JPH1013244A - データ変換装置およびデータ変換方法 - Google Patents

データ変換装置およびデータ変換方法

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JPH1013244A
JPH1013244A JP8179929A JP17992996A JPH1013244A JP H1013244 A JPH1013244 A JP H1013244A JP 8179929 A JP8179929 A JP 8179929A JP 17992996 A JP17992996 A JP 17992996A JP H1013244 A JPH1013244 A JP H1013244A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 デジタルデータのビット長拡張を行なう際、
量子化雑音を除去する一方、量子化雑音に埋もれがちな
微少なレベルの音楽信号については、これを復元しなが
ら、有効ビット数の大きいデジタルデータを得る。 【解決手段】 本発明のデータ変換装置は、有効ビット
数Nのデジタルデータを特定のブロックに区切って周波
数軸成分(周波数係数)に変換する変換手段2と、数ブロ
ックにわたり変換された周波数軸成分から次に変換する
ブロックの周波数軸成分を推定する推定手段4と、変換
手段2によって変換された周波数軸成分のうち、所定レ
ベル以下の周波数軸成分については、これを推定手段4
によって推定された周波数軸成分に置き換える置換手段
7と、置換手段7からの周波数軸成分を有効ビット数M
(N<M)の時間軸成分(デジタルデータ列)に変換して出
力する逆変換手段8とを備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタルオーディ
オデータのビット長拡張を行なうデータ変換装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】アナログ信号をデジタル化して記録再生
等を行なうデジタルオーディオでは、現在、16乃至2
0ビット等の高精度なビット数のデータが使われてい
る。しかしながら、これらの技術の導入期においては、
13ビットや14ビット程度の精度のデータが用いられ
ており、従って、これらの装置(例えば13ビットシス
テム)によって収録された音楽ソースをコンパクトディ
スク等(例えば16ビットシステム)の音源として使用す
る場合、13ビットシステムのデータを16ビットシス
テムの上位13ビットとして用い、16ビットシステム
の下位3ビットには、0を割り当てたり、あるいは、下
位ビットは、意味をなさないデータ領域となっていた。
これらの音楽ソースは、有効ビット数が少ないため、特
に楽器の音が減衰して消えていくときに歪みが出たり、
雑音感を伴う。すなわち、量子化雑音が生じ、この対策
として、例えば特開平7−193502号には、時間軸
にサンプルされたデータ列を周波数軸成分(周波数係数)
に変換して特定レベル以下のデータを0とし、そのデー
タを入力データより大きいビット精度で逆変換すること
によって、下位ビットに有効なデータを得るデータ変換
装置が示されている。
【0003】すなわち、この装置では、所定のビット数
Nのデジタルデータ(時間軸にサンプルされたデータ列)
を数ブロックに区切って周波数軸成分に変換し、変換さ
れた周波数軸成分(周波数係数)のうち、所定レベル以下
のレベルの周波数軸成分(周波数係数)を0または減衰さ
せた周波数軸成分(周波数係数)とし、この周波数係数を
入力時の有効ビット数Nより大きいビット数Mで、時間
軸成分に逆変換してデジタルデータ(サンプルデータ)と
して出力するようになっている。これにより、例えば1
3ビット等の丸めの誤差±LSB以下のレベル等のノイ
ズ成分が除去され、かつ、有効ビットが16ビットに拡
大されたデータを得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の装置では、レベルの低い量子化雑音の周波数軸
成分(周波数係数)を除去すると共に、微少な音楽成分
(音楽の周波数軸成分)も取り除かれてしまい、これを時
間軸成分に逆変換して再生したデジタルデータは、音楽
信号の減衰音が途中で消えて、音質劣化が生じることが
ある。すなわち、量子化雑音を取り除くことができる
が、それと同時に、微少な音楽成分をも取り除いてしま
うことになり、減衰音が途中で消えたりすることで音質
劣化を知覚しやすくなってしまう。
【0005】本発明は、デジタルデータのビット長拡張
を行なう際、量子化雑音を除去する一方、量子化雑音に
埋もれがちな微少なレベルの音楽信号については、これ
を復元しながら、有効ビット数の大きいデジタルデータ
を得ることの可能なデータ変換装置を提供することを目
的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、有効ビット数Nのデジタルデータを数
ブロックに区切り、周波数軸成分に変換し、変換された
周波数軸成分の中から、所定レベル以下の周波数軸成分
を、数ブロックにわたる周波数軸成分から類推した周波
数軸成分に置き換えた後、有効ビット数M(N<M)で時
間軸成分に変換して出力するようにしている。これによ
り、デジタルデータのビット長拡張を行なう際、量子化
雑音を除去する一方、量子化雑音に埋もれがちな微少な
レベルの音楽信号については、これを復元しながら、有
効ビット数の大きいデジタルデータを得ることができ
る。量子化雑音に埋もれていた微少な音楽信号を復元で
き、古い録音ソースの音質を改善することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。図1は本発明に係るデータ変換装置
の構成例を示す図である。図1を参照すると、このデー
タ変換装置は、有効ビット数Nのデジタルデータを特定
のブロックに区切って周波数軸成分(周波数係数)に変換
する変換手段2と、数ブロックにわたり変換された周波
数軸成分から次に変換するブロックの周波数軸成分を推
定する推定手段4と、変換手段2によって変換された周
波数軸成分のうち、所定レベル以下の周波数軸成分につ
いては、これを推定手段4によって推定された周波数軸
成分に置き換える置換手段7と、置換手段7からの周波
数軸成分を有効ビット数M(N<M)の時間軸成分(デジ
タルデータ列)に変換して出力する逆変換手段8とを備
えている。
【0008】図2は図1のデータ変換装置のより具体的
な構成例である。図2を参照すると、このデータ変換装
置は、時間軸にサンプルされた有効ビット数Nのデジタ
ルデータ(例えば、デジタルオーディオなどで用いられ
るPCMデータ)を特定のブロックに区切って周波数軸
成分,すなわち周波数係数(スペクトル)に変換するFF
T(高速フーリエ変換)部102と、量子化ノイズレベル
程度の閾値THを発生する閾値発生部105と、FFT
部102からの周波数係数(スペクトル)を閾値THと比
較するスペクトル比較部106と、数ブロックにわたり
変換された周波数係数(スペクトル)から次に変換するブ
ロックの周波数係数(スペクトル)を推定するスペクトル
推定部104と、スペクトル比較部106の比較結果に
応じて、FFT部102からの周波数係数(スペクトル)
とスペクトル推定部104からの周波数係数(スペクト
ル)とのいずれか一方を選択するスペクトル選択部10
7と、スペクトル選択部107によって選択された周波
数係数(スペクトル)を一時記憶する一時記憶バッファ1
03と、スペクトル選択部107によって選択された周
波数係数(スペクトル)を入力の有効ビット数Nよりも大
きな有効ビット数Mで時間軸成分に逆FFT変換する逆
FFT部108とを備えている。
【0009】ここで、FFT部102,逆FFT部10
8が、図1の変換手段2,逆変換手段8にそれぞれ対応
し、スペクトル推定部104が、図1の推定手段4に対
応し、閾値発生部105,スペクトル比較部106,ス
ペクトル選択部107が、図1の置換手段7に対応して
いる。また、一時記憶バッファ103は、複数ブロック
(少なくとも2ブロック)分のスペクトルを記憶する容量
を有し、スペクトル推定部104における推定処理を行
なうのに用いられる。
【0010】次に、このようなデータ変換装置の処理動
作について説明する。このデータ変換装置の入力端子1
01から、例えばデジタルオーディオインターフェイス
などで受信,復調されたPCMデータが入力すると、F
FT部102では、入力されたPCMデータを、Nポイ
ントのFFT処理によって周波数係数(スペクトル)に変
換する。なお、FFTはDFT(離散フーリエ変換)を高
速に実行するための計算法の1つであり、少ない乗算回
数で次式に示すDFTの解を得ることができる。
【0011】
【数1】
【0012】なお、数1において、x(n)は窓掛け処理
されたNポイントの入力データであり、この窓には例え
ば、50%オーバラップされたハミング窓を用いる。
【0013】数1によって得られるX(k)は、入力デー
タx(n)を、Nサンプルを一周期とする正弦波とその整
数(k)倍の周期を持つ正弦波との合成として表現した場
合の各正弦波(スペクトル)の情報を表現する。具体的に
は、X(k)は複素数であるため、その絶対値がスペクト
ルレベル、偏角が位相を示すことになる。
【0014】図3には、FFT部102で分析されたス
ペクトルの−例が示されている。このスペクトルは音楽
の成分C1と量子化ノイズ成分C2とからなっている。デ
ータレベルが大きい場合、量子化ノイズは白色となり雑
音電力はLSBレベルの1/12程度であることが知ら
れており、FFTでは、このノイズもスペクトル分解さ
れるので、例えば512スペクトルに分解すると各電力
は約−27dBとなる。
【0015】閾値発生部105では、例えばこのレベル
を量子化ノイズと判断する閾値THとして発生する。入
力データが小さい場合は、データは音調歪みとなり、白
色とならないため特定のスペクトルのデータレベルが上
昇する。これに対応するためには、入力データレベルが
小さい場合は、ノイズスペクトルであろうと思われる帯
域の閾値をやや上昇させたりすると、よくノイズを除去
できる。
【0016】スペクトル比較部106では、各帯域にお
けるFFT分析されたスペクトルと閾値THとを比較し
て、その結果をスペクトル選択部107へ出力する。
【0017】スペクトル選択部107では、各帯域にお
いて、FFT部102からの出力(スペクトル)と後述の
スペクトル推定部104からの出力(スペクトル)とのい
ずれのスペクトルを逆FFT部108へ出力させるか
を、スペクトル比較部106の比較結果に応じて選択す
る。すなわち、スペクトル選択部107は、FFT部1
02からの出力(スペクトル)の方が閾値THよりも大き
い場合は、FFT部102からの出力(スペクトル)を選
択し、FFT部102からの出力(スペクトル)よりも閾
値THの方が大きい場合は、スペクトル推定部104か
らのスペクトルを選択する。
【0018】スペクトル選択部107から選択出力され
たスペクトルは、逆FFT部108に与えられる。逆F
FT部108では、スペクトル選択部107から出力さ
れたスペクトルを逆FFTにより時間軸成分(デジタル
データ列)に変換する。逆FFTは逆DFTを高速に実
行するための計算法の1つであり、少ない乗算回数で次
式に示す逆DFTの解を得ることができる。
【0019】
【数2】
【0020】なお、この場合、逆FFT部108は、有
効ビット数M(M>N)の出力を得るため、十分な演算精
度を有しているものとする。逆FFT部108で変換さ
れた時間軸成分(デジタルデータ列)の波形は、FFT部
102と同様の割合(例えば50%)ずつ前後の波形とオ
ーバラップさせながら、出力端子109より出力され
る。
【0021】また、スペクトル選択部107から選択出
力されたスペクトルは、上記処理と並行して、一時記憶
バッファ103に一時的に記憶される。なお、前述のよ
うに、一時記憶バッファ103には、複数ブロック(例
えば、現ブロックに対して1つ前のブロック,2つ前の
ブロック)分の容量を有している。このようにして、一
時記憶バッファ103に一時的に記憶されたスペクトル
に基づき、スペクトル推定部104は、着目ブロック
(現ブロック)におけるスペクトルを推定する。具体例と
して、1つ前のブロックにわたるスペクトル絶対値,2
つ前のブロックにわたるスペクトル絶対値が、それぞ
れ、XB-1,XB-2があった時の推定スペクトル絶対値X
Bを、例えば次式のような1次関数で求める。
【0022】
【数3】XB=XB-1+{XB-1−XB-2
【0023】位相は、1つ前のブロックと波形が連続す
るように調整する。50%オーバラップの波形では、1
次の項X(1)では、+180゜、2次の項X(2)では、
360゜の進角(以下同様)となるので、これに合うよう
に1つ前のブロックの各項の位相に進角分の位相を加算
し、推定ブロックのスペクトルの位相が決定される。
【0024】なお、上述の例では、スペクトル推定部1
04において、一義的に数3で推定スペクトルを得てい
るが、良好に推定できるのは主に楽音の減衰部分である
ので、スペクトルが増加している帯域においては、推定
スペクトルの大きさを制限したり零にしたりすると、誤
った推定による雑音の発生を低減できる。
【0025】このように、スペクトル推定部104によ
れば、仮に現ブロックにおけるスペクトルが閾値TH以
下のものであっても、これを、例えば、1つ前のブロッ
ク,2つ前のブロックのスペクトルから類推して求める
ことができる。従って、スペクトル選択部107におけ
る処理(すなわち、FFT部102からの出力(スペクト
ル)の方が閾値THよりも大きい場合は、FFT部10
2からの出力(スペクトル)を選択し、FFT部102か
らの出力(スペクトル)よりも閾値THの方が大きい場合
は、スペクトル推定部104からのスペクトルを選択す
る処理)は、FFT部102からのスペクトルにおい
て、閾値TH以下の量子化ノイズ成分C2を除去すると
きにこれとともに取り除かれてしまう微少なレベルの音
楽信号スペクトルについては、スペクトル推定部104
で推定されたスペクトルにより復元されることを意味し
ている。
【0026】このように、本発明では、低いビット数で
記録されたデジタルオーディオデータを、記録時の低い
ビット数よりも高いビット数で再生出力するときに(す
なわち、ビット長拡張を行なうときに)、閾値TH以下
の量子化ノイズ成分C2を除去する場合にも、これとと
もに取り除かれてしまう微少なレベルの音楽信号スペク
トルを推定し、復元することができる。
【0027】次に、図1,図2のデータ変換装置の具体
的な処理例として、現ブロックの閾値以下で除去された
データのうち、微少な音楽データについて前ブロックか
ら類推(推定)する処理について説明する。
【0028】いま、入力端子101から音楽データが入
力されると、入力された音楽データは、時間的にある単
位でブロック毎に分けられ、時間軸成分(デジタルデー
タ列)から周波数軸成分(スペクトル)に変換される。時
間軸成分から周波数軸成分への変換は、高速フーリエ変
換(FFT)を用いて前述のように行なうことができる。
すなわち、数1に従って行なうことができる。
【0029】図4(a)には、連続した音楽データをブロ
ック単位で周波数軸成分(スペクトル)に変換したとき
に、そのうちの現ブロックのスペクトルが示されてい
る。図4(a)において、現ブロックのスペクトルには、
比較的レベルの高い音楽データのスペクトルと、比較的
レベルの低いノイズ成分(量子化雑音)のスペクトルとが
混在している。
【0030】スペクトル選択部107は、実質的に、図
4(a)の現ブロックのスペクトルにおいて、閾値TH以
下のスペクトルをノイズと判断し除去する。図4(b)に
は、この状態が示されている。図4(b)からわかるよう
に、このとき、本来音楽データであるスペクトルでも、
閾値TH以下のスペクトルは除去される。
【0031】図4(b)において、除去された閾値TH以
下の音楽データのスペクトルを復元するために、スペク
トル推定部104は、スペクトルの推定処理を行なう。
具体的には、例えば図4(c)に示すような現ブロックに
対して2つ前のブロックのスペクトルと、図4(d)に示
すような現ブロックに対して1つ前のブロックのスペク
トルとから、現ブロックにおけるスペクトルを類推す
る。前のブロックから現ブロックにおけるスペクトルを
類推するには、例えば数3の1次関数を用いて現ブロッ
クの前の2つのブロックのスペクトルから、現ブロック
のスペクトルの予測を行なう。具体的には、図4(c)お
よび図4(d)に示すように、それぞれのブロックの同じ
周波数のスペクトルレベルから、時間的なスペクトルレ
ベルの傾きを求め、その傾きから現ブロックに相当する
スペクトルを類推する。図4(e)には、類推されたブロ
ックのスペクトルが示されている。
【0032】なお、音楽信号を周波数軸成分に変換する
のにFFTを用いる場合には、後段において微少な音楽
データを類推するとき、現ブロックのスペクトルと1つ
前のブロックのスペクトルとは位相が連続的であるた
め、演算により求められたスペクトルの各項の位相に進
角分を加算することにより、現ブロックの類推スペクト
ルの位相を容易に決定することができる。すなわち、周
波数軸成分に変換するときにFFTを用いる場合、算出
された現ブロックに相当するスペクトルに、現ブロック
の1つ前のブロックの各項の位相に進角分の位相を加算
することにより、そのスペクトルの位相を決定すること
ができる。また、音楽信号を時間軸成分から周波数軸成
分に変換する方法として、DFTではなくFFTを用い
ることにより、乗算の回数を減らして高速に離散フーリ
エ変換が可能であり、容易に類推スペクトルの位相を算
出することができる。
【0033】次に、スペクトル選択部107では、図4
(a)に示す元の現ブロックのスペクトルと図4(e)に示
す類推された現ブロックのスペクトルとのいずれかを閾
値THに応じて選択する。この選択処理により、図4
(a)において、閾値TH以上の音楽データのスペクトル
については、これがそのまま出力される(すなわち、図
4(b)のように出力される)。一方、スペクトルのレベ
ルが閾値TH以下のため、ノイズと判断され除去された
微少な音楽データのスペクトルは、図4(e)に示す類推
された現ブロックのスペクトルが置き換えられ出力され
る。
【0034】従って、出力される現ブロックのスペクト
ルは、図4(f)に示すスペクトルとなり、ノイズと判断
され除去された微少な音楽データのスペクトルを復元す
ることができる。
【0035】図5は、音楽データが時間的に徐々にレベ
ルが減衰する場合を示した模式図である。図5(a)は、
本来の元の音楽データのスペクトルを示し、図5(b)
は、従来技術における音楽データのスペクトルを示し、
図5(c)は、本発明における音楽データのスペクトルを
示している。
【0036】音楽データが時間的に徐々にレベルが減衰
する場合、本来の元の音楽データでは、図5(a)に示す
ように、量子化ノイズのノイズスペクトルは、時間が経
過しても、レベルがほぼ一定なものである。これに対
し、音楽データスペクトルのレベルは時間が経過するに
従って、徐々に減衰し、微少な音楽データがノイズスペ
クトルのなかに埋もれるようになる。
【0037】図5(a)で示した本来の元の音楽データの
ノイズスペクトルを除去するために、従来では、図5
(b)に示すように、閾値THを設定し、その閾値TH以
下のレベルのスペクトルを除去する。しかしながら、こ
の従来技術では、閾値TH以下のノイズスペクトルを除
去するが、徐々にレベルが減衰して閾値TH以下になっ
た音楽データのスペクトルをも同時に除去してしまう。
【0038】この従来技術に対し、本発明では、図5
(c)に示すように、現ブロックの前の2つのブロックか
らスペクトルを類推し、閾値以下の微少な音楽データを
類推した音楽データスペクトルに置き換え出力する。
【0039】従って、量子化ノイズが除去される一方
で、微少な音楽データについては、推定,復元されて出
力されるので、楽器等の減衰する部分の音質を改善する
ことができる。
【0040】より具体的に、量子化解像度の粗いPCM
データでは、特に、楽器の音が減衰して消えていくとき
に歪みが出たり、減衰音が途中で消えたりすることで音
質劣化を知覚しやすい。これら楽器等の減衰部分は、時
間的相関の強い部分であり、FFT解析を用いること
で、比較的良好な波形を推定することができる。本発明
では、このようなFFT解析による推定結果に基づき、
量子化で消滅した微少成分を付加してビット長を拡張し
たPCMデータを得ることができ、特に上記のような、
楽器等の減衰部分の音質を大きく改善することができ
る。
【0041】なお、上述の例では、現ブロックのスペク
トルを行なうのに、数3の1次関数を用いたが、これの
かわりに、例えば次式による線形予測を用いることもで
きる。
【0042】
【数4】
【0043】ここで、xn-iは現ブロックnに対し、i
個前のブロックの観測値であり、αiは線形予測係数で
あり、xnは現ブロックの線形予測値である。この線形
予測は、現ブロックのスペクトルを前の複数ブロック
(1〜p個前のブロック)から、例えば、現ブロックのス
ペクトルを前の10個(p=10)のブロックから類推す
るときに用い、これにより、現ブロックの2つ前のブロ
ックから現ブロックのスペクトルを予測する場合より
も、より一層正確な値のスペクトルを予測することがで
きる。
【0044】この場合、一時記憶バッファ103として
は、数ブロック(p個のブロック)以上のスペクトルのデ
ータを記憶することができる容量のものが必要となる。
また、スペクトル選択部107に、複数ブロックのスペ
クトルのレベルのうち、どのブロックのスペクトルを用
いて、現ブロックのスペクトルを類推するかを判断する
判断処理部を設けても良い。複数ブロックのスペクトル
を用いた場合、例えば、突発的なパルスノイズ等が現ブ
ロックの6ブロック前から4ブロック前に付加されたと
すると、このノイズが付加されたブロックを含めた現ブ
ロックの前の10ブロックからスペクトルを類推した場
合、類推されたスペクトルが、前のブロックのスペクト
ルに対して非連続的な値のスペクトルになることがあ
る。従って、前記判断処理部を設け、突発的なパルスノ
イズ等のスペクトルを除去しスペクトルを類推するた
め、ノイズの影響を受けない連続的な値のスペクトルを
得ることができる。
【0045】このように本発明は、デジタル信号処理に
よってビット長拡張を行なうものであり、例えば、1
3,14ビット程度で録音された古いPCM録音ソース
を16,20ビット長の精度を持つ再生装置で再生させ
たり、コンパクトディスクを20ビット等のより高い解
像度で再生させる場合などに適用可能であって、レベル
の低い量子化雑音の周波数軸成分(周波数係数)を除去す
る一方、デジタルデータのビット長拡張を行なう際、量
子化雑音を除去する一方、量子化雑音に埋もれがちな微
少なレベルの音楽信号については、これを復元しなが
ら、有効ビット数の大きいデジタルデータを得ることが
できる。
【0046】すなわち、本発明では、オリジナルの波形
を特定のブロック長に区切って周波数変換を行ない周波
数係数を得て、この周波数係数の中から、量子化ノイズ
レベルであろうと思われるレベル以下のスペクトルの帯
域を抽出し、さらにそれと平行して数ブロックにわたる
周波数係数より、次ブロックにおける周波数係数を類推
し、類推された係数を前記抽出された帯域にあてがい、
このようにして得られた一そろいの周波数係数を、十分
な演算精度を持つ逆変換装置を用いて逆変換し、ビット
拡張されたPCMデータを得る。
【0047】このように、周波数係数の中から、量子化
ノイズレベルであろうと思われるレベル以下の係数を、
周波数解析結果から類推されたスペクトルで代用し逆変
換処理することにより、量子化雑音が取り除かれ、かつ
量子化ノイズに埋もれていたであろう微少信号を復元で
きるため、古い録音ソースを音質改善し、有効ビット数
の大きいデータを得ることができる。
【0048】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、有効ビット数Nのデジタルデータを数ブロックに区
切り、周波数軸成分に変換し、変換された周波数軸成分
の中から、所定レベル以下の周波数軸成分を、数ブロッ
クにわたる周波数軸成分から類推した周波数軸成分に置
き換えた後、有効ビット数M(N<M)で時間軸成分に変
換して出力するようにしているので、デジタルデータの
ビット長拡張を行なう際、量子化雑音を除去する一方、
量子化雑音に埋もれがちな微少なレベルの音楽信号につ
いては、これを復元しながら、有効ビット数の大きいデ
ジタルデータを得ることができる。量子化雑音に埋もれ
ていた微少な音楽信号を復元でき、古い録音ソースの音
質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るデータ変換装置の構成例を示す図
である。
【図2】図1のデータ変換装置のより具体的な構成例を
示す図である。
【図3】FFT部で分析されたスペクトルの一例を示す
図である。
【図4】本発明のデータ変換装置において微少な音楽デ
ータを類推する処理を説明するための図である。
【図5】音楽データが時間的に徐々にレベルが減衰する
場合を示した模式図である。
【符号の説明】
2 変換手段 4 推定手段 7 置換手段 8 逆変換手段 102 FFT部 103 一時記憶バッファ 104 スペクトル推定部 105 閾値発生部 106 スペクトル比較部 107 スペクトル選択部 108 逆FFT部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有効ビット数Nのデジタルデータを特定
    のブロックに区切って周波数軸成分に変換する変換手段
    と、数ブロックにわたり変換された周波数軸成分から次
    に変換するブロックの周波数軸成分を推定する推定手段
    と、変換手段によって変換された周波数軸成分のうち、
    所定レベル以下の周波数軸成分については、これを推定
    手段によって推定された周波数軸成分に置き換える置換
    手段と、置換手段からの周波数軸成分を有効ビット数M
    (N<M)で時間軸成分に変換して出力する逆変換手段と
    を備えていることを特徴とするデータ変換装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のデータ変換装置におい
    て、前記推定手段は、1つ前のブロックにわたるスペク
    トル絶対値,2つ前のブロックにわたるスペクトル絶対
    値を、それぞれ、XB-1,XB-2とするとき、 XB=XB-1+{XB-1−XB-2} の1次関数を用いて、現ブロックの前の2つのブロック
    の周波数軸成分XB-1,XB-2から、現ブロックの周波数
    軸成分XBの予測を行なうことを特徴とするデータ変換
    装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のデータ変換装置におい
    て、前記推定手段は、現ブロックの周波数軸成分を、前
    の複数ブロックの周波数軸成分から線形予測により推定
    することを特徴とするデータ変換装置。
  4. 【請求項4】 有効ビット数Nのデジタルデータを数ブ
    ロックに区切り、周波数軸成分に変換し、変換された周
    波数軸成分の中から、所定レベル以下の周波数軸成分
    を、数ブロックにわたる周波数軸成分から類推した周波
    数軸成分に置き換えた後、有効ビット数M(N<M)で時
    間軸成分に変換して出力することを特徴とするデータ変
    換方法。
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