JPH10156477A - ロッカアームの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 生産性がよく、寸法精度や表面平滑度にすぐ
れるロッカアームが得られるロッカアームの製造方法を
提供する。 【解決手段】 ロッカアームの略中央部にカムに接触す
るローラを収容するローラ収容部のローラ両端面に対向
する両内側面間に、互いに平行な面を有する挿入ブロッ
クを挿入し、ついで、ローラ収容部の両内側面と平行な
ロッカアーム本体の外側を押圧し、挿入ブロックの平行
面にローラ収容部の両内側面を当接させたのち、挿入ブ
ロックを抜き取り、さらに、ローラ収容部の両内側面間
の仕上寸法を幅寸法とする円筒状または円柱状の平滑仕
上ローラを、ローラ収容部の両内側面間に圧入し押し出
して平滑仕上する。挿入ブロックの平行面の面粗度は15
Ｓ〜25Ｓとすることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明が属する技術分野】本発明は、内燃機関の動弁機
構に使用されるロッカアームの製造方法に関し、さらに
詳しくは、ロッカアームの本体部分に設けられるローラ
挿入用空間の寸法仕上げ方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】ロッカアームは、内燃機関における動弁
機構、すなわちクランク軸に連動して回転するカムの回
転運動をこの内燃機関の吸気弁あるいは排気弁の弁軸の
往復運動に変換する部分を構成する部材である。従来、
このようなロッカアームは、その一端部が高速回転する
カム軸に対して揺動するため、この部分を耐摩耗性のす
ぐれた高合金鋼製のチップ形状として成形されたもの
や、アルミニウムまたは低合金鋼で成形したロッカアー
ム本体とを一体化して製造していた。しかし、近年、エ
ンジンの高出力化、小型化にともない、上記チップの代
わりにローラを装着したロッカアームが主流となってい
る。

【０００３】例えば、図５に示すような、ローラ２を中
央部に装着したロッカアームがある。このロッカアーム
は、ロッカアーム本体１にカム軸と転がり接触するロー
ラ２を装着するための装入孔３が上面から下面に貫通す
るように形成されている。この装入孔３には、上記ロー
ラ２がその端面を装入孔の内側面に向けてかつ各端面と
内側面の間に若干の隙間を持たせて装入されている。

【０００４】また、図６に示す、ローラ形式で、２つの
バルブを同時に開閉できるタイプのロッカアームがあ
る。このロッカアームは、ロッカアーム本体１とローラ
２で構成され、ロッカアーム本体１の略中央部にローラ
収容孔13が形成され、その内部にローラ２が収容され
る。ロッカアーム本体１は略中央部で分離し、その両側
にはバルブに当接する爪（弁押圧部14）が形成され、平
面形状は略Ｕ字型ないし略Ｙ字型となっている。

【０００５】このようなロッカアームは、形状が複雑で
あることから、従来、金属粉末を焼結する焼結法によっ
て製造されていた。しかし、焼結法は寸法精度はよいが
生産能率が低く、コストを著しく増大させてしまうた
め、近年、これに代わる製造法として能率のよい精密鋳
造法や型鍛造法などが試みられている。精密鋳造法や型
鍛造法などの製造法は、能率的ではあるが、高温工程を
含む加工方法であって熱収縮を避けることができないた
め寸法精度が低く、バルブと接触する弁押圧部の間隔
や、ローラの取り付けられるローラ収容部内側面の間隔
がばらついたり、これらの面が粗いなどの新たな問題点
がある。

【０００６】これらの問題点を解消するため、特開平3-
110040号公報には、ローラ取り付け孔内に矯正ブロック
を挿入して外側から押圧し、ロッカアーム全体をわずか
に塑性変形させて矯正するロッカアームの製造方法が提
案されている。この方法は、図７に示すように、精密鋳
造された製造の中間段階であるロッカアーム本体１を、
ローラ収容部13が水平方向を向くように受け台５上に載
置し、このローラ収容部13に矯正ブロック８を挿入し、
ローラ収容部13の外面を上方から押し金具７で押圧す
る。ここで、矯正ブロック８の上下面8a、8aの間隔は、
ローラ収容部13の仕上がり寸法とし、鋳造段階における
ローラ収容部13の内側面13a 、13a の間隔はこれより若
干広めに製造するものとする。ローラ収容部13の部分を
上方から押し金具７で押圧すると、中間の矯正ブロック
８を介して受け台５と押し金具７でロッカアーム本体１
のローラ収容部13付近の外側面12a 、12a を内側に押し
て塑性変形させることにより、ローラ収容部13の内側面
13a 、13a の間隔が所定の精度に修正されると同時に、
この面の平滑度も向上する。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし、この特開平3-
110040号公報に記載の方法では、ローラ収容部の内側面
の間隔を所定の精度に修正し、この面の平滑度も向上さ
せるため、ロッカアームの外側から、ロッカアームの幅
全体を強い押圧力で強く圧縮する必要がある。このた
め、変形後の残留応力も大きいという問題点があるほ
か、強い押圧によりローラ収容部の内側面と矯正ブロッ
クが密着していて押圧後にこれを抜き取るのが困難であ
るという問題点もある。

【０００８】本発明は、このような諸問題を解消し、生
産性がよく、寸法精度や表面平滑度にすぐれるロッカア
ームが得られるロッカアームの製造方法を提供すること
を目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、ロッカアーム
の略中央部にカムに接触するローラを収容するローラ収
容部を形成してなるロッカアームの製造方法であって、
前記ローラ収容部のローラ両端面に対向する両内側面間
に、互いに平行な面を有する挿入ブロックを、その平行
な面と前記ローラ収容部の両内側面とを対向させて、挿
入し、ついで、前記ローラ収容部の両内側面と平行なロ
ッカアーム本体の外側を押圧し、前記挿入ブロックの平
行面に前記ローラ収容部の両内側面を当接させて、前記
ローラ収容部の両内側面間の距離を仕上寸法と同程度の
寸法としたのち、前記挿入ブロックを抜き取り、さら
に、前記ローラ収容部の両内側面間の仕上寸法を幅寸法
とする円筒状または円柱状の平滑仕上ローラを、前記ロ
ーラ収容部の両内側面間に圧入し押し出して平滑仕上す
ることを特徴とするロッカアームの製造方法である。

【００１０】また、本発明では、前記挿入ブロックを、
その平行面の面粗度が15Ｓ〜25Ｓとすることが好まし
い。また、本発明では、前記平滑仕上ローラがローラ収
容部の両内側面の仕上がり寸法を直径とする円筒体また
は円柱体であるのが好ましい。また、本発明では、前記
平滑仕上ローラの中心線に対しやや偏心した位置で押圧
して圧入するのが好ましい。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明は、ロッカアームの略中央
部にカムに接触するローラを収容するローラ収容部を有
するロッカアーム本体について、ローラ収容部の両内側
面間隔を所定の寸法に精度良く矯正する。本発明で用い
るロッカアーム素材は、金属粉末を焼結する焼結法、精
密鋳造法等により製造されたものが好ましい。

【００１２】ロッカアーム素材のローラ収容部の両内側
面間に、互いに平行な面を有する挿入ブロックを、その
平行な面と前記ローラ収容部の両内側面とを対向させ
て、挿入する。挿入ブロックは互いに平行な面を有する
直方体が好ましい。その寸法は、その平行面の間隔がロ
ーラ収容部の両内側面間の所定の仕上寸法と同程度の寸
法に形成されていればよい。とくに厳密な寸法上の規定
は必要としない。また、挿入ブロックの平行面は、とく
に平滑な面とする必要はないが、面粗度は15Ｓ〜25Ｓの
範囲とするのが好ましい。

【００１３】ついで、前記ローラ収容部の両内側面と平
行なロッカアーム本体の外側を押圧し、挿入ブロックの
平行面にローラ収容部の両内側面を当接させて、ローラ
収容部の両内側面間の距離を仕上寸法と同程度の寸法の
挿入ブロックの平行面間隔とする。この際、ローラ収容
部の両内側面間の距離を所定の仕上寸法と同程度となる
ように圧縮できればよく、ローラ収容部の両内側面に挿
入ブロックの平行面の粗さが転写するまで強く押圧する
必要はなく、単にローラ収容部の両内側面に挿入ブロッ
クの平行面を当接させるだけでよい。強く押圧する必要
がないため、密着していて押圧後にこれを抜き取るのが
困難ということもない。

【００１４】ついで、挿入ブロックを抜き取り、ローラ
収容部の両内側面間にこの両内側面の仕上寸法を幅寸法
とする円筒状または円柱状の平滑仕上ローラを圧入し、
押し出す。これにより、わずかのスプリングバックはあ
るものの、ローラ収容部の両内側面間隔は仕上寸法とな
り、さらに、ゆるやかなＲを有する平滑仕上ローラがこ
ろがりながら、あるいは回転せずに通り過ぎるため内側
面は一種の転圧加工を受け、表面は平滑となる。刃物に
よる切削、あるいは装入ブロックへの圧接とは異なり、
加工速度も任意であるから生産性がよく、切粉等の発生
もない。

【００１５】また、ローラ収容部の両内側面間に円筒状
または円柱状の平滑仕上ローラを圧入し、押し出す際
に、平滑仕上ローラの中心線に対しやや偏心した位置で
押圧してもよい。これにより、圧入に伴い平滑仕上ロー
ラがローラ収容部の両内側面に接触して回転し、なめら
かに圧入を行うことができる。

【００１６】

【実施例】本発明の一実施例を図１ないし図４により詳
細に説明する。図１に示すように、焼結法により製造さ
れたロッカアーム本体１素材のローラ収容部13が水平方
向を向くように受け台５上に載置し、このローラ収容部
13に挿入ブロック８を挿入し、ローラ収容部13の外側面
12a を上方から押し金具７で押圧する。ここで、挿入ブ
ロック８の上下面8a、8aの間隔は、ローラ収容部13の仕
上寸法と同程度の寸法とするものとする。ローラ収容部
13の部分を上方から押し金具７で押圧すると、図１
（ａ）のＡ−Ａ矢視図である図 1（ｂ）に示すように、
中間の矯正ブロック８を介して受け台５と押し金具７で
ロッカアーム本体１のローラ収容部13付近の外側面12a
、12a を内側に押して、ローラ収容部13の内側面13a
、13a を挿入ブロック８の平行面8a、8aに当接させ、
ローラ収容部13の内側面13a 、13a 間隔を挿入ブロック
８の平行面8a、8aの間隔に近づける。ついで、挿入ブロ
ックを抜き取り、ローラ収容部13の内側面間に平滑仕上
ローラ６を圧入する。平滑仕上ローラ６は工具鋼、ダイ
ス鋼、超硬合金等の硬い材質のもので、形状はたとえば
図４（ａ）に示すように円柱体または円筒体で、直径は
ロッカアーム本体１のローラ収容部13の両内側面の仕上
寸法である。これに対して、挿入ブロックに当接された
ローラ収容部の両内側面13a 、13a 間の間隔は、仕上寸
法と同程度の寸法になっている。たとえば、ローラ収容
部の両内側面13a 、13a間の間隔が仕上寸法で17.2mmの
ロッカアームの場合、100 μｍ程度の寸法精度とする。

【００１７】ロッカアーム本体１を、図２（ａ）に示す
ように、ローラ収容部13が縦向きとなるように竪形プレ
ス等の加工設備の受け台５に載置する。この際、所定位
置に固定されるよう、受け台５上には押さえブロック4
a、4b、4cが配置されている。このうちたとえば押さえ
ブロック4a、4bは固定式、4cは矢印方向に移動可能とな
っており、固定式押さえブロック4a、4bで加工するロッ
カアーム本体１の位置決めを行い、押さえブロック4cで
締めつけて固定する。

【００１８】ロッカアーム本体１のローラ収容部13上
に、その直径がローラ収容部の両内側面13a 、13a の間
隔の方向となるように平滑仕上ローラ６を載せ、図２
（ｂ）に示すように上方から押し金具（プレス機であれ
ばラム）７を下降させ、平滑仕上ローラ６をローラ収容
部13内に圧入し、そのまま下方へ押し出す。受け台５に
は、平滑仕上ローラ６が通過できる開口部51が設けられ
ている。

【００１９】上記押し金具７の押圧面は、図２（ｂ）に
示すごとく平坦面であってもよいし、平滑仕上ローラ６
の外周形状と一致するような凹部を形成した面、あるい
は特定箇所のみで押圧するよう凸部を設けた面としても
よい。図３は、ロッカアーム本体１のローラ収容部13を
平滑仕上ローラ６が通り抜ける状況を示す概念図であ
る。（ａ）ではローラ収容部13上に平滑仕上ローラ６が
載置されている。平滑仕上ローラ６が矢印方向に、すな
わち下方に向けて圧入され、（ｂ）のようにローラ収容
部の両内側面13a 、13a を押し拡げ、平滑仕上を行いな
がら進行し、（ｃ）のようにローラ収容部13を通り抜け
て下方に押し出され、ローラ収容部の両内側面13a 、13
a の表面は平滑となる。例えば、仕上寸法で17.2mmのロ
ッカアームの場合、10μｍ程度の寸法精度であり、面粗
度は 0.5Ｓ〜 1.5Ｓである。

【００２０】図４は、平滑仕上ローラ６のさまざまな形
状例を示す。本発明の円筒状または円柱状の平滑仕上ロ
ーラは、これら形状を含むものとする。（ａ）は前記の
ように断面が真円の円筒体または円柱体で、この場合は
幅寸法は円筒または円柱の直径である。（ｂ）は、押し
金具７で押しやすいように上面に面取り部61を設けてい
る。（ｃ）は断面を楕円形状としている。（ｄ）はさら
にこの楕円形状のものの上下に面取り部61、62を設けて
いる。（ｅ）は、平滑仕上ローラ６の両脇部分に補助ロ
ーラ63を埋め込んだ構造で、補助ローラ63部分でローラ
収容部の両内側面13a 、13a に接触するようにし、補助
ローラ63のみを硬い材質としている。なお、平滑仕上ロ
ーラ６の長さは、ローラ収容部13の開口長さに見合う値
とすることはいうまでもない。

【００２１】（ａ）に示す円筒体または円柱体は、ロー
ラ収容部13上に載置する際等に、その向きを特定しなく
てもよいし、搬送も容易である。また、平滑仕上ローラ
が円筒状または円柱状であると、押し金具７が平滑仕上
ローラ６の中心線に対しやや偏心した位置で押圧した場
合、圧入に伴い平滑仕上ローラ６がローラ収容部の両内
側面13a に接触して回転し、なめらかに圧入を行うこと
ができるなどの利点がある。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、作業性がよく、能率的
な手段で素材の寸法ばらつきを矯正し、表面の平滑度を
向上させた品質のすぐれたロッカアームを低いコストで
製造することができるという、すぐれた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のロッカアームの製造方法の１実施例を
示す（ａ）正面図と（ｂ）（ａ）のＡ−Ａ矢視図であ
る。

【図２】本発明のロッカアームのロッカアームの製造方
法の１実施例を示す（ａ）平面図と（ｂ）正面図であ
る。

【図３】本発明のロッカアームの製造方法における加工
方法を説明する概念図である。

【図４】本発明のロッカアームの製造方法に適用できる
平滑仕上ローラのさまざまな例を示す斜視図である。

【図５】ロッカアームの一例を示す、（ａ）平面図と
（ｂ）正面図である。

【図６】ロッカアームの一例を示す、（ａ）平面図と
（ｂ）正面図である。

【図７】従来の技術の一例を示す（ａ）正面図と（ｂ）
平面図である。

【符号の説明】

１ ロッカアーム本体 ２ ローラ 2a ローラシャフト ３ 装入孔 ４ａ、４ｂ、４ｃ 押さえブロック ５ 受け台 ６ 平滑仕上ローラ ７ 押し金具 ８ 挿入ブロック 8a 挿入ブロック平行面 11 支点部 12a 外側面 13 ローラ収容部 13a 内側面 14 弁押圧部

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ロッカアームの略中央部にカムに接触す
   るローラを収容するローラ収容部を形成してなるロッカ
   アームの製造方法であって、前記ローラ収容部のローラ
   両端面に対向する両内側面間に、互いに平行な面を有す
   る挿入ブロックを、その平行な面と前記ローラ収容部の
   両内側面とを対向させて、挿入し、ついで、前記ローラ
   収容部の両内側面と平行なロッカアーム本体の外側を押
   圧し、前記挿入ブロックの平行面に前記ローラ収容部の
   両内側面を当接させて、前記ローラ収容部の両内側面間
   の距離を仕上寸法と同程度の寸法としたのち、前記挿入
   ブロックを抜き取り、さらに、前記ローラ収容部の両内
   側面間の仕上寸法を幅寸法とする円筒状または円柱状の
   平滑仕上ローラを、前記ローラ収容部の両内側面間に圧
   入し押し出して平滑仕上することを特徴とするロッカア
   ームの製造方法。
2. 【請求項２】 前記挿入ブロックが、その平行面の面粗
   度が15Ｓ〜25Ｓである請求項１記載のロッカアームの製
   造方法。
3. 【請求項３】 前記平滑仕上ローラがローラ収容部の両
   内側面の仕上がり寸法を直径とする円筒体または円柱体
   である請求項１または２記載のロッカアームの製造方
   法。
4. 【請求項４】 前記平滑仕上ローラの中心線に対しやや
   偏心した位置で押圧して圧入する請求項１、２または３
   記載のロッカアームの製造方法。