JPH10147600A - 生理活性ペプチド及び癌転移抑制剤 - Google Patents

生理活性ペプチド及び癌転移抑制剤

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JPH10147600A
JPH10147600A JP9244260A JP24426097A JPH10147600A JP H10147600 A JPH10147600 A JP H10147600A JP 9244260 A JP9244260 A JP 9244260A JP 24426097 A JP24426097 A JP 24426097A JP H10147600 A JPH10147600 A JP H10147600A
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JP
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peptide
amino acid
sequence
cell adhesion
acid sequence
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JP9244260A
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English (en)
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Fumio Fukai
文雄 深井
Takashi Katayama
敬 片山
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Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
Original Assignee
Hisamitsu Pharmaceutical Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞接着阻害活性を有する新規なペプチドを
提供すること。 【解決手段】 本発明は、配列表の配列番号13に記載
のアミノ酸配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有す
る、アミノ酸数が30以下の新規な生理活性ペプチドで
ある。本発明のペプチドは、短いペプチドであり、それ
故、合成、取り扱い等が容易である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞接着阻害活性
を有する新規なペプチドに関する。
【0002】
【従来の技術】癌の治療法に関してはこれまで数多くの
試みがなされており、いくつかの癌において著明な治療
効果が得られるようになってきた。しかしながら、癌の
転移を防止する治療法に関してはいまだ確立されていな
いのが現状である。
【0003】癌と診断された場合の治療法としては、外
科的治療、放射線療法、化学療法が主要なものとして挙
げられる。患者が明らかな異常を訴えた場合、ほとんど
進行癌の状態となっていると考えられるのでその治療は
容易ではない。そのような状況をもたらすのは、一口に
癌の転移増殖に依るといっても過言ではない。患者の予
後はほとんどこの癌の転移の程度に依って支配されてい
る(Welch etal.,Intern.J.Ca
ncer,43,449,1989)。このような癌の
転移増殖が抑えられない限り、一度発生した癌を征圧す
ることは極めて困難である。例えば、胃癌が進行した状
況では、既にリンパ節や肝臓、肺、その他に転移してい
ることが少なくない。乳癌についても同様で、進行癌で
は近傍のリンパ節はもとより、骨髄や肺に転移している
という事実がある。特に、上皮性の癌の場合に予後を制
するのはリンパ節転移の程度である(塚越 茂、がん征
圧への化学、日本薬学会ファルマシアレビュー、No.
6)。
【0004】以上のような理由から、癌転移の詳細なメ
カニズムを解明することで治療に応用しようとする試み
がこれまで数多くなされてきた。
【0005】癌の転移は、癌細胞の原発巣からの離脱と
周辺組織への浸潤から、転移組織での増殖に至る複雑な
過程を経て成立している。また、これらの過程は癌細胞
側と宿主側の因子に影響される。前者において、原発巣
は、絶えざる遺伝子変化を伴い、増殖能、薬剤感受性、
免疫原性、形態などの異なった細胞形質を示す不均一な
細胞集団から構成されており、転移能、周辺組織への浸
潤能、転移性癌細胞からの自己増殖因子の産生などの要
因が関与している。宿主側の要因としては、血液中での
物理的あるいは解剖学的条件、免疫担当細胞による防御
機構、血管内皮細胞および血小板との接着相互作用、さ
らに転移周辺組織からの増殖因子の影響、などが考えら
れている。
【0006】癌転移形成の一連の過程のなかで、癌細胞
は宿主の正常細胞や癌細胞同士、あるいは細胞外マトリ
ックスを含む種々の生体成分の影響下で、癌細胞の転移
形質の発現と調節が決定されているものと考えられてい
る。癌細胞同士あるいは癌細胞と正常細胞との接着は、
細胞表面に発現されている細胞接着分子が介在してお
り、細胞接着分子としては、カドヘリン分子群(竹市雅
俊、組織構築の分子的基礎−細胞識別におけるカドヘリ
ンの役割−生化学、59、1、1987)、免疫グロブ
リン分子群、及びセレクチン分子群(Springe
r,T.A.,Nature,346,425,199
0)などが知られている。一方、フィブロネクチン、ラ
ミニン、コラーゲンなどの糖蛋白質や、ヘパラン硫酸、
コンドロイチン硫酸などを結合したプロテオグリカンを
含む細胞外マトリックスと癌細胞の接着は、インテグリ
ン分子群を含む細胞表面上の接着分子などが関与してい
る。
【0007】最近、フィブロネクチンやラミニンなどの
細胞外マトリックス分子が癌の転移に深く関与している
ことが明らかにされた。細胞が腫瘍ウイルスや化学発癌
剤などにより悪性転換すると、細胞外マトリックス分
子、特にフィブロネクチンの合成や細胞外への蓄積が減
少すること(Yamada,K.M.and Olde
n,K.,Nature,275,179,1978)
や、インテグリン分子の発現量の減少、あるいはフィブ
ロネクチンへの接着性の低下が示されている(Plan
tefaber,L.C.and Hynes,R.
O.,Cell,56,281,1989)。また、フ
ィブロネクチンやラミニンは癌細胞の接着、移動能を促
進すること(McCarthy,J.B.,J.Cel
l Biol.,98,1474,1984)が報告さ
れている。
【0008】フィブロネクチンやラミニン分子はドメイ
ン構造をもち、分子内に多くの機能を分散させている。
生化学的あるいは遺伝子工学的手法により構造が明らか
にされるとともに、細胞接着部位の存在とそれに対する
レセプターも発見されている。フィブロネクチンの細胞
結合ドメイン内のRGD配列が細胞認識配列であり(P
ierschbacher,M.D.,Nature,
309,30,1984)、多くの細胞接着関連分子中
にも存在、機能しており、その細胞受容体が、α5β1
インテグリンレセプターであることが同定されている
(Pytela,R.,Cell,40,191,19
85)。
【0009】細胞接着分子と細胞との接着相互作用が明
らかにされるとともに、近年、細胞接着ペプチドを癌の
転移抑制に応用しようとする試みがなされている。Hu
mphriesらは、フィブロネクチンの接着シグナル
としてのGRGDSペプチドがメラノーマ細胞の肺への
実験的転移を抑制することを示している(Humphr
ies,M.J.,Science,233,467,
1986)。
【0010】しかし、投与後の血中からの消失速度が速
く、また、酵素によって分解されやすい(Saiki,
I. et al.,Jpn.J.Cancer Re
s.,84,558,1993)等、医薬品に応用され
るまでには解決すべき問題が多い。
【0011】上記に示されるような癌転移阻害物質の探
索は、癌の征圧のために必要不可欠であるが、未だ特効
薬となるような物質が得られていないのが現状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたものであり、細胞接着阻害活性を有する
新たなペプチドを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、細胞接着阻害
活性を有する新規なペプチド、特には、配列表の配列番
号13に記載のアミノ酸配列を含むペプチドを見い出す
ことに成功した。
【0014】本発明は、配列表の配列番号13に記載の
アミノ酸配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有するア
ミノ酸数が30以下のペプチドである。
【0015】本発明はまた、アミノ酸数が13〜30で
あることを特徴とする、配列表の配列番号13に記載の
アミノ酸配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有するペ
プチドである。
【0016】本発明はまた、配列表の配列番号8に記載
のアミノ酸配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有する
アミノ酸数が30以下のペプチドである。
【0017】本発明はまた、配列表の配列番号11に記
載のアミノ酸配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有す
るアミノ酸数が30以下のペプチドである。
【0018】本発明はまた、配列表の配列番号12に記
載のアミノ酸配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有す
るアミノ酸数が30以下のペプチドである。
【0019】本発明はまた、前記ペプチドにおいて、1
若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失若しくは置換され
ておりかつ細胞接着阻害活性を有するペプチドである。
【0020】本発明はまた、前記ペプチドのうちの少な
くとも一つを含むことを特徴とする癌転移抑制剤であ
る。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明は、細胞阻害活性を有する
新規なペプチドであり、配列表の配列番号13に記載の
アミノ酸配列を含むことを特徴とする。本発明のペプチ
ドは、非常に短いペプチドであり、それ故、合成が容易
であって、尿素処理等の変成処理を施すことなく強い細
胞接着阻害活性を提供する。
【0022】本発明のペプチドである配列表の配列番号
13に記載のアミノ酸配列は、フィブロネクチンの18
48〜1855番目のアミノ酸配列と同一である。
【0023】フィブロネクチンは、細胞接着活性を有す
ることが報告されている(Hynes, R.O.ら J. Cell Bio
l., 95, 369-377, 1982)。一方、フィブロネクチンH
ep2ドメイン由来の30kDaのフラグメント(以
下、Hep2)を尿素により変成させると強い細胞接着
阻害活性を持つようになることが報告されている(Fu
kai,F. et al.,Biochemica.
Biophys.Res.Commun.,220,3
94,1996)。しかしながら、Hep2が有する細
胞接着阻害活性が、どのアミノ酸配列に起因するかにつ
いては何ら示唆も記載もされていない。さらに、Hep
2は271のアミノ酸よりなり、Hep2そのものを医
薬品に応用しようとすることは、分子量が大きいこと及
び細胞接着阻害活性に無関係なアミノ酸配列を含むこと
より望ましくない。即ち、分子量が大きいことより、そ
の合成及び調製が困難であり、さらにはHep2に含ま
れる細胞接着阻害活性に無関係なアミノ酸配列が望まな
い生理活性を生じる恐れがある。また、尿素による処理
及び変成させた後の尿素の除去操作が非常に煩雑であ
る。さらには、大きな分子は生体中で容易に分解されや
すい。このような理由から、尿素で変成させたHep2
そのものを医薬品に応用しようとすることは困難であ
る。
【0024】本発明の細胞接着阻害ペプチドは配列表の
配列番号13に示される配列を含むことを特徴とし、前
記配列は、これまでに報告されてきたRGD配列を含む
ペプチド(Humphries,M.J. et a
l.,Science,233,467,1986,
Komazawa,H. et al.,Biol.P
harm.Bull.,16,10,997,199
3)とは全く異なった配列を有しており、その細胞接着
阻害活性はRGDペプチドが作用することが報告されて
いるレセプター(Pytela,R. et al.,
Cell,48,549,1987)を介した作用では
ないことが考えられる。それ故、本発明のペプチドは、
全く新しい、細胞接着阻害活性を有するペプチド配列で
ある。また、その細胞接着阻害活性は、RGDペプチド
と比較して数倍強いことが確認された(実施例参照)。
【0025】本発明の配列表の配列番号13に記載のア
ミノ酸配列は、本発明において見いだされた細胞接着阻
害活性を発現したペプチドに共通する配列である。それ
故、本発明の細胞接着阻害活性を有するペプチドは、配
列表の配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むことを
特徴とする。また、配列表の配列番号13に記載のアミ
ノ酸配列を整数倍の繰り返し構造として含むペプチドは
さらに強い細胞接着阻害活性を有することが期待でき、
そのようなペプチドも本発明のペプチドに含まれる。ま
た、本発明のペプチドは、配列表の配列番号13に記載
のアミノ酸配列を含むペプチドであれば、それ以外のア
ミノ酸配列は任意である。このような、アミノ酸も本発
明のペプチドに含まれる。また、本発明のペプチドの大
きさは、合成の効率、取り扱い性、安定性その他の点よ
り、30アミノ酸数以下が好ましく、13以上30以下
のアミノ酸数がさらに好ましい。
【0026】さらに、本発明の細胞接着阻害活性を有す
るペプチドにおいては、本発明で言う細胞接着阻害活性
を損なわない限り、1若しくは複数のアミノ酸を付加、
欠失又は置換することが可能であり、そのようなペプチ
ドも本発明の範囲内である。上記の1若しくは複数のア
ミノ酸の付加、欠失又は置換は、部位特定変異誘発法(s
ite-directed mutagenesis)のような周知の方法を用い
て実施することができる。
【0027】また、本発明の細胞接着阻害ペプチドとし
ては、配列表の配列番号13に記載のアミノ酸配列を含
むペプチドのみならず、これらの誘導体であっても同様
の効果が期待でき、このようなペプチド(誘導体)も本
発明の範囲内である。ペプチドの修飾方法としては、例
えば、ポリエチレングリコール(PEG)等の高分子に
よる修飾や直鎖状ペプチドの環状化(Saiki,I.
et al.,Jpn.J.Cancer Re
s.,84,558,1993)等が考えられるが、特
にこれらには限定されない。また、細胞接着阻害活性を
損なわない限り、本発明のペプチドを構成するアミノ酸
の側鎖を、例えば、エステル結合、エーテル結合を利用
して修飾し、本発明のペプチドを修飾することも可能で
ある。かかるペプチドも本発明の範囲内である。
【0028】本発明の配列表の配列番号13に記載のア
ミノ酸配列を含むペプチドは、そのアミノ酸組成より疎
水性が高いことが判る。本発明においては、本発明のペ
プチドの親水性を高める目的で、本発明のペプチドに親
水性のアミノ酸、又は、親水性を有する基、例えばエチ
レングリコール、ポリエチレングリコール等を付加する
ことが可能である。これらの修飾されたペプチドもまた
本発明の範囲内である。
【0029】本発明の細胞接着阻害ペプチドは細胞接着
が関与する種々の疾病の研究及び治療に応用可能であ
る。それらの疾病とは、例えば、癌、リウマチ、喘息、
アレルギー疾患、血栓症、移植臓器拒絶反応、創傷治
癒、炎症、潰瘍性大腸炎等の腸炎症を含む免疫性炎症及
び自己免疫疾患等を挙げることができるが、これらに限
定されない。
【0030】本発明の細胞接着阻害ペプチドは静脈内投
与、患部への局所投与、経口投与等により投与可能であ
る。また、投与する際には必要に応じて安定化剤、溶解
補助剤等の添加物を加えることができる。
【0031】本発明の細胞接着阻害ペプチドは例えば、
固層合成法等の化学的合成法、又は配列番号13に示さ
れるアミノ酸配列をコードするDNA配列をプラスミド
ベクターに挿入し大腸菌等の微生物を形質転換すること
により生産する遺伝子組み換え手法を用いた合成法等に
より合成することが可能である。化学的な合成は市販さ
れているペプチド合成装置(ペプチドシンセサイザー)
を用いて行なうのが最も一般的である。遺伝子組み換え
手法を用いた合成法では、細胞接着阻害ペプチドをコー
ドする遺伝子を、例えば、DNA合成装置(DNAシン
セサイザー)により合成し、公知のプラスミドベクター
に該遺伝子を組み込み、得られた組み換えベクターを宿
主となる微生物に導入し、形質転換体を作成することに
より該細胞接着阻害ペプチドを生産することができる。
ここで用いられるプラスミドベクターはタンパク質生産
用の発現ベクターであれば特に限定なく用いることがで
きる。また、宿主は微生物に限定されることなく、CO
S細胞等の真核細胞を用いることができる。
【0032】以下、実施例により本発明を具体的に説明
する。ただし、本発明はこれらの実施例によりその技術
範囲が限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
実験1:合成ペプチドの細胞接着阻害活性(細胞懸濁液
中に合成ペプチドを含んだ系) 実施例1〜3として、配列表の配列番号8に記載のアミ
ノ酸配列からなるペプチド(ペプチドIII14−2)を
用いた。
【0034】比較例1として尿素非処理のHep2フラ
グメント(Hep2)を用い、比較例2として尿素処理
したHep2フラグメント(Hep2−urea)を用
いた。Hep2フラグメントはFukaiらの方法(B
iochem.Biophys.Res.Commu
n.,220,394−398,1996)に準じて調
製したものを用いた。尿素非処理のHep2フラグメン
トは、上記方法で調整し、リン酸緩衝液に溶解した。尿
素処理Hep2フラグメントは、上記のFukaiらの
方法に従って尿素処理後、リン酸緩衝液により透析する
ことで調製した。
【0035】比較例3として、従来から細胞接着阻害ペ
プチドとして知られている細胞接着ドメインのGRGD
SPペプチド(岩城硝子より購入)(配列表の配列番号
9)を用いた。GRGDSPペプチドは、リン酸緩衝液
に溶解した。
【0036】比較例4〜9として、配列表の配列番号1
(ペプチドIII12−1)、配列番号2(ペプチドIII1
2−2)、配列番号3(ペプチドIII12−3)、配列
番号4(ペプチドIII13−1)、配列番号5(ペプチ
ドIII13−2)、配列番号6(ペプチドIII13−
3)、及び配列番号7(ペプチドIII14−1)に記載
のアミノ酸配列から成るをペプチドを用いた。
【0037】実施例1〜3及び比較例4〜9で用いたペ
プチドは全て、SAWADY TECHNOLOGY
CO.,LTD.,Tokyoに依頼し、ペプチドシン
セサイザー(Multiple Peptide Synthesizer (SYRO I
I)、MultiSynTec GmbH製)を用いて合成した。また、合
成されたペプチドの配列は、ペプチドシークエンサー
(Model 476A、Applied Biosystems製)により確認し
た。
【0038】使用した合成ペプチドは、FN分子のへパ
リン結合ドメイン2に由来するフラグメントであるHe
p2フラグメント内の一部の配列に対応するペプチドで
ある。それぞれのペプチドの配列と、Hep2の配列の
関係を図1に示した。
【0039】上記の合成ペプチドは、dimethyl
sulfoxide(DMSO:和光純薬社製)に溶
解させて実験に用いた。また、条件を同一にするため
に、対照、尿素非処理Hep2フラグメント、尿素処理
Hep2フラグメント及びGRGDSPペプチドのリン
酸緩衝溶液にもDMSOを添加した。すべての実験は、
DMSOの最終濃度が0.2%になるようにして行っ
た。抗細胞接着活性の評価はFukaiらの方法(Bi
ochem.Biophys.Res.Commu
n.,220,394−398,1996)に準じて行
った。すなわち、上記の種々の合成ペプチドの存在下ま
たは非存在下において、A375メラノーマ細胞のプレ
ートへの接着阻害を検討した。A375メラノーマ細胞
(American Type Culture Co
llection:ATCC製)を、0.1%Oval
bumin(和光純薬社製)を含むDulbecco’
s modified eagle medium(D
MEM:ギブコ社製)に2×105個/mlになるよう
に懸濁した。あらかじめ、Miekkaらの方法に従っ
て、10μg/mlに調製したfibronectin
(FN)リン酸緩衝溶液を100μlずつ96ウェルプ
レートの各wellに添加し、37℃、5%CO2
て、60分間インキュベートした後、リン酸緩衝液で3
回洗うことにより、FNをプレートにコートした。な
お、Fibronectin(FN)はMiekkaら
の方法(Thromb.Res.,27,1−14,1
982)に準じて精製したものを用いた。この各ウェル
に、上記の細胞懸濁液100μlを添加し、37℃、5
%CO2にて、60分間インキュベートした(対照:合
成ペプチド非存在)。各wellの細胞を5%フォルム
アルデヒド(和光純薬社製)で固定化した後、非接着細
胞を取り除き、各well中の5つのエリアを無作為に
選択し顕微鏡下で細胞をカウントした。
【0040】Hep2フラグメント及び各ペプチドの添
加は、それぞれが高濃度にて溶解された溶液を、それぞ
れ表1に示す最終濃度となるようにして、細胞懸濁液に
加えることにより行った。
【0041】結果を表1に示す。表1より、尿素非処理
のHep2には細胞接着阻害活性が全くないが、尿素処
理を行うこと(Hep2−urea)によりその活性が
認められた。ペプチドIII14−2が最も細胞接着阻害
活性が高く、かつその活性は濃度依存的であった。
【0042】
【表1】
【0043】実験2:合成ペプチドの細胞接着阻害活性
(コートしたFN中に合成ペプチドを含んだ系 ペプチドIII14−2中のどの配列が、細胞接着阻害活
性に寄与しているのかを検討した。
【0044】合成ペプチドとしては、配列表の配列番号
8(ペプチドIII14−2)、配列番号10(ペプチドI
II14−2A)、配列番号11(ペプチドIII14−2
B)、及び配列番号12(ペプチドIII14−2C)に
記載のアミノ酸配列から成るペプチドを用いた。
【0045】また比較対照として、実験1で用いたペプ
チドIII12−2を用いた。
【0046】上記ペプチドは全て、SAWADY TE
CHNOLOGY CO.,LTD.,Tokyoに依
頼し、ペプチドシンセサイザー(Multiple Peptide Syn
thesizer (SYRO II)、MultiSynTec GmbH製)を用いて合
成した。また、合成されたペプチドの配列は、ペプチド
シークエンサー(Model 476A、Applied Biosystems製)
により確認した。
【0047】使用した合成ペプチドは、FN分子のへパ
リン結合ドメイン2に由来するフラグメントであるHe
p2フラグメント内の一部の配列に対応するペプチドで
ある。それぞれのペプチドの配列の関係を図2に示し
た。
【0048】合成ペプチドは、リン酸緩衝液への溶解性
を高めるため、及び該ペプチドのプレートへのコーティ
ングを確実に行うために、すべてmaleimide−
activated Keyhole Limpet
Hemocyanine(KLH:PIERCE社製、
U.S.A.)抱合した修飾体を用いた(この抱合によ
る細胞接着阻害活性に対する影響はない)。
【0049】FN溶解溶液中に所定の濃度となるように
上記の各種KLH抱合合成ペプチドを加え、それを96
wellプレートにコートしたことを除き、実験1と同
様の操作を行った。また、合成ペプチド非存在下での実
験を対照(ペプチド濃度0μg/ml)とした。その結
果を図3に示す。図3より、ペプチドIII14−2の一
部を含む3種(ペプチドIII14−2A、III14−2B
およびIII14−2C)のなかで、ペプチドIII14−2
Aはほとんど細胞接着阻害活性が認められないのに対し
て、他の2種(ペプチドIII14−2BおよびIII14−
2C)はペプチドIII14−2とほぼ同等の強い細胞接
着阻害活性を示すことが判った。これらの結果から、ペ
プチドIII14−2、III14−2BおよびIII14−2
Cの3種のペプチドに共通のアミノ酸配列(配列表の配
列番号13のアミノ酸配列:YTIYVIAL)が細胞
接着阻害活性を発揮することが見いだされた。
【0050】
【発明の効果】本発明のペプチドは、細胞接着阻害活性
を有するので、細胞接着が関与する種々の疾患の研究及
び治療に応用可能である。また、本発明のペプチドは、
従来の接着阻害物質に比べて同等以上の活性を有し、さ
らには、短いペプチドであるので、その合成、取り扱い
等が容易である。また、本発明のペプチドは、癌細胞の
接着阻害を示すので、癌転移抑制剤としても有用であ
る。
【0051】
【配列表】 配列番号:1 配列の長さ:31 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1600−1630)の配列 配列 1 5 10 15 Ala Ile Pro Ala Pro Thr Asp Leu Lys Phe Thr Gln Val Thr Pro Thr Ser Leu 20 25 30 Ser Ala Gln Trp Thr Pro Pro Asn Val Gln Leu Thr Gly 配列番号:2 配列の長さ:22 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1647−1668)の配列 配列 1 5 10 15 Ile Asn Leu Ala Pro Asp Ser Ser Ser Val Val Val Ser Gly Leu Met Val Ala 20 Thr Lys Trp Glu 配列番号:3 配列の長さ:23 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1669−1691)の配列 配列: 1 5 10 15 Val Ser Val Tyr Ala Leu Lys Asp Thr Leu Thr Ser Arg Pro Ala Gln Gly Val 20 Val Thr Thr Leu Glu 配列番号:4 配列の長さ:29 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1692−1720)の配列 配列: 1 5 10 15 Asn Val Ser Pro Pro Arg Arg Ala Arg Val Thr Asp Ala Thr Glu Thr Thr Ile 20 25 Thr Ile Ser Trp Arg Thr Lys Thr Glu Thr Ile 配列番号:5 配列の長さ:25 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1721−1745)の配列 配列: 1 5 10 15 Thr Gly Phe Gln Val Asp Ala Val Pro Ala Asn Gly Gln Thr Pro Ile Gln Arg 20 25 Thr Ile Lys Pro Asp Val Arg 配列番号:6 配列の長さ:25 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1746−1770)の配列 配列: 1 5 10 15 Ser Tyr Thr Ile Thr Gly Leu Gln Pro Gly Thr Asp Tyr Lys Ile Tyr Leu Tyr 20 25 Thr Leu Asn Asp Asn Ala Arg 配列番号:7 配列の長さ:29 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1787−1815)の配列 配列: 1 5 10 15 Asn Leu Arg Phe Leu Ala Thr Thr Pro Asn Ser Leu Leu Val Ser Trp Gln Pro 20 25 Pro Arg Ala Arg Ile Thr Gly Tyr Ile Ile Lys 配列番号:8 配列の長さ:21 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1835−1855)の配列 配列: 1 5 10 15 Thr Glu Ala Thr Ile Thr Gly Leu Glu Pro Gly Thr Glu Tyr Thr Ile Tyr Val 20 Ile Ala Leu 配列番号:9 配列の長さ:6 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、細胞結合
部位の配列 配列番号:10 配列の長さ:13 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1829−1841)の配列 配列: 1 5 10 Arg Pro Arg Pro Gly Val Thr Glu Ala Thr Ile Thr Gly 配列番号:11 配列の長さ:19 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1842−1860)の配列 配列 1 5 10 15 Leu Glu Pro Gly Thr Glu Tyr Thr Ile Tyr Val Ile Ala Leu Lys Asn Asn Gln Lys 配列番号:12 配列の長さ:13 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1848−1860)の配列 配列 1 5 10 Tyr Thr Ile Tyr Val Ile Ala Leu Lys Asn Asn Gln Lys 配列番号:13 配列の長さ:8 配列の型:アミノ酸 配列の種類:合成ペプチド 配列の特徴:ヒト血漿由来フィブロネクチン、ヘパリン
結合部位の一部(1848−1855)の配列 配列 1 5 Tyr Thr Ile Tyr Val Ile Ala Leu
【図面の簡単な説明】
【図1】Hep2フラグメントの配列及び実験1に用い
た各ペプチドの位置を示す。アミノ酸の番号は、フィブ
ロネクチン中でのアミノ酸の位置を示す。
【図2】実験2で用いた、各ペプチドの関係を示す図で
ある。
【図3】実験2で行った、各KLH抱合合成ペプチドの
細胞接着阻害活性を検討した結果である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列表の配列番号13に記載のアミノ酸
    配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有する、アミノ酸
    数が30以下の生理活性ペプチド。
  2. 【請求項2】 アミノ酸数が少なくとも13であること
    を特徴とする請求項1に記載の生理活性ペプチド。
  3. 【請求項3】 配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配
    列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有する、アミノ酸数
    が30以下の生理活性ペプチド。
  4. 【請求項4】 配列表の配列番号11に記載のアミノ酸
    配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有する、アミノ酸
    数が30以下の生理活性ペプチド。
  5. 【請求項5】 配列表の配列番号12に記載のアミノ酸
    配列を含み、かつ細胞接着阻害活性を有する、アミノ酸
    数が30以下の生理活性ペプチド。
  6. 【請求項6】 1若しくは複数のアミノ酸が付加、欠失
    若しくは置換されておりかつ細胞接着阻害活性を有す
    る、請求項1〜5のいずれか一つに記載の生理活性ペプ
    チド。
  7. 【請求項7】 請求項1〜5のいずれか一つに記載の生
    理活性ペプチドを含むことを特徴とする癌転移抑制剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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