JPH10237596A - 耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼

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JPH10237596A
JPH10237596A JP3781397A JP3781397A JPH10237596A JP H10237596 A JPH10237596 A JP H10237596A JP 3781397 A JP3781397 A JP 3781397A JP 3781397 A JP3781397 A JP 3781397A JP H10237596 A JPH10237596 A JP H10237596A
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steel
stainless steel
ferritic stainless
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JP3781397A
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Misako Tochihara
美佐子 栃原
Yasushi Kato
康 加藤
Susumu Sato
佐藤  進
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Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フェライト系ステンレス鋼の耐銹性を改善す
るため、従来では、鋼中の介在物量等を低減する等の方
法しかなく、鋼種によっては他の要求性能を満足させる
ことができない場合があった。 【解決手段】 Crを11.0wt% 以上含有するフェライト系
ステンレス鋼であって、鋼中に不可避的に混入する介在
物は、これらの2種以上が実質的に混在した複合系介在
物の形で鋼中に存在し、この複合系介在物につき、次式
(1) で示される溶解特性値Xが次式(2) を満たし、かつ
その大きさが平均円相当径で15μm 以下であることを特
徴とする耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 X=(4×[CaO ]+2 ×[MgO ]+3 ×[CaS ]+0.4 ×[MnS ]) / ( [TiO2]+[Al2O3 ]+[SiO2]) ------(1) 但し、[ ]内は複合介在物を実質的に構成する介在物
の分析値(wt%)である。 0.1 ≦X≦10 ------(2)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、耐銹性に優れた
フェライト系ステンレス鋼に関するものであり、例え
ば、レンジフードやシンク等の厨房器具、屋内外に使用
される建築部材、及び自動車の装飾部品などの用途にお
いて、特に厳しい美観特性が要求される場合の使用に適
したフェライト系ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼は、現在、レ
ンジフードやシンク等の厨房器具、屋内外に使用される
建築部材、及び自動車の装飾部品など種々の分野で使用
されており、このように多岐にわたる用途に対応させる
べく、使用部位やニーズ等に応じて個々に成分設計を行
っているのが現状であり、その鋼種も実に多様化してい
る。
【0003】このように組成や成分量の異なる種々のス
テンレス鋼を製造するには、製造条件等を各ステンレス
鋼ごとに対応させて設定変更する必要があり、各ステン
レス鋼の品質管理は極めて煩雑化する傾向にある。
【0004】ところで、フェライト系ステンレス鋼は、
オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、応力腐食割れ
が起きにくい等の優れた特性を有するものの、Clイオン
が存在したり、酸素供給の少ないすきま構造に使われた
りすると孔食が起きやすく、耐銹性に劣るという欠点を
有することで知られているが、最近では、フェライト系
ステンレス鋼においても、厳しい美観特性を必要とする
用途に使用されるケースが増えつつあり、用途によって
は、わずかな発銹でさえ問題とする場合も少なくない。
【0005】そのため、フェライト系ステンレス鋼の耐
銹性を改善するための検討が広く行われており、例え
ば、特開昭59-166655 号公報がある。
【0006】この公報によれば、ステンレス鋼中のS,O,
P 等の含有量を低減するとともに、鋼中に不可避的に混
入する硫化物系及び酸化物系介在物を極力低減すること
によって耐銹性を改善できる旨の記載がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この公
報に記載の方法は、ステンレス鋼中のS,O,P 等の含有量
を低減することが必要不可欠であるため、全ての鋼種に
対して適用することはできず、鋼種によっては適用でき
ない場合があった。
【0008】すなわち、耐銹性以外の他の要求性能を満
足させるために上記成分の含有量を制限できない場合が
あり、また、製造工程上、鋼中に不可避的に混入するた
め上記成分の含有量を所望量まで低減できない場合もあ
り、上記成分の含有量を制限する方法には限界があっ
た。
【0009】また、耐銹性を改善するための他の手段と
しては、脱酸や脱硫等によって鋼中に不可避的に混入す
るCaO,Al2O3,SiO2,MnOなどの各介在物の量を制限する方
法が知られている。
【0010】しかしながら、各介在物量の制限にも製造
上限界があり、加えて、各介在物の量を制限しても、鋼
種によっては耐銹性を十分に改善できない場合があっ
た。この点に関しては、ある条件の場合に特に耐銹性が
劣化しやすいということは周知事実として知られていた
ものの、その原因については充分に明確にした文献等は
現在までのところ見当たらない。
【0011】そのため、発明者らは、最近の各種表面分
析装置を駆使してフェライト系ステンレス鋼で生じがち
な発銹について徹底的な解析を行った結果、脱酸や脱硫
等によって鋼中に不可避的に混入する介在物は、個々の
介在物が独立して鋼中に存在しているのではなく、実際
には、混在した複合系介在物の形で鋼中に存在してお
り、鋼表面での発銹が、この複合系介在物の複雑な構造
に起因して生じることを見出した。
【0012】そして、発明者らがさらに鋭意検討を行っ
た結果、発銹は、鋼中に不可避的に混入する複合系介在
物の大きさ及びそれを実質的に構成する介在物の溶解特
性に大きく左右されること、及びこれらを制御すれば耐
銹性を効果的に向上できることを見出したのである。
【0013】この発明の目的は、複合系介在物の大きさ
及びそれを実質的に構成する介在物の溶解特性を考慮し
て、発明者らが独自に定義した溶解特性値Xの適正化を
図ることにより、他の要求性能を犠牲にすることなく、
優れた耐銹性を有するフェライト系ステンレス鋼を提供
しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は、従来技術で
は十分に解決しえなかったフェライト系ステンレス鋼の
耐銹性を効果的に向上させるため、発銹の起点及び進展
のメカニズムについて、特に電子線マイクロアナライザ
ー(EPMA)、電界放射型オージェ電子分光装置(F
E−AES)、及び高倍率観察が可能な走査型電子顕微
鏡(SEM)などの最新の各種物理分析装置を駆使し
て、鋼表面における介在物の存在状態等を徹底的に解析
するとともに、複合系介在物やこれを実質的に構成する
各介在物とほぼ同様な組成の焼結体を作製し、この焼結
体の溶解特性を調査することによって完成に至ったもの
である。
【0015】すなわち、これらの解析と調査等によっ
て、発銹の起点となるのが複合系介在物であり、そし
て、複合系介在物を構成する介在物のうち、溶解特性の
異なる介在物同士が濃淡電池を形成して、すき間腐食を
生じ、発銹が進行するという、これまで全く明らかにさ
れていなかった耐銹性劣化機構を明らかにするととも
に、複合系介在物の大きさ、及びそれを実質的に構成す
る介在物の溶解特性を考慮して発明者らが独自に定義し
た溶解特性値Xの適正化を図ることによって耐銹性が効
果的に改善されることを見出し、この発明を完成するに
至ったのである。
【0016】この発明は、具体的には、Crを11.0wt% 以
上含有するフェライト系ステンレス鋼であって、鋼中に
不可避的に混入する介在物は、これらの2種以上が実質
的に混在した複合系介在物の形で鋼中に存在し、この複
合系介在物につき、次式(1)で示される溶解特性値Xが
次式(2) を満たし、かつその大きさが平均円相当径で15
μm 以下であることを特徴とする耐銹性に優れたフェラ
イト系ステンレス鋼である。 X=(4×[CaO ]+2 ×[MgO ]+3 ×[CaS ]+0.4 ×[MnS ]) / ( [TiO2]+[Al2O3 ]+[SiO2]) ------(1) 但し、[ ]内は複合介在物を実質的に構成する介在物
の分析値(wt%) である。 0.1 ≦X≦10 ------(2)
【0017】また、この発明のフェライト系ステンレス
鋼は、 Cr を11.0wt% 以上含有する他、さらにV:0.03
〜1.00wt% 、Pt:0.002〜0.010wt%、及びIr:0.001〜0.02
0wt%のうちから選んだ1種又は2種以上を含有すること
がより好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】発明者らは、耐銹性向上のため種
々の検討を行った結果、含クロム溶鋼中の脱炭、脱酸、
脱硫精錬において、鋼中に不可避的に混入する介在物
が、実質的には7種類の介在物CaO,MgO,TiO2,Al2O3,SiO
2,CaS,MnS であることを電解法、ハロゲン法による化学
分析によって確認し、これらの介在物が混在した複合系
介在物の形で鋼中に存在し、この複合系介在物自体又は
その周辺が発銹の起点となっていることを電界放射型オ
ージェ電子分光装置等の表面分析装置による解析結果か
ら明らかになった。
【0019】以下に、この発明における発明特定事項の
限定理由について説明する。 (1) 0.1 ≦X≦10 発明者らは、発銹が複合系介在物を起点として生じやす
い理由が、複合系介在物を実質的に構成する前記介在物
CaO,MgO,TiO2,Al2O3,SiO2,CaS,MnS の溶解特性の相違に
あると考えた。
【0020】そこでまず、各介在物とほぼ同じ組成の焼
結体を作製し、各焼結体について、50℃の5%NaCl溶液
中における溶解特性を測定した。その測定結果を表1の
上欄に示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1に示すように、単独の介在物で溶解量
を比較すると、Al2O3,TiO2,SiO2 の溶解量は、いずれも
同等程度でかつMgO,MnS,CaO,CaS に比べるとかなり微量
であることが分かった。
【0023】この結果から、発明者らは、発銹が、溶出
しにくい介在物TiO2,Al2O3,SiO2 と、溶解しやすい介在
物CaO,MgO,CaS,MnS とが複合系介在物内で近接して位置
することにより、これらの間で濃淡電池を形成し、溶出
しやすい介在物CaO,MgO,CaS,MnS がアノードとなって溶
出する結果、すき間腐食が生じることによって発生する
ものと考えた。
【0024】そこで次に、溶出しにくい3種類の介在物
TiO2,Al2O3,SiO2 をベースとし、これらに、溶出しやす
い介在物CaO,MgO,CaS,MnS のうちの1 種を加えた複合系
介在物を想定した計4個の焼結体を作製し、各焼結体の
前記塩水に対する溶解量を測定した。この測定した各介
在物の溶解量を比で表したものも表1の下欄に示す。
【0025】発明者らは、溶出しにくい介在物TiO2,Al2
O3,SiO2 の各鋼中含有量の総和を分母とし、溶出しやす
い介在物CaO,MgO,CaS,MnS の鋼中含有量に、それぞれ表
1下欄に示す溶解量の比の値を係数として乗じたものの
総和を分子とする溶解特性値Xなる式を独自に定義し
た。そして、発明者らは、この特性値Xが耐銹性と相関
関係があると考えた。
【0026】図1は鋼種の異なる13種類のフェライト系
ステンレス鋼の溶解特性値Xを算出し、溶解特性値Xと
耐銹性との相関関係を調べた結果を示したものである。
図1の結果から、溶解特性値Xが0.1 〜10の範囲内にあ
る全てのフェライト系ステンレス鋼は、いずれも耐銹性
がS.A.R.N 評価で6以上と優れていることが分かった。
以上のことから、この発明では溶解特性値Xを0.1 〜10
の範囲内とした。
【0027】尚、溶解特性値Xが10を超えているフェラ
イト系ステンレス鋼について、その表面に存在する析出
物を電界放射型オージェ電子分光装置で解析したとこ
ろ、この析出物が、溶出しにくいTiO2,Al2O3,SiO2が溶
出しやすいCaO,MgO,,CaS,MnSと同一の介在物に混在して
存在することが確認できた。
【0028】また、溶解特性値Xが10を超えたフェライ
ト系ステンレス鋼の場合には、複合系介在物自体又はそ
の周辺ですき間腐食が生じる様子が走査型電子顕微鏡に
よる観察から確認できた。
【0029】さらに、解特特性値Xが0.1 未満の場合、
即ち、TiO2,Al2O3,SiO2 がCaO,MgO,,CaS,MnSに比較して
多い場合は、TiO2,Al2O3,SiO2 は大きな介在物である場
合が多く、それ自身は溶解性が低いものの、大きい介在
物が表面欠陥を招くことでこれが耐食性劣化となる。
【0030】尚、この発明は、鋼中の介在物の量を積極
的に増やすことは意図してなく、あくまでも鋼中に不可
避的に混入する量の介在物を制御することを前提として
いるため、溶解特性値Xが0.1 〜10の範囲内であって
も、各介在物の量が過度に多すぎる場合には、耐銹性を
効果的に向上させることはできない。
【0031】そのため、各介在物量は、以下に示す上限
値を超えないことが最低限必要である。 CaO:0.03 wt%以下、MgO:0.01 wt%以下、CaS:0.01 wt%以
下、MnS:0.01 wt%以下、TiO2:0.08 wt%以下、Al2O3:0.
08 wt%以下、SiO2:0.08 wt%以下 尚、MgO は、取鍋耐火物レンガによって鋼中に不可避的
に混入したものである。
【0032】また、溶解特性値Xを0.1 〜10の範囲内に
制御する方法としては、取鍋耐火物組成の適正化及び二
次精錬時のフラックスの組成の適正化等が考えられる。
【0033】(2) 複合系介在物の大きさが平均円相当径
で15μm 以下 上述したように溶解特性値Xを0.1 〜10の範囲内に限定
することによって、耐銹性は向上するが、この発明で
は、前記限定だけでは十分ではない。すなわち、複合系
介在物自体又はその周辺ですき間腐食が生じる様子を走
査型電子顕微鏡を用いて観察及び統計処理した結果、溶
解特性値Xを0.1 〜10の範囲内にあるフェライト系ステ
ンレス鋼であっても、複合系介在物の大きさが平均円相
当径で15μm を超える場合には、発銹が生じやすいこと
が分かった。
【0034】この理由は、複合系介在物を構成する介在
物のうち、CaO,MgO,,CaS,MnSなどの溶出しやすい介在物
がアノードとなるが、複合系介在物の大きさが平均円相
当径で15μm を超える場合には、このアノード面積が、
TiO2,Al2O3,SiO2 などの溶出しにくい介在物の面積に対
しては小さくても、複合系介在物周辺の母材面積に対し
て、発銹へと進展する影響力を持つ大きさのアノード溶
解を起こすことになり、この結果、発銹へと進展するも
のと考えられる。
【0035】一方、複合系介在物の大きさが平均円相当
径で15μm 以下の場合には、アノード面積が、TiO2,Al2
O3,SiO2 などの溶出しにくい介在物の面積に対して小さ
く、しかも、複合系介在物周辺の母材面積に対しても小
さいことから、発銹へと進展する影響力を持つ大きさの
アノード溶解は生じず、この結果、発銹へとは進展しな
いものと考えられる。従って、この発明では、複合系介
在物の大きさを平均円相当径で15μm 以下とした。
【0036】尚、複合系介在物の大きさを平均円相当径
で15μm 以下とするための方法としては、二次精錬にお
ける取鍋での攪拌条件として攪拌方法、速度の適正化等
が考えられる。
【0037】(3) この発明は、溶解特性値Xを0.1 〜10
の範囲内とし、かつ複合系介在物の大きさを平均円相当
径で15μm 以下とすることを特徴とし、かかる特徴を満
足すれば、フェライト系ステンレス鋼に属するあらゆる
鋼種において、他の要求性能を犠牲にすることなく、耐
銹性を効果的に向上させることができるため、鋼成分に
ついて特に限定する必要はないが、上記特徴をもつ複合
系介在物を得るための有効な手段としては、精錬時に
V,Pt,Irを添加することである。
【0038】(a) V:0.03 〜1.00wt% 0.03〜1.00% Vを添加したフェライト系ステンレス鋼
と、V無添加のフェライト系ステンレス鋼について、3.
5 % NaCl(塩水噴霧試験)条件で腐食試験を行い、腐食
試験後の各鋼の表面状態を走査型電子顕微鏡で観察した
ところ、V添加鋼は、V無添加鋼に比べて耐銹性が優れ
ており、Vは、複合系介在物周辺で進行するすき間腐食
の進行を遅らせる作用があることが判明した。
【0039】尚、V添加量は、0.03wt% 未満では前記作
用が顕著でなくなり、また、1.00wt% を超える添加は、
前記作用が飽和するためコスト高となるため好ましくな
い。従って、Vの添加量は0.03〜1.00wt% とした。
【0040】(b) Pt:0.002〜0.010wt%、Ir:0.001〜0.02
0wt% PtとIrをそれぞれ添加したフェライト系ステンレス鋼の
表面観察及び複合系介在物の組成分析を電子線マイクロ
アナライザーで行ったところ、鋼表面には、円相当径で
10μm を超える大きさの複合系介在物は存在せず、ま
た、溶解特性値Xが8を超える複合系介在物も存在しな
いことが判明した。
【0041】そして、PtとIrをそれぞれ添加したフェラ
イト系ステンレス鋼と、これらを添加しないフェライト
系ステンレス鋼とについて、前述した腐食試験を行い、
腐食試験後の各鋼の表面状態を走査型電子顕微鏡で観察
したところ、Pt又はIr添加鋼は、無添加鋼に比べて耐銹
性が優れており、PtとIrは、ともに耐銹性をより一層向
上させる作用があることが判明した。
【0042】尚、Pt添加量は、0.002wt%未満では前記作
用が顕著ではなくなり、0.010wt%を超える添加は、前記
作用が飽和するためコスト高となるため好ましくなく、
また、Ir添加量は、0.001wt%未満では前記作用が顕著で
はなくなり、0.020wt%を超える添加は、前記作用が飽和
するためコスト高となるため好ましくない。従って、Pt
の添加量は0.002 〜0.010wt%とし、Irの添加量は0.001
〜0.020wt%とした。
【0043】この発明に従うフェライト系ステンレス鋼
の製造にあたっては、特に複雑な装置等は必要とせず、
また、各鋼ごとに製造条件を厳密に設定変更することも
要しない。また、製造工程は工場によってかなり異なる
が、従来の真空溶解炉、又は真空脱ガス装置において、
各工場の通常の操業条件で含クロム溶鋼中の脱炭、脱
酸、脱硫精錬を行うことができる。さらに、脱酸剤とし
ては、Si,Al,Mn,Ti などが適宜単独或いは組み合わせて
使用される。
【0044】加えて、CaO,CaF2などの添加によりスラグ
塩基度を調節する。但し、特に、還元・仕上げ精錬期に
成分微調整を行う場合が一般的であるが、ここでのSの
成分調整は、成分のみならず、複合系介在物の構造も変
化させる場合があり、この発明にとって重要な複合系介
在物の構造が変化するのは好ましくないことから、ここ
でのSの成分調整は行わないほうが好ましい。
【0045】以上、上述したところは、この発明の実施
の形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において、
種々の変更を加えることができる。
【0046】
【実施例】以下に、この発明に従うフェライト系ステン
レス鋼を製造し、加工性と耐銹性の評価を行ったので以
下に説明する。真空脱炭炉にて、表2 に示す成分組成か
らなるフェライト系ステンレス鋼の溶製を行った。塩基
度調整はCaO,CaF2を添加することによって行い、脱酸剤
は表3に示すものを使用した。通常の工程にて1mmtまで
冷間圧延した後、仕上げ焼鈍を行った。この仕上げ焼鈍
板を用いて、加工性試験及び各種耐銹性試験を行い、併
せて、孔食電位についても測定した。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】加工性試験は、90°曲げ試験を行った後の
サンプルの割れ発生の有無を調べた。
【0050】耐銹性試験は、複合サイクル腐食試験と大
気暴露試験とで行った。複合サイクル腐食試験は、各サ
ンプルに対して、3.5%NaCl溶液を30分間噴霧した後、1
時間乾燥し、1 時間湿潤状態で放置し、これを1 サイク
ルとして同様な手順で10サイクル繰り返して行った。大
気暴露試験は、JIS Z2381 の規定に準じ、サンプルを臨
海地域で3カ月間暴露した。
【0051】各種耐銹性試験を行った後のサンプルの発
銹程度を、ステンレス鋼の表面さび発生程度評価のため
の標準写真( ステンレス協会技術委員会編) を用いてレ
イティング(S.A.R.N) 評価を行った。
【0052】このS.A.R.N は、発銹の程度を0 〜9 まで
の10ランク評価するものであり、この数値は大きいほど
耐銹性に優れている。特に、5 以下では赤錆が発生する
ため、この発明では、S.A.R.N が6 以上の場合を耐銹性
が良好であるとして評価した。
【0053】孔食電位の測定は、JIS G0577 に規定する
ステンレス鋼の孔食電位測定方法にに準じ、サンプルを
5%NaCl溶液中で測定した。これらの結果を表 3に示す。
尚、表3 中の孔食電位の数値は、鋼No.1〜6 及び10〜21
が30℃のNaCl溶液中で測定を行ったときのものであり、
鋼No.7〜9 が90℃のNaCl溶液中で測定を行ったときのも
のである。
【0054】表3の結果から、この発明に従う適合例1
〜13は、いずれも耐銹性及び加工性とも優れており、孔
食電位の測定値も比較例に比べていずれの場合も貴であ
り、アノード溶解が起こりにくいことが分かった。一
方、溶解特性値X及び複合系介在物の大きさのいずれか
一方がこの発明の適正範囲外である比較例1〜8は、い
ずれも満足な耐銹性が得られなかった。
【0055】
【発明の効果】この発明は、鋼中に不可避的に混入する
介在物の量を、耐銹性を向上させるためだけに低減する
必要は特にないため、複雑な製造装置は必要とせず、製
造条件等を各鋼ごとに設定変更する手間がなくなり、こ
れによって、品質管理が容易になり、作業性の向上や製
造コストの低減等が図れる。また、この発明は、鋼種に
よらず、全てのフェライト系ステンレス鋼に適用するこ
とができる。
【0056】この発明によって、フェライト系ステンレ
ス鋼板表面において、美観特性を損なうようなさびはほ
とんど発生しないので、例えば、レンジフードやシンク
等の厨房器具、屋内外に使用される建築部材、及び自動
車の装飾部品などの用途で、特に厳しい美観特性が要求
されるような場合にも使用することが可能となり、フェ
ライト系ステンレス鋼板の用途範囲がさらに一層広汎に
なった。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶解特性値Xと耐銹性との関係を示す図であ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Crを11.0wt% 以上含有するフェライト系
    ステンレス鋼であって、鋼中に不可避的に混入する介在
    物は、これらの2種以上が実質的に混在した複合系介在
    物の形で鋼中に存在し、この複合系介在物につき、次式
    (1) で示される溶解特性値Xが次式(2) を満たし、かつ
    その大きさが平均円相当径で15μm 以下であることを特
    徴とする耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。 X=(4×[CaO ]+2 ×[MgO ]+3×[CaS ]+0.4 ×[MnS ]) / ( [TiO2]+[Al2O3 ]+[SiO2]) ------(1) 但し、[ ]内は複合介在物を実質的に構成する介在物
    の分析値(wt%) である。 0.1 ≦X≦10 ------(2)
  2. 【請求項2】 Cr を11.0wt% 以上含有する他、さらに
    V:0.03 〜1.00wt% 、Pt:0.002〜0.010wt%、及びIr:0.0
    01〜0.020wt%のうちから選んだ1種又は2種以上を含有
    するフェライト系ステンレス鋼であって、鋼中に不可避
    的に混入する介在物は、これらの2種以上が実質的に混
    在した複合系介在物の形で鋼中に存在し、この複合系介
    在物につき、次式(1) で示される溶解特性値Xが、次式
    (2) を満たし、かつその大きさが平均円相当径で15μm
    以下であることを特徴とする耐銹性に優れたフェライト
    系ステンレス鋼。 X=(4×[CaO ]+2 ×[MgO ]+3 ×[CaS ]+0.4 ×[MnS ])/ ( [TiO2]+[Al2O3 ]+[SiO2]) ------(1) 但し、[ ]内は複合介在物を実質的に構成する介在物
    の分析値(wt%)である。 0.1 ≦X≦10 ------(2)
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