JPH10211516A - 疲労特性の良好な極細鋼線およびその製造方法 - Google Patents

疲労特性の良好な極細鋼線およびその製造方法

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JPH10211516A
JPH10211516A JP1297397A JP1297397A JPH10211516A JP H10211516 A JPH10211516 A JP H10211516A JP 1297397 A JP1297397 A JP 1297397A JP 1297397 A JP1297397 A JP 1297397A JP H10211516 A JPH10211516 A JP H10211516A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明はブラスめっき極細鋼線の疲労特性を
向上させるための極細鋼線表面元素の特徴およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 3000MPa 以上の引張強さを有する極
細鋼線の表面に露出しているFeの前記極細鋼線の周長
の全周に対する割合を20%以下とする。また、ダイス
伸線において0<(最終ダイスからの個数)/(全ダイ
スの個数)≦0.7に相当する連続配置したダイスを
0.3r≦R≦r(r:伸線速度(m/min)、R:ダ
イスの回転速度(rpm ))で回転させることにより製造
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、タイヤ、ホー
ス、コンベアベルトなどのゴム物品補強用スチールワイ
ヤおよびスチールコードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ゴム中に鋼線を埋め込んでゴムの速度、
耐久性を向上させる技術は多く実施されているが、なか
でもゴムと極細鋼線の複合物は、自動車用タイヤ、高圧
ゴムホース、コンベアベルトなどに応用されている。こ
れらの製品は応力付加状態で繰り返し使用されるので、
ゴム以上に補強用スチールコードには高疲労特性が要求
される。高い伸線加工歪により強加工される極細鋼線は
伸線加工歪の増加により引張強さは増加するものの、疲
労特性は比例して上昇しない。より高級なゴム補強用ス
チールコードを実現するには引張強さに見合った疲労特
性の確保が必要である。
【0003】従来、鋼線の疲労特性を向上させる技術
は、特公平1−27802号公報において伸線加工途中
または後に捻り加工を加え引張残留応力を低減させる方
法がある。しかし、伸線加工歪が3以上では縦割れが発
生しやすく実用的でない。特公平3−23674号公報
では高炭素鋼にNi,Cu,Vを添加し延靱性および腐
食疲労特性を改善した。合金添加によるコストが高まる
点がネックである。また大気疲労特性については不明で
ある。特開平4−131323号公報では0.2〜0.
5%C鋼にV,Ni,Cr,Mo,Nb,Ti,Zr等
の元素を添加し、冷速制御冷却により微細フェライト・
パーライト組織とし、さらに減面率10〜40%の伸線
を行うことにより耐疲労特性を改善した。しかし、C
量、伸線加工歪が小さいために、強度が1000MPa 以
下と低く、本発明の極細鋼線レベルには適用できない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術の問
題点、引張強さ3000MPa 以上の高強度極細鋼線にお
いて適用できなかった捻り加工、合金元素添加+伸線技
術または合金元素添加によるコストアップなどの点を解
決した。つまり、ブラスめっき後伸線加工歪3以上の湿
式伸線により製造される3000MPa 以上の引張強さを
有する極細鋼線において、表面のめっき形態に着目し極
細鋼線表面に露出しているFeの割合を規定することに
より課題を解決することができた。さらにFeの露出面
積を制御するために伸線ダイスを回転させることが有効
であることがわかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の技術的課
題を解決するために、ブラスめっき後ダイスによる伸線
加工により製造される3000MPa 以上の引張強さを有
する極細鋼線において、極細鋼線表面に露出しているF
eの割合が大きく影響していることを突き止めた。具体
的には、横断面研磨片を観察し、ブラスめっきからFe
が露出している周長の全周に対する割合が20%以下で
ある場合は疲労特性に非常に優れることがわかった。さ
らに、大気疲労のみならず腐食疲労特性にも優れること
がわかった。
【0006】また、Feの露出面積を20%以下に制御
する方法としてダイスを回転させることが有効であるこ
とも突き止めた。
【0007】本発明は、ブラスめっき後ダイスによる伸
線加工により製造される3000MPa 以上の引張強さを
有する極細鋼線において、極細鋼線表面に露出している
Feの前記極細鋼線の周長の全周に対する割合が20%
以下であることを特徴とする極細鋼線と、その製造方法
として、0<(最終ダイスからの個数)/(全ダイスの
個数)≦0.7に相当する連続配置したダイスを、0.
3r≦R≦r(r:伸線速度(m/min )、R:ダイス
の回転速度(rpm ))で回転させることを特徴とするも
のである。
【0008】スチールコードなどの極細鋼線はブラスめ
っき後、伸線加工により作製されるが、めっき時は厚さ
がほぼ均一であっても、伸線加工時のダイスとの接触は
必ずしも均一ではなく偏るためにめっき厚さにばらつき
が生じる。そのためある部分はめっきが厚く、他の部分
はFeが露出することがある。伸線加工歪が大きくなる
とその傾向は顕著になることがわかっている。
【0009】そこで、3000MPa 以上の引張強さを有
する強加工された極細鋼線についてFeの露出面積割合
に着目し疲労特性について調査したところ、図1に示す
ように20%を境にして疲労特性が大きく変化する傾向
が得られた。Feが表面に多くなると空気中の水分など
の影響でミクロの腐食生成物が発生し、それが疲労試験
中にクラックの起点になりやすいために疲労特性が低下
する。ブラスめっきが被覆されている部分はFeの空気
成分との接触はなく、疲労起点が発生しにくいので疲労
特性は低下しない。強加工された極細鋼線の場合、疲労
過程における律速はクラック発生であるので、ブラスめ
っきの被覆面積割合が大きい場合は発生時期を遅らせる
点で疲労特性に優れると考えられる。
【0010】さらに露出しているFeの割合を低減させ
る方法として伸線加工中のダイスを回転させる方法が有
効であることを見いだした。特に伸線加工歪の高い部分
である最終ダイス付近が重要であり、その回転速度を伸
線速度と関係させて制御することによりめっきを均一に
加工しFeの露出面積を制御することが可能である。ダ
イスを回転させる作用は鋼線とダイスとの接触面圧を周
方向に均一化することであり、そのため変形に偏りが生
じにくくめっきも均一になる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明についてさらに詳細
に説明する。先ずブラスめっき後ダイスによる伸線加工
により製造される3000MPa 以上の引張強さを有する
極細鋼線に限定した理由について述べる。極細鋼線は線
径0.1〜0.4mm程度が一般的であるが、この線径レ
ベルではSWRM8に代表されるような軟鋼などの比較
的引張強さが低いもの、またはSWRS82Aに代表さ
れる高炭素鋼であっても伸線加工後の引張強さが300
0MPa 以下では引張強さの増加に見合った分の疲労特性
が確保される。しかし、引張強さが3000MPa 以上の
場合は伸線加工条件によっては引張強さに比例した疲労
特性が確保できなくなる。つまり鋼種に関係なく、引張
強さが3000MPa 以上では引張強さに比例した疲労特
性が確保されないので、本発明を行使する上での対象材
料として限定した。したがって、本発明を鋼種に関係な
く3000MPa 以上の極細鋼線に適用することにより、
引張強さの上昇とともに疲労特性も向上させることが可
能である。尚、伸線方法にはダイス伸線の他、冷間圧延
などもあるが、極細鋼線の製造は冷間圧延では行われて
おらず、ダイスに限られるのが現状である。
【0012】次に、露出しているFeの割合を20%以
下に限定する理由について述べる。SWRS82A鋼よ
り製造したブラスめっき極細鋼線の疲労試験後のサンプ
ルを横断面研磨し、表面のFe露出割合を破面近傍から
長手方向に調査したところ、図1に示すようにFe露出
割合が20%を境にして疲労特性が大きく変化すること
がわかった。疲労限はハンター式疲労試験による結果で
ある。Feが表面に多くなると空気中の水分などの影響
でミクロの腐食生成物が発生し、それが疲労試験中にク
ラックの起点になりやすいために疲労特性が低下する。
ブラスめっきが被覆されている部分はFeの空気成分と
の接触はなく、疲労起点が発生しにくいので疲労特性は
低下しない。強加工された極細鋼線の場合、疲労過程に
おける律速はクラック発生であるので、ブラスめっきの
被覆面積割合が大きい場合はクラック発生時期を遅らせ
る点で疲労特性に優れると考えられる。
【0013】さらに上記発明を実行する具体的な方法と
して、ダイスを回転させることによりダイスとの偏接触
を避けることが有効であることを突き止めた。伸線速度
とダイス回転速度の関係を詳細に調査したところ、0<
(最終ダイスからの個数)/(全ダイスの個数)≦0.
7に相当する連続配置したダイスにおいて、0.3r≦
R≦r(r:伸線速度(m/min )、R:ダイスの回転
速度(rpm ))の関係が成立することがわかった。ダイ
スとの偏接触によるFe露出の影響が出やすいのは伸線
後期であることがわかったので、(最終ダイスからの個
数)/(全ダイスの個数)≦0.7とした。0.7を越
えると回転するダイスの数が多くなり、疵のつく割合も
増えることから0.7以下に限定した。また、この範囲
でダイスを回転させても連続配置していなくては効果は
なく、不連続配置の場合は回転していないダイス部で偏
接触によるFeの露出が生じやすく効果が薄れる。
【0014】図2に示すように、伸線速度rとダイス回
転速度Rとの間には0.3r≦R≦rなる最適範囲が生
じることがわかった。ダイス回転速度R(rpm )が
(0.3×伸線速度(m/min ))未満の場合、ダイス
の回転速度が遅いために偏接触が解消されなく効果はな
くなる。逆に伸線速度rの値を越えると回転速度が速す
ぎてダイス、鋼線が磨耗しやすくなり、鋼線表面に疵等
が生じやすくなるために効果がなくなる。
【0015】以下に実施例を示す。
【0016】
【実施例】SWRS82A鋼を鉛パテンティング処理し
た後に、電解酸洗、アルカリ洗浄、Cu,Zn電気めっ
き、乾燥を行い、加熱によるブラス合金化したブラスめ
っき鋼線を、湿式潤滑伸線により0.20または0.3
0mmまで極細伸線を行った。めっきのCu,Znは重量
比でCu:Zn=70:30、伸線後のめっき厚さが約
0.1μmになるように設定した。尚、伸線後の極細鋼
線の横断面を作製するに当たり、表面にNiめっきを施
し研磨による表層ダレを防いだ。表面に露出しているF
eの割合は、横断面研磨片の鋼部をエッチングし外周に
ブラスめっきが存在しない箇所の長さをSEM測定する
ことにより求めた。尚、極細伸線機内のダイス最終10
段は回転可能なタイプになっている。疲労特性の評価は
湿度40%大気中でのハンター疲労試験による107
での疲労限をもって行った。
【0017】表1に試験条件と結果を、本発明と比較例
を合わせて示す。
【0018】
【表1】
【0019】比較1は、引張強さが3000MPa 以下で
ダイスを回転させない伸線方法で製造したものであり、
比較2は本発明のダイス回転方式を適用したものであ
る。露出Fe割合は比較2が若干低め、疲労特性は若干
高めであるが、ほぼ誤差範囲である。この範囲での疲労
特性はどちらも非常に良好であり、ダイスを回転させる
効果はみられない。これは引張強さが3000MPa 以下
と低く、十分な延性を有しているためと考えられる。そ
のため引張強さが3000MPa 以下の場合は本発明を適
用するメリットがない。
【0020】比較3では、露出Fe割合が20%を越え
たために疲労クラックが発生しやすくなり、疲労限が低
下した。
【0021】比較4では、ダイスを回転させて露出Fe
割合の低下を図ったが、R/rの値が0.3未満であ
り、ダイスとの偏接触が解消されず、露出Fe割合が低
下せず改善につながらなかった。
【0022】比較5では、R/rの値が1を越えてお
り、回転速度が高いために表面が疵つきやすくなり、疲
労特性が低下した。
【0023】比較6では、回転させる最終からのダイス
個数/全ダイス個数が0.7を越えており、回転ダイス
の割合が多すぎるために鋼線に疵がつき、疲労特性が低
下した。
【0024】これに対し、本発明の実施例はいずれも疲
労特性の劣化の無い良好な結果を示し、本発明を実施す
ることにより疲労特性が優れることがわかる。
【0025】
【発明の効果】本発明は以上のように実施できるので、
既述の技術的課題を解決する顕著な効果がある。換言す
ると、本発明により3000MPa 以上の引張強さを有す
る極細鋼線の疲労特性を向上させることが可能となり、
工業的メリットは大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】0.20mmブラスめっき鋼線のFe露出割合と
疲労限の関係を示す図である。
【図2】伸線速度rとダイスの回転速度Rの関係を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D02G 3/48 D02G 3/48

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブラスめっき後ダイスによる伸線加工に
    より製造される3000MPa 以上の引張強さを有する極
    細鋼線において、極細鋼線表面に露出しているFeの前
    記極細鋼線の周長の全周に対する割合が20%以下であ
    ることを特徴とする疲労特性の良好な極細鋼線。
  2. 【請求項2】 前記極細鋼線をダイス伸線により製造す
    るにあたり、0<(最終ダイスからの個数)/(全ダイ
    スの個数)≦0.7に相当する連続配置したダイスを、
    0.3r≦R≦r(r:伸線速度(m/min )、R:ダ
    イスの回転速度(rpm ))で回転させることを特徴とす
    る請求項1記載の疲労特性の良好な極細鋼線の製造方
    法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013081982A (ja) * 2011-10-07 2013-05-09 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 耐デラミネーション特性に優れた極細鋼線とその製造方法
JP2018094560A (ja) * 2016-12-08 2018-06-21 株式会社ノブハラ メッキ済み完成線材

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013081982A (ja) * 2011-10-07 2013-05-09 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp 耐デラミネーション特性に優れた極細鋼線とその製造方法
JP2018094560A (ja) * 2016-12-08 2018-06-21 株式会社ノブハラ メッキ済み完成線材

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