JPH10152745A - チクソキャスティング用Fe−C−Si系合金材料 - Google Patents

チクソキャスティング用Fe−C−Si系合金材料

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JPH10152745A JP32595796A JP32595796A JPH10152745A JP H10152745 A JPH10152745 A JP H10152745A JP 32595796 A JP32595796 A JP 32595796A JP 32595796 A JP32595796 A JP 32595796A JP H10152745 A JPH10152745 A JP H10152745A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた機械的特性を有する鋳物を得ることが
可能なチクソキャスティング用Fe−C−Si系合金材
料を提供する。 【解決手段】 Fe−C−Si系合金材料の潜熱分布曲
線には、共晶溶解による山形吸熱部が存在する。またそ
の材料は共晶量Ecを10重量%<Ec<50重量%に
設定される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はチクソキャスティン
グ用Fe−C−Si系合金材料に関する。
【0002】
【従来の技術】チクソキャスティング法の実施に当って
は、前記合金材料を加熱して固相(略固相となっている
相、以下同じ)と液相とが共存する半溶融状態にし、次
いでその半溶融合金材料を加圧下で鋳型のキャビティに
充填し、その後前記加圧下で半溶融合金材料を凝固させ
る、といった方法が採用される。
【0003】従来、この種のFe−C−Si系合金材料
としては、共晶量Ecを50重量%≦Ec≦70重量%
に設定したものが知られている(特開平5−43978
号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、共晶量
EcをEc≧50重量%に設定すると、この系の合金材
料においては、黒鉛の析出量が多くなるため、鋳物の機
械的特性は通常の鋳造法、つまり溶製法によるものと略
同等となり、したがって従来材によったのでは、チクソ
キャスティング法による鋳物の機械的特性向上といった
本来の目的を達成することはできない。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は共晶量を従来材
よりも低く設定することにより、溶製鋳物に比べて機械
的特性を向上させた鋳物を得ることが可能な前記チクソ
キャスティング用Fe−C−Si系合金材料を提供する
ことを目的とする。
【0006】前記目的を達成するため本発明によれば、
潜熱分布曲線において、共晶溶解による山形吸熱部が存
在し、且つ共晶量Ecが10重量%<Ec<50重量%
であるチクソキャスティング用Fe−C−Si系合金材
料が提供される。
【0007】前記合金材料に加熱処理を施すことによっ
て、液相と固相とが共存する半溶融合金材料が調製され
る。この半溶融合金材料においては、共晶溶解により生
じた液相が大きな潜熱を持つ。その結果、半溶融合金材
料の凝固過程では固相の凝固収縮に応じてその固相周り
に液相が十分に供給され、その後液相が凝固するので、
鋳物におけるミクロンオーダの空孔部の発生が防止され
る。また共晶量Ecを前記のように設定することによっ
て黒鉛の析出量を少なくすることが可能である。これら
により鋳物の機械的特性、即ち、引張強さ、ヤング率、
疲れ強さ等を向上させることができる。
【0008】また共晶量Ecが前記範囲にある前記合金
材料においては、その鋳造温度(半溶融Fe−C−Si
系合金材料の温度、以下同じ)を低くすることが可能で
あり、これにより鋳型の延命を図ることができる。
【0009】ただし、共晶量EcがEc≦10重量%で
は、共晶量Ecが少いことに起因して前記合金材料の鋳
造温度が液相線温度に近似し、したがって、加圧鋳造装
置への材料搬送機器の熱負荷が高くなるためチクソキャ
スティングを行うことができない。一方、Ec≧50重
量%における不具合は前記の通りである。
【0010】
【発明の実施の形態】図1に示す加圧鋳造装置1はFe
−C−Si系材料を用いてチクソキャスティング法の適
用下で鋳物を鋳造するために用いられる。その加圧鋳造
装置1は、鉛直な合せ面2a,3aを有する固定金型2
および可動金型3を備え、両合せ面2a,3a間に鋳物
成形用キャビティ4が形成される。固定金型2に短柱状
半溶融Fe−C−Si系合金材料5を横にして設置する
チャンバ6が形成され、そのチャンバ6はゲート7を介
してキャビティ4に連通する。また固定金型2に、チャ
ンバ6に連通するスリーブ8が水平に付設され、そのス
リーブ8にチャンバ6に挿脱される加圧プランジャ9が
摺動自在に嵌合される。スリーブ8は、その周壁上部に
材料用挿入口10を有する。
【0011】図2は、Fe−C−Si系合金材料におい
て、CおよびSi含有量と共晶量Ecとの関係を示す。
【0012】図2において、固相線の高C濃度側に隣接
して共晶量EcがEc=10重量%である10重量%共
晶線が、また共晶量EcがEc=100重量%である1
00重量%共晶線の低C濃度側に隣接して共晶量Ecが
Ec=50重量%の50重量%共晶線がそれぞれ存在す
る。10重量%共晶線および50重量%共晶線間の3本
の線は、10重量%共晶線側よりそれぞれ20,30,
40重量%共晶線である。
【0013】Fe−C−Si系合金材料の組成範囲は、
共晶量Ecが10重量%<Ec<50重量%、したがっ
て10重量%共晶線と50重量%共晶線との間の範囲で
ある。ただし、10重量%共晶線上および50重量%共
晶線上の組成は除かれる。
【0014】Fe−C−Si系合金材料において、C含
有量がC<1.8重量%では、Si含有量を多くして共
晶量を増しても鋳造温度を高くしなければならないので
チクソキャスティングの利点が薄れ、一方、C>2.5
重量%では黒鉛量が多くなるため鋳物の熱処理効果が低
下傾向となる。またSi含有量がSi<1.4重量%で
は、C<1.8重量%の場合と同様に、鋳造温度の上昇
を来たし、一方、Si>3重量%ではシリコフェライト
が生じるため鋳物の機械的特性が低下傾向となる。
【0015】これらの点を勘案すると、Fe−C−Si
系合金材料の好ましい組成範囲は、図2においてC含有
量をx軸とし、またSi含有量をy軸としたとき、座標
(1.98,1.4)…点a1 、座標(2.5,1.
4)…点a2 、座標(2.5,2.6)…点a3 、座標
(2.42,3)…点a4 、座標(1.8,3)…点a
5 、座標(1.8,2.26)…点a6 を結んで得られ
る略六角形の図形の範囲内である。ただし、前記組成範
囲の限界を示す前記図形の輪郭b上の組成から、50重
量%共晶線上に在る両点a3 ,a4 およびそれらを結ぶ
線分b1 上の組成、ならびに10重量%共晶線上に在る
両点a1 ,a6 およびそれらを結ぶ線分b2 上の組成は
除かれる。
【0016】半溶融Fe−C−Si系合金材料の固相率
RはR>50%であることが望ましい。これにより鋳造
温度を低温側にシフトして加圧鋳造装置の延命を図るこ
とができる。固相率RがR≦50%では液相量が多くな
るため、短柱状半溶融Fe−C−Si系合金材料を立て
て搬送する場合、その自立性が悪化し、また取扱い性も
悪くなる。
【0017】表1は、Fe−C−Si系合金材料の例1
〜10の組成(残部Feは不可避不純物として、P,S
を含む)、共晶温度Te、共晶量Ecおよび鋳造可能温
度を示す。
【0018】
【表1】
【0019】これら例1〜10は、図2にも掲載されて
いる。
【0020】例1〜10について熱量測定を行ったとこ
ろ、各潜熱分布曲線において、共晶溶解による山形吸熱
部が存在することが判った。図3は例1の潜熱分布曲線
dを、また図4は例3の潜熱分布曲線dをそれぞれ示
し、両図中、eが共晶溶解による山形吸熱部である。
【0021】鋳物の鋳造に当り、加熱搬送用パレットと
して、JIS SUS304よりなる器体の内面に、窒
化物製下層および黒鉛製上層よりなるコーティング層を
設けたものを用意した。Fe−C−Si系合金材料の例
3を、パレット内に入れた状態において、鋳造温度であ
る1220℃まで誘導加熱して、固相と液相とが共存す
る半溶融合金材料を調製した。この材料の固相率RはR
=70%であった。
【0022】次いで、図1の加圧鋳造装置1において、
固定および可動金型2,3の温度を制御すると共にその
チャンバ6内に、前記半溶融合金材料5をパレットから
出して設置し、その後加圧プランジャ9を作動させてそ
の合金材料5をキャビティ4に充填した。この場合、半
溶融合金材料5の充填圧力は36MPaであった。そし
て、加圧プランジャ9をストローク終端に保持すること
によってキャビティ4内に充填された半溶融合金材料5
に加圧力を付与し、その加圧下で半溶融合金材料5を凝
固させて鋳物の例3を得た。
【0023】Fe−C−Si系合金材料の例1の場合、
表1から明らかなように、共晶量EcがEc≦10重量
%であることに起因して鋳造温度が液相線温度に近似し
た1400℃以上になることから、加熱搬送用パレット
の部分的溶融が発生したためチクソキャスティングを行
うことができなかった。そこで、例1を除く例2,4〜
10を用い、必要に応じて鋳造温度を変えた、というこ
と以外は前記と同様の方法で鋳物の例2,4〜10を得
た。
【0024】次いで、鋳物の例2〜10に、大気下、8
00℃、20分間、空冷の条件で熱処理を施した。
【0025】図5は、鋳物の例3における熱処理後の金
属組織を示す顕微鏡写真である。図5から明らかなよう
に、例3は健全な金属組織を有する。図5において、黒
点状部分は微細黒鉛である。鋳物の例2,4〜6も例3
と略同様の金属組織を有するもので、これはFe−C−
Si系合金材料における共晶量Ecが10重量%<Ec
<50重量%であることに起因する。
【0026】図6は、鋳物の例7における熱処理後の金
属組織を示す顕微鏡写真であり、また図7は、鋳物の例
10における熱処理後の金属組織を示す顕微鏡写真であ
る。図6,7から明らかなように、例7,10において
は、黒点状部分および黒い島状部分として示されるよう
に、黒鉛が多量に存在する。これはFe−C−Si系合
金材料の例7,10における共晶量EcがEc≧50重
量%であることに起因する。
【0027】比較のため、Fe−C−Si系合金材料の
例3を用い、溶湯温度1400℃にて溶製法の適用下、
鋳物の例11を得た。図8は例11の金属組織を示す顕
微鏡写真である。図8から明らかなように、例11にお
いては黒い太線状部分および黒い島状部分として示され
るように、黒鉛が多量に存在する。
【0028】次に、熱処理後の鋳物の例2〜10および
鋳造後の鋳物の例11について、黒鉛面積率、ヤング率
Eおよび引張強さを測定した。この場合、黒鉛面積率
は、テストピースを研磨し、エッチングを行うことな
く、画像回析装置(IP−1000PC、旭化成社製)
を用いて求められた。表2は結果を示す。
【0029】
【表2】
【0030】図9は、表1,2に基づいて共晶量Ec
と、ヤング率Eおよび引張強さσb との関係をグラフ化
したものである。図9から明らかなように、共晶量Ec
を10重量%<Ec<50重量%に設定されたFe−C
−Si系合金材料の例2〜6を用いた鋳物の例2〜6
は、Ec≧50重量%である鋳物の例7〜10に比べて
優れた機械的特性を有する。また鋳物の例3は、これと
同一材料を用いた溶製法による鋳物の例11に比べて機
械的特性が大幅に向上していることが明らかである。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、前記のように構成する
ことによって、優れた機械的特性を持つ鋳物を得ること
が可能なチクソキャスティング用Fe−C−Si系合金
材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧鋳造装置の断面図である。
【図2】CおよびSi含有量と、共晶量Ecとの関係を
示すグラフである。
【図3】Fe−C−Si系合金材料の例1の潜熱分布曲
線である。
【図4】Fe−C−Si系合金材料の例3の潜熱分布曲
線である。
【図5】鋳物の例3の金属組織を示す顕微鏡写真であ
る。
【図6】鋳物の例7の金属組織を示す顕微鏡写真であ
る。
【図7】鋳物の例10の金属組織を示す顕微鏡写真であ
る。
【図8】鋳物の例11の金属組織を示す顕微鏡写真であ
る。
【図9】共晶量Ecと、ヤング率Eおよび引張強さσb
との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 加圧鋳造装置 2 固定金型 3 可動金型 4 キャビティ 5 半溶融Fe−C−Si系合金材料 9 加圧プランジャ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潜熱分布曲線において、共晶溶解による
    山形吸熱部が存在し、且つ共晶量Ecが10重量%<E
    c<50重量%であることを特徴とするチクソキャステ
    ィング用Fe−C−Si系合金材料。
  2. 【請求項2】 C含有量が1.8重量%≦C≦2.5重
    量%であり、またSi含有量が1.4重量%≦Si≦3
    重量%であり、さらに残部が不可避不純物を含むFeで
    ある、請求項1記載のチクソキャスティング用Fe−C
    −Si系合金材料。
  3. 【請求項3】 半溶融状態において、固相率RをR>5
    0%に設定される、請求項1または2記載のチクソキャ
    スティング用Fe−C−Si系合金材料。
JP32595796A 1996-09-02 1996-11-21 チクソキャスティング法の適用下で得られたFe−C−Si系合金鋳物 Expired - Lifetime JP3290603B2 (ja)

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