JPH10245504A - 耐雨垂れ汚染性塗膜、塗料組成物、塗膜形成方法及び塗装物 - Google Patents

耐雨垂れ汚染性塗膜、塗料組成物、塗膜形成方法及び塗装物

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JPH10245504A
JPH10245504A JP6907097A JP6907097A JPH10245504A JP H10245504 A JPH10245504 A JP H10245504A JP 6907097 A JP6907097 A JP 6907097A JP 6907097 A JP6907097 A JP 6907097A JP H10245504 A JPH10245504 A JP H10245504A
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JP
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carbon atoms
coating film
resin
weight
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JP6907097A
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Keita Mizutani
啓太 水谷
Yoichi Tozaki
洋一 戸崎
Toshihiro Okai
敏博 岡井
Nobuyuki Matsuzoe
信行 松添
Hozumi Endo
穂積 遠藤
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Mitsubishi Chemical Corp
Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Nippon Paint Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 雨垂れ汚染に対する耐汚染性が良好であり、
耐水性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐クラック性に優れ
た塗膜、塗料組成物及び塗膜形成方法を提供する。 【解決手段】 下記式(1); Si(OCH3 4 (1) で表されるテトラメトキシシランを加水分解、縮合して
得られる加水分解率100%未満の部分加水分解縮合物
であって、シラノール基(SiOH基)とメトキシシリ
ル基(SiOMe基)とのモル比が(SiOH基)/
(SiOMe基)=1/10以下であり、2〜8量体の
含有量が0〜30重量%であり、重量平均分子量が15
00〜5000である部分加水分解縮合物(I)と、フ
ィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬化
反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくとも
1種とを含み、水の動的後退張力(Tr)が、55dy
n/cm以上である耐雨垂れ汚染性塗膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐雨垂れ汚染性を
有する塗膜、塗料組成物、塗膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】屋外に設置される建造物、表示物、ガー
ドフェンス、機械等の表面は、装飾や保護を目的とした
塗膜で被覆されている。このような塗膜には、屋外での
使用に耐えうる性能、例えば、耐候性、耐衝撃性、耐酸
性、耐水性等が要求されるのであるが、更に、美観の点
から、耐汚染性も要求されている。
【0003】上述した耐汚染性とは、油性マーカー汚
染、カーボン汚染、油汚染、食品汚染、雨垂れ汚染等の
汚染に対する耐汚染性を含むものであり、なかでも、雨
垂れ汚染に対する耐汚染性は、建造物を被覆する塗膜の
重要な性質の一つである。雨垂れ汚染とは、地面に対し
て垂直方向に設置される塗板、又は、傾斜して設置され
る塗板に当たった雨が水滴となり、汚染物質を含んで塗
板の表面を流れ落ちることによって、該汚染物質が水滴
の流れに沿って塗板表面に付着して起こる汚染であり、
雨すじ汚染とも呼ばれている。
【0004】一般に、建造物や表示物等の屋外に設置さ
れるものは、ほとんど洗浄されることがないので、これ
らに使用される塗膜には、長期間継続して上述の雨垂れ
に対する耐汚染性が必要とされる。また、近年では、降
雨が酸性雨であることが多いので、酸性雨の雨垂れに対
する耐汚染性が重要である。
【0005】近年、雨垂れ汚染に対する耐汚染性、いわ
ゆる耐雨垂れ汚染性を得るために、さまざまな提案がな
されている。高柳ら(日本建築仕上学会、1995年大
会学術講演会要旨集207〜210頁)は、建築外壁の
雨垂れ汚染が、外壁表面の性能によるものである場合、
該外壁表面が親水性であれば付着した汚染物質は雨水に
よって流すことができるとしている。
【0006】従来より、建造物等の外装に使用される塗
料組成物としては、耐候性、耐衝撃性、耐酸性、耐水性
等の性能を有する塗膜を形成することができるので、耐
候性及び耐熱性に優れたシリコーン系樹脂(ポリシロキ
サン)やオルガノシリケート縮合体のような無機系バイ
ンダーからなる塗料が使用されることがある。一般に、
オルガノシリコーン系樹脂やオルガノシリケート縮合体
は、反応硬化基としてSiOR基を有しており、この反
応硬化基が、酸、塩基、金属キレート等を触媒として加
水分解縮合反応を起こし、Si−O−Si結合を生成さ
せることによって、塗膜を形成するものである。
【0007】オルガノポリシロキサンポリマーをバイン
ダーとするものとして、特開昭64−1769号公報に
は、オルガノポリシロキサン樹脂、ジルコニウム化合物
及びシリル基含有ビニル系樹脂からなるコーティング組
成物が開示されている。この技術は、ジルコニウム化合
物を触媒として、オルガノポリシロキサン樹脂及びシリ
ル基含有ビニル系樹脂が架橋して、硬化塗膜を形成する
ものであり、耐薬品性に優れ、表面の光沢も良好であ
り、均質で平滑な塗膜を得ることができる。しかしなが
ら、架橋密度が低いために、硬度が不充分であり、基材
との密着性も充分ではない。
【0008】メチルトリメトキシシランを加水分解縮合
させたものをバインダーとするものとして、特開昭51
−2736号公報には、メチルトリメトキシシラン及び
テトラエトキシシランが加水分解縮合してバインダーと
なる塗料組成物が開示されている。この技術は、Si−
CH3 基が含有されているので、得られる塗膜は、撥水
性を示すものである。
【0009】メチルトリメトキシシランを加水分解縮合
させたものをバインダーとし、アルコキシシリル基を有
するアクリル系ポリマーを配合したものとして、特開平
4−117473号公報には、メチルトリメトキシシラ
ン、アルコキシシリル基含有アクリル樹脂、アルミニウ
ム化合物及びテトラメチルシリケートからなる塗料組成
物が開示されている。この技術は、アルミニウム化合物
を触媒として、組成物中のSiOR基が加水分解縮合し
て硬化塗膜を得るものであり、得られる塗膜は、表面の
光沢、硬度、基材との密着性、耐アルカリ性、耐酸性、
耐水性、耐候性に優れており、膜厚限界の高い塗膜を得
ることができる。
【0010】メチルトリメトキシシランを加水分解縮合
させたものをバインダーとし、シリカゾル、アルミナゾ
ル等の酸化物を配合したものとして、特公昭53−50
42号公報には、メチルトリメトキシシラン、水性コロ
イダルシリカ及び有機酸からなる縮合反応物に顔料を添
加して得られる塗料組成物が開示されている。この技術
は、メチルトリメトキシシラン自体の加水分解縮合、コ
ロイダルシリカ表面のSiOH基が硬化反応にあずかる
ものである。しかしながら、塗料組成物中に多量の水が
存在するために、貯蔵安定性が悪く、24時間以内に使
用しなければならなかったり、得られる塗膜は、メチル
トリメトキシシランの縮合物の縮合度合が小さいため
に、3μm以上の膜厚では、クラックが起こりやすい。
【0011】特開昭61−268770号公報には、コ
ロイダル状アルミナ、メチルトリメトキシシランからな
るアルミナ系塗料組成物が開示されている。この技術で
は、アルミナゾルを配合することにより、塗膜の表面を
正に帯電させて、乾燥条件下でチリ、ホコリ、ゴミ等の
汚れの付着を防止する工夫がなされている。
【0012】特開昭63−46272号公報には、分子
量3000〜50000のメチルトリメトキシシランの
縮合物をバインダーとして用い、コロイダルアルミナが
配合された塗料組成物が開示されている。この技術は、
高分子量のオルガノポリシロキサンが用いられているの
で、縮合反応時の体積収縮の割合が小さく、クラックが
生じにくい。
【0013】しかしながら、上述したシリコーン系樹脂
やオルガノシリケート縮合体からなる塗料組成物は、い
ずれも耐久性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐候性
に優れた塗膜を形成することができるが、塗膜の表面に
充分な親水性を与えることができないので、耐雨垂れ汚
染性は充分ではなかった。例えば、オルガノポリシロキ
サンポリマーをバインダーとするものは、得られる塗膜
の表面が親水性ではないので、耐雨垂れ汚染性が劣る。
また、メチルトリメトキシシランを加水分解縮合させた
ものをバインダーとするものは、表面が撥水性であるた
めに、いったん付着した雨筋を雨水等の水で洗い流すこ
とができず、耐雨垂れ汚染性は不充分である。
【0014】メチルトリメトキシシランを加水分解縮合
させたものをバインダーとし、アルコキシシリル基を有
するアクリル系ポリマーを配合したものは、塗料組成物
中の親水性を示す官能基SiOH基を加水分解により生
成させることができるSiOR基が硬化反応でほとんど
消費されてしまうので、塗膜表面を親水性にすることが
できず、耐雨垂れ汚染性は良好ではない。
【0015】メチルトリメトキシシランを加水分解縮合
させたものをバインダーとし、シリカゾル、アルミナゾ
ル等の酸化物を配合したものは、塗膜を形成する際に、
塗料組成物中のSiOH基を塗膜表面に残存させて親水
性にすることは可能であるが、この場合には、縮合度を
上げることができないので、造膜性が悪くなり、クラッ
クが発生しやすい。逆に造膜性を高めるために焼き付け
温度を上げると、塗膜表面のSiOH基が減少し、水濡
れ性が悪くなるので、耐雨垂れ汚染性が充分ではなくな
る。また、アルミナゾルを使用したものは、表面が塩基
性になるので、酸性を示す汚染物質等に対して親和性が
あるため、かえって耐汚染性が低下する。
【0016】一方、耐汚染性を有する塗料として、有機
系バインダーからなるものも提案されている。このよう
な塗料としては、特開平1−141952号公報には、
水酸基含有樹脂、及び、下記一般式; Rn −Si [(OR)3-n ] − (式中、nは、0、1又は2を表す。)で表されるアル
コキシシリル基(以下、「SiOR基」という)含有共
重合体からなる熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
特開平2−75649号公報には、水酸基含有フッ素系
共重合体、加水分解性シリル基含有ビニル系重合体及び
硬化触媒からなる熱硬化性樹脂組成物が開示されてい
る。
【0017】これらの技術は、有機系バインダーが硬化
し、更に、SiOR基の加水分解縮合反応によるSi−
O−Si又はSi−O−C結合を生成させることによっ
て硬化塗膜を形成する一方、塗膜中に残ったSiOR基
が、屋外曝露又は経時により加水分解を受け、親水性の
SiOH基となり、塗膜表面の親水性を高めることによ
って、表面に付着した汚染物質を雨水で流し、その結
果、耐雨垂れ汚染性を得ることができるものである。
【0018】しかしながら、これらの技術では、得られ
る塗膜の硬度を充分高めるために熱硬化させると、Si
OR基が硬化反応にあずかるため、塗膜表面に充分な量
のSiOR基が残留せず、加水分解反応によって得られ
る親水性のSiOH基の量が不充分となり、結果的に曝
露中の塗膜表面の親水性が保たれず、良好な耐雨垂れ汚
染性を実現することができない。逆に、塗膜表面の親水
性を保つために、あえてSiOR基を残留させると、所
望の塗膜硬度が得られず、また、酸性雨等の作用により
塗膜表面又は塗膜内部でSiOR基の加水分解縮合反応
が起こり、その結果、経時的に硬化し、塗膜クラックが
発生したり、耐酸性及び耐アルカリ性が悪くなる。
【0019】そこで、無機系バインダーからなる塗料及
び有機系バインダーからなる塗料の優れた性能を保持し
たまま、更に耐雨垂れ汚染性をも付与した塗膜を形成す
ることができる塗料の開発が望まれており、例えば、ア
ルコキシシラン縮合体等の親水化剤を用いた塗料組成物
が提案されている。特開平6−145453号公報に
は、アルコキシシリル基含有アクリル共重合体、テトラ
アルキルシリケート及び/又はその縮合物、並びに、硬
化触媒からなる親水性硬化性組成物が開示されている。
WO94/06879号公報には、オルガノシリケート
及び/又は縮合物からなり、酸処理後の塗膜表面の水に
対する接触角が70度以下である塗料組成物が開示され
ている。
【0020】特開平7−286126号公報には、加水
分解性シリル基を有する含フッ素共重合体の加水分解
物、シロキサン化合物及び/又は加水分解性シリル基を
有するアクリル共重合体の加水分解物とからなる無機・
有機複合被覆剤用バインダーが開示されている。特開平
7−68217号公報には、アルコキシシランの加水分
解物及びポリエステル樹脂からなる液状配合物が開示さ
れている。
【0021】これらの技術は、SiOR基の加水分解縮
合反応によるSi−O−Si結合若しくはSi−O−C
結合の生成又はブロックイソシアネートによるウレタン
結合の生成により硬化塗膜を形成する一方、添加したア
ルコキシシラン部分加水分解縮合物中のSiOR基が酸
処理又は屋外曝露により加水分解を受け、親水性のSi
OH基となり、塗膜表面の親水性が高まることによっ
て、塗膜表面に付着した汚染物質を雨水で流し、耐雨垂
れ汚染性を得ることができるものである。
【0022】しかしながら、これらの技術では、硬化後
の塗膜中のSiOR基の加水分解縮合反応により、塗膜
にクラックが生じたり、添加したアルコキシシラン部分
加水分解縮合物は、親水効果が発現するまでに時間がか
かる。これは、アルコキシシラン部分加水分解縮合物の
SiOR基のうち分子の末端に存在するものは容易に加
水分解されるが、その他のSiOR基は加水分解されに
くいためである。従って、塗膜表面の親水効果を促進す
るために酸処理が必要となる。この酸処理が不充分であ
ると、曝露中の加水分解の進行に時間がかかり、加水分
解反応が充分に進行するまでは塗膜表面の親水性が不充
分であるので、その間に汚染物質が付着してしまう。
【0023】また、このようなアルコキシシラン部分加
水分解縮合物は重合度が小さく、このため、SiOR基
の存在数は、アルコキシシラン部分加水分解縮合物1分
子内にせいぜい2個程度であるので、曝露初期から塗膜
表面の親水性を発現しようとすると、大量のアルコキシ
シラン部分加水分解縮合物が必要となり、塗膜にクラッ
クが生じたり、塗料安定性が悪くなる。更に、重合度が
小さいために分子量が小さく、焼き付け塗料に使用する
場合には、かなりの量のアルコキシシラン部分加水分解
縮合物が揮散するので、耐雨垂れ汚染性が不充分となる
問題点があった。従って、優れた耐雨垂れ汚染性を有す
る塗膜を形成することができる塗料の開発が望まれてい
る。
【0024】ところで、良好な耐雨垂れ汚染性を発現す
る塗膜は、一般に、水との接触角が小さいとされてい
る。例えば、上述したWO94/06879号公報によ
ると、塗膜表面の水の接触角、いわゆる静的接触角が7
0度以下であるものが良好な耐雨垂れ汚染性を発現する
ことができるとされている。また、瀬野らの報告(日本
建築仕上学会、1995年大会学術講演会要旨集211
〜214頁)によると、フッ素樹脂塗料を用い、従来使
用されているもの及びその汚染防止型のもの1種類ずつ
を比較して、塗膜に対する水の静的接触角の低下が雨垂
れ汚染の減少と同調しているとされており、塗膜に付着
した水滴の動的前進接触角と動的後退接触角についても
言及されている。
【0025】しかしながら、実際には、水の静的接触角
が大きくても、耐雨垂れ汚染性が良好なものも存在して
いる。このようなものとしては、例えば、けい素含有化
合物をポリフッ化ビニリデン系フッ素塗料に添加する
と、塗膜表面の粗度が大きくなり、撥水性領域に移行し
て接触角も大きくなるが、耐雨垂れ汚染性は良好とな
る。これは、塗膜表面の凹部に水が溜まることで水の膜
が形成され、汚染物質を含んだ水滴が、その膜の上を速
やかに流れ落ちるためであると考えられている。また、
ポリフッ化ビニリデン系フッ素塗料にアルコキシシリル
基を有するポリマーを添加して塗膜を形成すると、水の
静的接触角は該ポリマーを添加しない場合と比べてほと
んど変化がないが、塗膜は水によく濡れ、耐雨垂れ汚染
性は良好である。
【0026】このことは、上述の塗膜を含め、従来使用
されている塗膜について、水の静的接触角を測定し、更
に2か月曝露による耐雨垂れ汚染性の評価を行い、これ
らの関係を調べることにより得た図4及び図5に示すグ
ラフから明らかである。すなわち、図4から、水の静的
接触角と耐雨垂れ汚染性との間に相関はなく、非常にば
らつきのあることが判る。また、図5からは、アルコキ
シシリル基を有するポリマーの添加量によらず、静的接
触角はほぼ一定であるが、耐雨垂れ汚染性は、該ポリマ
ーの添加量が多い程良好になっており、静的接触角の低
下と雨垂れ汚染の減少とは必ずしも一致していないこと
が判る。
【0027】このような現象は、水の静的接触角が、水
平面に置かれた水滴の広がりやすさや、垂直又は傾斜し
た面の濡れ始める過程での水滴の広がりやすさを示すパ
ラメーターであるので、壁面や屋根のように垂直又は傾
斜した面上に付着した雨水が、水滴となって流れ落ちる
ときに生じる雨垂れ汚染を正確には評価することができ
ないためであると考えられる。従って、静的接触角は、
必ずしも耐雨垂れ汚染性と相関があるわけではなく、正
確に耐雨垂れ汚染性を評価するためには、垂直又は傾斜
した面から水滴が流れ落ちるときの水濡れ性を表すパラ
メーターが必要となる。
【0028】垂直又は傾斜した面から水滴が流れ落ちる
ときの状態に関するパラメーターとしては、例えば、移
動する水滴の前端部又は後端部の接触角を考えることが
できる。例えば、上記瀬野らの報告には、水の動的前進
接触角が小さい場合には、面上のほこり等をよく洗い流
すであろうことが示唆されている。しかしながら、耐雨
垂れ汚染性は、ほこりの除去のみによって解決されるわ
けではない。また、水の動的後退接触角についても触れ
られてはいるものの、瀬野らは、水の動的前進接触角が
小さい場合の水滴の形状の変形を表すパラメーターとし
て言及しているのみである。この水の動的後退接触角
は、傾斜した塗面上の水滴の後退における接触角である
ので、これらの値は塗面の傾斜角によって異なり、正確
に耐雨垂れ汚染性を評価することは容易ではない。従っ
て、動的後退接触角は、耐雨垂れ汚染性との関係を論じ
るための適切なパラメーターではない。瀬野らの報告に
おいては、耐雨垂れ汚染性との関連性は、もっぱら水滴
の前進移動する局面に着目して論じられており、水滴が
流れ落ちるときの水濡れ性を的確に把握するパラメータ
ーは提示されてはいない。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑
み、雨垂れ汚染に対する耐汚染性が良好であり、耐水
性、耐酸性、耐アルカリ性及び耐クラック性に優れた塗
膜、塗料組成物及び塗膜形成方法を提供することを目的
とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記式
(1); Si(OCH3 4 (1) で表されるテトラメトキシシランを加水分解、縮合して
得られる加水分解率100%未満の部分加水分解縮合物
であって、シラノール基(SiOH基)とメトキシシリ
ル基(SiOMe基)とのモル比が(SiOH基)/
(SiOMe基)=1/10以下であり、2〜8量体の
含有量が0〜30重量%であり、重量平均分子量が15
00〜5000である部分加水分解縮合物(I)と、フ
ィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬化
反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくとも
1種とを含み、水の動的後退張力(Tr)が、55dy
n/cm以上である耐雨垂れ汚染性塗膜である。
【0031】また、本発明は、下記式(1); Si(OCH3 4 (1) で表されるテトラメトキシシランを加水分解、縮合して
得られる加水分解率100%未満の部分加水分解縮合物
であって、シラノール基(SiOH基)とメトキシシリ
ル基(SiOMe基)とのモル比が(SiOH基)/
(SiOMe基)=1/10以下であり、2〜8量体の
含有量が0〜30重量%であり、重量平均分子量が15
00〜5000である部分加水分解縮合物(I)と、フ
ィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬化
反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくとも
1種とを含み、得られる塗膜の水の動的後退張力(T
r)が、55dyn/cm以上である塗料組成物であ
る。
【0032】更に、本発明は、基材に、エポキシ樹脂系
プライマー、ポリウレタン変性エポキシ樹脂系プライマ
ー、及び、ポリエステル樹脂系プライマーからなる群よ
り選択された少なくとも1種のプライマーを塗装した
後、上記塗料組成物を塗装し、焼き付ける耐雨垂れ汚染
性塗膜の形成方法である。また、本発明は、上記耐雨垂
れ汚染性塗膜で被覆されたことを特徴とする耐雨垂れ汚
染性を有する塗装物である。以下に本発明を詳述する。
【0033】本発明で使用される部分加水分解縮合物
(I)は、下記式(1); Si(OCH3 4 (1) で表されるテトラメトキシシランを加水分解、縮合して
得られる加水分解率100%未満の部分加水分解縮合物
である。本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜において、上記部
分加水分解縮合物(I)は、親水化剤の役割を果たすも
のである。
【0034】上記式(1)で表されるテトラメトキシシ
ランは、得られる塗膜の硬度、耐酸性及び耐アルカリ性
を向上させることができる。
【0035】上記部分加水分解縮合物(I)には、官能
基としてSiOH基及びSiOMe基が存在している。
ここで、Meは、メチル基を表す。上記SiOH基と上
記SiOMe基とのモル比は、(SiOH基)/(Si
OMe基)=1/10以下である。SiOH基が多く存
在すると、硬度の高い塗膜ができる反面、塗料貯蔵中に
反応が起こり、増粘やゲル化等の不具合が起こりやすい
ので、上記範囲に限定される。
【0036】上記部分加水分解縮合物(I)を得るに際
しては、水の添加量を後述のとおりとすること以外は、
公知の方法で得ることができる。例えば、上記テトラメ
トキシシランに、必要量の水と触媒とを加え、メタノー
ル中で数時間リフラックスさせ、加水分解縮合反応によ
って生成するアルコールを必要により除去しながら、所
定の分子量となるまで加水分解縮合反応を進行させ、部
分加水分解縮合物(I)を得る。また、上記テトラメト
キシシランの縮合体であるオリゴマーを得た後、上記オ
リゴマーを反応させることによっても得ることができ
る。
【0037】上記部分加水分解縮合物(I)を得るのに
使用される水の量は、所望の加水分解率から決定され
る。上記加水分解率は、上記テトラメトキシシランの場
合、加水分解反応が、 Si(OCH3 4 +xH2 O→Si(OCH3 4-2x
x +2xCH3 OH と表されるので、 加水分解率(%)=(2x/4)×100=(x/2)
×100 となる。
【0038】この場合、すべてのメトキシシリル基を加
水分解縮合するのに必要な理論量の水を添加した場合を
加水分解率100%として計算する。すなわち、上記の
式から明らかなように、テトラメトキシシラン又はその
オリゴマーが有する全メトキシシリル基のモル数の1/
2倍のモル数の水を添加した場合を加水分解率100%
とするものである。
【0039】本発明においては、上記部分加水分解縮合
物(I)の加水分解率は、100%未満である。好まし
くは、10%以上100%未満である。10%未満であ
ると、モノマーが残存しやすく、100%以上である
と、部分加水分解縮合物自体の安定性が低下する。より
好ましくは、35〜70%である。35%未満である
と、分子量が充分に上がらず、本発明で用いる部分加水
分解縮合物(I)を得るのが困難であり、70%を超え
ると、分子量を本発明で用いる部分加水分解縮合物
(I)の範囲に制御するのが困難で、大きな粒子になり
やすく、他の成分と相溶しにくいため、塗料中での貯蔵
安定性が低下する。
【0040】上記テトラメトキシシランの加水分解反応
に使用される水としては特に限定されないが、塗膜中に
イオン等の不純物が残存すると塗膜性能が低下するの
で、目的の塗膜性能に応じて、脱イオン水、純水又は超
純水を使用することが好ましい。
【0041】上記加水分解反応においては、必要に応じ
て、触媒を使用してもよい。上記触媒としては特に限定
されず、例えば、塩酸、酢酸、硫酸、りん酸等の無機
酸;ぎ酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスル
ホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸;
水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウ
ム、アンモニア等のアルカリ触媒;有機金属;金属アル
コキシド;ジブチルすずラウレート、ジブチルすずオク
チエート、ジブチルすずジアセテート等の有機すず化合
物;アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チ
タニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニ
ウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、
チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセ
トネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセト
ネート)、ジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス
(アセチルアセトネート)等の金属キレート化合物;ほ
う素ブトキシド、ほう酸等のほう素化合物等を挙げるこ
とができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上
を併用してもよい。得られる部分加水分解縮合物(I)
及び得られる塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、カル
ボン酸、金属キレート化合物及びほう素化合物の中から
1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0042】上記触媒の添加量は、特に限定されるもの
ではないが、通常、テトラメトキシシラン100重量部
に対して、0.1〜10重量部が好ましい。より好まし
くは、0.5〜5重量部である。
【0043】上述のようにして得られた部分加水分解縮
合物(I)は、一般に、モノマー、2量体、3量体、そ
れ以上の多量体が混在している。モノマーや低分子量成
分が多いと、部分加水分解縮合物(I)そのものの貯蔵
安定性が低下したり、これを使用した塗料組成物の貯蔵
安定性が低下しやすい。また、得られる塗膜の性能、例
えば、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐クラック性等
を低下させやすい。従って、まず、テトラメトキシシラ
ンそのものであるモノマーを除去しておくことが好まし
い。除去後の上記テトラメトキシシラン(モノマー)の
含有量は、上記部分加水分解縮合物(I)中、1重量%
以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3重
量%以下である。上記テトラメトキシシラン(モノマ
ー)の除去方法としては特に限定されず、公知の方法で
行うことができる。
【0044】上記テトラメトキシシラン(モノマー)
は、上述の方法によって除去することが可能であるが、
この方法では、その他の2〜8量体のような低分子量成
分を除去することが困難な場合がある。従って、上記部
分加水分解縮合物(I)の製造方法を工夫して、上記2
〜8量体のような低分子量成分の含有量を低く抑える必
要がある。本発明においては、上記部分加水分解縮合物
(I)中の2〜8量体の含有量は、0〜30重量%であ
る。30重量%を超えると、部分加水分解縮合物そのも
のの貯蔵安定性が不良となり、塗膜性能が低下するほ
か、焼き付け時に揮散する成分が多いために、塗膜表面
に存在する親水性成分が少なくなり、親水性が保たれに
くいので、上記範囲に限定される。なお、本発明におけ
る2〜8量体の含有量は、ガスクロマトグラフ法(G
C)によって求めた値であり、TCD検出器を用い、2
量体以上の部分加水分解縮合物の検出感度を2量体と同
等として求めた値である。
【0045】本発明において、上記部分加水分解縮合物
(I)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロ
マトグラフィー(GPC)にて標準ポリプロピレングリ
コール換算で1500〜5000である。1500未満
であると、部分加水分解縮合物そのものの貯蔵安定性が
不良となり、塗膜性能が低下し、揮散量が増大するほ
か、低分子量成分が多いために、塗膜内部に捉えられや
すく、表面に浮上しにくくなり、5000を超えると、
分子が大きすぎて塗膜表面に浮上しにくく、親水性を発
現しにくくなるので、上記範囲に限定される。
【0046】上記部分加水分解縮合物(I)としては、
市販されているものを使用することもできる。このよう
なものとしては、例えば、MKCシリケートMSSGN
P(三菱化学社製)等を挙げることができる。
【0047】上記MKCシリケートMSSGNPは、テ
トラメトキシシランを出発原料として、メタノール中
で、塩酸触媒の下、数時間還流することによって得たも
のであり、加水分解反応のために添加される水の量は、
加水分解率60〜80%相当である。このものは、有機
溶媒中で、小角X線散乱測定法により測定可能な慣性半
径を有する微小な粒子を形成している。具体的には、加
水分解率60%のとき、重量平均分子量1500〜35
00であって、慣性半径5〜20Åのもの、及び、加水
分解率70%のとき、重量平均分子量2500〜500
0であって、慣性半径15〜40Åのものが確認されて
いる。
【0048】また、上記MKCシリケートMSSGNP
は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GP
C)測定において、重量平均分子量が標準ポリプロピレ
ングリコール換算で1500〜5000である。このう
ち多くは、1800〜3000であり、このものは、ヒ
ドロキシル基のモル数がアルコキシル基のモル数に対し
て1/10以下である。また、このものは、溶媒がメタ
ノールであるが、常法により、例えば、キシレン等の非
極性溶媒に置換することもできる。
【0049】本発明において、上記MKCシリケートM
SSGNP等の2〜8量体の含有量が0〜30重量%、
重量平均分子量が1500〜5000、(SiOH基)
/(SiOR基)のモル比が1/10以下であるものを
使用すると、例えば、バインダー成分として熱可塑性フ
ッ素樹脂を用いた場合、水の動的後退張力(Tr)が6
0〜68dyn/cmと非常に大きい値を示し、塗膜表
面の親水性が充分に発揮されており、耐雨垂れ汚染性に
優れていることが判る。
【0050】上記部分加水分解縮合物(I)の含有量
は、フィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基
を硬化反応基とする無機系バインダー(B)のうち少な
くとも1種を含む塗料固形分100重量部に対して、
0.1〜100重量部が好ましい。0.1重量部未満で
あると、親水化の効果が小さく、100重量部を超える
と、添加した量に応じた親水化の効果が得られず、塗料
組成物の貯蔵安定性が低下し、構造粘性が高いために塗
装しにくい。
【0051】本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜は、上記部分
加水分解縮合物(I)と、フィルム形成性樹脂(A)及
びアルコキシシリル基を硬化反応基とする無機系バイン
ダー(B)のうち少なくとも1種とからなる。上記フィ
ルム形成性樹脂(A)及び上記無機系バインダー(B)
としては特に限定されないが、後に詳細に説明するフィ
ルム形成性樹脂(A)及び無機系バインダー(B)を好
適に使用することができる。
【0052】本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜は、水の動的
後退張力(Tr)が55dyn/cm以上である。上記
水の動的後退張力(Tr)は、久保、上田の方法(日本
レオロジー学会、第43回レオロジー討論会講演要旨集
233頁、1995年)に従って、図1に示した測定装
置を用いて測定することができる。上記測定装置の上部
に取り付けられたロードセル1に、測定する塗膜を形成
させた試験片2を吊るしておき、測定液3の入った容器
4を支持台5に載せて、上記支持台5を上下に移動さ
せ、上記試験片2を測定液3中に浸漬させたり、測定液
3から引き上げたりする。このときの試験片2にかかる
荷重Fの変化を測定する。
【0053】上記試験片2が測定液3に浸漬される前の
試験片2の重さを基準とすると、上記試験片2にかかる
荷重Fは、1回の測定サイクル中において、図3に示す
ように変化する。ここで、点Aは、図2の(a)に示す
浸漬開始点を表し、点Bは、図2の(b)に示すように
測定液3の表面張力に打ち勝って試験片2が測定液3中
に侵入を開始する点を表し、点Cは、試験片2を引き上
げはじめる点を表し、点Fgは、変位が点Aと同一であ
る点を表す。
【0054】この点Fgにおける荷重は、水の後退張力
(Fr)に相当する。この値から、下記式(xi)を用
いて、水の動的後退張力(Tr)を求めることができ
る。 Tr=(Fr−Fb)/P (xi) 〔式中、Fbは、試験片2にかかる浮力であり、点Fg
においては、0である。Pは、試験片2の浸漬部の周囲
長(mm)である。〕 このように、水の動的後退張力(Tr)は、特別な理論
的前提に依存することなく、物理的測定によってのみ測
定可能な値である。
【0055】本発明者らは、特願平8−301339号
において、上記水の動的後退張力(Tr)が47dyn
/cm以上を示す塗膜が、明瞭な耐雨垂れ汚染性を発現
することを見いだした。更に、本発明において、特定の
シリケートを使用することにより、上記水の動的後退張
力(Tr)が55dyn/cmとなり、この領域の塗膜
は、更に良好な耐雨垂れ汚染性を示すことが判った。よ
り好ましくは、水の動的後退張力(Tr)が60dyn
/cm以上である塗膜である。
【0056】本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜は、二次イオ
ン質量分析(SIMS)において、塗膜の表面からの深
さが0nm以上400nm未満の領域にあるSi元素の
全存在量が、上記塗膜の表面からの深さが400〜50
0nmの領域にあるSi元素の全存在量の3倍以上であ
ることが好ましい。上記SIMSは、5〜15keV程
度のエネルギーのイオンビームを試料表面に照射し、ス
パッタリングによって試料から発生する二次イオンを質
量分析する方法である。この方法は、試料中に含まれる
元素の質量分析を高感度で行うことができるだけではな
く、上記元素の深さ方向分析を容易に行うことができ
る。本発明においては、上記SIMSの手法を用いて、
塗膜に含まれるSi元素の深さ方向分析を行い、塗膜中
でのSi元素の分布を測定する。
【0057】上記塗膜の表面からの深さが0nm以上4
00nm未満の領域にあるSi元素の全存在量が、塗膜
の表面からの深さが400〜500nmの領域にあるS
i元素の全存在量の3倍未満であると、塗膜表面付近に
おけるSiOR基が少ないために、塗膜を親水化させる
ことができず、良好な耐雨垂れ汚染性を示すことができ
ない。
【0058】また、本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜は、塗
膜の表面からの深さが30nmでのSi元素の存在量
が、塗膜の表面からの深さが400〜500nmの領域
にあるSi元素の平均存在量の5倍以上であることが好
ましい。5倍未満であると、塗膜表面付近におけるSi
OR基が少ないために、塗膜を親水化させることができ
ず、良好な耐雨垂れ汚染性を示すことができない。
【0059】本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜の膜厚として
は特に限定されないが、耐久性、耐摩耗性等の性質を良
好に保つために、通常、乾燥膜厚として5〜100μm
であることが好ましい。
【0060】本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜は、上記部分
加水分解縮合物(I)と、上記フィルム形成性樹脂
(A)及びアルコキシシリル基を硬化反応基とする上記
無機系バインダー(B)のうち少なくとも1種を含むの
で、上記部分加水分解縮合物(I)に含まれるSiOH
基及び/又はSiOR基が塗膜の表面に保持され、親水
性になっている。また、上記部分加水分解縮合物(I)
は、(SiOH基)/(SiOMe基)=1/10以下
であり、低分子量成分である2〜8量体の含有量が0〜
30重量%であり、重量平均分子量が1500〜500
0であるものに限定されているため、従来より使用され
ている親水化剤と比較して、焼き付け時における揮散等
が少なく、塗膜表面を親水化させるのに非常に好まし
い。従って、本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜は、上記Si
OH基及び/又は上記SiOR基が塗膜の表面に保持さ
れ、充分に親水性を発現することができ、かつ、その水
の動的後退張力(Tr)が55dyn/cm以上のもの
であるので、耐雨垂れ汚染性に優れている。
【0061】本発明の塗料組成物は、下記式(1); Si(OCH3 4 (1) で表されるテトラメトキシシランを加水分解、縮合して
得られる加水分解率100%未満の部分加水分解縮合物
であって、シラノール基(SiOH基)とメトキシシリ
ル基(SiOMe基)とのモル比が(SiOH基)/
(SiOMe基)=1/10以下であり、2〜8量体の
含有量が0〜30重量%であり、重量平均分子量が15
00〜5000である部分加水分解縮合物(I)と、フ
ィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬化
反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくとも
1種を含み、得られる塗膜の水の動的後退張力(Tr)
が、55dyn/cm以上であるものである。
【0062】上記部分加水分解縮合物(I)の配合量
は、上記フィルム形成性樹脂(A)及び上記無機系バイ
ンダー(B)のうち少なくとも1種を含む塗料固形分1
00重量部に対して、0.1〜100重量部が好まし
い。0.1重量部未満であると、親水化の効果が小さ
く、100重量部を超えると、添加した量に応じた親水
化の効果が得られず、塗料組成物の貯蔵安定性が低下
し、構造粘性が高いために塗装しにくい。
【0063】上記フィルム形成性樹脂(A)としては、
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂のいずれ
であってもよい。本発明においては、上記部分加水分解
縮合物(I)と混合されるので、触媒を必要としない熱
可塑性樹脂が好ましい。その理由としては、上記部分加
水分解縮合物(I)が、上述したようにアルコキシシリ
ル基を有しているため、塗料組成物に使用される酸やす
ず系化合物等の触媒と共存させた場合、水が混入する
と、アルコキシシリル基の加水分解縮合反応が起こり、
塗料組成物の貯蔵安定性を損なうこと等が考えられる。
上記フィルム形成性樹脂(A)として、熱硬化性樹脂又
は常温硬化性樹脂を使用する場合には、上記部分加水分
解縮合物(I)と触媒成分とを分離した二液型の塗料組
成物とすることが好ましい。
【0064】上記熱可塑性樹脂としては特に限定されな
いが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニ
リデンとアクリル樹脂との共重合物、ポリフッ化ビニリ
デンとアクリル樹脂との混合物、プラスチゾルからなる
ものが好ましい。
【0065】上記熱硬化性樹脂としては特に限定されな
いが、ポリオール樹脂(a)が好ましく、これと反応可
能な硬化剤(b)が併用される。上記ポリオール樹脂
(a)は、水酸基価が5〜300であるものが好まし
い。水酸基価が5未満であると、硬化性反応基量が少な
すぎて硬化性が低下し、300を超えると、硬化して得
られる塗膜に親水性基が残留し、塗膜の耐水性、耐酸性
及び耐アルカリ性が低下する。より好ましくは、30〜
200である。
【0066】上記ポリオール樹脂(a)は、数平均分子
量が500〜20000であるものが好ましい。数平均
分子量が500未満であると、得られる塗膜の機械的強
度が低下し、20000を超えると、塗料組成物の粘度
が高くなりすぎて、塗装性が低下する。より好ましく
は、1800〜20000である。
【0067】上記ポリオール樹脂(a)としては特に限
定されず、例えば、アクリルポリオール樹脂、ポリエス
テルポリオール樹脂、フッ素系ポリオール樹脂、シリコ
ーンポリオール樹脂等を挙げることができる。これらは
単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】上記アクリルポリオール樹脂は、ヒドロキ
シル基含有アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和モ
ノマーとを常法により共重合することにより得られるも
のである。上記ヒドロキシル基含有アクリルモノマーと
しては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アク
リレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート
類等を挙げることができる。
【0069】上記ヒドロキシル基含有アクリルモノマー
と共重合可能なモノマーとしては特に限定されず、例え
ば、上述した塗膜の物性を調整するために使用されるモ
ノマーとして例示したもの等を挙げることができる。上
記アクリルポリオール樹脂は、必要に応じて、アルコキ
シシリル基が導入されていてもよい。上記アルコキシシ
リル基の導入は、アルコキシシリル当量が300未満と
なるようにアルコキシシリル基含有アクリルモノマーと
他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させることに
より行うことができる。
【0070】上記ポリエステルポリオール樹脂は、多価
カルボン酸を主体とした酸成分と、多価アルコールを主
体としたアルコール成分との重縮合物である。上記酸成
分としては特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イ
ソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン
酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカル
ボン酸及びその無水物;こはく酸、アジピン酸、アゼラ
イン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−
シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸等
を挙げることができる。
【0071】上記のほか、微量成分として、γ−ブチロ
ラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;これら
に対応するヒドロキシカルボン酸;p−オキシエトキシ
安息香酸等の芳香族オキシモノカルボン酸;トリメリッ
ト酸、トリメジン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多
価カルボン酸等を含有してもよい。
【0072】上記アルコール成分としては特に限定され
ず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジ
オール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジ
オール、1,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコ
ール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサ
ンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリ
コール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シ
クロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレ
ンオキサイド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキ
サイド付加物;1,2−プロパンジオール、ネオペンチ
ルグリコール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペ
ンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−
ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メ
チル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジ
オール、1,2−オクタデカンジオール等の側鎖を有す
る脂肪族グリコール等を挙げることができる。上記のほ
か、微量成分として、トリメチロールプロパン、グリセ
リン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコ
ール等を使用してもよい。
【0073】上記ポリエステルポリオール樹脂は、必要
に応じて、他の成分、例えば、シリコーン成分、アクリ
ル成分等と結合されていてもよい。上記シリコーン成分
の導入は、例えば、アルコール成分としてヒドロキシア
ルキル基を有する(ポリ)シロキサンを用い、上記酸成
分と通常の縮合反応をさせること等により行うことがで
きる。
【0074】上記フッ素系ポリオール樹脂は、ヒドロキ
シル基含有ラジカル重合性不飽和モノマー及びフルオロ
オレフィンモノマー、必要に応じて、他のラジカル重合
性不飽和モノマーを共重合させることにより得られるも
の、又は、フルオロオレフィンモノマーのみ、若しく
は、フルオロオレフィンモノマー及び他のラジカル重合
性不飽和モノマーを重合させて得られるヒドロキシル基
を有しないフッ素ポリマーに、アクリルポリオール樹脂
を混合したものである。
【0075】上記ヒドロキシル基含有ラジカル重合性不
飽和モノマーとしては特に限定されず、例えば、ヒドロ
キシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニル
エーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキ
シペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニ
ルエーテル類;エチレングリコールモノアリルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエ
チレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシア
リルエーテル類等を挙げることができる。
【0076】上記フルオロオレフィンモノマーとして
は、二フッ化オレフィンモノマー、三フッ化オレフィン
モノマー及び四フッ化オレフィンモノマーがあり、具体
的には、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、三フッ化塩
化エチレン、四フッ化エチレン等を挙げることができ
る。
【0077】上記他のラジカル重合性不飽和モノマーと
しては特に限定されず、要求される塗膜の物性に応じ
て、公知のモノマーから適宜選択することができる。こ
のようなモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピ
レン、イソブチレン等のα−オレフィン類;エチルビニ
ルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ブチルビニル
エーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエ
ーテル類;酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、イソ
酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル等の
脂肪族イソプロペニル等の脂肪酸エステル類等を挙げる
ことができる。
【0078】上記フッ素系ポリオール樹脂及び上記フッ
素樹脂は、二フッ化型ポリビニリデンフルオリド(PV
DF)系、三フッ化型フルオロエチレンビニルエーテル
共重合体(FEVE)系、四フッ化FEVE系等のよう
に市販されているものもある。例えば、二フッ化型PV
DF系としては、カイナー500(エルフアトケム社
製)等を使用することができる。このものは、ヒドロキ
シル基を有しないので、ヒドロキシル基含有アクリルポ
リオール樹脂を混合して使用する。また、三フッ化型F
EVE系としては、ルミフロンシリーズ(旭硝子社
製)、セフラルコートシリーズ(セントラル硝子社製)
等を使用することができ、四フッ化型FEVE系として
は、ゼッフルシリーズ(ダイキン工業社製)等を使用す
ることができる。その他、いわゆるフッ化アクリル樹脂
として、コータックス(東レ社製)等を使用することが
できる。
【0079】上記シリコーンポリオール樹脂としては、
特公平2−61481号公報に記載されているような下
記一般式(7); Ri x ・Rj y ・SiO(4-X-Y)/2 (7) (式中、Ri は、水素、メチル基、炭素数1〜20のア
ルコキシル基若しくはアリール基、アリロキシ基、又
は、炭素数2〜100の鎖中にエステル結合、エーテル
結合、ウレタン結合若しくは炭素−炭素不飽和結合を有
する有機基を表す。Rj は、ヒドロキシル基を有し、炭
素数2〜100の鎖中にエステル結合、エーテル結合、
ウレタン結合、炭素−炭素不飽和結合を有する有機基を
表す。x、yは、0<x<4、0<y<4であり、か
つ、2≦x+y<4を満たす正の整数を表す。)で表さ
れるもの等を使用することができる。
【0080】上記シリコーンポリオール樹脂は、数平均
分子量が200〜100000であるものが好ましい。
200未満であると、硬化膜が軟弱なものとなり、塗膜
性能が発揮されず、100000を超えると、得られる
塗料組成物の粘度が高くなり、スプレー塗装等の塗装作
業性が低下する。より好ましくは、500〜20000
である。上記シリコーンポリオール樹脂は、水酸基価が
20〜300のものが好ましい。20未満であると、硬
化剤と充分に反応しないために表面硬化性を示さず、表
面の機械的物性が低下し、300を超えると、水酸基含
有樹脂や架橋剤との相溶性が悪化し、充分な硬化塗膜が
得られない。より好ましくは、30〜200である。
【0081】上記シリコーンポリオール樹脂は、他のポ
リオール樹脂と組み合わせて使用される。上記他のポリ
オール樹脂としては、ヒドロキシル基を含有し、かつ、
水酸基価が5〜300、好ましくは、30〜200のも
のであれば特に限定されず、例えば、上述したアクリル
ポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、アクリ
ル変性アルキド樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから得られる
エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0082】上記他のポリオール樹脂は、使用する際に
上記シリコーンポリオール樹脂と混合してもよく、全量
又はその一部を予め上記シリコーンポリオール樹脂と反
応させておいてもよい。上記シリコーンポリオール樹脂
と反応させる方法としては、例えば、ヒドロキシアルキ
ル基を有するトリシロキサンに不飽和二重結合とヒドロ
キシル基を除く官能基を有する化合物、例えば、マレイ
ン酸無水物等の化合物を反応させて、不飽和二重結合を
有する成分を組み入れた後、この不飽和二重結合とアク
リルモノマーやビニルモノマー等の不飽和結合とを付加
重合させる方法等を挙げることができる。
【0083】上記シリコーンポリオール樹脂と上記他の
ポリオール樹脂との混合比は、シリコーンポリオール樹
脂3〜70重量部に対して、他のポリオール樹脂97〜
30重量部が好ましい。シリコーンポリオール樹脂が3
重量部未満であると、シリコーンによる耐候性、耐薬品
性等の特性が充分に発揮されず、70重量部を超える
と、樹脂の相溶性が低下する。
【0084】上記ポリオール樹脂(a)と反応可能な硬
化剤(b)としては特に限定されないが、イソシアネー
ト化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂
等を挙げることができる。
【0085】上記イソシアネート化合物としては、1分
子中に2個のイソシアネート基を有する化合物であれば
特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ
ート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシ
アネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;
イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジ
イソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XD
I)等の芳香族−脂肪族ジイソシアネート類;トリレン
ジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタ
ンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネ
ート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、水素
化されたTDI(HTDI)、水素化されたXDI(H
6XDI)、水素化されたMDI(H12MDI)等の
水素添加ジイソシアネート類;これらの2量体、3量
体、4量体以上の多量体のポリイソシアネート類;これ
らとトリメチロールプロパン等の多価アルコール、水又
は低分子量ポリエステル樹脂との付加物等を挙げること
ができる。
【0086】上記イソシアネート化合物は、得られる塗
料組成物の安定性を高めるために、通常、反応基を適当
なブロック化剤でブロックしたブロックイソシアネート
化合物として使用される。上記ブロック化剤としては特
に限定されず、例えば、メチルエチルケトオキシム、ア
セトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノ
ンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブ
ロック化剤;m−クレゾール、キシレノール等のフェノ
ール系ブロック化剤;メタノール、エタノール、ブタノ
ール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、
エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール
系ブロック化剤;ε−カプロラクタム等のラクタム系ブ
ロック化剤;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル等
のジケトン系;チオフェノール等のメルカプタン系ブロ
ック化剤;チオ尿素等の尿素系ブロック化剤;イミダゾ
ール系ブロック化剤;カルバミン酸系ブロック化剤等を
挙げることができる。なかでも、ラクタム系ブロック化
剤、オキシム系ブロック化剤、アルコール系ブロック化
剤、ジケトン系ブロック化剤が好ましい。
【0087】上記ブロックイソシアネート化合物は、常
法により、上記イソシアネート化合物及び上記ブロック
化剤を遊離のイソシアネート基がなくなるまで反応させ
て得られる。これらは市販されているものもあり、例え
ば、デスモジュールシリーズ(住友バイエルウレタン社
製)、バーノックDシリーズ(大日本インキ化学工業社
製)、タケネートBシリーズ(武田薬品工業社製)、コ
ロネート2500シリーズ(日本ポリウレタン工業社
製)等を使用することができる。
【0088】上記ブロックイソシアネート化合物の配合
量は、上記ポリオール樹脂(a)の水酸基価に対して、
当量以上のイソシアネート基を提供することができる量
であればよく、通常は、当量の0.8〜1.5倍であ
る。少なすぎると、硬化性が低下し、軟弱な塗膜しか得
ることができず、硬度だけではなく、耐薬品性、耐汚染
性も低下し、多すぎると、添加した量に対する充分な効
果が得られないばかりでなく、イソシアネート化合物や
ブロックイソシアネート化合物が多量に添加されるため
に、ポリオール樹脂(a)の物性に基づいて設計された
塗膜の強度、硬度、加工性等の物性が低下し、耐薬品性
も低下する。また、塗膜の黄変性や耐候性も低下しやす
い。より好ましくは、当量の1.0〜1.2倍である。
【0089】上記硬化剤(b)として上記イソシアネー
ト化合物又はブロックイソシアネート化合物を使用する
場合には、通常、触媒として、公知のジブチルすずラウ
レート等のすず化合物を使用することが好ましい。
【0090】上記アミノ樹脂としては特に限定されず、
例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウ
リル樹脂、尿素樹脂等を挙げることができる。上記メラ
ミン樹脂は、高イミノ型アルキルエーテル化メラミン、
メチロール型アルキルエーテル化メラミン、アルキルエ
ーテル化メラミン、混合アルキルエーテル化メラミン等
に分類されるが、いずれも使用することができ、焼き付
け温度、塗膜の物性に応じて、適宜選択可能である。イ
ミノ基やメチロール基を有するものは、一般に耐水性が
低下するので、塗膜の耐水性の点からアルキルエーテル
化メラミン、混合アルキルエーテル化メラミンが好まし
い。
【0091】上記アルキルエーテル化メラミンとして
は、メチル化メラミン、ブチル化メラミン及びメチル/
ブチル混合エーテル化メラミンがある。上記メチル化メ
ラミンとして市販されているものとしては、例えば、メ
トキシ基/イソブトキシ基のモル比が60/40のサイ
メル238、メトキシ基/ブトキシ基のモル比が60/
40のサイメル235、メトキシ基/ブトキシ基のモル
比が65/35のサイメル231、メトキシ基/ブトキ
シ基のモル比が40/60のサイメル236、メトキシ
基/ブトキシ基のモル比が70/30のサイメル26
6、267(三井サイテック社製);スミマール50B
(住友化学社製)等を挙げることができる。
【0092】上記ブチル化メラミンとして市販されてい
るものとしては、例えば、マイコート506(三井サイ
テック社製)、ユーバン20SE(三井東圧化学社
製)、ユーバン20N−60(三井東圧化学社製)等を
挙げることができる。上記メチル化メラミンとして市販
されているものとしては、例えば、サイメル303(三
井サイテック社製)、スミマールM30W、M40S、
M50W(住友化学社製)、メラン622、623(日
立化成工業社製)等を挙げることができる。
【0093】上記グアナミン樹脂としては、例えば、サ
イメル1123、1128、マイコート105(ベンゾ
グアナミン樹脂、三井サイテック社製)等の市販品を挙
げることができる。上記グリコールウリル樹脂として
は、例えば、サイメル1170、1171、1172
(三井サイテック社製)等の市販品を挙げることができ
る。上記尿素樹脂としては、例えば、UFR65、30
0(三井サイテック社製)等の市販品を挙げることがで
きる。
【0094】上記アミノ樹脂の配合量は、ポリオール樹
脂(a)の水酸基価に対して、当量以上のアルコキシル
基を提供することができる量であればよく、通常、〔ポ
リオール樹脂(a)〕/〔アミノ樹脂〕の重量比とし
て、9/1〜5/5である。好ましくは、8/2〜6/
4である。
【0095】上記硬化剤(b)として上記アミノ樹脂を
使用する場合には、通常、酸触媒を必要とする。上記酸
触媒としては特に限定されず、例えば、ドデシルベンゼ
ンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフ
タレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸及びその塩;有
機りん酸塩;有機ホスホン酸塩等を挙げることができ
る。これらの酸触媒のカウンターカチオンとしては、ア
ミンが好ましい。
【0096】上記酸触媒の配合量は、通常、上記ポリオ
ール樹脂(a)と硬化剤(b)との合計100重量部に
対して、0.5〜3重量部である。0.5重量部未満で
あると、硬化性が低下し、軟弱な塗膜しか得られず、硬
度のみならず耐薬品性、耐汚染性も低下し、3重量部を
超えると、添加した量に応じた効果が得られない。
【0097】本発明で使用される無機系バインダー
(B)とは、シラノール基(SiOH基)又はアルコキ
シシリル基(SiOR基)を硬化反応基とするものであ
り、加水分解縮合反応によってSi−O−Si結合を形
成して架橋、硬化するフィルムを形成することができる
ものである。
【0098】上記無機系バインダー(B)は、オルガノ
アルコキシシラン化合物(B−1)、上記オルガノアル
コキシシラン化合物(B−1)の部分加水分解縮合物
(B−2)、4官能アルコキシシラン化合物(B−
3)、上記4官能アルコキシシラン化合物(B−3)の
部分加水分解縮合物(B−4)、及び、シロキサンポリ
マー(B−5)から選択される少なくとも1種からな
る。
【0099】上記オルガノアルコキシシラン化合物(B
−1)は、下記一般式(2); R2 a −Si(OR3 4-a (2) (式中、R2 は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数
1〜11のエポキシアルキル基、アリール基、炭素数1
〜11のアルケニル基、炭素数1〜11のアラルキル
基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜5のアミノア
ルキル基、炭素数1〜5のメルカプトアルキル基、又
は、炭素数1〜5のハロアルキル基を表す。R3 は、炭
素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアシ
ル基を表す。aは、1、2又は3を表す。)で表される
ものである。
【0100】上記R2 は、炭素数1〜10のアルキル
基、炭素数1〜11のエポキシアルキル基、アリール
基、炭素数1〜11のアルケニル基、炭素数1〜11の
アラルキル基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜5
のアミノアルキル基、炭素数1〜5のメルカプトアルキ
ル基、又は、炭素数1〜5のハロアルキル基を表す。
【0101】上記炭素数1〜10のアルキル基としては
特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、n−ブチル基等の鎖状のもの;シクロペンチル
基、シクロヘキシル基等の環状のもの等を挙げることが
できる。なかでも、加水分解反応性及び縮合反応性が良
好であるので、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好
ましい。
【0102】上記炭素数1〜11のエポキシアルキル基
としては特に限定されず、例えば、γ−グリシドキシプ
ロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基等を挙げ
ることができる。上記アリール基としては特に限定され
ず、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等を挙
げることができる。上記炭素数1〜11のアルケニル基
としては特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル
基、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリ
ロイルオキシプロピル基等を挙げることができる。上記
炭素数1〜11のアラルキル基としては特に限定され
ず、例えば、ベンジル基等を挙げることができる。
【0103】上記炭素数1〜4のアシル基としては特に
限定されず、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル
基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等を挙げ
ることができる。上記炭素数1〜5のアミノアルキル基
としては特に限定されず、例えば、γ−アミノプロピル
基等を挙げることができる。上記炭素数1〜5のメルカ
プトアルキル基としては特に限定されず、例えば、γ−
メルカプトプロピル基等を挙げることができる。上記炭
素数1〜5のハロアルキル基としては特に限定されず、
例えば、γ−クロロプロピル基等を挙げることができ
る。
【0104】上記R2 としては、得られる塗膜の物性と
反応性とを考慮して、適宜選択することができる。例え
ば、塗膜のクラックを抑制したり、耐アルカリ性を付与
したい場合、上記R2 としては、フェニル基を選択する
こと等が公知である。通常は、上記R2 としては、メチ
ル基及びエチル基が一般的であり、反応性の点から、メ
チル基が多用されている。
【0105】上記R3 は、炭素数1〜10のアルキル
基、又は、炭素数1〜4のアシル基を表す。上記炭素数
1〜10のアルキル基としては特に限定されず、例え
ば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができる。
なかでも、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好まし
い。上記炭素数1〜4のアシル基としては特に限定され
ず、例えば、上記R2 で例示したもの等を挙げることが
できる。上記R3 としては、通常、加水分解反応性、縮
合反応性を考慮して、メチル基及びエチル基が一般的で
あり、メチル基が多用される。
【0106】上記aは、1、2又は3を表す。なかで
も、1が好ましい。上記aが1の場合には、上記オルガ
ノアルコキシシラン化合物(B−1)は、3官能のオル
ガノアルコキシシランであり、加水分解反応性、縮合反
応性が良好である。一方、上記aが2又は3の場合、上
記オルガノアルコキシシラン化合物(B−1)は、単官
能又は2官能のオルガノアルコキシシランとなり、反応
に関与するアルコキシシリル基が少ないので、加水分解
反応性、縮合反応性が低下する。
【0107】上記aが1の場合、上記オルガノアルコキ
シシラン化合物(B−1)の具体例としては、例えば、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラ
ン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシ
シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキ
シシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリ
エトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニ
ルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプト
プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシト
リメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシ
ラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメト
キシシラン等を挙げることができる。なかでも、メチル
トリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランが好ま
しい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併
用してもよい。
【0108】上記オルガノアルコキシシラン化合物(B
−1)は、いずれもモノマーであり、これを使用した塗
料が1液型塗料である場合には、加水分解縮合反応が起
こりやすいので、触媒等とは分離した形の2液型塗料と
する必要がある。しかしながら、2液型塗料では、2液
を調合してから加水分解縮合反応の時間、いわゆる熟成
期間を必要とするので、作業性が良好ではない。そこ
で、上記オルガノアルコキシシラン化合物(B−1)の
モノマーを、あらかじめ部分的に加水分解縮合反応を進
行させたものを使用することができる。この部分的に加
水分解縮合反応を進行させたものが、上記部分加水分解
縮合物(B−2)である。
【0109】上記部分加水分解縮合物(B−2)として
は、上記オルガノアルコキシシラン化合物(B−1)を
部分的に加水分解縮合反応を進行させたものであれば、
特に限定されない。上記加水分解縮合反応は、上記オル
ガノアルコキシシラン化合物(B−1)の少なくとも1
種に、所定量の水と触媒とを加えて反応させる方法等の
公知の方法で行うことができる。
【0110】上記4官能アルコキシシラン化合物(B−
3)は、下記一般式(3); Si(OR4 4 (3) (式中、R4 は、炭素数2〜10のアルキル基、又は、
炭素数1〜4のアシル基を表す。)で表されるものであ
る。
【0111】上記R4 は、炭素数2〜10のアルキル
基、又は、炭素数1〜4のアシル基を表す。上記炭素数
2〜10のアルキル基としては特に限定されず、例え
ば、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等を挙げるこ
とができる。なかでも、エチル基、n−ブチル基が好ま
しい。上記R4 がメチル基であると、縮合反応性が高く
なりすぎるので、バインダー成分として使用した場合
に、塗膜にクラックが生じやすく、耐酸性、耐アルカリ
性等の耐薬品性が劣るため好ましくない。上記炭素数1
〜4のアシル基としては特に限定されず、例えば、R2
で例示したもの等を挙げることができる。
【0112】上記4官能アルコキシシラン化合物(B−
3)としては特に限定されず、例えば、テトラエトキシ
シラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラ
ン等を挙げることができる。なかでも、テトラエトキシ
シランが好ましい。
【0113】上記4官能アルコキシシラン化合物(B−
3)は、モノマーであり、上記オルガノアルコキシシラ
ン化合物(B−1)と同様に、1液型塗料として使用す
ることができず、2液型塗料とする必要がある。従っ
て、1液型塗料とする場合には、上記オルガノアルコキ
シシラン化合物(B−1)と同様に、上記4官能アルコ
キシシラン化合物(B−3)を、あらかじめ部分的に加
水分解縮合反応を進行させたものを使用することができ
る。この部分的に加水分解縮合反応を進行させたもの
が、上記部分加水分解縮合物(B−4)である。
【0114】上記部分加水分解縮合物(B−4)は、上
記4官能アルコキシシラン化合物(B−3)から公知の
方法で得ることができる。例えば、上記4官能アルコキ
シシラン化合物(B−3)の少なくとも1種に、必要量
の水と触媒とを加え、また、必要に応じて、溶媒を加
え、加水分解縮合反応によって生じるアルコールを除去
することにより得る。また、上記4官能アルコキシシラ
ン化合物(B−3)の縮合体であるオリゴマーを得た
後、該オリゴマーを反応させることによっても得ること
ができる。
【0115】上記加水分解に使用される水としては特に
限定されないが、一般に塗料中にイオン等の不純物が残
存すると塗膜性能が低下するので、目的とする塗膜の物
性等に応じて、脱イオン水、純水又は超純水を使用する
ことが好ましい。
【0116】上記触媒としては特に限定されず、例え
ば、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸等の無機酸;カルボン
酸、スルホン酸等の有機酸;アンモニア、水酸化ナトリ
ウム、アミン等の無機塩基及び有機塩基等を挙げること
ができる。上記溶媒としては特に限定されず、例えば、
アルコール、エーテル、ケトン等の有機溶媒等を挙げる
ことができる。
【0117】このようにして得られた部分加水分解縮合
物(B−4)は、モノマー、2量体、3量体、それ以上
の多量体が混在しているが、モノマーを含有している
と、上記部分加水分解縮合物(B−4)そのものの貯蔵
安定性が低下したり、これを使用した塗料組成物の貯蔵
安定性が低下することがあり、また、得られる塗膜性
能、例えば、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐クラッ
ク性等を低下させることが考えられるので好ましくな
い。従って、公知のモノマーの除去方法によってモノマ
ーを除去する必要がある。
【0118】上記部分加水分解縮合物(B−4)を得る
のに使用される水の量は、所望の加水分解率から決定さ
れる。通常、上記加水分解率は、0〜100%である。
理論上、部分加水分解縮合物(B−4)を得るための加
水分解率は、 0%<(加水分解率)<100% である。加水分解率が100%であるものは、完全なS
iO2 の固体であり、加水分解率が70%を超えるもの
は、ゼラチン状のゲル又は固体であり、加水分解率が6
5〜70%のものは粘度が高く、更に空気中のわずかな
水分と反応してゲル化してしまい、貯蔵安定性が悪いの
で、30〜60%程度の加水分解率のものが最も好まし
い。しかしながら、100%に近い加水分解率を有する
ものであっても、適当な溶媒を選択することによって、
充分な貯蔵安定性を示す場合があるので、加水分解率
は、上記範囲に限定されるものではない。
【0119】上記100%に近い加水分解率を有するも
のである場合、例えば、加水分解縮合反応を行うアルコ
ール等の有機溶媒を反応後も残しておき、部分加水分解
縮合物を希釈した状態にしておくことによって、貯蔵安
定性を高めることができる。上記部分加水分解縮合物を
上記有機溶媒で希釈する場合には、加水分解率が20%
以上100%未満のものを使用することができる。20
%未満であると、モノマーが残存しやすいので好ましく
ない。
【0120】上記部分加水分解縮合物(B−4)として
はテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物が好まし
い。この理由としては、 1)テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物をバイ
ンダー成分として使用した場合には、メトキシ基部分の
縮合反応性が高いために塗膜にクラックが生じやすく、
塗膜の耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性が低下するこ
と、 2)テトラプロポキシシランやテトラブトキシシラン等
のテトラエトキシシランよりも炭素数の多い部分加水分
解縮合物をバインダー成分として使用した場合には、加
水分解縮合反応の速度が低下し、塗膜の硬化や乾燥が遅
くなり、実用性に乏しく、また、硬化不充分のまま実用
に供した場合、未反応のアルコキシシリル基が曝露中に
加水分解縮合反応を起こし、クラックの原因となること
が多いこと等を挙げることができる。
【0121】上記テトラエトキシシランの部分加水分解
縮合物としては、SiO2 の含有量が40%であるもの
が好適に使用される。上記SiO2 の含有量が40%で
あるものは、市販されており、例えば、ES−40(コ
ルコート社製)、シリケート40(多摩化学社製)、T
ES40(ヘキスト社製)、シルボンド40(ストフフ
ァー社製)、エチルシリケート40(ユニオンカーバイ
ト社製)等を挙げることができる。これらの市販品は、
オリゴマーであり、モノマー、2量体、3量体、それ以
上の多量体化合物が混在している。モノマー等の低分子
量成分が混在しているものは、上述したように得られる
塗料組成物及び塗膜に不都合があるので、低分子量成分
が少ないものを選択することが好ましい。また、更に公
知の方法により加水分解縮合を進めたものを用いてもよ
い。
【0122】上記部分加水分解縮合物(B−4)は、反
応硬化基であるSiOH基及びこれを生成することがで
きるSiOR基を多量に含むことができる。上記反応硬
化基の存在量は、通常、塗料組成物として使用されるフ
ュームドシリカ等の乾式シリカやシリカゾル等の湿式シ
リカと比較して圧倒的に多く、上記部分加水分解縮合物
(B−4)の反応硬化基の存在量は、例えば、テトラエ
トキシシランの部分加水分解縮合物の場合、Si原子1
モル当たり0.1〜3モルが好ましい。より好ましく
は、0.5〜2.7モルである。
【0123】ところで、上記反応硬化基であるSiOH
基の存在量は、SiOR基の存在量も含めて考えること
ができる。このことについて以下に述べる。上記SiO
H基と上記SiOR基との量比は、使用されるモノマー
の種類や、加水分解縮合反応の程度、加水分解縮合工程
で使用した溶剤の種類、縮合後の希釈溶媒の種類により
異なる。例えば、縮合後の希釈溶媒としてアルコール系
の溶媒を使用した場合、上記SiOH基は、溶媒中のア
ルコキシル基とアルコール交換してSiOR基となる。
しかしながら、SiOR基は、加水分解により反応硬化
基であるSiOH基を再生することができるので、双方
を含めた量を反応硬化基の量とすることができる。
【0124】上記部分加水分解縮合物(B−4)として
テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物を用いて、
イソプロピルアルコール溶媒に懸濁させた場合の反応硬
化基量は、 1H−NMR積分値及びCHN分析の結果か
ら、加水分解2日後では、Si原子1モル当たり、Si
OH基は0.72±0.13モルであり、SiOEt基
(Etはエチル基を表す)は、0.64±0.12モル
であり、SiO−iPr基(iPrはイソプロピル基を
表す)は、0.30±0.06モルであった。一方、乾
式シリカ(アエロジル200、粒径約100Å、日本ア
エロジル社製)では、Si原子1モル当たり、SiOH
基は2×10-5モルであり、シリカゾル(スノーテック
スO、粒径約100Å、日産化学社製)では、Si原子
1モル当たり、SiOH基は4×10-5モルである。
【0125】上記反応硬化基の量は、経時変化により多
少変動する。しかしながら、上記テトラエトキシシラン
の部分加水分解縮合物の加水分解60日室温放置後の反
応硬化基の量は、Si原子1モル当たり、SiOH基は
0.4モルであり、SiOEt基は、0.36モルであ
り、SiO−iPr基は、0.17モルであり、貯蔵安
定性が優れている。このように、上記部分加水分解縮合
物(B−4)は、一般に塗料組成物として使用されてい
るシリカとは異なって、非常に大量の反応硬化基を有し
ていることが判る。この反応官能基は、硬化時に相互に
又は塗料中のその他の成分と反応する。
【0126】上記シロキサンポリマー(B−5)は、下
記一般式(4); R5 b −Si[(OR6 3-b ]−O− (4) (式中、R5 は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数
1〜11のエポキシアルキル基、アリール基、炭素数1
〜11のアルケニル基、炭素数1〜11のアラルキル
基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜5のアミノア
ルキル基、炭素数1〜5のメルカプトアルキル基、又
は、炭素数1〜5のハロアルキル基を表す。R6 は、炭
素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアシ
ル基を表す。bは、0、1、2又は3を表す。)で表さ
れる置換基、及び、下記一般式(5); R7 O− (5) (式中、R7 は、炭素数1〜10のアルキル基、又は、
炭素数1〜4のアシル基を表す。)で表される置換基の
うち少なくとも1種が主鎖のSi原子に結合しているも
のである。
【0127】上記主鎖のSi原子に結合している置換基
は、上記一般式(4)で表される置換基及び上記一般式
(5)で表される置換基のうち少なくとも1種である。
上記R5 は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜
11のエポキシアルキル基、アリール基、炭素数1〜1
1のアルケニル基、炭素数1〜11のアラルキル基、炭
素数1〜4のアシル基、炭素数1〜5のアミノアルキル
基、炭素数1〜5のメルカプトアルキル基、又は、炭素
数1〜5のハロアルキル基を表す。
【0128】上記炭素数1〜10のアルキル基としては
特に限定されず、例えば、上記R2で例示したもの等を
挙げることができる。なかでも、メチル基、エチル基、
n−ブチル基が好ましい。上記炭素数1〜11のエポキ
シアルキル基としては特に限定されず、例えば、上記R
2 で例示したもの等を挙げることができる。上記アリー
ル基としては特に限定されず、例えば、上記R2 で例示
したもの等を挙げることができる。上記炭素数1〜11
のアルケニル基としては特に限定されず、例えば、上記
2 で例示したもの等を挙げることができる。
【0129】上記炭素数1〜11のアラルキル基として
は特に限定されず、例えば、上記R2 で例示したもの等
を挙げることができる。上記炭素数1〜4のアシル基と
しては特に限定されず、例えば、上記R2 で例示したも
の等を挙げることができる。上記炭素数1〜5のアミノ
アルキル基としては特に限定されず、例えば、上記R2
で例示したもの等を挙げることができる。上記炭素数1
〜5のメルカプトアルキル基としては特に限定されず、
例えば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができ
る。上記炭素数1〜5のハロアルキル基としては特に限
定されず、例えば、上記R2 で例示したもの等を挙げる
ことができる。
【0130】上記R6 は、炭素数1〜10のアルキル
基、又は、炭素数1〜4のアシル基を表す。上記炭素数
1〜10のアルキル基としては特に限定されず、例え
ば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができる。
上記炭素数1〜4のアシル基としては特に限定されず、
例えば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができ
る。
【0131】上記一般式(5)で表される置換基は、主
鎖のSi原子に結合するとアルコキシシリル基となるも
のである。上記R7 は、炭素数1〜10のアルキル基、
又は、炭素数1〜4のアシル基を表す。上記炭素数1〜
10のアルキル基としては特に限定されず、例えば、上
記R2 で例示したもの等を挙げることができる。なかで
も、メチル基、エチル基、n−ブチル基が好ましい。上
記炭素数1〜4のアシル基としては特に限定されず、例
えば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができ
る。
【0132】上記一般式(4)で表される置換基及び上
記一般式(5)で表される置換基のうち少なくとも1種
が主鎖のSi原子に結合しているシロキサンポリマー
(B−5)は、例えば、オルガノアルコキシシランモノ
マーの加水分解縮合反応等の方法により得ることができ
る。
【0133】上記オルガノアルコキシシランモノマーの
加水分解縮合反応では、上記オルガノアルコキシシラン
モノマーの加水分解縮合反応により、オルガノポリシロ
キサンが形成される。例えば、まず、上記オルガノアル
コキシシランモノマーを準備し、必要に応じて、水溶性
有機溶媒を添加する。更にコロイド状アルミナ、及び、
必要に応じて、水、安定剤等を加え、約20℃〜還流温
度までの温度条件下、好ましくは、50〜80℃で約3
0分〜20時間加熱し、加水分解重縮合反応を行う。
【0134】上記オルガノアルコキシシランモノマーと
しては特に限定されず、例えば、メチルトリメトキシシ
ラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキ
シシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメト
キシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリ
メトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニ
ルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル
トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエ
トキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−メタクリルオキシトリメトキシシラン、γ−
アミノプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシ
シクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等を挙げるこ
とができる。上記水溶性有機溶媒としては特に限定され
ず、例えば、アルコール系溶媒、セロソルブ系溶媒、セ
ロソルブアセテート系溶媒等を挙げることができる。
【0135】上記オルガノアルコキシシランモノマーの
加水分解縮合反応は、公知であり、例えば、特開平3−
126780号公報に記載されているように、下記反応
式(i)〜(iii)で示される。この式から、SiO
R基を全部加水分解するのに必要な水の理論量は、上記
オルガノアルコキシシランモノマーの1.5モル倍であ
ることが判る。
【0136】
【化1】
【0137】上記特開平3−126789号公報に記載
の反応においては、上記水の量は、通常、上記オルガノ
アルコキシシランモノマー1モルに対して、1.0〜
4.0モルが好ましい。1.0モル未満であると、残存
するアルコキシル基が多くなり、得られる塗料組成物を
基材に塗布しても充分に硬化しない場合があり、塗膜と
基材との密着性及び硬度が低下し、4.0モルを超える
と、反応溶液中に過剰の水が存在するため、反応の制御
が困難になり、その結果、得られる溶液の貯蔵安定性が
悪くなる。
【0138】上記水としては、上記コロイド状アルミナ
に含まれる水が主として使用される。これに、必要に応
じて、水道水、蒸留水、イオン交換水等が加えられ、水
の量が調整される。好ましくは、蒸留水、イオン交換水
が使用される。
【0139】上述のようにして得られるシロキサンポリ
マーは、分子量が約3000〜50000であることが
好ましい。上記分子量は、ゲルパーミエーションクロマ
トグラフィーによりポリスチレン換算法で算出した値で
ある。より好ましくは、4000〜30000である。
【0140】また、シロキサンポリマー(B−5)とし
ては、一般にオルガノポリシロキサンとして市販される
ものも使用することができる。例えば、KR31−B2
681(東芝シリコーン社製)、NR−02C(東レ・
ダウ社製)等を挙げることができる。
【0141】本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜において、上
記無機系バインダー(B)には、必要に応じて、更に下
記のものを添加してもよい。 (C−1):下記一般式(6); R8 d −Si[(OR9 3-d ]− (6) (式中、R8 は、炭素数1〜5のアルキル基、アリール
基、炭素数1〜11のアラルキル基、又は、炭素数1〜
4のアシル基を表す。R9 は、炭素数1〜10のアルキ
ル基、又は、炭素数1〜4のアシル基を表す。dは、
0、1、2又は3を表す。)で表されるアルコキシシリ
ル基をビニル系重合体末端又は側鎖に有し、アルコキシ
シリル当量が300以上であるアルコキシシリル基含有
ビニル系樹脂、 (C−2):チタニウムテトラアルコキシド及びジルコ
ニウムテトラアルコキシドのうち少なくとも1種の金属
アルコキシド、 (C−3):上記金属アルコキシド(C−2)の加水分
解縮合物、 (C−4):シリカゾル、 (C−5):アルミナゾル。 これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用しても
よい。
【0142】上記アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂
(C−1)は、上記一般式(6)で表されるアルコキシ
シリル基を末端又は側鎖として有するビニル系重合体で
ある。上記R8 は、炭素数1〜5のアルキル基、アリー
ル基、炭素数1〜11のアラルキル基、又は、炭素数1
〜4のアシル基を表す。上記炭素数1〜5のアルキル基
としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル
基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、ペン
チル基等を挙げることができる。
【0143】上記アリール基としては特に限定されず、
例えば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができ
る。上記炭素数1〜11のアラルキル基としては特に限
定されず、例えば、上記R2 で例示したもの等を挙げる
ことができる。上記炭素数1〜4のアシル基としては特
に限定されず、例えば、上記R2 で例示したもの等を挙
げることができる。
【0144】上記R9 は、炭素数1〜10のアルキル
基、又は、炭素数1〜4のアシル基を表す。上記炭素数
1〜10のアルキル基としては特に限定されず、例え
ば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができる。
上記炭素数1〜4のアシル基としては特に限定されず、
例えば、上記R2 で例示したもの等を挙げることができ
る。
【0145】上記アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂
(C−1)は、例えば、 アクリルオキシ官能性シランとラジカル重合性モノマ
ーとの共重合による方法、 下記一般式(8)で表されるヒドロシラン化合物を炭
素−炭素二重結合を有するビニル系重合体と反応させる
方法等の公知の方法によって製造することができる。以
下、これらの方法について、順に説明する。
【0146】
【化2】
【0147】式中、R10は、アルコキシル基を表す。R
11は、水素原子又は炭素数1〜8の有機基を表す。e
は、1〜3の整数を表す。
【0148】上記の方法では、得られるアルコキシシ
リル基含有ビニル系樹脂(C−1)中にアルコキシシリ
ル基が多くなると、塗料組成物の貯蔵安定性が低下した
り、硬化した後、残存するアルコキシシリル基の加水分
解縮合反応により、クラックを起こしやすい等の悪影響
を来しやすいので、バインダー成分としては使用困難と
なる。従って、得られるアルコキシシリル基含有ビニル
系樹脂(C−1)のアルコキシシリル当量が300以上
になるようにアクリルオキシ官能性シランの配合量を少
なくして合成することが好ましい。
【0149】上記の方法は、上記一般式(8)で表さ
れるヒドロシラン化合物と炭素−炭素二重結合を有する
ビニル系重合体とを反応させる方法である。上記R
10は、アルコキシル基を表す。上記R11は、水素原子、
又は、炭素数1〜8の有機基を表す。上記eは、1〜3
の整数を表す。
【0150】上記一般式(8)で表されるヒドロシラン
化合物としては特に限定されず、例えば、メチルジクロ
ロシラン、エチルジクロロシラン、フェニルジクロロシ
ラン、トリクロロシラン等のハロゲン化シラン化合物;
メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エ
チルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、フェ
ニルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエト
キシシラン等のアルコキシシラン化合物;メチルジアセ
トキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセ
トキシシラン等のアシロキシシラン化合物;メチルジア
ミノキシシラン、トリアミノキシシラン、トリアミノシ
ラン等のアミノシラン化合物等を挙げることができる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用しても
よい。
【0151】上記炭素−炭素二重結合を有するビニル系
重合体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、
メタクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)ア
クリル酸エチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、メタ
クリル酸イソブチル、メタクリル酸グリシジル、メタク
リル酸ジメチルアミノエチル、メトキシジエチレングリ
コール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレン
グリコール(メタ)アクリレート、アクリル酸アリル等
のモノ(メタ)アクリレートモノマー;エチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ
(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレートモノ
マー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
ト、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等
のトリ(メタ)アクリレートモノマー;テトラメチロー
ルメタンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メ
タ)アクリレートモノマー;変性アクリレートモノマ
ー;スチレン、α−メチルスルホン酸、塩化ビニル、酢
酸ビニル等のビニル系化合物と、ブタジエン、イソプレ
ン、クロロプレン等の共役ジエン化合物とからなるビニ
ル系重合体;上記ビニル系化合物と、重合に関与しない
炭素−炭素二重結合を有するアクリル酸誘導体とからな
るビニル系重合体等を挙げることができる。これらは単
独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0152】上記の方法において、上記ヒドロシラン
化合物と、上記炭素−炭素二重結合を有するビニル系重
合体とは、公知の適当な方法で付加させることによっ
て、アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂(C−1)を
得ることができる。
【0153】上記アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂
(C−1)としては、市販されているものを使用するこ
とができる。このようなものとしては、例えば、ゼムラ
ック(鐘淵化学工業社製)、サイリル(東芝シリコーン
社製)、サイラコートSC8101(チッソ社製)等を
挙げることができる。
【0154】上記アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂
(C−1)は、アルコキシシリル当量が300以上であ
る。上記アルコキシシリル当量とは、アルコキシシリル
基1モル当たりの樹脂の重量(g)である。アルコキシ
シリル当量が300未満であると、硬化時に、Si−O
−Si結合やSi−O−C結合が生成しやすく、塗膜硬
度は発現するものの、耐酸性、耐アルカリ性に悪影響を
及ぼすので好ましくない。また、アルコキシシリル基が
過剰に存在するので、湿気によりゲル化したり、塗膜に
なった後のクラック発生等の不都合が生じやすい。
【0155】上記アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂
(C−1)を上記無機系バインダー(B)に添加する場
合、上記無機系バインダー(B)と加水分解縮合させ
て、ポリマーを調製することができる。特に、上記オル
ガノアルコキシシラン化合物(B−1)、上記4官能ア
ルコキシシラン化合物(B−3)及び上記シロキサンポ
リマー(B−5)からなる群より選択される少なくとも
1種を使用する場合には、この方法が好ましい。上記加
水分解縮合反応には、水が必要である。上記水の配合量
は、上記無機系バインダー(B)及び上記アルコキシシ
リル基含有ビニル系樹脂(C−1)に含まれるアルコキ
シシリル基1モルに対して、通常、1.0〜4.0モル
が好ましい。1.0モル未満であると、残存するアルコ
キシシリル基が多くなり、得られる塗料組成物を基材に
塗布しても、充分に硬化しない場合があり、塗膜と基材
との密着性及び硬度が低下し、4.0モルを超えると、
反応溶液中に過剰の水が存在するため、反応の制御が困
難になり、その結果、得られる塗料組成物の貯蔵安定性
が悪くなる。
【0156】上記オルガノアルコキシシラン化合物(B
−1)の部分加水分解縮合物(B−2)及び上記4官能
アルコキシシラン化合物(B−3)の部分加水分解縮合
物(B−4)のうち少なくとも1種を使用する場合に
は、上記アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂(C−
1)は、上記無機系バインダー(B)と単に混合するだ
けでもよい。この場合には、得られる塗料組成物は、主
として2液型であり、加熱・造膜の過程において加水分
解縮合反応が生じて、塗膜を形成するものである。
【0157】上記アルコキシシリル基含有ビニル系樹脂
(C−1)の添加量は、上記無機系バインダー(B)1
00重量部に対して、固形分換算で1〜100重量部が
好ましい。1重量部未満であると、得られる塗膜の耐薬
品性が充分ではなく、厚膜の場合には、クラックが発生
しやすく、100重量部を超えると、耐擦傷性、耐熱性
が劣り、貯蔵安定性が悪いうえ、撥水性が強くなり、上
記無機系バインダー(B)中に、上記部分加水分解縮合
物(I)が含まれていても、親水化の効果が発揮されに
くい。
【0158】上記金属アルコキシド(C−2)は、チタ
ニウムテトラアルコキシド及びジルコニウムテトラアル
コキシドのうち少なくとも1種である。上記金属アルコ
キシド(C−2)は、水の存在により加水分解し、その
加水分解物が重縮合して、部分重縮合物を生じ、更に高
分子量化して塗膜となった場合に、加熱により硬化する
ものであり、上記無機系バインダー(B)とともにバイ
ンダーとしての働きをするものである。
【0159】上記チタニウムテトラアルコキシドとして
は特に限定されず、例えば、チタンテトラエトキシド、
チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラi−プロ
ポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラ
sec−ブトキシド、チタンテトラt−ブトキシド等を
挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、
2種以上を併用してもよい。
【0160】上記ジルコニウムテトラアルコキシドとし
ては特に限定されず、例えば、ジルコニウムテトラエト
キシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコ
ニウムテトラi−プロポキシド、ジルコニウムテトラn
−ブトキシド、ジルコニウムテトラsec−ブトキシ
ド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド等を挙げること
ができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を
併用してもよい。
【0161】上記金属アルコキシド(C−2)は、急速
に加水分解することによって、アルコールを遊離し、対
応するチタンヒドロキシド又はジルコニウムヒドロキシ
ドを生じるとともに、上記ヒドロキシドの生成によるヒ
ドロオキシル置換基の重縮合が行われ、該ヒドロキシド
の部分重縮合物が生成し、更に重縮合して完全重縮合物
であるチタニア成分又はジルコニア成分が生成する。上
記金属アルコキシド(C−2)の加水分解反応は、非常
に早く、空気中の水分によっても加水分解が進行し、縮
合する。このような上記金属アルコキシド(C−2)の
部分的に加水分解重縮合したもの及び完全に加水分解重
縮合したものが、上記加水分解縮合物(C−3)であ
る。上記加水分解縮合物(C−3)としては、上記無機
系バインダー(B)中で上記金属アルコキシド(C−
2)から生成したものであってもよく、あらかじめ上記
金属アルコキシド(C−2)を加水分解重縮合したもの
であってもよい。
【0162】上記金属アルコキシド(C−2)及び/又
は上記加水分解縮合物(C−3)を上記無機系バインダ
ー(B)に添加する場合、上記オルガノアルコキシシラ
ン化合物(B−1)、上記4官能アルコキシシラン化合
物(B−3)及び上記シロキサンポリマー(B−5)か
らなる群より選択される少なくとも1種を使用するとき
には、上記金属アルコキシド(C−2)を配合し、加水
分解縮合させて使用することが好ましい。また、上記オ
ルガノアルコキシシラン化合物(B−1)の部分加水分
解縮合物(B−2)及び上記4官能アルコキシシラン化
合物(B−3)の部分加水分解縮合物(B−4)のうち
少なくとも1種を使用するときには、上記金属アルコキ
シド(C−2)、上記加水分解縮合物(C−3)のいず
れを使用してもよい。
【0163】上記金属アルコキシド(C−2)及び上記
加水分解縮合物(C−3)の添加量は、ともに、上記無
機系バインダー(B)100重量部に対して、2〜10
0重量部が好ましい。2重量部未満であると、得られる
塗料組成物の造膜性が悪く、100重量部を超えると、
加水分解が起こりやすく、貯蔵安定性が悪い。より好ま
しくは、5〜30重量部である。
【0164】本発明において、上記シリカゾル(C−
4)は、無機系バインダー(B)に対して、硬化後の塗
膜の応力を緩和するために用いられる。また、フィルム
形成性樹脂(A)に対しても添加することができ、応力
緩和のほかに、得られる塗膜の耐薬品性、光沢を改善す
るために添加される。上記シリカゾル(C−4)は、オ
ルガノシリカゾル又は水分散型のシリカゾルであり、粒
径10〜100nmであるものが好ましい。上記オルガ
ノシリカゾルとは、非晶質の孤立したコロイド粒子が水
又は有機溶媒中に分散しているコロイド溶液である。上
記コロイド溶液は、一般に50重量%以下のシリカを含
み、粒径も300nmのものまであるが、本発明では、
上述したように、10〜100nmのものが好ましい。
【0165】上記シリカゾル(C−4)は、上記無機系
バインダー(B)に配合されると、酸触媒、アミン系触
媒、すず系触媒、水分等により、粒子表面に存在するS
iOH基やSiOR基が相互に反応して、貯蔵安定性を
低下させる。このため、本発明においては、上記シリカ
ゾル(C−4)としては、その表面官能基を反応させて
ブロックしたものを用いることが好ましい。表面のSi
OH基がブロックされることにより、シリカゾル粒子は
疎水性を帯びるようになる。
【0166】上記シリカゾル粒子の疎水化度は、ヘキサ
ントレランス値で表され、10〜50mlが好ましい。
10ml未満であると、残留しているSiOH基が多す
ぎて、貯蔵安定性が改善されず、50mlを超えると、
反応性が低下して強固な塗膜を形成することができず、
所望の硬度や耐薬品性を得ることができない。
【0167】上記ヘキサントレランス値とは、疎水性の
度合を評価するためのものであり、その値が高いほど疎
水性が高いことを意味する。上記ヘキサントレランス値
の測定方法は、以下のとおりである。ビーカー内でシリ
カゾル(SiO2 成分が30%のもの)2gをアセトン
10mlに混合して分散させ、該混合物にヘキサンを徐
々に加え、該混合物が白濁を生じるまでに要するヘキサ
ンの量(ml)を測定する。このヘキサンの量(ml)
をヘキサントレランス値とする。この方法では、例え
ば、シリカゾルの表面が親水性である場合、最初はシリ
カゾルとアセトンとが良相溶状態であったものが、少量
のヘキサンの添加により、不相溶状態となり、測定系に
白濁を生じる。逆に、シリカゾル表面が疎水性である場
合、シリカゾル表面の疎水性が高いものほど白濁を生じ
るまでに多くのヘキサンを要する。従って、この方法に
よりシリカゾル表面の親水性/疎水性の度合を測定する
ことができる。
【0168】上記オルガノシリカゾルとしては、市販さ
れているものもあり、例えば、水媒体のもの(スノーテ
ック、日産化学工業社製)、メタノール媒体のもの(メ
タノールシリカゾル、日産化学工業社製)、キシレン/
ブタノール媒体のもの(XBA−ST、日産化学工業社
製)、メチルイソブチルケトン(MIBK)媒体のもの
(MIBK−ST、日産化学工業社製)等を挙げること
ができる。これらのうち、キシレン/ブタノール媒体の
もの、MIBK媒体のものが好ましい。これらのヘキサ
ントレランス値を表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】本発明においては、メタノール媒体のもの
やキシレン/ブタノール媒体のものを使用する場合、疎
水性を高めるために、これらのシリカゾルにシランカッ
プリング処理を行って、疎水化させることが好ましい。
上記シランカップリング処理としては、例えば、オルガ
ノシリカゾル100重量部に対して、シランカップリン
グ剤10〜50重量部を加えて反応させること等により
行うことができる。上述の方法においては、シランカッ
プリング剤の添加量は、上記の範囲内が好ましい。10
重量部未満であると、得られる無機系バインダー(B)
やフィルム形成性樹脂(A)の貯蔵安定性、耐薬品性及
び光沢が改善されず、50重量部を超えると、得られる
無機系バインダー(B)中に残留し、塗膜硬度、耐水
性、耐湿性等の塗膜性能が低下する。
【0171】反応条件としては、室温で1日以上反応さ
せればよいが、反応時間の短縮等のために反応を促進す
る必要がある場合には、適当な温度に加熱してもよい。
この際、シランカップリング剤が互いに縮合したり、シ
リカゾルと急激に反応して粘度の上昇やゲル化の発生を
起こさない程度に加熱する。
【0172】上記シランカップリング剤としては特に限
定されず、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメ
トキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシ
ドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることがで
きる。
【0173】上記シリカゾル(C−4)を上記無機系バ
インダー(B)に添加する場合、上記オルガノアルコキ
シシラン化合物(B−1)、上記4官能アルコキシシラ
ン化合物(B−3)及び上記シロキサンポリマー(B−
5)からなる群より選択される少なくとも1種を使用す
るか、上記オルガノアルコキシシラン化合物(B−1)
の部分加水分解縮合物(B−2)及び上記4官能アルコ
キシシラン化合物(B−3)の部分加水分解縮合物(B
−4)のうち少なくとも1種を使用するかによって、使
用する上記シリカゾル(C−4)の種類を選択する。
【0174】上記オルガノアルコキシシラン化合物(B
−1)、上記4官能アルコキシシラン化合物(B−3)
及び上記シロキサンポリマー(B−5)からなる群より
選択される少なくとも1種を使用する場合、上記シリカ
ゾル(C−4)としては、水性のコロイダルシリカを使
用する。上記水性のコロイダルシリカは、疎水度が小さ
いが、上記オルガノアルコキシシラン化合物(B−
1)、上記4官能アルコキシシラン化合物(B−3)及
び上記シロキサンポリマー(B−5)からなる群より選
択される少なくとも1種と加水分解縮合反応するための
水を供給することができる。上記加水分解縮合反応は、
例えば、特開昭51−2736号公報、特開昭55−9
4971号公報、特開昭59−68377号公報等に開
示されているような公知の方法で行うことができる。こ
のとき、必要な水はすべて上記コロイダルシリカによっ
て供給されるので、使用することができるSiO2 の量
は限定され、自由に制御することはできない。このよう
にして得られる塗料組成物は、上記無機系バインダー
(B)のSiOR基と、上記コロイダルシリカのSiO
H基とが反応し、一体となったものである。
【0175】一方、上記シリカゾル(C−4)として、
疎水度の高い有機溶剤媒体のシリカゾルを使用する場
合、上記無機系バインダー(B)及び上記シリカゾル
に、加水分解縮合反応のために所定量の水を加えなけれ
ばならない。上記加水分解縮合の方法としては、公知の
ものを使用することができる。
【0176】上記オルガノアルコキシシラン化合物(B
−1)の部分加水分解縮合物(B−2)及び上記4官能
アルコキシシラン化合物(B−3)の部分加水分解縮合
物(B−4)のうち少なくとも1種を使用する場合、上
記シリカゾル(C−4)としては、水性のコロイダルシ
リカを使用する必要はなく、一般に貯蔵安定性が高い有
機溶剤媒体のシリカゾルを使用する。上記加水分解縮合
物と、上記有機溶剤媒体のシリカゾルとの混合は、例え
ば、特開昭62−289279号公報等に開示されてい
るような公知の方法で行うことができる。
【0177】上記シリカゾル(C−4)の添加量は、上
記無機系バインダー(B)100重量部に対して、固形
分換算で5〜100重量部が好ましい。5重量部未満で
あると、薄膜しか形成することができず、塗膜にクラッ
クが生じやすく、100重量部を超えると、上記無機系
バインダー(B)の量が相対的に少なくなるので、塗膜
の強度が低下し、密着性も悪くなる。より好ましくは、
10〜30重量部である。
【0178】本発明において、上記アルミナゾル(C−
5)は、アルミナ、アルミナ水和物等が5〜25重量%
程度の割合で含有され、分散安定剤として塩酸、硝酸、
酢酸等の酸が使用されたものであり、通常、水を分散媒
とするpH2.0〜6.0のものである。
【0179】上記アルミナゾル(C−5)の平均粒径
は、5×10-3〜2.5×10-1μm、好ましくは、1
×10-3〜1×10-1μmである。上記アルミナゾル
(C−5)のアルミナ粒子の形状としては、粒状〜棒
状、羽毛状等を挙げることができる。
【0180】上記アルミナゾル(C−5)としては、市
販されているものもあり、例えば、アルミナゾル−10
0、アルミナゾル−200(いずれも日産化学工業社
製)等を挙げることができる。
【0181】上記アルミナゾル(C−5)の添加量は、
上記無機系バインダー(B)100重量部に対して、固
形分換算で0.5〜50重量部が好ましい。0.5重量
部未満であると、塗膜の基材に対する密着性が悪いた
め、耐アルカリ性等に劣るうえ、厚い塗膜を形成するこ
とが難しくなり、塗膜のひび割れが生じやすくなり、5
0重量部を超えると、アルミナゾルの添加に伴って、水
の量及び安定剤として配合された酸の量が増加し、その
結果、得られる塗料組成物はゲル化を生じやすくなり、
安定性が悪くなる。より好ましくは、1〜10重量部で
ある。
【0182】本発明の塗料組成物には、更に、アルコキ
シシリル基の加水分解縮合反応を促進する触媒(D)を
配合していてもよい。上記触媒(D)としては特に限定
されず、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート等
を挙げることができる。上記触媒(D)の添加量は、得
られる塗料組成物中、0.1〜10重量%が好ましい。
0.1重量%未満であると、触媒の添加の効果を得るこ
とができず、10重量%を超えると、加水分解縮合反応
が早く起こりすぎて好ましくない。より好ましくは、1
〜5重量%である。
【0183】本発明の塗料組成物には、更に、有機溶剤
(E)を添加していてもよい。上記有機溶剤(E)とし
ては、貯蔵中のSiOR基の分解安定性の点から、アル
コール系有機溶剤及びグリコール誘導体のうち少なくと
も1種である。上記アルコール系有機溶剤としては特に
限定されず、例えば、ブタノール、オクタノール、ジア
セトンアルコール等を挙げることができる。上記グリコ
ール誘導体としては特に限定されず、例えば、エチレン
グリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモ
ノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエー
テル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロ
ピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリ
コールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ
ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテ
ルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル
アセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル
アセテート等を挙げることができる。
【0184】本発明の塗料組成物には、必要に応じて、
微粒子状の充填剤、顔料、その他の添加剤、その他の有
機溶剤等を添加してもよい。上記微粒子状の充填剤とし
ては特に限定されず、例えば、SiO2 、TiO2 、A
2 3 、Cr2 3 、ZrO2 、Al2 3 ・SiO
2 、3Al2 3 ・2SiO2 、けい酸ジルコニア等か
らなる微粒子等を挙げることができる。
【0185】上記顔料としては特に限定されず、例え
ば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、各種焼
成顔料、シアニンブルー、シアニングレー等の着色顔
料;炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム等の体質顔
料等を挙げることができる。
【0186】上記その他の添加剤としては特に限定され
ず、例えば、アルミニウム粉等の金属粉;シリカ、アル
ミナ等の艶消し剤;消泡剤;レベリング剤;たれ防止
剤;表面調整剤;粘性調整剤;分散剤;紫外線吸収剤;
ワックス等の慣用の添加剤等を挙げることができる。
【0187】上記その他の有機溶剤としては、一般に塗
料用として使用されているものであれば特に限定され
ず、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ100、
ソルベッソ150等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、
酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチ
ルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等
のケトン類等を挙げることができる。これらは、溶解
性、蒸発速度、安全性等を考慮して、適宜選択される。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用しても
よい。
【0188】本発明の塗料組成物は、例えば、以下のよ
うにして製造することができる。バインダー成分として
フィルム形成性樹脂(A)を使用する場合、まず、ロー
ラーミル、ペイントシェーカー、ポットミル、ディスパ
ー、ビーズミル等の一般に顔料分散に使用されている機
械を用いて顔料の分散ペーストを調製し、これに上記フ
ィルム形成性樹脂(A)、各種添加剤、有機溶剤、硬化
剤、触媒等を加えて顔料ペーストとする。その後、別に
調製した部分加水分解縮合物(I)の溶解ワニスと上記
顔料ペーストとを混合することにより塗料組成物を得
る。また、部分加水分解縮合物(I)を除く樹脂組成物
を調製した後、部分加水分解縮合物(I)を添加し、均
一化することによっても、塗料組成物を得ることができ
る。
【0189】本発明の塗料組成物は、バインダー成分と
してフィルム形成性樹脂(A)及び無機系バインダー
(B)を使用する場合、並びに、無機系バインダー
(B)のみを使用する場合も、上記フィルム形成性樹脂
(A)を使用する場合と同様にして調製することができ
る。
【0190】本発明の塗料組成物は、充分な硬化性を有
するフィルム形成性樹脂(A)及び無機系バインダー
(B)のうち少なくとも1種をバインダー成分として使
用しているので、得られる塗膜に充分な硬度を付与する
ことができ、更に、部分加水分解縮合物(I)を配合し
ているため、塗膜表面を親水性にするためのSiOR基
やSiOH基を充分に提供することができるので、塗膜
性能、例えば、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等に優れ
ており、更に、優れた耐雨垂れ汚染性をも付与すること
ができる。
【0191】本発明の塗膜形成方法は、基材に、エポキ
シ樹脂系プライマー、ポリウレタン変性エポキシ樹脂系
プライマー、及び、ポリエステル樹脂系プライマーから
なる群より選択された少なくとも1種のプライマーを塗
装した後、上述した本発明の塗料組成物を塗装し、焼き
付けるものである。
【0192】上記基材としては特に限定されず、例え
ば、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき鋼板、亜鉛/ア
ルミニウムめっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、アル
ミニウム及びその合金、銅及びその合金、チタン及びそ
の合金、蒸着金属、ステンレス鋼板、冷延鋼板等の金属
素材の板状又はシート状のもの;これらの金属素材の形
成物;プラスチック等の有機素材;繊維強化プラスチッ
ク(FRP)等の複合プラスチック材;人造大理石、ス
レート等の無機素材等を挙げることができる。
【0193】上記基材が、上記金属素材である場合に
は、一般に、その表面に、例えば、りん酸亜鉛処理、反
応型クロメート処理、塗布型クロメート処理等が施され
たものを使用することが好ましい。また、クロメート処
理を施された表面に、更に薄膜型有機複合被覆が施され
たものであってもよい。
【0194】本発明の塗膜形成方法においては、上記基
材に、プライマーが塗装された後、上記塗料組成物が塗
装される。上記プライマーは、エポキシ樹脂系プライマ
ー、ポリウレタン変性エポキシ樹脂系プライマー、及
び、ポリエステル樹脂系プライマーからなる群より選択
された少なくとも1種である。
【0195】上記塗料組成物の塗装方法としては特に限
定されず、例えば、ロールコーター、エアースプレー、
エアレススプレー、カーテンフローコーター等の一般に
使用されている塗装方法等を挙げることができる。これ
らは、基材の使用目的に応じて、適宜選択される。上記
塗料組成物の塗装において、得られる塗膜の膜厚として
は特に限定されないが、通常、乾燥膜厚が5〜100μ
mとなるように塗装することが好ましい。
【0196】焼き付け条件は、得られる塗膜の水の動的
後退張力(Tr)を55dyn/cm以上とするよう
に、上記塗料組成物の反応温度に応じて適宜変更可能で
ある。例えば、上記塗料組成物のバインダー成分が、フ
ィルム形成性樹脂(A)を主体とするものである場合、
通常、140℃、20分から250℃、30秒の範囲で
行うことが好ましい。30秒〜2分程度の短時間での焼
き付けの場合には、到達板温で温度を管理し、190〜
230℃にするのが一般的である。また、上記塗料組成
物が、常温乾燥塗料である場合には、室温で1日以上、
好ましくは、2〜3日、より好ましくは、1週間以上乾
燥させる。
【0197】上記塗料組成物のバインダー成分が、無機
系バインダー(B)を主体とするものである場合、例え
ば、80℃、60分から350℃、10分の範囲で行う
ことが好ましい。
【0198】本発明の塗膜形成方法においては、上記プ
ライマー及び上記塗料組成物の塗装及び焼き付けは、2
コート/2ベークでもよく、2コート/1ベークでもよ
い。
【0199】本発明の塗膜形成方法は、上記塗料組成物
を塗布した基材を焼き付けた後、更に、上記基材を水と
接触させて加水分解反応を進行させることが好ましい。
上記基材を水と接触させることによって、塗膜表面のS
iOR基を効率よくSiOH基に加水分解することがで
きるので、焼き付けた後に基材を水と接触させる方法
は、塗膜の耐雨垂れ汚染性を向上させるのに効果的であ
る。
【0200】上記のようにして塗膜が形成された塗装物
は、良好な耐雨垂れ汚染性を示すので、屋外で使用され
る建造物等の基材として好適である。上記塗装物もま
た、本発明の一つである。
【0201】本発明においては、部分加水分解縮合物
(I)由来のSiOR基及び/又はSiOH基を塗膜表
面に存在させることによって、塗膜表面の水の動的後退
張力(Tr)を55dyn/cm以上にすることがで
き、耐雨垂れ汚染性を向上させることができる点、部分
加水分解縮合物(I)は、焼き付け条件下において、分
解したり揮散したりしないので、水濡れ性に優れ、耐久
性にも優れた塗膜を提供することができる点において、
優れたものである。
【0202】すなわち、従来のアルコキシシラン縮合体
を添加剤とした塗膜における問題点、例えば、加水分解
が進行するのに時間がかかり、その間塗膜の親水性が不
充分であるために汚染物質が付着してしまうこと;塗膜
中に含まれるSiOR基やSiOH基が雨水等の影響に
より縮合反応を起こし、塗膜クラックの原因となるこ
と;アルコキシシラン縮合体が低分子であるので、焼き
付け塗料に応用した場合には揮散しやすく、また、大量
のアルコキシシラン縮合体を必要とし、塗膜クラック、
塗料組成物の貯蔵安定性等に悪影響を及ぼすこと等を解
決することができる。
【0203】本発明の耐雨垂れ汚染性塗膜及び塗料組成
物は、プレコートメタル(PCM)、ポストコートメタ
ルにも適用可能であり、良好な耐雨垂れ汚染性、耐クラ
ック性等を有している特徴を生かして、屋根材、壁材等
の建築用資材;フェンス、ポール、ガードレール、高速
道路の防音壁、桁カバー、トンネル内装材等の道路資
材;ベンチ等のエクステリア材等;掘割材等の屋外金属
製品の耐雨垂れ汚染性が重視される用途に特に好適であ
る。
【0204】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0205】製造例1 アクリルポリオール樹脂の合成 加熱装置、攪拌機及び還流冷却器を備えた反応器に、キ
シレン80重量部及びn−ブタノール20重量部を仕込
み、攪拌しながら110℃まで昇温して保持し、メチル
メタクリレート36.7重量部、エチルアクリレート3
1.6重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/
ε−カプロラクトン(1:2)付加物(ダイセル化学工
業社製)31.9重量部、及び、t−ブチルパーオキシ
−2−エチルヘキサノエート5.0重量部からなる混合
物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後
30分間110℃に保ち、ついでt−ブチルパーオキシ
−2−エチルヘキサノエート0.5重量部を添加した。
添加後更に2時間110℃にて攪拌し、アクリルポリオ
ール樹脂を得た。得られたアクリルポリオール樹脂
(a)は、不揮発分50.0%、水酸基価50mgKO
H/g、数平均分子量5000であった。
【0206】実施例1 ベース塗料として、ユニフロンC(白)(ポリフッ化ビ
ニリデン/アクリル混合樹脂系熱可塑性塗料、日本ペイ
ント社製)を使用した。ユニフロンC(白)は、樹脂固
形分100重量部に対して、酸化チタン顔料(タイペー
クCR97、石原産業社製)100重量部を添加し、ガ
ラスビーズミルで顔料を分散させた塗料である。これ
に、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(加
水分解率60%、重量平均分子量2000、2〜8量体
含有量21.9重量%)を上記塗料の固形分100重量
部に対して8重量部添加し、ガラスビーズミルで再度分
散させ、塗料組成物を調製した。基材として、りん酸亜
鉛処理を行った厚さ0.4mmの亜鉛めっき鋼板を用
い、その表面に、ポリエステル樹脂系プライマー(フレ
キコートP600プライマー、日本ペイント社製)を乾
燥膜厚5μmとなるようにバーコーターで塗布し、到達
板温220℃、60秒で焼き付けした。その後、乾燥膜
厚20μmとなるように、得られた塗料組成物をバーコ
ーターで塗布し、到達板温245℃で60秒焼き付けを
行って塗膜を形成した。
【0207】実施例2 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物をテトラ
メトキシシランの部分加水分解縮合物(加水分解率5
5%、重量平均分子量1800、2〜8量体含有量2
6.8重量%)としたこと以外は、実施例1と同様にし
て塗料組成物を調製し、実施例1と同様にして塗膜を形
成した。
【0208】比較例1 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物をテトラ
メトキシシランの部分加水分解縮合物(加水分解率5
0%、重量平均分子量1020、2〜8量体含有量4
1.0重量%)としたこと以外は、実施例1と同様にし
て塗料組成物を調製し、実施例1と同様にして塗膜を形
成した。
【0209】比較例2 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物をテトラ
メトキシシランの部分加水分解縮合物(加水分解率4
0%、重量平均分子量580、2〜8量体含有量77.
2重量%)としたこと以外は、実施例1と同様にして塗
料組成物を調製し、実施例1と同様にして塗膜を形成し
た。
【0210】比較例3 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を添加し
なかったこと以外は、実施例1と同様にして塗料組成物
を調製し、実施例1と同様にして塗膜を形成した。
【0211】実施例3 製造例1で得られたアクリルポリオール樹脂23重量
部、酸化チタン顔料(タイペークCR97、石原産業社
製)50重量部、テトラメトキシシランの部分加水分解
縮合物(加水分解率60%、重量平均分子量250
0、2〜8量体含有量16.8重量%)20重量部をガ
ラスビーズとともにSGミルにて、30℃で1.5時間
分散した。粒ゲージにて分散度を測定すると、5ミクロ
ン以下であった。更に、HMDIのMEKオキシムブロ
ック(デスモジュ−ルBL3175、住友バイエルウレ
タン社製)7重量部と、触媒としてジブチルすずラウレ
ートを固形分に対して0.1重量%添加し、ディスパー
にて攪拌して塗料組成物を調製した。基材として、りん
酸亜鉛処理を行った厚さ0.4mmの亜鉛めっき鋼板を
用い、その表面に、ポリエステル樹脂系プライマー(フ
レキコートP600プライマー、日本ペイント社製)を
乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターで塗布し、到
達板温220℃、1分で焼き付けした。その後、乾燥膜
厚20μmとなるように、得られた塗料組成物をバーコ
ーターで塗布し、到達板温220℃で1分焼き付けを行
って塗膜を形成した。
【0212】比較例4 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物をテトラ
メトキシシランの部分加水分解縮合物(加水分解率4
0%、重量平均分子量580、2〜8量体含有量77.
2重量%)としたこと以外は、実施例3と同様にして塗
料組成物を調製し、実施例3と同様にして塗膜を形成し
た。
【0213】比較例5 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を添加し
なかったこと以外は、実施例3と同様にして塗料組成物
を調製し、実施例3と同様にして塗膜を形成した。
【0214】実施例4 製造例1で得られたアクリルポリオール樹脂23重量
部、酸化チタン顔料(タイペークCR97、石原産業社
製)50重量部、メタノール媒体シリカゾル(日産化学
社製)15重量部、テトラメトキシシランの部分加水分
解縮合物(加水分解率60%、重量平均分子量340
0、2〜8量体含有量14.5重量%)5重量部をガラ
スビーズとともにSGミルにて、30℃で1.5時間分
散した。粒ゲージにて分散度を測定すると、5ミクロン
以下であった。更に、HMDIのMEKオキシムブロッ
ク(デスモジュ−ルBL3175、住友バイエルウレタ
ン社製)7重量部と、触媒としてジブチルすずラウレー
トを固形分に対して0.1重量%添加し、ディスパーに
て攪拌して塗料組成物を調製した。実施例3と同様にし
て塗膜を形成した。
【0215】比較例6 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物をテトラ
メトキシシランの部分加水分解縮合物(加水分解率5
0%、重量平均分子量1020、2〜8量体含有量4
1.0重量%)としたこと以外は、実施例4と同様にし
て塗料組成物を調製し、実施例4と同様にして塗膜を形
成した。
【0216】比較例7 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を添加し
なかったこと以外は、実施例4と同様にして塗料組成物
を調製し、実施例4と同様にして塗膜を形成した。
【0217】実施例5 還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、メチルトリ
メトキシシラン100重量部、アルミナゾル−100
(日産化学工業社製、塩酸安定化水性分散液、羽毛状の
アルミナを含有、固形分濃度10重量%)1重量部、水
20重量部を仕込み、攪拌しながら60℃に加熱し、約
3時間反応させた。ついで、これを室温まで冷却し、重
量平均分子量6000のアルミナ含有オルガノポリシロ
キサンを得た。分子量の測定は、ゲルパーミエーション
クロマトグラフィーによるポリスチレン換算法により行
った。更にこれらの固形分100重量部に対して、テト
ラメトキシシランの部分加水分解縮合物(加水分解率
60%、重量平均分子量1800、2〜8量体含有量2
7.0重量%)10重量部になるように添加して、塗料
組成物を得た。得られた塗料組成物をスプレーにてアル
ミニウム板(1050P)に塗装し、180℃で20分
間焼き付けた。乾燥膜厚は、15±5μmであった。
【0218】実施例6 還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、メチルトリ
メトキシシラン100重量部、OS309D(アルコキ
シシリル基含有アクリル樹脂、大八化学工業社製)10
0重量部、イソプロピルアルコール20重量部、水40
重量部を仕込み、攪拌しながら70℃に加熱し、8時間
反応させた。ついでイソプロピルアルコール40重量
部、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)2重
量部、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物
(加水分解率60%、重量平均分子量2000、2〜8
量体含有量21.9重量%)8重量部を加え、更に酸化
チタン(CR95、石原産業社製)100重量部を加え
て、ガラスビーズミルで30分間分散し、塗料組成物を
得た。実施例5と同様にして塗膜を形成した。
【0219】比較例8 テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を添加し
なかったこと以外は、実施例6と同様にして塗料組成物
を調製し、実施例6と同様にして塗膜を形成した。
【0220】実施例1〜6、比較例1〜8で得られた塗
膜について、水の動的後退張力(Tr)、耐雨垂れ汚染
性、塵埃に対する耐汚染性を測定した。測定方法は以下
のとおりであった。
【0221】水の動的後退張力(Tr)の測定 塗膜を形成させる面の裏面が、ポリテトラフルオロエチ
レンテープによりバックシールされた縦50mm、横2
5mm、厚さ0.5mmの大きさの試験片に各塗料を用
いて塗膜を形成させた後、図1に示した測定装置を用い
て、支持台の移動速度20mm/分で塗板にかかる荷重
を測定し、水の動的後退張力を算出した。塗板の周囲長
は、150mmであった。結果を表2に示した。
【0222】耐雨垂れ汚染性 塗板を垂直に設置し、10°の傾斜をもった30cmの
浪板(3mmピッチで深さ3mmの溝が切ってあるも
の)の屋根から雨が塗装面に流れ落ちるようにし、5か
月間放置した後、汚染状況を観察し、以下の評価基準に
従って目視で評価した。結果を表2に示した。 ◎:雨筋がつかない ○:雨筋がわずかにつく △:雨筋がかなりつく ×:雨筋が顕著につく
【0223】塵埃に対する耐汚染性 芳沢らの方法(日本建築仕上学会1995年大会学術講
演集203〜206頁、促進A法)に従い、15分間塗
膜を汚染した後、水洗し、初期値との色差変化ΔEを測
定し、以下の評価基準に従って判定した。表面色の測定
は、市販の色差計を用いて行った。結果を表2に示し
た。 ◎:ΔE=1未満 ○:ΔE=1以上10未満 △:ΔE=10以上20未満 ×:ΔE=20以上
【0224】
【表2】
【0225】以上の結果より、実施例1〜6において親
水化剤として使用したテトラメトキシシランの部分加水
分解縮合物〜は、これらを添加しなかった場合やテ
トラメトキシシランの部分加水分解縮合物及びを使
用した場合と比較しても耐雨垂れ汚染性や塵埃に対する
耐汚染性が良好であった。また、テトラメトキシシラン
の部分加水分解縮合物及びを使用した場合であって
も、ある程度の耐雨垂れ汚染性や塵埃に対する耐汚染性
を発現することは可能であるが、実施例1〜6のように
テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物〜を使
用した場合には、より耐雨垂れ汚染性や塵埃に対する耐
汚染性が良好であることが判った。
【0226】実施例7、8、比較例9、10 実施例1、実施例2、比較例2及び比較例3で調製した
塗料組成物を、それぞれアルミニウム板に塗装し、実施
例1と同様に焼付け、それぞれ実施例7、実施例8、比
較例9及び比較例10とした。焼付後、室温の水に5秒
間浸漬した。得られた各塗装アルミニウム板を二次イオ
ン質量分析に供し、以下の測定条件で測定した。 測定装置:二次イオン質量分析計(ATOMIKA社
製、A−DIDA3000) 一次イオン種:O2 + イオン 一次イオンエネルギー:12keV 一次イオン電流:50nA ラスター領域:200×200μm ゲート率:20% 分析領域:40×40μm 検出イオン:正イオン 電子スプレー条件:0.7kV−30A 測定時真空度:1.3×10-6Pa
【0227】塗装アルミニウム板の表面からの深さ0〜
550nmまで、O2 + イオンにてスパッタを行いなが
ら、生成する二次イオン(28Si+ 50Ti+
12+ )強度をカウントした。深さは、深くまで測定し
たクレータの深さを表面形状測定装置(Sloan社製
DEKTAK3030ST)で実測した値から求めたス
パッタレートを用いて換算した。結果を、それぞれ図
6、図7、図8、図9に示した。
【0228】実施例7、8、比較例9、10では、顔料
として酸化チタンを同一の含有量で配合している塗料組
成物を使用しており、塗膜中の酸化チタン濃度が高い
(塗膜固形分中50重量%)ため、表層から400〜5
00nmの塗膜の深い領域では、酸化チタンのカウント
数、すなわち50Ti+ のSIMSカウント数は、各塗装
アルミニウム板で同等であったので、通常は、マトリッ
クス元素である12+ の深さ方向強度で各不純物元素等
の分布を補正するが、この領域にあるチタンの量を基準
として、Si元素の濃度分布を補正した値をSi元素の
二次イオン強度カウント値とした。
【0229】また、このデータから、表層から400n
mまでのSi元素の二次イオン強度カウント値の積分強
度を計算した。更に、塗膜表面からの深さが30nmで
のSi元素の二次イオン強度カウント値の、膜中心部
(400〜500nm)のSi元素の平均二次イオン強
度カウント値に対する比を計算した。上記平均二次イオ
ン強度カウント値は、深さ400〜500nmにおける
二次イオン強度カウント値の深さ方向についての平均値
である。結果を表3に示した。また、実施例1と同様に
して、各塗装アルミニウム板の水の動的後退張力、耐雨
垂れ汚染性及び塵埃に対する耐汚染性を測定、評価し
た。結果を表3に示した。
【0230】
【表3】
【0231】以上の結果から、実施例7、8では、テト
ラメトキシシランの部分加水分解縮合物〜を使用し
ているので、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合
物に由来するSiイオンが、塗膜の表層付近に集中して
多量に存在しており、いわゆる傾斜構造をなして分布し
ていることが判った。一方、比較例9では、親水化剤と
してテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を使
用しているので、塗膜全体にSiイオンが存在し、塗膜
の表層付近に集中してSiイオンが存在するわけではな
いことが判った。従って、親水化剤としてテトラメトキ
シシランの部分加水分解縮合物〜を使用した場合に
は、塗膜の表層にSiOR基が多く存在し、加水分解に
よりSiOH基となり、塗膜を親水化させ、耐雨垂れ汚
染性が向上することが明白になった。
【0232】
【発明の効果】本発明は、上述の構成よりなり、無機系
の塗膜が水の動的後退張力(Tr)を一定値以上に保っ
ているので、耐雨垂れ汚染性が非常に良好であり、耐水
性、耐酸性、耐アルカリ性、耐クラック性等の性能に優
れ、屋外に設置される建造物、表示物や、防音壁等の基
材の塗膜及びそれを形成する塗料組成物、塗膜形成方法
として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】水の動的後退張力(Tr)を測定するための装
置を示す概略断面図である。
【図2】水の動的後退張力(Tr)を測定するための装
置を稼働させたときの試験片の状態を示す概念図であ
る。
【図3】水の動的後退張力(Tr)を測定するための装
置により測定した試験片にかかる荷重の変化を示すグラ
フである。縦軸は荷重を表し、横軸は変移を表す。
【図4】静的接触角と耐雨垂れ汚染性との関係を示すグ
ラフである。
【図5】アルコキシシリル基含有ポリマーの添加量を変
化させたときの静的接触角と耐雨垂れ汚染性との関係を
示すグラフである。
【図6】実施例7のSi元素の濃度分布を表すチャート
図である。縦軸は、二次イオン強度(カウント数)を表
し、横軸は、深さ(nm)を表す。
【図7】実施例8のSi元素の濃度分布を表すチャート
図である。縦軸は、二次イオン強度(カウント数)を表
し、横軸は、深さ(nm)を表す。
【図8】比較例9のSi元素の濃度分布を表すチャート
図である。縦軸は、二次イオン強度(カウント数)を表
し、横軸は、深さ(nm)を表す。
【図9】比較例10のSi元素の濃度分布を表すチャー
ト図である。縦軸は、二次イオン強度(カウント数)を
表し、横軸は、深さ(nm)を表す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09D 201/00 C09D 201/00 (72)発明者 岡井 敏博 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 松添 信行 東京都千代田区丸の内2−5−2 三菱化 学株式会社内 (72)発明者 遠藤 穂積 北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱 化学株式会社黒崎事業所内

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1); Si(OCH3 4 (1) で表されるテトラメトキシシランを加水分解、縮合して
    得られる加水分解率100%未満の部分加水分解縮合物
    であって、シラノール基(SiOH基)とメトキシシリ
    ル基(SiOMe基)とのモル比が(SiOH基)/
    (SiOMe基)=1/10以下であり、2〜8量体の
    含有量が0〜30重量%であり、重量平均分子量が15
    00〜5000である部分加水分解縮合物(I)と、フ
    ィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬化
    反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくとも
    1種とを含み、水の動的後退張力(Tr)が、55dy
    n/cm以上であることを特徴とする耐雨垂れ汚染性塗
    膜。
  2. 【請求項2】 水の動的後退張力(Tr)が、60dy
    n/cm以上である請求項1記載の耐雨垂れ汚染性塗
    膜。
  3. 【請求項3】 二次イオン質量分析において、塗膜の表
    面からの深さが0nm以上400nm未満の領域にある
    Si元素の全存在量が、前記塗膜の表面からの深さが4
    00〜500nmの領域にあるSi元素の全存在量の3
    倍以上である請求項1又は2記載の耐雨垂れ汚染性塗
    膜。
  4. 【請求項4】 二次イオン質量分析において、塗膜の表
    面からの深さが30nmでのSi元素の存在量が、前記
    塗膜の表面からの深さが400〜500nmの領域にあ
    るSi元素の平均存在量の5倍以上である請求項1、2
    又は3記載の耐雨垂れ汚染性塗膜。
  5. 【請求項5】 部分加水分解縮合物(I)の配合量は、
    フィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬
    化反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくと
    も1種を含む塗料固形分100重量部に対して、0.1
    〜100重量部である請求項1、2、3又は4記載の耐
    雨垂れ汚染性塗膜。
  6. 【請求項6】 下記式(1); Si(OCH3 4 (1) で表されるテトラメトキシシランを加水分解、縮合して
    得られる加水分解率100%未満の部分加水分解縮合物
    であって、シラノール基(SiOH基)とメトキシシリ
    ル基(SiOMe基)とのモル比が(SiOH基)/
    (SiOMe基)=1/10以下であり、2〜8量体の
    含有量が0〜30重量%であり、重量平均分子量が15
    00〜5000である部分加水分解縮合物(I)と、フ
    ィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬化
    反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくとも
    1種とを含み、得られる塗膜の水の動的後退張力(T
    r)が、55dyn/cm以上であることを特徴とする
    塗料組成物。
  7. 【請求項7】 部分加水分解縮合物(I)の配合量は、
    フィルム形成性樹脂(A)及びアルコキシシリル基を硬
    化反応基とする無機系バインダー(B)のうち少なくと
    も1種を含む塗料固形分100重量部に対して、0.1
    〜100重量部である請求項6記載の塗料組成物。
  8. 【請求項8】 フィルム形成性樹脂(A)は、熱可塑性
    樹脂、熱硬化性樹脂又は常温硬化性樹脂である請求項6
    又は7記載の塗料組成物。
  9. 【請求項9】 熱可塑性樹脂は、ポリフッ化ビニリデ
    ン、ポリフッ化ビニリデンとアクリル樹脂との共重合
    物、ポリフッ化ビニリデンとアクリル樹脂との混合物、
    及び、プラスチゾルからなる群より選択される少なくと
    も1種である請求項8記載の塗料組成物。
  10. 【請求項10】 熱硬化性樹脂は、水酸基価が5〜30
    0であり、数平均分子量が500〜20000であるポ
    リオール樹脂(a)、及び、前記ポリオール樹脂(a)
    と反応可能な硬化剤(b)からなるものである請求項8
    又は9記載の塗料組成物。
  11. 【請求項11】 ポリオール樹脂(a)は、アクリルポ
    リオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、フッ素系
    ポリオール樹脂、及び、シリコーンポリオール樹脂から
    なる群より選択される少なくとも1種である請求項10
    記載の塗料組成物。
  12. 【請求項12】 硬化剤(b)は、イソシアネート化合
    物、ブロックイソシアネート化合物、及び、アミノ樹脂
    からなる群より選択される少なくとも1種である請求項
    10又は11記載の塗料組成物。
  13. 【請求項13】 ブロックイソシアネート化合物は、ラ
    クタム系ブロック化剤、オキシム系ブロック化剤、アル
    コール系ブロック化剤、又は、ジケトン系ブロック化剤
    でブロック化されたイソシアネート化合物である請求項
    12記載の塗料組成物。
  14. 【請求項14】 アルコキシシリル基を硬化反応基とす
    る無機系バインダー(B)は、下記一般式(2); R2 a −Si(OR3 4-a (2) (式中、R2 は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数
    1〜11のエポキシアルキル基、アリール基、炭素数1
    〜11のアルケニル基、炭素数1〜11のアラルキル
    基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜5のアミノア
    ルキル基、炭素数1〜5のメルカプトアルキル基、又
    は、炭素数1〜5のハロアルキル基を表す。R3 は、炭
    素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアシ
    ル基を表す。aは、1、2又は3を表す。)で表される
    オルガノアルコキシシラン化合物(B−1)、前記オル
    ガノアルコキシシラン化合物(B−1)の部分加水分解
    縮合物(B−2)、下記一般式(3); Si(OR4 4 (3) (式中、R4 は、炭素数2〜10のアルキル基、又は、
    炭素数1〜4のアシル基を表す。)で表される4官能ア
    ルコキシシラン化合物(B−3)、前記4官能アルコキ
    シシラン化合物(B−3)の部分加水分解縮合物(B−
    4)、並びに、下記一般式(4); R5 b −Si[(OR6 3-b ]−O− (4) (式中、R5 は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数
    1〜11のエポキシアルキル基、アリール基、炭素数1
    〜11のアルケニル基、炭素数1〜11のアラルキル
    基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数1〜5のアミノア
    ルキル基、炭素数1〜5のメルカプトアルキル基、又
    は、炭素数1〜5のハロアルキル基を表す。R6 は、炭
    素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアシ
    ル基を表す。bは、0、1、2又は3を表す。)で表さ
    れる置換基、及び、下記一般式(5); R7 O− (5) (式中、R7 は、炭素数1〜10のアルキル基、又は、
    炭素数1〜4のアシル基を表す。)で表される置換基の
    うち少なくとも1種が主鎖のSi原子に結合しているシ
    ロキサンポリマー(B−5)からなる群より選択される
    少なくとも1種からなるものである請求項6又は7記載
    の塗料組成物。
  15. 【請求項15】 アルコキシシリル基を硬化反応基とす
    る無機系バインダー(B)は、更に、下記一般式
    (6); R8 d −Si[(OR9 3-d ]− (6) (式中、R8 は、炭素数1〜5のアルキル基、アリール
    基、炭素数1〜11のアラルキル基、又は、炭素数1〜
    4のアシル基を表す。R9 は、炭素数1〜10のアルキ
    ル基、又は、炭素数1〜4のアシル基を表す。dは、
    0、1、2又は3を表す。)で表されるアルコキシシリ
    ル基をビニル系重合体末端又は側鎖に有し、アルコキシ
    シリル当量が300以上であるアルコキシシリル基含有
    ビニル系樹脂(C−1)、チタニウムテトラアルコキシ
    ド及びジルコニウムテトラアルコキシドのうち少なくと
    も1種の金属アルコキシド(C−2)、前記金属アルコ
    キシド(C−2)の加水分解縮合物(C−3)、シリカ
    ゾル(C−4)、並びに、アルミナゾル(C−5)から
    なる群より選択される少なくとも1種を含んでなるもの
    である請求項6、7又は14記載の塗料組成物。
  16. 【請求項16】 基材に、エポキシ樹脂系プライマー、
    ポリウレタン変性エポキシ樹脂系プライマー、及び、ポ
    リエステル樹脂系プライマーからなる群より選択された
    少なくとも1種のプライマーを塗装した後、請求項6〜
    13のいずれかに記載の塗料組成物を塗装し、焼き付け
    ることを特徴とする耐雨垂れ汚染性塗膜の形成方法。
  17. 【請求項17】 焼き付けた後、更に、基材を水と接触
    させて加水分解反応を進行させる請求項16記載の耐雨
    垂れ汚染性塗膜の形成方法。
  18. 【請求項18】 請求項1、2、3、4又は5記載の耐
    雨垂れ汚染性塗膜で被覆されたことを特徴とする耐雨垂
    れ汚染性を有する塗装物。
JP6907097A 1997-03-05 1997-03-05 耐雨垂れ汚染性塗膜、塗料組成物、塗膜形成方法及び塗装物 Pending JPH10245504A (ja)

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US09/035,332 US6013724A (en) 1997-03-05 1998-03-05 Raindrop fouling-resistant paint film, coating composition, film-forming method, and coated article
EP98400527A EP0863191A3 (en) 1997-03-05 1998-03-05 Raindrop fouling-resistant paint film, coating composition, film-forming method, and coated article

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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001081474A1 (fr) * 2000-04-20 2001-11-01 Daikin Industries, Ltd. Composition anti-salissure a base de silicone
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CN115023476A (zh) * 2020-02-12 2022-09-06 日本制铁株式会社 金属板用涂料和使用该涂料的涂装金属板的制造方法

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