JPH10102186A - 耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板とその製造方法 - Google Patents

耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板とその製造方法

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JPH10102186A
JPH10102186A JP27857096A JP27857096A JPH10102186A JP H10102186 A JPH10102186 A JP H10102186A JP 27857096 A JP27857096 A JP 27857096A JP 27857096 A JP27857096 A JP 27857096A JP H10102186 A JPH10102186 A JP H10102186A
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JP
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thickness
yield strength
steel
transformation point
temperature
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JP27857096A
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Tadashi Ishikawa
忠 石川
Kojin Hagiwara
行人 萩原
Shuichi Jinushi
修一 地主
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼材全体の降伏強度を大幅に上昇させること
なく、鋼材表裏層部の降伏強度のみを鋼材板厚内部より
も上昇させて鋼材全体の耐座屈特性を向上させる耐座屈
特性の優れた溶接構造用鋼板及び製造方法を提供する。 【解決手段】 (1)鋼板の表面及び裏面のそれぞれか
ら全板厚の5%以上20%以下の表裏層部に存在する結
晶粒の平均円相当径が板厚内部の平均円相当径の1/2
以下であること、(2)鋼板の表裏層部の全板厚に対す
る比率をSとし、表裏層部の降伏強度の板厚内部の降伏
強度に対する比をYとした場合に、Sが0.1以上0.
4以下の範囲にあり、かつ次の(A)式で求められる値
Hが8以上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた
溶接構造用鋼板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接構造物の耐座
屈強度を向上させるために、鋼板表層部の降伏強度を内
層部の降伏強度より高くすることにより、全厚を高降伏
強度化した鋼板の強度特性から予想されるよりも耐座屈
特性を向上させた溶接構造用の表層高降伏強度鋼板及び
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】構造物の健全性を維持するためには、構
造物に脆性破壊や疲労破壊に対する抵抗を付与するだけ
でなく、地震等により大きな荷重が負荷された場合でも
座屈による塑性崩壊を防止することが重要となる。近
年、阪神大震災を契機として、大地震時にも塑性崩壊し
ない建築構造物が検討されはじめ、あらためて鋼材の耐
座屈特性が注目されるに至っている。
【0003】しかしながら、従来、構造物の耐座屈特性
の検討は、使用される鋼材の降伏強度と構造部材の形伏
からの予測に基づくものであり、鋼材自体の耐座屈特性
に関する研究開発は殆どなされていないのが現状であ
る。
【0004】鋼構造物の耐座屈特性を向上させるため
に、降伏強度の高い鋼材を使用する場合、ー般に鋼材の
靭性の確保が難しくなり、鋼材の脆性破壊の懸念が高ま
るとともに、合金の含有量の増大にともなう鋼材の溶接
性の悪化により施工方法も難しくなる。したがって、耐
座屈特性に対する安全性の高い建築構造物や溶接構造物
を建造する場合、その施工コストを考慮するならば、使
用する降伏強度の高い鋼材は安易に選択できるわけでは
ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、同ー設
計の鋼構造物において、使用する鋼材自体の耐座屈特性
を向上させるために、鋼材全体の降伏強度を大幅に上昇
させることなく、鋼材表裏層部の降伏強度のみを鋼材板
厚内部よりも上昇させて鋼材全体の耐座屈特性を向上さ
せることにより、合金の多量添加による溶接性の悪化や
製造コスト増加を防止でき、且つ耐座屈特性の優れた溶
接構造用鋼板を製造することを技術課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために、以下に示す構成を手段とする。
【0007】(1)鋼板の表面及び裏面のそれぞれから
全板厚の5%以上20%以下の表裏層部に存在する結晶
粒の平均円相当径が板厚内部の平均円相当径の1/2以
下であることを特徴とする耐座屈特性に優れた溶接構造
用鋼板。
【0008】(2)鋼板の表裏層部の全板厚に対する比
率をSとし、表裏層部の降伏強度の板厚内部の降伏強度
に対する比をYとした場合に、Sが0.1以上0.4以
下の範囲にあり、かつ次の(A)式で求められる値Hが
8以上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた溶接
構造用鋼板。
【0009】 H=(Y−1)×(607×S0.03 −505) ・・・(A) (3)鋼板の表面及び裏面のそれぞれから全板厚の5%
以上20%以下の表裏層部の降伏強度が板厚内部の降伏
強度の1.1倍以上1.3倍以下の範囲にあることを特
徴とする耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板。
【0010】(4)重量%で、C:0.02〜0.2
%、Si:0.01〜1.0%、Al:0.0l〜0.
2%、Mn:0.3〜2.0%を含有し、残部がFe及
び不可避的不純物よりなることを特徴とする上記(1)
から(3)の内のいずれかひとつに記載の耐座屈特性に
優れた溶接構造用鋼板。
【0011】(5)重量%で、C:0.02〜0.2
%、Si:0.01〜1.0%、Al:0.01〜0.
2%、Mn:0.3〜2.0%を含有し、更に、Ti:
0.007〜0.020%、Nb:0.003〜0.0
20%、B:0.0003〜0.0010%、Cu:
0.1〜1.0%、Ni:0.1〜3.7%のうちから
1種類以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物より
なることを特微とする請求項1から3の内のいずれかひ
とつに記載の耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板。
【0012】(6)重量%で、C:0.02〜0.2
%、Si:0.01〜1.0%、Al:0.01〜0.
2%、Mn:0.3〜2.0%を含有し、残部がFe及
び不可避的不純物よりなる鋼片もしくは鋼板を、圧延途
中水冷時の板厚をtoとした場合、鋼板表面から板厚方
向に少なくとも0.05×to以上0.2×to以下の
表層部を、Ac3変態点以上の温度からAr3変態点以下
の温度まで2℃/sec以上の冷速で急冷後、前記表層
部がAr3変態点以下の温度で圧延を開始もしくは再開
し、前記表層部が板厚内部の顕熱で昇温中に圧延を行
い、圧延終了温度をAr3変態点以上Ac3変態点以下の
範囲とすることを特徴とする耐座屈特性に優れた溶接構
造用鋼板の製造方法。
【0013】(7)重量%で、C:0.02〜0.2
%、Si:0.01〜1.0%、Al:0.01〜0.
2%、Mn:0.3〜2.0%を含有し、更に、Ti:
0.007〜0.020%、Nb:0.003〜0.0
20%、B:0.0003〜0.0010%、Cu:
0.1〜1.0%、Ni:0.1〜3.7%のうちから
1種類以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物より
なる鋼片もしくは鋼板を、圧延途中水冷時の板厚をto
とした場合、鋼板表面から板厚方向に少なくとも0.0
5×to以上0.2×to以下の表層部を、Ac3変態
点以上の温度からAr3変態点以下の温度まで2℃/s
ec以上の冷速で急冷後、前記表層部がAr3変態点以
下の温度で圧延を開始もしくは再開し、前記表層部が板
厚内部の顕熱で昇温中に圧延を行い、圧延終了温度をA
3変態点以上Ac3変態点以下の範囲とすることを特徴
とする耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において、対象とする溶接
構造用鋼は、例えば特公昭58−14849号公報に記
載されているような通常の溶接構造用鋼であり、その所
要の材質特性を得るために、従来から当該分野で確認さ
れている作用及び効果に基づいて添加元素の種類とその
含有量を定めるものである。
【0015】本発明の対象とする溶接構造用鋼の成分元
素及びその添加量の限定理由を以下に示す。
【0016】Cは、鋼の強度を向上する有効な成分とし
て添加するものであるが、過剰に含有すると圧延後のフ
ェライトの粒成長が顕著でないために、0.02%〜
0.2%に規制する。
【0017】Siは溶鋼の脱酸元素として必要であり、
また強度増加元素として有用であるが、1.0%を超え
て過剰に添加すると、鋼の加工性を低下させ、溶接部の
靭性を劣化させる。また、0.01%未満では脱酸効果
が不十分なため、添加量を0.01〜1.0%に規制す
る。
【0018】Mnも脱酸成分元素として必要であり、
0.3%未満では鋼の清浄度を低下し、加工性を害す
る。また鋼材の強度を向上する成分として0.3%以上
の添加が必要である。しかし、Mnは焼入れ性を高め、
フェライト粒成長を遅延させすぎるため、2.0%を上
限とする。
【0019】Al及びNは、Al窒化物による鋼の微細
化の他、圧延過程での固溶、折出により、鋼の結晶方位
の整合及び再結晶に有効な働きをさせるために添加す
る。しかし、添加量が少ないときにはその効果がなく、
過剰の場合には鋼の靭性を劣化させるので、Al:0.
001〜0.2%、N:0.02%以下に限定する。
【0020】以上が、本発明が対象とする鋼の基本成分
であるが、母材強度の上昇のためにNi、Cu、Mo、
Nb、V等の合金元素を必要に応じて添加したり、ある
いは、継手靭性の向上のためにTi、B、Zr、希土類
元素、Mg、等を必要に応じて添加してもよい。この場
合には、炭素当量が高くなり過ぎるとフェライト粒成長
による低降伏強度化が達成できないので、本発明では、
Ni:3.7%以下、Cu:1.0%以下、Nb:0.
020%以下、Ti:0.020%以下、B:0.00
10%以下に規定して添加する。
【0021】座屈試験を行う場合、一般的に試験片の長
さによって座屈現象は異なり、試験片長さが長い場合は
弾性座屈が発生し、試験片長さが短い場合は弾塑性座屈
が発生することが知られている。
【0022】発明者らは、鋼板の座屈挙動を詳細に観察
するため、板厚24mmの鋼板から弾性座屈挙動を観察
するために、板幅50mm、長さ710mmの試験片を
製作し、そして弾塑性座屈挙動を観察するために板幅5
0mm、長さ500mmの試験片を製作し、これらの試
験片を用いて座屈試験を行った。
【0023】座屈試験途中で中断し、試験片の局所的な
降伏過程を詳細に観察した結果、試験片の表面から降伏
が開始し、板厚方向に降伏が伝播していく様子が知見さ
れた。そこで、上記の板表面から板厚方向ヘの降伏挙動
と座屈現象との関係を解明するために、鋼板表層から板
厚方向ヘ降伏強度分布を有する種々の試験片を座屈現象
を大変形までを考慮した弾塑性有限要素法モデルを用い
た解析を行うことにより、詳細な検討をおこなった。そ
の結果、鋼板表裏層部の降伏強度を板厚内部より高くす
ることにより、効果的に耐座屈特性を向上できることを
知見した。
【0024】図1に、鋼板表裏層部の降伏強度を板厚内
部の1.2倍に高くした場合において、前記表裏層部が
全板厚に占める比率(S)と初期降伏強度又は塑性崩壊
強度(最大強度)から見た耐座屈特性効果(E)との関
係について示す。
【0025】ここで、耐座屈特性効果(E)は、下記
(B)式のように定義付けられる。
【0026】 耐座屈特性効果(E)=(YPM−YPL)/(YPH−YPL)×100(%) ・・・(B) YPH:鋼板全体が高い降伏強度を有する試験片におけ
る初期降伏荷重又は塑性崩壊荷重の測定値 YPL:鋼板全体が低い降伏強度を有する試験片におけ
る初期降伏荷重又は塑性崩壊荷重の測定値 YPM:鋼板の表裏層部に高い降伏強度、板厚中心に低
い降伏強度を有する試験片における初期降伏荷重又は塑
性崩壊荷重の測定値 図1に示す長さ710mmの試験片の塑性降伏強度であ
る弾性座屈の塑性崩壊強度の曲線から、降伏強度の高い
(板厚中心部の1.2倍)組織を全厚の10%の表裏層
部に存在させるだけで、鋼板全体を高降伏強度化(板厚
中心部の1.2倍)した鋼板の弾性座屈の塑性崩壊強度
の60%に相当する耐座屈特性効果が得られることがわ
かる。また、長さ500mmの試験片の塑性崩壊強度で
ある弾塑性座屈の塑性崩壊強度の曲線から、降伏強度の
高い(板厚中心部の1.2倍)組織を板厚の40%の表
裏層部に存在させることにより、鋼板全体を高降伏化
(板厚中心部の1.2倍)した鋼板の弾塑性座屈の塑性
崩壊強度の70%に相当する耐座屈特性効果を得ること
ができる。
【0027】以上の初期降伏強度及び塑性崩壊強度のそ
れぞれから得られる耐座屈特性効果と表裏層部の存在範
囲の関係から、表裏層の所定領域の降伏強度を板厚中心
部よりも向上させることは、鋼板の耐座屈特性を向上さ
せるために極めて有効であることがわかった。
【0028】上記の耐座屈特性効果は、降状強度が高い
表裏層部の全板厚に占める比率(S)と板厚中心部に対
する表裏層部の降伏強度の比率(Y)に関係があると予
想し、特に鋼構造物の座屈安全性において重要な塑性崩
壊強度について、上記S及びYの異なる種々の試験片を
用いて座屈試験を行い、その時の塑性崩壊荷重を測定し
た。図2に、下記の(C)式で定義されるHパラメータ
と(B)式で定義される耐座屈特性効果(E)の関係を
示す。
【0029】 H=(Y−1)×(607×S0.03−505) ・・・(C) 本発明者らは、図2から工業的に鋼板全体を高降伏強度
化した鋼板の最低50%の塑性崩壊強度を確保するため
に、Hパラメータの値を8以上と定めた。
【0030】図3に、板厚中心部に対する表裏層部の降
伏強度の比率(Y)を変えた場合の表裏層部(高降伏強
度領域)の全板厚に占める比率(S)とHパラメータの
関係を示す。図3から、Y値がl.1倍以下の場合に
は、Sを増大させてもHパラメータが目標値の8より低
くなるため、Hパラメータを8以上にするためには、Y
が1.1以上にしなければならないことがわかる。ま
た、Yが1.1以上の場合において、Sの値が0.1以
下の領域では、Hパラメータの値が急峻に変化するする
ため、実用上、Sを0.1以上とした。ここで、Sが
0.4以下でもYが1.1以上の場合、所定のHパラメ
ータの値を確保できるため、製造コストなどの経済性を
考慮して、Sの上限を0.4とするのが好ましい。
【0031】次に、表裏層部の降伏強度を向上させるた
めの組織について検討した。
【0032】一般に鋼板の降伏強度は、その組織の粒径
に影響することが知られている。そこで、同ーの化学成
分を有する鋼板に種々の熱処理を行うことにより、組織
粒径を変化させて、降伏強度に及ぼす粒径の影響を調査
した。その結果として、図4に板厚中心部組織の円相当
径に対する表層部組織の円相当径の比率と板厚中心部の
降伏強度に対する表層部の降伏強度の比率(Y)の関係
を示す。図4から表層部の降伏強度を板厚中心部の降伏
強度の約1.1倍(約10%)向上させるためには、表
層部組織の粒径を板厚中心部組織の粒径の1/2以下に
する必要があることが分かった。また、表層部組織の粒
径を板厚中心部組織の粒径の1/10にしても表層部の
降伏強度は、板厚中心部の降伏強度の約1.1倍(約3
0%)程度であり、さらに粒径を微細化しても降伏強度
は、40%以上には高くならないことが予想できる。し
たがって、組織の微細化による製造コスト等の経済性の
悪化を考慮して、板厚中心部の降伏強度に対する表層部
の降伏強度の比率(Y)は、1.3を上限とすることが
好ましい。
【0033】鋼板表裏層部の粒径を板厚中心部より細粒
化させるための製造方法としては、特開平4−1415
17号公報に、表層部を冷却後、復熱中の圧延により表
層部の結晶粒径を顕著に細粒化する方法が開示されてい
る。本発明は座屈強度を向上させることが目的であるの
で、表裏層部の組織の細粒化領域の降伏強度が板厚中心
部に比べてより高い方が望ましい。したがって、本発明
の製造方法は、表裏層部の厚み、および表裏層部の降伏
強度を確保するために、Ac3点変態点以上の温度の鋼
片もしくは鋼板を、圧延途中水冷時の板厚をtoとした
場合、鋼板表面から板厚方向に少なくとも0.05×t
o以上0.2×to以下の表層部を2℃/sec以上の
冷速でAr3変態点以下の温度まで急冷後、当該表層部
がAr3変熊点以下の温度で圧延を開始もしくは再開
し、当該表層部が板厚内部の顕熱で昇温中に圧延を行
い、圧延終了温度をAr3変態点以上Ac3変態点以下の
範囲で圧延を終了することとした。
【0034】ここで、Ac3変態点以上の温度の鋼片も
しくは鋼板を用いるのは、組織がオーステナイト相とす
るためである。圧延途中水冷時の板厚をtoとした場
合、鋼板表面から板厚方向に少なくとも0.05×to
以上0.2×toの表層部を2℃/sec以上の冷速で
Ar3変態点以下の温度まで急冷するのは、降伏強度を
高くしたい領域のみを圧延中に微細なフェライト組繊に
変態させてしまうためであり、その後、当該表層部がA
3変態点以下の温度で圧延を開始もしくは再開し、A
3変態点以上Ac3変態点以下の範囲で圧延を終了する
のは、板厚内部の顕熱により当該表層領域の温度が復熱
していく過程で、圧下を加えることでフェライト組織を
さらに回復・再結晶により微細化し、表層部の組織粒径
を目標とする板厚内部の粒径の1/2以下の粒径に制御
するためである。
【0035】
【実施例】供試綱の成分を表1に、本発明例の製造条件
および得られた材質を比較例と共に表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】 座屈特性を評価するために、試験片幅が板厚の2倍、長
さが板厚の30倍(弾性座屈試験片)、および長さが板
厚の20倍の2種類の試験片(弾塑性座屈試験片)を作
製し、座屈試験を行った。座屈試験では、初期降伏強度
および塑性崩壊強度に相当する最大応力を求めた。
【0038】本発明例である試験番号1〜12は、表層
部の円相当粒径は内相部の1/2以下の粒径であり、表
層部が内層部より降伏強度が高くなっている。そのた
め、内層部の降伏強度が同程度の比較例と比べて、初期
降伏強度、塑性崩壊強度とも大きくなっている。本発明
例である試験番号7と比較例である試験番号16、試験
番号8と17、試験番号9と18、試験番号10と1
9、試験番号llと20、試験番号12と21は、それ
ぞれ内層部の降伏強度が同程度のものである。
【0039】これらの耐座屈特性を比較すると、本発明
例が優れていることがわかる。比較例13は所定の圧延
中途中水冷、昇温圧延を実施しているものの、圧延後の
温度が高かったので、残留転位密度が減少してしまい、
表層部のフェライト粒径が小さくなかったので、表裏層
の降伏強度が内層部と比べあまり変化せず、座屈強度は
本発明例より劣化した。
【0040】比較例14は、所定の昇温圧延を適用した
が、圧延途中の冷却が十分でなかったので、降伏強度の
高い表裏層部の厚みが十分でなく、座屈特性も本発明例
のレベルには達しなかった。
【0041】比較例l5は、所定の昇温圧延を適用した
が、圧延途中の冷却が十分すぎ、降伏強度の高い表裏層
部の厚みが板厚の50%程度と大きくなり、座屈特性も
良好であるが、本発明例の表裏層部の厚みが40%以下
の場合と比べ特に座屈特性が向上しているわけではなか
った。
【0042】
【発明の効果】以上詳述したように、例えば、建築物の
梁、柱や、船体の外板のように、座屈特性の問題になる
構造物に対し、本発明にかかる鋼板を使用することによ
り、強度上昇に伴う設計面および施工面での特別な配慮
を必要とせずに、高い座屈阻止性能を前記構造物に付与
することが可能となった。すなわち、鋼材そのものの強
度レベルを1ランク上昇させることなく、1ランク高い
座屈阻止特性を確保できることが可能になったのであ
る。
【0043】したがって、前記構造物をコストの上昇を
伴わずに、十分に確保することが可能となり、当業分野
はもちろん、関連分野にもたらす効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】高降伏強度を有する鋼板表裏層部の全板厚に占
める比率(S)と耐座屈特性効果(E)の関係を示す図
である。
【図2】Hバラメータと耐座屈特性効果(E)の関係を
示す図である。
【図3】板厚中心部の降伏強度に対する表裏層部の降伏
強度の比率を種々変化させた場合におけるそれぞれの高
降伏強度を有する鋼板表裏層部の全板厚にしめる比率
(S)とHパラメータの関係を示す図である。
【図4】板厚中心部組織の粒径に対する表裏層部組織の
粒径の比率と板厚中心部降伏強度に対する表裏層部降伏
強度の比率(Y)の関係を示す図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表面及び裏面のそれぞれから全板
    厚の5%以上20%以下の表裏層部に存在する結晶粒の
    平均円相当径が板厚内部の平均円相当径の1/2以下で
    あることを特徴とする耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼
    板。
  2. 【請求項2】 鋼板の表裏層部の全板厚に対する比率を
    Sとし、表裏層部の降伏強度の板厚内部の降伏強度に対
    する比をYとした場合に、Sが0.1以上0.4以下の
    範囲にあり、かつ次の(A)式で求められる値Hが8以
    上であることを特徴とする耐座屈特性に優れた溶接構造
    用鋼板。 H=(Y−1)×(607×S0.03−505) ・・・(A)
  3. 【請求項3】 鋼板の表面及び裏面のそれぞれから全板
    厚の5%以上20%以下の表裏層部の降伏強度が板厚内
    部の降伏強度の1.1倍以上1.3倍以下の範囲にある
    ことを特徴とする耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板。
  4. 【請求項4】 重量%で、C:0.02〜0.2%、S
    i:0.01〜1.0%、Al:0.0l〜0.2%、
    Mn:0.3〜2.0%を含有し、残部がFe及び不可
    避的不純物よりなることを特徴とする請求項1から3の
    内のいずれかひとつに記載の耐座屈特性に優れた溶接構
    造用鋼板。
  5. 【請求項5】 重量%で、C:0.02〜0.2%、S
    i:0.01〜1.0.%、Al:0.01〜0.2
    %、Mn:0.3〜2.0%を含有し、更に、Ti:
    0.007〜0.020%、Nb:0.003〜0.0
    20%、B:0.0003〜0.0010%、Cu:
    0.1〜1.0%、Ni:0.1〜3.7%のうちから
    1種類以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物より
    なることを特微とする請求項1から3の内のいずれかひ
    とつに記載の耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板。
  6. 【請求項6】 重量%で、C:0.02〜0.2%、S
    i:0.0.1〜1.0.%、Al:0.01〜0.2
    %、Mn:0.3〜2.0%を含有し、残部がFe及び
    不可避的不純物よりなる鋼片もしくは鋼板を、圧延途中
    水冷時の板厚をtoとした場合、鋼板表面から板厚方向
    に少なくとも0.05×to以上0.2×to以下の表
    層部を、Ac3変態点以上の温度からAr3変態点以下の
    温度まで2℃/sec以上の冷速で急冷後、前記表層部
    がAr3変態点以下の温度で圧延を開始もしくは再開
    し、前記表層部が板厚内部の顕熱で昇温中に圧延を行
    い、圧延終了温度をAr3変態点以上Ac3変態点以下の
    範囲とすることを特徴とする耐座屈特性に優れた溶接構
    造用鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 重量%で、C:0.02〜0.2%、S
    i:0.0.1〜1.0%、Al:0.01〜0.2
    %、Mn:0.3〜2.0%を含有し、更に、Ti:
    0.007〜0.020%、Nb:0.003〜0.0
    20%、B:0.0003〜0.0010%、Cu:
    0.1〜1.0%、Ni:0.1〜3.7%のうちから
    1種類以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物より
    なる鋼片もしくは鋼板を、圧延途中水冷時の板厚をto
    とした場合、鋼板表面から板厚方向に少なくとも0.0
    5×to以上0.2×to以下の表層部を、Ac3変態
    点以上の温度からAr3変態点以下の温度まで2℃/s
    ec以上の冷速で急冷後、前記表層部がAr3変態点以
    下の温度で圧延を開始もしくは再開し、前記表層部が板
    厚内部の顕熱で昇温中に圧延を行い、圧延終了温度をA
    3変態点以上Ac3変態点以下の範囲とすることを特徴
    とする耐座屈特性に優れた溶接構造用鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016160474A (ja) * 2015-02-27 2016-09-05 新日鐵住金株式会社 熱延鋼板及びその製造方法

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