JPH10228877A - 熱電界放出電子銃および熱電界放出電子銃用エミッタの製造方法 - Google Patents

熱電界放出電子銃および熱電界放出電子銃用エミッタの製造方法

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JPH10228877A
JPH10228877A JP2870797A JP2870797A JPH10228877A JP H10228877 A JPH10228877 A JP H10228877A JP 2870797 A JP2870797 A JP 2870797A JP 2870797 A JP2870797 A JP 2870797A JP H10228877 A JPH10228877 A JP H10228877A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い輝度で放出される電子ビームのエネルギ
分布の幅が狭く、また、長時間安定してエミッションを
行うことができる熱電界放出電子銃および熱電界放出電
子銃用エミッタの製造方法を実現する。 【解決手段】 エミッタ10の先端部には、層の厚みd
がほぼ0.01nm〜0.2nmである同心円板状の層
が、数〜数十層積み重ねられた積層電子放出面12が形
成される。積層電子放出面12は、一度形成されると、
エミッタ先端半径rがほぼ2μm〜4μmのため、熱電
界放出電子銃の寿命(通例、塗布されたZrOが消失す
るまでの期間、ほぼ5000時間以上)内で、消失する
ことはない。また、エミッタ先端部が積層構造になって
いるため、電界強度が緩和され、エミッタの放出電子密
度分布が、一様な放出電子密度分布となるため、電子間
相互作用が弱まり、エネルギ分布幅ΔEが小さくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走査電子顕微鏡等
の電子ビーム装置に用いられる熱電界放出電子銃および
熱電界放出電子銃用エミッタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、走査電子顕微鏡等の電子ビーム装
置では、高い輝度の熱電界放出電子銃が使用されてい
る。この電子銃では、タングステン等のエミッタを高温
に加熱すると共に、エミッタと引出電極との間に数kV
の引出電圧を印加するようにしている。
【0003】このような電子銃では、エミッタ先端での
電界強度を高め、輝度の高い熱電界放出電子をエミッタ
先端から放出させるために、先端の半径が小さなエミッ
タが使用されている。例えば、タングステン製エミッタ
では、0.4〜0.5μm程度の半径とされている。
【0004】図1はエミッタ先端の電界強度F[V/c
m]と、放出電子のエネルギ分布幅(エネルギ分布の半
値幅ΔE[eV])の関係を示している。この図から明
らかなように、電界強度Fを高めると、熱電界放出電子
のエネルギ分布幅(エネルギ分布の半値幅ΔE[e
V])が大きくなる。
【0005】このような現象のために、電界強度を高め
て輝度を増すと、走査電子顕微鏡等では、試料に照射さ
れる電子ビームの径が大きくなり、得られる像の分解能
が低下してしまう。
【0006】また、エミッタの先端の半径が小さいと、
エミッタ先端部に形成されるファセットの結晶面が小さ
くなり、そのため、エミッタ先端での原子が不安定とな
る。すなわち、エミッタ先端部での原子移動は、温度や
電界強度に依存するが、エミッタ先端の半径が小さいた
めに、原子が安定する条件幅が狭く、原子の移動により
エミッタ先端の形状が変動してしまう。そのため、熱電
界放出電子の放出条件が変動し、エミッション電流が不
安定となる。
【0007】ところで、最近、熱電界放出電子銃におい
て、先端部の半径が2μm以上のエミッタを使用した場
合、エミッタ先端半径rが大きいと、電界強度Fを小さ
くできることが確かめられている。この結果、図1から
明らかなように、電界強度Fが小さくできるので、この
電子銃では、熱電界放出電子のエネルギ分布幅を小さく
できる。したがって、このような先端半径の大きなエミ
ッタを使用することで、先端半径の小さなエミッタが有
する各問題が解決される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】図2に従来の熱電界放
出電子銃の、特にエミッタ先端形状を示す。図2におい
て、(a)はエミッタ1の先端部位を真横から見た図、
(b)はエミッタ先端部位を少し傾斜させて見た図であ
る。なお、このようなエミッタは、例えば、米国特許第
4,588,928号に開示されている。
【0009】図2(a)に示すように、タンズステン単
結晶針よりなるエミッタ1の先端部には、平坦な電子放
出面2が形成されている。この平坦電子放出面2の平坦
電子放出面半径bとエミッタ先端半径rとの比(b/
r)は、ほぼ0.3となる。この点については、文献Ap
plicstion of Surfaces Science 8(1981) 「RECENT PRO
GRESS IN THERMAL FIELD ELECTRON SOURCE PERFORMANC
E」に報告されている。
【0010】しかし、前記電子放出面2が形成されるの
は、前記した米国特許や文献に記載されている例のよう
に、エミッタの先端半径rがほぼ0.5μmの場合に、
エミッタ先端部位にほぼ2×107 (V/cm)〜3×
107 (V/cm)の電界がかけられているときであ
る。この条件において、エミッタから放出される電子ビ
ームのエネルギ分布の半値幅ΔE(eV)は、図1に示
すようにほぼ0.8eV〜1.0eVとなる。
【0011】図3は、エミッタ先端付近のエネルギ図で
ある。この図において、電子放出面をx軸に垂直な平面
と考え、x=0を金属の表面とする。なお、図中E
F は、フェルミレベル、φwは仕事関数、−Woは金属
中における電子の実効的なポテンシャルエネルギであ
る。
【0012】この金属表面(x=0)に電界が印加され
ると、その近傍にポテンシャル障壁V(x)が発生す
る。また、金属が加熱されると、ポテンシャル障壁の頂
上Vm以上のx方向成分のエネルギを有する金属自由電
子は、この頂上Vmを乗り越えて金属外に放出される。
このような現象はショットキーエミッションと呼ばれて
いる。
【0013】この際、印加される電界が十分に大きい
と、トンネル効果により金属内電子は、ポテンシャル障
壁V(x)を乗り越えることなく、直接障壁を透過して
金属外に脱出できる。この現象は、金属の温度が比較的
低くても起こり、温度が室温程度の比較的低い場合をコ
ールドエミッション、温度が例えば、1800K程度の
比較的高い場合をサーマルフィールド(TF)エミッシ
ョンと称している。
【0014】熱電界放出電子銃においては、前記した2
つの電子放出プロセスがあり、TFエミッションはその
2つのプロセスを混在させている。TFエミッション
は、エミッタ温度が、例えば、1800Kの場合、エミ
ッタ先端での電界強度が1.0×107 V/cm以上に
なると、その混在の絶対量が顕著になり、図1に示すよ
うに、電界強度Fが高くなるにしたがって、放出電子の
エネルギ分布幅(エネルギ分布の半値幅ΔE)も高くな
る。
【0015】さて、公知である電子顕微鏡の一つの性能
を示す色収差による電子ビームのプローブ系dC は、 dC =CC α(ΔE/V) で表される。ここで、CC は最終段レンズの色収差係
数、αは電子の試料面への入射角、Vは電子の平均エネ
ルギを示す。この式から、ΔEが大きくなると、色収差
による電子プローブ系dC が大きくなり、電子顕微鏡の
分解能を劣化させてしまう。
【0016】このように、従来の平坦電子放出面2を持
ち、エミッタ半径がほぼ0.5μmであるエミッタで
は、エミッタから放出される電子ビームのエネルギ分布
の半値幅ΔEが大きく、電子顕微鏡の分解能が悪かっ
た。また、このようなエミッタでは、図7のAに示すよ
うに電子ビームの電流密度分布が放出電子密度のように
平坦電子放出面半径近傍において、電界強度が増すた
め、高くなってしまい、電子間相互作用が高まり、ΔE
が更に拡がってしまうという問題点があった。
【0017】上記した問題点を解決するために、エミッ
タの先端部温度、および、先端近傍の電界強度を上述し
た条件値(ほぼ1800K、ほぼ2×107 (V/c
m)〜3×107 (V/cm))から外すと(例えば、
前記ΔEを下げるために、電界強度を更に下げる)、エ
ミッタ先端部上にある、平坦電子放出面を形成している
公知のZrO/W(100)複合体が、崩れだし、平坦
電子放出面が小さくなり、やがては消滅してしまう。そ
の過程においては、エミッタから放出される電子ビーム
が安定せず、次第にエミッション量が小さくなり、最後
には、エミッションしなくなるという問題点があった。
【0018】本発明は、このような点に鑑みてなされた
もので、その目的は、高い輝度で放出される電子ビーム
のエネルギ分布の幅が狭く、また、長時間安定してエミ
ッションを行うことができる熱電界放出電子銃および熱
電界放出電子銃用エミッタの製造方法を実現するにあ
る。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明に実施の形態を説
明する前に、まず、本発明に至った過程と原理について
説明する。熱電界放出電子銃において、先端部の半径が
ほぼ2μm〜4μmの範囲のエミッタを使用して、エミ
ッタ先端近傍での電界強度をほぼ4×106 (V/c
m)〜6×106 (V/cm)の範囲とすることで、電
子放出のプロセスがポテンシャル障壁V(x)を乗り越
えて放出するプロセスとなるショットキーエミッション
となる。
【0020】この結果、図1に示すように、熱電界放出
電子のエネルギ分布幅を小さくすることができる。な
お、図3に示すように、仕事関数φwが小さくなれば、
フェルミレベルEF が上昇し、ポテンシャル障壁V
(x)を乗り越えやすくなるので、例えば、エミッタの
先端をZrO2 によって表面処理し、Zr/O/W(1
00)複合体を形成することにより、W(100)方位
の仕事関数を低めることができる。そのため、エミッタ
先端の半径を前記のごとく2.0μm以上にしても、十
分なエミッション量を得ることができる。
【0021】また、エミッタ形状は、エミッタ温度とエ
ミッタ先端での電界強度とにより変化する。このエミッ
タ形状の変化は、エミッタ先端の半径をr(cm)、時
間をtとすると、エミッタ先端の鈍化率(dr/dt)
で表される。この鈍化率は、次の式により表される。
【0022】 dr/dt={1−(rF2 /8πγ)(dr/dt)O } …(1) 上式において、Fはエミッタ先端での電界強度[V/c
m]、γは表面張力[dyne/cm]で、(dr/d
t)O は、電界のない場合、すなわち、エミッタ温度T
のみでのエミッタの鈍化率であり、これは、次のように
表される。
【0023】 (dr/dt)O =1.25γΩO O αexp(−Ed/kT) ×(AO k・Tr3 -1 …(2) 上式で、ΩO は原子の体積[cm3]、AO は原子の表
面積[cm2 ]、DOは拡散度[cm2 /sec]、E
dは表面拡散活性化エネルギ[eV]、αはエミッタの
コーン角[rad]である。
【0024】上記した(1)式より、鈍化率(dr/d
t)の符号は、1−(γF2 /8πr)により定まるこ
とがわかる。すなわち、エミッタ先端での電界強度Fの
値により、鈍化率(dr/dt)の符号は、次のように
分類される。
【0025】 F<(8πγ)1/2 の時、(dr/dt)>0 … 条件(a) F=(8πγ)1/2 の時、(dr/dt)=0 … 条件(b) F>(8πγ)1/2 の時、(dr/dt)<0 … 条件(c) 上記条件(a)の場合は、鈍化率(dr/dt)が正
で、エミッタ先端半径は次第に大きくなり、エミッタ形
状が変化していき、エミッションが不安定となる。条件
(b)の場合は、表面拡散力と静電力とが釣り合ってい
る状態で、鈍化率(dr/dt)は0となり、計算上で
はエミッタ形状は変化しない。しかし、エミッタ先端で
の電界強度は非一様なために、この状態を維持するのは
極めて困難であり、実際にはエミッタ形状が変化する。
【0026】上記条件(c)の場合は、鈍化率(dr/
dt)が負で、計算上ではエミッタ形状は細くなる。し
かし、実際には、鈍化率(dr/dt)が負であっても
0に近いときに、フィールドビルトアップ(Field Buil
dup )と呼ばれる複雑な工程が発生し、エミッタ表面に
多面体が生じ、エミッタ先端に形状の安定したファセッ
トが形成される。すなわち、前記した条件(a)および
(b)の場合には、エミッタ形状が不安定となり、条件
(c)の場合には安定となる。これらのことから、エミ
ッションは、条件(c)において、エミッタ先端での電
界強度Fが条件(b)の場合の電界強度より少し大きい
場合に安定することがわかる。
【0027】この条件は、従来の熱電界放出電子銃にお
いては、エミッタ半径rが、ほぼ0.5μmの場合、エ
ミッタ先端部の電界強度をほぼ2×107 (V/cm)
〜3×107 (V/cm)に、エミッタ先端部の温度を
ほぼ1800Kにすることで得られる。この場合に、エ
ミッタ先端部には、前記平坦電子放出面が形成される
が、上述した問題点が残るのである。
【0028】本発明では、前記ΔEをほぼ0.5eVと
するために、エミッタ先端近傍の電界強度Fをほぼ4×
106 (V/cm)〜6×106 (V/cm)にするた
めに、エミッタ先端半径rをほぼ2.0μm〜4μmと
したものである。これは、前記した条件(b)の(dr
/dt)=0となる場合の電界強度条件式 FO =(8πγ)1/2 ≠8.1×104 -1/2 [V/
cm] から、r=2.0μmの時、FO =5.7×106 (V
/cm)、r=4.0μmの時、FO =4.05×10
6 (V/cm)となることから見積もった。
【0029】エミッタ先端近傍の電界強度が、ほぼ4×
106 (V/cm)より小さくなると、エミッション量
が電子顕微鏡に供するには小さくなってしまい、このこ
とから、エミッションが安定し、かつ、ΔEをほぼ0.
5eVにするエミッタ先端半径の大きさは、最大r=
4.0μmくらいが限度である。
【0030】また、r=4.0μm以上では、電子光源
の大きさが大きくなってしまい、かえって電子プローブ
径を大きくしてしまう。更に、従来のエミッタ半径rが
ほぼ0.5μmのエミッタでは、エミッタ先端部の安定
条件(c)を少しでも外れると、式(1)による(dr
/dt)が大きいため、エミッタ先端での形状が崩れだ
し、すぐに、エミッションがなくなってしまう。しか
し、エミッタ半径がほぼ2μm〜4μmでは、条件
(c)から外れても、drが極めて小さいため、エミッ
タ先端部位が崩れることはなく、エミッションも安定す
る。
【0031】すなわち、本発明によるエミッタは、従来
の熱電界放出電子銃のように、電子ビームを安定化させ
る条件(c)を満足するような、ほぼ2×107 (V/
cm)〜3×107 (V/cm)の電界強度をエミッタ
先端部にかけ、平坦電子放出面を形成する必要はなく、
ΔEを下げるために、むしろ、条件(a)となるような
電界強度を与える。
【0032】すなわち、従来の熱電界放出電子銃による
電子放出システムの設計に用いられる条件(c)を満足
するようなエミッタ先端径rに見合う電界強度をかけ
て、平坦電子放出面を形成するのではなく、本発明で
は、エミッタ半径rをほぼ2μm〜4μmにし、条件
(a)を満足するようなエミッタ半径rに見合う電界強
度をかけ、ΔEを低め、かつ、電子ビームの安定度を得
るようにしている。
【0033】したがって、請求項1の発明に基づく熱電
界放出電子銃は、エミッタと引出電極とを備えており、
エミッタを加熱すると共に、エミッタと引出電極との間
に引出電圧を印加するようにした熱電界放出電子銃にお
いて、エミッタ先端部の半径をほぼ2μm〜4μmと
し、エミッタの先端部に数層から数十層の積層電子放出
面を設けたことを特徴としている。
【0034】請求項1の発明では、エミッタ先端部の半
径をほぼ2μm〜4μmとし、エミッタの先端部に数層
から数十層の積層電子放出面を設けた。請求項2の発明
は、請求項1記載の熱電界放出電子銃において、数層か
ら数十層の積層電子放出面により、エミッタ先端部の形
状をほぼ球状としたことを特徴としている。
【0035】請求項3の発明は、請求項1記載の熱電界
放出電子銃において、積層電子放出面の近傍の電界強度
が、ほぼ4×106 (V/cm)〜6×106 (V/c
m)の範囲となるように、引出電圧を設定したことを特
徴としてる。
【0036】請求項4の発明は、請求項1記載の熱電界
放出電子銃において、放出される電子ビームのエネルギ
幅をほぼ0.5eV以下としたことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項3記載の熱電界放出電子銃に
おいて、エミッタの温度をほぼ1800Kとしたことを
特徴としている。
【0037】請求項6の発明は、請求項1記載の熱電界
放出電子銃において、エミッタ先端部の半径rと、エミ
ッタ先端に形成された積層電子放出面の積層電子放出面
最外郭半径aとの比(a/r)をほぼ0.4としたこと
を特徴としている。
【0038】請求項7に基づく発明は、エミッタと引出
電極とを備えており、エミッタを加熱すると共に、エミ
ッタと引出電極との間に引出電圧を印加するようにした
熱電界放出電子銃用のエミッタの製造方法において、真
空中においてエミッタをほぼ1800Kに加熱しつつ、
エミッタ先端部の電界強度をほぼ4×106 (V/c
m)〜6×106 (V/cm)の範囲に維持し、エミッ
タ先端部に数層から数十層からなる積層電子放出面を形
成させるようにしたことを特徴としている。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を詳細に説明する。図4は本発明に基づく熱電
界放出電子銃の基本構成を示している。図中10はエミ
ッタであり、エミッタ10はタングステン単結晶の先端
をZrO2 によって表面処理をして形成されており、Z
r/O/W(100)複合体とされている。このエミッ
タ10は、図示していないが、タングステン製のフィラ
メントにスポット溶接等により取り付けられている。こ
のフィラメントに加熱電流を供給することにより、フィ
ラメントを加熱し、その結果、間接的にエミッタ10を
加熱するように構成されている。
【0040】このエミッタ10に接近して引出電極11
が配置され、エミッタ10と引出電極11との間には、
図示していない引出電圧電源から所望の引出電圧が印加
される。この引出電圧の印加により、エミッタ10先端
部の電子放出面12から電子が放出される。放出された
電子は、引出電極11の先に設けられた接地電位のアノ
ード(図示せず)によって加速される。なお、エミッタ
10とアノードとの間には、加速電圧が印加される。
【0041】このエミッタ10の形状の詳細を図5に示
す。図5(a)はエミッタ10の先端部位を真横から見
た図、図5(b)はエミッタ先端部を少し傾斜させて見
た図である。
【0042】このエミッタ10は、次の工程によって製
作される。まず、エミッタ半径rをほぼ2μm〜4μm
にし、真空中にて、前記した条件(a)を満足するよう
なエミッタ先端半径rに見合う電界強度(ほぼ4×10
6 (V/cm)〜6×106(V/cm))をかける。
そして、エミッタ先端部温度をほぼ1800Kとして、
電子放出をほぼ24時間続ける。
【0043】このような製作工程により、エミッタ10
の先端部には、結晶成長とエミッタ先端部位の表面張力
と電界による吸引力との釣り合いから、層の厚みdがほ
ぼ0.01nm〜0.2nmである(100)方位に垂
直な半径の異なる同心円板状の層が、数〜数十層積み重
ねられた積層電子放出面12が形成される。この積層電
子放出面12の拡大図を図6に示す。
【0044】数〜数十層からなる積層電子放出面12
は、一度形成されると、エミッタ先端半径rがほぼ2μ
m〜4μmのため、(dr/dt)が極めて小さく、熱
電界放出電子銃の寿命(通例、塗布されたZrOが消失
するまでの期間、ほぼ5000時間以上)内で、消失す
ることはない。
【0045】また、エミッタ10の先端に、積層電子放
出面12を形成すると、エミッタ先端部が従来の平坦電
子放出面ではなく、積層構造になっているため、電界強
度が緩和され、エミッタの放出電子密度分布が、一様な
放出電子密度分布となるため、電子間相互作用が弱ま
り、エネルギ分布幅ΔEが更に小さくなる。
【0046】この様子を図7に示す。図7の横軸は電子
の放出角(rad)であり、縦軸は放出電子密度であ
る。この図7のAの分布は従来の平坦電子放出面による
もの、Bの分布は本発明の積層構造の電子放出面による
ものである。
【0047】また、エミッタの先端半径rと、エミッタ
の先端に形成された積層電子放出面の積層電子放出面最
外郭半径aとの比(a/r)は、従来の熱電界放出電子
銃における、エミッタ先端半径rと平坦電子放出面の平
坦電子放出面半径bとの比(b/r)がほぼ0.3であ
るのに対し、ほぼ0.4となる。なお、このメカニズム
は不明だが、実験的にほぼ0.4となり、本発明による
エミッタの特徴である。また、エミッタ10の先端部1
4は、積層電子放出面12を含め、全体として球状に形
成される。
【0048】以上本発明を説明したが、本発明は上記実
施の形態に限定されない。例えば、エミッタの材料はタ
ングステンに限定されず、他の材料からなるエミッタで
も使用することができる。
【0049】
【発明の効果】請求項1の発明では、エミッタ先端部の
半径をほぼ2μm〜4μmとし、エミッタの先端部に数
層から数十層の積層電子放出面を設けた。その結果、放
出される電子ビームのエネルギ分布幅を著しく小さくす
ることができる。また、一様な放出電子密度の電子ビー
ムを得ることができると共に、長時間安定なエミッショ
ンを維持させることができる。
【0050】更に、積層電子放出面を形成することによ
り、エミッタ先端部にかかる電界強度が緩和されるた
め、積層電子放出面が崩れにくくなり、エミッションノ
イズを極めて小さくすることができる。そして、このよ
うな電子銃を電子顕微鏡に用いると、電子レンズによる
色収差を小さくできるので、電子顕微鏡の分解能を向上
させることができる。
【0051】請求項2の発明は、請求項1記載の熱電界
放出電子銃において、数層から数十層の積層電子放出面
により、エミッタ先端部の形状をほぼ球状としたことを
特徴としている。したがって、電子放出方向が球を中心
とする放射状に近付き、仮想光源を小さくすることがで
きる。
【0052】請求項3の発明は、請求項1記載の熱電界
放出電子銃において、積層電子放出面の近傍の電界強度
が、ほぼ4×106 (V/cm)〜6×106 (V/c
m)の範囲となるように、引出電圧を設定したことを特
徴としており、請求項1と同様な効果が達成される。
【0053】請求項4の発明は、請求項1記載の熱電界
放出電子銃において、放出される電子ビームのエネルギ
幅をほぼ0.5eV以下としており、電子ビームのエネ
ルギ分布幅を著しく小さくすることができる。
【0054】請求項5の発明は、請求項3記載の熱電界
放出電子銃において、エミッタの温度をほぼ1800K
としたことを特徴としており、請求項1と同様な効果が
達成される。
【0055】請求項6の発明は、請求項1記載の熱電界
放出電子銃において、エミッタ先端部の半径rと、エミ
ッタ先端に形成された積層電子放出面の積層電子放出面
最外郭半径aとの比(a/r)をほぼ0.4としてお
り、請求項1と同様な効果が達成される。
【0056】請求項7に基づく発明は、エミッタと引出
電極とを備えており、エミッタを加熱すると共に、エミ
ッタと引出電極との間に引出電圧を印加するようにした
熱電界放出電子銃用のエミッタの製造方法において、真
空中においてエミッタをほぼ1800Kに加熱しつつ、
エミッタ先端部の電界強度をほぼ4×106 (V/c
m)〜6×106 (V/cm)の範囲に維持し、エミッ
タ先端部に数層から数十層からなる積層電子放出面を形
成させるようにしたことを特徴としている。したがっ
て、このような製造方法に基づいて作成されたエミッタ
を用いる電子銃は、請求項1と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エミッタ先端の電界強度と放出電子のエネルギ
分布幅との関係を示す図である。
【図2】従来のエミッタの先端形状を示す図である。
【図3】エミッタ先端付近のエネルギ図である。
【図4】本発明に基づく熱電界放出電子銃の基本構成を
示す図である。
【図5】本発明に基づくエミッタの先端形状を示す図で
ある。
【図6】積層電子放出面の拡大図である。
【図7】エミッタの放出電子密度分布を示す図である。
【符号の説明】
10 エミッタ 11 引出電極 12 積層電子放出面

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エミッタと引出電極とを備えており、エ
    ミッタを加熱すると共に、エミッタと引出電極との間に
    引出電圧を印加するようにした熱電界放出電子銃におい
    て、エミッタ先端部の半径をほぼ2μm〜4μmとし、
    エミッタの先端部に数層から数十層の積層電子放出面を
    設けたことを特徴とする熱電界放出電子銃。
  2. 【請求項2】 数層から数十層の積層電子放出面によ
    り、エミッタ先端部の形状をほぼ球状とした請求項1記
    載の熱電界放出電子銃。
  3. 【請求項3】 積層電子放出面の近傍の電界強度が、ほ
    ぼ4×106 (V/cm)〜6×106 (V/cm)の
    範囲となるように、引出電圧を設定した請求項1記載の
    熱電界放出電子銃。
  4. 【請求項4】 放出される電子ビームのエネルギ幅がほ
    ぼ0.5eV以下である請求項1記載の熱電界放出電子
    銃。
  5. 【請求項5】 エミッタの温度をほぼ1800Kとした
    請求項3記載の熱電界放出電子銃。
  6. 【請求項6】 エミッタ先端部の半径rと、エミッタ先
    端に形成された積層電子放出面の積層電子放出面最外郭
    半径aとの比(a/r)をほぼ0.4とした請求項1記
    載の熱電界放出電子銃。
  7. 【請求項7】 エミッタと引出電極とを備えており、エ
    ミッタを加熱すると共に、エミッタと引出電極との間に
    引出電圧を印加するようにした熱電界放出電子銃用のエ
    ミッタの製造方法において、真空中においてエミッタを
    ほぼ1800Kに加熱しつつ、エミッタ先端部の電界強
    度をほぼ4×106 (V/cm)〜6×106 (V/c
    m)の範囲に維持し、エミッタ先端部に数層から数十層
    からなる積層電子放出面を形成させるようにした熱電界
    放出電子銃用のエミッタの製造方法。
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