JP2000301283A - 自動車用の過給機用排気ベーン翼の製造方法およびベーン翼 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車用過給機を構成する部品である排気ベ
ーン翼の製造方法において、自動化が容易であり、また
品質の安定性があり、さらに仕上工程の省略が可能であ
る製造方法および排気ベーン翼を提供する。 【解決手段】ステンレス鋼または耐熱鋼の金属材料より
打ち抜いた材料から冷間鍛造により成形することを特徴
とする排気ベーン翼の製造方法である。さらに、ベーン
翼は翼部と軸部を同時に冷間鍛造し、最終段階で、トリ
ミングプレス加工によりバリを除去することおよび寸法
精度を確保することを特徴とする排気ベーン翼の製造方
法である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用過給機を
構成する部品である排気ベーン翼の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車用過給機は排出ガスのエネルギー
を利用してエンジンの出力性能を向上させるための自動
車部品であり、これを搭載することにより未搭載の場合
に比べ中速域から高速域にかけて圧倒的な加速感を得る
ことができる。自動車用過給機は、過給機に送られた排
出ガスのエネルギーによりタービンホイールが１０万ｒ
ｐｍ以上の高速回転をし、その回転軸と同軸上に結合さ
れたコンプレッサーを駆動させる働きをするものであ
る。ベーン翼は過給機を構成する部品の一つで、回転数
に応じ開閉することにより、出力を調整するものであ
り、特に低回転数領域での出力向上が達成される。

【０００３】ベーン翼は高温の排気ガスに晒されながら
開閉をするため、それを形成する材料には優れた耐熱性
を有していることが必要不可欠であり、ステンレス鋼ま
たは耐熱鋼材料が使用されている。また、ベーン翼はタ
ービンホイール外周部に多数個取付けられており、同時
に開閉することから軸部との同軸度、翼形状の精度が重
要な機能となっている。

【０００４】従って、従来からの製造方法は、その耐熱
性および寸法，形状精度からロストワックス精密鋳造法
および粉末射出成形法（ＭＩＭ法）によって成形され、
軸部を機械加工、研磨等により仕上げて製造されてき
た。また、比較的低温で使用される過給機用のベーン翼
部品については、アルミニウム合金を鍛造して製造する
方法が用いられている。例えば、特開昭６１−２７７８
８７にはベ−ンホルダ及びベ−ンを展伸用アルミニウム
合金素材から一体的に鍛造することにより，両者の強度
を向上させると共にその製造を容易にすることが提案さ
れている。この提案は接合部がないという点で優れたも
のであるが、耐熱性という問題を解消できないという問
題点がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上述したロストワック
ス精密鋳造法およびＭＩＭ法による製造方法は、ベーン
翼面の形状を作りだす上では有利であるものの、軸部と
の一体成形する場合、鋳造または焼結工程での熱変形の
ため鋳造および焼結ままの状態では、ベーン翼面と軸心
との同軸度および軸径が要求精度を満足しないため、軸
部の機械加工もしくは研磨加工が必要となり、コスト高
となるという問題点があった。

【０００６】さらに、ロストワックス精密鋳造法におい
ては、鋳造時点での製品表面および内部の欠陥が存在す
るため、品質を保証する上で余分な選別費用が発生する
という問題点もあった。また、ＭＩＭ法においては、製
造方法が粉末成形品を焼結するため、一般の鋼材および
鋳造材料に比較して材料強度が低く、特に翼部と軸部の
境界部分の強度が不足するという問題点もあった。本発
明の目的は、排気用ベーン翼を安定して、大量に製造す
る上で、軸部の仕上加工を省略ないしは簡略化すること
であり、さらに鋳造欠陥、材料強度不足というような問
題点のない製造方法および排気用ベーン翼を提供するこ
とである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、材料強度
および量産性の問題を検討し、耐熱性のある金属材料を
打ち抜き、ついで排気ベーン翼部と軸部を同時に冷間鍛
造により成形する方法を採用することで生産性および製
品コストを大きく改善できることを見いだし本発明に到
達した。さらに、仕上工程でもトリミングプレス加工を
追加することで、簡単な仕上げ加工で精度を確保できる
ことを見いだし本発明に到達した。

【０００８】すなわち本発明は、平板状の翼部に繋がっ
た軸部を具備する排気ベーン翼の製造方法において、ス
テンレス鋼または耐熱鋼の金属材料を打ち抜き、次い
で、冷間鍛造により成形することを特徴とする自動車用
の過給機用排気ベーン翼の製造方法である。好ましく
は、前記金属材料は板材でＴ字型に打ち抜き鍛造素材と
することである。また、板材の代りに棒材，角材，引き
抜き材などから製造することもできる。さらに、排気ベ
ーン翼は成形工程の一部に、翼部と軸部を同時に冷間鍛
造することを特徴とする自動車用の過給機用排気ベーン
翼の製造方法である。好ましくは、冷間鍛造に使用する
金型は順送り金型を採用し、量産性を確保することであ
る。また、冷間鍛造の最終段階で、トリミングプレス加
工によりバリを除去することおよび寸法精度を確保する
ことを特徴とする自動車用の過給機用排気ベーン翼の製
造方法である。上述の製造方法による排気ベーン翼であ
って、冷間鍛造成形された翼部と軸部を有し、前記軸部
は、実質的に鍛造ままであることを特徴とする自動車用
の過給機用排気ベーン翼である。

【０００９】

【発明の実施の形態】上述したように、本発明の重要な
特徴は排気用ベーン翼の製造にステンレス鋼または耐熱
鋼の材料を使用した冷間鍛造およびトリミングプレス加
工の構成を採用したことにある。さらに、排気ベーン翼
の成形工程の一部に、翼部と軸部を同時に鍛造したこと
も、重要な特徴である。

【００１０】冷間鍛造を使用したことにより、従来のロ
ストワックス精密鋳造法およびＭＩＭ法に比較して品質
の安定性が向上した。すなわち、鋳造欠陥や粉末成形時
の欠陥がなく安定した製造方法であることが上げられ
る。また、成形材料自体の強度もあり、前記欠陥に起因
する破損などもなく安定した製造方法である。

【００１１】ステンレス鋼または耐熱性材料は、ＪＩＳ
Ｇ ４３０４に規定されたステンレス鋼板または、Ｊ
ＩＳ Ｇ ４３１２に規定された耐熱鋼板で比較的汎用
性があり材料自体の伸びのあるオーステナイト系鋼板を
使用するとコスト面でも作業性の面でもよい。また、打
ち抜きを前記鋼板を使用し多数個同時に実施することに
より、生産性が向上する。冷間鍛造は、順送り金型を採
用することにより、さらに生産性が向上する。

【００１２】冷間鍛造の最終段階で、トリミングプレス
加工を実施することにより、冷間鍛造時点でのバリを除
去するとともに、ベーン翼先端の寸法精度を確保するこ
とができる。また、仕上げにバレル研磨を追加すること
により微細なバリを除去することもできる。

【００１３】

【実施例】次に、本発明を実施例と図面に基づいて詳細
に説明する。本発明においては、作業工程の明確化を図
るため、プレスという用語を使用しているが、冷間鍛造
の工程の一部である。図１は、排気ベーン翼１の打ち抜
きおよび冷間鍛造による製造方法を示す工程図である。
排気ベーン翼１の製品形状は、翼面が２０ｍｍｘ７．５
ｍｍで最大肉厚が２．５ｍｍの翼部１ａと、外径が４．
５ｍｍ，長さ１３ｍｍの軸部１ｂを具備したものであ
る。板材はＪＩＳ Ｇ ４３０４に規定された材質がＳ
ＵＳ３１０Ｓのステンレス鋼板２を使用した。

【００１４】ついで、工程図に従って説明する。まず、
冷間鍛造素材を供給するためのステンレス鋼板２を準備
した、次に、冷間鍛造素材は排気ベーン翼の形状に沿っ
たＴ字形の素材３を打ち抜いて製造した。この場合、工
程図の例は３個であるが、自動化するためには全体の生
産能力を考慮して、複数個同時に打ち抜くことが望まし
い。

【００１５】ついで、冷間鍛造用金型（図示省略）を製
作し順次冷間鍛造を実施する。実施した方法は金型を４
個準備して、４工程とした。まず、翼部主体の荒プレス
を実施（翼部主体プレス品４）し、次に、軸部主体の荒
プレスを実施（軸部主体プレス品５）する。さらに、全
体プレスの金型で最終形状まで鍛造成形する工程とし
た。また、各工程においては翼部と軸部の肉厚差が大き
いために軸部に径の差（テーパー）が発生するため、金
型を交互に逆テーパーとなるような構造とし、テーパー
を是正した。前記工程をさらに簡素化、すなわち鍛造工
程数を少なくするために、鍛造素材に予め翼部と軸部の
肉厚差を設けることは有力な手段である。工程図におい
ては、翼部主体プレス品４および軸部主体プレス品５の
発生するバリは省略した。

【００１６】つぎに、冷間鍛造が完了しバリを発生させ
た製品（中間製品）６をトリミングプレス加工によりバ
リを除去する。さらに、バレル研磨工程により翼端面お
よび軸端面などのエッジ部分の小さなバリを除去して排
気ベーン翼１とした。

【００１７】本発明の排気ベーン翼の製造方法により、
表面および内部欠陥がなく十分な材料強度があり、さら
に軸部の機械加工または研磨加工などの仕上工程の省略
できる、排気ベーン翼が製造できることが認められた。

【００１８】

【発明の効果】自動車用の過給機用排気ベーン翼の製造
において、本発明による製造方法によると、自動化が容
易であり、また品質の安定性があり、さらに仕上工程の
省略が可能であるので、生産性および製造コストを飛躍
的に改善することができ、排気ベーン翼の大量生産の実
用化にとって欠くことのできない技術となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す工程図である。

【符号の説明】

１：排気ベーン翼 １ａ：翼部 １ｂ：軸部 ２：ステンレス鋼板（材質：ＳＵＳ３１０Ｓ） ３：Ｔ字形の素材 ４：翼部主体プレス品 ５：軸部主体プレス品 ６：中間製品

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｆ０２Ｂ 39/00 Ｆ０２Ｂ 39/00 Ｕ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 平板状の翼部に繋がった軸部を具備する
   排気ベーン翼の製造方法において、ステンレス鋼または
   耐熱鋼の金属材料を打ち抜き、次いで、冷間鍛造により
   成形することを特徴とする自動車用の過給機用排気ベー
   ン翼の製造方法。
2. 【請求項２】 排気用ベーン翼は成形工程の一部に、翼
   部と軸部を同時に冷間鍛造することを特徴とする請求項
   １記載の自動車用の過給機用排気ベーン翼の製造方法。
3. 【請求項３】 冷間鍛造の最終段階で、トリミングプレ
   ス加工によりバリを除去することおよび寸法精度を確保
   することを特徴とする請求項１および請求項２記載の自
   動車用の過給機用排気ベーン翼の製造方法。
4. 【請求項４】 排気ベーン翼であって、冷間鍛造成形さ
   れた翼部と軸部を有し、前記軸部は、実質的に鍛造まま
   であることを特徴とする自動車用の過給機用排気ベーン
   翼。