン酸又はその化合物が含浸されていることを特
徴とする。ここで、本発明の楽器用部品とは、楽器を構
成する部品を意味するが、楽器それ自体が合板、単板積
層材、ランバーコア合板、集成材あるいはパーティクル
ボードで構成されている場合の楽器も本発明の楽器用部
品に包含される。以下の説明においても同様である。
【0014】アゼライン酸はジカルボン酸の一種であ
り、HOOC(CH27 COOH(分子量188)と
いう構造を有している。アゼライン酸の化合物として、
カルボキシル基(−COOH)と銅、亜鉛等といった金
属イオンとを反応させて得られる化合物を挙げることが
できる。
【0015】上記の目的を達成するための本発明の合板
から成る楽器用部品の製造方法は、木材を切削して得ら
れた単板を積層接着する工程を含み、 木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
理 単板にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
理 積層接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする。
【0016】尚、処理すべき対象物にアゼライン酸又は
その化合物を含浸させる処理を、以下、アゼライン酸処
理と呼ぶ場合がある。
【0017】本発明における合板としては、普通合板の
日本農林規格で規定された一類、二類、三類の普通合
板、難燃合板の日本農林規格で規定された1類、2類の
難燃合板、防火戸用合板、コンクリート型わく用合板の
日本農林規格で規定された1種、2種のコンクリート型
わく用合板、構造用合板の日本農林規格で規定された特
類、1類の構造用合板、足場板用合板の日本農林規格で
規定された足場板用合板、防炎合板の日本農林規格で規
定された防炎合板、パレット用合板の日本農林規格で規
定されたパレット用合板、特殊合板の日本農林規格で規
定された天然木化粧合板、特殊加工化粧合板、1類、2
類、3類、Fタイプ、FWタイプ、Wタイプ、SWタイ
プの特殊合板を挙げることができる。
【0018】上記の目的を達成するための本発明の単板
積層材から成る楽器用部品の製造方法は、木材を切削し
て得られた単板を積層接着する工程を含み、 木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
理 単板にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
理 積層接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする。
【0019】本発明における単板積層材としては、単板
積層材の日本農林規格で規定された単板積層材、及び構
造用単板積層材の日本農林規格で規定された特級、1
級、2級の構造用単板積層材を挙げることができる。
【0020】上記の目的を達成するための本発明のラン
バーコア合板から成る楽器用部品の製造方法は、木材を
切削して得られた単板、及び木材から得られた芯材を積
層接着する工程を含み、 木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
理 単板及び芯材にアゼライン酸又はその化合物を含浸
させる処理 積層接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする。
【0021】ランバーコア合板は、芯材の構成単位とな
るストリップの幅により、バッテンボード、ブロックボ
ード及びラミンボードの3種類に分類されるが、本発明
におけるランバーコア合板はこれらの全てを包含する。
【0022】合板、単板積層材あるいはランバーコア合
板を構成する樹種として、セン(ハリギリ)、シナ、ミ
ズナラ、ブナ、カバ(マカンバ、ダケカンバ、ミズ
メ)、タモ(ヤチダモ)、ナラ、アカダモ(ハルニ
レ)、トチノキ、カエデ、カツラ、ドロノキ、シオジ、
ホウノキ、キハダ、タブノキ、ミズキ、ケヤキ、キリ等
の広葉樹、スギ、マツ、ヒノキ等の針葉樹、ラワン類
(赤ラワン、タンギール、アルモン、マヤビス、マンガ
シノロ、白ラワン、バクチカン)、メランチ及びセラヤ
類、カプール類、アピトン及びクルイン類、チーク等の
輸入材広葉樹、ベイマツ、ベイスギ、ベイヒ等の輸入針
葉樹を挙げることができる。接着剤として、例えば、ユ
リア系樹脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂、フェノール
系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂を挙げるこ
とができる。
【0023】上記の目的を達成するための本発明の集成
材から成る楽器用部品の製造方法は、ひき板又は小角材
等を、その繊維方向を互いに略平行にして集成接着する
工程を含み、 ひき板又は小角材等に加工する前の木材にアゼライ
ン酸又はその化合物を含浸させる処理 ひき板又は小角材等にアゼライン酸又はその化合物
を含浸させる処理 集成接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする。
【0024】本発明における集成材として、集成材の日
本農林規格で規定された造作用集成材、化粧ばり造作用
集成材、化粧ばり構造用集成柱、構造用集成材の日本農
林規格で規定された異等級構成集成材、同一等級構成集
成材、大断面集成材、中断面集成材、小断面集成材を挙
げることができる。集成材を構成する樹種として、イタ
ヤカエデ、カバ、ブナ、ミズナラ、ケヤキ、アピトン、
ヒノキ、ヒバ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、ベイ
ヒ、ダフリカカラマツ、サザンパイン、ベイマツ、ツ
ガ、アラスカイエローシダー、ベニマツ、ラジアタパイ
ン、ベイツガ、モミ、トドマツ、エゾマツ、ベイモミ、
スプルース、ロッジポールパイン、ポンデローサイパ
ン、オウシュウアカマツ、ラワンを挙げることができ
る。また、接着剤として、例えば、レゾルシノール系樹
脂、水性高分子イソシアネート系樹脂、メラミン系樹
脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂を挙げることができ
る。
【0025】上記の目的を達成するための本発明のパー
ティクルボードから成る楽器用部品の製造方法は、繊維
質原料から得られた小片に接着剤を塗布した後、成形熱
圧する工程を含み、 繊維質原料にアゼライン酸又はその化合物を含浸さ
せる処理 接着剤を塗布する前に、小片にアゼライン酸又はそ
の化合物を含浸させる処理 小片に接着剤を塗布した後、若しくは、小片への接
着剤の塗布中に、該小片にアゼライン酸又はその化合物
を含浸させる処理 成形熱圧後、アゼライン酸又はその化合物を含浸さ
せる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする。
【0026】繊維質原料として、マツ、ポプラ、ブナ、
トウヒといった樹種から成る繊維質原料、バガス、アマ
茎等の繊維質原料を用いることができる。また、小片
は、切削、破砕又は摩砕によって製造することができ
る。
【0027】パーティクルボードとして、JIS A5
908−1993に規定された素地パーティクルボー
ド、単板パーティクルボード、含浸紙張りパーティクル
ボードを挙げることができる。あるいは又、JIS A
5909−1993に規定された単板オーバーレイ化粧
パーティクルボード、プラスチックオーバーレイ化粧パ
ーティクルボードを挙げることができる。パーティクル
ボードの構造として、原料小片が水平に配列しており上
下からプレスされた水平式単層構造、原料小片を垂直方
向若しくは水平方向に押し出すことで成形する押出式単
層構造といった単層構造、芯層を粗大な小片から構成
し、その両側を微細な薄い小片から成る薄い層から構成
した三層構造、表層を化粧小片で構成し、裏層を粗大な
小片層で構成した二層構造、表層と芯層の区分が明確で
ない構造を有する多層構造を挙げることができる。ま
た、貫通孔が形成された有孔パーティクルボードを挙げ
ることもできる。接着剤として、例えば、ユリア系樹
脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂、フェノール強化メラ
ミン・ユリア共縮合樹脂、フェノール系樹脂、イソシア
ネート系樹脂、DFK系樹脂を挙げることができる。
【0028】アゼライン酸は、木材を構成する細胞壁及
び細胞内腔の壁面を包囲しそして付着・残存する形態
で、木材内に存在する。木材を構成するセルロースとア
ゼライン酸との結び付き方として、以下の2つが考えら
れている。即ち、分子量の比較的大きい疏水性のアゼラ
イン酸分子が、セルロースの水酸基と結合することなく
木材中に導入される。あるいは又、アゼライン酸は、ア
ゼライン酸中のカルボキシル基(−COOH)と木材の
水酸基(−OH)とがエステル化することにより、木材
中に導入される。
【0029】何れの場合においても、アゼライン酸分子
が木材中に導入されることによって、セルロースとセル
ロースとの間が膨潤状態(アゼライン酸がセルロースと
セルロースとの間に入ることによって膨らんだ状態)と
なり、水分子が木材中に入ってきても、それ以上は木材
の体積が変化しない、所謂バルキング効果が生じる。こ
れによって、アゼライン酸による処理を施した板状製品
の湿度変化による膨張・収縮は極めて小さくなり、板状
製品に高い寸法安定性を付与することができる。
【0030】以上のようなアゼライン酸が含浸された合
板、単板積層材、ランバーコア合板、集成材又はパーテ
ィクルボードから成る楽器用部品は寸法安定性に優れて
いるので、加工精度の向上、耐久性の向上、経時変化の
防止等を図ることができ、先に説明した形状変化に伴う
種々の問題を解決することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】最近、木材に対してアゼライン酸
による処理を施すことによって高い寸法安定性を得るこ
とのできる技術が、奈良県林業試験場で開発された(平
成7年7月3日に報道関係に発表、平成7年7月5日付
け日経産業新聞掲載)。この技術によれば、吸湿による
寸法変化は殆ど0%(寸法安定化度100%)を達成で
き、また、吸水による寸法変化も無処理材の9〜15%
(寸法安定化度85〜91%)に抑えることができると
されている。尚、寸法安定化度はASEで評価してい
る。本発明においては、アゼライン酸による処理技術を
合板、単板積層材、ランバーコア合板、集成材、あるい
はパーティクルボードに適用する。以下、本発明の合
板、単板積層材、ランバーコア合板、集成材及びパーテ
ィクルボードから成る楽器用部品、並びにこれらの製造
方法に関する発明の実施の形態(以下、単に、実施の形
態と略称する)について説明する。
【0032】(実施の形態1)実施の形態1は合板から
成る楽器用部品の製造方法に関する。以下、本発明の合
板から成る楽器用部品の製造方法の概要を説明する。
【0033】[前処理工程]ロータリーレースによる単
板切削を行う場合には、横切機を用いて原木を横切りす
る。また、スライサーによる単板切削を行う場合には、
製材機を用いて原木をフリッチに木取る。その後、必要
に応じて、煮沸、蒸煮、加圧蒸煮、導電加熱を行い、次
いで、剥皮を行うことによって、木材を得ることができ
る。
【0034】[アゼライン酸処理工程]実施の形態1に
おいては、木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸さ
せる。即ち、得られた木材に対して、前処理工程の後に
アゼライン酸処理を行う。アゼライン酸は毒性が無く且
つ安価である。アゼライン酸は水に殆ど溶けないので、
エタノールと水とを、例えば1:1の比率で混合して溶
媒として用いる。水を混合する目的は、コストの低減や
安全性の確保(引火の防止)等を達成することにある。
また、水が混合されていた方がASEが若干向上する。
そして、この溶媒にアゼライン酸を15〜20%程度混
合して、アゼライン酸溶液を調製する。
【0035】このようにして調製されたアゼライン酸溶
液を木材に含浸させる。含浸には、例えば加減圧注入装
置を用いてアゼライン酸溶液を木材中に注入する方法を
用いることができる。即ち、加減圧注入装置に木材を入
れ、2時間程度かけて減圧する。この減圧においては、
減圧によって木材組織が破壊されない範囲内の任意の圧
力、例えば通常のロータリーポンプによって達成できる
程度の真空度とすればよい。尚、減圧時間及び減圧圧力
は、木材の樹種や外形寸法によって適宜変更することが
できる。
【0036】次いで、アゼライン酸溶液を加減圧注入装
置に注入して、木材をアゼライン酸溶液に浸す。この状
態で、15〜20kgf/cm2 程度の圧力を1時間程
度加える。加圧時間及び加圧圧力は、木材の樹種や外形
寸法によって適宜変更すればよい。尚、木材にアゼライ
ン酸溶液を含浸させる方法としては、加減圧注入装置を
用いる方法に限らず、その他の周知の何如なる方法をも
用いることができ、例えば、木材に穴を開けてアゼライ
ン酸溶液を浸透させる方法を挙げることができる。この
木材に穴を開ける技術としては、微生物を用いる方法、
木材を蒸煮する方法、木材の表面に傷をつけるインサイ
ジング方法、レーザーインサイジング法等を用いること
ができる。尚、以上のような減圧加圧法の他に、常圧
法、減圧法あるいは加圧法に基づきアゼライン酸処理を
行ってもよい。
【0037】以上のようにしてアゼライン酸溶液が注入
された木材を、例えば防爆オーブンを用いて乾燥する。
乾燥手順は、例えば、60゜Cの温風で24時間、10
0゜Cの温風で8時間、150゜Cの温風で1時間程度
とすることが好ましいが、乾燥条件はこれに限定されな
い。尚、乾燥時間と乾燥温度は、木材の樹種や外形寸法
によって適宜変更すればよい。このようにしてアゼライ
ン酸処理が施された木材は膨潤状態に保たれ、バルキン
グ効果により吸湿による寸法変化は殆ど0%(寸法安定
化度約100%)に保たれる。乾燥方法としては、その
他、真空乾燥法を挙げることができる。
【0038】尚、アゼライン酸自体ではなく、アゼライ
ン酸の化合物を含浸させて合板を製造することができ
る。例えば、アゼライン酸を銅、亜鉛等の金属イオンと
反応させることにより、防腐効果を高めることができ
る。また、アゼライン酸塩化物あるいは臭化物を含浸さ
せることによって、難燃性を有する合板を製造すること
ができる。
【0039】尚、以上に説明したアゼライン酸処理の条
件や乾燥条件は例示であり、アゼライン酸処理を行うべ
き対象物の形態・形状、組成や、どの工程でアゼライン
酸処理を行うかに依存して、適宜決定すればよい。アゼ
ライン酸処理を行う対象物にも依存するが、場合によっ
ては、アゼライン酸溶液を刷毛、ロールコーターやスプ
レーを用いて対象物に塗布してもよい。
【0040】[単板切削・乾燥工程]ロータリーレース
やスライサーを用いて、木材の単板切削を行った後、切
削された単板を裁断し、乾燥する。乾燥には、例えば、
単板を機械的に搬送しながら加熱空気で乾燥させる熱風
乾燥方式を用いることができる。あるいは又、切削され
た単板を乾燥した後、裁断してもよい。尚、所謂湿式合
板方式にて合板を製造する場合には、乾燥工程は不要で
ある。
【0041】[調板工程]次に、単板の選別分類、小幅
単板の色合わせや仕組み、小幅単板のはぎ合わせ、単板
の補修、表裏板の組合せ、芯板の仕組みといった、合板
を製造するための単板の調製である調板を行う。はぎ合
わせには、単板の横はぎ及び縦つぎが含まれる。補修に
は、単板の欠陥部分を除去して健全な単板を埋め込む埋
木補修、及び単板の割れ、はぎ合わせ不良部分をテープ
で補修するテープ補修が含まれる。
【0042】[積層接着工程]その後、必要に応じて各
種の添加剤を添加して調製した接着剤液を、例えば、ロ
ーラ塗布法、噴霧塗布法、噴出塗布法にて単板に塗布す
る。接着剤として、例えば、ユリア系樹脂、メラミン・
ユリア共縮合樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹
脂、ウレタン系樹脂を用いることができる。接着剤液の
塗布の後、所望の数の単板を積層し、圧締・加熱するこ
とによって接着する。即ち、コールドプレスによって単
板を繊維方向が互いに略直交するように仮接着させ、ホ
ットプレスへ挿入するまでその状態を維持する。その
後、ホットプレスへ挿入して熱圧によって接着剤を完全
に硬化させる。
【0043】[仕上げ工程]最後に、所定の寸法に裁断
し、表面仕上げを行い、更に、検査(試験)、包装を行
い、得られた合板を製品として出荷する。
【0044】以上に説明した合板の製造工程において
は、前処理工程の次に、木材に対してアゼライン酸処理
を行ったが、単板に対してアゼライン酸処理を行っても
よい。単板に対してアゼライン酸処理を行う場合、単板
切削工程中、単板切削工程後、単板乾燥工程中、単板乾
燥工程後、あるいは調板工程後に、単板にアゼライン酸
又はその化合物を含浸させ、次いで、単板を乾燥させれ
ばよい。あるいは又、積層接着後にアゼライン酸処理を
行ってもよい。即ち、積層接着工程の後にアゼライン酸
処理工程を設けて、積層接着された合板にアゼライン酸
処理を施してもよい。
【0045】このようにして製造された合板から成る楽
器用部品は、従来の合板から成る楽器用部品よりも膨張
・収縮率が小さく、楽器用部品の狂いや反りが少なくな
る。
【0046】(実施の形態2)実施の形態2は単板積層
材から成る楽器用部品の製造方法に関する。単板積層材
の製造工程は、実施の形態1における合板の製造工程と
略同じである。但し、単板切削工程において、比較的厚
い単板切削が行われる。この単板は、ラミナとも呼ばれ
る。また、積層接着工程において、ラミナ相互の繊維方
向が略平行になるようにラミナを積層接着する。
【0047】単板積層材の製造工程では、実施の形態1
における合板の製造工程と同様に、前処理工程の後にア
ゼライン酸処理工程を設けて、木材にアゼライン酸処理
を施すことができる。あるいは又、単板に対してアゼラ
イン酸処理を行ってもよい。単板(ラミナ)に対するア
ゼライン酸処理としては、単板切削工程中、単板切削工
程後、単板乾燥工程中、単板乾燥工程後、あるいは調板
工程後に、単板にアゼライン酸又はその化合物を含浸さ
せ、次いで、単板を乾燥させればよい。あるいは又、積
層接着後に、アゼライン酸処理を行ってもよい。即ち、
積層接着工程の後にアゼライン酸処理工程を設けて、積
層接着された単板積層材にアゼライン酸処理を施しても
よい。
【0048】このようにして製造された単板積層材から
成る楽器用部品は、従来の単板積層材から成る楽器用部
品よりも膨張・収縮率が小さく、楽器用部品の狂いや反
りが少なくなる。
【0049】(実施の形態3)実施の形態3はランバー
コア合板から成る楽器用部品の製造方法に関する。ラン
バーコア合板の製造工程において、木材から得られた挽
板等から構成された芯材の両面に積層すべき単板の製造
工程、及び芯材と単板の積層接着工程は、実質的には、
実施の形態1における合板の製造方法における単板の製
造方法及び積層接着工程と同様であるので、詳細な説明
は省略する。以下、芯材の製造工程のみを説明する。
【0050】[アゼライン酸処理工程]先ず、マツ、シ
ナ、ハンノキ、ドロ、ラワン等の原木を剥皮して得られ
た木材に対してアゼライン酸処理を施し、次いで、挽板
に加工する。尚、原木を剥皮後、挽板に加工して得られ
た木材に対してアゼライン酸処理を施してもよい。
【0051】[芯材製造工程]次に、挽板を積層接着し
てブロックにまとめ、このブロックを鋸でひいて芯材を
得る(ブロック方式)。あるいは又、挽板を小割りにし
たストリップを横方向に接合わせて、1枚の芯材を製造
する(横はぎ方式)。
【0052】尚、以上の説明においては、木材にアゼラ
イン酸処理を施したが、その代わりに、単板及び芯材に
アゼライン酸又はその化合物を含浸させてもよい。これ
らの場合には、以下の態様があるが、これらの態様の全
てが本発明のランバーコア合板から成る楽器用部品の製
造方法に包含される。 (A)木材にアゼライン酸処理を施し、かかる木材から
単板及び芯材を得る態様 (B)木材にアゼライン酸処理を施し、かかる木材から
単板を得る一方、木材から芯材を得た後、かかる芯材に
アゼライン酸処理を施す態様 (C)木材から単板を得た後、かかる単板にアゼライン
酸処理を施す一方、木材にアゼライン酸処理を施し、か
かる木材から芯材を得る態様 (D)木材から単板及び芯材を得た後、かかる単板及び
芯材にアゼライン酸処理を施す態様
【0053】あるいは又、積層接着後に、アゼライン酸
又はその化合物を含浸させるアゼライン酸処理を施して
もよい。
【0054】このようにして製造されたランバーコア合
板から成る楽器用部品は、従来のランバーコア合板から
成る楽器用部品よりも膨張・収縮率が小さく、楽器用部
品の狂いや反りが少なくなる。
【0055】(実施の形態4)実施の形態4は集成材か
ら成る楽器用部品の製造方法に関する。以下、本発明の
集成材の製造方法から成る楽器用部品の概略を説明す
る。
【0056】[アゼライン酸処理工程]実施の形態4に
おいては、木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸さ
せる。この工程は、実施の形態1の[アゼライン酸処理
工程]と同様の工程とすることができる。
【0057】[製材工程]アゼライン酸処理が施された
木材を製材して、木材をひき板や小角材等に加工した
後、乾燥させる。その後、必要に応じて、ひき板や小角
材等の被接着面にプレーナ加工を施し、選別を行う。
【0058】[集成接着工程]必要に応じて各種の添加
剤を添加して調製した接着剤液を、例えば、ローラ塗布
法、噴霧塗布法、噴出塗布法にてひき板や小角材等に塗
布した後、これらを集成し、圧締・加熱することによっ
て接着する。尚、必要に応じて、その後、表面に化粧ば
り加工を施す。
【0059】[仕上げ工程]その後、所定の寸法に裁断
し、表面仕上げを行い、更に、検査(試験)、包装を行
い、得られた集成材を製品として出荷する。
【0060】以上に説明した集成材の製造工程において
は、木材にアゼライン酸処理を施したが、木材を製材し
て得られたひき板や小角材等にアゼライン酸処理を施し
てもよい。あるいは又、集成接着後に、アゼライン酸処
理を行ってもよい。
【0061】このようにして製造された集成材から成る
楽器用部品は、従来の集成材から成る楽器用部品よりも
膨張・収縮率が小さく、楽器用部品の狂いや反りが少な
くなる。
【0062】(実施の形態5)実施の形態5はパーティ
クルボードから成る楽器用部品の製造方法に関する。以
下、本発明のパーティクルボードから成る楽器用部品の
製造方法の概略を説明する。
【0063】[前処理工程]原木を用いる場合には原木
を剥皮し、適当な長さに切断する。廃材を用いる場合に
は、この工程は不要である。これによって繊維質原料を
得ることができる。
【0064】[アゼライン酸処理工程]かかる繊維質原
料に対して、実施の形態1にて説明したと同様のアゼラ
イン酸処理を施す。
【0065】[小片製造・乾燥工程]次に、繊維質原料
を切削、破砕又は摩砕することによって小片を製造す
る。パーティクルボードに要求される性能に応じて、小
片化方法、原料、小片化装置等を適宜選択すればよい。
得られた小片を、高品質のパーティクルボードを製造す
るために、適宜選別する。次に、接着不良を回避するた
めに、小片を乾燥する。乾燥には、例えば、熱風と小片
とを混じり合わせてドラム中をスパイラル状に長軸方向
に移動させるジェット方式を用いることができる。
【0066】[接着剤塗布工程]接着剤を小片に塗布す
る。接着剤としては、例えば、ユリア系樹脂、メラミン
系樹脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂、フェノール系樹
脂、タンニン樹脂、リグニン樹脂、イソシアネート系樹
脂、DFK系樹脂が用いられる。この際、必要に応じて
接着剤に添加剤を添加する。添加剤として、硬化剤、耐
水剤、防腐剤、防蟻剤、難燃剤を挙げることができる。
接着剤の塗布方法として、噴霧方式やスプレッダー方式
を挙げることができ、接着剤の塗布には、例えば、長時
間滞留型連続塗布機、短時間滞留型連続塗布機を用いる
ことができる。
【0067】[成形熱圧工程]先ず、熱圧する前に、パ
ーティクルボードの仕上がり大きさに応じた面積と厚さ
に、接着剤が塗布された小片を堆積する成形(ホーミン
グ)を行う。次いで、成形された小片を熱圧前に常温で
与圧する予備圧締を行う。その後、熱圧を行う。この熱
圧によって接着剤を硬化させて、成形熱圧を完了する。
【0068】[仕上げ工程]最後に、所定の寸法に裁断
し、厚さむらをなくすと共に表面を平滑にするために研
削を行い、検査(試験)を行う。
【0069】実施の形態5においては、前処理工程の次
にアゼライン酸処理工程を設けて繊維質原料である原木
や廃材にアゼライン酸処理を施したが、小片製造工程
中、小片製造工程後、小片乾燥工程中、小片乾燥工程後
に、アゼライン酸処理を施してもよい。あるいは又、小
片に接着剤を塗布した後、若しくは、小片への接着剤の
塗布中に、小片にアゼライン酸処理を施してもよい。更
には、成形熱圧後にアゼライン酸処理を施してもよい。
【0070】このようにして製造されたパーティクルボ
ードから成る楽器用部品は、従来のパーティクルボード
から成る楽器用部品よりも膨張・収縮率が小さく、楽器
用部品の狂いや反りが少なくなる。
【0071】以下に、アゼライン酸処理を施した合板、
単板積層材、ランバーコア合板、集成材及びパーティク
ルボードを原材料として用いることにより顕著な効果が
得られる本発明の楽器用部品を列挙する。尚、楽器用部
品それ自体の作製方法は公知の方法で行えばよい。ま
た、楽器用部品に対してどの材料を用いるかは、楽器用
部品に要求される特性等に依存して適宜決定すればよ
い。
【0072】(1)グランドピアノ:グランドピアノの
大部分は木製部品で構成されている。以下に、アゼライ
ン酸処理の対象とすることにより顕著な効果が得られる
グランドピアノに関する木製部品である楽器用部品を例
示する。 (1−1)アクション系・・・レギュレーティングレー
ル、ハンマーレール、ダンパーヘッド、ハンマーウッ
ド、ハンマーシャンク、ハンマーシャンクフレンジ、ジ
ャック、ウィペン、レペティションレバー、ダンパーレ
バー、ダンパーワイヤーガイドホルダー (1−2)バック系・・・積揚、奥框、支柱、助響、ピ
ン板、響板、響棒、長駒、短駒、短駒座板、短駒脚、棚
板、下口棒、側板、側左右板 (1−3)鍵盤・・・筬、鍵盤、鍵盤中座板・先座板、
鍵盤押え、鍵盤蓋、拍子木 (1−4)ペダル・・・ペダル桁、ペダル柱、ペダル笠
木、ペダル箱 (1−5)ケース・・・脚、脚持、脚持座、脚笠木、ペ
ダル持、大屋根突揚棒、屋根前、屋根後、上口棒 (1−6)付属品・・・譜面台
【0073】(2)アップライトピアノ:アップライト
ピアノの大部分も木製部品で構成されている。以下に、
アゼライン酸処理の対象とすることにより顕著な効果が
得られるアップライトピアノに関する木製部品である楽
器用部品を例示する。 (2−1)アクション系・・・レギュレーティングレー
ル、ジャックストップレール、ダンパーレール、ハンマ
ーシャンク、キャッチャーシャンク、ハンマーウッド (2−2)バック系・・・支柱、桁貼、手掛、響板、響
棒、助響棧、長駒、短駒、短駒座板、短駒脚、ピン板、
ピンブッシュ、棚板、口棒 (2−3)鍵盤・・・筬、鍵盤、鍵盤中座板・先座板、
鍵盤蓋 (2−4)ケース・・・屋根前、屋根後、下屋根、上前
板、下前板、親板、腕木、棚受柱、前土台、妻土台、桁
貼 (2−5)付属品・・・譜面台
【0074】ギターの大部分も木製部品で構成されてい
る。以下に、アゼライン酸処理の対象とすることにより
顕著な効果が得られるギターに関する木製部品を例示す
る。更には、アゼライン酸処理の対象とすることにより
顕著な効果が得られる木製部品である楽器用楽器を例示
する。 (3)ギター・・・表板、裏板、駒、棹等
【0075】(4)その他の木製楽器:リコーダー、ク
ラリネット、オーボエ等といった木管楽器、オルガン
(譜面台、上屋根、捲屋根、側板、拍子木、鍵盤、口
棒、バッフル板、下前板、底板、空気箱等)、三味線
(さお、胴、糸巻、ばち等)、琴、拍子木、太鼓(胴、
ばち等)、バイオリン、マンドリン、ハーモニカ、キャ
ビネット等
【0076】
【実施例】グランドピアノのピン板に使用されているカ
エデから製造された13プライの合板を、縦×横×厚さ
=約30mm×約30mm×約35mmに切削加工して
試験片を作製した後、105゜Cの送風乾燥機中で全乾
状態とした。試験片の全乾比重は0.72〜0.76で
あった。気乾状態のパーティクルボードを縦×横×厚さ
=約30mm×約30mm×約18mmに切削加工して
試験片を作製した後、105゜Cの送風乾燥機中で全乾
状態とした。試験片の全乾比重は0.58〜0.65で
あった。
【0077】エタノールと水を体積比8:2の割合に混
合した溶媒中にアゼライン酸を溶解し、10g/100
cm3及び20g/100cm3のアゼライン酸溶液を調
製した。尚、10g/100cm3及び20g/100
cm3のアゼライン酸溶液のそれぞれを、10%溶液及
び20%溶液と呼ぶ。
【0078】試験片を加減圧注入缶に入れ、2時間減圧
した後、加減圧注入缶に10%溶液あるいは20%溶液
を注入し、その後、約0.98MPaの加圧下で2時間
保持することによって、アゼライン酸溶液を試験片に注
入した。次いで、真空乾燥機を用いて、50゜C×24
時間、予備乾燥を行った後、以下の表1の条件で試験片
の乾燥を行った。尚、1種類の試験には5つの試験片を
用いた。
【0079】
【表1】条件1:70゜C×4時間 条件2:70゜C×4時間→105゜C×2時間 条件3:70゜C×4時間→105゜C×2時間→14
0゜C×2時間 条件3:70゜C×4時間→105゜C×2時間→14
0゜C×2時間→180゜C×1時間
【0080】試験片のバルキング(かさ効果:Bulking
Coefficient)及び重量増加率(ポリマー含有:Polymer
retention PL)を、アゼライン酸処理前後の試験片
の全乾状態での体積及び重量の測定結果に基づき算出し
た。尚、バルキング(B)は、水分子が試験片中に入っ
てきても、それ以上は試験片の体積が変化しない値であ
り、バルキング(B)の値が小さい程、試験片の湿度変
化による膨張・収縮が小さいといえる。即ち、試験片は
高い寸法安定性を有しているといえる。また、重量増加
率(PL)は、試験片にどれだけアゼライン酸が注入さ
れたかの指標となる。また、体積膨張の変化率であるA
SEは20゜C、90%RHの条件下で平衡状態に達し
た無処理試験片及びアゼライン酸処理試験片の体積膨張
率から求めた。ASEの値が小さい程、試験片は高い寸
法安定性を有しているといえる。また、MEE(抗吸水
能:Moisuture Excluding Efficiency)は、それらの体
積膨張率測定時の重量増加率から算出した。MEEの値
が小さい程、試験片の水分吸着が少ない。算出式を、以
下に示す。尚、S0及びS1は、アゼライン酸処理を行っ
た試験片に関するアゼライン酸処理前後における試験片
の全乾状態での体積を意味する。また、W0及びW1は、
アゼライン酸処理を行った試験片に関するアゼライン酸
処理前後における試験片の全乾状態での重量を意味す
る。一方、SU及びSTは、無処理試験片及びアゼライン
酸処理試験片の20゜C、90%での体積膨張率を意味
し、UU及びUTはそのときの重量増加率を意味する。
【0081】
【数1】B =(S1−S0)/S0×100 (%) PL =(W1−W0)/W0×100 (%) ASE=(SU−ST)/SU×100 (%) MEE=(UU−UT)/UU×100 (%)
【0082】試験片を合板から作製した場合のバルキン
グ(B)及び重量増加率(PL)の測定結果を図1に示
し、ASE及びMEEの算出結果を図2に示す。また、
試験片をパーティクルボードから作製した場合のバルキ
ング(B)及び重量増加率(PL)の測定結果を図3に
示し、ASE及びMEEの算出結果を図4に示す。図1
〜図4に示した結果から、アゼライン酸処理を行うこと
によって、試験片の寸法安定性が向上していることが判
る。
【0083】
【発明の効果】本発明によれば、寸法安定性に優れると
共に、加工精度の向上、耐久性の向上、経時変化の防
止、外観品質の低下防止を図ることができる合板、単板
積層材、ランバーコア合板、集成材あるいはパーティク
ルボードから成る楽器用部品、並びにこれらの製造方法
を提供できる。アゼライン酸処理を施した合板、単板積
層材、ランバーコア合板、集成材あるいはパーティクル
ボードから成る楽器用部品は寸法安定性に優れており、
その形状変化を抑制することができるので、楽器の音質
やピッチの変化、耐久性の低下、楽器の狂いや割れ、外
観品質の低下といった問題の発生を回避することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】合板から作製した試験片のバルキング(B)及
び重量増加率(PL)の測定結果を示すグラフである。
【図2】合板から作製した試験片のASE及びMEEの
算出結果を示すグラフである。
【図3】パーティクルボードから作製した試験片のバル
キング(B)及び重量増加率(PL)の測定結果を示す
グラフである。
【図4】パーティクルボードから作製した試験片のAS
E及びMEEの算出結果を示すグラフである。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アゼライン酸又はその化合物が含浸されて
    いることを特徴とする合板から成る楽器用部品。
  2. 【請求項2】木材を切削して得られた単板を積層接着す
    ることから成る合板から構成された楽器用部品の製造方
    法であって、 木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
    理 単板にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
    理 積層接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
    させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする合
    板から成る楽器用部品の製造方法。
  3. 【請求項3】アゼライン酸又はその化合物が含浸されて
    いることを特徴とする単板積層材から成る楽器用部品。
  4. 【請求項4】木材を切削して得られた単板を積層接着す
    ることから成る単板積層材から構成された楽器用部品の
    製造方法であって、 木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
    理 単板にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
    理 積層接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
    させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする単
    板積層材から成る楽器用部品の製造方法。
  5. 【請求項5】アゼライン酸又はその化合物が含浸されて
    いることを特徴とするランバーコア合板から成る楽器用
    部品。
  6. 【請求項6】木材を切削して得られた単板、及び木材か
    ら得られた芯材を積層接着することから成るランバーコ
    ア合板から構成された楽器用部品の製造方法であって、 木材にアゼライン酸又はその化合物を含浸させる処
    理 単板及び芯材にアゼライン酸又はその化合物を含浸
    させる処理 積層接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
    させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とするラ
    ンバーコア合板の製造方法。
  7. 【請求項7】アゼライン酸又はその化合物が含浸されて
    いることを特徴とする集成材から成る楽器用部品。
  8. 【請求項8】ひき板又は小角材等を、その繊維方向を互
    いに略平行にして集成接着することから成る集成材から
    構成された楽器用部品の製造方法であって、 ひき板又は小角材等に加工する前の木材にアゼライ
    ン酸又はその化合物を含浸させる処理 ひき板又は小角材等にアゼライン酸又はその化合物
    を含浸させる処理 集成接着後に、アゼライン酸又はその化合物を含浸
    させる処理 のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴とする集
    成材の製造方法。
  9. 【請求項9】アゼライン酸又はその化合物が含浸されて
    いることを特徴とするパーティクルボードから成る楽器
    用部品。
  10. 【請求項10】繊維質原料から得られた小片に接着剤を
    塗布した後、成形熱圧することから成るパーティクルボ
    ードから構成された楽器用部品の製造方法であって、 繊維質原料にアゼライン酸又はその化合物を含浸さ
    せる処理 接着剤を塗布する前に、小片にアゼライン酸又はそ
    の化合物を含浸させる処理 小片に接着剤を塗布した後、若しくは、小片への接
    着剤の塗布中に、該小片にアゼライン酸又はその化合物
    を含浸させる処理 成形熱圧後、アゼライン酸又はその化合物を含浸さ
    せる処理のいずれかの処理を行う工程を含むことを特徴
    とするパーティクルボードの製造方法。
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