JPH10191935A - 食肉製品及びその製造方法 - Google Patents

食肉製品及びその製造方法

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JPH10191935A
JPH10191935A JP9019837A JP1983797A JPH10191935A JP H10191935 A JPH10191935 A JP H10191935A JP 9019837 A JP9019837 A JP 9019837A JP 1983797 A JP1983797 A JP 1983797A JP H10191935 A JPH10191935 A JP H10191935A
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antigen
antibody reaction
meat
milk
patients
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JP9019837A
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Fumitake Morimatsu
文毅 森松
Yoshihisa Takahata
能久 高畑
Masanori Shimane
正則 島根
Kotaro Fujita
浩太郎 藤田
Masahiro Takigawa
雅浩 瀧川
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NH Foods Ltd
Original Assignee
Nippon Meat Packers Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の予防・
治療に有用な食肉製品及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の食肉製品は、下記の性状を有す
る食肉製品である。 (a)鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のうちの一種又は二
種以上をアレルゲンとして認識する患者血清と抗原抗体
反応をさせるとき、抗原抗体反応の生じない又は抗原抗
体反応が低値である;(b)γ−リノレン酸及び/又はア
ラキドン酸カスケード内の脂肪酸を含有する。本発明の
食肉製品は、アレルゲン性が非常に低く、しかも脂肪酸
をバランスよく含有しており、食物アレルギーなどの予
防・治療に有用であり、更に嗜好性にも優れるという特
長を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食肉製品及びその製
造方法に関する。より詳細には、食品アレルギー患者及
び/又はアトピー性皮膚炎患者に好適であるのみなら
ず、健常者にも美味しく食することができ、栄養素(特
に、良質の蛋白質)に富む食肉製品及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】食品アレルギー及びアトピー性皮膚炎等
のアレルギー疾患は年々増加の一途をたどり、その影響
は単に患者の肉体的苦痛に止まらず、患者あるいは家族
の精神的苦痛をも伴うことから大きな社会問題となって
いる。アレルギー疾患が増加した要因には、遺伝的素因
のほかに、食生活の変化(卵・乳製品など同一原材料の
反復・多量摂取・離乳食の早期化)、ダニ抗原の発生し
やすい住居やペットの室内飼育などによる生活様式の変
化、ストレス、大気汚染や受動喫煙などの環境変化等が
考えられているが明確な結論や対処法は得られていな
い。食品アレルギーやアトピー性皮膚炎は、食品として
摂取されたアレルゲンと免疫グロブリンE(以下、IgE
抗体)が患者の体内で反応し、肥満細胞を刺激して、ヒ
スタミンやロイコトリエン等の炎症性メディエーターを
放出させることで惹起される。より詳細には、消化管粘
膜を通過したアレルゲンが、その侵入局所の肥満細胞の
細胞表面にそのFc部分で結合しているIgE抗体2分子のF
abと結合し架橋すると、その細胞に脱顆粒反応が起こ
る。その顆粒中のヒスタミン、ロイコトリエン、セロト
ニン、ヘパリン、遅反応性物質(SRS-A)、好酸球遊走
因子(ECF-A)などが放出され、平滑筋収縮、粘液分泌
亢進、血管透過性亢進などの一連の免疫薬理学的反応を
生じ、アレルギー症状が現れる。
【0003】我が国においては、乳幼児のアレルギー疾
患の10〜25%が食品アレルギーであり、鶏卵、牛
乳、大豆、米、小麦(5大アレルギー食品と呼ばれてい
る)等をアレルギーの原因食品とすることが多い。食品
アレルギー患者がこれらの食品及び/又はその中に含ま
れるアレルゲンを摂取すると、口の中や目がかゆくなっ
たり、嘔吐、下痢、鼻汁、頭痛、発熱、皮膚炎、喘息等
のアレルギー症状が現れ、場合によってはアナフィラキ
シーショックを起こすことがある。このため、5大アレ
ルギー食品及び/又はこれら由来の成分を含む食品を食
べることが出来なかった(からだの科学, 170, 62-65,
1993)。
【0004】また、食品アレルギー患者にはアトピー性
皮膚炎を併発している者も多い。アトピー性皮膚炎患者
は、乳幼児の外にも青少年や成人にも多い。特に、思春
期の患者は、アトピー性皮膚炎に特徴的な乾燥肌、赤ら
顔を呈する故に、精神的な障害を抱えているものも多
い。アトピー性皮膚炎はヒトに特有な過敏性の一つで、
遺伝的傾向があり、血中IgE抗体価が高い状態をアトピ
ーといい、慢性的に経過する湿疹様病変をアトピー性皮
膚炎と呼ぶ。もともと湿疹の出やすい体質に外的刺激が
加わって生じると考えられている。痒みが強く、長期に
わたって悪化と改善を繰り返し、多くは成人するまでに
治癒するが、40〜50代まで続く場合もある。症状は年齢
とともに変化し、乳児では急性病変が顔面や頭部に出る
が、幼小児および成人では苔癬化局面(局部的に皮膚が
硬化し、なめし革のようになる疾病)、痒疹、乾燥性湿
疹が主体となり、それぞれ発症しやすい部位がある。80
〜85%の患者で、症状の季節的消長が認められ、冬から
春に悪化することが多い。また、気道アトピー(喘息、
アレルギー性鼻炎)や魚鱗癬(皮膚が鱗状になる疾病)
を合併しやすく、家族に患者がいると、その人も60%と
いう高い率で発症する可能性があるといわれる。厚生省
は1993年に生活指導ハンドブックを作成した。一般的に
は、皮膚を清潔に保ち、刺激を少なくすることが大切
で、痒みを抑える塗り薬を症状、部位に応じて使用す
る。軽度の湿疹には非ステロイド系を、中度以上の場合
には副腎皮質ホルモン(ステロイドともいう)の入った
物を用いる。特定の食品(一般に、鶏卵、牛乳、大豆等
が多い)を食べると悪化する場合は、長期間にわたり、
その食品の摂取を避けなければならない。しかし、極端
な食事療法は成長障害を起こす危険もあり、慎重な対応
が必要である(イミダス’94. 31、788)。
【0005】上記のアトピー性皮膚炎患者では、血清の
脂質代謝に異常のあることが報告されており(Am. J. Di
s. Child., 53, 933, 1937)、近年、必須脂肪酸の投与
によるアトピー性皮膚炎の治療が見直されている。DHA
に代表されるn-3系不飽和脂肪酸の他に、アラキドン酸
からのエイコサノイド合成に関与するn-6系不飽和脂肪
酸のうち、γ-リノレン酸の有用性について着目されつ
つある(J. Dermatology,121, 75, 1989;小児臨床 48,
931, 1995)。即ち、アトピー性皮膚炎患者の血中リン脂
質の脂肪酸組成は健常者と異なっており、リノール酸含
量は健常者と同じかむしろ高値を示すのに対して、リノ
ール酸から合成されるγ-リノレン酸以降の脂肪酸含量
は全て低値を示し、特にγ-リノレン酸の低下が著し
い。これは、アトピー性皮膚炎患者ではΔ6-不飽和化酵
素活性が低下していることに依ると考えられている。γ
-リノレン酸濃度が低値であるために、アラキドン酸カ
スケードの進行に失調を生じる。このように、健常者で
は摂取されたリノール酸より体内でγ-リノレン酸が合
成されるが、アトピー性皮膚炎患者ではγ-リノレン酸
の血中濃度は低値であるので、食品中のγ-リノレン酸
等の脂肪酸バランス(γ-リノレン酸等の含有量)につ
いても配慮する必要がある。
【0006】上記の食物アレルギー及びアトピー性皮膚
炎等のアレルギー疾患の治療においては、医薬品による
副作用の問題がクローズアップされ、食事療法に対する
期待が強まっている。食事療法では、アレルゲンを除去
した除去食であれ、同一の食品を繰返し摂取すると、そ
の食品により新たに感作され、アレルギー反応を引き起
こすおそれもあるので、回転食が必要となる。ところ
で、通常、国内で製造・販売されている食肉製品には、
副原料として鶏卵、牛乳、大豆などに由来する成分が使
用されている。例えば、乾燥卵白、液卵、卵アルブミ
ン、リゾチーム、牛乳、脱脂粉乳、ミルクカゼイン、ミ
ルクアルブミン、ホエイ、チーズ、分離大豆蛋白質、上
新粉、小麦粉等が挙げられ、その使用目的としては製品
の増量、品質の向上・安定化、保存中の品質劣化の防
止、製造コストの低減化等が挙げられる。前記のアレル
ギー患者では、副原料である乾燥卵白、液卵、卵アルブ
ミン、リゾチーム、牛乳、脱脂粉乳、ミルクカゼイン、
ミルクアルブミン、ホエイ、チーズ、分離大豆蛋白質、
上新粉、小麦粉等についてもアレルゲンとなる/又はア
レルギーの増悪因子となる可能性があるので、摂取を制
限しなければならない。一方、後記の試験例1の1の項
にも示されるように、一般に市販されている食肉加工品
には、例えば、脱脂粉乳、卵白、カゼインナトリウム、
植物性たん白、パン粉、醤油等、上記の疾病罹患者にと
って摂取できない副原料が使用されている。
【0007】このように、従来の食肉製品は五大アレル
ギー食品又はそれに由来する成分を含有しており、前述
のアレルギー患者は摂取することができず、そのために
種々の問題が生じている。より詳細には、上記疾病に罹
患している育ち盛りの乳幼児や児童及び成人、特に、思
春期の男女においては、主要な蛋白質性食品を制限しな
ければならないことから、健全な成長、成熟に必要な蛋
白質栄養の摂取が困難となり、蛋白質の不足による、発
育/成熟の不全・遅延、抵抗力の欠如、容貌の変化を気
にしすぎることにより生じる精神的な不安定(悩み、自
律神経の失調など)等の問題を抱えていた。そのため安
全に良質な蛋白質栄養を摂取するための除去食療法に有
用な代用食品の開発が強く望まれていた。さらに健常者
である家族や学友と異なる食事を摂取しなければいけな
いことは、児童及びその家族にとって精神的な障害とな
っている他、経済的にも2重の食費支出が発生するた
め、誰でもが食することの出来るアレルギー対応食品の
開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなアレルギ
ー疾患の問題から、その予防及び治療を目的とした食品
の発明が種々提案されているが、食品アレルギー患者に
とって有害なアレルゲンを含む食品及び/又はこれら由
来の食品成分を除去し、アトピー性皮膚炎患者で欠乏す
るγ-リノレン酸及び/又はアラキドン酸カスケード内
の脂肪酸類を補給する5大アレルギー食品の除去食療法
に有用な代用食品はなかった。例えば、特開平3−61
467号公報及び特開平3−175952号公報には、
大豆、鶏卵、牛乳及びこれらに由来する蛋白質を含有し
ない蛋白アレルギー防止用食品や、兎肉とタピオカ澱粉
から成るソーセージについて開示されているが、脂肪酸
バランスの改善効果についての記載はない。アレルギー
疾患の予防及び/又は治療にはアレルゲン蛋白質の除去
のみでは不完全であり、脂肪酸のアンバランスを改善す
る必要がある。また、上記の公報には、アレルゲンが除
去されたことを示すデータやアレルギー患者に対する臨
床試験データについても具体的には示されておらず、こ
れらの発明品のアレルギー防止効果は明らかでない。
【0009】また、特開平3−27253号公報、特開
平4−218347号公報及び特開平5−3753号公
報には、鶏卵、牛乳、大豆等のアレルゲンを種々の酵素
処理によって、加水分解又は架橋付加等の修飾を行い、
アレルゲン性を低減化した食品が開示されている。アレ
ルギー患者の安全のためにはアレルゲン蛋白質を完全に
取り除き、かつ嗜好性の良好な蛋白質栄養食品をつくる
ことが理想である。しかし、これらの発明におけるアレ
ルゲン性の低減化方法は、酵素処理によるアレルゲン蛋
白質の加水分解によるものであり、重度の食品アレルギ
ー患者に対してはアレルゲン性の低減化は不十分である
場合が多く、かつ苦みの発生などの嗜好性の悪化、加工
特性の低下により、製造コストが高かった。また、この
様な元々アレルゲン性を有する食品を酵素処理によって
加水分解又は架橋付加等の修飾を施し低アレルゲン化し
たものを、アレルギー患者に供給することは安全性の面
で問題があった。また、特開平4−290822号公
報、特開平5−58902号公報及び特開平6−627
95号公報には、ω3系の脂肪酸とセサミン類やシソ葉
抽出物とから成る抗アレルギー食品について開示されて
いる。しかし、全て栄養補助的な食品であり、食品アレ
ルギー患者が不足している蛋白質栄養の補給源とはなり
えなかった。また、カプセル等の形態であるため医薬品
的であり、食品の持つ味、テクスチャーやフレーバー等
の二次機能(美味しさ)及び家族や学友と食卓を共有す
ることによって食生活を豊かにし、それにより精神的ケ
アーに寄与することはできなかった。
【0010】本発明者等は上記の従来技術の問題点に鑑
み、アレルギー患者に対し、アレルゲンを含まない安全
で良質な蛋白質栄養の補給源となり、かつ脂肪酸のアン
バランスを改善する効果を有する、風味良好で保存性や
簡便性にも優れる食肉製品を安価に提供するため鋭意検
討した結果、本来、食品アレルギーの原因食品となり難
く、かつ良質な蛋白質源である食肉を使用し、低刺激性
の香辛料により美味しく調理加工し、アトピー性皮膚炎
患者の脂肪酸のアンバランスを改善するためγ-リノレ
ン酸及び/又はアラキドン酸カスケード内の脂肪酸類を
適切に添加した食肉製品が、食品アレルギーやアトピー
性皮膚炎等のアレルギー疾患の予防・治療に有効である
ことを見いだした。本発明はかかる知見に基づいてなさ
れたもので、本発明は食品アレルギーやアトピー性皮膚
炎等のアレルギー疾患の予防・治療に有用な食肉製品及
びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明の要旨は、 下記の性状を有する食肉製品。 (a)鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のうちの一種又は二
種以上をアレルゲンとして認識する患者血清と抗原抗体
反応をさせるとき、抗原抗体反応の生じない又は抗原抗
体反応が低値である、(b)γ−リノレン酸及び/又はア
ラキドン酸カスケード内の脂肪酸を含有する; 豚肉、兎肉、羊肉、子羊肉、山羊肉及び七面鳥肉から
なる群から選ばれる一種又は二種以上の食肉を含有する
上記記載の食肉製品; γ−リノレン酸及び/又はアラキドン酸カスケード内
の脂肪酸を含有するボラージ油、月見草油、クロスグリ
油等の食用油を含有する上記又は記載の食肉製品; 鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のうちの一種又は二種
以上をアレルゲンとして認識する患者血清と抗原抗体反
応をさせるときに抗原抗体反応の生じない又は抗原抗体
反応が低値である食肉と、γ−リノレン酸及びアラキド
ン酸カスケード内の脂肪酸の少なくとも一種又は当該脂
肪酸を含有する油脂と、酸化防止剤と、調味料との混合
物を調製し、次いで成形した後、加熱し又は加熱するこ
となく食肉製品とすることからなる食肉製品の製造方
法; 鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のうちの一種又は二種
以上をアレルゲンとして認識する患者血清と抗原抗体反
応をさせるときに抗原抗体反応の生じない又は抗原抗体
反応が低値である食肉が、豚肉、兎肉、羊肉、子羊肉、
山羊肉及び七面鳥肉からなる群から選ばれる一種又は二
種以上の食肉である上記記載の食肉製品の製造方法; 鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のうちの一種又は二種
以上をアレルゲンとして認識する患者血清を用いて抗原
抗体反応試験をしたとき、抗原抗体反応の生じない又は
抗原抗体反応が低値である製造機器を用いる上記又は
記載の食肉製品の製造方法;である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は上記の構成よりなり、本
発明の食肉製品は、鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のう
ちの一種又は二種以上をアレルゲンとして認識する患者
血清と抗原抗体反応をさせるとき、抗原抗体反応の生じ
ない又は抗原抗体反応が低値であることを特徴とする。
換言すれば、本発明の食肉製品は、五大アレルギー食品
である鶏卵、牛乳、大豆、米、小麦等及びこれらから由
来する成分(特に蛋白質、糖蛋白質、糖鎖等)を実質的
に含有していない。なお、上記の抗原抗体反応が低値で
あるとは、試験結果に基づき、統計学上の有意差検定を
行ったとき、健常者血清と較べて有意差が認められない
状態を意味する。本発明の食肉製品では、原料肉とし
て、鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のうちの一種又は二
種以上をアレルゲンとして認識する患者血清と抗原抗体
反応をさせるとき、抗原抗体反応の生じない又は抗原抗
体反応が低値である食肉を使用する。かかる食肉として
は、例えば、豚肉、兎肉、羊肉、子羊肉、山羊肉、七面
鳥肉、馬肉、アヒル肉等が例示され、特に得られた食肉
製品の風味・食感などの点から豚肉、兎肉、羊肉、子羊
肉、山羊肉及び七面鳥肉からなる群より選ばれた一種又
は二種以上の食肉が好適に使用される。上記の食肉は常
法により家畜類を屠殺・解体して得た食肉を使用するこ
とができる。
【0013】なお、鶏卵又は牛乳の摂取によりアレルギ
ー症状を呈する患者は、それぞれ、鶏肉又は牛肉を摂取
した場合でも、アレルギー症状を呈する恐れがあるた
め、本発明の食肉製品では鶏肉及び牛肉は使用しない。
即ち、後記の試験例に示す様に、鶏卵・牛乳アレルギー
と診断された食品アレルギー患者の血清を用いたELISA
法により、牛肉、鶏肉、豚肉、兎肉、羊肉、七面鳥肉に
対する抗原特異IgE抗体の反応性を調べた結果、鶏卵・
牛乳アレルギー患者の血清中特異IgE抗体価が鶏肉、牛
肉に対して有意に高い値を示すことが明らかとなった
(図1参照)。本発明の食肉製品における食肉の含量は
特に限定されず、所望する食肉製品の種類に応じて適宜
調整されるが、通常、練り上がり原料混合物100重量
部当り(特に明示のない限り、以下同様)、20〜90
重量部程度に調整され、例えば、ソーセージの場合に
は、50〜85重量部程度、好ましくは60〜80重量
部程度に調整される。
【0014】本発明の食肉製品は、γ−リノレン酸及び
/又はアラキドン酸カスケード内の脂肪酸を含有するこ
とを特徴とする。アラキドン酸カスケード内の脂肪酸と
は、生体内でγ−リノレン酸がプロスタグランジンに変
換される過程で生成する各種脂肪酸を意味し、例えば、
ジホモ γ−リノレン酸やアラキドン酸と、これらに由
来するドコサペンタエン酸やプロスタグランジンなどが
例示される。本発明において、上記の脂肪酸は精製品を
使用してもよいが、簡便には上記の脂肪酸を含有する油
脂を使用することができ、特にγ−リノレン酸及び/又
はアラキドン酸カスケード内の脂肪酸を高度に含有する
ボラージ油、月見草油、クロスグリ油、シソ油、糠油な
どの食用油を使用することが好ましい。これらの油脂は
常法により調製することができ、また市販製品を使用し
てもよい。更に、上記の油脂は2種以上を併用してもよ
い。
【0015】本発明の食肉製品におけるγ−リノレン酸
及び/又はアラキドン酸カスケード内の脂肪酸の含量は
特に限定されないが、厚生省の定める特定保健用食品と
しての、アトピー性皮膚炎の改善のためのγ-リノレン
酸の摂取目標は1日当り90mgとされていることから、こ
の数値を指標として含量を調整することができる。具体
的には、ボラージ油を使用する場合、ボラージ油を約1.
7重量%配合すると、製品中にγ-リノレン酸として0.36
重量%含有することになり、本発明品25gを食べること
により、上記の摂取目標値を達成することができる。な
お、この1日当り90mgという値は摂取目標であり、これ
を越えて摂取しても特に健康を損ねる等の問題はない。
上記のように、本発明の食肉製品は多価不飽和脂肪酸で
あるγ−リノレン酸等を含有することから、保存中にお
ける脂肪酸の酸化が懸念される。この問題については、
酸化防止剤を適量加えることにより解決している。かか
る酸化防止剤としては、食物アレルギーやアトピー性皮
膚炎に対して安全性が確認されているものであれば、種
々の天然及び/又は合成の酸化防止剤を使用することが
できるが、ビタミンC、ビタミンE、それらの誘導体、
ローズマリー等の香辛料の製油成分などを使用するのが
好ましい。酸化防止剤は2種以上を併用してもよい。ま
た、酸化防止剤の添加量は、食肉製品の種類、保存条件
(例えば、保存温度、期間等)などに応じて適宜調整す
ることができる。本発明の食肉製品としては、ソーセー
ジ類、ハム類、ベーコン類、ミートボール、ハンバー
グ、ギョウザなどの惣菜類が例示される。
【0016】本発明の食肉製品は、鶏卵、牛乳、大豆、
米及び小麦のうちの一種又は二種以上をアレルゲンとし
て認識する患者血清と抗原抗体反応をさせるときに抗原
抗体反応の生じない又は抗原抗体反応が低値である食肉
(例えば、豚肉、兎肉、羊肉、子羊肉、山羊肉、七面鳥
等)と、γ−リノレン酸及びアラキドン酸カスケード内
の脂肪酸の少なくとも一種又は当該脂肪酸を含有する油
脂と、酸化防止剤と、調味料との混合物を調製し、次い
で成形した後、加熱し又は加熱することなく食肉製品と
することにより調製でき、基本的には慣用の食肉製品の
製造方法に準じて行うことができる。上記の原料混合物
の調製法は特に限定されず、食肉(例えば、豚肉、兎
肉、羊肉、子羊肉、七面鳥肉等)をカッティング又はチ
ョッピングし、ボラージ油などの油脂を添加し、調味料
(例えば、塩、砂糖等)で味付けし十分に混練する方
法;ボラージ油などの油脂を適量配合したピックル液を
食肉に注入する方法などが例示される。なお、この工程
に際して、アレルギー患者にアレルギー症状を惹起しな
いものであれば、この分野で慣用の添加物(例えば、カ
ルシウム、鉄などのミネラル類、水、馬鈴薯澱粉、香
料、香辛料等)を添加することができる。
【0017】かくして得られた原料混合物は、適当なケ
ーシングに充填し又は充填することなく成形し、次いで
加熱し又は加熱することなく冷却することにより、本発
明の食肉製品が得られる。この工程は、常法に準じて行
うことができる。得られた食肉製品は、鶏卵、牛乳、大
豆、米、小麦等及びこれらから由来する成分を含有して
いないためアレルギー患者に対して安全性が高く、更に
充填後又は充填・加熱後に冷凍して長期間保存しても嗜
好性や外観等の品質が劣化することがないという特長を
有している。加熱せずに調製された本発明の食肉製品
は、摂取前に加熱すればよい。なお、上記の製造方法に
おいて、アレルゲンの混入を防止するため、使用する機
械器具(製造機械、器具、用具等)は十分に洗浄し、五
大アレルギー食品のうち一種又は二種以上を認識する患
者血清中のIgE抗体及び/又はIgG抗体、または五大アレ
ルギー食品を抗原として調製された抗血清中のIgG抗体
及び/又はIgM抗体と抗原抗体反応をさせるとき、抗原
抗体反応の生じない状態にしたものを用いて製造するこ
とが好ましい。
【0018】
【発明の効果】本発明の食肉製品は、アレルゲン性が非
常に低く、しかも嗜好性に優れている。従って、本発明
の食肉製品は乳幼児、青少年や成人の食品アレルギーや
アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患の予防及び/又は
治療に有用な蛋白質栄養の補給源になり、かつアトピー
性皮膚炎患者で欠乏するγ-リノレン酸及び/又はアラ
キドン酸カスケード内の脂肪酸類を補給するのに有用で
ある。さらに、本発明の食肉製品は、食品アレルギー患
者及び/又はアトピー性皮膚炎患者のみならず、健常者
も美味しく食することができるので、食品アレルギー患
者及び/又はアトピー性皮膚炎患者同士、健常者同士、
及びこられの患者と健常者が共通に食することを可能に
し、食卓を共有することを可能にするので、食品アレル
ギー患者及び/又はアトピー性皮膚炎患者のみならず、
同患者の家族、特に母親の精神的苦痛を緩和/解除する
効果を奏すると共に、同患者の家族の経済的負担を軽減
する効果も奏する。また、本発明の製造方法によれば、
上記の特性を有する食肉製品を簡便且つ確実に製造する
ことができる。
【0019】
【実施例】以下、実施例及び試験例に基づいて本発明を
より詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。 実施例1ウインナーソーセージの製造 食肉原料(豚肉、兎肉、七面鳥肉、羊肉及び子羊肉より
なる群の1種類、または2種類以上の組み合わせ;練り
上がり原料混合物100重量部当り73.6部)と豚背脂肪
(4.3部)を合わせ、肉挽き機又はサイレントカッター
により、直径15mm以下程度の肉塊に細挽し、これに氷
(15.5部)、食塩(1部)、ビタミンC(アスコルビン
酸ナトリウム, 0.1部)、重合リン酸塩(0.2部)、砂糖
・香辛料等(0.7部)、馬鈴薯でん粉(3部)及びボラー
ジ油(1.6部)を加え、サイレントカッター又は真空ミ
キサーを用いて、ウインナーソーセージ用の練り肉を調
製した。次いで、これを羊腸あるいはコラーゲン・ケー
シングに充填し、5〜10cmの長さでひねり結紮して、懸
垂棒に吊し、乾燥し、中心温度が72℃に達するまで蒸煮
し、冷却した。
【0020】食味官能試験 上記で得られた本発明のウインナーソーセージの品質を
評価するために官能試験を実施した。すなわち、本発明
品の豚を主原料に用いた製品に対して、同配合よりボラ
ージ油のみを除いて製造した製品を比較品として、熟練
したパネラー10名による「2点嗜好試験」により食味
を比較した。その結果、本発明品の方が優れているとし
たものが5名であったのに対して、比較品の方が優れて
いるとした者は5名で両者に違いは認められなかった。
また、同じパネラー10名により市販通常品との食味の
比較を行った。すなわち、本発明品のうち、豚を主原料
としたものと市販されている無塩漬タイプの製品を購入
し通常品として「2点嗜好試験」を実施した。その結
果、本発明品の方が優れているとした者が6名であった
のに対し、通常品の方が優れているとした者が4名であ
った。すなわち、本発明品と通常品の品質に有意な違い
は認められなかった。同様に、香味についての「2点嗜
好試験」においても、比較品あるいは通常品に比べて、
顕著な違いは認められなかった。
【0021】γ-リノレン酸含有量の測定 本発明によるウインナーソーセージに添加したボラージ
油由来のγ-リノレン酸の含有量を評価するために、脂
肪酸の定量を行った。すなわち、それぞれのウインナー
ソーセージを精秤した後、常法によりジエチルエーテル
で脂肪を抽出し、乾固する。次いで、鹸化し、メチルエ
ステル化し、ガスクロマトグラフィー分析法により脂肪
酸量を定量した。その結果を表1(単位:g/ソーセー
ジ100g)に示す。表1に示す結果から、γ−リノレン酸
含有量は比較品が検出限界以下(0.01%)であるのに対
して本発明品においては0.36%であった。よって、本発
明品の摂食によりγ−リノレン酸を容易に摂取できる。
【0022】
【表1】
【0023】酸化の抑制 本発明によるウインナソーセージの脂質酸化に対する安
定性の検討を行った。即ち、本発明品の豚を主原料に用
いた製品に対して、同配合よりビタミンCのみを除いた
製品を比較品として調製した。本発明品及び比較品を包
装後、それぞれ冷蔵(4℃)及び冷凍(−30℃)の暗
所にて保存した。冷蔵保存した製品は1ヵ月、2ヵ月、
3ヵ月後に、冷凍保存した製品は更に6ヵ月後に、脂肪
酸化の指標としてTBA値(チオバルビツール値)及び
POV(過酸化物値)を常法により測定した。また、両
製品について、前出のパネラー5名による官能試験によ
り比較した。それぞれのTBA値(単位:mg/kg)及びP
OV(単位:meq/kg)の経時変化を表2及び表3に示す。
冷蔵保存の場合、TBA値及びPOVは1ヵ月で比較品
が有意に上昇した。また同様に冷凍保存の場合も、3ヵ
月で比較品のTBA値及びPOVが上昇した。ビタミン
Cを添加した本発明品は冷蔵及び冷凍保存において脂肪
の酸化はみられなかった。同様に、官能試験において
も、比較品では酸化臭を感じたのに対し、本発明品は保
存全期間において酸化臭を感じなかった。即ち、ビタミ
ンCの添加により、本発明品はウインナソーセージとし
て品質保持期限に十分と考えられ得る冷蔵保存で3ヵ月
間、冷凍保存で6ヵ月間に脂肪の酸化が発生していない
ことを確認した。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】実施例2ハムの製造 ボラージ油5.5%を懸濁させたピックル液(ボラージ油
の外は、食塩、重合リン酸塩、アスコルビン酸ナトリウ
ム、砂糖、香辛料、水のみから成る)をインジェクター
により豚肉に注入(肉重量の50%)し、常法通りの方法
で塩漬し、適当なケーシングに充填/成形し、乾燥し、
薫煙し、蒸煮した。このようにして得られたハムも、食
味、香味、外観等、通常品に比して差違はみられなかっ
た。
【0027】実施例3ターキーブレストの製造 七面鳥胸肉から、皮等を除き、実施例2と同様の組成の
ピックル液をインジェクターにより肉に注入し(肉重量
の150%)、常法通りの方法で塩漬し、適当なケーシング
に充填/成形し、乾燥し、薫煙し、蒸煮した。このよう
にして得られたターキーブレストも、食味、香味、外観
等、通常品に比して差違はみられなかった。
【0028】実施例4ハンバーグの製造 豚肉5部、兎肉3部及び七面鳥肉2部からなる合挽肉
に、実施例2と同様の組成のピックル液を混合(肉重量
の30%)し、常法通りの方法で適当なサイズ及び形状
のハンバーグ状に成形した後、トンネルフリーザーにて
凍結し、−30℃で保存した。このようにして調製した
冷凍ハンバーグを加熱調理して食したが、食味、香味、
外観などは通常品に比べて差違はみられなかった。
【0029】試験例1低アレルゲン性の証明 1.供試試料 上記の本発明品の外、牛肉、豚肉、兎肉、羊肉、七面鳥
肉及び市販食肉製品(それらの表示内容は以下の通り)
を供試試料とした。 1)品名;無塩漬ソーセージ 原材料名;豚肉、脱脂粉乳、結着材料(でん粉)、食
塩、砂糖、香辛料、リン酸塩(Na)、調味料(アミノ
酸)、保存料(ソルビン酸)、酸化防止剤(ビタミン
C) 2)品名;食肉製品(ロースハム) 原材料名;豚肉、食塩、砂糖、結着材料(卵白)、香辛
料、乳化安定剤(カゼインNa)、リン酸塩(Na)、調味
料(アミノ酸)、保存料(ソルビン酸)、酸化防止剤
(ビタミンC) 3)品名;食肉製品(ターキーブレスト) 原材料名;七面鳥肉、食塩、砂糖、結着材料(でん
粉)、香辛料、乳化安定剤(カゼインNa)、リン酸塩
(Na)、調味料(アミノ酸)、保存料(ソルビン酸)、
酸化防止剤(ビタミンC) 4)品名;食肉製品(ハンバーグ) 原材料名;鶏肉、豚肉、牛肉、結着材料(植物性蛋白
質)、パン粉、醤油、食塩、砂糖、香辛料、調味料(ア
ミノ酸)、カラメル色素
【0030】2.試料液の調製 試料とPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.2)を1:10
の割合で混合しステンレス製のホモジナイザーにより1
0000回転/分、10分間、冷却しながらホモジナイ
ズした。それを3000回転/分、10分間の遠心分離
し、上層の脂肪分を吸引除去した上清部分を供試試料液
とした。
【0031】3.アレルギー患者血清 鶏卵、牛乳の何れかに対してアレルギーであると診断
され、RAST(radioallergosorbent test)陽性を示し
たアレルギー患者14人(男女同数、年齢0〜9歳、平
均3歳)から医師が少量の血液を採取し、常法により血
清を分離して凍結保存したものを使用した。 鶏卵、牛乳、大豆、米、小麦の何れかに対してアレル
ギーであると診断され、RAST陽性を示したアレルギ
ー患者48人(男女同数、年齢0〜20歳、平均7歳)
から医師が少量の血液を採取し、常法により血清を分離
して凍結保存したものを使用した。 4.健常者血清 アレルギー疾患を有さない健常者6人(男女同数、年齢
20〜46歳、平均31歳)から上記の方法により調整
した。
【0032】5.方法 上記の試料液に対するおのおののアレルギー患者血清中
の抗原特異IgE抗体との反応性をELISA法により調べた。
因みにELISA法は「藤原大美ら編, 免疫研究法ハンドブ
ック, 199-206, 1992, 中外医学社, 東京」に記載の方
法に準じて行った。ELISA法の操作概要を以下に示す。 (1)上記の試料液を96穴ELISA用マイクロプレートに
加え、抗原蛋白質をプレートに固定化する。 (2)プレート洗浄後、検体や標識抗体の非特異的吸着
を防ぐため、ヒト血清アルブミンを加えブロッキングす
る。 (3)プレート洗浄後、検体としてアレルギー患者血清
と健常者血清を加え、抗原と反応させる。 (4)プレート洗浄後、アルカリホスファターゼ標識抗
ヒトIgEε鎖ヤギ抗体を加え、反応させる。 (5)プレート洗浄後、基質(ルミホス530;4-Methoxy
-4-(3-phosphatephenyl)spiro[1,2-dioxetane-3,2'-ada
mantane]disodium salt、和光純薬)を添加し、アルカ
リホスファターゼの脱リン化反応により生じた発光量を
測定する。 (6)測定は、プレートリーダー(ダイヤトロン社製、
ルミノスCT-9000D)にて行い、測定値(装置が読み取っ
た値)をカウントとして表した。アレルギー患者血清中
の抗原特異IgE抗体価は健常者血清と比較することによ
り評価した。
【0033】6.結果 上記の試験の結果を図1及び2に示す(何れも平均値±
標準誤差)。なお、図1は鶏卵・牛乳アレルギーと診断
された患者血清の各種食肉に対する抗原特異IgE抗体価
を示す図である。また、図2は五大アレルギー食品に対
するアレルギーと診断された患者血清の各種食肉ソーセ
ージに対する抗原特異IgE抗体価を示す図である。図1
に示されるように、鶏卵・牛乳アレルギー患者の血清中
の牛肉、鶏肉を認識する特異IgE抗体価は高値であった
が、豚肉、兎肉、羊肉、七面鳥肉を認識する特異IgE抗
体価は低値であった。また、別途行った試験から、豚
肉、兎肉、羊肉、七面鳥肉を認識する特異IgE抗体価と
健常者の特異IgE抗体価との間に有意な差はなかった。
また、図2に示されるように、五大アレルギー食品に対
するアレルギーと診断された患者について、これらの患
者の血清と健常者の血清を用いて、本発明品との抗原抗
体反応を調べたところ、本発明品に対する患者の特異Ig
E抗体価は低値であると共に、健常者血清の特異IgE抗体
価と有意差は認められなかった。即ち、患者血清中に
は、本発明品を抗原として認識するIgE抗体は殆ど認め
られなかった。一方、図2に示されるように、市販の通
常ソーセージと五大食品アレルギー患者の血清を反応さ
せたときには高値の抗原抗体反応が認められ、更に健常
者血清の特異IgE抗体価と比較するとき有意差が認めら
れた。なお、図示はしていないが、市販ハム、ターキー
ブレスト及びハンバーグについても試験したが、市販ソ
ーセージと同様な結果であった。
【0034】上記の結果から、鶏卵アレルギー患者にお
いて、鶏肉は血中IgE抗体との反応性が高く、避けなけ
ればならない場合が多いが、七面鳥肉は血中IgE抗体と
の反応性が低く安全である。その理由として、(1)鶏
卵に含まれるアレルゲン(オボアルブミン等)と鶏肉中
に含まれる蛋白質成分(血清アルブミン等)の分子構造
はほぼ同様であるので、患者IgE抗体との交差性が高
い、(2)一方、鶏と七面鳥は動物分類学的には、別々
の科に属し、遺伝的背景もかなり異なる[鶏(Gallus)や
ウズラ(Coturnix)はキジ科(Phasianidae)に属すのに対
して、七面鳥(Meleagris)は七面鳥科(Meleagridae)に属
する(内田亨編, 動物分類名辞典, 904-912, 1972, 中山
書店, 東京)]ので、鶏卵中のアレルゲン(オボアルブ
ミン等)と七面鳥肉中の蛋白質(血清アルブミン等)の
分子構造はかなり異なり、交差性がない/又は少ないこ
とが想定される。同様に、牛乳アレルギー患者におけ
る、高値の牛肉特異IgE抗体価や、低値の豚肉、兎肉、
羊肉/子羊肉及び七面鳥肉特異IgE抗体価の理由が想定
される。
【0035】試験例2アトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験 実施例1の方法により作製したウインナーソーセージ4
種(豚肉、子羊肉、兎肉、七面鳥肉)を用いて、アトピー
性皮膚炎患者(29名)を対象としたアトピー性皮膚炎症状
の改善効果についての臨床試験を行った。試験は担当医
師のもと複数施設で実施した。
【0036】1.対象症例 小児及び成人の軽症アトピー性皮膚炎外来患者とし、選
択基準としてかゆみ、皮疹の観察に適した症例で、アト
ピックドライスキンを有する患者を中心に選択した。な
お以下の何れかの項目に該当する患者は除外した。 ・試験開始前2週間以内にステロイド剤を内服または注
射した患者。 ・陽性食品抗原の除去により皮膚症状が消失した患者。 ・急性の喘息症状を呈するか、喘息性気管支炎と診断さ
れた患者。 ・その他、担当医師が不適当と判断した患者。
【0037】2.併用薬剤 規定として、ストロング及びそれ以下のランクのステロ
イド外用剤及び抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、皮膚
保護クリーム類の併用は可としたが、併用する場合は、
原則として試験期間中その種類と用法・用量を変えない
こととした。ただし症状観察により、医師が併用薬の軽
減が可能と判断した場合に限り、変更を可とした。ま
た、試験食品の効果の評価に大きな影響を及ぼすと考え
られる(1)ステロイド剤内服・注射、(2)ベリーストロン
グおよびそれ以上のランクのステロイド外用剤の試験期
間中の併用を原則として禁止した。摂取4週間未満で上
記禁止薬を使用した症例は、除外または脱落とし、4週
経過後に併用禁止薬を使用した症例はその時点までの評
価判定を行った。
【0038】3.試験方法 実施例1のウインナーソーセージ4種類を食肉の種類を
毎日変えて1日1本(25g)(γ-リノレン酸量として90mg相
当)を6週間摂取した。なお、摂取4週間で判定が可能な
場合はその時点で効果を判定し試験を終了した。 4.評価 観察所見として、摂取開始前、摂取開始後2週間目、4週
間目、6週間目、8週間目に他覚所見および自覚症状につ
いて調査した。他覚所見としては各観察日に被験部位の
各観察項目(掻痒、紅斑、丘疹、苔癬化、びらん、落屑
の状態)について医師が調査し、5段階(強度(4)、高度
(3)、中等度(2)、軽度(1)、なし(0))で評価した。また
試験最終日に医師が総合評価として、摂食開始時と比較
して、他覚所見、自覚症状を総合的に勘案し、5段階(著
効、有効、やや有効、無効、悪化)で全般改善度を判定
した。
【0039】5.結果 臨床試験の総合評価結果を表4に、各観察評価項目の推
移を図3(何れも平均値±標準誤差)に示す。図3に示
されるように、各観察項目別の改善度について検討した
ところ、アトピー性皮膚炎の主症状である落屑、掻痒、
紅斑について摂取前後で有意な改善効果が認められた。
従って、本発明の食肉製品のアトピー性皮膚炎に対する
改善効果は、アトピー性皮膚炎の主症状である落屑、掻
痒、紅斑において顕著であることが判明した。また、本
発明の食肉製品を1日1本摂取した結果、その効果は2
週間目より認められ、その後も試験終了日まで持続し
た。なお、ボラージ油を含有していないウインナソーセ
ージを実施例1と同様な方法で調製し、このウインナソ
ーセージを患者に摂取させたが、アトピー性皮膚炎の改
善効果は認められなかった。これらのことから、本発明
の食肉製品を日常的に摂取することにより、アトピー性
皮膚炎の改善及び悪化の防止に有用であることが判明し
た。
【0040】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】鶏卵・牛乳アレルギーと診断された患者血清の
各種食肉に対する抗原特異IgE抗体価を示す図である。
【図2】五大アレルギー食品に対するアレルギーと診断
された患者血清の各種食肉ソーセージに対する抗原特異
IgE抗体価を示す図である。
【図3】アトピー性皮膚炎患者に、本発明の食肉製品を
摂取させたときの各観察評価項目の推移を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A23L 1/317 A23L 1/317 Z (72)発明者 藤田 浩太郎 茨城県つくば市緑ヶ原3丁目3番 日本ハ ム株式会社中央研究所内 (72)発明者 瀧川 雅浩 静岡県浜松市半田町3776 医大宿舎E217

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の性状を有する食肉製品。 (a)鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のうちの一種又は二
    種以上をアレルゲンとして認識する患者血清と抗原抗体
    反応をさせるとき、抗原抗体反応の生じない又は抗原抗
    体反応が低値である、(b)γ−リノレン酸及び/又はア
    ラキドン酸カスケード内の脂肪酸を含有する。
  2. 【請求項2】 豚肉、兎肉、羊肉、子羊肉、山羊肉
    及び七面鳥肉からなる群から選ばれる一種又は二種以上
    の食肉を含有する請求項1記載の食肉製品。
  3. 【請求項3】 γ−リノレン酸及び/又はアラキド
    ン酸カスケード内の脂肪酸を含有するボラージ油、月見
    草油、クロスグリ油等の食用油を含有する請求項1又は
    2記載の食肉製品。
  4. 【請求項4】 鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のう
    ちの一種又は二種以上をアレルゲンとして認識する患者
    血清と抗原抗体反応をさせるときに抗原抗体反応の生じ
    ない又は抗原抗体反応が低値である食肉と、γ−リノレ
    ン酸及びアラキドン酸カスケード内の脂肪酸の少なくと
    も一種又は当該脂肪酸を含有する油脂と、酸化防止剤
    と、調味料との混合物を調製し、次いで成形した後、加
    熱し又は加熱することなく食肉製品とすることからなる
    食肉製品の製造方法。
  5. 【請求項5】 鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のう
    ちの一種又は二種以上をアレルゲンとして認識する患者
    血清と抗原抗体反応をさせるときに抗原抗体反応の生じ
    ない又は抗原抗体反応が低値である食肉が、豚肉、兎
    肉、羊肉、子羊肉、山羊肉及び七面鳥肉からなる群から
    選ばれる一種又は二種以上の食肉である請求項4記載の
    食肉製品の製造方法。
  6. 【請求項6】 鶏卵、牛乳、大豆、米及び小麦のう
    ちの一種又は二種以上をアレルゲンとして認識する患者
    血清を用いて抗原抗体反応試験をしたとき、抗原抗体反
    応の生じない又は抗原抗体反応が低値である製造機器を
    用いる請求項4又は5記載の食肉製品の製造方法。
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