JPH10223913A - 薄膜半導体装置の製造方法 - Google Patents

薄膜半導体装置の製造方法

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JPH10223913A
JPH10223913A JP10065894A JP6589498A JPH10223913A JP H10223913 A JPH10223913 A JP H10223913A JP 10065894 A JP10065894 A JP 10065894A JP 6589498 A JP6589498 A JP 6589498A JP H10223913 A JPH10223913 A JP H10223913A
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silicon film
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光敏 宮坂
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好なトランジスタ特性を有する薄膜半導体
装置の製造方法を提供する。 【解決手段】 チャネルの厚さが500オングストロー
ム以下でありゲート絶縁膜が2層からなり、チャネルに
近いゲート絶縁膜の屈折率が電極に近いゲート絶縁膜の
屈折率よりも大きいことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクティブマトリックス
液晶ディスプレイ等に応用される薄膜トランジスタや三
次元LSIデバイスなど、絶縁性物質上に作成される薄
膜半導体装置と、その製造方法及びシリコン膜に関する
もので有り、詳しくは製造工程の最高温度が600℃程
度以下の低温プロセスで形成する薄膜半導体装置の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶ディスプレイの大画面化、高
解像度化に伴い、その駆動方式は単純マトリックス方式
からアクティブマトリックス方式へ移行し、大容量の情
報を表示出来るように成りつつ有る。アクティブマトリ
ックス方式は数十万を越える画素を有する液晶ディスプ
レイが可能で有り、各画素毎にスイッチングトランジス
タを形成するもので有る。各種液晶ディスプレイの基板
としては、透過型ディスプレイを可能ならしめる溶融石
英板やガラスなどの透明絶縁基板が使用されている。
【0003】しかしながら、表示画面の拡大化や低価格
化を進める場合には絶縁基板として安価な通常ガラスを
使用するのが必要不可欠で有る。従って、この経済性を
維持して尚、アクティブマトリックス方式の液晶ディス
プレイを動作させる薄膜トランジスタを安価なガラス基
板上に安定した性能で形成する事が可能な技術が望まれ
ていた。
【0004】薄膜トランジスタのチャンネル部半導体層
としては、通常アモルファス・シリコンや多結晶シリコ
ンが用いられているが、駆動回路迄一体化して薄膜トラ
ンジスタで形成しようとする場合には動作速度の速い多
結晶シリコンが有利である。
【0005】従来この様な薄膜トランジスタを作成する
場合、チャンネル部シリコン層を形成した後、ゲート絶
縁層を形成するには基板を酸素(O)、笑気ガス(N
O)、水蒸気(HO)などを含む酸化性雰囲気下に
挿入し、その温度を800℃から1100℃程度の高温
としてチャンネル部シリコン層の一部を酸化し、ゲート
絶縁層を形成する熱酸化法が用いられていた。一方、多
結晶シリコンを用いた薄膜半導体装置を安価な通常ガラ
ス基板の使用に耐え得る600℃程度以下の工程最高温
度で作成するのに種々の方法が試みられている。例え
ば、チャンネル部半導体層を減圧気相化学堆積法(LP
CVD法)で形成した後、ゲート絶縁膜を電子サイクロ
トロン共鳴プラズマCVD法(ECR−PECVD法)
に依り形成し、更に水素プラズマ照射などの水素化処理
を施す方法。或いはチャンネル部半導体層にアモルファ
ス・シリコン薄膜を堆積し、その後600℃、24時間
程度の熱処理を施し、次に常圧気相化学堆積法(APC
VD法)にてゲート絶縁膜を形成し、水素化処理を行う
方法などが有る。(Japanese J, App
l,Phys,30L 84 ’91)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先に述
べた従来の方法に於いては、数多くの問題が指摘されて
いる。まず第一に熱酸化法に依るSiO膜の形成で
は、その形成に少なくとも800℃以上の高温熱処理が
伴う為、酸化膜より下部に位置する薄膜層や基板などの
耐熱性が問題となる。例えば大面積液晶ディスプレイの
スイッチング・トランジスタを作成する場合、基板とし
ては非常に高価な溶融石英板以外はこの様な高温に耐え
得ない。又、三次元LSI素子に於いても下層部トラン
ジスタが高温で劣化する為、この熱酸化法は事実上使用
不可能となっている。
【0007】次にチャンネル部半導体層をLPCVD法
で形成し、ゲート絶縁膜をECR−PECVD法に依り
形成し、更に水素プラズマ処理を行う方法に於いては移
動度が4〜5cm2 /V.secと低く、薄膜半導体装置
として未だ不十分で有る。加えて薄膜半導体装置の特性
を向上させる為に行われている水素化処理に依り、薄膜
半導体装置を構成する各種薄膜の一部がエッチングされ
て沢山有る薄膜半導体装置の幾つかが破壊されて仕舞う
と言った問題が有る。又、チャンネル部半導体層にアモ
ルファス・シリコン薄膜を堆積し、その後600℃程度
の熱処理を施し、APCVD法にてゲート絶縁膜を形成
し、更に水素プラズマ照射等の水素化処理を行う方法に
於いては、界面捕獲準位が1012程度と大きく、又デプ
レッション型の半導体装置特性を示すなど、薄膜半導体
装置として未だ不十分で有る。又、先と同様矢張水素化
処理に伴う問題が残り、大面積に均一に且つ安定的に薄
膜半導体装置を作成する事が出来なかった。
【0008】従って、薄膜半導体装置としては移動度が
大きく、同時に清浄MOS界面を有して界面捕獲準位が
低く、且つデプレッションを呈さぬ物が求められて居
り、しかもこうした薄膜半導体装置を作成する工程で水
素化処理の必要が無く、先述の如き良好な薄膜半導体装
置を大面積に均一且つ安定的に作成する製造方法が求め
られていた。
【0009】本発明は上記の事情に鑑みてなされた物
で、その目的とする所はMIS型薄膜半導体装置に於い
て、工程最高温度が600℃程度以下と言う低温工程で
良好な半導体装置特性を有する薄膜半導体装置と、この
様な薄膜半導体装置を大面積に渡り均一且つ安定的に製
造する方法を提供する事に有る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的は、少なくとも
表面が絶縁性物質で有る基板の一方面上にチャンネル部
シリコン膜半導体層を形成し、該半導体層上にゲート絶
縁層、ゲート電極を形成したMIS型電界効果トランジ
スタを構成する薄膜半導体装置に於いて、チャンネル部
シリコン膜半導体層を構成するシリコン膜を堆積した
後、600℃以下の温度で熱処理する工程と、ゲート絶
縁膜をECR−PECVD法で形成する工程を含む様な
製造方法、或いはチャンネル部シリコン膜半導体層を構
成するアモルファス・シリコン膜を堆積した後、ゲート
絶縁層を形成する前に該アモルファス・シリコン膜上に
酸素プラズマを照射し、その後600℃以下の温度で熱
処理する様な工程を含む製造方法に依り達成される。
【0011】
【実施例】
(実施例1)以下本発明の実施例を図面を用いて詳述す
るが、本発明が以下の実施例に限定されるものでは無
い。
【0012】図1(a)〜(e)は本実施例1に於ける
自己非整合型スタガード構造のMIS型電界効果トラン
ジスタを構成するシリコン薄膜半導体装置の製造工程を
断面で示した図で有る。
【0013】本実施例1では、下地基板101として2
35mm□の溶融石英ガラスを用いたが、600℃の工程
最高温度に耐え得る基板又は下地物質で有るならば、そ
の種類や大きさは無論問われない。例えば通常ガラス基
板の他にシリコンウェハーなどの半導体基板及びそれら
を加工したLSI、三次元LSIや、或いはシリコン・
カーバイト、アルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミ
ックス基板なども下地基板として可能で有る。
【0014】まずアセトン又はメチル・エチル・ケト
ン,メチル・イソ・ブチル・ケトンやシクロヘキサノン
などの有機溶剤中に下地基板101を浸し、超音波洗浄
を行う。洗浄後窒素中又は減圧下にて乾燥を施し、更に
エタノールによる超音波洗浄を行った後窒素バブリング
されている純水にて水洗を施す。次に下地基板101を
沸騰している濃度60%の硝酸中に5分間浸し、更に窒
素バブリングされている純水中で洗浄した。基板として
金属など酸に依り腐食されたり、変質して仕舞う物質を
用いる場合、この硝酸に依る洗浄は必要とされない。又
この強酸に依る洗浄では酸として硝酸の他に硫酸なども
可能で有る。
【0015】こうして洗浄された石英基板上に常圧気相
化学堆積法(APCVD法)で下地保護膜となる二酸化
硅素膜(SiO 膜)102を2000Å堆積した。
この下地SiO2 膜102は前述の如き種々多様な物質
を基板として用いる際、後に堆積されるシリコン薄膜の
膜質、及びそれを用いて構成される薄膜トランジスタの
性能を安定化する為に必要で有る。と同時に、例えば基
板101として通常ガラスを用いた場合、ガラス中に含
まれているナトリウムなどの可動イオンが、又基板10
1として各種セラミック板を用いた際には基板中に添加
されている焼結助材原料などがトランジスタ部に拡散混
入するのを防ぐ役割をも演じている。又金属板を基板1
01として用いる場合は、絶縁性を確保する為に下地S
iOは必要不可欠で有る。又、三次元LSI素子で
は、トランジスタ間や配線間の層間絶縁膜に相当してい
る。下地SiO 膜102堆積時の基板温度は300
℃で、窒素に依り20%に希釈されたシラン600SCCM
を840SCCMの酸素と共にAPCVD法で堆積した。こ
の時のSiO膜の堆積速度は3.9Å/secで有っ
た。
【0016】続いてドナー又はアクセプターとなる不純
物を含んだシリコン薄膜103を減圧CVD法にて堆積
した。本実施例1ではn型トランジスタ作成を目指し不
純物としてリンを選んだが、n型ならばリン以外に5
族、6族の元素、P型ならばボロンを始めとして2族、
3族の元素が不純物元素として添加され得る。この不純
物を含んだシリコン薄膜103はいずれソース・ドレイ
ン領域となる部位で、本実施例1の如く不純物をCVD
法で添加する方法の他、まず最初に不純物を含まない真
性シリコン膜を形成して居き、後に気相或いは真性シリ
コン膜に接する固相より不純物を拡散させて添加する方
法や、不純物をイオン化して真性シリコン膜に打ち込む
方法などが有る。これら、真性シリコン膜を形成した後
拡散法やイオン打ち込み法で不純物を添加する手法を用
いると真性シリコン膜の所望の部位のみに不純物を添加
する事が可能となり、これにより例えばトランジスタの
ゲート電極端ととソース端又はドレイン端が自己整合し
たセルフ・アライン・トランジスタが可能となったり、
不純物添加濃度を各部位で変える事に依りシリコン膜中
の電流密度や比抵抗を変えて所望の部位のみに電流を流
す事などが可能となる。
【0017】本実施例1では不純物としてリンを選んだ
為、ホスフィン(PH )とシランを混合したガスを
用いて、不純物を含んだシリコン薄膜103を1500
Å堆積した。
【0018】本実施例1では184.5lの容積を有す
る減圧CVD炉内にモノシランを200SCCM、ヘリウム
が99.5%でホスフィンが0.5%のヘリウム・ホス
フィン混合ガスを6SCCM、更にヘリウム100SCCMを流
し、堆積温度600℃、炉内圧力100mtorr で堆積し
た。この時の堆積速度は29.6Å/minで、成膜直
後のシート抵抗値は2,025Ω/□で有った。
【0019】次に、前記シリコン薄膜上にレジストを形
成し、四弗化炭素(CF )と酸素(O2) の混合プ
ラズマに依り、前記薄膜をパターニングし、ソース・ド
レイン領域103を形成した(図1(a))。続いて沸
騰硝酸中に五分間浸す洗浄で残留レジストなどの不純物
を取り除き、1.67%弗化水素酸に20秒浸してソー
ス・ドレイン領域103表面上の自然酸化膜を取り除
き、直ちに減圧CVD法でチャンネル部となるシリコン
薄膜を堆積した。
【0020】この時減圧CVD反応炉の容積は184.
5lで、基板は反応炉中央付近に水平に置かれる。原料
ガス及びヘリウム・窒素・アルゴン・水素等の希釈ガス
は必要に応じて反応炉下部より炉内に導入され、反応炉
上部から排気される。石英ガラスで作られた反応炉の外
側には3ゾーンに分かれたヒーターが設置されて居り、
それらを独立に調整する事で反応炉内中央部付近に所望
の温度で均熱帯を形成する。この均熱帯は約350mmの
高さで広がり、その範囲内での温度のずれは、例えば6
00℃に設定した時0.2℃以内である。従って挿入基
板間の間隔を10mmとすれば1バッチで35枚の基板の
処理が可能で有る。本実施例1では20mm間隔で17枚
の基板を均熱帯内に設置した。
【0021】排気はロータリーポンプとメカニカル・ブ
ースターポンプを直結して行い、反応炉内の圧力は測定
値がガスの種類に依存しない隔膜式圧力計(MKS社バ
ラトロン・マノメーター)に依り測定した。反応炉を5
50℃に保って、ガス導入用のバルブを閉じて両ポンプ
にて真空引きを行った場合、反応炉内圧は0mtorr
で有る為、背景真空度は悪くとも10-4torr程度以
下で有る。
【0022】ソース・ドレイン領域103が形成され、
該領域表面上の自然酸化膜を取り除かれた基板は、表側
を下向きとして直ちに減圧CVD炉内に挿入された。挿
入時の反応炉内温度は395℃から400℃程度に保た
れている。これはソース・ドレイン領域103上に自然
酸化膜が形成されるのを極力少なくする為で有るから、
挿入時の反応炉内温度は出来る丈低く有るのが望まし
い。例えば挿入時の反応炉内温度を室温とする事も可能
で有るが、この場合堆積温度迄反応炉内温度を昇温する
のに数時間以上費やし、又堆積後室温に戻すのに矢張り
数時間必要となる。基板挿入時に反応炉内には約4SL
M〜10SLMの窒素を流し反応炉内を不活性雰囲気に
保っている。更に反応炉内入り口付近には約6SLM〜
20SLMの窒素で窒素カーテンを形成し、基板挿入時
に空気が反応炉内に流れ込む事を最小限に止めている。
反応炉内に空気中の水分や酸素が入ると、これらは反応
炉内壁のSi層に吸着し、又はSiと反応して反応炉内
に残留し、チャンネル部となるシリコン膜堆積の際、脱
ガスとして現れ、堆積シリコン膜の膜品質を低下させる
原因となる。
【0023】基板挿入後、真空引き、漏洩検査を施し
た。漏洩検査では反応炉に通ずる全バルブを閉じて反応
炉を完全に孤立させて、反応炉内圧力の変化を調べた。
本実施例1では反応炉内温度が400℃で2分間の完全
孤立後、反応炉内圧力は1mtorr以下で有った。漏
洩検査にて異常が無い事を確認した後、反応炉内温度を
挿入温度の400℃から堆積温度まで昇温する。本実施
例1では550℃でチャンネル部となるシリコン薄膜を
堆積した為、昇温するのに一時間費やした。炉内温度が
堆積温度の550℃に達するには35分間程度で済む
が、反応炉壁からの脱ガスを充分放出する為にも、最短
一時間以上、好ましくは数時間の昇温期間が望ましい。
この昇温期間中、二つのポンプは運転状態に有り、少な
くとも純度が99.995%以上の不活性又は還元性ガ
スを流し続ける。これらのガス種は水素・ヘリウム・窒
素・ネオン・アルゴン・キセノン・クリプトン等の純ガ
スの他、これらのガスの混合ガスも可能で有る。本実施
例1では純度99.9999%以上のヘリウムを350
SCCM流し続け、反応炉内圧力は80.7±1.2mtorr
で有った。
【0024】堆積温度到達後、原料ガスで有る所定量の
シラン又はシランと希釈ガスの混合ガスを反応炉内に導
入し、シリコン薄膜104を堆積する。希釈ガスとして
は、先の昇温期間に流したガスと同種の組み合わせが可
能で有るが、望ましくは各ガスの純度はそれぞれが9
9.999%以上が良い。本実施例1では希釈ガスを用
いず、純度99.999%以上のシランを100SCCM流
してシリコン薄膜104を堆積した。この時、反応炉内
の圧力は反応炉とメカニカル・ブースターポンプの間に
設置されたコンダクタンスバルヴの開閉度を調整して、
398.6±1.9mtorr に保った。本実施例1ではチ
ャンネル部となるシリコン薄膜104は21.2Å/m
inの堆積速度で248Åの膜厚に堆積した(図1
(b))。
【0025】本実施例1ではシリコン薄膜の堆積をLP
CVD法で行い、原料ガスもモノシランを用いたが、こ
れ以外にもプラズマCVD法やAPCVD法やスパッタ
ー法などで堆積する事も可能で有る。又原料ガスもモノ
シランに限らず、ジシランやトリシランなどの高次シラ
ンやジクロールシランなども可能で有る。又、無論上記
種々のCVD法と上記種々の原料の組み合わせに依って
シリコン薄膜を堆積する事も可能で有る。
【0026】次にこうして得られた基板に熱処理を施し
て、シリコン薄膜104の結晶化を進め、結晶粒の増大
を行った。熱処理炉は縦型炉で通常400℃に保持され
て居り、純度99.999%以上の窒素ガスを20SL
M流し続けて、熱処理炉内部を不活性雰囲気に保持して
いる。室温と温度平衡に達している基板は17分間掛け
て400℃の縦型熱処理炉に挿入した。挿入後30分間
400℃に保ち、基板の位置に依らず炉内が総て400
℃の均一温度に達した後、熱処理炉の温度を600℃に
昇温する。この400℃でまず30分間保持する事に依
り基板の位置にかかわらず、どこでも同じ熱履歴を得る
事が出来、シリコン薄膜の結晶化を均一に行う事が可能
となる。熱処理炉には常に20SLMの窒素が流れ続
け、熱処理炉の容積は約176lで有るため、この40
0℃に於ける予備加熱に依り熱処理炉内部は完全に窒素
雰囲気に置換される。400℃から600℃への昇温は
約1時間掛けて行われ、600℃で温度平衡に達した
後、7時間以上の熱処理に依り、シリコン薄膜の結晶化
は進められる。本実施例1では600℃に達した後23
時間の熱処理を施した。
【0027】こうして得られたシリコン薄膜は、レジス
トでパターニングされた後、四弗化炭素(CF)と酸
素(O)の混合プラズマに依りエッチングされ、チャ
ンネル部シリコン薄膜105を形成した。(図1
(C))本実施例1で形成したシリコン薄膜はCF
2の比が50SCCM対100SCCMで有る15Paの真空
プラズマ放電で、その出力が700Wの時のエッチング
では2.1Å/secのエッチング速度を有していた。
【0028】次にこの基板を沸騰している濃度60%の
硝酸にて洗浄し、更に1.67%弗化水素酸水溶液に2
0秒間浸してソース・ドレイン領域103とチャンネル
部シリコン薄膜105上の自然酸化膜を取り除いて清浄
なシリコン表面が出現した後、直ちに電子サイクロトロ
ン共鳴プラズマCVD装置(ECR−PECVD装置)
にてゲート絶縁膜となるSiO 膜106を堆積し
た。(図1(d))本実施例1で用いたECR−PEC
VD装置の概要を図2に示す。ゲート絶縁膜堆積に際し
ては、2.45GHZのマイクロ波が導波管201を通
じて反応室202に導かれ、ガス導入管203より導入
される100SCCMの酸素をまずプラズマ化する。この
時、マイクロ波の出力は2250Wで有り、反応室20
2の外側に設置された外部コイル204に依り反応室2
02内の酸素プラズマに875Gaussの磁場を掛け
てプラズマ中の電子にECR条件を満足せしめている。
この酸素プラズマは前記発散磁場に依って反応室外に引
き出され、プラズマに対して垂直に置かれた基板205
を10秒間照射する。基板205の背面にはヒーター2
06が有り、基板全体を100℃に保っていた。この時
反応室内の圧力は1.85mtorrで有った。酸素プ
ラズマ引き出し口の直後には別のガス導入管207が設
けられて居り、10秒間で酸素プラズマが十分安定化し
た後、このガス導入管207より純度99.999%以
上のシラン60SCCMを酸素プラズマ中に混入させる。こ
うして得られた酸素シラン混合プラズマを30秒間基板
に照射してゲート絶縁層となるSiO2 膜106を15
00Å堆積した(図1(d))。この時反応室の圧力は
2.35mtorrで有った。
【0029】次にクロムをスパッター法で1500Å堆
積し、パターニングに依り、ゲート電極107を形成し
た。この時シート抵抗値は1.356±0.047Ω/
□で有った。本実施例1ではゲート電極材料としてクロ
ムを用いたが、無論これ以外の導電性物質も可能で有る
し、又その形成方法もスパッター法に限らず蒸着法やC
VD法なども可能で有る。続いてAPCVD法で層間絶
縁膜108となるSiO2膜を5000Å堆積した。こ
の堆積は本実施例1で下地SiO膜102を堆積した
条件と全く同一で唯一堆積時間のみを変えて行った。層
間絶縁膜形成後、コンタクトホールを開け、ソース・ド
レイン取り出し電極109をスパッター法などで形成
し、トランジスタが完成する(図1(e))。本実施例
1ではソース・ドレイン取り出し電極材料としてアルミ
ニウムを用いスパッター法で8000Åの膜厚に堆積し
て、ソース・ドレイン取り出し電極を形成した。この時
堆積アルミニウム膜のシート抵抗は42.48±2.0
2mΩ/□で有った。
【0030】この様にして試作した薄膜トランジスタ
(TFT)の特性の一例Vgs−Ids曲線を図3の3
−aに示した。ここでソース・ドレイン電流Idsはソ
ース・ドレイン間電圧Vds=4V、温度25℃で測定
した。トランジスタサイズはチャンネル部の長さL=1
0μm、幅W=10μmで有った。Vds=4V、Vg
s=10Vでトランジスタをオンさせた時のオン電流は
235mm□の基板の中央と四角の5ヶのトランジスタを
測定した所、ION=4.65±0.39μAと良好なト
ランジスタ特性を有する薄膜半導体装置が得られた。
又、トランジスタの飽和電流領域より求めた電界効果移
動μoと捕獲密度Nt(J.Levinson et
al. J.Appl.Phys 53.1193.1
982)はそれぞれμo=25.85±0.96cm2
v.sec、Nt=(6.81±0.15)×1011
/cm2 で有った。図3の3−bには比較の為に従来技術
の一例に依って作成した薄膜半導体装置のトランジスタ
特性を図示した。即ち、チャンネル部シリコン薄膜を減
圧CVD法にて600℃で堆積し、24時間の熱処理を
施さぬ他は総て本実施例1の本発明と同一の工程で薄膜
半導体装置を作成したもので有る。この時、減圧CVD
法でチャンネル部シリコン薄膜を堆積する装置は本実施
例1の本発明で用いた装置と同一で有り、原料ガスのモ
ノシランは12.5SCCM流し、反応炉内圧力は9.0m
torr、堆積速度は11.75Å/minで256Å
の膜厚に堆積した。この従来技術の一例のTFTのオン
電流はIds=0.91±0.12μAで電界効果移動
度はμo=4.75±0.20cm2/v.sec、捕獲
密度Nt=(5.18±0.13)×10111/cm2
有った。この他に、チャンネル部シリコン薄膜を同様に
減圧CVD法にて600℃モノシラン流量12.5SCCM
にて堆積し、本実施例1の本発明と同一の工程でゲート
絶縁膜を堆積した後、ECR−PECVD装置にて水素
プラズマ処理を施し、それ以外は本実施例1の本発明と
同一工程で薄膜半導体装置を作成した。これも水素化処
理を行う従来技術の一例で有る。水素化処理は図2に示
したECR−PECVD装置にてゲート絶縁膜堆積後、
真空引きを行い、更にヒーター206により基板205
の温度を300℃に1時間掛けて昇温した後に行った。
純度99.9999%以上の水素ガス125SCCMはガス
導入管203より反応室202に導かれ、水素プラズマ
を立てた。マイクロ波出力は2000Wで、反応室の圧
力は2.63mtorrで有った。水素プラズマ照射は
30分間行った。こうして作成した薄膜半導体装置のT
FT特性を測定した所、オン電流Ids=0.96±
0.13μA、電界効果移動度μo=4.68±0.2
2cm2 /v.sec、捕獲密度Nt=(5.12±0.
13)×10111/cm2 で有った。即ち、水素プラズマ
処理の有無にかかわらずチャンネル部シリコン膜を60
0℃にて減圧CVD法で堆積する従来技術に比べると、
本発明では例えば電界効果移動度を5倍程度に高めると
のトランジスタ特性の大幅な向上をもたらす。
【0031】次に従来技術の別な一例と本発明との比較
を行う。即ち従来技術の別な一例として、チャンネル部
シリコン薄膜の形成は本実施例1の本発明と同様に行う
ものの、ゲート絶縁膜をAPCVD法で堆積する従来技
術及びゲート絶縁膜をAPCVD法で堆積した後、水素
プラズマ処理を行う従来技術に対する本発明の多大なる
優位性を見る。従来技術で有るゲート絶縁膜をAPCV
D法で堆積して薄膜半導体装置を作成する工程では、ゲ
ート絶縁膜をAPCVD法で1500Åに堆積した以
外、本実施例1の本発明と同一の工程で薄膜半導体装置
を作成した。APCVD法では基板温度を300℃に保
ち、窒素中に20%シランを含んだ窒素、シラン混合ガ
スを300SCCM、酸素を420SCCM流し、約140SL
Mの希釈用窒素をこれらの原料ガスと共に流してSiO
膜を堆積した。堆積速度は1.85Å/secで有っ
た。この様にして作成した従来技術による薄膜半導体装
置のトランジスタ特性を図3の3−Cに示した。このト
ランジスタのオン電流はION=1.49±0.05μ
A、電界効果移動度μo=24.60±0.72cm2
v・sec、捕獲密度Nt=(9.20±0.15)×
10111/cm2 で有った。この従来技術と本発明を比較
すると、本発明は捕獲準位を大幅に低減し、ゲート電圧
Ov付近で急激に立ち上がる極めて優良な薄膜半導体装
置を作成した事が明瞭となる。APCVD法でゲート絶
縁膜を堆積する従来技術では、移動度丈は本発明並に高
める事が出来たが、その実、ソース・ドレイン電流の最
小値が−11v付近に有り捕獲密度も高い為、立ち上が
りの傾斜もゆるやかで薄膜半導体装置として実用的では
なかった。一方更に別なる従来技術の一例を図3の3−
dに示す。ここではチャンネル部シリコン薄膜の形成は
本実施例1の本発明と同様に行うものの、ゲート絶縁膜
はAPCVD法で堆積し、その後水素プラズマ処理を施
す技術で有る。ゲート絶縁膜を前述と同一の条件で堆積
し、その後直ちにECR−PECVD装置により前述と
同一の条件で水素プラズマ照射を施した他は本実施例1
の本発明と同一の工程を経て薄膜半導体装置を作成し
た。こうして得られたTFTの特性を図3の3−dに示
した。オン電流はIds=2.91±0.30μA、電
界効果移動度μo=24.51±0.67cm2 /v・s
ec、捕獲密度Nt=(7.94±0.15)×1011
1/cm2 で有った。このプラズマ処理を用いた従来技術
に比較しても本発明はあらゆるパラメーターで良好な特
性を示している事が分かる。又水素プラズマ処理を施し
た従来技術で作成したトランジスタでは測定した5つの
トランジスタの内1つが+2V程度しきい値電圧Vth
がずれており、前述の各パラメーターの平均値と標準偏
差の値にこのトランジスタの値を含ませていない。即ち
水素プラズマ処理を用いた従来技術では水素プラズマ処
理を行わない従来技術に対してトランジスタ特性は改善
されるが、大面積に均一に同質なトランジスタを作成す
る事は困難で有った。加えて水素プラズマ処理を施した
試料はロット間の変動が大きく、安定的な生産が困難で
有る。とりわけ、しきい値電圧のずれとソース・ドレイ
ン電流が最小となるゲート電圧値の変動がロット間で非
常に大きい。これに対して本発明に依り、ばらつきの原
因となる水素化処理を排除して尚、従来よりも優良なト
ランジスタを大面積上に均一に作成し得た事が分かる。
【0032】(実施例2)チャンネル部となるシリコン
薄膜(図1.104)の堆積時間を変えてシリコン薄膜
104の堆積膜厚を変えた他は総て実施例1の本発明と
同じ工程に依り薄膜半導体装置を作成した。本実施例2
ではシリコン薄膜104を190Å、280Å、515
Å、1000Å、1100Å、1645Åと六種の異な
った膜厚とし、それぞれ薄膜半導体装置を作成した。こ
うして得られた薄膜半導体装置のオン電流とオフ電流の
比をチャンネル部シリコン膜の膜厚に対して図示した結
果が図4で有る。この図から分かる様にチャンネル部シ
リコン膜半導体層の膜厚が500Å以下となる薄膜半導
体装置ではオン・オフ比が急激に改善されて7桁以上を
示す良好な特性が得られた。
【0033】(実施例3)ソース領域或いはドレイン領
域の少なくともどちらか一方の領域がゲート絶縁膜を介
してゲート電極と重なり合っていない構造を有する薄膜
半導体装置(オフ・セット型薄膜半導体装置)を実施例
1の本発明と同一の製造方法にて作成した。本実施例3
ではオフ・セット型薄膜半導体装置として図5(a)に
示すスタガード型薄膜半導体装置をアラインメントを高
精度に行う事に依り作成したが、オフ・セット型薄膜半
導体装置としては無論これ以外の構造の物も可能で有
る。例えば図5(b)に示すようにソース・ドレイン領
域503を真性シリコン薄膜にゲート電極504をマス
クとして不純物イオンを打ち込んで作成する方法や図5
(c)に示すゲート電極505が下側に有る逆スタガー
ド型薄膜半導体装置でソース・ドレイン領域507をマ
スク材506を用いて作成した物なども可能で有る。
【0034】本実施例3では下地基板として直径75mm
の溶融石英ガラスを用いた他は実施例1の本発明と同じ
製造方法でオフ・セット型薄膜半導体装置を作成した。
即ち、まず基板洗浄を施し、下地SiO 膜をAPC
VD法などで堆積した後、リン添加されたシリコン膜を
LPCVD法で堆積し、更にパターニングする事に依り
ソース・ドレイン領域501を形成した。ここで後にチ
ャンネル長Lとなるソース・ドレイン領域間距離は1
0.5μmで有った。次に実施例1の本発明と同様にし
てチャンネル部となるシリコン薄膜を21.2Å/mi
nの堆積速度で248Åの膜厚に堆積した。但し、実施
例1の本発明では基板の表側を下向きとして基板を反応
炉に挿入したが、本実施例3では235mm□のダミー石
英板上に直径75mmの基板を表側を上向きに乗せて、反
応炉に挿入した。以下実施例1の本発明と全く同じ製造
方法で熱処理を施し、ゲート絶縁層を堆積し、更にゲー
ト電極502を形成した。このゲート電極502の幅は
10.0μmで、ソース・ドレイン間距離10.5μm
の中心とゲート電極幅10.0μmの中心が一致するよ
うに高精度アラインメントを行った。この結果、チャン
ネル領域に於けるゲート電極端位置とソース領域端との
距離(オフセット距離)はそれぞれ0.25μmとな
る。その後実施例1の本発明と同様の製造方法で層間絶
縁膜を堆積し、コンタクト・ホール開口後アルミニウム
を用いて配線し、薄膜半導体装置が完成した。
【0035】この様にして作成した薄膜半導体装置のト
ランジスタ特性の一例Vgs−Ids曲線を図6の6−
aに示した。図6の3−aは実施例1の本発明で試作し
た自己非整合型スタガード構造薄膜半導体装置のトラン
ジスタ特性で有る。図からも明確に分かる様に本実施例
3の本発明ではゲート電圧が負の時に生じるリーク電流
を大幅に低下させる事が可能で有る。実際本実施例3の
本発明に於いてはゲート電圧が−2.5V以下ではソー
ス・ドレイン電流を0.1pA程度に押さえている。図
6の6−bは実施例1の従来技術に依りオフセット型薄
膜半導体装置を作成した時に得られるトランジスタ特性
を比較の為に示している。即ち、チャンネル部シリコン
薄膜は600℃の減圧CVD法で堆積され、ソース・ド
レイン間距離10.5μmの中心とゲート電極幅10.
0μmの中心を高精度アラインメントで位置合わせしオ
フセット型薄膜半導体装置を作成した時に得られるトラ
ンジスタ特性で有る。これ故図6の6−bは従来技術の
自己非整合型スタガード構造薄膜半導体装置のトランジ
スタ特性図6の3−bと直接比較し得る。従来技術に依
るオフ・セット型薄膜半導体装置に於いてもリーク電流
を0.1pA程度以下に低く保つ事は可能で有るが、従
来技術に於いてオフセット型薄膜半導体装置を作成する
とオン電流や移動度などトランジスタの正特性も低下し
て仕舞い、実用的では無かった。例えば従来技術に依る
オフセット型薄膜半導体装置のオン電流はIds=0.
090±0.01μAと自己非整合型薄膜半導体装置に
比べてオン電流は一桁以上低下して仕舞う。又この時の
移動度もμo=3.33±0.15cm2 /v・secと
同様に約3割劣化している。この理由に依り、従来技術
に依るオフセット型薄膜半導体装置の製造はその価値が
無かった。これに対し、本実施例3の本発明は図6の6
−aに示されている通り、リーク電流は低く押さえ、且
つオン電流も高く維持している。本実施例3の本発明で
はオン電流としてIds=3.71±0.43μAが得
られ、自己非整合型薄膜半導体装置のオン電流に比べて
も殆ど遜色は見られない。又本実施例3の本発明では移
動度もμo=22.00±0.95cm2/v・secと
良好な値を示した。
【0036】(実施例4)実施例3では高精度アライン
メントを行う事に依りオフセット型薄膜半導体装置を作
成したが、無論これ以外にも本発明は有効で有る。図5
(b)では真性シリコン膜を堆積し、ゲート電極をパタ
ーニングした後、不純物イオンを添加する事でオフセッ
ト型薄膜半導体装置を作成した。この方法について詳述
する。
【0037】図7(a)〜(d)は本実施例4に於ける
オフセット型スタガード構造のMIS型電界効果トラン
ジスタを構成するシリコン薄膜半導体装置の構造工程を
断面で示した図で有る。まず実施例1と同様基板701
を洗浄した後、下地保護膜702としてSiO 膜を
2000Å程度堆積する。続いて第一のシリコン膜を3
00Å程度以上堆積し、パターニングを行う事でパッド
となるシリコン膜703を形成する。この第一のシリコ
ン膜として本実施例では実施例1でチャンネル部シリコ
ン膜を堆積したLPCVD装置を用いて堆積温度600
℃シラン流量12.5SCCMで1250Åに堆積したが、
これ以外にも同じLPCVD装置を用いて堆積温度55
0℃程度でシリコン膜を堆積する事も、原料ガスとして
ジシラン(Si26)を用いて堆積温度450℃程度で
堆積する事も、PECVD法にて250℃程度でシリコ
ン膜を堆積する事も可能で有る。工程最高温度600℃
を越えぬ膜形成温度で有るならば、如何なる方法であっ
ても構わない。次に第二のシリコン膜704を堆積する
が、この第二のシリコン膜の膜厚が300Å程度以上有
り、不純物注入後のソース・ドレイン領域の抵抗値がト
ランジスタを動作させた時のチャンネル領域の抵抗値に
比べて充分低ければ、第一のシリコン膜又はパッドとな
るシリコン膜703は必要とされない。本実施例4では
第二のシリコン膜704を実施例1の本発明でチャンネ
ル部となるシリコン薄膜と同じ方法で堆積した。即ちL
PCVD法にてモノシランを原料ガスとし、堆積温度5
50℃、シラン流量100SCCM堆積速度21.2Å/m
inで250Åの膜厚に堆積した。しかし、第二のシリ
コン膜形成方法は第一のシリコン膜と同様、工程最高温
度600℃を越えぬ膜形成温度で有るならば、如何なる
方法でも可能で有る。例えば、第二のシリコン膜も堆積
温度600℃、シラン流量12.5SCCM、反応炉内圧力
9.0mtorrで堆積しても構わぬし、又、原料ガスにジ
シランやトリシランなどの高次シランを用いて更に低温
で膜形成する事も可能で有る。この様に何らかの方法で
第二のシリコン膜704を形成し(図7(b))、パタ
ーニングを行った後、実施例1の本発明と同様の方法で
ゲート絶縁層705を形成した。即ち、ECR−PEC
VD法でSiO 膜を1500Å堆積した。ゲート絶
縁層705の形成手段としては第二のシリコン膜704
が多結晶シリコン膜である場合、APCVD法で形成す
る事も出来る。次にゲート電極となる金属膜などを形成
する。本実施例4ではゲート電極材料として燐を高濃度
に添加したシリコン膜を用いた。ここではLPCVD法
で堆積温度600℃、モノシラン200SCCM、ヘリウム
が99.5%でホスフィンが0.5%のヘリウム・ホス
フィン混合ガスを6SCCM更にヘリウム100SCCMを流
し、炉内圧力100mtorr で3000Åの膜厚に堆積し
た。成膜直後のシート抵抗値は744Ω/□で有った。
引き続いてレジストを塗布し、レジストのパターニング
を行った後、CFとOの混合プラズマに依り燐添加
シリコン膜のパターニングを行った。CFとOの比
がそれぞれ200SCCMと200SCCMで入射波出力700
Wでパターニングを行った。この時の燐添加シリコン膜
のエッチング速度は15.4Å/secで5分57秒間
エッチングを行い、ゲート電極706を作成した。燐添
加シリコン膜の膜厚は3000Åで有ったので、このプ
ラズマエッチングに依り、ゲート電極幅はレジスト70
7に比べて左右それぞれ2500Å程度細められている
(図7(c))。次にゲート電極706作成に用いたレ
ジスト707を剥離せずに残したまま、不純物イオンを
添加する。本実施例4では不純物として燐を選びn型薄
膜半導体装置を目指したが、無論他元素もその目的に応
じて可能で有る。本実施例4では質量分析装置が付いて
いないイオン打ち込み装置を用いて不純物イオン添加を
施した。原料ガスとして水素中に希釈された濃度5%の
ホスフィンを用い、加速電圧110kVで3×1015
/cm2 の濃度に打ち込んだ。この様にして、第一のシリ
コン膜と第二のシリコン膜の一部はソース・ドレイン領
域708となり、又ゲート電極作成に用いたレジスト7
07は膜厚がおよそ2μm程度有るため、この下に位置
する第二のシリコン膜はイオン添加されず、チャンネル
部709を構成するに至る(図7(c))。又、この方
法に依り、オフセット型薄膜半導体装置が作成される。
次にゲート電極作成用レジスト707を剥離した後、該
基板に600℃で7時間以上の熱処理を施し、添加不純
物イオンの活性化及び、チャンネル部シリコン膜709
の結晶性が不充分な場合の結晶化を促進する。本実施例
4では実施例1の本発明で行った熱処理と同様窒素雰囲
気下600℃にて23時間の熱処理を施した。続いて層
間絶縁膜としてSiO2 710をAPCVD法などで5
000Å堆積し、更に質量分析装置の付いていないイオ
ン打ち込み装置にて、水素を加速電圧80kVで5×1
151/cm2 打ち込んだ後、コンタクト・ホールを開口
し、アルミニウムなどで配線711をし、オフセット型
薄膜半導体装置が完成する。
【0038】こうして作成したオフセット型薄膜半導体
装置のトランジスタ特性を測定した所、L=W=10μ
m、Vds=4Vでオン電流は3.4μA、ソース・ド
レイン電流の最小値はVgs=−3.5Vの時0.09
pA、又Vgs=−10Vで定義したオフ電流は0.2
8pAと、トランジスタ・オフ時のリーク電流を低く押
さえ、且つ良好なオン電流を得る事が出来た。
【0039】実施例3及び実施例4で述べた様にオフセ
ット型薄膜半導体装置でソース領域・ドレイン領域が形
成された後、熱処理を加える事でオン電流は高く、リー
ク電流の小さい薄膜半導体装置を作成可能で有るが、本
発明が実施例3及び実施例4で詳述したオフセット型薄
膜半導体装置の製造方法だけに限定される物では決して
無い。例えば実施例4でオフセット型薄膜半導体装置を
作成する方法としてゲート電極幅よりも広い幅を持つレ
ジストを打ち込みのマスクとしたが、他にも様々な方法
が有る。例えば金属をゲート電極として用い、この表面
及び側面を酸化してゲート電極を細めた後に不純物イオ
ンを打ち込む事などでもオフセット型薄膜半導体装置を
作成出来る。又、図5(c)に示したように逆スタガー
ド構造に於いてもマスク材506の幅をゲート電極50
5よりも広げる事などでオフセット型薄膜半導体装置と
なる。本発明はこれらあらゆる製造方法で作成されたオ
フセット型薄膜半導体装置に有効で有る。
【0040】(実施例5)図8(a)〜(f)はMIS
型電界効果トランジスタを形成するシリコン薄膜半導体
装置の製造工程を断面で示した図で有る。
【0041】本実施例5では絶縁性基板801として2
35mm□の石英ガラスを用いたが、600℃の温度に耐
え得る基板又は下地物質で有るならば、その種類や大き
さは無論問われない。例えばシリコン・ウェハー上に形
成された三次元LSIなども下地基板として可能で有
る。まず有機洗浄及び酸洗浄した石英ガラス基板801
上面に下地SiO2膜802を常圧化学気相堆積法(A
PCVD法)で堆積した。下地SiO2 膜802の形成
は基板温度300℃、シラン流量120SCCM、酸素84
0SCCM、窒素約140SLMで堆積した。この時の堆積
速度は3.9Å/secで、堆積時間は8分33秒で有
った。次にドナー又はアクセプターとなる不純物を含ん
だシリコン薄膜803を減圧気相化学堆積法(LPCV
D法)にて堆積した(図8(a))。本実施例5では不
純物としてリンを選び、フォスフィン(PH)0.0
3SCCM、シラン(SiH)200SCCMを原料ガスとし
て堆積温度600℃で1500Å堆積した。この時の堆
積速度は30Å/minで成膜直後のシート抵抗値は1
951Ω/□で有った。次に前記シリコン薄膜803上
にレジストを形成し、四弗化炭素(CF)、酸素(O
)、窒素(N)等の混合プラズマでパターニングを
行い、ソース・ドレイン領域804を形成した。続いて
該領域804表面上の汚物・自然酸化膜を取り除いた
後、直ちにアモルファス・シリコン薄膜805を減圧C
VD法で堆積した。(図8(b))本実施例5に於ける
減圧CVD装置は184.5lで反応室は石英ガラスに
依り作成されている。反応室の外側には3ゾーンに分か
れたヒーターが設置されており、それら3つのヒーター
を独立に調整する事で反応室内中央部付近に所望の温度
で等温領域を形成する。基板はこの等温領域内に水平に
設置して、アモルファス・シリコン薄膜805を堆積し
た。アモルファス・シリコン薄膜805は原料ガスとし
てジシラン(Si)100SCCMを用い、希釈ガス
としてヘリウム(He)100SCCMを使用した。堆積温
度は450℃であった。本実施例5のアモルファス・シ
リコン薄膜805を堆積する為に用いた減圧CVD炉の
排気はメカニカル・ブースター・ポンプとロータリー・
ポンプを直結して行っている。メカニカル・ブースター
・ポンプと反応炉の間にはコンダクタンス・バルブが取
り付けて有り、このバルブの開閉量を調整する事で、反
応室内の圧力を所望の値に調整・維持可能となる。本実
施例5ではアモルファス・シリコン薄膜805を堆積
中、反応室内の圧力を306mtorr に保った。堆積速度
は18.07Å/minで、307Åの膜厚にアモルフ
ァス・シリコン薄膜805を堆積した。次にこの様にし
て作成されたアモルファス・シリコン薄膜805上にレ
ジストを形成し、四弗化炭素、酸素、窒素等の混合プラ
ズマでパターニングを行い、いずれチャンネル部となる
位置に丈アモルファス・シリコン薄膜806を残した。
【0042】次に、この基板を沸騰している濃度60%
の硝酸にて洗浄し、更に1.67%弗化水素酸水溶液に
20秒間浸してソース・ドレイン領域804といずれチ
ャンネル部となる位置に残されたアモルファス・シリコ
ン薄膜806上の自然酸化膜を取り除いて清浄なシリコ
ン膜が出現した後、直ちに電子サイクロトロン共鳴プラ
ズマCVD装置(ECR−PECVD装置)にて酸素プ
ラズマ807を照射した。(図8(c))本実施例5で
用いたECRーPECVD装置の概要を図2に示す。酸
素プラズマは2.45GHzのマイクロ波を導波間20
1を通じて反応室202に導き、100SCCMの酸素をガ
ス導入管203から導入して酸素プラズマを立てた。こ
の時反応室内の圧力は1.84mtorr で、マイクロ波の
出力は2500Wで有った。反応室の外側には外部コイ
ル204が設けられて居り、酸素プラズマに875Ga
ussの磁場を掛けてプラズマ中の電子にECR条件を
満足せしめている。基板205はプラズマに対して垂直
に置かれ、ヒーター206に依り基板温度が300℃と
なる様保たれている。この条件で酸素プラズマ807を
8分20秒間照射して、いずれチャンネル部となる位置
に残されたアモルファス・シリコン薄膜806の酸化を
行い、ゲート絶縁層の一部位となるSiO2膜808を
得た。この時、ゲート絶縁層の一部位となるSiO2
808の下部には、いずれチャンネル部となるアモルフ
ァスシリコン薄膜809が残留している。(図8
(d))更に真空を破る事なく連続してゲート絶縁層と
なるSiO膜810を堆積した。このSiO2膜81
0はマイクロ波出力が2250W、シラン流量60SCC
M、酸素流量100SCCM、基板温度300℃で、18.
75秒間堆積した。堆積中に於ける反応室内圧力は2.
62mtorrで有った。こうして形成した多層膜を多波長
分散型偏光解析法(多波長分光エリプソメトリー:ソー
プラ社MOSS−ES4G)を用いて、いずれチャンネ
ル部となる残留しているアモルファス・シリコン膜80
9の膜厚と、アモルファス・シリコン膜を酸化して形成
したSiO膜808の膜厚、及びECR−PECVD
法で堆積したSiO膜810の膜厚を測定した所、ア
モルファス・シリコン薄膜809が205Å、SiO2
膜808が120Å、SiO膜810が1500Åで
有った。又この時、波長が632.8nmに於けるSi
膜の屈折率は、SiO膜808が1.42、Si
膜810が1.40で有った。
【0043】次にこうして得られた基板を600℃に保
持された電熱炉に挿入し、48時間の熱処理を施した。
この時電熱炉には純度99.999%以上の窒素ガスを
20l/min流し続け、不活性雰囲気を保持し続け
た。この不活性雰囲気600℃の熱処理に依り、チャン
ネル部に残留していたアモルファス・シリコン薄膜は結
晶化し、チャンネル部を構成するシリコン薄膜811へ
と改変される。(図8(e))続いてこの基板を再びE
CR−PECVD装置に入れ、該装置を用いて熱処理が
施された基板に水素プラズマを照射した。この時、基板
温度は300℃、マイクロ波出力2000Wで水素を1
00SCCM流して水素プラズマを立てた。この状態で反応
室内の圧力は1.97mtorr で有った。水素プラズマ照
射は45分間行った。
【0044】次にクロムをスパッター法で1500Å堆
積し、パターニングに依りゲート電極812を形成し
た。この時シート抵抗値は1.36Ω/□で有った。そ
の後、ゲート絶縁膜にコンタクトホールを開け、ソース
・ドレイン取り出し電極813をスパッター法などで形
成し、パターニングを行う事でトランジスタは完成す
る。(図8(f))本実施例5ではソース・ドレイン取
り出し電極材料として、膜厚8000Åのアルミニウム
を用いた。この時のアルミニウムのシート抵抗値は42
mΩ/□で有った。
【0045】この様にして試作した薄膜トランジスタ
(TFT)の特性の一例Vgs−Ids曲線を図9の9
−aに示した。ここでIdsはソース・ドレイン電圧、
Vds=4V、温度25℃で測定した。トランジスタ・
サイズはチャンネル部の長さL=10μm、幅W=10
0μmで有った。Vds=4V,Vgs=10Vでトラ
ンジスタをオンさせた時のオン電流はIds=34.5
μAと良好なトランジスタ特性を有する薄膜半導体装置
が得られた。又、このトランジスタの飽和電流領域より
求めた電界効果移動度は12.52cm2 /v・secで
有った。図9の9−bには比較の為に従来技術に依って
作成した薄膜半導体装置のトランジスタ特性を図示し
た。即ち、従来技術では、チャンネル部シリコン薄膜を
減圧CVD法にて600℃で堆積し、酸素プラズマ照射
を施さぬ他は総て本実施例5と同一の工程で薄膜半導体
装置を作成したもので有る。この時、減圧CVD法でチ
ャンネル部シリコン薄膜を堆積する装置は本実施例5で
アモルファス・シリコン薄膜を堆積した装置と同一で有
り、原料ガスのモノシランは24SCCM流し、反応炉内圧
力は13.8mtorr、堆積速度は19.00Å/min
で252Åの膜厚に堆積した。この従来のTFTのオン
電流はIds=4.6μAで電界効果移動度は4.40
cm/v・secで有った。この他に、チャンネル部シリ
コン薄膜を同様に減圧CVD法で600℃にて堆積した
後、ゲート絶縁膜堆積前に酸素プラズマ照射を施し、そ
れ以外の工程は総て本実施例5と同一の工程で薄膜半導
体装置を作成し、TFT特性を測定した所、TFT特性
は酸素プラズマ照射の有無でほとんど変化せず、酸素プ
ラズマ照射を施したTFTのVgs−Ids曲線は図9
の9−bと一致した。この時TFTのオン電流はIds
=4.7μAで、電界効果移動度は4.44cm2 /v・
secで有った。即ち、チャンネル部シリコン薄膜を6
00℃にて減圧CVD法で堆積する従来技術では、酸素
プラズマ照射の効果は非常に小さい。図9の9−cには
別の従来技術に依り作成された薄膜半導体装置のTFT
特性を図示した。この従来技術では、本実施例5で酸素
プラズマ照射を施さぬ他は総て本実施例と同一の工程で
薄膜半導体装置を作成した物で有る。即ち、チャンネル
部シリコン層として、まずアモルファス・シリコン薄膜
を堆積し、その後600℃の熱処理をおこなうものの、
ゲート絶縁層形成前に酸素プラズマ照射を施さなかった
工程で有る。この従来技術に依り、作成されたTFTは
−10Vのデプレッションを呈しており、立ち上がり特
性も良くない。この薄膜半導体装置のオン電流はVds
=4V、Vgs=10Vで12.1μAで有り、電界効
果移動度は9.94cm2/v・secで有った。
【0046】こうした結果から本実施例5が示した通
り、いずれチャンネル部となるアモルファス・シリコン
薄膜に酸素プラズマを照射し、その後熱処理を施してチ
ャンネル部シリコン薄膜の結晶化を進めた時のみ、薄膜
半導体装置のトランジスタ特性が大幅に向上する事が分
かる。これはまずアモルファス・シリコン薄膜の表面が
酸素プラズマで酸化される為、清浄なMIS界面が形成
され、その後、結晶化が進められた為で有る。これによ
り従来技術で作成した薄膜半導体装置に比べ、本発明の
実施例が著しく良好な半導体特性を有する理由が分か
る。
【0047】(実施例6)絶縁性物質上にシリコン膜及
び酸化硅素膜を形成した後、ドナー又はアクセプターと
なる不純物をシリコン膜に添加して、シリコン膜に依る
導電層を作成した。
【0048】本実施例6では基板として直径75mmの溶
融石英基板を用いた。しかし、無論600℃程度の熱処
理に耐え得る基板であるならば何で有っても構わない。
例えば加工されたシリコン基板なども可能で有る。まず
有機洗浄及び酸洗浄した基板上面に下地SiO2膜をA
PCVD法で堆積した。下地SiO膜の形成は基板温
度300℃、シラン流量120SCCM、酸素840SCCM、
窒素約140SLMで堆積した。この時の堆積速度は3.
9Å/secで堆積時間は12分49秒で有った。次に
実施例1にてチャンネル部シリコン膜を堆積するのに用
いたLPCVD装置を用いて実施例1と同様な方法でシ
リコン膜を堆積した。即ち堆積温度550℃、シラン流
量100SCCM、反応室内圧力を400mtorrにて1
1分20秒間シリコン膜を堆積した。こうして得られた
シリコン膜の膜厚は252Åで有った。
【0049】次にこうして得られた基板に熱処理を施し
て、シリコン膜の結晶性を高めた。この熱処理方法は実
施例1でシリコン膜104の結晶性を高める為に施した
熱処理と同一で有る。即ち、窒素雰囲気下600℃で2
3時間の熱処理を行った。熱処理終了後、このシリコン
膜はレジストでパターニングされ、さらにCFとO
の混合プラズマに依りエッチングされ、シリコン膜の配
線パターンが作成された。
【0050】続いてこの基板を濃度60%の沸騰硝酸に
て洗浄し、更に1.67%弗化水素酸水溶液に20秒間
浸して、シリコン膜上の自然酸化膜を取り除き、清浄シ
リコン表面を出現させた後、直ちにECRーPECVD
装置にて酸化硅素膜を1500Åの厚さに堆積した。こ
こで酸化硅素膜の堆積は実施例1の本発明にてゲート絶
縁膜を形成する方法と全く同一の方法で行った。次にイ
オン打ち込み装置を用いてドナー又はアクセプターとな
る不純物をシリコン膜で作成した配線に添加した。本実
施例6では不純物として燐を選びn型導電層の作成を目
指したが、無論他元素もその目的に応じて可能で有る。
本実施例6ではバケットタイプの質量非分離型のイオン
注入装置を用いて不純物イオンの添加を施した。原料ガ
スとして水素中に希釈された濃度5%のホスフィンを用
い、加速電圧110KVで3×10151/cm2 の濃度に
酸化硅素膜を通じて打ち込んだ。次にこの基板を窒素雰
囲気下で300℃に保たれている炉に挿入して熱処理を
施した。熱処理時間は丁度一時間で有った。300℃、
一時間の熱処理終了後、酸化硅素膜にコンタクトホール
を開穴し、アルミニウムで取り出し電極を作成した。こ
うして作成された不純物添加シリコン膜配線の抵抗を測
定した所、シート抵抗値として、95%の信頼係数で
(71±15)kΩ/□が測定された。一般に数百Åの
膜厚しか持たぬ薄膜に不純物イオンを添加して、300
℃程度の低温で添加イオンを活性化して導電層を得る事
は不可能と信じられていた。しかるに、本発明では熱処
理を施されたシリコン膜の膜質を、シリコン膜上をEC
R−PECVD法で堆積した酸化硅素膜で被覆する事に
依り、シリコン膜表面の捕獲密度を低減させる等のシリ
コン膜質改善に成功した為、電子散乱密度を低下させ、
薄膜導電層の作成が初めて可能となった。この事を従来
技術に依るシリコン膜と比較し、本発明の優位性を明ら
かにする。
【0051】まず第一にシリコン膜をLPCVD法にて
600℃で堆積した後、ECRーPECVD法で酸化硅
素膜を形成した従来技術のシリコン膜に不純物を添加
し、300℃の低温活性化でシリコン膜導電層の作成を
試みた。ここではシリコン膜を600℃で、モノシラン
を12.50SCCM流し、反応室内圧力を9.2mtor
rで263Åの膜厚に堆積した他は、本実施例6の本発
明と全く同一の工程で不純物添加シリコン膜配線を作成
した。こうして得られた従来技術のシリコン膜のシート
抵抗は基板内5ヶ所を測定して総て1GΩ/□以上で事
実上電流は全く流れなかった。
【0052】第二にシリコン膜は本実施例6の本発明と
全く同様に600℃の熱処理を施して作成し、その後A
PCVD法で酸化硅素膜を形成した従来技術のシリコン
膜に不純物を添加し、300℃の低温活性化でシリコン
膜導電層の作成を試みた。ここで酸化硅素膜はAPCV
D法で基板温度を300℃に保ち、窒素中に20%シラ
ンを含んだ窒素・シラン混合ガスを300SCCM、酸素を
420SCCM流し、約140SLMの希釈用窒素をこれらの
原料ガスと共に流して、1500Åの膜厚に堆積した。
これ以外は総て、本実施例6の本発明と全く同一の工程
で不純物添加シリコン膜配線を作成した。こうして得ら
れた従来技術のシリコン膜のシート抵抗値は95%の信
頼係数で(175±56)kΩ/□で有った。その後こ
の基板を再度ECR−PECVD装置に装着し、水素プ
ラズマ処理を施した。水素プラズマ処理は基板温度30
0℃で水素を125SCCM流し、マイクロ波出力2000
Wで30分間行った。水素プラズマ処理後、基板内5ヶ
所の抵抗値を測定した所、2ヶ所のシート抵抗は1GΩ
/□で以上で有り、残りの3ヶ所の平均値は158kΩ
/□で標準偏差値は68kΩ/□で有った。
【0053】この様に600℃以下で熱処理されたシリ
コン膜上をECRーPECVD装置で形成された酸化硅
素膜で被覆する事に依り、高膜質なシリコン膜が得られ
る事が分かる。この為、実施例1で示した様に本発明の
シリコン膜を薄膜半導体装置のチャンネル部に用い、E
CRーPECVD装置で形成された酸化硅素膜をゲート
絶縁層に用いると特性の良い薄膜半導体装置が得られ、
又本実施例6で示した様に本発明のシリコン膜に不純物
イオンを添加すると、低温で低抵抗のシリコン膜導電層
を得る事が可能となる。従って本発明のシリコン膜は単
に薄膜半導体装置に有効のみならず、電荷結合装置(C
CD)のゲート電極や配線など、あらゆる電子装置に使
用される非単結晶シリコン膜に取って極めて有効に利用
し得る。
【0054】(実施例7)実施例6の本発明でバケット
型質量非分離型のイオン注入装置を用いて不純物イオン
をシリコン膜に添加した工程を、質量分離型イオン注入
装置に変えて質量数31の燐の一価イオンを打ち込む事
に変更した他は、総て実施例6の本発明と全く同一工程
で、不純物添加シリコン膜導電層の作成を試みた。本実
施例7では燐イオンを90KVで3×10151/cm2 打ち
込んだ。こうして得られた不純物添加シリコン膜の抵抗
を測定した所、基板内5ヶ所で総て1GΩ/□で実質的
には全く電流は流れなかった。これは実施例6の本発明
では、不純物の添加を質量非分離型のイオン注入装置を
用い、原料ガスとして水素・ホスフィン混合ガスを使用
した為、シリコン膜に燐元素添加時には必然的に水素イ
オンの添加が同時に行われ、イオン添加の際生じた欠陥
が水素イオンで修復される為、本発明の良質なシリコン
膜に限って、低温で低抵抗シリコン導電層が作成された
ので有る。
【0055】(実施例8)図10(a)〜(d)は本実
施例8に於けるセルフ・アライン型スタガード構造のM
IS型電界効果トランジスタを構成するシリコン薄膜半
導体装置の製造工程を断面で示した図で有る。まず実施
例1と同様基板1001を洗浄した後、下地保護膜10
02としてSiO2 膜を2000Å程度堆積する。続い
て第一のシリコン膜を1500Å程度堆積し、パターニ
ングを行う事でパッドとなるシリコン膜1003を形成
する(図10(a))。この第一のシリコン膜として本
実施例8では実施例1でチャンネル部シリコン膜を堆積
したLPCVD装置を用いて堆積温度600℃シラン流
量12.5SCCMで1500Åに堆積したが、これ以外に
も同じLPCVD装置を用いて堆積温度550℃程度で
シリコン膜を堆積する事も、原料ガスとしてジシラン
(Si)を用いて堆積温度450℃程度で堆積す
る事も、PECVD法にて250℃程度でシリコン膜を
堆積する事も可能で有る。工程最高温度600℃を越え
ぬ膜形成温度で有るならば、如何なる方法であっても構
わない。次に第二のシリコン膜1004を堆積するが、
この第二のシリコン膜の膜厚が300Å程度以上有り、
不純物注入後のソース・ドレイン領域の抵抗値がトラン
ジスタを動作させた時のチャンネル領域の抵抗値に比べ
て充分低ければ、第一のシリコン膜又はパッドとなるシ
リコン膜1003は必要とされない。本実施例8では第
二のシリコン膜1004を実施例1の本発明でチャンネ
ル部となるシリコン薄膜と同じ方法で堆積した。即ちL
PCVD法にてモノシランを原料ガスとし、堆積温度5
50℃、シラン流量100SCCM堆積速度21.2Å/m
inで250Åの膜厚に堆積した。その後実施例1の本
発明でシリコン膜の結晶性を高める為に行ったのと全く
同一の熱処理を施した。即ち窒素雰囲気下600℃で2
3時間の熱処理を行った。(図10(b))。次に第二
のシリコン膜のパターニングを行った後、実施例1の本
発明と同様の方法でゲート絶縁層1005を形成した。
即ち、ECR−PECVD法でSiO 膜を1500
Å堆積した。次にゲート電極となる金属膜などを形成す
る。本実施例8ではゲート電極材料として、2000Å
の膜厚を有するクロム膜を用いた。クロム膜は基板温度
180℃でスパッター法に依り形成された。成膜直後の
クロムのシート抵抗値は994mΩ/□で有った。引き
続いてAPCVD法でクロム上に300℃の基板温度で
SiO 膜を3000Å堆積した。その後レジストで
パターニングを行い、ゲート電極1006とSiO
膜に依る保護キャップ層1007を形成し、不純物イオ
ンを添加した。本実施例8では不純物として燐を選びn
型薄膜半導体装置の作成を目指したが、無論他元素もそ
の目的に応じて可能で有る。本実施例8では質量分析装
置が付いていないイオン打ち込み装置を用いて不純物イ
オン添加を施した。原料ガスとして水素中に希釈された
濃度5%のホスフィンを用い、加速電圧110kVで5
×10151/cm2 の濃度に打ち込んだ。この様にして、
第一のシリコン膜と第二のシリコン膜の一部はソース・
ドレイン領域1008となり、又SiO 膜に依る保
護キャップ層1007が有るため、この下に位置する第
二のシリコン膜はイオン添加されず、チャンネル部10
09を構成するに至る(図10(c))。次に該基板を
窒素雰囲気下350℃で2時間の熱処理を施し、添加不
純物イオンの活性化を行った。その後層間絶縁膜として
SiO 膜1010を5000Å堆積し、続いてコン
タクト・ホールを開穴し、アルミニウムなどで配線10
11をし、セルフ・アライン型薄膜半導体装置が完成す
る(図10(d))。
【0056】こうして作成したセルフ・アライン型薄膜
半導体装置のトランジスタ特性を測定した所、L=W=
10μm、Vds=4V、Vgs=10Vでオン電流は
4.89μA、ソース・ドレイン電流の最小値はVgs
=−3.5Vの時0.21pA、又Vgs=−10Vで
定義したオフ電流は2.65pA、電界効果移動度μo
=26.1cm2 /v・secと極めて良好なセルフ・ア
ライン型薄膜半導体装置が出来上がった。
【0057】比較の為にチャンネル部シリコン膜をLP
CVD法で600℃で作成した他は本実施例8の本発明
と全く同一の工程でセルフ・アライン型薄膜半導体装置
を作成した。しかしながら実施例6で詳述した様に、従
来のシリコン膜では薄膜部の添加不純物元素の活性化が
なされず、薄膜部の不純物添加シリコン膜の抵抗が高過
ぎ、それ故トランジスタのオン電流は47.9pAと非
実用的となった。これに対し、本実施例8の本発明では
特性変動の主因となる水素化プラズマ処理を排除し、且
つ低温工程で窮めて良好なセルフ・アライン型薄膜半導
体装置の作成に成功した。これは実施例2で示した如く
チャンネル部シリコン膜半導体層の膜厚を500Å以下
の薄膜化をして、基本的な半導体特性を向上せしめても
尚実施例6の本発明に依る薄膜導伝性シリコン膜の作成
に依り、薄膜部のソース・ドレイン領域の形成が低温で
容易になされた賜物で有る。即ち、ドナー又はアクセプ
ターとなる不純物の活性化は従来膜厚が1000Å程度
以上有るシリコン膜に550℃程度以上の熱処理を加え
ねば達成し得なかった。この為、セルフ・アライン型薄
膜半導体装置ではチャンネル部の膜厚も必然的に100
0Å程度以上となり、特性も悪かった。その上、ゲート
絶縁層とゲート電極が出来上がった後、添加不純物イオ
ン活性化の目的で550℃程度以上の熱処理が施される
為、ゲート絶縁膜の膜質劣化が生じ、水素化処理が必要
不可欠で有った。又、ゲート電極として金属材の使用が
困難であった為、ゲート線の抵抗が高かったり、ゲート
電極とゲート線を別々に作成する必要が有った。ところ
が本発明に依り、金属材料をゲート電極として使用出
来、同時にばらつきの主因で有る水素処理を排除し、よ
り簡昜な製造方法で高特性の薄膜半導体装置を安定的に
製造し得る事に成功した。
【0058】
【発明の効果】以上述べて来た様に、本発明に依れば、
表面が絶縁性物質で有る基板上にシリコン膜を堆積し、
該シリコン膜を600℃程度の熱処理を施した後、EC
R−PECVD法に依る酸化硅素膜を堆積する事でシリ
コン膜の膜質を高め得る。例えばこれに依り、表面が絶
縁性物質で有る基板上へ薄膜半導体装置の形成に於い
て、チャンネル部シリコン膜を堆積した後、600℃以
下の温度で熱処理する工程と、ゲート絶縁膜をECR−
PECVD法で形成する工程を含む薄膜半導体装置の製
造方法、或いはチャンネル部シリコン膜半導体層を構成
するアモルファス・シリコン膜を堆積した後、ゲート絶
縁層を形成する前に該アモルファス・シリコン膜上に酸
素プラズマを照射し、その後、600℃以下の温度で熱
処理する様な工程を含む製造方法等に依りトランジスタ
特性を大幅に改善し、こうした優良なトランジスタ特性
を有する薄膜半導体装置を大面積に均一に簡便な手法に
て形成する事が可能となり、LSIの多層化や薄膜トラ
ンジスタを用いたアクティブマトリックス液晶ディスプ
レイの高性能化や低価格化を実現すると言う多大な効果
を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示すシリコン薄膜半導体
装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【図2】 本発明の実施例で用いた電子サイクロトロン
共鳴プラズマCVD装置の概要を示す図。
【図3】 本発明の効果を示す図。
【図4】 本発明の効果を示す図。
【図5】 本発明の一実施例を示すシリコン薄膜半導体
装置の素子断面図。
【図6】 本発明の効果を示す図。
【図7】 本発明の一実施例を示すシリコン薄膜半導体
装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【図8】 本発明の一実施例を示すシリコン薄膜半導体
装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【図9】 本発明の効果を示す図。
【図10】 本発明の一実施例を示すシリコン薄膜半導
体装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【符号の説明】
101…下地基板 102…下地保護膜 103…ソース・ドレイン領域 104…シリコン薄膜 105…チャンネル部シリコン薄膜 106…ゲート絶縁膜 107…ゲート電極 108…層間絶縁膜 109…ソース・ドレイン取り出し電極 201…導波管 202…反応室 203…ガス導入管 204…外部コイル 205…基板 206…ヒータ 207…ガス導入管 501…ソース・ドレイン領域 502…ゲート電極 503…ソース・ドレイン領域 504…ゲート電極 505…ゲート電極 506…マスク材 507…ソース・ドレイン領域 701…基板 702…下地保護膜 703…パッドとなるシリコン膜 704…第二のシリコン膜 705…ゲート絶縁層 706…ゲート電極 707…レジスト 708…ソース・ドレイン領域 709…チャンネル部シリコン膜 710…層間絶縁膜 711…配線 801…絶縁基板 802…下地SiO2膜 803…不純物を含んだシリコン薄膜 804…ソース・ドレイン領域 805…アモルファス・シリコン薄膜 806…いずれチャンネル部になる位置に丈残されたア
モルファス・シリコン薄膜 807…酸素プラズマ 808…アモルファス・シリコン薄膜を酸化して形成し
たSiO2膜 809…いずれチャンネル部となる残留しているアモル
ファス・シリコン薄膜 810…ECR−PECVD法で堆積したSiO2膜 811…チャンネル部を構成するシリコン薄膜 812…ゲート電極 813…ソース・ドレイン取り出し電極 1001…基板 1002…下地保護膜 1003…パッドとなるシリコン膜 1004…第二のシリコン膜 1005…ゲート絶縁層 1006…ゲート電極 1007…保護キャップ層 1008…ソース・ドレイン領域 1009…チャンネル部シリコン膜 1010…層間絶縁膜 1011…配線
【手続補正書】
【提出日】平成10年4月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 薄膜半導体装置の製造方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクティブマトリックス
液晶ディスプレイ等に応用される薄膜トランジスタや三
次元LSIデバイスなど、絶縁性物質上に作成される薄
膜半導体装置の製造方法に関するもので有る。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶ディスプレイの大画面化、高
解像度化に伴い、その駆動方式は単純マトリックス方式
からアクティブマトリックス方式へ移行し、大容量の情
報を表示出来るように成りつつ有る。アクティブマトリ
ックス方式は数十万を越える画素を有する液晶ディスプ
レイが可能で有り、各画素毎にスイッチングトランジス
タを形成するもので有る。各種液晶ディスプレイの基板
としては、透過型ディスプレイを可能ならしめる溶融石
英板やガラスなどの透明絶縁基板が使用されている。
【0003】しかしながら、表示画面の拡大化や低価格
化を進める場合には絶縁基板として安価な通常ガラスを
使用するのが必要不可欠で有る。従って、この経済性を
維持して尚、アクティブマトリックス方式の液晶ディス
プレイを動作させる薄膜トランジスタを安価なガラス基
板上に安定した性能で形成する事が可能な技術が望まれ
ていた。
【0004】薄膜トランジスタのチャンネル部半導体層
としては、通常アモルファス・シリコンや多結晶シリコ
ンが用いられているが、駆動回路迄一体化して薄膜トラ
ンジスタで形成しようとする場合には動作速度の速い多
結晶シリコンが有利である。
【0005】従来この様な薄膜トランジスタを作成する
場合、チャンネル部シリコン層を形成した後、ゲート絶
縁層を形成するには基板を酸素(O2)、笑気ガス(N2
O)、水蒸気(H2O)などを含む酸化性雰囲気下に挿
入し、その温度を800℃から1100℃程度の高温と
してチャンネル部シリコン層の一部を酸化し、ゲート絶
縁層を形成する熱酸化法が用いられていた。一方、多結
晶シリコンを用いた薄膜半導体装置を安価な通常ガラス
基板の使用に耐え得る600℃程度以下の工程最高温度
で作成するのに種々の方法が試みられている。例えば、
チャンネル部半導体層を減圧気相化学堆積法(LPCV
D法)で形成した後、ゲート絶縁膜を電子サイクロトロ
ン共鳴プラズマCVD法(ECR−PECVD法)に依
り形成し、更に水素プラズマ照射などの水素化処理を施
す方法。或いはチャンネル部半導体層にアモルファス・
シリコン薄膜を堆積し、その後600℃、24時間程度
の熱処理を施し、次に常圧気相化学堆積法(APCVD
法)にてゲート絶縁膜を形成し、水素化処理を行う方法
などが有る。(Japanese J, Appl,P
hys,30L 84 ’91)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先に述
べた従来の方法に於いては、数多くの問題が指摘されて
いる。まず第一に熱酸化法に依るSiO2膜の形成で
は、その形成に少なくとも800℃以上の高温熱処理が
伴う為、酸化膜より下部に位置する薄膜層や基板などの
耐熱性が問題となる。例えば大面積液晶ディスプレイの
スイッチング・トランジスタを作成する場合、基板とし
ては非常に高価な溶融石英板以外はこの様な高温に耐え
得ない。又、三次元LSI素子に於いても下層部トラン
ジスタが高温で劣化する為、この熱酸化法は事実上使用
不可能となっている。
【0007】次にチャンネル部半導体層をLPCVD法
で形成し、ゲート絶縁膜をECR−PECVD法に依り
形成し、更に水素プラズマ処理を行う方法に於いては移
動度が4〜5cm2 /V.secと低く、薄膜半導体装置
として未だ不十分で有る。加えて薄膜半導体装置の特性
を向上させる為に行われている水素化処理に依り、薄膜
半導体装置を構成する各種薄膜の一部がエッチングされ
て沢山有る薄膜半導体装置の幾つかが破壊されて仕舞う
と言った問題が有る。又、チャンネル部半導体層にアモ
ルファス・シリコン薄膜を堆積し、その後600℃程度
の熱処理を施し、APCVD法にてゲート絶縁膜を形成
し、更に水素プラズマ照射等の水素化処理を行う方法に
於いては、界面捕獲準位が1012程度と大きく、又デプ
レッション型の半導体装置特性を示すなど、薄膜半導体
装置として未だ不十分で有る。又、先と同様矢張水素化
処理に伴う問題が残り、大面積に均一に且つ安定的に薄
膜半導体装置を作成する事が出来なかった。
【0008】従って、薄膜半導体装置としては移動度が
大きく、同時に清浄MOS界面を有して界面捕獲準位が
低く、且つデプレッションを呈さぬ物が求められて居
り、しかもこうした薄膜半導体装置を作成する工程で水
素化処理の必要が無く、先述の如き良好な薄膜半導体装
置を大面積に均一且つ安定的に作成する製造方法が求め
られていた。
【0009】本発明は上記の事情に鑑みてなされた物
で、その目的とする所はMIS型薄膜半導体装置に於い
て、工程最高温度が600℃程度以下と言う低温工程で
良好な半導体装置特性を有する薄膜半導体装置と、この
様な薄膜半導体装置を大面積に渡り均一且つ安定的に製
造する方法を提供する事に有る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明の薄
膜半導体装置の製造方法は、基板上にアモルファスシリ
コン膜を形成し、前記アモルファスシリコン膜上に酸素
プラズマを照射して第1酸化珪素膜を形成し、前記第1
酸化珪素膜上に減圧CVD法により第2酸化珪素膜を形
成し、しかる後に前記アモルファスシリコン膜を結晶成
長させることを特徴とする。
【0011】
【実施例】 (参考例1)以下本発明の参考例を図面を用いて詳述す
るが、本発明が以下の参考例に限定されるものでは無
い。
【0012】図1(a)〜(e)は本参考例1に於ける
自己非整合型スタガード構造のMIS型電界効果トラン
ジスタを構成するシリコン薄膜半導体装置の製造工程を
断面で示した図で有る。
【0013】本参考例1では、下地基板101として2
35mm□の溶融石英ガラスを用いたが、600℃の工程
最高温度に耐え得る基板又は下地物質で有るならば、そ
の種類や大きさは無論問われない。例えば通常ガラス基
板の他にシリコンウェハーなどの半導体基板及びそれら
を加工したLSI、三次元LSIや、或いはシリコン・
カーバイト、アルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミ
ックス基板なども下地基板として可能で有る。
【0014】まずアセトン又はメチル・エチル・ケト
ン,メチル・イソ・ブチル・ケトンやシクロヘキサノン
などの有機溶剤中に下地基板101を浸し、超音波洗浄
を行う。洗浄後窒素中又は減圧下にて乾燥を施し、更に
エタノールによる超音波洗浄を行った後窒素バブリング
されている純水にて水洗を施す。次に下地基板101を
沸騰している濃度60%の硝酸中に5分間浸し、更に窒
素バブリングされている純水中で洗浄した。基板として
金属など酸に依り腐食されたり、変質して仕舞う物質を
用いる場合、この硝酸に依る洗浄は必要とされない。又
この強酸に依る洗浄では酸として硝酸の他に硫酸なども
可能で有る。
【0015】こうして洗浄された石英基板上に常圧気相
化学堆積法(APCVD法)で下地保護膜となる二酸化
硅素膜(SiO2 膜)102を2000Å堆積した。こ
の下地SiO2膜102は前述の如き種々多様な物質を
基板として用いる際、後に堆積されるシリコン薄膜の膜
質、及びそれを用いて構成される薄膜トランジスタの性
能を安定化する為に必要で有る。と同時に、例えば基板
101として通常ガラスを用いた場合、ガラス中に含ま
れているナトリウムなどの可動イオンが、又基板101
として各種セラミック板を用いた際には基板中に添加さ
れている焼結助材原料などがトランジスタ部に拡散混入
するのを防ぐ役割をも演じている。又金属板を基板10
1として用いる場合は、絶縁性を確保する為に下地Si
2 は必要不可欠で有る。又、三次元LSI素子では、
トランジスタ間や配線間の層間絶縁膜に相当している。
下地SiO2 膜102堆積時の基板温度は300℃で、
窒素に依り20%に希釈されたシラン600SCCMを84
0SCCMの酸素と共にAPCVD法で堆積した。この時の
SiO2膜の堆積速度は3.9Å/secで有った。
【0016】続いてドナー又はアクセプターとなる不純
物を含んだシリコン薄膜103を減圧CVD法にて堆積
した。本参考例1ではn型トランジスタ作成を目指し不
純物としてリンを選んだが、n型ならばリン以外に5
族、6族の元素、P型ならばボロンを始めとして2族、
3族の元素が不純物元素として添加され得る。この不純
物を含んだシリコン薄膜103はいずれソース・ドレイ
ン領域となる部位で、本参考例1の如く不純物をCVD
法で添加する方法の他、まず最初に不純物を含まない真
性シリコン膜を形成して居き、後に気相或いは真性シリ
コン膜に接する固相より不純物を拡散させて添加する方
法や、不純物をイオン化して真性シリコン膜に打ち込む
方法などが有る。これら、真性シリコン膜を形成した後
拡散法やイオン打ち込み法で不純物を添加する手法を用
いると真性シリコン膜の所望の部位のみに不純物を添加
する事が可能となり、これにより例えばトランジスタの
ゲート電極端ととソース端又はドレイン端が自己整合し
たセルフ・アライン・トランジスタが可能となったり、
不純物添加濃度を各部位で変える事に依りシリコン膜中
の電流密度や比抵抗を変えて所望の部位のみに電流を流
す事などが可能となる。
【0017】本参考例1では不純物としてリンを選んだ
為、ホスフィン(PH3 )とシランを混合したガスを用
いて、不純物を含んだシリコン薄膜103を1500Å
堆積した。
【0018】本参考例1では184.5lの容積を有す
る減圧CVD炉内にモノシランを200SCCM、ヘリウム
が99.5%でホスフィンが0.5%のヘリウム・ホス
フィン混合ガスを6SCCM、更にヘリウム100SCCMを流
し、堆積温度600℃、炉内圧力100mtorr で堆積し
た。この時の堆積速度は29.6Å/minで、成膜直
後のシート抵抗値は2,025Ω/□で有った。
【0019】次に、前記シリコン薄膜上にレジストを形
成し、四弗化炭素(CF4 )と酸素(O2) の混合プラ
ズマに依り、前記薄膜をパターニングし、ソース・ドレ
イン領域103を形成した(図1(a))。続いて沸騰
硝酸中に五分間浸す洗浄で残留レジストなどの不純物を
取り除き、1.67%弗化水素酸に20秒浸してソース
・ドレイン領域103表面上の自然酸化膜を取り除き、
直ちに減圧CVD法でチャンネル部となるシリコン薄膜
を堆積した。
【0020】この時減圧CVD反応炉の容積は184.
5lで、基板は反応炉中央付近に水平に置かれる。原料
ガス及びヘリウム・窒素・アルゴン・水素等の希釈ガス
は必要に応じて反応炉下部より炉内に導入され、反応炉
上部から排気される。石英ガラスで作られた反応炉の外
側には3ゾーンに分かれたヒーターが設置されて居り、
それらを独立に調整する事で反応炉内中央部付近に所望
の温度で均熱帯を形成する。この均熱帯は約350mmの
高さで広がり、その範囲内での温度のずれは、例えば6
00℃に設定した時0.2℃以内である。従って挿入基
板間の間隔を10mmとすれば1バッチで35枚の基板の
処理が可能で有る。本参考例1では20mm間隔で17枚
の基板を均熱帯内に設置した。
【0021】排気はロータリーポンプとメカニカル・ブ
ースターポンプを直結して行い、反応炉内の圧力は測定
値がガスの種類に依存しない隔膜式圧力計(MKS社バ
ラトロン・マノメーター)に依り測定した。反応炉を5
50℃に保って、ガス導入用のバルブを閉じて両ポンプ
にて真空引きを行った場合、反応炉内圧は0mtorr
で有る為、背景真空度は悪くとも10-4torr程度以
下で有る。
【0022】ソース・ドレイン領域103が形成され、
該領域表面上の自然酸化膜を取り除かれた基板は、表側
を下向きとして直ちに減圧CVD炉内に挿入された。挿
入時の反応炉内温度は395℃から400℃程度に保た
れている。これはソース・ドレイン領域103上に自然
酸化膜が形成されるのを極力少なくする為で有るから、
挿入時の反応炉内温度は出来る丈低く有るのが望まし
い。例えば挿入時の反応炉内温度を室温とする事も可能
で有るが、この場合堆積温度迄反応炉内温度を昇温する
のに数時間以上費やし、又堆積後室温に戻すのに矢張り
数時間必要となる。基板挿入時に反応炉内には約4SL
M〜10SLMの窒素を流し反応炉内を不活性雰囲気に
保っている。更に反応炉内入り口付近には約6SLM〜
20SLMの窒素で窒素カーテンを形成し、基板挿入時
に空気が反応炉内に流れ込む事を最小限に止めている。
反応炉内に空気中の水分や酸素が入ると、これらは反応
炉内壁のSi層に吸着し、又はSiと反応して反応炉内
に残留し、チャンネル部となるシリコン膜堆積の際、脱
ガスとして現れ、堆積シリコン膜の膜品質を低下させる
原因となる。
【0023】基板挿入後、真空引き、漏洩検査を施し
た。漏洩検査では反応炉に通ずる全バルブを閉じて反応
炉を完全に孤立させて、反応炉内圧力の変化を調べた。
本参考例1では反応炉内温度が400℃で2分間の完全
孤立後、反応炉内圧力は1mtorr以下で有った。漏
洩検査にて異常が無い事を確認した後、反応炉内温度を
挿入温度の400℃から堆積温度まで昇温する。本参考
例1では550℃でチャンネル部となるシリコン薄膜を
堆積した為、昇温するのに一時間費やした。炉内温度が
堆積温度の550℃に達するには35分間程度で済む
が、反応炉壁からの脱ガスを充分放出する為にも、最短
一時間以上、好ましくは数時間の昇温期間が望ましい。
この昇温期間中、二つのポンプは運転状態に有り、少な
くとも純度が99.995%以上の不活性又は還元性ガ
スを流し続ける。これらのガス種は水素・ヘリウム・窒
素・ネオン・アルゴン・キセノン・クリプトン等の純ガ
スの他、これらのガスの混合ガスも可能で有る。本参考
例1では純度99.9999%以上のヘリウムを350
SCCM流し続け、反応炉内圧力は80.7±1.2mtorr
で有った。
【0024】堆積温度到達後、原料ガスで有る所定量の
シラン又はシランと希釈ガスの混合ガスを反応炉内に導
入し、シリコン薄膜104を堆積する。希釈ガスとして
は、先の昇温期間に流したガスと同種の組み合わせが可
能で有るが、望ましくは各ガスの純度はそれぞれが9
9.999%以上が良い。本参考例1では希釈ガスを用
いず、純度99.999%以上のシランを100SCCM流
してシリコン薄膜104を堆積した。この時、反応炉内
の圧力は反応炉とメカニカル・ブースターポンプの間に
設置されたコンダクタンスバルヴの開閉度を調整して、
398.6±1.9mtorr に保った。本参考例1ではチ
ャンネル部となるシリコン薄膜104は21.2Å/m
inの堆積速度で248Åの膜厚に堆積した(図1
(b))。
【0025】本参考例1ではシリコン薄膜の堆積をLP
CVD法で行い、原料ガスもモノシランを用いたが、こ
れ以外にもプラズマCVD法やAPCVD法やスパッタ
ー法などで堆積する事も可能で有る。又原料ガスもモノ
シランに限らず、ジシランやトリシランなどの高次シラ
ンやジクロールシランなども可能で有る。又、無論上記
種々のCVD法と上記種々の原料の組み合わせに依って
シリコン薄膜を堆積する事も可能で有る。
【0026】次にこうして得られた基板に熱処理を施し
て、シリコン薄膜104の結晶化を進め、結晶粒の増大
を行った。熱処理炉は縦型炉で通常400℃に保持され
て居り、純度99.999%以上の窒素ガスを20SL
M流し続けて、熱処理炉内部を不活性雰囲気に保持して
いる。室温と温度平衡に達している基板は17分間掛け
て400℃の縦型熱処理炉に挿入した。挿入後30分間
400℃に保ち、基板の位置に依らず炉内が総て400
℃の均一温度に達した後、熱処理炉の温度を600℃に
昇温する。この400℃でまず30分間保持する事に依
り基板の位置にかかわらず、どこでも同じ熱履歴を得る
事が出来、シリコン薄膜の結晶化を均一に行う事が可能
となる。熱処理炉には常に20SLMの窒素が流れ続
け、熱処理炉の容積は約176lで有るため、この40
0℃に於ける予備加熱に依り熱処理炉内部は完全に窒素
雰囲気に置換される。400℃から600℃への昇温は
約1時間掛けて行われ、600℃で温度平衡に達した
後、7時間以上の熱処理に依り、シリコン薄膜の結晶化
は進められる。本参考例1では600℃に達した後23
時間の熱処理を施した。
【0027】こうして得られたシリコン薄膜は、レジス
トでパターニングされた後、四弗化炭素(CF4)と酸
素(O2)の混合プラズマに依りエッチングされ、チャ
ンネル部シリコン薄膜105を形成した。(図1
(C))本参考例1で形成したシリコン薄膜はCF4
2の比が50SCCM対100SCCMで有る15Paの真空
プラズマ放電で、その出力が700Wの時のエッチング
では2.1Å/secのエッチング速度を有していた。
【0028】次にこの基板を沸騰している濃度60%の
硝酸にて洗浄し、更に1.67%弗化水素酸水溶液に2
0秒間浸してソース・ドレイン領域103とチャンネル
部シリコン薄膜105上の自然酸化膜を取り除いて清浄
なシリコン表面が出現した後、直ちに電子サイクロトロ
ン共鳴プラズマCVD装置(ECR−PECVD装置)
にてゲート絶縁膜となるSiO2 膜106を堆積した。
(図1(d))本参考例1で用いたECR−PECVD
装置の概要を図2に示す。ゲート絶縁膜堆積に際して
は、2.45GHZのマイクロ波が導波管201を通じ
て反応室202に導かれ、ガス導入管203より導入さ
れる100SCCMの酸素をまずプラズマ化する。この時、
マイクロ波の出力は2250Wで有り、反応室202の
外側に設置された外部コイル204に依り反応室202
内の酸素プラズマに875Gaussの磁場を掛けてプ
ラズマ中の電子にECR条件を満足せしめている。この
酸素プラズマは前記発散磁場に依って反応室外に引き出
され、プラズマに対して垂直に置かれた基板205を1
0秒間照射する。基板205の背面にはヒーター206
が有り、基板全体を100℃に保っていた。この時反応
室内の圧力は1.85mtorrで有った。酸素プラズ
マ引き出し口の直後には別のガス導入管207が設けら
れて居り、10秒間で酸素プラズマが十分安定化した
後、このガス導入管207より純度99.999%以上
のシラン60SCCMを酸素プラズマ中に混入させる。こう
して得られた酸素シラン混合プラズマを30秒間基板に
照射してゲート絶縁層となるSiO2膜106を150
0Å堆積した(図1(d))。この時反応室の圧力は
2.35mtorrで有った。
【0029】次にクロムをスパッター法で1500Å堆
積し、パターニングに依り、ゲート電極107を形成し
た。この時シート抵抗値は1.356±0.047Ω/
□で有った。本参考例1ではゲート電極材料としてクロ
ムを用いたが、無論これ以外の導電性物質も可能で有る
し、又その形成方法もスパッター法に限らず蒸着法やC
VD法なども可能で有る。続いてAPCVD法で層間絶
縁膜108となるSiO2膜を5000Å堆積した。こ
の堆積は本参考例1で下地SiO2膜102を堆積した
条件と全く同一で唯一堆積時間のみを変えて行った。層
間絶縁膜形成後、コンタクトホールを開け、ソース・ド
レイン取り出し電極109をスパッター法などで形成
し、トランジスタが完成する(図1(e))。本参考例
1ではソース・ドレイン取り出し電極材料としてアルミ
ニウムを用いスパッター法で8000Åの膜厚に堆積し
て、ソース・ドレイン取り出し電極を形成した。この時
堆積アルミニウム膜のシート抵抗は42.48±2.0
2mΩ/□で有った。
【0030】この様にして試作した薄膜トランジスタ
(TFT)の特性の一例Vgs−Ids曲線を図3の3
−aに示した。ここでソース・ドレイン電流Idsはソ
ース・ドレイン間電圧Vds=4V、温度25℃で測定
した。トランジスタサイズはチャンネル部の長さL=1
0μm、幅W=10μmで有った。Vds=4V、Vg
s=10Vでトランジスタをオンさせた時のオン電流は
235mm□の基板の中央と四角の5ヶのトランジスタを
測定した所、ION=4.65±0.39μAと良好なト
ランジスタ特性を有する薄膜半導体装置が得られた。
又、トランジスタの飽和電流領域より求めた電界効果移
動μoと捕獲密度Nt(J.Levinson et
al. J.Appl.Phys 53.1193.1
982)はそれぞれμo=25.85±0.96cm2
v.sec、Nt=(6.81±0.15)×1011
/cm2 で有った。図3の3−bには比較の為に従来技術
の一例に依って作成した薄膜半導体装置のトランジスタ
特性を図示した。即ち、チャンネル部シリコン薄膜を減
圧CVD法にて600℃で堆積し、24時間の熱処理を
施さぬ他は総て本参考例1の本発明と同一の工程で薄膜
半導体装置を作成したもので有る。この時、減圧CVD
法でチャンネル部シリコン薄膜を堆積する装置は本参考
例1の本発明で用いた装置と同一で有り、原料ガスのモ
ノシランは12.5SCCM流し、反応炉内圧力は9.0m
torr、堆積速度は11.75Å/minで256Å
の膜厚に堆積した。この従来技術の一例のTFTのオン
電流はIds=0.91±0.12μAで電界効果移動
度はμo=4.75±0.20cm2/v.sec、捕獲
密度Nt=(5.18±0.13)×10111/cm2
有った。この他に、チャンネル部シリコン薄膜を同様に
減圧CVD法にて600℃モノシラン流量12.5SCCM
にて堆積し、本参考例1と同一の工程でゲート絶縁膜を
堆積した後、ECR−PECVD装置にて水素プラズマ
処理を施し、それ以外は本参考例1の本発明と同一工程
で薄膜半導体装置を作成した。これも水素化処理を行う
従来技術の一例で有る。水素化処理は図2に示したEC
R−PECVD装置にてゲート絶縁膜堆積後、真空引き
を行い、更にヒーター206により基板205の温度を
300℃に1時間掛けて昇温した後に行った。純度9
9.9999%以上の水素ガス125SCCMはガス導入管
203より反応室202に導かれ、水素プラズマを立て
た。マイクロ波出力は2000Wで、反応室の圧力は
2.63mtorrで有った。水素プラズマ照射は30
分間行った。こうして作成した薄膜半導体装置のTFT
特性を測定した所、オン電流Ids=0.96±0.1
3μA、電界効果移動度μo=4.68±0.22cm2
/v.sec、捕獲密度Nt=(5.12±0.13)
×10111/cm2 で有った。即ち、水素プラズマ処理の
有無にかかわらずチャンネル部シリコン膜を600℃に
て減圧CVD法で堆積する従来技術に比べると、本発明
では例えば電界効果移動度を5倍程度に高めるとのトラ
ンジスタ特性の大幅な向上をもたらす。
【0031】次に従来技術の別な一例と本参考例との比
較を行う。即ち従来技術の別な一例として、チャンネル
部シリコン薄膜の形成は本参考例1と同様に行うもの
の、ゲート絶縁膜をAPCVD法で堆積する従来技術及
びゲート絶縁膜をAPCVD法で堆積した後、水素プラ
ズマ処理を行う従来技術に対する本発明の多大なる優位
性を見る。従来技術で有るゲート絶縁膜をAPCVD法
で堆積して薄膜半導体装置を作成する工程では、ゲート
絶縁膜をAPCVD法で1500Åに堆積した以外、本
参考例1と同一の工程で薄膜半導体装置を作成した。A
PCVD法では基板温度を300℃に保ち、窒素中に2
0%シランを含んだ窒素、シラン混合ガスを300SCC
M、酸素を420SCCM流し、約140SLMの希釈用窒
素をこれらの原料ガスと共に流してSiO2膜を堆積し
た。堆積速度は1.85Å/secで有った。この様に
して作成した従来技術による薄膜半導体装置のトランジ
スタ特性を図3の3−Cに示した。このトランジスタの
オン電流はION=1.49±0.05μA、電界効果移
動度μo=24.60±0.72cm2/v・sec、捕
獲密度Nt=(9.20±0.15)×10111/cm2
で有った。この従来技術と本参考例を比較すると、本参
考例は捕獲準位を大幅に低減し、ゲート電圧Ov付近で
急激に立ち上がる極めて優良な薄膜半導体装置を作成し
た事が明瞭となる。APCVD法でゲート絶縁膜を堆積
する従来技術では、移動度丈は本発明並に高める事が出
来たが、その実、ソース・ドレイン電流の最小値が−1
1v付近に有り捕獲密度も高い為、立ち上がりの傾斜も
ゆるやかで薄膜半導体装置として実用的ではなかった。
一方更に別なる従来技術の一例を図3の3−dに示す。
ここではチャンネル部シリコン薄膜の形成は本参考例1
と同様に行うものの、ゲート絶縁膜はAPCVD法で堆
積し、その後水素プラズマ処理を施す技術で有る。ゲー
ト絶縁膜を前述と同一の条件で堆積し、その後直ちにE
CR−PECVD装置により前述と同一の条件で水素プ
ラズマ照射を施した他は本参考例1と同一の工程を経て
薄膜半導体装置を作成した。こうして得られたTFTの
特性を図3の3−dに示した。オン電流はIds=2.
91±0.30μA、電界効果移動度μo=24.51
±0.67cm2 /v・sec、捕獲密度Nt=(7.9
4±0.15)×10111/cm2 で有った。このプラズ
マ処理を用いた従来技術に比較しても本発明はあらゆる
パラメーターで良好な特性を示している事が分かる。又
水素プラズマ処理を施した従来技術で作成したトランジ
スタでは測定した5つのトランジスタの内1つが+2V
程度しきい値電圧Vthがずれており、前述の各パラメ
ーターの平均値と標準偏差の値にこのトランジスタの値
を含ませていない。即ち水素プラズマ処理を用いた従来
技術では水素プラズマ処理を行わない従来技術に対して
トランジスタ特性は改善されるが、大面積に均一に同質
なトランジスタを作成する事は困難で有った。加えて水
素プラズマ処理を施した試料はロット間の変動が大き
く、安定的な生産が困難で有る。とりわけ、しきい値電
圧のずれとソース・ドレイン電流が最小となるゲート電
圧値の変動がロット間で非常に大きい。これに対して本
発明に依り、ばらつきの原因となる水素化処理を排除し
て尚、従来よりも優良なトランジスタを大面積上に均一
に作成し得た事が分かる。
【0032】(参考例2)チャンネル部となるシリコン
薄膜(図1.104)の堆積時間を変えてシリコン薄膜
104の堆積膜厚を変えた他は総て参考例1と同じ工程
に依り薄膜半導体装置を作成した。本参考例2ではシリ
コン薄膜104を190Å、280Å、515Å、10
00Å、1100Å、1645Åと六種の異なった膜厚
とし、それぞれ薄膜半導体装置を作成した。こうして得
られた薄膜半導体装置のオン電流とオフ電流の比をチャ
ンネル部シリコン膜の膜厚に対して図示した結果が図4
で有る。この図から分かる様にチャンネル部シリコン膜
半導体層の膜厚が500Å以下となる薄膜半導体装置で
はオン・オフ比が急激に改善されて7桁以上を示す良好
な特性が得られた。
【0033】(参考例3)ソース領域或いはドレイン領
域の少なくともどちらか一方の領域がゲート絶縁膜を介
してゲート電極と重なり合っていない構造を有する薄膜
半導体装置(オフ・セット型薄膜半導体装置)を参考例
1と同一の製造方法にて作成した。本参考例3ではオフ
・セット型薄膜半導体装置として図5(a)に示すスタ
ガード型薄膜半導体装置をアラインメントを高精度に行
う事に依り作成したが、オフ・セット型薄膜半導体装置
としては無論これ以外の構造の物も可能で有る。例えば
図5(b)に示すようにソース・ドレイン領域503を
真性シリコン薄膜にゲート電極504をマスクとして不
純物イオンを打ち込んで作成する方法や図5(c)に示
すゲート電極505が下側に有る逆スタガード型薄膜半
導体装置でソース・ドレイン領域507をマスク材50
6を用いて作成した物なども可能で有る。
【0034】本参考例3では下地基板として直径75mm
の溶融石英ガラスを用いた他は参考例1と同じ製造方法
でオフ・セット型薄膜半導体装置を作成した。即ち、ま
ず基板洗浄を施し、下地SiO2 膜をAPCVD法など
で堆積した後、リン添加されたシリコン膜をLPCVD
法で堆積し、更にパターニングする事に依りソース・ド
レイン領域501を形成した。ここで後にチャンネル長
Lとなるソース・ドレイン領域間距離は10.5μmで
有った。次に参考例1と同様にしてチャンネル部となる
シリコン薄膜を21.2Å/minの堆積速度で248
Åの膜厚に堆積した。但し、参考例1では基板の表側を
下向きとして基板を反応炉に挿入したが、本参考例3で
は235mm□のダミー石英板上に直径75mmの基板を表
側を上向きに乗せて、反応炉に挿入した。以下参考例1
と全く同じ製造方法で熱処理を施し、ゲート絶縁層を堆
積し、更にゲート電極502を形成した。このゲート電
極502の幅は10.0μmで、ソース・ドレイン間距
離10.5μmの中心とゲート電極幅10.0μmの中
心が一致するように高精度アラインメントを行った。こ
の結果、チャンネル領域に於けるゲート電極端位置とソ
ース領域端との距離(オフセット距離)はそれぞれ0.
25μmとなる。その後参考例1と同様の製造方法で層
間絶縁膜を堆積し、コンタクト・ホール開口後アルミニ
ウムを用いて配線し、薄膜半導体装置が完成した。
【0035】この様にして作成した薄膜半導体装置のト
ランジスタ特性の一例Vgs−Ids曲線を図6の6−
aに示した。図6の3−aは参考例1で試作した自己非
整合型スタガード構造薄膜半導体装置のトランジスタ特
性で有る。図からも明確に分かる様に本参考例3ではゲ
ート電圧が負の時に生じるリーク電流を大幅に低下させ
る事が可能で有る。実際本参考例3に於いてはゲート電
圧が−2.5V以下ではソース・ドレイン電流を0.1
pA程度に押さえている。図6の6−bは参考例1の従
来技術に依りオフセット型薄膜半導体装置を作成した時
に得られるトランジスタ特性を比較の為に示している。
即ち、チャンネル部シリコン薄膜は600℃の減圧CV
D法で堆積され、ソース・ドレイン間距離10.5μm
の中心とゲート電極幅10.0μmの中心を高精度アラ
インメントで位置合わせしオフセット型薄膜半導体装置
を作成した時に得られるトランジスタ特性で有る。これ
故図6の6−bは従来技術の自己非整合型スタガード構
造薄膜半導体装置のトランジスタ特性図6の3−bと直
接比較し得る。従来技術に依るオフ・セット型薄膜半導
体装置に於いてもリーク電流を0.1pA程度以下に低
く保つ事は可能で有るが、従来技術に於いてオフセット
型薄膜半導体装置を作成するとオン電流や移動度などト
ランジスタの正特性も低下して仕舞い、実用的では無か
った。例えば従来技術に依るオフセット型薄膜半導体装
置のオン電流はIds=0.090±0.01μAと自
己非整合型薄膜半導体装置に比べてオン電流は一桁以上
低下して仕舞う。又この時の移動度もμo=3.33±
0.15cm2 /v・secと同様に約3割劣化してい
る。この理由に依り、従来技術に依るオフセット型薄膜
半導体装置の製造はその価値が無かった。これに対し、
本参考例3は図6の6−aに示されている通り、リーク
電流は低く押さえ、且つオン電流も高く維持している。
本参考例3ではオン電流としてIds=3.71±0.
43μAが得られ、自己非整合型薄膜半導体装置のオン
電流に比べても殆ど遜色は見られない。又本参考例3の
本発明では移動度もμo=22.00±0.95cm2
v・secと良好な値を示した。
【0036】(参考例4)参考例3では高精度アライン
メントを行う事に依りオフセット型薄膜半導体装置を作
成したが、無論これ以外にも本発明は有効で有る。図5
(b)では真性シリコン膜を堆積し、ゲート電極をパタ
ーニングした後、不純物イオンを添加する事でオフセッ
ト型薄膜半導体装置を作成した。この方法について詳述
する。
【0037】図7(a)〜(d)は本参考例4に於ける
オフセット型スタガード構造のMIS型電界効果トラン
ジスタを構成するシリコン薄膜半導体装置の構造工程を
断面で示した図で有る。まず参考例1と同様基板701
を洗浄した後、下地保護膜702としてSiO2 膜を2
000Å程度堆積する。続いて第一のシリコン膜を30
0Å程度以上堆積し、パターニングを行う事でパッドと
なるシリコン膜703を形成する。この第一のシリコン
膜として本実施例では参考例1でチャンネル部シリコン
膜を堆積したLPCVD装置を用いて堆積温度600℃
シラン流量12.5SCCMで1250Åに堆積したが、こ
れ以外にも同じLPCVD装置を用いて堆積温度550
℃程度でシリコン膜を堆積する事も、原料ガスとしてジ
シラン(Si26)を用いて堆積温度450℃程度で堆
積する事も、PECVD法にて250℃程度でシリコン
膜を堆積する事も可能で有る。工程最高温度600℃を
越えぬ膜形成温度で有るならば、如何なる方法であって
も構わない。次に第二のシリコン膜704を堆積する
が、この第二のシリコン膜の膜厚が300Å程度以上有
り、不純物注入後のソース・ドレイン領域の抵抗値がト
ランジスタを動作させた時のチャンネル領域の抵抗値に
比べて充分低ければ、第一のシリコン膜又はパッドとな
るシリコン膜703は必要とされない。本参考例4では
第二のシリコン膜704を参考例1でチャンネル部とな
るシリコン薄膜と同じ方法で堆積した。即ちLPCVD
法にてモノシランを原料ガスとし、堆積温度550℃、
シラン流量100SCCM堆積速度21.2Å/minで2
50Åの膜厚に堆積した。しかし、第二のシリコン膜形
成方法は第一のシリコン膜と同様、工程最高温度600
℃を越えぬ膜形成温度で有るならば、如何なる方法でも
可能で有る。例えば、第二のシリコン膜も堆積温度60
0℃、シラン流量12.5SCCM、反応炉内圧力9.0mt
orrで堆積しても構わぬし、又、原料ガスにジシランや
トリシランなどの高次シランを用いて更に低温で膜形成
する事も可能で有る。この様に何らかの方法で第二のシ
リコン膜704を形成し(図7(b))、パターニング
を行った後、参考例1と同様の方法でゲート絶縁層70
5を形成した。即ち、ECR−PECVD法でSiO2
膜を1500Å堆積した。ゲート絶縁層705の形成手
段としては第二のシリコン膜704が多結晶シリコン膜
である場合、APCVD法で形成する事も出来る。次に
ゲート電極となる金属膜などを形成する。本参考例4で
はゲート電極材料として燐を高濃度に添加したシリコン
膜を用いた。ここではLPCVD法で堆積温度600
℃、モノシラン200SCCM、ヘリウムが99.5%でホ
スフィンが0.5%のヘリウム・ホスフィン混合ガスを
6SCCM更にヘリウム100SCCMを流し、炉内圧力100
mtorr で3000Åの膜厚に堆積した。成膜直後のシー
ト抵抗値は744Ω/□で有った。引き続いてレジスト
を塗布し、レジストのパターニングを行った後、CF4
とO2の混合プラズマに依り燐添加シリコン膜のパター
ニングを行った。CF4とO2の比がそれぞれ200SCCM
と200SCCMで入射波出力700Wでパターニングを行
った。この時の燐添加シリコン膜のエッチング速度は1
5.4Å/secで5分57秒間エッチングを行い、ゲ
ート電極706を作成した。燐添加シリコン膜の膜厚は
3000Åで有ったので、このプラズマエッチングに依
り、ゲート電極幅はレジスト707に比べて左右それぞ
れ2500Å程度細められている(図7(c))。次に
ゲート電極706作成に用いたレジスト707を剥離せ
ずに残したまま、不純物イオンを添加する。本参考例4
では不純物として燐を選びn型薄膜半導体装置を目指し
たが、無論他元素もその目的に応じて可能で有る。本参
考例4では質量分析装置が付いていないイオン打ち込み
装置を用いて不純物イオン添加を施した。原料ガスとし
て水素中に希釈された濃度5%のホスフィンを用い、加
速電圧110kVで3×10151/cm2 の濃度に打ち込
んだ。この様にして、第一のシリコン膜と第二のシリコ
ン膜の一部はソース・ドレイン領域708となり、又ゲ
ート電極作成に用いたレジスト707は膜厚がおよそ2
μm程度有るため、この下に位置する第二のシリコン膜
はイオン添加されず、チャンネル部709を構成するに
至る(図7(c))。又、この方法に依り、オフセット
型薄膜半導体装置が作成される。次にゲート電極作成用
レジスト707を剥離した後、該基板に600℃で7時
間以上の熱処理を施し、添加不純物イオンの活性化及
び、チャンネル部シリコン膜709の結晶性が不充分な
場合の結晶化を促進する。本参考例4では参考例1の本
発明で行った熱処理と同様窒素雰囲気下600℃にて2
3時間の熱処理を施した。続いて層間絶縁膜としてSi
2 710をAPCVD法などで5000Å堆積し、更
に質量分析装置の付いていないイオン打ち込み装置に
て、水素を加速電圧80kVで5×10151/cm2 打ち
込んだ後、コンタクト・ホールを開口し、アルミニウム
などで配線711をし、オフセット型薄膜半導体装置が
完成する。
【0038】こうして作成したオフセット型薄膜半導体
装置のトランジスタ特性を測定した所、L=W=10μ
m、Vds=4Vでオン電流は3.4μA、ソース・ド
レイン電流の最小値はVgs=−3.5Vの時0.09
pA、又Vgs=−10Vで定義したオフ電流は0.2
8pAと、トランジスタ・オフ時のリーク電流を低く押
さえ、且つ良好なオン電流を得る事が出来た。
【0039】参考例3及び参考例4で述べた様にオフセ
ット型薄膜半導体装置でソース領域・ドレイン領域が形
成された後、熱処理を加える事でオン電流は高く、リー
ク電流の小さい薄膜半導体装置を作成可能で有るが、本
発明が参考例3及び参考例4で詳述したオフセット型薄
膜半導体装置の製造方法だけに限定される物では決して
無い。例えば参考例4でオフセット型薄膜半導体装置を
作成する方法としてゲート電極幅よりも広い幅を持つレ
ジストを打ち込みのマスクとしたが、他にも様々な方法
が有る。例えば金属をゲート電極として用い、この表面
及び側面を酸化してゲート電極を細めた後に不純物イオ
ンを打ち込む事などでもオフセット型薄膜半導体装置を
作成出来る。又、図5(c)に示したように逆スタガー
ド構造に於いてもマスク材506の幅をゲート電極50
5よりも広げる事などでオフセット型薄膜半導体装置と
なる。本発明はこれらあらゆる製造方法で作成されたオ
フセット型薄膜半導体装置に有効で有る。
【0040】(実施例)図8(a)〜(f)はMIS型
電界効果トランジスタを形成するシリコン薄膜半導体装
置の製造工程を断面で示した図で有る。
【0041】本実施例では絶縁性基板801として23
5mm□の石英ガラスを用いたが、600℃の温度に耐え
得る基板又は下地物質で有るならば、その種類や大きさ
は無論問われない。例えばシリコン・ウェハー上に形成
された三次元LSIなども下地基板として可能で有る。
まず有機洗浄及び酸洗浄した石英ガラス基板801上面
に下地SiO2膜802を常圧化学気相堆積法(APCV
D法)で堆積した。下地SiO2 膜802の形成は基板
温度300℃、シラン流量120SCCM、酸素840SCC
M、窒素約140SLMで堆積した。この時の堆積速度
は3.9Å/secで、堆積時間は8分33秒で有っ
た。次にドナー又はアクセプターとなる不純物を含んだ
シリコン薄膜803を減圧気相化学堆積法(LPCVD
法)にて堆積した(図8(a))。本実施例では不純物
としてリンを選び、フォスフィン(PH3)0.03SCC
M、シラン(SiH4)200SCCMを原料ガスとして堆積
温度600℃で1500Å堆積した。この時の堆積速度
は30Å/minで成膜直後のシート抵抗値は1951
Ω/□で有った。次に前記シリコン薄膜803上にレジ
ストを形成し、四弗化炭素(CF4)、酸素(O2)、窒
素(N2)等の混合プラズマでパターニングを行い、ソ
ース・ドレイン領域804を形成した。続いて該領域8
04表面上の汚物・自然酸化膜を取り除いた後、直ちに
アモルファス・シリコン薄膜805を減圧CVD法で堆
積した。(図8(b))本実施例に於ける減圧CVD装
置は184.5lで反応室は石英ガラスに依り作成され
ている。反応室の外側には3ゾーンに分かれたヒーター
が設置されており、それら3つのヒーターを独立に調整
する事で反応室内中央部付近に所望の温度で等温領域を
形成する。基板はこの等温領域内に水平に設置して、ア
モルファス・シリコン薄膜805を堆積した。アモルフ
ァス・シリコン薄膜805は原料ガスとしてジシラン
(Si26)100SCCMを用い、希釈ガスとしてヘリウ
ム(He)100SCCMを使用した。堆積温度は450℃
であった。本実施例のアモルファス・シリコン薄膜80
5を堆積する為に用いた減圧CVD炉の排気はメカニカ
ル・ブースター・ポンプとロータリー・ポンプを直結し
て行っている。メカニカル・ブースター・ポンプと反応
炉の間にはコンダクタンス・バルブが取り付けて有り、
このバルブの開閉量を調整する事で、反応室内の圧力を
所望の値に調整・維持可能となる。本実施例ではアモル
ファス・シリコン薄膜805を堆積中、反応室内の圧力
を306mtorr に保った。堆積速度は18.07Å/m
inで、307Åの膜厚にアモルファス・シリコン薄膜
805を堆積した。次にこの様にして作成されたアモル
ファス・シリコン薄膜805上にレジストを形成し、四
弗化炭素、酸素、窒素等の混合プラズマでパターニング
を行い、いずれチャンネル部となる位置に丈アモルファ
ス・シリコン薄膜806を残した。
【0042】次に、この基板を沸騰している濃度60%
の硝酸にて洗浄し、更に1.67%弗化水素酸水溶液に
20秒間浸してソース・ドレイン領域804といずれチ
ャンネル部となる位置に残されたアモルファス・シリコ
ン薄膜806上の自然酸化膜を取り除いて清浄なシリコ
ン膜が出現した後、直ちに電子サイクロトロン共鳴プラ
ズマCVD装置(ECR−PECVD装置)にて酸素プ
ラズマ807を照射した。(図8(c))本実施例で用
いたECRーPECVD装置の概要を図2に示す。酸素
プラズマは2.45GHzのマイクロ波を導波間201
を通じて反応室202に導き、100SCCMの酸素をガス
導入管203から導入して酸素プラズマを立てた。この
時反応室内の圧力は1.84mtorr で、マイクロ波の出
力は2500Wで有った。反応室の外側には外部コイル
204が設けられて居り、酸素プラズマに875Gau
ssの磁場を掛けてプラズマ中の電子にECR条件を満
足せしめている。基板205はプラズマに対して垂直に
置かれ、ヒーター206に依り基板温度が300℃とな
る様保たれている。この条件で酸素プラズマ807を8
分20秒間照射して、いずれチャンネル部となる位置に
残されたアモルファス・シリコン薄膜806の酸化を行
い、ゲート絶縁層の一部位となるSiO2膜808を得
た。この時、ゲート絶縁層の一部位となるSiO2 膜8
08の下部には、いずれチャンネル部となるアモルファ
スシリコン薄膜809が残留している。(図8(d))
更に真空を破る事なく連続してゲート絶縁層となるSi
2膜810を堆積した。このSiO2膜810はマイク
ロ波出力が2250W、シラン流量60SCCM、酸素流量
100SCCM、基板温度300℃で、18.75秒間堆積
した。堆積中に於ける反応室内圧力は2.62mtorrで
有った。こうして形成した多層膜を多波長分散型偏光解
析法(多波長分光エリプソメトリー:ソープラ社MOS
S−ES4G)を用いて、いずれチャンネル部となる残
留しているアモルファス・シリコン膜809の膜厚と、
アモルファス・シリコン膜を酸化して形成したSiO2
膜808の膜厚、及びECR−PECVD法で堆積した
SiO2膜810の膜厚を測定した所、アモルファス・
シリコン薄膜809が205Å、SiO2膜808が1
20Å、SiO2膜810が1500Åで有った。又こ
の時、波長が632.8nmに於けるSiO2膜の屈折
率は、SiO2膜808が1.42、SiO2膜810が
1.40で有った。
【0043】次にこうして得られた基板を600℃に保
持された電熱炉に挿入し、48時間の熱処理を施した。
この時電熱炉には純度99.999%以上の窒素ガスを
20l/min流し続け、不活性雰囲気を保持し続け
た。この不活性雰囲気600℃の熱処理に依り、チャン
ネル部に残留していたアモルファス・シリコン薄膜は結
晶化し、チャンネル部を構成するシリコン薄膜811へ
と改変される。(図8(e))続いてこの基板を再びE
CR−PECVD装置に入れ、該装置を用いて熱処理が
施された基板に水素プラズマを照射した。この時、基板
温度は300℃、マイクロ波出力2000Wで水素を1
00SCCM流して水素プラズマを立てた。この状態で反応
室内の圧力は1.97mtorr で有った。水素プラズマ照
射は45分間行った。
【0044】次にクロムをスパッター法で1500Å堆
積し、パターニングに依りゲート電極812を形成し
た。この時シート抵抗値は1.36Ω/□で有った。そ
の後、ゲート絶縁膜にコンタクトホールを開け、ソース
・ドレイン取り出し電極813をスパッター法などで形
成し、パターニングを行う事でトランジスタは完成す
る。(図8(f))本実施例ではソース・ドレイン取り
出し電極材料として、膜厚8000Åのアルミニウムを
用いた。この時のアルミニウムのシート抵抗値は42m
Ω/□で有った。
【0045】この様にして試作した薄膜トランジスタ
(TFT)の特性の一例Vgs−Ids曲線を図9の9
−aに示した。ここでIdsはソース・ドレイン電圧、
Vds=4V、温度25℃で測定した。トランジスタ・
サイズはチャンネル部の長さL=10μm、幅W=10
0μmで有った。Vds=4V,Vgs=10Vでトラ
ンジスタをオンさせた時のオン電流はIds=34.5
μAと良好なトランジスタ特性を有する薄膜半導体装置
が得られた。又、このトランジスタの飽和電流領域より
求めた電界効果移動度は12.52cm2 /v・secで
有った。図9の9−bには比較の為に従来技術に依って
作成した薄膜半導体装置のトランジスタ特性を図示し
た。即ち、従来技術では、チャンネル部シリコン薄膜を
減圧CVD法にて600℃で堆積し、酸素プラズマ照射
を施さぬ他は総て本実施例と同一の工程で薄膜半導体装
置を作成したもので有る。この時、減圧CVD法でチャ
ンネル部シリコン薄膜を堆積する装置は本実施例でアモ
ルファス・シリコン薄膜を堆積した装置と同一で有り、
原料ガスのモノシランは24SCCM流し、反応炉内圧力は
13.8mtorr、堆積速度は19.00Å/minで2
52Åの膜厚に堆積した。この従来のTFTのオン電流
はIds=4.6μAで電界効果移動度は4.40cm/
v・secで有った。この他に、チャンネル部シリコン
薄膜を同様に減圧CVD法で600℃にて堆積した後、
ゲート絶縁膜堆積前に酸素プラズマ照射を施し、それ以
外の工程は総て本実施例と同一の工程で薄膜半導体装置
を作成し、TFT特性を測定した所、TFT特性は酸素
プラズマ照射の有無でほとんど変化せず、酸素プラズマ
照射を施したTFTのVgs−Ids曲線は図9の9−
bと一致した。この時TFTのオン電流はIds=4.
7μAで、電界効果移動度は4.44cm2 /v・sec
で有った。即ち、チャンネル部シリコン薄膜を600℃
にて減圧CVD法で堆積する従来技術では、酸素プラズ
マ照射の効果は非常に小さい。図9の9−cには別の従
来技術に依り作成された薄膜半導体装置のTFT特性を
図示した。この従来技術では、本実施例で酸素プラズマ
照射を施さぬ他は総て本実施例と同一の工程で薄膜半導
体装置を作成した物で有る。即ち、チャンネル部シリコ
ン層として、まずアモルファス・シリコン薄膜を堆積
し、その後600℃の熱処理をおこなうものの、ゲート
絶縁層形成前に酸素プラズマ照射を施さなかった工程で
有る。この従来技術に依り、作成されたTFTは−10
Vのデプレッションを呈しており、立ち上がり特性も良
くない。この薄膜半導体装置のオン電流はVds=4
V、Vgs=10Vで12.1μAで有り、電界効果移
動度は9.94cm2/v・secで有った。
【0046】こうした結果から本実施例が示した通り、
いずれチャンネル部となるアモルファス・シリコン薄膜
に酸素プラズマを照射し、その後熱処理を施してチャン
ネル部シリコン薄膜の結晶化を進めた時のみ、薄膜半導
体装置のトランジスタ特性が大幅に向上する事が分か
る。これはまずアモルファス・シリコン薄膜の表面が酸
素プラズマで酸化される為、清浄なMIS界面が形成さ
れ、その後、結晶化が進められた為で有る。これにより
従来技術で作成した薄膜半導体装置に比べ、本発明の実
施例が著しく良好な半導体特性を有する理由が分かる。
【0047】(参考例5)絶縁性物質上にシリコン膜及
び酸化硅素膜を形成した後、ドナー又はアクセプターと
なる不純物をシリコン膜に添加して、シリコン膜に依る
導電層を作成した。
【0048】本参考例5では基板として直径75mmの溶
融石英基板を用いた。しかし、無論600℃程度の熱処
理に耐え得る基板であるならば何で有っても構わない。
例えば加工されたシリコン基板なども可能で有る。まず
有機洗浄及び酸洗浄した基板上面に下地SiO2膜をA
PCVD法で堆積した。下地SiO2膜の形成は基板温
度300℃、シラン流量120SCCM、酸素840SCCM、
窒素約140SLMで堆積した。この時の堆積速度は3.
9Å/secで堆積時間は12分49秒で有った。次に
参考例1にてチャンネル部シリコン膜を堆積するのに用
いたLPCVD装置を用いて参考例1と同様な方法でシ
リコン膜を堆積した。即ち堆積温度550℃、シラン流
量100SCCM、反応室内圧力を400mtorrにて1
1分20秒間シリコン膜を堆積した。こうして得られた
シリコン膜の膜厚は252Åで有った。
【0049】次にこうして得られた基板に熱処理を施し
て、シリコン膜の結晶性を高めた。この熱処理方法は参
考例1でシリコン膜104の結晶性を高める為に施した
熱処理と同一で有る。即ち、窒素雰囲気下600℃で2
3時間の熱処理を行った。熱処理終了後、このシリコン
膜はレジストでパターニングされ、さらにCF4とO2
混合プラズマに依りエッチングされ、シリコン膜の配線
パターンが作成された。
【0050】続いてこの基板を濃度60%の沸騰硝酸に
て洗浄し、更に1.67%弗化水素酸水溶液に20秒間
浸して、シリコン膜上の自然酸化膜を取り除き、清浄シ
リコン表面を出現させた後、直ちにECRーPECVD
装置にて酸化硅素膜を1500Åの厚さに堆積した。こ
こで酸化硅素膜の堆積は参考例1の本発明にてゲート絶
縁膜を形成する方法と全く同一の方法で行った。次にイ
オン打ち込み装置を用いてドナー又はアクセプターとな
る不純物をシリコン膜で作成した配線に添加した。本参
考例5では不純物として燐を選びn型導電層の作成を目
指したが、無論他元素もその目的に応じて可能で有る。
本参考例5ではバケットタイプの質量非分離型のイオン
注入装置を用いて不純物イオンの添加を施した。原料ガ
スとして水素中に希釈された濃度5%のホスフィンを用
い、加速電圧110KVで3×10151/cm2 の濃度に
酸化硅素膜を通じて打ち込んだ。次にこの基板を窒素雰
囲気下で300℃に保たれている炉に挿入して熱処理を
施した。熱処理時間は丁度一時間で有った。300℃、
一時間の熱処理終了後、酸化硅素膜にコンタクトホール
を開穴し、アルミニウムで取り出し電極を作成した。こ
うして作成された不純物添加シリコン膜配線の抵抗を測
定した所、シート抵抗値として、95%の信頼係数で
(71±15)kΩ/□が測定された。一般に数百Åの
膜厚しか持たぬ薄膜に不純物イオンを添加して、300
℃程度の低温で添加イオンを活性化して導電層を得る事
は不可能と信じられていた。しかるに、本発明では熱処
理を施されたシリコン膜の膜質を、シリコン膜上をEC
R−PECVD法で堆積した酸化硅素膜で被覆する事に
依り、シリコン膜表面の捕獲密度を低減させる等のシリ
コン膜質改善に成功した為、電子散乱密度を低下させ、
薄膜導電層の作成が初めて可能となった。この事を従来
技術に依るシリコン膜と比較し、本発明の優位性を明ら
かにする。
【0051】まず第一にシリコン膜をLPCVD法にて
600℃で堆積した後、ECRーPECVD法で酸化硅
素膜を形成した従来技術のシリコン膜に不純物を添加
し、300℃の低温活性化でシリコン膜導電層の作成を
試みた。ここではシリコン膜を600℃で、モノシラン
を12.50SCCM流し、反応室内圧力を9.2mtor
rで263Åの膜厚に堆積した他は、本参考例5の本発
明と全く同一の工程で不純物添加シリコン膜配線を作成
した。こうして得られた従来技術のシリコン膜のシート
抵抗は基板内5ヶ所を測定して総て1GΩ/□以上で事
実上電流は全く流れなかった。
【0052】第二にシリコン膜は本参考例5の本発明と
全く同様に600℃の熱処理を施して作成し、その後A
PCVD法で酸化硅素膜を形成した従来技術のシリコン
膜に不純物を添加し、300℃の低温活性化でシリコン
膜導電層の作成を試みた。ここで酸化硅素膜はAPCV
D法で基板温度を300℃に保ち、窒素中に20%シラ
ンを含んだ窒素・シラン混合ガスを300SCCM、酸素を
420SCCM流し、約140SLMの希釈用窒素をこれらの
原料ガスと共に流して、1500Åの膜厚に堆積した。
これ以外は総て、本参考例5の本発明と全く同一の工程
で不純物添加シリコン膜配線を作成した。こうして得ら
れた従来技術のシリコン膜のシート抵抗値は95%の信
頼係数で(175±56)kΩ/□で有った。その後こ
の基板を再度ECR−PECVD装置に装着し、水素プ
ラズマ処理を施した。水素プラズマ処理は基板温度30
0℃で水素を125SCCM流し、マイクロ波出力2000
Wで30分間行った。水素プラズマ処理後、基板内5ヶ
所の抵抗値を測定した所、2ヶ所のシート抵抗は1GΩ
/□で以上で有り、残りの3ヶ所の平均値は158kΩ
/□で標準偏差値は68kΩ/□で有った。
【0053】この様に600℃以下で熱処理されたシリ
コン膜上をECRーPECVD装置で形成された酸化硅
素膜で被覆する事に依り、高膜質なシリコン膜が得られ
る事が分かる。この為、参考例1で示した様に本発明の
シリコン膜を薄膜半導体装置のチャンネル部に用い、E
CRーPECVD装置で形成された酸化硅素膜をゲート
絶縁層に用いると特性の良い薄膜半導体装置が得られ、
又本参考例5で示した様に本発明のシリコン膜に不純物
イオンを添加すると、低温で低抵抗のシリコン膜導電層
を得る事が可能となる。従って本発明のシリコン膜は単
に薄膜半導体装置に有効のみならず、電荷結合装置(C
CD)のゲート電極や配線など、あらゆる電子装置に使
用される非単結晶シリコン膜に取って極めて有効に利用
し得る。
【0054】(参考例6)参考例5でバケット型質量非
分離型のイオン注入装置を用いて不純物イオンをシリコ
ン膜に添加した工程を、質量分離型イオン注入装置に変
えて質量数31の燐の一価イオンを打ち込む事に変更し
た他は、総て参考例5と全く同一工程で、不純物添加シ
リコン膜導電層の作成を試みた。本参考例6では燐イオ
ンを90KVで3×10151/cm2 打ち込んだ。こうして
得られた不純物添加シリコン膜の抵抗を測定した所、基
板内5ヶ所で総て1GΩ/□で実質的には全く電流は流
れなかった。これは参考例5では、不純物の添加を質量
非分離型のイオン注入装置を用い、原料ガスとして水素
・ホスフィン混合ガスを使用した為、シリコン膜に燐元
素添加時には必然的に水素イオンの添加が同時に行わ
れ、イオン添加の際生じた欠陥が水素イオンで修復され
る為、本発明の良質なシリコン膜に限って、低温で低抵
抗シリコン導電層が作成されたので有る。
【0055】(参考例7)図10(a)〜(d)は本参
考例7に於けるセルフ・アライン型スタガード構造のM
IS型電界効果トランジスタを構成するシリコン薄膜半
導体装置の製造工程を断面で示した図で有る。まず参考
例1と同様基板1001を洗浄した後、下地保護膜10
02としてSiO2 膜を2000Å程度堆積する。続い
て第一のシリコン膜を1500Å程度堆積し、パターニ
ングを行う事でパッドとなるシリコン膜1003を形成
する(図10(a))。この第一のシリコン膜として本
参考例7では参考例1でチャンネル部シリコン膜を堆積
したLPCVD装置を用いて堆積温度600℃シラン流
量12.5SCCMで1500Åに堆積したが、これ以外に
も同じLPCVD装置を用いて堆積温度550℃程度で
シリコン膜を堆積する事も、原料ガスとしてジシラン
(Si26)を用いて堆積温度450℃程度で堆積する
事も、PECVD法にて250℃程度でシリコン膜を堆
積する事も可能で有る。工程最高温度600℃を越えぬ
膜形成温度で有るならば、如何なる方法であっても構わ
ない。次に第二のシリコン膜1004を堆積するが、こ
の第二のシリコン膜の膜厚が300Å程度以上有り、不
純物注入後のソース・ドレイン領域の抵抗値がトランジ
スタを動作させた時のチャンネル領域の抵抗値に比べて
充分低ければ、第一のシリコン膜又はパッドとなるシリ
コン膜1003は必要とされない。本参考例7では第二
のシリコン膜1004を参考例1でチャンネル部となる
シリコン薄膜と同じ方法で堆積した。即ちLPCVD法
にてモノシランを原料ガスとし、堆積温度550℃、シ
ラン流量100SCCM堆積速度21.2Å/minで25
0Åの膜厚に堆積した。その後参考例1でシリコン膜の
結晶性を高める為に行ったのと全く同一の熱処理を施し
た。即ち窒素雰囲気下600℃で23時間の熱処理を行
った。(図10(b))。次に第二のシリコン膜のパタ
ーニングを行った後、参考例1の本発明と同様の方法で
ゲート絶縁層1005を形成した。即ち、ECR−PE
CVD法でSiO2 膜を1500Å堆積した。次にゲー
ト電極となる金属膜などを形成する。本参考例7ではゲ
ート電極材料として、2000Åの膜厚を有するクロム
膜を用いた。クロム膜は基板温度180℃でスパッター
法に依り形成された。成膜直後のクロムのシート抵抗値
は994mΩ/□で有った。引き続いてAPCVD法で
クロム上に300℃の基板温度でSiO2 膜を3000
Å堆積した。その後レジストでパターニングを行い、ゲ
ート電極1006とSiO2 膜に依る保護キャップ層1
007を形成し、不純物イオンを添加した。本参考例7
では不純物として燐を選びn型薄膜半導体装置の作成を
目指したが、無論他元素もその目的に応じて可能で有
る。本参考例7では質量分析装置が付いていないイオン
打ち込み装置を用いて不純物イオン添加を施した。原料
ガスとして水素中に希釈された濃度5%のホスフィンを
用い、加速電圧110kVで5×10151/cm2 の濃度
に打ち込んだ。この様にして、第一のシリコン膜と第二
のシリコン膜の一部はソース・ドレイン領域1008と
なり、又SiO2 膜に依る保護キャップ層1007が有
るため、この下に位置する第二のシリコン膜はイオン添
加されず、チャンネル部1009を構成するに至る(図
10(c))。次に該基板を窒素雰囲気下350℃で2
時間の熱処理を施し、添加不純物イオンの活性化を行っ
た。その後層間絶縁膜としてSiO2 膜1010を50
00Å堆積し、続いてコンタクト・ホールを開穴し、ア
ルミニウムなどで配線1011をし、セルフ・アライン
型薄膜半導体装置が完成する(図10(d))。
【0056】こうして作成したセルフ・アライン型薄膜
半導体装置のトランジスタ特性を測定した所、L=W=
10μm、Vds=4V、Vgs=10Vでオン電流は
4.89μA、ソース・ドレイン電流の最小値はVgs
=−3.5Vの時0.21pA、又Vgs=−10Vで
定義したオフ電流は2.65pA、電界効果移動度μo
=26.1cm2 /v・secと極めて良好なセルフ・ア
ライン型薄膜半導体装置が出来上がった。
【0057】比較の為にチャンネル部シリコン膜をLP
CVD法で600℃で作成した他は本参考例7の本発明
と全く同一の工程でセルフ・アライン型薄膜半導体装置
を作成した。しかしながら参考例5で詳述した様に、従
来のシリコン膜では薄膜部の添加不純物元素の活性化が
なされず、薄膜部の不純物添加シリコン膜の抵抗が高過
ぎ、それ故トランジスタのオン電流は47.9pAと非
実用的となった。これに対し、本参考例7の本発明では
特性変動の主因となる水素化プラズマ処理を排除し、且
つ低温工程で窮めて良好なセルフ・アライン型薄膜半導
体装置の作成に成功した。これは参考例2で示した如く
チャンネル部シリコン膜半導体層の膜厚を500Å以下
の薄膜化をして、基本的な半導体特性を向上せしめても
尚参考例5の本発明に依る薄膜導伝性シリコン膜の作成
に依り、薄膜部のソース・ドレイン領域の形成が低温で
容易になされた賜物で有る。即ち、ドナー又はアクセプ
ターとなる不純物の活性化は従来膜厚が1000Å程度
以上有るシリコン膜に550℃程度以上の熱処理を加え
ねば達成し得なかった。この為、セルフ・アライン型薄
膜半導体装置ではチャンネル部の膜厚も必然的に100
0Å程度以上となり、特性も悪かった。その上、ゲート
絶縁層とゲート電極が出来上がった後、添加不純物イオ
ン活性化の目的で550℃程度以上の熱処理が施される
為、ゲート絶縁膜の膜質劣化が生じ、水素化処理が必要
不可欠で有った。又、ゲート電極として金属材の使用が
困難であった為、ゲート線の抵抗が高かったり、ゲート
電極とゲート線を別々に作成する必要が有った。ところ
が本発明に依り、金属材料をゲート電極として使用出
来、同時にばらつきの主因で有る水素処理を排除し、よ
り簡昜な製造方法で高特性の薄膜半導体装置を安定的に
製造し得る事に成功した。
【0058】
【発明の効果】以上述べて来た様に、本発明に依れば、
ゲート絶縁膜は異なる2種類の酸化珪素膜からなり、し
かもアモルファスシリコン膜上に酸素プラズマを照射し
て第1酸化珪素膜を形成し、前記第1酸化珪素膜上に減
圧CVD法により第2酸化珪素膜を形成する形成し、し
かる後に前記アモルファスシリコン膜を結晶成長させる
ことにより、チャンネル領域となるシリコン膜とゲート
絶縁膜との界面を清浄化することが可能となり、また第
1及び第2酸化膜を形成した後に、結晶成長させること
により、シリコン膜の良好な膜質が得られ、半導体装置
の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一参考例を示すシリコン薄膜半導体
装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【図2】 本発明の実施例で用いた電子サイクロトロン
共鳴プラズマCVD装置の概要を示す図。
【図3】 本発明の効果を示す図。
【図4】 本発明の効果を示す図。
【図5】 本発明の一参考例を示すシリコン薄膜半導体
装置の素子断面図。
【図6】 本発明の効果を示す図。
【図7】 本発明の一参考例を示すシリコン薄膜半導体
装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【図8】 本発明の一実施例を示すシリコン薄膜半導体
装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【図9】 本発明の効果を示す図。
【図10】 本発明の一参考例を示すシリコン薄膜半導
体装置製造の各工程に於ける素子断面図。
【符号の説明】 101…下地基板 102…下地保護膜 103…ソース・ドレイン領域 104…シリコン薄膜 105…チャンネル部シリコン薄膜 106…ゲート絶縁膜 107…ゲート電極 108…層間絶縁膜 109…ソース・ドレイン取り出し電極 201…導波管 202…反応室 203…ガス導入管 204…外部コイル 205…基板 206…ヒータ 207…ガス導入管 501…ソース・ドレイン領域 502…ゲート電極 503…ソース・ドレイン領域 504…ゲート電極 505…ゲート電極 506…マスク材 507…ソース・ドレイン領域 701…基板 702…下地保護膜 703…パッドとなるシリコン膜 704…第二のシリコン膜 705…ゲート絶縁層 706…ゲート電極 707…レジスト 708…ソース・ドレイン領域 709…チャンネル部シリコン膜 710…層間絶縁膜 711…配線 801…絶縁基板 802…下地SiO2膜 803…不純物を含んだシリコン薄膜 804…ソース・ドレイン領域 805…アモルファス・シリコン薄膜 806…いずれチャンネル部になる位置に丈残されたア
モルファス・シリコン薄膜 807…酸素プラズマ 808…アモルファス・シリコン薄膜を酸化して形成し
たSiO2膜 809…いずれチャンネル部となる残留しているアモル
ファス・シリコン薄膜 810…ECR−PECVD法で堆積したSiO2膜 811…チャンネル部を構成するシリコン薄膜 812…ゲート電極 813…ソース・ドレイン取り出し電極 1001…基板 1002…下地保護膜 1003…パッドとなるシリコン膜 1004…第二のシリコン膜 1005…ゲート絶縁層 1006…ゲート電極 1007…保護キャップ層 1008…ソース・ドレイン領域 1009…チャンネル部シリコン膜 1010…層間絶縁膜 1011…配線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // H01L 21/316 H01L 29/78 616M 618C 627G

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも表面が絶縁性物質で有る基板の
    一方面上にチャンネル部シリコン膜半導体層を形成し、
    該半導体層上にゲート絶縁層、ゲート電極を形成したM
    IS型電界効果トランジスタを構成する薄膜半導体装置
    に於いて、 絶縁性物質上にチャンネル部シリコン膜半導体層を構成
    するシリコン膜を堆積する工程と、 前記シリコン膜が形成された基板を600℃以下の温度
    で熱処理する工程と、チャンネル部シリコン膜半導体層
    上に形成されるゲート絶縁層を電子サイクロトロン共鳴
    プラズマCVD法に依り形成する工程を含む事を特徴と
    する薄膜半導体装置の製造方法。
  2. 【請求項2】チャンネル部シリコン膜半導体層の膜厚が
    500Å以下である請求項1記載の薄膜半導体装置及び
    その製造方法。
  3. 【請求項3】少なくとも表面が絶縁性物質で有る基板の
    一方面上に形成されたチャンネル領域とソース領域及び
    ドレイン領域とゲート絶縁層を介して該チャンネル領域
    に対向する様に形成されたゲート電極から成るMIS型
    電界効果トランジスタにて、ソース領域或いはドレイン
    領域の少なくともどちらか一方の領域がゲート絶縁膜を
    介してゲート電極と重なり合っていない構造を有する薄
    膜半導体装置に於いて、 チャンネル部シリコン膜半導体層を構成するシリコン膜
    を堆積する工程と、ソース領域及びドレイン領域を形成
    する工程と、 前記チャンネル領域及びソース領域・ドレイン領域が形
    成された基板を600℃以下の温度で熱処理する工程を
    含む事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
  4. 【請求項4】少なくとも表面が絶縁性物質である基板の
    一方面上にチャンネル部シリコン膜半導体層を形成し、
    該半導体層上にゲート絶縁膜、ゲート電極を形成したM
    IS型電界効果トランジスタを構成する薄膜半導体装置
    に於いて、 絶縁性物質上にチャンネル部シリコン膜半導体層を構成
    するアモルファス・シリコン膜を堆積した後、該アモル
    ファス・シリコン膜上にゲート絶縁層を形成する前に、
    該アモルファス・シリコン膜上に酸素プラズマを照射す
    る工程と、 前記酸素プラズマ照射された基板を600℃以下の温度
    で熱処理する工程を含む事を特徴とする薄膜半導体装置
    の製造方法。
  5. 【請求項5】少なくとも表面が絶縁性物質で有る基板上
    に形成されたシリコン膜に於いて、該シリコン膜は60
    0℃以下の熱処理を施されて居り、かつ該シリコン膜の
    一部は電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法に依り
    形成された酸化硅素膜で被覆されている事を特徴とする
    シリコン膜。
  6. 【請求項6】下記工程を含む事を特徴としたドナー又は
    アクセプターとなる不純物を含んでいることを特徴とす
    るシリコン膜。 (1)シリコン膜を堆積する工程と、前記シリコン膜が
    形成された基板を600℃以下の温度で熱処理する工
    程。 (2)上記工程を経た後、酸化硅素膜を形成する工程。 (3)上記工程を経た後、ドナー又はアクセプターとな
    る不純物を、該不純物元素の水素化物と水素の混合物を
    原料ガスとして、バケットタイプの質量非分離型のイオ
    ン注入装置を用いて、前記シリコン膜に打ち込む工程。
  7. 【請求項7】酸化硅素膜を電子サイクロトロン共鳴プラ
    ズマCVD法に依り形成する事を特徴とする請求項6記
    載のシリコン膜。
  8. 【請求項8】少なくとも表面が絶縁性物質で有る基板の
    一方面上にチャンネル部シリコン膜半導体層を形成し、
    該半導体層上にゲート絶縁層、ゲート電極を形成したM
    IS型電界効果トランジスタを構成する薄膜半導体装置
    に於いて、下記工程を含む事を特徴とした薄膜半導体装
    置の製造方法。 (1)絶縁性物質上にシリコン膜を堆積する工程と、前
    記シリコン膜が形成された基板を600℃以下の温度で
    熱処理する工程。 (2)上記工程を経た後、ゲート絶縁層を形成する工
    程。 (3)上記工程を経た後、後にチャンネル領域と化す部
    位を覆うようにゲート電極を該ゲート絶縁膜上に形成す
    る工程。 (4)上記工程を経た後、ゲート電極をマスクとしてド
    ナー又はアクセプターとなる不純物を、該不純物元素の
    水素化物と水素の混合物を原料ガスとして、バケットタ
    イプの質量非分離型のイオン注入装置を用いて打ち込む
    事に依り、ソース領域及びドレイン領域を形成する工
    程。
  9. 【請求項9】ゲート絶縁層を電子サイクロトロン共鳴プ
    ラズマCVD法に依り形成する事を特徴とする請求項8
    記載の薄膜半導体装置の製造方法。
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