JPWO2015194643A1 - Pdgf依存性細胞増殖抑制剤、pdgf依存性細胞増殖の抑制方法、細胞分散抑制剤、細胞分散の抑制方法、テモゾロミド活性増強剤及び抗腫瘍剤 - Google Patents

Pdgf依存性細胞増殖抑制剤、pdgf依存性細胞増殖の抑制方法、細胞分散抑制剤、細胞分散の抑制方法、テモゾロミド活性増強剤及び抗腫瘍剤 Download PDF

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Abstract

TEATITGLEPGTEYTIYVIALで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、又は前記アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含むPDGF依存性細胞増殖抑制剤、細胞分散抑制剤、テモゾロミド活性増強剤及び抗腫瘍剤。

Description

本発明は、PDGF依存性細胞増殖抑制剤、PDGF依存性細胞増殖の抑制方法、細胞分散抑制剤、細胞分散の抑制方法、テモゾロミド活性増強剤及び抗腫瘍剤に関する。
グリア細胞(膠細胞)由来の脳腫瘍である神経膠腫は極めて悪性度が高く、治癒率は10%に満たない。その理由として、神経膠腫細胞の高い増殖能ととともに、活発な移動・浸潤能が腫瘍の外科的な摘出を困難にしていることが挙げられる。従って、腫瘍の外科的な摘出を困難にする腫瘍細胞の増殖及び移動・浸潤を有効に抑制することができれば外科的な治療が可能となり、治癒率の向上が期待できる。また、既存の薬剤の効果を有効に増強することができれば治癒率の向上、副作用の低減等の効果が期待できる。
腫瘍の増大や浸潤を抑制する手段として、細胞外マトリクスであるフィブロネクチン由来のアミノ酸配列からなり、細胞接着阻害活性を有するペプチドが癌転移抑制剤として有用であるとの報告がなされている(例えば、特許文献1及び2)。また、フィブロネクチン由来のアミノ酸配列からなるペプチドが既存の抗がん剤の活性増強剤として有用であるとの報告がなされている(例えば、特許文献3)。
特開平10−147600号公報 特開2000−264900号公報 国際公開第2012/124641号
特許文献1及び2では細胞接着阻害活性を有するペプチドの癌転移抑制剤としての実施例による効果の実証はなされていない。また、特許文献3ではフィブロネクチン由来のアミノ酸配列からなるペプチドと、神経膠腫の治療薬として用いられるテモゾロミドとの併用については検討されていない。本発明者らは上記状況に鑑み、腫瘍細胞の増殖又は分散の抑制に有用な、PDGF依存性細胞増殖抑制剤、PDGF依存性細胞増殖の抑制方法、細胞分散抑制剤、細胞分散の抑制方法、テモゾロミド活性増強剤及び抗腫瘍剤を提供することを目的とする。
前記課題を達成するための具体的手段は以下のとおりである。
<1>以下の(a)又は(b)であるペプチドを有効成分として含む、PDGF依存性細胞増殖抑制剤。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、PDGF依存性細胞増殖抑制作用を有するペプチド。
<2>前記細胞はPDGF受容体を発現する、肉腫及び癌腫からなる群より選択される少なくとも1種の細胞である<1>に記載のPDGF依存性細胞増殖抑制剤。
<3>前記細胞は神経膠腫、繊維肉腫、骨肉腫、乳がん及び肺がんからなる群より選択される少なくとも1種の細胞である、<1>又は<2>に記載のPDGF依存性細胞増殖抑制剤。
<4><1>〜<3>のいずれか1項に記載のPDGF依存性細胞増殖抑制剤を細胞に接触させることを含む、PDGF依存性細胞増殖の抑制方法。
<5>以下の(a)又は(b)であるペプチドを有効成分として含む、細胞分散抑制剤。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、細胞分散抑制作用を有するペプチド。
<6>前記細胞は細胞間接着によって形成された集団又は集隗からの細胞の解離が生じる、肉腫及び癌腫からなる群より選択される少なくとも1種の細胞である<5>に記載の細胞分散抑制剤。
<7>前記細胞は神経膠腫、繊維肉腫、骨肉腫、乳がん及び肺がんからなる群より選択される少なくとも1種の細胞である、<5>又は<6>に記載の細胞分散抑制剤。
<8><5>〜<7>のいずれか1項に記載の細胞分散抑制剤を細胞に接触させることを含む、細胞分散の抑制方法。
<9>以下の(a)又は(b)であるペプチドを有効成分として含む、テモゾロミド活性増強剤。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、テモゾロミド活性増強作用を有するペプチド。
<10>テモゾロミドと、以下の(a)又は(b)であるペプチドと、を有効成分として含む抗腫瘍剤。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、テモゾロミド活性増強作用を有するペプチド。
本発明によれば、腫瘍細胞の増殖又は分散の抑制に有用な、PDGF依存性細胞増殖抑制剤、PDGF依存性細胞増殖の抑制方法、細胞分散抑制剤、細胞分散の抑制方法、テモゾロミド活性増強剤及び抗腫瘍剤が提供される。
特定ペプチドによるPDGF依存性細胞増殖抑制効果の評価を示す図である。 特定ペプチドによる足場非依存性細胞増殖抑制効果の評価を示す図である。 特定ペプチドによる腫瘍細胞分散抑制効果の評価を示す図である。 特定ペプチドによるマウス側背部における腫瘍形成抑制効果の評価を示す図である。 特定ペプチドによるテモゾロミド活性増強効果の評価を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。アミノ酸配列の記載は左側がN末端側であり、アミノ酸残基は当該技術分野で周知の一文字表記(例えば、グリシン残基を「G」)または三文字表記(例えば、グリシン残基を「Gly」)で表記する場合がある。
<PDGF依存性細胞増殖抑制剤>
本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤は、以下の(a)又は(b)であるペプチド(以下、特定ペプチドともいう)を有効成分として含む。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつPDGF依存性細胞増殖抑制作用を有するペプチド。
特定ペプチドが(b):アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてなるペプチドである場合、欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸残基の数は特定ペプチドがPDGF依存性細胞増殖抑制作用を有する範囲であれば特に制限されない。例えば、1〜9個であり、1〜6個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましい。合成の効率、取扱性、安定性等の観点からは、(b)のペプチドのアミノ酸残基の総数は30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることがより好ましい。
上記(a)であるペプチドのアミノ酸配列は、細胞外マトリックスタンパク質分子の一つであるフィブロネクチンを構成するフィブロネクチンIII型ドメインに由来するものである。本発明者らは、上記アミノ酸配列を有するペプチドがPDGF依存性の細胞増殖を抑制する作用を有することを見出した。なお、「PDGF依存性」とは細胞の増殖が血小板由来増殖因子(PDGF)受容体の発現を伴っていることを意味する。PDGFが発現しているか否かは、抗PDGF受容体抗体を用いてウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー等によって確認することができる。
本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤がPDGF依存性の細胞増殖を抑制する作用を有する理由は明らかではないが、以下のように推測している。すなわち、PDGF受容体の発現が認められる腫瘍では、炎症時や病変時に一時的に発現する性質を有する細胞外マトリクスであるテネイシンCの発現が著しく上昇する。テネイシンCより遊離したペプチド(TNIIIA2)は細胞接着分子であるインテグリンを活性化する作用を有しており、これによって腫瘍細胞のPDGF依存性増殖が増強される。他方、本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤に含まれる特定ペプチドはインテグリンを不活性化する作用を有している。その結果、TNIIIA2のインテグリン活性化作用が抑制され、腫瘍細胞の増殖が抑制されると考えられる。TNIIIA2についてはJ.Biol.Chem.,Vol.282、pp.34929−34937,(2007)等に詳細な記載がある。
PDGF依存性の細胞増殖を伴う腫瘍として具体的には、神経膠腫、繊維肉腫や骨肉腫等の肉腫、乳がんや肺がん等の癌種などが挙げられる。神経膠腫としては星細胞系腫瘍に分類される毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫及び神経膠芽腫、乏突起膠腫、上衣腫、並びに脈絡叢乳頭腫が挙げられる。PDGFの発現の程度は本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、PDGFをより強く発現する腫瘍において本発明の効果がより顕著である。例えば、神経膠腫の中でも悪性度が高い神経膠芽腫はPDGFを高発現することが知られており、本発明の効果が特に顕著である。
本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤に含まれる特定ペプチドは、用途に応じて種々の改変を施してもよい。例えば、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマー、硫酸基、水溶性アミノ酸などを特定ペプチドの末端に連結して水溶性を向上させたり、多量体化したりしてもよい。また、特定ペプチドを構成するアミノ酸残基のそれぞれは本発明の効果が達成される限りL体又はD体のいずれであってもよい。体内での特定ペプチドの分解を抑制する観点からは、アミノ酸配列の少なくとも1部(例えば、第2位のGlu)をD体とすることが好ましい。特定ペプチドの作製方法は特に制限されず、遺伝子工学的方法又は有機合成化学的方法のいずれであってもよい。
本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤は、使用態様に応じて特定ペプチド以外の成分を含んでいてもよい。特定ペプチド以外の成分としては、薬剤の調製に一般に用いられる媒質及び製剤用添加物を挙げることができる。媒質及び製剤用添加物の種類は、特に制限されない。媒質としては、固体媒質(例えば、ゼラチン、乳糖)及び液体媒質(例えば、アルコール、水、生理食塩水)が挙げられる。製剤用添加物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられる。
本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤の形態は特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、懸濁剤、シロップ、乳剤、リモナーデ剤等の経口投与に適した形態、注射用アンプル剤、注射用凍結乾燥粉末剤、経肺投与用乾燥粉末剤などが挙げられる。
<PDGF依存性細胞増殖の抑制方法>
本発明のPDGF依存性細胞増殖の抑制方法は、本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤を細胞に接触させることを含む。「細胞に接触させること」とは、PDGF依存性の増殖を示す細胞と、本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤に含まれる特定ペプチドとが接触する状態にすることを意味し、PDGF依存性の増殖を示す細胞から構成される腫瘍やがん組織に接触させることを含む。PDGF依存性細胞増殖抑制剤を細胞に接触させる方法は特に制限されず、経口投与、静脈内投与、留置等の外科的処置等を挙げることができる。細胞に接触させるPDGF依存性細胞増殖抑制剤の量は特に制限されず、細胞の状態、特定ペプチドとともに使用する他の成分の種類や量等に応じて選択できる。
<細胞分散抑制剤>
本発明の細胞分散抑制剤は、以下の(a)又は(b)であるペプチド(特定ペプチド)を有効成分として含む。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞分散抑制作用を有するペプチド。
特定ペプチドが(b):アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてなるペプチドである場合、欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸残基の数は特定ペプチドが細胞分散抑制作用を有する範囲であれば特に制限されない。例えば、1〜9個であり、1〜6個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましい。合成の効率、取扱性、安定性等の観点からは、(b)のペプチドのアミノ酸残基の総数は30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることがより好ましい。
本発明者らは、上記アミノ酸配列を有する特定ペプチドが細胞の分散を抑制する作用を有することを見出した。腫瘍を形成する細胞の分散が抑制されることで、腫瘍の移動や浸潤が有効に抑制される。その結果、外科的な摘出等の手法の適用が可能となり、治療方法の選択の幅が広がる。なお、細胞の「分散」とは、細胞同士の細胞間接着によって形成された集団又は集隗状態から個々の細胞が解離することを意味する。悪性化した腫瘍細胞は、「分散」することで原発腫瘍組織から解離し、周辺組織へ浸潤・転移する。
本発明の細胞分散抑制剤が細胞の分散を抑制する作用を有する理由は明らかではないが、以下のように推測している。すなわち、細胞の分散は腫瘍部位に発現したテネイシンCより遊離したペプチド(TNIIIA2)のインテグリン活性化作用により誘導される。従って、インテグリンを不活性化する作用を有する特定ペプチドを含む本発明の細胞分散抑制剤を適用することにより、細胞の分散が抑制されると考えられる。
細胞の分散が認められる腫瘍として具体的には、神経膠腫、繊維肉腫や骨肉腫等の肉腫、乳がんや肺がん等の癌種などが挙げられる。神経膠腫としては星細胞系腫瘍に分類される毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫及び神経膠芽腫、乏突起膠腫、上衣腫、並びに脈絡叢乳頭腫が挙げられる。細胞の分散の程度は本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、細胞の分散がより活発である腫瘍において本発明の効果がより顕著である。例えば、神経膠腫の中でも悪性度が高い神経膠芽腫は細胞の分散が活発であることが知られており、本発明の効果が特に顕著である。
本発明の細胞分散抑制剤に含まれる特定ペプチドは、用途に応じて種々の改変を施してもよい。例えば、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマー、硫酸基、水溶性アミノ酸などを特定ペプチドの末端に連結して水溶性を向上させたり、多量体化したりしてもよい。また、特定ペプチドを構成するアミノ酸残基のそれぞれは本発明の効果が達成される限りL体又はD体のいずれであってもよい。体内での特定ペプチドの分解を抑制する観点からは、アミノ酸配列の少なくとも1部(例えば、第2位のGlu)をD体とすることが好ましい。特定ペプチドの作製方法は特に制限されず、遺伝子工学的方法又は有機合成化学的方法のいずれであってもよい。
本発明の細胞分散抑制剤は、使用態様に応じて特定ペプチド以外の成分を含んでいてもよい。特定ペプチド以外の成分としては、薬剤の調製に一般に用いられる媒質及び製剤用添加物を挙げることができる。媒質及び製剤用添加物の種類は、特に制限されない。媒質としては、固体媒質(例えば、ゼラチン、乳糖)及び液体媒質(例えば、アルコール、水、生理食塩水)が挙げられる。製剤用添加物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられる。
本発明の細胞分散抑制剤の形態は特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、懸濁剤、シロップ、乳剤、リモナーデ剤等の経口投与に適した形態、注射用アンプル剤、注射用凍結乾燥粉末剤、経肺投与用乾燥粉末剤などが挙げられる。
<細胞分散の抑制方法>
本発明の細胞分散の抑制方法は、本発明の細胞分散抑制剤を細胞に接触させることを含む。「細胞に接触させること」とは、細胞間接着によって集団若しくは集隗を形成している細胞、又は集団若しくは集隗から解離している細胞と、本発明の細胞分散抑制剤に含まれる特定ペプチドとが接触する状態にすることを意味し、集団又は集隗からの細胞の解離が未だ認められないが解離が生じる可能性が大きい状態、又は解離がすでに認められる状態の腫瘍やがん組織に接触させることを含む。細胞分散抑制を細胞に接触させる方法は特に制限されず、経口投与、静脈内投与、留置等の外科的処置等を挙げることができる。細胞に接触させる細胞分散抑制剤の量は特に制限されず、細胞の状態、特定ペプチドとともに使用する他の成分の種類や量等に応じて選択できる。
<テモゾロミド活性増強剤>
本発明のテモゾロミド活性増強剤は、以下の(a)又は(b)であるペプチド(特定ペプチド)を有効成分として含む。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつテモゾロミド活性増強作用を有するペプチド。
特定ペプチドが(b):アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてなるペプチドである場合、欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸残基の数は特定ペプチドがテモゾロミド活性増強作用を有する範囲であれば特に制限されない。例えば、1〜9個であり、1〜6個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましい。合成の効率、取扱性、安定性等の観点からは、(b)のペプチドのアミノ酸残基の総数は30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることがより好ましい。
本発明のテモゾロミド活性増強剤は、テモゾロミド(3,4−ジヒドロ−3−メチル−4−オキソイミダゾ[5,1−d][1,2,3,5]テトラジン−8−カルボキサミド)の抗腫瘍作用を増強する。テモゾロミドはアルキル化剤に属する経口薬であり、分子量が小さく血液脳関門を通過できるために脳腫瘍の治療薬として使用されている。
本発明者らは、上記アミノ酸配列を有する特定ペプチドがテモゾロミドの抗腫瘍作用を増強することを見出した。すなわち、特定ペプチドを有効成分として含む本発明のテモゾロミド活性増強剤をテモゾロミドと併用することにより、テモゾロミド又は特定ペプチドを単独で使用した場合を上回る抗腫瘍効果を得ることができる。また、本発明のテモゾロミド活性増強剤をテモゾロミドと併用することで充分な抗腫瘍効果を達成しつつテモゾロミドの使用量を減らすことができ、テモゾロミドに起因する副作用を低減させることができる。
本発明のテモゾロミド活性増強剤を投与する方法は特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、経口投与、静脈内投与、留置等の外科的処置等を挙げることができる。テモゾロミドは一般に経口投与されることから、テモゾロミド活性増強剤も経口投与されることが好ましい。テモゾロミド活性増強剤とテモゾロミドとは同時に投与しても、間隔をあけて投与してもよい。本発明のテモゾロミド活性増強剤は、使用態様に応じて特定ペプチド以外の成分を含んでいてもよく、その形態も特に制限されず、用途に応じて選択できる。特定ペプチド以外に含まれてもよい成分及び形態の具体例は、本発明のPDGF依存性細胞増殖抑制剤又は細胞分散抑制剤に関して記載した具体例と同様である。
<抗腫瘍剤>
本発明の抗腫瘍剤は、テモゾロミドと、以下の(a)又は(b)であるペプチド(特定ペプチド)と、を有効成分として含む。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつテモゾロミド活性増強作用を有するペプチド。
特定ペプチドが(b):アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてなるペプチドである場合、欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸残基の数は特定ペプチドがテモゾロミド活性増強作用を有する範囲であれば特に制限されない。例えば、1〜9個であり、1〜6個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましい。合成の効率、取扱性、安定性等の観点からは、(b)のペプチドのアミノ酸残基の総数は30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることがより好ましい。
本発明の抗腫瘍剤は、テモゾロミドと特定ペプチドとを有効成分として含む混合剤であっても、テモゾロミドと特定ペプチドとをそれぞれ有効成分として含む薬剤の組み合わせであってもよい。本発明の抗腫瘍剤を投与する方法は特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、経口投与、静脈内投与、留置等の外科的処置等を挙げることができる。本発明の抗腫瘍剤が混合剤である場合、テモゾロミドは一般に経口投与されることから、経口投与されることが好ましい。
本発明の抗腫瘍剤がテモゾロミドと特定ペプチドとをそれぞれ有効成分として含む薬剤の組み合わせである場合の具体的態様としては、テモゾロミドを含む第一の収容部と、特定ペプチドを含む第二の収容部と、を備えた態様が挙げられる。第一の収容部及び第二の収容部は、それぞれの薬剤を独立して収容できるものであれば特に制限はない。例えば、テモゾロミドを収容する部分と特定ペプチドを収容する部分とを有する容器の形態や、テモゾロミドを収容する部分と特定ペプチドを収容する部分とが区分けされているシートの形態であってもよい。
<神経膠腫治療方法>
神経膠腫治療方法は、以下の(a)又は(b)であるペプチド(特定ペプチド)を患者に投与することを含む。
(a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗神経膠腫作用を有するペプチド。
特定ペプチドが(b):アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されてなるペプチドである場合、欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸残基の数は特定ペプチドが抗神経膠腫作用を有する範囲であれば特に制限されない。例えば、1〜9個であり、1〜6個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましい。合成の効率、取扱性、安定性等の観点からは、(b)のペプチドのアミノ酸残基の総数は30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることがより好ましい。
本発明者らは、上記アミノ酸配列を有する特定ペプチドが神経膠腫の治療に有効であることを見出した。ここで、「治療」には神経膠腫に起因する症状を消失又は軽減させることのほか、症状の進行の度合いを抑制することも含まれる。「抗神経膠腫作用」には、神経膠腫を消失又は縮小させる作用のほか、神経膠腫の増大、移動、浸潤等を抑制する作用も含まれる。特定ペプチドを患者に投与する方法は特に制限されず、経口投与、静脈内投与、外科的処置等を挙げることができる。患者に投与する特定ペプチドの量は特に制限されず、腫瘍の状態、特定ペプチドとともに使用する他の成分の種類や量等に応じて選択できる。本発明の神経膠腫治療方法は、特定ペプチドを有効成分とする薬剤の単独使用であっても、テモゾロミド等のその他の薬剤との併用であってもよい。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1 PDGF依存性細胞増殖抑制効果の評価>
特定ペプチドによるPDGF依存性の細胞増殖の抑制効果を以下の試験によって評価した。
ヒト神経膠芽腫(グリオブラストーマ)細胞株T98Gを10%FBSを含むRPMI1640で37℃、5%COの条件でインキュベータ内で培養した。培地には0.15% NaHCO、2mM L−glutamine、Penicillin−Streptomycin Solution(和光純薬工業株式会社)を添加した。FNコート(0.25μg/mL)した96ウェルプレートに培養したT98G細胞を所定量のPDGF(和光純薬工業株式会社)、TNIIIA2(配列番号2)及びFNIII14(配列番号1)とともに播種し、37℃、5%COの条件でインキュベータ内で培養した。その後、Cell Counting Kit−8(株式会社同仁化学研究所)を用いて生存細胞数を測定した。吸光度測定にはMultimode Plate Reader ARVOTM X4(Perkin Elmer社)を用いた。
結果を図1に示す。図中の数字はTNIIIA2の添加量(μg/mL)を示す。「−PDGF」はPDGFを添加しなかった群を、「+PDGF」はPDGFを10ng/mL添加した群を示す。「+FNIII14 25」はFNIII14を25μg/mL添加した群を、「+FNIII14 50」はFNIII14を50μg/mL添加した群を示す。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
図1のグラフに示すように、PDGFを添加しない場合に比べてPDGFを添加した場合ではTNIIIA2の添加によるT98G細胞の増加が顕著にみられ、TNIIIA2がPDGF依存性の細胞増殖を促進することがわかった。さらに、FNIII14を添加した場合はT98G細胞の増加が顕著に抑制され、FNIII14がTNIIIA2によるPDGF依存性の細胞増殖の促進を抑制することがわかった。
<実施例2 足場非依存性細胞増殖抑制効果の評価>
特定ペプチドによる足場非依存性細胞増殖の抑制効果を軟寒天コロニーアッセイによって評価した。足場非依存性の細胞増殖能は細胞のがん化の指標であり、増殖が活発であるほど細胞のがん化が著しいことを意味する。
1.4%アガロースゲル(Bacto Agar、BD社)をオートクレーブで滅菌し、溶解した後、恒温槽で45℃にした。同じく45℃で20%FBSを含む2倍濃度の培地をアガロースゲルと等量混合し、12ウェルプレートに1mL添加し、室温で固めた。上記で等量混合したアガロースゲルを、試薬及び実施例1に記載の方法で培養したT98G細胞の懸濁液と更に等量混合し、各ウェルに1mL添加した。4℃で8分間静置して固めた後、10%FBSを含む培地を各ウェルに1mL加えた。37℃、5%COの条件でインキュベータで一定期間培養し、その後コロニー数をカウントした。
結果を図2に示す。図中の「control」は試薬を添加しなかった群、「TNIIIA2」はTNIIIA2を25μg/mL添加した群、「PDGF」はPDGFを10ng/mL添加した群、「TNIIIA2+PDGF」はTNIIIA2を25μg/mL及びPDGFを10ng/mL添加した群を示す。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
図2のグラフ及び写真に示すように、TNIIIA2はT98G細胞の足場非依存性増殖を増強し、その増強効果はPDGFを添加した場合により顕著であることがわかった。さらに、FNIII14を添加した場合はT98G細胞の足場非依存性増殖が顕著に抑制され、FNIII14がTNIIIA2による足場非依存性増殖の促進を抑制することがわかった。
<実施例3 腫瘍細胞分散抑制効果の評価>
特定ペプチドによる腫瘍細胞分散の抑制効果をscattering assayによって評価した。細胞の分散が活発であるほど腫瘍の移動や浸潤が著しいことを意味する。
FNコート(0.25μg/mL)したプレートに実施例1に記載の方法で培養したT98G細胞を播種し、37℃、5%COの条件でインキュベータで培養した。敷石状に増えた細胞に各試薬を反応させ、一定時間後にDiff−Quik(シスメックス株式会社)で固定、染色し、細胞の形態変化を観察した。細胞の形態変化はMotic Image Plus 2.2S(株式会社島津理化)で撮影した。
結果を図3に示す。図中の「control」は試薬を添加しなかった群、「TNIIIA2」はTNIIIA2を25μg/mL添加した群、「PDGF」にはPDGFを10ng/mL添加した群、「TNIIIA2+PDGF」はTNIIIA2を25μg/mL及びPDGFを10ng/mL添加した群を示す。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
図3の左側の写真に示すように、TNIIIA2はT98G細胞の分散を誘導することがわかった。さらに、TNIIIA2はPDGFの添加の有無とは無関係にT98G細胞の分散を誘導することがわかった。他方、図3の左側の写真に示すようにFNIII14を添加した場合はTNIIIA2を添加した場合でもT98G細胞の分散がみられず、FNIII14がTNIIIA2による細胞分散の誘導を阻害することがわかった。
<実施例4 マウス側背部における腫瘍形成抑制効果の評価>
特定ペプチドによる腫瘍形成の抑制効果をマウスを用いた動物実験によって評価した。6週令雄のヌードマウス(Balb/c nu/nu)の左背部の皮下にラットグリオーマ細胞株9L(5×10cells/100μL)を移植した。腫瘍体積が約50mmになったところでマウスを無作為に二群に分け、一方の群には生体内での分解を防ぐために第2位のグルタミン酸をD体に変換したFNIII14を、もう一方の群には配列をシャッフルして不活性化したFNIII14の変異体(配列番号3)を、個体あたり250μgの量で尾静脈内に連日、21日間投与した。腫瘍長径及び短径を一日おきにノギスで測定し、腫瘍体積(V)を腫瘍長径(L)と腫瘍短径(W)から、V=L×W×0.5の式で算出した。マウスの体重も一日おきに測定した。
結果を図4に示す。図4中の「control peptide」はFNIII14の変異体を投与したコントロール群、「D−Glu FNIII14」は第2位のグルタミン酸をD体に変換したFNIII14を投与した群の腫瘍体積(mm)及び体重(mg)の変化をそれぞれ示す。図中のエラーバーは標準偏差(n=5)を示す。
図4の左側のグラフに示すように、FNIII14を投与した群はコントロール群に比べて腫瘍体積の増大が顕著に抑制されており、FNIII14が腫瘍の形成を抑制することがわかった。また、右側のグラフに示すように、FNIII14を投与した群の体重の変化はコントロール群に比べて大きく変わらなかった。
<実施例5 テモゾロミド活性増強効果の評価>
特定ペプチドによるテモゾロミド活性の増強効果を以下の試験によって評価した。
FNコート(0.25μg/mL)したプレートに実施例1に記載の方法で培養したT98G細胞を播種し、37℃、5%COの条件でインキュベータで培養した。培養した細胞に対し、テモゾロミド単独又はテモゾロミドとFNIII14との組みあわせを濃度を変化させて作用させ、細胞の生存率を調べた。
結果を図5に示す。図5のグラフ中の「Temozolomide」はテモゾロミド単独を作用させた群、「TNIII14+Temozolomide」はテモゾロミドとFNIII14との組み合わせを作用させた群の細胞生存率の変化を示す。図中のエラーバーは標準偏差(n=3)を示す。
テモゾロミドとFNIII14の併用効果について既報(Drewinkoら、Cancer Treat Rep 60(11)1619−1625(1976))に従い、下記の式によってCombination Index(CI)を算出した。CIの値が1より小さいことは、テモゾロミドとFNIII14の併用により相乗効果が現れていることを意味する。
CI=V/(V×V
;抗がん剤(テモゾロミド)をある濃度で作用させた時の細胞生存率
;被験物質(FNIII14)をある濃度で作用させた時の細胞生存率
;両者を併用して作用させた時の細胞生存率
CI>1:拮抗効果、CI=1:相加効果、CI<1:相乗効果
図5に示すように、テモゾロミドとFNIII14との組み合わせを作用させた細胞の生存率はテモゾロミド単独を作用させた群よりも低く、FNIII14がテモゾロミドの活性を増強することがわかった。さらに、テモゾロミドとFNIII14とを併用した場合のCIの値は1よりも小さく、相乗効果が現れていることがわかった。
<使用した試薬及び細胞>
FNIII14(TEATITGLEPGTEYTIYVIAL、配列番号1)、TNIIIA2(RSTDLPGLKAATHYTITIRGVC、配列番号2)、FNIII14変異体(TEATITGLEPGTEYTAYVAALC、配列番号3)はそれぞれオペロンバイオテクノロジー株式会社より購入した。D−Glu FNIII14(T−[D−Glu]−ATITGLEPGTEYTIYVIAL)は佐賀大学大学院工学系研究科の研究グループとの共同研究によって調製した。ヒト神経膠芽腫細胞株T98GはAmerican Type Culture Collectionより購入した。ラットグリオーマ細胞株9Lは筑波大学医学医療系脳神経外科学教室より提供を受けた。

Claims (10)

  1. 以下の(a)又は(b)であるペプチドを有効成分として含む、PDGF依存性細胞増殖抑制剤。
    (a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、PDGF依存性細胞増殖抑制作用を有するペプチド。
  2. 前記細胞はPDGF受容体を発現する、肉腫及び癌腫からなる群より選択される少なくとも1種の細胞である請求項1に記載のPDGF依存性細胞増殖抑制剤。
  3. 前記細胞は神経膠腫、繊維肉腫、骨肉腫、乳がん及び肺がんからなる群より選択される少なくとも1種の細胞である、請求項1又は請求項2に記載のPDGF依存性細胞増殖抑制剤。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のPDGF依存性細胞増殖抑制剤を細胞に接触させることを含む、PDGF依存性細胞増殖の抑制方法。
  5. 以下の(a)又は(b)であるペプチドを有効成分として含む、細胞分散抑制剤。
    (a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、細胞分散抑制作用を有するペプチド。
  6. 前記細胞は細胞間接着によって形成された集団又は集隗からの細胞の解離が生じる、肉腫及び癌腫からなる群より選択される少なくとも1種の細胞である請求項5に記載の細胞分散抑制剤。
  7. 前記細胞は神経膠腫、繊維肉腫、骨肉腫、乳がん及び肺がんからなる群より選択される少なくとも1種の細胞である、請求項5又は請求項6に記載の細胞分散抑制剤。
  8. 請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の細胞分散抑制剤を細胞に接触させることを含む、細胞分散の抑制方法。
  9. 以下の(a)又は(b)であるペプチドを有効成分として含む、テモゾロミド活性増強剤。
    (a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、テモゾロミド活性増強作用を有するペプチド。
  10. テモゾロミドと、以下の(a)又は(b)であるペプチドと、を有効成分として含む抗腫瘍剤。
    (a)Thr−Glu−Ala−Thr−Ile−Thr−Gly−Leu−Glu−Pro−Gly−Thr−Glu−Tyr−Thr−Ile−Tyr−Val−Ile−Ala−Leu(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)アミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、テモゾロミド活性増強作用を有するペプチド。
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