JPH10237447A - 強誘電性液晶組成物、強誘電性液晶素子及びその駆動方法 - Google Patents

強誘電性液晶組成物、強誘電性液晶素子及びその駆動方法

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JPH10237447A
JPH10237447A JP9046528A JP4652897A JPH10237447A JP H10237447 A JPH10237447 A JP H10237447A JP 9046528 A JP9046528 A JP 9046528A JP 4652897 A JP4652897 A JP 4652897A JP H10237447 A JPH10237447 A JP H10237447A
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liquid crystal
ferroelectric liquid
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compound
phase
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Application number
JP9046528A
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English (en)
Inventor
Takeshi Kaneko
毅 金子
Mitsuhiro Kouden
充浩 向殿
Eiji Okabe
英二 岡部
Tatsuji Harufuji
龍士 春藤
Shinichi Saito
伸一 斉藤
Hideo Saito
秀雄 斉藤
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JNC Corp
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Chisso Corp
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 一般式 【化1】 (式中、R1 は炭素数4〜16のアルキル基を、R2
炭素数2〜12のアルキル基をそれぞれ示す)で表され
る化合物を少なくとも1種と、下記の一般式(II) 【化2】 (式中、R3 及びR4 は炭素数1〜15のアルキル基又
はアルコキシ基を示し、Aは 【化3】 を示す)かつ、一般式(III) 【化4】 (式中、R5 及びR6 は、炭素数1〜18のアルキル基
又はアルコキシ基を示し、Xは、水素原子、1個又は2
個のフッ素原子を示す)で表させる化合物を少なくとも
1種ずつ含有することを特徴とする強誘電性液晶組成
物。 【効果】 自発分極Psの温度依存性が大きな温度依存
性を示す組成物が得られ、この組成物を利用した液晶素
子はその応答速度が小さな温度依存性を示し、実用時に
広い温度マージンを得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強誘電性液晶組成
物、強誘電性液晶素子及びその駆動方法に関する。更に
詳しくは、本発明は、自発分極の温度依存性が大きい強
誘電性液晶組成物、それを用いた強誘電性液晶素子及び
その駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶組成物は、表示素子材料として広く
用いられている。現在の液晶表示素子のほとんどはTN
型表示方式によるものであり、この表示方式は液晶組成
物のネマティック相を利用している。液晶表示素子に用
いられているTN型表示方式は、大きく2つに分けられ
る。1つは液晶表示素子を構成する各画素にスイッチン
グ素子を取り付けたアクティブ・マトリクス方式であ
る。この方式の例としては、駆動素子として薄膜トラン
ジスタ(TFT:Thin Film Transis
tor)を用いたものが知られている。この方式による
素子の表示品位は、CRT(Cathode Ray
Tube)と肩を並べるレベルまで達している。しか
し、画面の大型化が困難であり、コストも高い。
【0003】もう1つは、STN(Super Twi
sted Nematic)方式である。従来の単純マ
トリクス方式に比べ、コントラスト、視角依存性は改良
されているものの、表示品位はCRTのレベルには達し
ていない。しかし、製造コストは低い。これらの2つの
方式は、その品位、製造コストを考えると一長一短であ
る。この二者の問題点を解決すると期待されて登場した
方式として、強誘電性液晶(FLC)を使用した表示方
式が挙げられる。現在、単にFLCというと、表面安定
化強誘電性液晶(SSFLC)を示す。このSSFLC
は、1980年にN.A.クラークとS.T.ラガウォ
ール{アプライド フィジックス レターズ(App
l.Phys.Lett.36,899,1980)参
照}によって提案された。以来、次世代の液晶と呼ば
れ、家電メーカーや材料メーカーによって製品化に取り
組んでおり、表示特性の改良や商品化が行われている。
【0004】強誘電性液晶素子は、原理的に以下の特徴 (1)高速応答性 (2)メモリー性 (3)広視野角 を有している。上記の特徴は、SSFLCを大容量の表
示装置へ使用しうる可能性を示唆しており、SSFLC
を非常に魅力あるものにしている。
【0005】しかし、研究が進むにつれて解決しなけれ
ばならない問題が明らかにされてきた。その中でも重要
な課題のひとつは、メモリーの安定した発現である。メ
モリーを安定的に発現させるのが困難である原因は、ス
メクティック層構造が一様ではないこと(例えば、ねじ
れ配列、シェブロン構造)や、自発分極が過度に大きい
ことに起因すると考えられている内部逆電界の発生等が
挙げられる。
【0006】安定したメモリー性を発現させるための手
段の1つとして、負の誘電率異方性(以下、Δεと略称
する)を有する強誘電性液晶組成物を用いる方法が提案
されている{パリ・リクィッド・クリスタル・コンファ
レンス(Paris Liquid Crystal
Conference)、p.217(1984年)参
照}。この方法は,ACスタビライズ効果と呼ばれてい
る。Δεが負の液晶分子は、ホモジニアス配向処理した
セル中で、電極に垂直方向に電界を印加すると、ガラス
基板に対して平行の状態(電界の方向に対して分子長軸
が垂直)に向く性質がある。低周波電界を印加した場合
は、自発分極が電界に応答するため、電界の方向が反転
すると液晶分子もそれに伴い、もう一方の安定状態に移
動し、そこでΔεの効果で基板に対して平行の状態にな
る。高周波電界を印加した場合には、自発分極が電界の
反転に追随できなくなり、Δεだけが効いて、電界の方
向は反転しても液晶分子の移動は起きず、そのまま基板
に対して平行になる。これが、ACスタビライズ効果を
利用したメモリー性の発現メカニズムである。これによ
って高いコントラストを得ることができ、その具体例は
既に報告されている{SID’85 ダイジェストp.
128(1985年)参照}。
【0007】また、別に「負の誘電異方性を有する液晶
材料を利用する方法」がP.W.H.Surguy等
{フェロエレクトリクス(Ferroelectric
s),122,63,1991}により提案されてい
る。この手法は高コントラストを実現するために有望な
手法である。この手法を用いた強誘電性液晶ディスプレ
イが、P.W.RossによりProc.SID,21
7(1992年)に記載されている。以下、この強誘電
性液晶ディスプレイについて詳細に述べる。
【0008】誘電異方性が負でない通常の強誘電性液晶
材料の場合、電圧(V)が高くなるにつれてτ(メモリ
ーさせるために必要なパルス幅)が単調に低下する。こ
れに対して、負の誘電異方性を有する強誘電性液晶材料
の場合、極小値(τ−Vmin)を示すτ−V特性が得
られる。Surguy等は、この特性を用いた駆動法と
して、JOERS/Alvey駆動法を報告している。
この駆動法の原理は、|Vs−Vd|の電圧を印加した
とき、強誘電性液晶素子のメモリー状態をスイッングさ
せ、この電圧より高い電圧である|Vs+Vd|を印加
したとき、及びこの電圧より低い|Vd|を印加したと
きにはスイッチングさせないという方法である。
【0009】負の誘電異方性の強誘電性液晶材料は、以
上のように、ACスタビライズ効果及びτminを利用
した表示素子に応用できるので、強誘電性液晶素子の実
用化に利用できる可能性を秘めている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】SSFLCが抱える他
の重要な課題のひとつは、その光学応答が温度に対して
非常に敏感なことである。TN型表示方式の場合、液晶
分子の誘電異方性と電界との相互作用で所望の透過光量
を得ている。従って、得られる透過光量は、液晶分子の
誘電率と印加電圧でほぼ決定し、粘度は過渡光学応答の
部分のみにしか影響しない。
【0011】これに対し、SSFLCの場合は、自発分
極Psを有し、それと電界Eによる駆動力Ps・Eで液
晶分子の安定状態を切り換えることにより透過光量を変
化させている。このときの応答速度τは近似的に、 τ∝(η/Ps・E)……式1 となり、回転粘度ηの影響を直接受けてしまう。更に、
この回転粘度が温度に対して大きく変化するため、応答
速度τは温度の影響を受けやすくなるのである。すなわ
ち、SSFLCの場合は、TN型表示方式と異なり、式
1に従って、過渡光学応答を利用して所望の透過光量を
得るため、粘度の影響を直接受けてしまい、温度に対し
て敏感となってしまうのである。
【0012】この課題は、SSFLCの動作原理に関わ
るものである。すなわち、SSFLCの応答速度を粘度
に対して独立なものにすることは極めて困難である。一
方、粘度の温度依存性を小さくすることも、非常に困難
である。よって、より温度依存性の小さい素子を実現す
るためには、式1の粘度η以外の因子、すなわち、自発
分極Psもしくは電界Eを、温度による粘度変化に対応
して変えなければならない。
【0013】電界Eを温度によって変化させるのは比較
的容易である。しかし、回路が複雑になる、耐電圧の高
いICドライバーが必要になるなどコストアップとなっ
てしまう。また、仮に、このような、温度に対する電界
Eの変化機能を素子に付加した場合でも、自発分極Ps
が粘度変化に応じた大きな温度依存性を持つ組成物を用
いると、コストアップを少なくすることが可能である。
すなわち、このようなPsの温度依存性の大きな組成物
を用いることは、それを含む液晶素子の性能を向上させ
る利点がある。
【0014】
【課題を解決するための手段】従って、本発明の目的
は、自発分極Psの温度依存性が大きな強誘電性液晶組
成物を提供すること、また、この強誘電性液晶組成物を
用いた液晶素子及びその駆動方法を提供することにあ
る。かくして本発明によれば、一般式(I)
【0015】
【化5】
【0016】(式中、R1 は炭素数4〜16のアルキル
基を、R2 は炭素数2〜12のアルキル基をそれぞれ示
す)で表される少なくとも2つの安定状態を示す強誘電
性液晶化合物を少なくとも1種と、下記の一般式(II)
【0017】
【化6】
【0018】(式中、R3 及びR4 は炭素数1〜15の
アルキル基又はアルコキシ基を示し、Aは
【0019】
【化7】
【0020】を示す)かつ、一般式(III)
【0021】
【化8】
【0022】(式中、R5 及びR6 は、炭素数1〜18
のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Xは、水素原
子、1個又は2個のフッ素原子を示す)で表させる化合
物を少なくとも1種ずつ含有することを特徴とする強誘
電性液晶組成物が提供される。更に、本発明によれば、
電極及び配向制御膜をこの順で備えた一対の絶縁性基板
と、配向制御膜間に形成される液晶層を少なくとも有す
る強誘電性液晶素子であって、液晶層が上記強誘電性液
晶組成物を含むことを特徴とする強誘電性液晶素子が提
供される。
【0023】また、本発明によれば、電極及び配向制御
膜をこの順で備えた一対の絶縁性基板と、該一対の絶縁
性基板間に備えられた液晶層と、前記電極に選択的に電
圧を印加することによって液晶の光軸を切り換える駆動
手段と、前記光軸の切換えを光学的に識別する手段とを
有し、前記液晶層が上記少なくとも2つの安定状態を有
する強誘電性液晶分子を含む強誘電性液晶組成物からな
り、前記電極が複数の走査電極と複数の信号電極からな
り、走査電極と信号電極が互いに交差する方向に配列
し、該走査電極と該信号電極とが交差した領域を画素と
する強誘電性液晶素子を、任意に選択された画素へ第1
パルス電圧V1に引き続いて第2パルス電圧V2、又は
第1パルス電圧−V1に引き続いて、第2パルス電圧−
V2を印加して、前記選択された画素を構成する強誘電
性液晶組成物中に含まれる強誘電性液晶分子を少なくと
も2つの安定状態の内のある1つの安定状態とし、次い
で、前記選択された画素へ第1パルス電圧V3に引き続
いて第2パルス電圧V4、又は第1パルス電圧−V3に
引き続いて、第2パルス電圧−V4を印加して、前記強
誘電性液晶分子の安定状態を保持することにより駆動す
ること(但し、電圧V1、V2、V3及びV4は、0<
V2<V4及びV2−V1<V4−V3の関係を有す
る)を特徴とする強誘電性液晶表示素子の駆動方法が提
供される。
【0024】
【発明の実施の態様】本発明の強誘電性液晶組成物は、
一般式(I)
【0025】
【化9】
【0026】(式中、R1 は炭素数4〜16のアルキル
基を、R2 は炭素数2〜12のアルキル基をそれぞれ示
す)で表される強誘電性液晶化合物を少なくとも1種含
有する。一般式(I)の化合物は、公知の化合物をいず
れも使用することができ、例えば、特開昭63−190
842号及び特開平5−239460号に記載されてい
る化合物及びその製法をいずれも本発明に使用しうる。
【0027】R1 の定義中、炭素数4〜16のアルキル
基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、
オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ト
リデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル
の直鎖状アルキル基、メチル、エチル等の低級アルキル
基を側鎖に有する分枝状アルキル基等が挙げられる。R
2 の定義中、炭素数2〜12のアルキル基としては、エ
チル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチ
ル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル
の直鎖状アルキル基、メチル、エチル等の低級アルキル
基を側鎖に有する分枝状アルキル基等が挙げられる。
【0028】R1 としては炭素数6〜9が好ましく、R
2 としては炭素数6〜8が好ましい。より好ましいR1
とR2 の組み合わせとして、ヘキシルとヘキシル、ヘプ
チルとヘキシル、オクチルとヘキシル、ノニルとヘキシ
ル、ヘキシルとオクチル、ヘプチルとオクチル、ノニル
とオクチルが挙げられる。上記好ましいR1 とR2 を有
する化合物の相転移温度を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】表1において数字は相転移温度を摂氏温度
にて表しており、Cr、SF*、SC*、SA及びI
は、結晶、カイラルスメクティックF、カイラルスメク
ティックC、スメクティックA及び等方性液体の各相を
それぞれ意味する。・印はその上に略記した相が存在す
ることを意味し、括弧内の数字は相転移が単変性である
ことを意味する。
【0031】ここで、一般式(I)の化合物の特徴とし
て、以下の点が挙げられる。 (1)自発分極Psの絶対値が大きい。 (2)自発分極の符号が温度によって変化する。 (3)Ps符号が変化する温度が25℃より高い。 本発明の強誘電性液晶組成物は、一般式(I)の化合物
以外の成分として、下記の一般式(II)
【0032】
【化10】
【0033】(式中、R3 及びR4 は炭素数1〜15の
アルキル基又はアルコキシ基を示し、Aは
【0034】
【化11】
【0035】を示す)及び、一般式(III)
【0036】
【化12】
【0037】(式中、R5 及びR6 は、炭素数1〜18
のアルキル基又はアルコキシ基を示し、Xは、水素原
子、1個又は2個のフッ素原子を示す)で表される化合
物を、少なくとも一種含有する。一般式(II)及び(II
I)の化合物は、公知の化合物をいずれも使用することが
できる。R3 及びR4 の定義中、炭素数1〜15のアル
キル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、
ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デ
シル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシ
ル、ペンタデシルの直鎖状アルキル基、メチル、エチル
等の低級アルキル基を側鎖に有する分枝状アルキル基等
が挙げられる。
【0038】R3 及びR4 の定義中、炭素数1〜15の
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキ
シ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチル
オキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキ
シ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオ
キシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシの直鎖
状アルコキシ基、メチル、エチル等の低級アルキル基を
側鎖に有する分枝状アルコキシ基等が挙げられる。
【0039】R3 としては炭素数3〜10のアルキル基
又はアルコキシ基が好ましく、R4としては炭素数2〜
8のアルキル基が好ましい。より好ましいR3 及びR4
の組み合わせとして、ヘキシルとペンチル、オクチルと
エチル、ブチルとヘキシル、ブチルとオクチル、ペンチ
ルとヘプチル、ペンチルとヘプチル、ヘキシルとオクチ
ル、ヘキシルとペンチル、オクチルオキシとペンチル、
デシルオキシとペンチル、ブチルとヘプチル、ペンチル
とオクチルが挙げられる。
【0040】特に好ましい、A、R3 及びR4 の組み合
わせは、1,4−シクロヘキシレンとヘキシルとペンチ
ル、1,4−シクロヘキシレンとヘキシルとオクチル、
p−フェニレンとオクチルとエチル、p−フェニレンと
ブチルとヘキシル、p−フェニレンとブチルとヘプチ
ル、p−フェニレンとブチルとオクチル、p−フェニレ
ンとペンチルとヘプチル、p−フェニレンとペンチルと
オクチル、p−フェニレンとヘキシルとオクチルが挙げ
られる。
【0041】R5 及びR6 の定義中、炭素数1〜18の
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチ
ル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニ
ル、デシル、ドデシル、ウンデシル、トリデシル、テト
ラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシ
ル、オクタデシルの直鎖状アルキル基、メチル、エチル
等の低級アルキル基を側鎖に有する分枝状アルキル基等
が挙げられる。
【0042】R5 及びR6 の定義中、炭素数1〜18の
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキ
シ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチル
オキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキ
シ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオ
キシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキ
サデシルオキシ、ヘプタデシルオキシ、オクタデシルオ
キシの直鎖状アルコキシ基、メチル、エチル等の低級ア
ルキル基を側鎖に有する分枝状アルコキシ基等が挙げら
れる。
【0043】R5 としては炭素数6〜10のアルキル基
が好ましく、R6 としては炭素数4〜15のアルコキシ
基が好ましい。より好ましいX、R5 及びR6 の組み合
わせとして、水素原子とヘプチルとペントキシ、水素原
子とヘプチルとヘキシルオキシ、水素原子とオクチルと
ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0044】上記一般式(I)〜(III)の組成物中の配
合割合は下記の如くである。一般式(I)の化合物の配
向割合は、組成物中に0.5〜60重量%、好ましくは
0.5〜30重量%である。なお、上記特開昭63−1
90842号及び特開平5−239460号には、混合
割合が60重量%未満では、自発分極の符号が変化する
現象は観察されなくなると記載されている。ここで本発
明においては、一般式(I)の化合物の特徴として、
(1)〜(3)以外に、新たに、以下の(4)の特徴を
見いだした。更に、この特徴は、混合割合が60重量%
未満であっても発現することを見いだした。 (4)自発分極の温度依存性が大きい。
【0045】従って、一般式(I)の化合物を使用する
ことで、温度の変動により透過光量が変化することを効
果的に抑制することができる。一方、一般式(II)及び
(III)の化合物は、組成物中に少なくとも1種含有され
ていればよい。なお、一般式(II)及び(III)の化合物
は両方組成物に含有されていることが好ましく、40〜
90:60〜10の重量比で組成物に含まれることがよ
り好ましい。
【0046】ここで、本発明の強誘電性液晶組成物は、
以下のような有利な事項を有している。 (1)誘電異方性Δε、粘度η、相系列、相転移温度等
の重量な物性値を、化合物(I)以外の成分で制御でき
る。 (2)コレステリック相でのピッチは、一般式(I)の
化合物の混合割合に比例して短くなるため、混合割合が
低いとピッチは長くなり、SSFLCとして用いる場合
の均一配向性が向上する。 (3)自発分極Psは一般式(I)の化合物の混合割合
が高ければ大きくなる。大きなPsは一般にその反転に
よって誘起される反電界が大きく、いわゆる焼き付き現
象がひどくなる。
【0047】従って、上記(1)〜(3)より、本発明
の強誘電性液晶組成物は、一般式(I)の化合物の混合
割合が低く、比較的小さなPsをもつので、焼き付き現
象の少ない良好な強誘電性液晶素子を提供することがで
きる。更に、本発明の強誘電性液晶組成物は、その相転
移系列が高温側から等方性液体相、コレステリック相、
スメクティックA相、カイラルスメクティックC相であ
ることが好ましい。これは、ネマティック相において均
一な配向が得られやすく、その状態からスメクティック
A相、カイラルスメクティックC相へ降温してゆけばス
メクティック相の法線の方向の揃った配向が容易に得ら
れ、均一なスイッチング特性と高いコントラストが得ら
れるからである。
【0048】また、組成物のΔεが負で、その絶対値が
2以上であることが好ましい。Δεが正の場合、電圧
(V)が高くなるにつれてパルス幅(τ)が単調に低下
するため好ましくない。更に、絶対値が2未満の場合、
必要な応答速度を得ようとすると高電圧になりすぎ、電
圧を下げようとすると応答速度が遅くなりすぎてしまう
ので好ましくない。
【0049】更に、本発明の強誘電性液晶組成物は、コ
レステリック相内で生じさせる螺旋の向きが一般式
(I)の化合物の反対向きである光学活性化合物を少な
くとも1種含有することが好ましい。これにより、コレ
ステリック相内でのピッチが補償され、配向均一性が向
上する。また、コレステリック相での配向が向上すると
スメクティック相での配向も向上し、均一なスイッチン
グ特性と高いコントラストが得られる。
【0050】本発明によれば、上記強誘電性液晶組成物
を液晶層に含む強誘電性液晶素子も提供される。本発明
の強誘電性液晶素子は、電極及び配向制御膜をこの順で
備えた一対の絶縁性基板と、配向制御膜間に形成される
液晶層を少なくとも有する。絶縁性基板としては、当該
分野で通常使用されるものをいずれも使用でき、例えば
ガラス、プラスチック等が挙げられる。
【0051】絶縁性基板上の電極は、InO3 、SnO
2 、ITO(Indium−TinOxide)等の透
明電極、Al、Cu等の金属電極等からなり、CVD
(Chemical Vapor Depositio
n)法又はスパッタ法で、所定のパターンに形成され
る。電極の膜厚は50〜200nmが好ましい。電極上
には、配向制御膜が形成される。配向制御膜は、無機系
又は有機系の膜を使用することができる。無機系の配向
制御膜としては、酸化ケイ素等が挙げられる。その成膜
方法には公知の方法が使用できるが、例えば、斜め蒸着
法、回転蒸着法等を使用することができる。有機系の配
向制御膜としては、ナイロン、ポリビニルアルコール、
ポリイミド等が挙げられ、通常配向制御膜の表面はラビ
ングされる。また、高分子液晶、LB(Langmui
r Blodgett)膜を用いる場合には、磁場によ
り又はスペーサエッジ法により配向させてもよい。ま
た、SiO2 、SiNx等を蒸着法、スパッタ法、CV
D法等によって成膜し、その上をラビングすることによ
り配向させてもよい。配向制御膜の膜厚は10〜100
nmが好ましい。なお、具体的な配向方法は下記する。
【0052】ここで、電極と配向制御膜の間に、絶縁性
膜を介在させてもよい。絶縁性膜は、例えばSiO2
SiNx、Al2 3 、Ta2 5 等の無機系薄膜、ポ
リイミド、フォトレジスト樹脂、高分子液晶等の有機系
薄膜を使用することができる。絶縁性膜が無機系の場合
には蒸着法、スパッタ法、CVD法、溶液塗布法等によ
って形成できる。また、有機系の場合には、有機物質を
溶かした溶液又はその前駆体溶液を用いて、スピンナー
塗布法、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、ロール塗布法
等で塗布し、所定の硬化条件(加熱、光照射等)で硬化
させ形成する方法、又は蒸着法、スパッタ法、CVD
法、LB法等で形成することもできる。絶縁性膜の膜厚
は膜厚50〜200nmが好ましい。
【0053】上記電極、配向制御膜及び任意に絶縁性膜
が形成された絶縁性基板を、シール剤等を介して貼り合
わせ、配向制御膜間の空間に強誘電性液晶組成物を注入
して液晶層を形成することにより、強誘電性液晶素子が
得られる。なお、上記強誘電性液晶素子は、更に上記電
極に選択的に電圧を印加することによって液晶の光軸を
切り替える駆動手段と、前記光軸の切り替えを光学的に
識別する手段としての偏光板を備えてもよい。
【0054】本発明の強誘電性液晶素子の例を図1に示
す。図1中、1及び2は導電性膜からなる所定パターン
の電極3及び4を有する一対の透明な絶縁性基板(ガラ
ス基板)、5は絶縁性膜、6は配向制御膜、7はシール
剤、8は絶縁性基板1及び2間に介在させた液晶層、9
は偏光板を示す。なお、電極に選択的に電圧を印加する
ことによって液晶の光軸を切り替える駆動手段は図示し
ていない。
【0055】以上、図1においては画素数1のスイッチ
ング素子として説明したが、本発明の強誘電性液晶素子
は大容量マトリクスの表示装置に適用することができ
る。マトリクスの表示手段として、例えば、図2の平面
図に示すように、上下絶縁性基板1及び2の電極3及び
4をマトリクス状に組み合わせて用いる方法が挙げられ
る。図中、電極3と4の各交点が1画素に相当する。
【0056】図3は、図2の液晶素子におけるC1配向
とC2配向を説明するための図である。ここで、本発明
の強誘電性液晶素子を構成する配向制御膜の配向処理方
法としては、ラビング法が好ましい。ラビング法には、
主にパラレルラビング、アンチパラレルラビング、片ラ
ビング等の方法がある。パラレルラビングは上下配向制
御膜をラビングし、そのラビング方向が略平行なラビン
グ法である。アンチパラレルラビングは、上下配向制御
膜をラビングし、そのラビング方向が略反平行なラビン
グ法である。片ラビングは上下配向制御膜のうち、片側
の配向制御膜のみラビングする方法である。本発明にお
いて均一な配向を得る最も好ましい方法は、パラレルラ
ビングで処理されたセルと、INAC相系列を有する強
誘電性液晶を組み合わせる方法である。この場合、ネマ
ティック相において均一な配向が得られやすく、その状
態からスメクティックA相、カイラルスメクティックC
相への降温してゆけば層法線の方向の揃った配向が容易
に得られる。しかしながら、パラレルラビングの液晶素
子において、カイラルスメクティックC相において生じ
る配向状態は決して1つではない。全面的に均一になら
ない原因は2つある。
【0057】ひとつはスメクティック層の折れ曲がりに
関するものである。強誘電性液晶セルが折れ曲がった層
構造(シェブロン層構造)を示すことは良く知られてい
るが、図3に示すように2つの領域が存在しうる。神辺
等はこれらをプレティルトとの関係からC1、C2と名
付けている。もうひとつはユニフォーム(U)とツイス
ト(T)である。ユニフォームは消光位を示す配向、ツ
イストは消光位を示さない配向である。向殿等は、ハイ
プレティルト配向制御膜を用いたパラレルラビングの強
誘電性液晶セルにおいて、C1U(C1ユニフォー
ム)、C1T(C1ツイスト)、C2の3つの配向が得
られたことを報告している(Jpn.J.Appl.P
hys.,30,L1823(1991))。
【0058】本発明者等は更に詳細に検討した結果、配
向制御膜がパラレルラビング処理された強誘電性液晶セ
ルにおいてはC1U、C1T、C2U、C2Tの4つの
配向状態が存在することを確認した。図4にこれらの配
向状態の分子配向を示す。負の誘電異方性を有する強誘
電性液晶セルにおいて得られる4つの配向状態について
比較すると、C1U及びC1T配向はスイッチングしに
くいため駆動が困難であり、また、C1T配向では消光
位がないため、たとえスイッチングしても良好なコント
ラストが得られないことが判った。これに対してC2U
配向は良好なスイッチング特性及びコントラストを与え
ることが判った。また、C2T配向は電界無印加時には
消光性を示さないが、液晶材料が負の誘電異方性を有す
る場合、適度なバイアス電界の印加時にはユニフォーム
配向のように消光性を示すため、C2T配向でも良好な
スイチング特性及びコントラストが得られることを本発
明者等は見いだした。
【0059】C1、C2配向の出現性はプレティルトと
関係があるが、プレティルト角が0〜15°の範囲では
C2状態が発生しうる。プレティルト角が大きいときに
は、向殿等が報告しているように、C2状態は消光位を
示す1つの状態しかないが、これはむしろ好ましい。し
かし、プレティルト角の増加と共にC2配向よりC1配
向になりやすくなる傾向があるため、プレティルト角は
10°以下が好ましい。
【0060】次に、本発明では、上記強誘電性液晶素子
の駆動方法も提供される。以下、駆動方法について述べ
る。駆動方法としては、例えば、図5に示す駆動波形
(A)によるJOERS/Alvey駆動法や、図6に
示すような駆動波形(B)による駆動法が挙げられる。
これらの駆動法は部分書き換えができる駆動法であり、
2000×2000ライン等の大表示容量の強誘電性液
晶素子を駆動する好ましい方法である。
【0061】駆動波形(B)では、画素にかかる電圧波
形は(a)〜(d)で表されるが、書き換えないときの
波形(b)及び(d)の電圧が印加されたときのτが等
しく、透過光量がほぼ等しいため、フリッカのない良好
な表示が得られる。また、図7に示す駆動波形(C)を
一例とするmalvern駆動法(国際特許公開第WO
92/02925)は、図8に示すように、1タイムス
ロットの0V部分と1タイムスロットの0Vでないメイ
ンパルス部分を用いた駆動波形(A)によるJOERS
/Alvey駆動法に対して、メインパルス幅を任意の
長さに変えられるようにした駆動法である。この駆動法
は、電圧を印加するタイミングを電極間で重ねることが
でき、ラインアドレスタイムを小さくできるので好まし
い駆動法の一つである。
【0062】上述の駆動法をはじめとする、パルス幅τ
で極小値を示すτ−V特性を有する本発明の強誘電性液
晶材料の駆動法は以下のような点で特徴付けられる。本
発明の駆動法は、選択された走査電極上の画素へ、第1
パルス電圧V1に引き続いて第2パルス電圧V2、又は
第1パルス電圧−V1に引き続いて第2パルス電圧−V
2を印加することにより、強誘電性液晶分子を、電圧印
加前の安定状態によらず、印加電圧の極性により一方の
安定状態とする。次いで、同じ画素へ、第1パルス電圧
V3に引き続いて第2パルス電圧V4、又は第1パルス
電圧−V3に引き続いて第2パルス電圧−V4を印加す
れば、電圧印加前の強誘電性液晶分子の安定状態を保持
する駆動法である。更に、電圧V1〜V4は、下記式 0<V2<V4 V2−V1<V4−V3 を満足することを特徴の1つとする。
【0063】すなわち、選択期間最初の2タイムスロッ
トにおいて、書き換えに適用する波形よりも保持に適用
する電圧波形の方が、第2パルス電圧が高く、かつ、第
1パルスと第2パルスの電圧差が大きくなるように電圧
波形を設定する。例えば、このような電圧V1、V2、
V3、V4は図5の駆動波形(A)では、V1=Vd、
V2=Vs−Vd、V3=−Vd、V4=Vs+Vd 図6の駆動波形(B)では、V1=0、V2=Vs−V
d、V3=−Vd、V4=Vs+Vd 図7の駆動波形(C)では、V1=Vd、V2=Vs−
Vd、V3=−Vd、V4=Vs+Vdとなる。
【0064】液晶素子のτ−V特性において、パルス幅
τの極小値τmin を与える電圧Vmin は、駆動時印加さ
れる電圧の最大値に直接関係する。駆動に用いる駆動回
路の耐圧からVmin が60V以下、また、汎用のICド
ライバを使った駆動回路を用いるためにはVmin が35
V以下である強誘電性液晶組成物が必要となる。また、
パルス幅τが極小値を示すτ−V特性を有する強誘電性
液晶素子の駆動においては、例えばセルギャップや電極
形状のような素子構造を修飾する等の方法で、画素内に
駆動特性の異なる領域を任意に作ることによって、画素
内の特定の部分の書き換えに適用する波形を同じ画素内
の他の部分では保持に適用する波形として用いたり、画
素内の特定の部分の保持に適用する波形を同じ画素内の
他の部分では書き換えに適用する波形として用いること
が可能である。従って、階調表示を行うこともできる。
【0065】なお、本発明の説明においては、非常に好
ましい本発明の利用法の一例としてパラレルラビング、
C2配向、特性の駆動法等について述べたわけである
が、もちろん、本発明はこれに限定されるものではな
く、別のタイプの液晶表示、駆動法にも適用可能なのは
言うまでもない。次に、本発明のτmin を利用した液晶
表示素子への適用性について説明する。層構造をブック
シェルフ構造であると仮定した単純な系では、以下の式
が成り立つ{リキッドクリスタルズ 6、No.3、p
341(1989年)参照}。
【0066】
【数1】
【0067】(式中、Emin は極小値のパルス幅におけ
る電圧、Psは自発分極、ε0 は真空の誘電率、Δεは
誘電率異方性、θは傾き角を示す) この式から、実用的な電圧、例えばEmin を40V以下
にする場合は、θが20°、Δεが−2の液晶組成物
で、2μmのセルを使用した際には、自発分極は7nC
/cm2 以下でなければならない{フェロエレクトリク
ス 第122巻p63(1991年)参照}。実際の層
構造はシェブロン構造であるものが多いため、このまま
あてはめることはできないが、概算としては使うことが
できる。この式からわかることは、Psが小さいほど、
及び/又はΔεとθが大きいほど、Emin を低くできる
ことである。極小値のパルス幅(τmin )は、自発分極
の2乗に反比例する{フェロエレクトリクス 第122
巻 p63(1991年)参照}。つまり、τmin を短
くするには、自発分極Psを大きくする必要がある。上
記式と合わせて考えると、Emin を低く、例えば40V
以下にし、なおかつ、τmin を短くして高速駆動を行う
には、Δεが負の大きな値を持つ必要がある。逆に言え
ば、Δεが負の大きな値をもつ液晶組成物を用いれば、
Emin を低く設定しても、Psを大きくとり、τmin を
短くできることになるのである。本発明における、前記
化合物(II)及び化合物(III)は、負に大きなΔεを持
つ化合物である。従って、τmin を利用した液晶表示素
子への適用は極めて有効である。
【0068】以上、τmin を利用した液晶表示素子への
適用を中心に述べたが、本発明は、新規組成物による自
発分極Psの大きな温度依存性の発現と、それを利用し
た素子に関するものである。すなわち、これより明らか
なとおり、本発明の強誘電性液晶組成物は、τmin 又は
ACスタビライズ効果を利用した素子に適応するだけで
なく、通常のSSFLC素子にも利用できる。
【0069】
【実施例】以下に、実施例により本発明を更に詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。本実施例中の各々の物性値の測定は次の方法に
より行った。 相転移温度(℃):温度制御用ホットステージを付けた
偏光顕微鏡下の観察により決定した。融点は、示差走査
熱量分析(DSC)を用いて測定した。以下の実施例中
では、相転移温度(℃)は相を示す略記号の間に記載し
た。記号Cr、SX、SC、SA、N及びIsoはそれ
ぞれ結晶、高次のスメクティック相、スメクティックC
相、スメクティックA相、ネマティック相及び等方性液
体の各相を意味する。
【0070】自発分極(nC/cm2 ):配向処理を施
した電極間隔が1.5μmのセルに各組成物を注入し、
±15V、1kHzの矩形波を印加したときの電流応答
波形から、分極反転電流ピークを取り出し、その面積か
ら決定した。 τ−V特性、Vmin 、τmin :後述の方法で作成した強
誘電性液晶素子を用い、バイアス電圧を印加せずに、正
及び負の2つの単極性パルスを交互に印加し、偏光顕微
鏡下でのスイッチングドメイン観察により測定した。こ
の単極性パルスの波高値(V)を変化させて、各々の波
高値で、100%ドメインが反転するパルス幅(τ)を
求めることで、τ−V曲線を得、このτ−V曲線からそ
の極小値での波高値(Vmin )、パルス幅(τmin )を
得た。
【0071】強誘電性液晶組成物の作製を行う準備とし
て、まず以下に示すような非キラル組成物(非強誘電性
組成物)を作製した。 組成物(a)
【0072】
【化13】
【0073】この組成物の相転移温度は、Cr −31
℃ SX −10℃ SC 72.8℃ SA 85.
8℃ N 98.1℃ Isoであった。 組成物(b):
【0074】
【化14】
【0075】この組成物の相転移温度は、Cr 43℃
SC 126.0℃ N 154.4℃ Isoであ
った。 組成物(c):
【0076】
【化15】
【0077】この組成物の相転移温度は、Cr 29℃
SA 143.7℃ N 144.1℃ Isoであ
った。 組成物(d):
【0078】
【化16】
【0079】この組成物の相転移温度は、Cr −4℃
SC 86.5℃ SA 96.8℃ N 101.
8℃ Isoであった。 組成物(e): 組成物(a) 75重量% 組成物(b) 10重量% 組成物(c) 15重量% この組成物の相転移温度は、SC 74.5℃ SA
93.8℃ N 107.5℃ Isoであった。
【0080】また、各実施例においては、以下に示す方
法を用いて強誘電性液晶素子を得た。即ち、2枚のガラ
ス基板上に200nmのITOからなる透明電極を形成
した。この透明電極上に100nmのSiO2 からなる
絶縁膜を形成し、この絶縁膜上に配向制御膜を膜厚50
nmで塗布し、ラビング処理を施した。次に、この2枚
のガラス基板をラビング方向が平行になるようにセル厚
(間隙)1.5μmで貼り合わせた。次いで、この間隙
に各実施例で作製した強誘電性液晶組成物を注入した。
注入後、一旦液晶組成物が等方性液体に変化する温度に
セルを加熱し、その後1℃/分で室温まで冷却すること
により画素内全面に液晶分子の配向がC2である強誘電
性液晶素子を得た。
【0081】以下の実施例において、液晶組成物の成分
として用いた化合物は前記化合物番号をもって表示し
た。実施例1 前記化合物(I−1)と組成物(e)を以下の割合で混
合して、強誘電性液晶組成物(f)を調整した。 化合物(I−1) 10重量% 組成物(e) 90重量% 上記組成物(f)の相転移温は、SC 57℃ SA
94℃ N 103℃Iであった。また、自発分極Ps
の温度依存性を図9に示す。図より明らかなように、自
発分極Psは大きな温度依存性を示した。
【0082】実施例2 前記化合物(I−3)と組成物(e)を以下の割合で混
合して、強誘電性液晶組成物(g)を調整した。 化合物(I−3) 10重量% 組成物(e) 90重量% 上記組成物(g)の相転移温度は、SC 60℃ SA
93℃ N 103℃ Iであった。また、自発分極
Psの温度依存性を図10に示す。図より明らかなよう
に、自発分極Psは大きな温度依存性を示した。
【0083】実施例3 前記化合物(I−1)、(I−2)、(I−3)、(I
−4)と組成物(e)を以下の割合で混合して、強誘電
性液晶組成物(h)を調整した。 化合物(I−1) 2.5重量% 化合物(I−2) 2.5重量% 化合物(I−3) 2.5重量% 化合物(I−4) 2.5重量% 組成物(e) 90重量% 上記組成物(h)の相転移温度は、SC 59℃ SA
93℃ N 102℃ Iであった。また、自発分極
Psの温度依存性を図11に示す。図より明らかなよう
に、自発分極Psは大きな温度依存性を示した。
【0084】実施例4 前記化合物(I−1)、(I−2)、(I−3)、(I
−4)と組成物(e)を以下の割合で混合して、強誘電
性液晶組成物(i)を調整した。 化合物(I−1) 1.25重量% 化合物(I−2) 1.25重量% 化合物(I−3) 1.25重量% 化合物(I−4) 1.25重量% 組成物(e) 95重量% 上記組成物(i)の相転移温度は、SC 65℃ SA
93℃ N 104℃ Iであった。また、自発分極
Psの温度依存性を図12に示す。図より明らかなよう
に、自発分極Psは大きな温度依存性を示した。
【0085】実施例5 前記化合物(I−1)、(I−2)、(I−3)、(I
−4)と組成物(d)を以下の割合で混合して、強誘電
性液晶組成物(j)を調整した。 化合物(I−1) 1.25重量% 化合物(I−2) 1.25重量% 化合物(I−3) 1.25重量% 化合物(I−4) 1.25重量% 組成物(d) 95重量% 上記組成物(j)の相転移温度は、SC 81℃ SA
95℃ N 100℃ Iであった。また、自発分極
Psの温度依存性を図13に示す。図より明らかなよう
に、自発分極Psは大きな温度依存性を示した。
【0086】実施例6 前記化合物(I−1)、(I−2)、(I−3)、(I
−4)と組成物(a)(b)、(c)を以下の割合で混
合して、強誘電性液晶組成物(j)を調整した。 化合物(I−1) 1.25重量% 化合物(I−2) 1.25重量% 化合物(I−3) 1.25重量% 化合物(I−4) 1.25重量% 組成物(a) 57重量% 組成物(b) 19重量% 組成物(c) 19重量% 上記組成物(j)の相転移温度は、SC 73℃ SA
99℃ N 111℃ Iであった。また、自発分極
Psの温度依存性を図14に示す。図より明らかなよう
に、自発分極Psは大きな温度依存性を示した。
【0087】実施例7 メルク社製ネマティック液晶化合物PYP605に、同
じくメルク社製光学活性化合物R−811、S−811
を各々添加し、液晶組成物(l)、(m)を作製した。
R−811、S−811のコレステリックピッチの向き
はそれぞれR(+)、L(−)であることがわかってい
る。別にPYP605に化合物(I−1)、(I−3)
をそれぞれ添加して液晶組成物(n)、(o)を作製
し、上記組成物(l)、(m)を用いたコンタクト法に
より、化合物(I−1)、(I−3)のそれぞれのコレ
ステリックピッチの向きを測定した。その結果、化合物
(I−1)、(I−3)ともにL(−)であることがわ
かった。
【0088】実施例8 コレステリックピッチの向きがR(+)であることがわ
かっている光学活性化合物(C−1)
【0089】
【化17】
【0090】と前記化合物(I−1)と組成物(e)を
以下の割合で混合して、強誘電正液晶組成物(p)を調
合した。 化合物(C−1) 4重量% 化合物(I−1) 8重量% 組成物(e) 88重量% 上記組成物(p)の相転移温度は、SC 50℃ SA
90℃ N 98℃Iであった。また、自発分極Ps
の温度依存性を図15に示す。図より明らかなように、
自発分極psは大きな温依存性を示した。
【0091】実施例9 実施例4の液晶組成物(i)のτ−V特性を、温度を変
えて測定した。極小値でのパルス幅τmin の温度依存性
を図16に示す。図より明らかなとおり、後記比較例2
の液晶組成物(q)と比べて、τmin の温度依存性が小
さくなった。
【0092】比較例1 光学活性化合物(C−2)
【0093】
【化18】
【0094】と前記組成物(e)を以下の割合で混合し
て、強誘電性液晶組成物(q)を調整した。 化合物(C−2) 2.5重量% 組成物(e) 97.5重量% 上記組成物(q)の相転移温度は、SC 66℃ SA
92℃ N 104℃ Iであった。また、自発分極
Psの温度依存性を図17に示す。図より、上記液晶組
成物(q)の自発分極の温度依存性は、特に低温側で値
が飽和していき、小さくなっていることがわかる。
【0095】比較例2 比較例1の液晶組成物(q)のτ−V特性を、温度を変
えて測定した。極小値でのパルス幅τmin の温度依存性
を図16に示す。図より明らかなとおり、実施例9の液
晶組成物(i)と比べてτmin の温度が大きくなった。
以上の実施例、比較例が示すとおり、本発明により、自
発分極Psの温度依存性が大きく、応答速度の温度依存
性の小さい強誘電性液晶素子を得ることができる。
【0096】
【発明の効果】本発明により提供される強誘電性液晶組
成物は、その自発分極Psの温度依存性が大きな温度依
存性を示す。この組成物を利用した液晶素子はその応答
速度が小さな温度依存性を示し、実用時に広い温度マー
ジンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強誘電性液晶素子の概略断面図であ
る。
【図2】本発明の強誘電性液晶素子の電極構造の概略平
面図である。
【図3】強誘電性液晶素子の液晶層のC1配向とC2配
向の概略説明図である。
【図4】強誘電性液晶素子の液晶層の4つの配向状態の
概略説明図である。
【図5】本発明の強誘電性液晶素子の駆動法の波形の概
略図である。
【図6】本発明の強誘電性液晶素子の駆動法の波形の概
略図である。
【図7】本発明の強誘電性液晶素子の駆動法の波形の概
略図である。
【図8】本発明の強誘電性液晶素子の駆動法の波形の概
略図である。
【図9】実施例の強誘電性液晶組成物の自発分極Psの
温度依存性を示す図である。
【図10】実施例の強誘電性液晶組成物の自発分極Ps
の温度依存性を示す図である。
【図11】実施例の強誘電性液晶組成物の自発分極Ps
の温度依存性を示す図である。
【図12】実施例の強誘電性液晶組成物の自発分極Ps
の温度依存性を示す図である。
【図13】実施例の強誘電性液晶組成物の自発分極Ps
の温度依存性を示す図である。
【図14】実施例の強誘電性液晶組成物の自発分極Ps
の温度依存性を示す図である。
【図15】実施例の強誘電性液晶組成物の自発分極Ps
の温度依存性を示す図である。
【図16】実施例と比較例の強誘電性液晶素子のτmin
の温度依存性を示す図である。
【図17】比較例の強誘電性液晶組成物の自発分極Ps
の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
1、2 絶縁性基板 3、4 電極 5 絶縁性膜 6 配向制御膜 7 シール剤 8 液晶層 9 偏光板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡部 英二 千葉県市原市辰巳台東3丁目27番2 (72)発明者 春藤 龍士 千葉県市原市辰巳台東2丁目17番 (72)発明者 斉藤 伸一 千葉県市原市中288番31 (72)発明者 斉藤 秀雄 千葉県市原市飯沼195番地の6

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (式中、R1 は炭素数4〜16のアルキル基を、R2
    炭素数2〜12のアルキル基をそれぞれ示す)で表され
    る化合物を少なくとも1種と、下記の一般式(II) 【化2】 (式中、R3 及びR4 は炭素数1〜15のアルキル基又
    はアルコキシ基を示し、Aは 【化3】 を示す)かつ、一般式(III) 【化4】 (式中、R5 及びR6 は、炭素数1〜18のアルキル基
    又はアルコキシ基を示し、Xは、水素原子、1個又は2
    個のフッ素原子を示す)で表される化合物を少なくとも
    1種ずつ含有することを特徴とする強誘電性液晶組成
    物。
  2. 【請求項2】 一般式(I)の化合物が、組成物に30
    重量%以下の割合で含まれる請求項1記載の強誘電性液
    晶組成物。
  3. 【請求項3】 一般式(II)の化合物と一般式(III)の
    化合物が、40〜90:60〜10の重量比で組成物に
    含まれる請求項1又は2記載の強誘電性液晶組成物。
  4. 【請求項4】 更に光学活性化合物を少なくとも1種含
    有し、該光学活性化合物が、コレステリック相内で、一
    般式(I)の化合物と反対向きの螺旋を生じる化合物で
    ある請求項1〜3いずれか1つに記載の強誘電性液晶組
    成物。
  5. 【請求項5】 強誘電性液晶組成物が、高温側から等方
    性液体相、コレステリック相、スメクティックA相、カ
    イラルスメクティックC相の相転移系列を示す請求項1
    〜4のいずれか1つに記載の強誘電性液晶組成物。
  6. 【請求項6】 強誘電性液晶組成物が負の誘電率異方性
    Δεを示し、Δεの絶対値が2以上である請求項1〜5
    のいずれか1つに記載の強誘電性液晶組成物。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1つに記載の強
    誘電性液晶組成物を含むことを特徴とする強誘電性液晶
    素子。
  8. 【請求項8】 強誘電性液晶素子が、電極及び配向制御
    膜をこの順で備えた一対の絶縁性基板と、配向制御膜間
    に形成される液晶層を少なくとも有し、液晶層が強誘電
    性液晶組成物を含む請求項7記載の強誘電性液晶素子。
  9. 【請求項9】 液晶層が、スメクティック層構造を示
    し、該スメクティック層構造の折れ曲がり方向と、液晶
    分子のプレティルトの方向が、同一である請求項8記載
    の強誘電性液晶素子。
  10. 【請求項10】 液晶分子のプレティルト角が、10°
    以下である請求項9記載の強誘電性液晶素子。
  11. 【請求項11】 強誘電性液晶組成物が、コレステリッ
    ク相とカイラルスメクティックC相を示し、コレステリ
    ック相において、強誘電性液晶素子の液晶厚みの0.5
    倍以上のコレステリックピッチを有し、カイラルスメク
    ティックC相において、液晶層の厚さ以上のカイラルス
    メクティックCピッチを有する請求項7〜10のいずれ
    か1つに記載の強誘電性液晶素子。
  12. 【請求項12】 電極及び配向制御膜をこの順で備えた
    一対の絶縁性基板と、該一対の絶縁性基板間に備えられ
    た液晶層と、前記電極に選択的に電圧を印加することに
    よって液晶の光軸を切り換える駆動手段と、前記光軸の
    切換えを光学的に識別する手段とを有し、前記液晶層が
    請求項1〜7のいずれか1つに記載の少なくとも2つの
    安定状態を示す強誘電性液晶組成物からなり、前記電極
    が複数の走査電極と複数の信号電極からなり、走査電極
    と信号電極が互いに交差する方向に配列し、該走査電極
    と該信号電極とが交差した領域を画素とする強誘電性液
    晶素子を、任意に選択された画素へ第1パルス電圧V1
    に引き続いて第2パルス電圧V2、又は第1パルス電圧
    −V1に引き続いて、第2パルス電圧−V2を印加し
    て、前記選択された画素を構成する強誘電性液晶組成物
    中に含まれる強誘電性液晶分子を少なくとも2つの安定
    状態の内のある1つの安定状態とし、次いで、前記選択
    された画素へ第1パルス電圧V3に引き続いて第2パル
    ス電圧V4、又は第1パルス電圧−V3に引き続いて、
    第2パルス電圧−V4を印加して、前記強誘電性液晶分
    子の安定状態を保持することにより駆動すること(但
    し、電圧V1、V2、V3及びV4は、0<V2<V4
    及びV2−V1<V4−V3の関係を有する)を特徴と
    する強誘電性液晶表示素子の駆動方法。
  13. 【請求項13】 強誘電性液晶組成物が2つの安定状態
    を有し、一方の安定状態から他方の安定状態への書き換
    えが単極性パルスにより行われ、該単極性パルス印加時
    のパルス幅−パルス電圧特性が最小値を有し、該最小値
    が60V以下である請求項12記載の強誘電性液晶素子
    の駆動方法。
  14. 【請求項14】 最小値が、35V以下であることを特
    徴とする請求項13記載の強誘電性液晶素子の駆動方
    法。
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