JPH1015656A - 加圧鋳造方法及び装置 - Google Patents

加圧鋳造方法及び装置

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JPH1015656A
JPH1015656A JP20412496A JP20412496A JPH1015656A JP H1015656 A JPH1015656 A JP H1015656A JP 20412496 A JP20412496 A JP 20412496A JP 20412496 A JP20412496 A JP 20412496A JP H1015656 A JPH1015656 A JP H1015656A
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JP
Japan
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molten metal
pressure
casting
mold
gas
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JP20412496A
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English (en)
Inventor
Yoshio Ebisu
嘉男 戎
Kazuyoshi Sekine
和喜 関根
Takashi Utsuki
尚 宇津木
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EBISU KK
EBISU Co Ltd
Original Assignee
EBISU KK
EBISU Co Ltd
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Publication date
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  • Casting Support Devices, Ladles, And Melt Control Thereby (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 金型重力鋳造および逆重力鋳造プロセスに
おいてミクロポロシティの無い良質な鋳物を得るととも
に凝固時間を短縮することが可能な鋳造方法および装置
を提供すること。 【構成】 1.押湯あるいは湯口内溶湯表面にガス体
による圧力を付与する加圧装置を具備することを特徴と
する金型重力鋳造装置。 2.溶湯保持炉、鋳型装置および保持炉から鋳型へ溶湯
を導入する給湯管から成り、当該給湯管にガス加圧装置
および逆流防止装置を設け、これによって押湯圧力をか
ける機能を有する逆重力鋳造装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋳造技術分野に属
し、特に金型重力鋳造および逆重力鋳造プロセスにおけ
る押湯能力の向上ならびに凝固時間の短縮を目的とする
鋳造方法及び装置に係る。
【0002】
【従来の技術】通常、鋳物には鋳造後製品となる本体部
の他に押湯と呼ばれる付属部分(湯だまりとも呼ぶ)を
設ける。押湯の目的は凝固の際、液体と固体の密度差に
より生ずる収縮(凝固収縮と呼ぶ)、液相の温度降下に
よる収縮(液相収縮と呼ぶ)等によって製品部に生ずる
収縮を補償し、引け巣ならびに鋳物内部あるいは表面の
デンドライト間液相部に発生するいわゆるミクロポロシ
ティ(微小な空隙)の発生を防止することである。押湯
設計の良し悪しは上記欠陥の有無を左右するのみなら
ず、歩留まり(押湯を含む鋳物重量に対する製品部重量
比)、押湯部の切断の手間等の生産性にも大きな影響を
与えるので、鋳造方案の設計において特に重要な部分で
あり、どの鋳物工場においても日常的に改善の努力がな
されている。
【0003】本発明の課題の一つである押湯に関して、
押湯効果、即ち、凝固時の体積収縮を補償する溶湯補給
能力を向上させるための従来技術について述べる。 〔埋込み押し湯方式〕最初に文献に見られる技術とし
て、鋳型に埋込んだ押湯に加圧ガスを作用させる方法
(以後、埋込み押湯方式と呼ぶ)があり、1950年代
に主としてロシア、東ヨーロッパで行われ、大型鋳鋼鋳
物の歩留まり及び品質の向上に効果があると報告されて
いる(例えば文献(1)を参照されたい)。
【0004】図11は埋込み押湯方式の基本形である。
押湯部には通気性のない石膏などの断熱性カップが用い
られる。操作は比較的簡単であり、注湯後しばらくして
バルブを開き通常鋳物工場内で得られる最大7atm程
度あるいはこれ以下の圧力を押湯に作用させ凝固完了ま
で持続する。Kononow(文献(1))はロシアに
おける比較的大型の鋳鋼鋳物(板厚50mm以上、直径
100mmφ以上)に広範囲に適用した経験から、普通
の押湯の場合よりも20〜30%歩留まりが改善された
と述べている。これは普通の押湯に比べて押湯の高さを
低くすること及び押湯の数を減らすことによって達成さ
れる。また、材料の伸び及び絞りが大巾に改善されたと
述べている。彼らは多年にわたる操業経験から、鋳物の
形状及び重量に応じて、採用すべき埋込み押湯の形状、
ガス加圧のタイミング及び圧力などについて既に確立さ
れた作業標準を有している。
【0005】BerryとWatmough(文献
(2))は凝固温度区間の大きいAl合金砂型鋳物(断
面50mm角型、長さ350mm)について図11に示
した方法で、アルゴンガスによる加圧凝固を行った結
果、1.4atm程度の加圧で充分に効果があり、種々
の合金系について実用性が充分であると結論している。
【0006】以上の如く、埋込み押湯にガス圧を付与す
ることによってミクロポロシティを低減または消滅でき
ることが実証されている。しかしながら、現在、当該方
法が広く普及しているという文献は見当たらない。その
理由として、当時、溶湯補給のメカニズムとしてデンド
ライト間液相流れという物理的概念が明確に確立してお
らず、従って、これを記述する数学的方法が開発されて
いなかったため、溶湯補給効果(すなわち押湯効果)を
定量的に評価できなかったことに根本的な理由があると
思われる。従って、圧力を付与するタイミング、所要圧
力等についても試行錯誤と経験に依存せざるを得ず、効
果のある場合もあればない場合もある等、信頼性に欠け
たためと思われる(例えば文献(3)では比較的小さい
断面を有する長尺の砂型鋼鋳物(3〜5インチ角断面、
10〜24インチ長さ)について5atm程度の加圧鋳
造実験を行った結果、ミクロポロシティの低減効果は僅
少であり、本法の押湯加圧効果について逆に否定的な意
見を述べている)。
【0007】〔Counter−Pressure C
asting Process(差圧鋳造法)〕当該鋳
造プロセスは、ブルガリアの特許(文献(4))に端を
発する。現在、一般に実用されている当該装置の概要を
図12に示す。鋳型(一般に金型)および溶湯保持炉は
機密性を有する容器に収納され、それぞれ分離されてい
る。操業手順は、鋳型の準備の後、まず、ガス源から溶
湯保持室及び鋳型室へ通じる配管のバルブ1、2及び3
を開き当該両室内の圧力を上げて行き所定の圧力P
設定する。このとき鋳型キャビティ(製品の具体的な形
状は図示せず)内へ迅速に圧力がかかるよう鋳型に取り
付けた開閉弁を開いておく。次に、鋳型室に設けられた
開放バルブを開いてガスの一部を外気へ逃がし鋳型室内
の圧力をPとすると同時に保持炉内の溶湯は溶湯保持
室内の圧力P1との差圧△P(=P−P>0)によ
り給湯管を通って鋳型キャビティへ導入される。このと
き開閉バルブは閉じておく。そして、溶湯が凝固するま
で両室内の圧力をPおよびPに保持し、凝固完了後
は両室の圧力を解放し、鋳物を取り出す。
【0008】当該方法は、主としてアルミ鋳物に適用さ
れ、実用的には最大10atmのオーダーの圧力をかけ
ている。これによって大気圧鋳造品と比べてより内部ミ
クロポロシティの少ない製品が得られると述べている
(例えば文献(5))。
【0009】次に本発明のもう一つの課題である凝固時
間の短縮について述べる。現在、エンジンブロック、シ
リンダーヘッドなどのアルミ自動車部品の多くは低圧鋳
造法(図13参照。保持炉内に加圧ガスを導入し鋳型キ
ャビティ内の雰囲気圧との差圧(1atm以下)により
注湯する一種の注湯機械)によって生産されている。低
圧鋳造法によるアルミ鋳物の製造においては内部欠陥の
抑制とともに生産性(低鋳機1台1日当たりの鋳造回
数)を直接左右する鋳造サイクルを短くすることが強く
要望されている。これには鋳造サイクルの大部分を占め
る凝固時間を短縮することが最も効果的であり、金型の
材質の変更(例えば鋼から銅合金へ変更する)、金型内
の通水路における抜熱速度の向上などにより金型の冷却
能を向上させる工夫がなされている(例えば文献
(6))。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上の如く、鋳造にお
ける押湯(および方案)技術は未だ不完全であり、鋳物
には内部欠陥(ミクロポロシティ、その他)がつきもの
との広く行きわたった認識を一掃するまでには道程は遠
いというのが現状である。本発明は、数多くある鋳造プ
ロセスの中で、主としてアルミ自動車部品などの比較的
融点の低い合金鋳物の製造に用いられる金型重力鋳造な
らびに低圧鋳造において発生する内部欠陥を無くそうと
するものであり、同時に凝固時間を短縮することによ
り、生産性を高めようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】金型重力鋳造において押
湯内溶湯表面に直接高圧ガスを付与することにより押湯
効果を高めると同時に冷却能の大きい金型と鋳物の境界
における接触性を高めることによって凝固時間を短縮し
ようとするのが本発明の原理であり、図1はその概念図
である。図1において、溶湯は注湯カップを介して金型
7のキャビティ8(具体的な製品形状は省略)へ注湯さ
れる。通常、金型は押湯6から最も遠い鋳型キャビティ
の先端部から押湯へ向かって凝固が進行するよう(指向
性凝固と呼ばれる)設計されている(鋳型設計は鋳造方
案と呼ばれる)。普通、湯口と押湯は別の位置に設ける
が、湯口が押湯機能を兼ねている場合も多い。また、押
湯には大気にさらされる開放押湯(open rise
r)と金型内に埋込まれるめくら押湯(blind r
iser)がある。金型内面は通常塗型が施されており
200℃〜400℃に予熱される。また注湯中、キャビ
ティ内のガスを逃がすための小さな穴が設けられてい
る。注湯後は直ちに注湯カップを取り除き加圧蓋11に
設けられたバルブ15を閉じ、加圧ガスを導入して押湯
内溶湯表面を加圧し、凝固完了まで圧力を保持する。バ
ルブ15の機構として電磁バルブあるいは加圧蓋11の
内側に弁とバネを設け、注湯カップの除去と同時に内側
からバネによって閉まる方法等種々の方法が容易に実行
できる。加圧蓋にはガス導入バルブ18、圧力計16の
他にガス室14内のガスの温度上昇に伴う圧力上昇を防
ぐための圧逃がし弁17を設けている。金型鋳造は一般
に冷却速度が速いので加圧操作は迅速に行う必要があ
る。金型重力鋳造はその名前の通り金属製の鋳型に溶湯
を重力を利用して流し込む鋳造法の総称であり、これに
は注湯時金型を傾斜させる方法なども含まれる。
【0012】一方、鋳型に対して下から注湯する逆重力
鋳造法(counter gravity casti
ng、上記低圧鋳造はその一つ)に本発明の原理を適用
した場合の概念図を図2に示す。図2において、1は溶
湯の保持炉、2は溶湯、3は機密性を有する保持炉室、
4は外部ガス源からのガス導入口、5は給湯管、6は湯
口、7は金型(上下型に分離される)、8は金型キャビ
ティ(製品部の具体的形状は省略)、9は金型に設けら
れたキャビティ内ガスの逃し孔(一般に複数)、10は
溶湯の逆流防止弁、11は加圧蓋でありこれには外部ガ
ス源(示さず)からの加圧ガスを導入するパイプ12が
取り付けられている。14は加圧ガスによって占められ
る空間である。図2(a)は給湯管5の水平部に分岐部
を設けその上にガス室14を配置した場合、および図2
(b)は湯口6の下の垂直部に分岐部を設けそこから分
岐し分岐部より高い位置にガス室を配置した場合であ
る。いずれの場合も逆止弁の構造によって操作方法に若
干の違いはあるが、基本的な機能は同じである。鋳造手
順は、金型の準備(塗型、金型の予熱など)および溶湯
保持炉の準備の後、まず保持炉室3にガスを導入するこ
とにより、あるいは金型キャビティ内8を減圧すること
により(減圧機構省略)、金型キャビティへ注湯する。
この要領は通常の低圧鋳造と同じである。注湯終了後直
ちに逆止弁10を閉じバルブ18を開いて加圧ガス室1
4内の溶湯表面にガス圧を付与する。あるいは注湯終了
後直ちに加圧ガスを導入し、ガス室から保持炉へ逆流す
る流体の力を利用して逆止弁を作動させる。凝固完了ま
で圧力を保持した後バルブ19を開いて加圧ガスを開放
すると湯口より下の溶湯は自重により降下しガス室14
内の溶湯はフィルター位置まで上昇する。以上が鋳造の
1サイクルである。尚、湯口部あるいは給湯管中の溶湯
に対して下から加圧ガスをかける方法ではガスは泡(b
ubble)となり浮力を生じて上昇し鋳型キャビティ
へ混入するため圧はかからない。ガス室14を設け溶湯
表面に対し上からガス圧をかけるのはこのためである。
【0013】以上の方法によって高圧ガス、例えば、ガ
ス源として市販のArガスボンベを用いれば最大200
kgf/cmの圧力をかけることができる。
【0014】以上の如く、金型重力鋳造および逆重力鋳
造においてガス圧を付与する具体的な方法は異なるが、
いずれも最後に凝固する押湯部あるいは湯口部に圧力を
付与し、押湯効果を増すと同時に鋳物と鋳型間の密着性
を高め、これにより凝固時間を短縮しようとする技術思
想の点では同じである。
【0015】
【作用】
〔押湯効果について〕押湯に圧力を付与することによっ
て鋳物の内部ポロシティを低減あるいは消滅できること
は既に述べた文献によって実証されている。どの程度の
加圧力を必要とするかは本質的にはデンドライト間の液
相流れ現象が関与しており、従って合金の種類、鋳物の
形状・大きさ、鋳型の種類、注湯温度等によって決ま
る。また、一つの鋳物部品内においてもある程度ポロシ
ティがあっても製品の機能上問題ない部分もあれば無欠
陥が要求される部分もある。また少量のポロシティある
いは偏析があっても要求される機械的性質(引張り強
さ、伸び等)の範囲内であれば許容される場合もある。
従って所要加圧力は個々の場合によって異なる。一般的
に言えば、凝固温度区間の大きい合金ほど、厚肉でずん
ぐりした形状よりも薄肉長尺形状においてより大きい加
圧力を必要とする。その理由はこれらの鋳物においては
液相の給湯距離が長くなるためである。また、冷却速度
が大きくなるほど、デンドライトの形態が微細になり流
れに対する抵抗が増す。
【0016】以上の現象を理論式を用いて説明する。凝
固中のデンドライト結晶と液相が共存する状態におい
て、凝固収縮その他により誘起されるデンドライト間液
相の流動現象はダルシーの式によって記述されることが
知られている(文献(7)参照)。すなわち、 ベクトルVは液相の流速、μは液相の粘性係数、g
液相の体積率、Kは透過 )式を▽Pについて解くと 圧(Pとする)を出発点とし押湯から製品部への液相
流れの通路(3次元)に沿って(2)式を積分して行く
と、その通路に沿ったPの変化、すなわち圧力降下を知
ることができる。そして、Pが次式で与えられる臨界条
件に達するとその場所に内部ポロシティ(空隙)を生ず
る(文献(7)のp.237を参照されたい)。 ここに、Pgasは液相中の固溶ガス(例えばAl合金
では水素)と平衡するポロシティ内の平衡ガス圧、σ
LGは液相−ガスポロシティ界面の表面張力、rは球状
ポロシティの曲率半径である(図14参照)。溶融金属
に対してσLGは10(dyn/cm)のオーダー
(Alに対して約700)であり、rは10μm程度と
すると、−2σLG/r=−2x10(dyn/cm
)≒−2(atm)程度となり、Pgasは大きくて
も数気圧のオーダーであるから(3)式の右辺は負圧に
なったとしても小さい。
【0017】そこで、圧力降下の大きい場合押湯から離
れた部分で臨界圧以上の圧力に保持しポロシティを生じ
させないためには上記の液圧Pを大きくしてやればよ
い。図18はポロシティ発生臨界条件式(3)について
液相圧力降下とポロシティ発生の関係を模式的に説明し
た図である。図中、固相率が臨界固相率gs以上の領
域でポロシティを発生する。押湯部の液相に外圧を付与
するのはこのP分布を嵩上げするためである。
【0018】以上の議論を一次元ダルシー流れを用いて
説明する。物理的洞察を簡明にするために次のようなモ
デル化を行う(図15参照): 1)鋳物の長手方向(X)の温度勾配はない。また、横
断面内についても温度は一定である。 2)鋳物の端面(X=0)からの熱流はない。また、押
湯は液相の補給源として働くが鋳物への熱流はない。 3)液相密度ρおよび固相の密度ρは一定である。 4)固相は動かない。 このとき必要な式を列記すると次のようになる:
【0019】ダルシーの式より 固液共存相の液相に関する連続条件より、 式の簡単な操作によりPに関する次式が得られる。 ここにPは押湯(X=Lの位置)における液相の圧力
である。βは凝固収縮率であり、 と定義する。
【0020】透過率Kは次式を用いた(文献(8))。 なる実験式で与えられる。Aおよびnは材料定数であ
る。
【0021】 hは鋳型への熱伝達係数(一定と仮定)およびToは鋳
型温度(一定と仮定)である。上式の左辺は凝固に伴う
潜熱の発生速度、右辺は鋳型の抜熱速度を表す。円筒形
鋳物の場合、凝固速度は次式で与えられる。 いる。 よく知られている(例えば文献(7)のp.34参
照)。以上(4)、(6)から(9)、(11)および
(12)式が計算に必要な式である。
【0022】これらの式の査察より次のことが明らかで
ある: (6)式右辺第2項はダルシー流れによって生ずる液圧
降下項であり、与えられ きくなり容易にポロシティ発生臨界条件((3)式)に
達する(逆はポロシティ 、デンドライトセルも微細になるので((9)式)、透
過率K((8)式)は小さくなる。
【0023】 与え、(12)式および(11)式より温度Tおよび経
過時間tを求め、(9)および(8)式よりKを求め、
(6)式よりP分布を計算した。鋳物の材料はAl−3
wt%Cu、寸法は直径50mmφ、長さ500mmと
した。計算に用いた物性値を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】鋳型の冷却能を表す熱伝達係数をh=0.
01(cal/cmS℃)に設定した金型鋳造相当の
場合、凝固時間は66秒、デンドライトアームスペーシ
ング 、図16に示すごとく圧力降下は極めて大きい。圧力降
下は凝固の進行と共に急 を示した。実際にはこのような大きな負圧を発生するこ
とはなく(3)式を満たすようにポロシティを形成して
液圧は緩和される。一方、h=0.001(cal/c
S℃)に設定した砂型相当の場合、凝固時間は66
0秒と長く、デンドライトアームスペーシングは82.
8μmと大きい。このため、圧力降下も図17に示すご
とく金型に比べてはるかに小さく、ポロシティの発生を
無くすためには10atm程度の押湯加圧(Pr=10
atm)で充分と判断される。
【0026】以上より前述したごとく所要押湯加圧力は
ケースバイケースで大きく変動するものであり、従っ
て、前述の文献(2)のごとく数気圧で効果のある場合
もあれば100atmでもポロシティが残る場合もあ
る。ただし、加圧力に相応するポロシティの低減効果は
ある。現在種々の文献から10atmのオーダーのガス
圧力が一応の目安となっているが何ら技術的根拠のない
ことは上の計算から明らかである。鋳物表面ポロシティ
についても同様の圧力降下によって生ずるが省略する。
尚、本計算では温度は均一として扱ったが、実際の鋳物
において加圧効果を有効に発揮させ、健全な鋳物を得る
ためには鋳物末端から押湯(または湯口)への指向性凝
固が基本となることは言うまでもない。
【0027】〔鋳物−金型間の伝熱抵抗について〕鋳物
と鋳型の境界において、凝固の比較的初期の段階に鋳物
の収縮に伴って小さい空隙(エアギャップ)が形成され
ることが知られている。鋳型が熱吸収能の大きい金型の
場合、この傾向はより顕著に現れる。金型鋳造において
エアギャップが形成されると金型への熱流束(単位面
積、単位時間当りの抜熱量)は急激に小さくなる。
【0028】本発明は、前記押湯効果とともに凝固中の
固相あるいは固液共存相を金型内壁面に対して圧し付け
ることによりエアギャップを極力小さくし熱流を高めよ
うとするものである。図19はこれを説明するために用
いたダルシー流れパターンの模式図である。図19
(a)および(b)は金型重力鋳造の場合であり、
(a)は凝固温度区間の小さい合金、(b)は凝固温度
区間の大きい合金におけるダルシー流れパターンを示
す。図19(c)は逆重力鋳造において加圧した場合で
ガス圧は作用力線に沿って伝達され、表面層は金型内壁
に押付けられる。作用力線に対して垂直方向の線が等液
圧線となる(図19(d))。以上はダルシー流れが存
在する間成り立つがダルシー流れが存在しなくなった状
態、例えば加圧に い、力の伝達は一般の連続体力学上の問題となる。いず
れの場合もガス圧による力の伝達を厳密に評価すること
は難しいがデンドライト間の液相を介して表面凝固層に
圧力が伝達されることがわかる。
【0029】既述の差圧鋳造法では鋳型室も同圧に保持
されるので、圧搾ガスが鋳物と金型の間に存在し、背圧
として働くので密着性を増すことは期待できず、従って
凝固時間を短縮することはできないだろう。さらに冷却
能の小さい砂型に対して既述の埋込み押湯加圧を行う方
法では密着性が増しても本来冷却能が小さいので凝固時
間の短縮効果は小さい。以上より金型のように冷却能の
非常に大きい鋳型に対してのみ本発明の方法は有効性が
ある。これが重力鋳造において凝固時間短縮に注目し、
本発明の適用範囲を金属性鋳型に限定した理由である。
【0030】
【発明の実施の形態】
〔実験例〕金型重力鋳造実験装置を図20に示す。金型
はS45C鋼製であり、キャビティの寸法は50mmφ
x30mmφx410mm長さのテーパー付き円筒形と
した。溶解はアルゴンガス雰囲気の電気炉中で行い、六
塩化エタン0.3wt%をるつぼ内溶湯に埋込み脱ガス
処理を施した(脱ガス時間は20分)。押湯部金型内面
のみアルミナ系塗型を施し、金型は予熱せずAl−3w
t%Cu合金を700〜730℃で注湯した。注湯時間
は約10秒であった。注湯終了後ただちに注湯カップを
取り除き注湯口をボルトネジでシールした。湯口上面に
Oリングを装着する溝を施しており、これによって機密
性が保たれる。次に、バルブ18を開き高圧アルゴンガ
スを導入して押湯内溶湯表面を加圧した。加圧開始時刻
は注湯開始時刻から約15秒後であり約3〜5秒でに所
定の圧力に達した。凝固中の温度変化は図示の如く金型
側面より挿入した3本の熱電対により測定した。図21
は大気鋳造の場合であり、加圧鋳造の場合の測定例(3
0atm)を図22に示す。両図を比べると、押湯に近
いほど、凝固時間が短縮されていることがわかる。また
凝固完了後は位置No.1は位置No.2と比べて温度
が逆転している。
【0031】本合金の凝固開始温度は650℃であり共
晶の終了(共晶温度548℃)で凝固完了と見なした。
本実験では注湯時間(約10秒)およびその後の加圧タ
イミング(約15秒後)に比べて凝固時間が比較的短い
ので、局所凝固時間の算出に当って、溶湯が金型キャビ
ティ内を上昇し、順次各温度測定位置に達するまでの時
間を求め、それらの時間を開始時刻と見なした。すなわ
ち位置No.1、No.2およびNo.3の測定開始時
刻は注湯時間10秒から逆算しそれぞれ6.6、2.7
および0.4秒後とした。このようにして求めた局所凝
固時間の測定結果を図23にまとめて示す。同図より押
湯下の位置No.1で時間短縮効果が顕著に現れてい
る。押湯から最も遠い位置No.3は注湯終了後極めて
短い時間に凝固するので加圧の影響を受けない。中央部
の位置No.2は加圧を開始する15秒後はまだ固液共
存状態にあるので(15秒後の温度640℃よりgs=
0.55)若干加圧による時間短縮効果が現れている。
【0032】次に長さ410mmを加圧効果の大きい上
部(150mm長さ)と下部(260)に切断しそれそ
れについて重量および体積を測定し密度を求めたとこ
ろ、図24に示すごとく、加圧により密度が上昇してお
り、上部でより押湯効果の大きいことがわかる。以上の
測定値はそれぞれ鋳物の平均的な密度を示すものであ
り、ミクロポロシティが外側より中心近傍に偏ることを
考えると中心部における密度差は上記測定値よりももっ
と大きく現れる。
【0033】以上の実験より次のことが言える。 1)加圧による凝固時間短縮効果は押湯に近いほど大き
い。 2)凝固時間を短縮するためには、鋳物の局所凝固時間
によって決まるエアギャップ形成の時刻と比較して加圧
のタイミングをできるだけ早くすればよい。実際の金型
は200℃〜400℃に予熱されており塗型をほどこし
ている場合が多いので局所凝固時間は本実験の場合より
かなり長く、加圧のタイミングはずっと早くとれる。 3)溶湯が下方から次第に上昇し鋳型キャビティを満た
して行く逆重力鋳造においては、注湯終了後に本格的な
凝固が始まるので加圧のタイミングはさらに早くとるこ
とが出来、従って加圧による押湯効果範囲もさらに広が
る。 4)加圧による押湯効果が大きいのでその分押湯(湯溜
り)体積を小さくできる。これにより凝固時間をさらに
短縮できる。例えば、クボリノフ則より局所 1/2となる。
【0034】〔具体例1〕次に本発明の原理を逆重力鋳
造法に適用した場合の実用的な装置を図3に示す。保持
炉1から鋳型7へ溶湯を導入するための給湯管5は図示
の如く折れ曲がっており加圧ガスを導入するための加圧
ガス室14が水平な湯道よりも高い位置に取り付けられ
ている。給湯管には凝固を防ぐためのヒーターが取り付
けられており溶湯温度は一定に保持される。逆止弁から
湯口6に至る立上りの部分は加圧ガスによる高い内圧が
かかるので高温強度と溶湯に対する耐食性に優れた耐熱
鋼を用いるのがよい。図3ではさらにセラミック製の内
筒を用い二重管構造とした場合を示す。その他、給湯管
の外側を断熱材でカバーし断熱保温効果を上げる等の工
夫は常識的なことである(図示せず)。加圧ガス系のよ
り詳しい断面図を図4および図5に示す。加圧蓋11に
はガス導入孔および通気性を有するフィルター13が取
り付けられており、加圧の際には当該フィルターを通し
て上方より加圧ガスが導入される。フィルターはセラミ
ック系あるいは鋳鉄などの金属を用いる(これらの材料
は一般に溶融金属とは濡れない)。
【0035】フィルターの穴の半径をr、溶融金属の液
圧をP、ガス体の圧力をPgとすると注湯の際溶湯がフ
ィルターの穴に差し込むかどうかは差圧△P(=P−P
g)と2σ/rの大小関係によって決まる(図6参
照)。ここにσは溶融金属の表面張力である。いま差圧
△P=1kgf/cm、σ=1gf/cm(溶湯金属
の標準的な値)とすると、これに対応するrは20μm
となる。すなわち、直径40μm以下の穴にすれば差し
込みはない。(アルミ低圧鋳造の場合、注湯時の典型的
な差圧は0.2〜0.5kgf/cm程度であるから
rは40〜100μmとなる。)
【0036】図4は流路中に挿入した弁棒24の動きに
よって弁10を開閉する機構の説明図であり、弁棒はバ
ネを内蔵したエアシリンダーにより作動する例を示し
た。当然のことながら、エアシリンダー式以外に油圧シ
リンダー式、電磁開閉式、電動モーターと歯車式など種
々の開閉方法があり、どれを用いてもよい。図5は加圧
ガス導入後、ガス室14から保持炉へ逆流する流体の力
を利用して弁10を閉じる一般的な逆止機構の説明図で
ある。この場合、加圧ガス室の容積は保持炉への逆流量
と鋳物の凝固に伴う体積収縮量の和よりも大きくしてお
く。また、加圧湯面の位置が水平湯道部よりも高くなる
ように(湯面位置がガス室下端より高くなるように)加
圧ガス室の高さを設けておく。これは、加圧時の湯面位
置がガス室下端より低くなった場合、溶湯に侵入したガ
スが泡(bubble)となり浮力によって湯道を通り
鋳型キャビティへ上昇侵入することを防ぐためである。
もう一つの注意事項は溶湯が保持炉へ逆流する極く短い
期間に、鋳型キャビティ中の溶湯が一緒になって逆流す
る可能性があることである。もしこれが起こるときは、
保持炉内の予圧を適度に高くしておけばよい。どの程度
の予圧が必要となるかは実機における実験で容易に知る
ことができる。
【0037】以上の逆止弁、弁座、弁棒などの材料には
セラミックあるいは耐食耐熱金属材料(鋳鉄、その他)
等を用いる。逆止弁10と弁座13の接触方法も上記両
図で示した方法以外にテーパーをつけた面接触式、逆流
力を効率よく捉えられる吹き矢式面接触機構など種々の
方法が可能である。
【0038】ガス体としては空気、窒素も可能であるが
溶湯中への溶解の心配のない、アルゴン、ヘリウムなど
の不活性ガス、特にこれらの高純度不活性ガスが望まし
いことは言うまでもない。加圧ガス室に導入するガスの
ガス源としては市販のガスボンベを用いるのが好都合で
ある。高圧ガスを生成するための特別な設備が不要であ
り、室温で、最大150kgf/cmあるいは200
kgf/cmの高圧が得られ、低圧から最大圧力まで
の制御が容易にできる。既に述べたごとく冷却能の大き
い金型鋳造において押湯効果および凝固時間短縮効果を
発揮させるためにはかなりの高圧が必要であり、上記ガ
ス源の入手の便を合わせて考慮すれば、実用的なガス圧
は10〜200kgf/cmの範囲である。また、上
記一次元ダルシー流れの計算からもわかるように300
kgf/cm、500kgf/cmといったさらに
大きい圧力が必要となる場合についても、その程度の高
圧を作ることは技術的に難しくない。例えば、理想気体
の状態式より、 ここに、Rはガス定数1.987(cal/Kmol)
であり、ガス室内のガスの絶対温度Tが2倍に上昇する
と圧力Pは2倍になることから上記市販のガス源を利用
する場合でもかなりの高圧が得られる。
【0039】操作手順は次の通りである: 通常の低圧鋳造における要領で注湯する。すなわち、
保持炉内3に加圧ガスを導入し、鋳型キャビティ内
(8)雰囲気圧との差圧により注湯する。 注湯終了後直ちにバルブ18を開きガス室14に加圧
ガスを導入し溶湯表面に圧力を付与する。この時バルブ
19は閉じておく。溶湯流路内に挿入した弁棒24を用
いる場合(図4参照)は先に逆止弁10を閉じておく。 凝固完了まで所定の圧力を保持した後、バルブ18を
閉じ、バルブ19を開いてガス室内14の圧縮ガスを解
放する。このときガス室内の液面は自重によりフィルタ
ー位置まで戻る。(注:このとき当該フィルターと湯口
下直管部内液面の相対位置関係において、フィルター位
置よりも当該液面位置の方が高くなるようにあらかじめ
給湯管を設けておく) 型ばらしの後、鋳物を取り出す。 2回目以降の鋳造サイクルにおいては溶湯管内に溶湯は
存在する。あるいは一度保持炉に戻してもよい。
【0040】図7は逆止弁10と保持炉の間の給湯管に
電磁ポンプ20を取り付け注湯する場合の装置である。
この場合、最初の鋳造に際して、鋳型キャビティ内を軽
く減圧する、あるいは保持炉内溶湯表面にガス圧を軽く
かけ溶湯を電磁ポンプ位置まで上昇させてやればよい。
2サイクル目以降溶湯は常時給湯管内に存在する。保持
炉内溶湯表面の酸化防止のため不活性ガスを導入するの
が望ましい。
【0041】〔具体例2〕図8は鋳型7と溶湯供給源と
しての保持炉1を水平に配置した場合の実用的な装置で
あり、図9は注湯用電磁ポンプ20を組み込んだ装置で
ある。これらの装置における加圧及び逆止弁機構の1例
を図10に示す。鋳型を保持炉の真上に配置した場合
(図3および7)と比べて、これらを水平方向に離して
配置する利点として、水冷による金型の冷却および溶湯
管理のやり易さが指摘される。図8および9の具体例で
は給湯管の入口を保持炉底部に設けた場合を示したが、
給湯管と保持炉の相対位置関係は任意であり、入口はど
こに配置してもよい。また水平部給湯管は直管である必
要はない。操作方法は垂直型と本質的に同じであるので
省略する。
【0042】〔コメント〕最後に、今まで言及しなかっ
たことも含めて、本発明の要点を述べる。 (1)低圧鋳造装置の一般的な構成は1金型1製品であ
り給湯管の数も1本であるが、この他にも、1台の鋳造
装置について複数の金型を設置し複数の製品を鋳造する
複数個取り装置がある。給湯管については金型数分設け
るかまたは1本の給湯管からそれぞれの金型の湯口に枝
分かれさせる。これらの場合、それぞれ前者については
金型数組、および後者については1組の加圧ガス室およ
び逆止弁を取り付ければよい。製品寸法が大きくなり、
1個の金型に対して複数個の湯口を有する場合も同様で
ある。
【0043】(2)加圧時、金型内面には鋳物から受け
る圧力によって金型を引き離す力が生ずる。もし、加圧
時にキャビティ内がすべて溶湯で満たされていれば、そ
の力は大きくなり、大きな型締め力を必要とするが、実
際は加圧するときすでにある程度凝固が始まっているの
で引き離す力はずっと小さくなる。従って、ダイキャス
トのように射出圧力がすべて金型内面に作用する場合と
異なり、分離力はずっと小さい。加圧のタイミングはす
でに述べたごとく早い方がよいが、この点も考慮に入れ
てケースバイケースで決めればよい。
【0044】(3)ポロシティの発生を抑制するに必要
な押湯加圧力は既述の如く個々の鋳物によって広範囲に
変動する。従って、10atm以下でも当然のことなが
ら押湯効果が充分な場合もある。このような場合につい
ては、図3あるいは図8に示した逆流防止−加圧機構の
代替えとして従来型の低圧鋳造機(図13)に若干の改
造を加えることにより保持炉内雰囲気圧に関してのみ数
atmから10atm程度加圧できるようにすればよ
い。既存装置の改造費を最小限に抑えたい場合、このよ
うな手段も一策である。上限を10atm程度としたの
は圧洩れ、および安全上の理由による。この場合につい
ても本発明の考え方が貫かれている。(従来の低鋳機は
差圧が0.2〜0.5kgf/cm程度と低くいわば
注湯機械であり押湯を加圧するというねらいはない)
【0045】(4)一般に合金鋳物において凝固速度を
増し、デンドライトアームスペーシングを微細にする
と、引張り強さ、伸び、疲労などの機械的性質が改善さ
れることが認められている(例えば文献(7)のp.3
41〜p.344にはアルミ合金その他の実用合金鋳物
について詳述されている)。また、実際の鋳物製品にお
いて、内部ポロシティの存在が機械的性質を劣化させる
ことは常識であり、文献も多い。従って、本発明による
鋳造方法によってポロシティを大巾に減少あるいは無く
すとともに、凝固組織を微細にする、すなわちデンドラ
イトアームスペーシングを小さくする両者の効果により
実製品の機械的性質を大巾に向上させることができる。
これは、例えばアルミ合金などの自動車鋳物の高強度
化、軽量化をもたらす上に重要なことである。
【0046】
【発明の効果】本発明による新しい鋳造法の効果は従来
の差圧鋳造法(図12)と比較することにより明確に理
解される。差圧鋳造法では、大容積を有する鋳造装置全
体を高圧ガス雰囲気でカバーする必要上、圧力容器の剛
性、高圧ガス洩れなどが大きな問題となり、従って、実
用上圧力には限界がある。現在10atm程度が用いら
れているが、100atmあるいはそれ以上の高圧に上
げることは安全性の問題も含めて非現実的であろう。例
えば標準的なV6エンジンのシリンダーブロックの場
合、圧力容器の断面積を0.7mとすると10kgf
/cmで70ton、100kgf/cmで700
tonの荷重がかかる。これに対して本発明による方法
では加圧部分は極めて容積の小さい局所に限られ、鋳物
のサイズとは実質的に無関係である。例えば、給湯管の
典型的な断面積を100cmとすると100kgf/
cmかけた場合でも高々10tonである。また、ア
ルゴンなどの加圧ガスの消費量も極く少量で済み比較に
ならない。
【0047】以上、従来の差圧鋳造法および低圧鋳造法
と比較した場合の当該鋳造方法の効果をまとめると次の
通りである。 (1)押湯能力の飛躍的向上により品質の大幅な向上が
可能となる。これにより歩留まりが向上する。(低圧鋳
造では押湯加圧力は実質的に無い) (2)溶湯と金型の密着性が高くなる結果、冷却速度が
大幅に増し、凝固組織がより緻密になることにより機械
的性質が向上する。また、鋳物の寸法精度が向上する。 (3)鋳造サイクル短縮による生産性(単位時間当たり
の鋳造回数)の向上。 (4)安全性が高く、ランニングコストも安い。 以上の如く低圧鋳造はもちろんのこと差圧鋳造法に比べ
てはるかに大きい加圧力が得られる本発明による鋳造法
の優位性は明らかである。特に生産性の点では鋳造サイ
クルの短縮による寄与が大きい。
【0048】以上本明細書においてはアルミ合金鋳物を
中心に述べて来たが、亜鉛、マグネシウムなど比較的融
点の低い金属の金型重力鋳造においても上記(1)〜
(3)の効果が得られることは明らかである。 [文献] (1)Kononow,D.R.:”Compress
ed−air Risers”,Iron & Ste
el,Vol.30(1957) No.11,P.4
89 (2)Berry,J.T.and Watmoug
h,T.:”Factors affecting s
oundness in alloys withlo
ng and short freezing ran
ge”,Modern Castings,Vol.3
0 (1961),No.1,p.63 (3)Middleton,J.M.and Jack
son,W.J.:”Compressed air
feeder heads”,BritishFoun
d.,Vol.55 (1962),No.11,p.
443 (4)A.T.Balevski and I.D.N
ikolov:ブルガリア特許No.187 (196
1),日本特許公報昭45−19585 (5)Metal Technology社カタログ:
Counter−Pressure Casting
Machines, (Bulgaria) (6)高橋忠生、金指 研:”低圧鋳造法の現状と今後
の課題”、鋳物、Vol.66(1994)、No.1
2、P.940 (7)Flemings,M.C.:”Solidif
ication Processing”,McGra
w−Hill,Inc.,(1974),p.234 (8)Kubo,K.and Pehlke,R.
D.:”Mathematical modeling
of porosity formation in
solidification”,Metallur
gical Transactions B,Vol.
16B(1985),p.359
【図面の簡単な説明】
【図1】金型重力鋳造において押湯(あるいは湯口)内
溶湯表面にガス体による圧力を付与することを特徴とす
る本発明の概念図である。
【図2】逆重力鋳造において押湯(あるいは湯口)部溶
湯にガス体による圧力を付与することを特徴とする本発
明の概念図である。(a)は給湯管水平部にガス室14
を配置した場合、および(b)は給湯管垂直部にガス室
14を配置した場合である。
【図3】逆重力鋳造における本発明の実用的な装置の概
略図であり、溶湯保持炉、鋳型装置および給湯加圧装置
より構成される。
【図4】図2および3における給湯加圧装置におけるガ
ス加圧機構および逆流防止機構の具体例を示す図であ
る。
【図5】図4における逆流防止機構の別の具体例を示す
図である。
【図6】溶湯がフィルターの穴に侵入する場合の説明図
である。
【図7】図3の装置において、注湯のための電磁ポンプ
20を取り付ける場合の概略図である。
【図8】図3の装置における溶湯保持炉および鋳型装置
を水平に配置した場合の概略図である。
【図9】図3の装置における溶湯保持炉および鋳型装置
を水平に配置した装置において、注湯のための電磁ポン
プ20を取り付けた場合の概略図である。
【図10】図8および9の装置における加圧−逆流防止
機構の具体例を示す図である。
【図11】従来の埋込み押湯ガス加圧鋳造の概略図であ
る。
【図12】従来のCounter pressure
casting(差圧鋳造)装置の概略図である。
【図13】従来の低圧鋳造機の概略図である。
【図14】デンドライト間液相部に生ずるミクロポロシ
ティを示す図である。dはデンドライトセルの径を表
す。
【図15】デンドライト間液相の流れ(ダルシー流れ)
を計算するために用いた一次元凝固モデルである。
【図16】図15の一次元凝固モデルにおいてデンドラ
イト間液相圧力分布の計算値を示す図である。材料はA
l−3wt%Cu合金、断面は直径50mm、長さ50
0mmの円筒形であり鋳物表面の熱伝達係数表は0.0
1cal/cmS℃(金型鋳造相当)とした。
【図17】図15の一次元凝固モデルにおいてデンドラ
イト間液相圧力分布の計算値を示す図である。材料はA
l−3Wt%Cu合金、断面は直径50mm、長さ50
0mmの円筒形であり鋳物表面の熱伝達係数表は0.0
01cal/cmS℃(砂型鋳造相当)とした。
【図18】内部欠陥が生ずるメカニズムを説明するため
の模式図である。
【図19】押湯加圧力が金型内面に伝達されるメカニズ
ムを説明するための模式図であり、(a)は金型重力鋳
造において凝固温度区間の大きい合金の場合、(b)は
金型重力鋳造において凝固温度区間の小さい合金の場
合、および(c)は逆動力鋳造において凝固温度区間の
大きい合金の場合のダルシー流れパターンを示す。
(d)は押湯加圧力によって生じる作用力線および等液
圧線を示す。
【図20】本発明の実験に用いた金型の概略図である。
【図21】図20の大気鋳造実験(加圧なし)で得られ
たAl−3wt%Cu合金鋳物の温度測定データを示す
図である。No.1、No.2およびNo.3はそれぞ
れ鋳物底部より390mm、210mmおよび40mm
の位置における中心測定位置を示す。
【図22】図20の50atm加圧鋳造実験で得られた
Al−3wt%Cu合金鋳物の温度測定データを示す図
である。No.1およびNo.2はそれぞれ鋳物底部よ
り390mmおよび210mmの位置における中心測定
位置を示す。
【図23】図20の実験において得られた局所凝固時間
を示す図である。
【図24】図20の実験において得られた鋳物の密度を
示す図であり、上部は押湯を除く鋳物を長さ方向に2つ
に切断した上半分(長さ150mm)、下部は同下半分
(長さ260mm)、および平均は鋳物全長の密度を示
す。
【符号の説明】
1 溶湯保持炉 2 溶湯 3 保持炉室 4 保持炉室へのガス導入口 5 給湯管 6 湯口(押湯) 7 鋳型(金型) 8 鋳型キャビティ 9 キャビティ内ガスの逃し孔 10 逆流防止弁 11 加圧蓋 12 加圧ガス導入パイプ 13 フィルター 14 加圧ガス室 15 湯口部バルブ 16 圧力計 17 圧逃し弁 18 加圧ガス導入バルブ 19 加圧ガス開放バルブ 20 電磁ポンプ 21 油圧シリンダー 22 支柱 23 弁座 24 弁棒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B22D 39/06 8719−4K B22D 39/06

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製鋳型を用いる金型重力鋳造プロセ
    スにおいて、溶融金属を注湯した後、押湯部あるいは湯
    口部の溶融金属表面にガス体による圧力を付与すること
    を特徴とする鋳造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のガス体による圧力は少な
    くとも10kgf/cm以上の圧力を付与することを
    特徴とする鋳造方法。
  3. 【請求項3】 鋳型キャビティに直結する湯口を当該キ
    ャビティの下方に配置した鋳型、溶融金属の供給源およ
    び当該供給源から当該湯口へ至る給湯管から構成され、
    当該給湯管を介して溶融金属を上向きに注湯する逆重力
    鋳造プロセスにおいて、前記給湯管には、前記湯口から
    前記供給源への溶湯の逆流を遮断する逆流防止弁を設け
    るとともに当該逆流防止弁と前記湯口の間の湯道におい
    て、当該湯道より分岐し、当該分岐部より高い位置に、
    注湯終了後加圧ガスを導入するためのガス室を設けるこ
    とを特徴とする鋳造装置。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の鋳造装置において、溶湯
    供給源として溶湯保持炉を設けるとともに当該溶湯保持
    炉内と鋳型キャビティ内の雰囲気圧に差圧を生ぜしめ、
    その差圧により給湯管を介して鋳型キャビティへ注湯す
    る構成とすることを特徴とする鋳造装置。
  5. 【請求項5】 請求項3記載の鋳造装置において、溶融
    金属供給源と逆流防止弁との間の給湯管に電流と磁場の
    相互作用により発生する電磁力(Lorentzの力)
    を印加する装置を設け、その電磁力によって鋳型キャビ
    ティへ注湯する構成とすることを特徴とする鋳造装置。
  6. 【請求項6】 請求項3、4および5記載の給湯管は溶
    湯の凝固を防止するための加熱保温装置を具備すること
    を特徴とする鋳造装置。
  7. 【請求項7】 請求項3記載のガス室は、その上部に外
    気と遮断する機密性を有する蓋を設け、当該蓋には加圧
    ガスを導入するための通気孔ならびに通気性を有するフ
    ィルターを設け、当該フィルターは注湯時溶湯と直接接
    触し、加圧ガス導入時には当該フィルターを介してガス
    室内溶融金属表面に対し上方よりガス圧力を付与する構
    成とすることを特徴とする鋳造装置。
  8. 【請求項8】 湯口を鋳型底部に配置した鋳型、溶融金
    属の保持炉および当該保持炉から鋳型へ溶融金属を導入
    するための給湯管から構成され、当該給湯管を介して溶
    融金属を逆重力方向に注湯する鋳造装置において、前記
    保持炉と鋳型キャビティ内の雰囲気圧に差圧を生ぜしめ
    る手段と、その差圧により給湯管を介して鋳型キャビテ
    ィへ注湯した後、前記保持炉内に加圧ガスを導入し注湯
    に必要とされる通常0.1から最大1kgf/cm
    圧力より少なくとも数倍高い圧力を前記保持炉内溶融金
    属表面に付与する手段から構成することを特徴とする鋳
    造装置。
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