JPH0985839A - 焼結構造体の製造方法 - Google Patents

焼結構造体の製造方法

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JPH0985839A
JPH0985839A JP7249560A JP24956095A JPH0985839A JP H0985839 A JPH0985839 A JP H0985839A JP 7249560 A JP7249560 A JP 7249560A JP 24956095 A JP24956095 A JP 24956095A JP H0985839 A JPH0985839 A JP H0985839A
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resin
photocurable resin
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JP7249560A
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Gakuden Tan
学伝 単
Masaki Yokohama
正毅 横浜
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Olympus Optical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】光造形法を応用焼結構造体、特に微小な三次元
構造体の製造方法を提供すること。 【解決手段】 光硬化性樹脂と粉末材料を混合・混練工
程において混合し、粉末混合光硬化樹脂を得る。本発明
では、粉末材料にソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物
を用い、光硬化性樹脂には可視光で分解する光重合開始
剤を含有させる。次いで、粉末混合光硬化性樹脂に光照
射を行い、所望の粉末混合樹脂成形体を作製する。次
に、作製した粉末樹脂成形体を樹脂除去工程と焼結工程
で処理することにより焼結構造体を得る。本発明の製造
方法で、効率的且つ簡便にマイクロマシンに適用しうる
焼結構造体を製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光造形技術を応用
して焼結構造体を製造する方法、特に微小な三次元焼結
構造体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】三次元微細構造物の製造技術として、近
年光造形技術が注目されている。また寸法的にもミリオ
ーダーの構造体や、直径数十μmの糸状の微細な三次元
構造体の作製ができるようになっている(高木太郎、中
島尚生、光造形法による微細加工、第3回光造形システ
ムシンポジウム、1992、P37〜41)。
【0003】従来の光造形法により三次元構造体を作製
する具体的な方法は、例えば図1のフローチャートに示
した工程を具備するものである。この造形法ではまず、
三次元CADに三次元構造物の図面を入力し(1)、該
三次元構造物に対して一定の厚みごとの水平方向のスラ
イス図形データ群を作成する(2)。次に、光により硬
化する光硬化性樹脂(エポキシアクリレート、ウレタン
アクリレートなどのオリゴマーに反応性希釈剤、光開始
剤を添加したもの)に昇降自在のエレベータを導入し、
該エレベータを所望の光硬化層の厚さが得られる一定層
厚の位置に移動させて固定し(3)、所望の形状に平面
的に光照射(光は、レーザービーム、例えば紫外線の波
長領域を持つエキシマレーザ(308nm)、He−C
dレーザ(325nm)、Arレーザ(351〜346
nm)、可視光硬化樹脂を使用する場合はArレーザ
(488nm)等を用いる。)し(4)、次いで所望の
形状が得られた後に光照射を停止する。その後、エレベ
ータを所望の光硬化層の厚さが得られる一定層厚分移動
させ(5)、上記(4)及び(5)の工程を行う。所望
の三次元構造体を得るまで、上記工程を繰り返し、光硬
化層を積層させる。その後、未硬化の光硬化性樹脂層を
洗浄し(7)最終的な製品が出来上る。
【0004】しかし、このような光造形法は、形状が複
雑な三次元構造体を連続した工程で一挙に作ることがで
きるものの、材料が樹脂に制限されているので、該三次
元構造体の強度、弾性特性及び耐熱特性などの面では、
機能性部品やマイクロマシーンの部品として使用できる
レベルに達していないのが現状である。
【0005】光造形法を応用した金属やセラミックの焼
結構造体の作製に関する提案が、特公平7−42482
に示されている。これは以下に記載する内容である。液
状の光硬化性樹脂中に金属やセラミック粉末を混合して
粉末樹脂混合体を作製し、得られた粉末樹脂混合体の成
分配合比を塗布層ごとに変化させ、光を照射することに
より樹脂を光硬化造形させ、粉末混合樹脂成形体を作製
する。その後、粉末混合樹脂造形体中の樹脂成分を燃焼
除去すると共に、金属やセラミック粉末を焼結して所望
形状の機能傾斜材料の焼結構造体を作製する光造形法で
ある。
【0006】また、化学修飾した金属アルコキシドの溶
液を出発原料として用い、微細パターニング薄膜を作製
するという提案がなされている(峠登:光感光性ゲル膜
の微細パターニングへの応用、高分子誌44巻4号(1
995)、p236)。この技術は以下に記載する内容
である。β−ジケトン類を修飾剤として用い、該β−ジ
ケトンの反応基を反応性の高い金属アルコキシドのアル
キル基の一部と置換し、生成された金属アルコキシドの
溶液から加水分解反応によりゲル膜を形成する。この膜
の吸収バンドが紫外領域に存在するので、このゲル膜を
紫外線で照射すれば、該ゲル膜の溶解度が変化する。例
えば、ベンゾイルアセトン(BzAcH)で修飾された
TiO2 のゲル膜は、未照射の状態ではアルコールに可
溶であるのに対して紫外線照射によって不溶化する。こ
のように紫外線照射によるゲル膜の溶解度の変化を利用
することによって、薄膜の微細パターニングが可能とな
る。
【0007】しかし、本発明者が鋭意研究した結果、混
合する粉末の材料によっては、下述の問題が起こること
が判明した。 (1)粉末の光透過率が極めて小さい場合、光を照射し
ても十分な硬化層の厚さが得られない。このため、硬化
層と硬化層の間の接着性が弱く、積層法による構造体の
作製が難しくなる。
【0008】(2)光硬化性樹脂中に混合された粉末は
凝集しやすく、粉末混合光硬化性樹脂の流動性が極めて
悪くなる。これによって光造形が難しくなる。 (3)粉末の材質によっては比重が大きいため、光硬化
性樹脂中で粉末が沈澱し、均一な粉末密度分布が得られ
ない。特に構造体を造形する時間が数時間以上に及ぶ場
合、粉末の沈澱により粉末密度分布を均一に保つのは極
めて困難である。
【0009】(4)金属アルコキシドの溶液から形成さ
れるゲル膜を紫外線で照射することによってゲル膜の溶
解度が変化するという特性を応用した薄膜の微細パター
ニング法については、前記のような特性を持つ金属アル
コキシドは極めて特例のもので、かつ金属アルコキシド
溶液の種類によって吸収波長が異なるので、三次元構造
体を製造するのは非常に特殊な場合に限られる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
の問題点を解決し、光造形法を応用して圧電材料のよう
な誘電体粉末やその他の機能性粉末を用いて、構造体特
に微小な三次元構造体を製造する方法を提供することで
ある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の
(1)から(3)に示す三次元焼結構造体の製造方法に
よって解決できる。 (1) 光硬化性樹脂と粉末材料とを混合した粉末混合
光硬化性樹脂を用いて焼結構造体を製造するための方法
であって、前記粉末混合光硬化性樹脂を、可視領域に発
光波長を有する光源を用いて、該可視領域の光により硬
化させ、粉末混合樹脂成形体を造形する光造形工程と、
該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉末成形体にす
る樹脂除去工程と、該粉末成形体を熱処理することによ
り焼結構造体にする焼結工程とを具備し、更に、前記粉
末材料が、ソフト系ジルコンチタン酸鉛粉末であるこ
と、および、前記粉末混合光硬化性樹脂が、可視領域に
発光波長を有する光源の発光波長帯域で該光硬化性樹脂
に硬化反応を開始させる光重合開始剤を含有することを
特徴とする焼結構造体の製造法。
【0012】(2) 光硬化性樹脂と粉末材料とを混合
した粉末混合光硬化性樹脂を用いて焼結構造体を製造す
るための方法であって、前記粉末混合光硬化性樹脂を光
により硬化させ、粉末混合樹脂成形体を造形する光造形
工程と、該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉末成
形体にする樹脂除去工程と、該粉末成形体を熱処理する
ことにより焼結構造体にする焼結工程とを具備し、更
に、前記光造形工程で用いる粉末が、前記粉末材料の粒
子表面を有機材料でコーティングした粉末であることを
特徴とする焼結構造体の製造法。
【0013】(3) 光硬化性樹脂組成物を用いて焼結
構造体を製造するための方法であって、前記焼結構造体
の構成元素を含む化合物を含有する溶液を光硬化性樹脂
と混合し、光硬化性樹脂組成物を調製する工程と、前記
光硬化性樹脂組成物に光を照射することによって一次成
形体を作製する一次成形体作製工程と、該一次成形体を
加熱乾燥処理して、焼結構造体の構成元素と光硬化樹脂
とからなる成形体を作製する工程と該焼結構造体の構成
元素と光硬化樹脂とからなる成形体から樹脂成分を除去
する樹脂除去工程と該樹脂除去工程で得られた該焼結構
造体の構成元素からなる成形体を熱処理することにより
焼結構造体にする焼結工程とを具備することを特徴とす
る焼結構造体の製造法。
【0014】以下に本発明を更に詳細に説明する。第一
の発明は、光硬化性樹脂と粉末材料とを混合した粉末混
合光硬化性樹脂を、可視領域に発光波長を有する光源を
用いて、該可視領域の光により硬化させ、粉末混合樹脂
成形体を造形する光造形工程と、該粉末樹脂成形体の樹
脂成分を除去して粉末成形体にする樹脂除去工程と、該
粉末成形体を熱処理することにより焼結構造体にする焼
結工程とを具備し、更に、前記粉末材料が、ソフト系ジ
ルコンチタン酸鉛粉末であること、および、前記粉末混
合光硬化性樹脂が、可視領域に発光波長を有する光源の
発光波長帯域で該光硬化性樹脂に硬化反応を開始させる
光重合開始剤を含有することを特徴とする焼結構造体の
製造法である。
【0015】本発明で使用する粉末材料は、焼結できる
無機酸化物粉末であり、好ましくはジルコンチタン酸鉛
系化合物の粉末である。ここで、ジルコンチタン酸鉛系
化合物とは、純粋なジルコンチタン酸鉛(PZT)また
は純粋なジルコンチタン酸鉛に鉛と同族の元素を微量添
加し、鉛を置換した化合物をいう。本発明では、これら
の内、ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物の粉末を使
用することが特に好ましい。ソフト系ジルコンチタン酸
鉛系化合物とは、上記ジルコンチタン酸鉛系化合物にソ
フト化添加物を加えたものをいう。ここで、ソフト化添
加物とは、Nb、W、Bi、Sb、Taまたはランタン
族元素の酸化物をいう。
【0016】ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物は、
以下の一般式で表される。 (Pb1-x Mex ) (Zr1-y Tiy ) O3 + αMo Me:鉛の同族元素(Ba,Sr,Mg,Ca) Mo:ソフト化添加物 x,y:組成比率,x=0〜0.2,y=0.1〜0.
9 α :添加量 このソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物は、光を吸収
する欠陥がソフト化添加物を添加することによって消滅
するので光透過性に優れている。とりわけ、これらの添
加物を5〜8原子%含み、Zr/Ti比が65/35の
組成であるものが大きな光透過性を有している。このよ
うなソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物の例として
は、例えば、ソフト化添加物にNb酸化物を添加したP
ZT、Pb(Zr0.65Ti0.35) O3 + 3mol%Nb
25 がある。
【0017】更に、本発明では、上記ソフト系ジルコン
チタン酸鉛系化合物に加え、ジルコンチタン酸鉛系化合
物にランタン元素が含有された、いわゆるPLZT系化
合物に、ソフト化添加物を加えたソフト系PLZT系化
合物も好適に使用することができる。
【0018】粉末材料の粒径は、光照射時の光の透過を
妨げず、且つ焼結構造体を効率よく製造することができ
る限り特に限定されないが、好ましくは0.1μmから
2μm、特に好ましくは0.2μmから1μmである。
【0019】本発明で使用する光硬化性樹脂は、光によ
って硬化しうるものであれば特に限定されるものではな
い。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等を挙げ
ることができる。具体的には、アクリロイル基を有する
モノマー又はオリゴマーであり、その骨格を構成する分
子構造により、ポリエステルアクリレート、ポリウレタ
ンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテル
アクリレート、シリコンアクリレート、オリゴアクリレ
ート等がある。
【0020】本発明では、上記光重合性樹脂を単独で
も、また複数組み合わせて使用することもできる。本発
明で使用される光重合開始剤は、可視領域に発光波長を
有する光源の発光波長帯域に吸収波長を有し、該可視領
域の波長の光を照射するによってラジカルを発生し、本
発明の粉末混合硬化樹脂の重合を開始させるものであ
る。この重合開始剤は、上記条件を満足するものであれ
ば特に限定されない。具体的には、2,4−ジエチルチ
オキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロ
ロ−4−プロポキシチオキサントン、4−ジメチル−9
H−チオキサントン−9−オンメソクライド、ビス(シ
クロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ)−
3−(ピル−1−イル)チタニウムがある。
【0021】上記のソフト系ジルコンチタン酸系化合物
やいわゆるPLZT系化合物は、紫外領域の波長を有す
る光の透過性がほぼ0%であるという特徴を有する。従
って、本発明においては、可視領域の光で硬化する光硬
化性樹脂を使用するか、可視領域の波長の光で分解し、
光硬化を起こさせる光る重合開始剤を用いる。
【0022】粉末混合光硬化性樹脂は、上記光硬化性樹
脂に光開始剤および上記ソフト系ジルコンチタン酸鉛を
混合することによって調製される。混合では、予め光硬
化性樹脂に光開始剤を添加し、これにソフト系ジルコン
チタン酸鉛を添加し、混合・撹拌を行う。この混合にお
いて、粉末混合光硬化性樹脂内に気泡が生じないように
脱法を行うことが好ましい。好ましくは、混合と脱泡を
同時に行う。混合・撹拌の方法は特に限定されないが、
脱泡と混合を同時に行うことができる撹拌・脱泡機又
は、遠心脱泡機を好適に使用しうる。
【0023】本発明の焼結構造体は、上記の粉末混合光
硬化性樹脂に可視光を照射し、粉末混合樹脂成形体を造
形し、該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉末成形
体を形成し、次いで該粉末成形体を熱処理することによ
り焼結して得ることができる。
【0024】粉末混合樹脂成形体を造形する装置には、
例えば図2に示すような装置を用いることができる。該
装置は、図2に示されるように、粉末混合光硬化性樹脂
4を収容する容器1と、該容器の底面に設置された石英
窓ガラス9と、造形用ベース5とエレベータ6と、光ビ
ーム3と、該光ビーム3をスキャンさせるために光源
(図示せず)を移動させるX−Yステージ7とエレベー
タ6を移動させるZステージ8と、支持ベース10より
構成されている。Zステージ8は、石英窓ガラス面に垂
直な方向(Z方向)に移動し、造形用ベース5と窓ガラ
ス9との相対位置、すなわち粉末混合樹脂成形体の硬化
層一層分の厚さを決定する。また、X−Yステージ7は
光ビームを走査させるために石英窓ガラス面に平行な方
向(X−Y方向)に移動する。石英窓ガラス9の粉末混
合光硬化性樹脂4との接触面は剥離性の良い材料(例え
ば、濡れ性の低いテフロンテープ等)で処理してある。
従って、この装置を用いて作製した粉末混合樹脂成形体
の一層分の硬化層は石英ガラス面に接着することなく造
形用ベース5と供に移動することができる。なお、図2
の装置概略図では、ステージ7とステージ8の動きを制
御するための制御機構及び、X−Yステージ7と光源の
光ビーム3の連結機構は省略してある。このような装置
を用い、粉末混合光硬化性樹脂に、光をスキャンさせな
がら光照射して光硬化層を形成し、該光硬化層を複数層
積み重ねて粉末混合光硬化性樹脂成形体を造形する。
【0025】具体的には、以下のような手順で造形す
る。容器1に上記のようにして得られた粉末混合光硬化
性樹脂4を入れ、次に、形成したい光成形体の一定厚み
分に相当する光硬化層を形成する。該硬化層は、まず、
Zステージを制御することによって造形用ベース5を石
英窓ガラス面から光硬化層一層分の厚さの位置に設置
し、これに、光源から光をパターン照射して粉末混合光
硬化性樹脂を硬化させることによって形成される。光源
は、可視光領域の波長の光、特に400nm以上に中心
波長を有する光を照射できるものであれば特に限定され
ない。例えば、アルゴンレーザを用いることができる。
粉末混合光硬化性樹脂には前記可視光領域の波長によっ
て分解し、ラジカルを発生し、粉末混合光硬化性樹脂に
硬化反応を起こさせる光重合開始剤が含まれているの
で、光重合反応が起こる。光硬化層一層分の走査が終了
したら、Zステージ8を制御し、エレベータ6および造
形用ベース5を次の硬化層の厚さ一層分だけ上昇させ
る。上述のように、石英窓ガラス9は剥離性の良い材料
で処理してあるので、得られた光硬化層は石英ガラス面
に接着することなく造形用ベース5に付着して該ベース
5と供に移動することができる。次に、X−Yステージ
7を用いて次の光硬化層を形成するための光走査を行
い、次の層の硬化を行う。この光硬化層の形成操作を所
定回数繰り返して行うことにより粉末混合光硬化性樹脂
成形体2を作製する。第一の発明では、特に、光硬化性
樹脂に可視光で硬化するものを使用すれば、光開始剤を
用いなくても光硬化を行うこともできる。
【0026】次に、作製した粉末混合光硬化性樹脂成形
体2の樹脂を除去する。この樹脂の除去には従来の何れ
の方法でも用いることができる。例えば、加熱による燃
焼除去がある。この燃焼除去の温度は光硬化性流動樹脂
の材質により多少異なるが昇温速度5℃/時間から30
0℃/時間で最高温度250〜800℃で燃焼除去を行
うことができる。
【0027】また、他の樹脂除去方法としては、溶媒に
より光硬化性樹脂を溶解させる方法がある。例えば、水
溶性タイプの光硬化性樹脂を粉末混合光硬化性樹脂に使
用すれば、上記のように形成された粉体混合光硬化性樹
脂成形体を水溶液または高湿度雰囲気中で処理すること
により樹脂成分を溶解除去することができる。
【0028】次に、得られた粉末混合造形体を焼結す
る。焼結は粉末混合造形体を高温加熱すればよい。加熱
温度および焼結時間は粉末の組成と粒子径にもよるが、
900〜1500℃、好ましくは、1000から130
0℃の温度、1時間から5時間、好ましくは1から3時
間焼結を行うことにより所望の焼結体を製造することが
できる。
【0029】本発明においては、上記焼結に加えて、熱
間等方加圧処理を行うこともできる。熱間等方加熱処理
は、高圧ガス発生装置、真空装置、油圧ユニット、炉構
造を有する圧力容器、冷却装置、加熱電源制御装置、安
全装置、製品ハンドリング装置等により構成された熱間
等方加熱処理装置によって行われる。
【0030】熱間等方加熱処理は、粉末の種類により条
件は異なるが、圧力300〜2000Kgf /cm2 で温度
350〜1950℃の範囲で行われうる。第二の発明
は、光硬化性樹脂と粉末材料とを混合した粉末混合光硬
化性樹脂を用い、前記粉末混合光硬化性樹脂を光により
硬化させ、粉末混合樹脂成形体を造形する光造形工程
と、該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉末成形体
にする樹脂除去工程と、該粉末成形体を熱処理すること
により焼結構造体にする焼結工程とを具備し、更に、前
記光造形工程で用いる粉末が、前記粉末材料の粒子表面
を有機材料でコーティングした粉末であることを特徴と
する焼結構造体の製造法である。
【0031】コーティングされうる粉末は、無機酸化物
粉末であれば特に限定されないが、上記第一の発明で説
明したソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物が好まし
い。粒子材料の粒径は、0.1μmから15μmであ
る。
【0032】上記の粉末材料を用い、有機材料をコーテ
ィングした光造形用粉末材料の製造方法について説明す
る。有機材料は、低粘度の熱硬化性樹脂を使用する。熱
硬化性樹脂は、造形工程後の樹脂除去工程で容易に除去
しうる樹脂が好ましい。具体的には、フェノール樹脂、
メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等のような樹脂
を使用することができる。
【0033】また、他のコーティング用有機材料として
は、光硬化性樹脂を使用することもできる。この場合、
使用することができる光硬化性樹脂は、上記第一の発明
で説明したものを挙げることができる。
【0034】更に、コーティング用有機材料には、上記
のようなものの他に、常温では固体で、加熱すると溶解
し粘度の低い液体になるもの、例えばパラフィンやワッ
クスも好適に使用することができる。
【0035】まず、低粘度の熱硬化性樹脂と粉末材料を
混合・混練し、混合体を製造する。この混合・混練の工
程では、熱硬化性樹脂にできる限りたくさんの粉末材料
を混合し、攪拌若しくは混練し、必要に応じて脱泡を併
用しながら均一に混合させる。熱硬化性樹脂と粉末材料
との混合比は、使用する熱硬化性樹脂の粘度および粉末
材料の平均粒径によって異なるが、該熱硬化性樹脂の粘
度が数10センチポイズ程度で、粉末材料の平均粒径が
10μm程度である場合、粉末材料を体積比で65%ま
で混合することができる。攪拌、混練もしくは脱泡には
真空攪拌器などを使用し、数時間〜数十時間にわたって
攪拌すれば良い。さらに必要に応じて50℃〜60℃に
加熱しながら攪拌してもよい。
【0036】次に、得られた混合体を加熱し、硬化体と
する。この熱硬化工程では、得られた粉末材料と熱硬化
性樹脂の混合体に熱を加えて、該混合体を硬化させる。
硬化体得るために混合体に熱を加える方法としては、
(1)電気加熱炉などを用いて該混合体を含有する容器
の全体を加熱する方法と、(2)赤外線ランプや赤外レ
ーザで該混合体を照射する方法などがある。(1)の加
熱方法では、混合体の温度が80℃〜100℃程度とな
ると熱硬化し始める。(2)の赤外線ランプや赤外レー
ザを用いる方法では、赤外線ランプやレーザの種類、出
力パワー、走査速度などを選定することにより、該混合
体を硬化させることができる。例えば、粉末体積比が6
0%の混合体を硬化させる場合、出力5WのYAGレー
ザを用い、30mm/秒以下の走査速度で照射すればよ
い。また該レーザの走査速度が5mm/秒であっても、
該混合体の照射される部分が硬化するときの発熱によっ
て周囲部分が硬化し、この周囲部分の硬化により、さら
に熱が発生し、更に周囲部分が硬化する。このような発
熱の伝播よって、該混合体全体が硬化し、硬化体を得る
ことができる。
【0037】次に得られた硬化体を粉砕・整粒する。こ
の粉砕・整粒工程では、前記硬化体を粉砕するか、或い
は他の方法で細かくすることにより、光造形用粉末材料
を製造する。前記硬化体を粉砕し、光造形用粉末材料を
製造するための方法は色々あるが、例えば乾式粉砕法或
いは湿式粉砕法を用いることができる。得られた光造形
用粉末材料の表面には有機材料の薄膜がコーティングさ
れるが、一粒の粉末材料がコーティングされた1次粒子
及び該1次粒子の集合体、即ち複数の粉末粒子の集合体
がコーティングされた2次粒子を形成している。
【0038】光硬化性樹脂を用いた場合は、樹脂の硬化
に光を照射する以外は、上記光造形用粒子材料の製造方
法と同様な手順を用いて光造形用粒子材料を得ることが
できる。
【0039】また、ワックスのような加熱により融解
し、低粘度の液体となる有機材料を用いる場合は、加熱
(例えばパラフィンであれば70から110℃、好まし
くは100℃)し、有機材料を融解する。次に、混合・
混練工程で、前記の温度を保ちながらできる限り多量の
粉末材料を混ぜ、攪拌や混練を行いながら、必要に応じ
て真空脱泡することにより有機材料と粉末材料を均一に
混合させる。該有機材料の溶液粘度が数10センチポイ
ズであれば、粉末の平均粒径が10μm程度である場
合、混合できる粉末の量は体積比で65%まで達成でき
る。次に、冷却硬化工程で、得られた混合体を攪拌また
は脱泡しながら、半硬化状態になるまで温度を下げる。
その後、攪拌を止める。該混合体は半硬化状態となって
いるので、攪拌を止めても混合体中の粉末は沈殿しな
い。更に、半硬化体を室温まで冷却させることにより硬
化させ、硬化体を得る。得られた硬化体を、上記粉砕・
整粒工程にかけ、目的の光造形用粉末材料を得ることが
できる。
【0040】以上のようにして得られた光造形用粉末材
料を使用して焼結構造体を製造する。該光造形用粉末材
料、光硬化性樹脂、および光開始剤の混合工程、粉末混
合樹脂成形体の造形工程、該成形体の樹脂成分除去工
程、および焼結工程は、上記第一の発明で説明したとお
りである。
【0041】光造形用粉末材料の熱硬化性樹脂は、樹脂
成分除去工程で除去される。この場合、熱硬化性樹脂
は、光硬化性樹脂と同時に除去することもできるが、光
硬化性樹脂とは別に除去してもよい。
【0042】第二の発明では、粉末材料として上記のよ
うな粒子表面を有機材料でコーティングした粉末を使用
する。有機材料で粉末材料をコーティングすることによ
り光の透過性が向上することになる。従って、第二の発
明では、以下のように変更を加えることができる。即
ち、第一の発明では、可視光を用いて光硬化を行った
が、第二の発明では、紫外光を使用して光硬化を行うこ
とができる。従って、樹脂としては、紫外光領域の光で
硬化する光硬化性樹脂を光重合開始剤なしで使用するこ
ともできる。また、光重合開始剤を使用する場合でも、
上記可視領域の光で光硬化を開始させる光重合開始剤の
他に、光重合開始剤として、ジヒドロキシアセトフェノ
ン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパ
ン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、イソブ
チルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエー
テル等のベンゾインエーテル系重合開始剤、ベンジルメ
チルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニル
ケトン等のベンジルケタール系重合開始剤、ベンゾフェ
ノン、2−クロロチオキサントン等のケトン系重合開始
剤等を使用することができる。光開始剤の添加量および
添加時期は、上記第一の発明と同様である。また、光源
としてはX線光源、紫外線光源等も使用しうる。
【0043】第三の発明は、光硬化性樹脂組成物を用い
て焼結構造体を製造するための方法であって、前記焼結
構造体の構成元素を含む化合物を含有する溶液を光硬化
性樹脂と混合し、光硬化性樹脂組成物を調製する工程
と、前記光硬化性樹脂組成物に光を照射することによっ
て一次成形体を作製する一次成形体作製工程と、該一次
成形体を加熱乾燥処理して、焼結構造体の構成元素と光
硬化樹脂とからなる成形体を作製する工程と、該焼結構
造体の構成元素と光硬化樹脂とからなる成形体から樹脂
成分を除去する樹脂除去工程と、該樹脂除去工程で得ら
れた焼結構造体の構成元素からなる成形体を熱処理する
ことにより焼結構造体にする焼結工程とを具備すること
を特徴とする焼結構造体の製造法である。
【0044】第三の発明は、焼結構造体の構成元素を含
む化合物を含有する溶液を使用することにより粉末材料
を使用しないので、粉末材料による光透過性の低下およ
び光硬化性樹脂との混合時に粉末材料が沈殿することに
よる粉末混合光硬化性樹脂の不均一性の問題を回避する
ことができる。
【0045】焼結構造体の構成元素を含む化合物を含有
する溶液は、目的の焼結構造体が得られるように各構成
元素を含有する化合物を適宜混合して得られる。上記ソ
フト系ジルコンチタン酸鉛系化合物を構成元素とする焼
結構造体を製造する場合は、例えば、酢酸鉛[Pb(C
3 COO)2 ]、酢酸ストロンチウム[Sr(CH3
COO)2 ]、イソプロピルチタン[Ti(iso −OC
374 ]、イソプロピルジルコニウム[Zr(iso
−OC374 ]、イソプロピルニオビウム[Nb
(iso −OC375 ]のような有機金属化合物を適
切な溶媒に溶解し、焼結構造体の構成元素を含む化合物
を含有する溶液を調製する。この他にも、Cu(CH3
COO)2 、Ti(OC254 、Ti(OC4
94 、Si(OC254 、Zr(OCH34
6 (OC494 等のような化合物を使用すること
ができる。溶媒は、光硬化性樹脂と混合する場合の溶媒
と同系統の溶媒を使用することができる。具体的には、
2−メトキシエタノール等のアルコール系溶媒が適切で
ある。焼結構造体の構成元素を含む化合物の混合方法は
特に限定されない。通常の溶液の撹拌混合方法を使用す
ればよい。
【0046】次いで、焼結構造体の構成元素を含む化合
物を含有する溶液と光硬化性樹脂を混合し、光硬化性樹
脂組成物を調製する。混合は、焼結構造体の構成元素を
含む化合物を含有する溶液と光硬化性樹脂を適切な溶媒
を用いて混合する。溶媒は、焼結構造体の構成元素を含
む化合物を含有する溶液を調製するときに使用した溶
媒、即ち2−メトキシエタノール等のアルコール系溶媒
が好ましいが、これに限定されない。混合には、上記焼
結構造体の構成元素を含む化合物を含有する溶液と光硬
化性樹脂を均一に混合する方法であれば特に限定するこ
となく使用することができる。第三の発明で使用しうる
光硬化性樹脂は、上記第一および第二の発明で説明した
光硬化性樹脂を挙げることができる。また、光重合開始
剤も上記第一の発明および第二の発明で説明した光重合
開始剤を使用することができる。
【0047】光開始剤の添加量および添加時期は、上記
第一の発明と同様である。焼結構造体の構成元素を含む
化合物を含有する溶液と光硬化性樹脂との混合割合は、
体積比が80:20〜40:60であることが好まし
く、60:40から50:50が特に好ましい。
【0048】得られた光硬化性樹脂組成物に光を照射す
ることによって一次成形体を作製する工程は、第一の発
明と同様にして行うことができる。得られた一次形成体
は、次に加熱乾燥処理工程で加熱乾燥処理される。該加
熱乾燥処理工程は、作製した一次成形体を水蒸気雰囲気
中で80から120℃好ましくは100℃前後で加熱
し、焼結構造体の構成元素を含む化合物を加水分解さ
せ、焼結構造体の構成元素からなる形成体とアルコール
成分等を生成させる。生成した不要な前記アルコール成
分等は加熱処理によって揮発する。次いで、得られた焼
結構造体の構成元素からなる形成体を180から220
℃、好ましくは200℃前後で3から10時間、好まし
くは4から6時間にわたり乾燥し、不要な有機溶剤を全
て蒸発させる。これによって、焼結後の焼結構造体の構
成元素と光硬化性樹脂成分のみを含有した成形体が生成
される。得られたこの焼結構造体の構成元素と光硬化性
樹脂成分とからなる成形体を、次に樹脂成分除去工程に
かけ、光硬化性樹脂成分を除去する。樹脂成分除去工程
は、上記第一の発明および第二の発明で説明した方法を
そのまま適用することができる。
【0049】得られた焼結構造体の構成元素からなる成
形体は、次に焼結構造体となるように焼結工程にかけら
れる。焼結工程は、上記第一の発明で説明したとおりで
ある。
【0050】
【発明の実施の形態】
実施例1 図2と図3を用いて本発明による実施例1を示す。図2
は本実施例による製造方法で用いる装置の概略図であ
り、図3はこの装置を用いて焼結構造体を製造する為の
フローチャート図である。図2に示した本実施例で用い
る装置は、粉末混合光硬化性樹脂4を収容する容器1
と、該容器の底面に設置された石英窓ガラス9と、造形
用ベース5とエレベータ6と、光ビーム3と、該光ビー
ム3をスキャンさせるために光源(図示せず)を移動さ
せるX−Yステージ7とエレベータ6を移動させるZス
テージ8と、支持ベース10より構成されている。石英
窓ガラス9の粉末混合光硬化性樹脂4との接触面は剥離
性の良い材料で処理してある。従って、この装置を用い
て作製した粉末混合樹脂成形体の一層分の硬化層は石英
ガラス面に接着することなく造形用ベース5と供に移動
することができる。Zステージ8は、石英窓ガラス面に
垂直な方向(Z方向)に移動し、造形用ベース5と窓ガ
ラス9との相対位置、すなわち粉末混合樹脂成形体の硬
化層一層分の厚さを決定する。また、X−Yステージ7
は光ビームを走査させるために石英窓ガラス面に平行な
方向(X−Y方向)に移動する。なお、図2の装置概略
図では、ステージ7とステージ8の動きを制御するため
の制御機構及び、X−Yステージ7と光源の光ビーム3
の連結機構を省略した。
【0051】また、本実施例の製造工程は、図3のフロ
ーチャートで示されるように、光硬化性樹脂と粉末材料
の混合・混練工程S1と光造形工程S2と、樹脂除去工
程S3と焼結工程S4とからなる。
【0052】本実施例は図3に示した手順で進められ
る。図2の本実施例に用いる製造装置を参照しながら本
実施例の製造法を説明する。まず、混合・混練工程S1
では、必要に応じて脱泡を行ないながら光硬化性樹脂と
粉末材料101とを混練・攪拌、または攪拌する。この
工程S1は、通常の攪拌機を用いて好適に行うことがで
きる。前記工程S1により粉末混合光硬化性樹脂4を得
る。
【0053】本実施例で使用しうる粉末材料は、機能性
材料粉末であり、例えば焼結可能な無機酸化物粉末を好
適に用いることができる。具体的には圧電材料であるP
b(Zr1-x Tix ) O3 系、即ちジルコンチタン酸鉛
(PZT)系の粉末を用いることができる。更に詳記す
るとNbまたはLaのいわゆるソフト化添加物を添加し
たソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物を使用すること
ができる。このソフト系PZTは光を吸収する欠陥がソ
フト化添加物を添加によって消滅するので透光性に優れ
ている。とりわけ、これらのソフト化添加物を5〜8原
子%含み、Zr/Ti比が65/35の組成が大きな透
光性を有している。本実施例では、ソフト化添加物とし
てニオブ酸化物を含有するソフト系ジルコンチタン酸鉛
系化合物を使用したが、その組成はPb(Zr0.65Ti
0.35) O3 +3mol%Nb25 である。ソフト系ジ
ルコンチタン酸鉛系化合物の粉末材料101の製造法と
しては、たとえばゾル−ゲル法を好適に用いることがで
きる。該粉末材料101は、紫外領域の光透過性が非常
に弱く、その光透過率は0%に近い。このため、該粉末
材料101と光硬化性樹脂とを混合して得られる粉末混
合光硬化性樹脂4を用いて、He−Cdレーザあるいは
高圧水銀灯で光造形を行うと、十分な硬化深さが得られ
ない。このため、得られた薄い硬化層の表面にべたつき
が生じ、硬化層と硬化層の間の接着性が悪くなり、積層
法による成形体の作製は不可能である。一方、粉末材料
の光透過率は、光の波長が長くなるにつれ大きくなるの
で、粉末混合光硬化性樹脂4の光透過率も、照射光の波
長が長くなるにつれて大きくなる。従って、粉末混合光
硬化性樹脂4の光透過率と照射光波長の関係に基づい
て、光源の波長と該光源の波長で硬化する光硬化性樹脂
若しくは光重合開始剤をうまく選定すれば、良好な硬化
層を形成することができる。本発明では、可視光または
400nm以上の波長に中心波長を有する光源を用い、
該光源の光で分解する光重合剤を使用した。具体的に
は、光源としてアルゴンレーザー等を用い、光開始剤に
2,4−ジエチルチオキサントン、または、イソプロピ
ルチオキサントンを用いた。
【0054】本実施例で使用しうるソフト系ジルコンチ
タン酸鉛のもう一つの例は、Pb0.97La0.07( Zr
0.65Ti0.35) O3 ( PLZT)である。この組成を有
する粉末材料101の製造法としては、例えばゾル−ゲ
ル法がある。このPLZT粉末材料も紫外領域では光透
過率が0に近い。このため、PLZT粉末と紫外線硬化
性樹脂若しくは紫外線で分解する光重合開始剤の混合物
を用いて、例えばHe−Cdレーザで光造形を行うと十
分な硬化深さが得られず、積層法による構造体の作成は
不可能となる。PLZT粉末材料101は380nmよ
り長い波長の光に対してはニオブを添加した上記ソフト
系ジルコンチタン酸鉛系化合物粉末に比べ透過性がよ
く、光の波長が長くなるほど光に対する透過率が大きく
なるという特長を持っている。従って、上記ソフト系ジ
ルコンチタン酸鉛系化合物と同様に、本実施例で好適に
使用することができる。
【0055】また、本発明で使用しうる光硬化性樹脂
は、光によって硬化しうるものであれば特に限定されな
い。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等を挙げ
ることができる。具体的には、アクリロイル基を有する
モノマー又はオリゴマーであり、その骨格を構成する分
子構造により、ポリエステルアクリレート、ポリウレタ
ンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテル
アクリレート、シリコンアクリレート、オリゴアクリレ
ート等がある。
【0056】本発明では、上記光重合性樹脂を単独で
も、また複数組み合わせて使用することもできる。更
に、光硬化性樹脂には、前記光源からの光3の波長によ
って分解する光重合開始剤を含有する。本実施例では、
2,4−ジエチルチオキサントンを含有する樹脂を使用
した。
【0057】得られた粉末混合硬化性樹脂4は図2の容
器1に入れる。本実施例では光源にアルゴンレーザ或い
は400nm以上に中心波長を有する光源、即ち可視光
源を用いる。実際には、アルゴンレーザーを使用した。
次に、光造形工程S2は、以下の手順で進められる。ま
ず(1)三次元CADにより製造しようとする三次元モ
デルを作製する。(2)該三次元モデルから一定の積層
厚みごとに水平方向のスライス図形データ群を作成す
る。次に、(3)容器1に粉末混合光硬化性樹脂4を導
入し、更にエレベータ6と造形用ベース5を導入する。
造形用ベース5が、容器底面の石英ガラス面から一定の
厚みになるようにZステージ8を調節し、造形用ベース
5を固定する。次に、(4)X−Yステージ7を用い
て、構造体モデルのスライスデータに基づいて光ビーム
3を走査させ、粉末混合光硬化性樹脂4を硬化させる。
更に(5)硬化層一層分の走査が終了してから、Zステ
ージ8を制御し、エレベータ6を次の硬化層の厚さ一層
分だけ上昇させ、粉末樹脂混合体4を粉末混合光硬化性
樹脂の硬化層と石英ガラスの間に流れ込むようにする。
(6)X−Yステージ7を用いて光ビーム3を走査させ
ることにより、次の層の硬化を行う。以上の(4)、
(5)および(6)の操作を所定回数繰り返して行うこ
とにより粉末混合樹脂成形体2を作製する。本実施例で
は、特に、光硬化性樹脂に可視光で硬化するものを使用
すれば、光開始剤を用いなくても光硬化を行うことがで
きる。
【0058】次に、作製した粉末樹脂成形体2を樹脂除
去工程S3と焼結工程S4で処理することにより、焼結
構造体が得られる。作製した粉末混合光硬化性樹脂成形
体2の樹脂を除去する樹脂除去工程について説明する。
この樹脂の除去には従来の何れの方法でも用いることが
できる。例えば、加熱による燃焼除去がある。この燃焼
除去の温度は光硬化性流動樹脂の材質により多少異なる
が昇温速度5℃/時間から300℃/時間で最高温度2
50〜800℃で燃焼除去を行うことができる。
【0059】また、他の樹脂除去方法としては、溶媒に
より光硬化性樹脂を溶解させる方法がある。例えば、水
溶性タイプの光硬化性樹脂を粉末混合光硬化性樹脂に使
用すれば、上記のように形成された粉体混合光硬化性樹
脂成形体を水溶液または高湿度雰囲気中で処理すること
により樹脂成分を溶解除去することができる。
【0060】次に、得られた粉末混合造形体を焼結する
焼結工程を説明する。焼結は粉末混合造形体を高温加熱
すればよい。加熱温度および焼結時間は、粉末の組成と
粒子径にもよるが、900から1500℃、好ましくは
1000から1300℃の温度、1時間から5時間、好
ましくは1から3時間焼結を行うことにより所望の焼結
体を製造することができる。
【0061】本実施例においては、上記焼結に加えて、
熱間等方加圧処理を行なってもよい。熱間等方加熱処理
は、高圧ガス発生装置、真空装置、油圧ユニット、炉構
造を有する圧力容器、冷却装置、加熱電源制御装置、安
全装置、製品ハンドリング装置等により構成された熱間
等方加熱処理装置によって行われる。
【0062】熱間等方加熱処理は、粉末の種類により条
件は異なるが、圧力300〜2000Kgf /cm2 で温度
350〜1950℃の範囲で行われうる。以上の手順
で、マイクロマシン等に使用しうる優れた焼結構造体を
得ることができた。
【0063】以下に、前記粉末材料を使用する場合は、
可視光を使用することが好適であること、特に光重合開
始剤を用いない場合に可視光を用いることが好適である
ことを明確にするための実験例を示す。本実施例で使用
するソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物またはPLZ
T粉末を粉末材料として使用し、光硬化性樹脂を混合し
た粉末混合光硬化樹脂(但し、該粉末混合光硬化性樹脂
には光重合開始剤は含まれていない。)を用いて硬化実
験を行った。
【0064】実験1 本実験は、ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物と紫外
線硬化性樹脂よりなる粉末混合光硬化性樹脂を用いる場
合の硬化実験である。実験は以下の手順に従って行っ
た。
【0065】(1)粒径の分布が0.2μm〜1μmで
あるソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物(Pb(Zr
0.65Ti0.35)O3 +3mol%Nb25 )の粉末材
料101と紫外線硬化性樹脂(スリーボンド製、樹脂名
3042、3046等)とを混合し、該粉末材料の体積
比が約15%の粉末混合光硬化性樹脂4を作製する。
【0066】(2)次に、該粉末混合光硬化性樹脂4を
ガラス容器(粉末混合光硬化性樹脂の薄硬化膜が得られ
るような形状の容器;約20ml)に入れる。 (3)光を粉末混合光硬化性樹脂4の入ったガラス容器
の上方から20秒間照射する。これにより、該粉末混合
光硬化性樹脂4が容器の上方表面から硬化する。
【0067】(4)硬化された薄膜(硬化膜)を取り出
して、エタノールなどの溶媒で洗浄する。 (5)該硬化膜の厚さを測り、光を照射した側と、その
反対側の硬化度を観察する。硬化厚さが厚く、しかも硬
化膜表面のべたつきがないほうが硬化特性が良いと評価
し、使用した光の波長と粉末混合光硬化性樹脂を用いれ
ば効果的に粉末混合樹脂成形体を作製することができる
と判断する。
【0068】以下に得られた結果を述べる(表1参
照)。 実験1−1:出力10Wの高圧水銀灯(250〜46n
mの波長領域の光を発するが、主波長領域は紫外領域で
ある。)を用いる場合 20秒間露光した後の硬化膜の観察の結果、粉末混合光
硬化性樹脂の硬化厚さは20μmであり、硬化膜の表面
にはべたつきがあった。
【0069】実験1−2:He−Cdレーザ(325n
mの波長を有する光を発する)を用いる場合 ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物粉末材料は、紫外
線の波長に対しても僅かであるが透過性を有するため、
20秒間光照射すると20μmの硬化深さが得られる。
しかし、表面にはべたつきがあった。
【0070】積層法により粉末混合成形体を作製する場
合、上記実験1−1および1−2ようなべたつきがある
と硬化層と硬化層の間の接着性が不十分となり、十分な
粉末混合成形体を作製することができない。結果とし
て、焼結構造体を作製することは不可能である。
【0071】実験1−3:アルゴンレーザ(488nm
と514nmの波長を有する光を発する)を用いる場合 紫外線硬化性樹脂の光吸収波長がアルゴンレーザの波長
と一致しないため、20秒間露光しても、粉末混合光硬
化性樹脂は硬化しなかった。
【0072】
【表1】
【0073】実験2 ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物の粉末と可視光硬
化性樹脂からなる粉末混合光硬化性樹脂を用いた硬化実
験を示す(表2参照)。
【0074】ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物は上
記実験1と同じ化合物を使用し、可視光硬化性樹脂は吸
収波長が480nm〜500nmにあるものを使用し
た。実験方法は実験1と同様である。
【0075】実験2−1:出力10Wの高圧水銀灯を用
いる場合 この光源は、250nm〜460nmまでの間にいくつ
かのピーク波長を持つが、主ピークの波長領域は紫外領
域にあり、可視光硬化性樹脂の吸収波長付近の460n
m付近の波長は、強度が弱い。
【0076】20秒間の光照射で本実験の粉末混合光硬
化性樹脂の硬化厚さは、約50μmであった。また、硬
化膜の表面にはべたつきがある。 実験2−2:He−Cdレーザを用いる場合 可視光硬化性樹脂の吸収波長領域がHe−Cdレーザの
光の波長領域と一致しないため、20秒間の露光では、
本実験の粉末混合光硬化性樹脂は硬化しなかった。
【0077】実験2−3:アルゴンレーザを用いる場合 20秒間の露光時間で約150μmの硬化深さが得ら
れ、且つ表面のべたつきはなかった。従って、積層法に
より粉末混合樹脂成形体を形成する場合、硬化層と硬化
層との接着性がよいと推定できる。
【0078】実際に、光源としてアルゴンレーザ、体積
比15%のソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物の粉末
101と可視光硬化性樹脂とを混合した粉末混合光硬化
性樹脂を用いて、第一の発明に従って、直径0.8mm
×高さ1.2mm程度の良好な粉末混合樹脂成形体2を
作製することができた。
【0079】
【表2】
【0080】実験3 本発明の方法が有効であることを更に説明するために、
種々の粉末材料および可視光硬化性樹脂を用い、該粉末
材料および可視光硬化性樹脂の体積比を変えて硬化実験
を行った。実験は、以下の手順に従った。
【0081】(1)平均粒径0.2μmのソフト系ジル
コンチタン酸鉛系化合物[Pb(Zr0.65Ti0.35)O
3 +3mol%Nb25 ]またはPLZT[Pb0.93
La0.07(Zr0.65Ti0.35)O3 ]の粉末を可視光硬
化性樹脂と混合し、粉末材料と可視光硬化性樹脂との粉
末混合光硬化性樹脂4を作製する。該可視光硬化性樹脂
の吸収波長と一致した光の波長を有するアルゴンレーザ
を光源に用いた。
【0082】(2)次に、該粉末混合光硬化性樹脂4を
ガラス容器(粉末混合光硬化性樹脂の薄硬化膜が得られ
るような形状の容器;約20ml)に入れる。 (3)光を粉末混合光硬化性樹脂4の入ったガラス容器
の上方から20秒間照射する。これにより、該粉末混合
光硬化性樹脂4が容器の上方表面から硬化する。
【0083】(4)硬化された薄膜(硬化膜)を取り出
して、エタノールなどの溶媒で洗浄する。 (5)該硬化膜の厚さを測り、光を照射した側と、その
反対側の硬化度を観察する。硬化厚さが厚く、しかも硬
化膜表面のべたつきがないほうが硬化特性が良いと評価
し、使用した光の波長と粉末混合光硬化性樹脂を用いれ
ば効果的に粉末混合樹脂成形体を作製することができる
と判断する。
【0084】(6)図2の製造装置を用い、図3に示し
た製造方法で粉末混合成形体2を製造し、製造の難易を
判断する。以下に実験の結果を示す(表3参照)。
【0085】実験3−1:体積比15%でソフト系ジル
コンチタン酸鉛系化合物を含有する粉末混合光硬化性樹
脂を用い、光源に出力15Wのアルゴンレーザを用いる
場合 20秒間の露光時間で、粉末混合光硬化性樹脂の硬化厚
さは約150μmであった。しかも、硬化膜の表面のべ
たつきがなく、積層法により粉末混合樹脂成形体を形成
する場合、硬化層と硬化層との接着性がよいと推定でき
た。図2の製造装置を用い、図3に示した製造方法で直
径0.8mm×高さ1.2mm程度の硬化層間の接着が
十分な粉末混合樹脂成形体2が製造できた。
【0086】実験3−2:体積比25%でソフト系ジル
コンチタン酸鉛系化合物を含有する粉末混合光硬化性樹
脂を用い、光源に出力15Wのアルゴンレーザを用いる
場合 20秒間の露光時間で、粉末混合光硬化性樹脂の硬化厚
さは約40μmであった。硬化膜の表面にはべたつきが
僅かに見られたため、積層法により粉末混合樹脂成形体
を形成する場合、硬化層と硬化層との接着性はよくない
と推定した。図2の製造装置を用い、図3に示した製造
方法に従って、粉末混合樹脂成形体を製造したが、硬化
層間の接着が不十分な成形体しか得られなかった。
【0087】実験3−3:体積比15%でソフト系ジル
コンチタン酸鉛系化合物を含有する粉末混合光硬化性樹
脂を用い、光源に出力15Wのアルゴンレーザを用いる
場合 20秒間の露光時間で、粉末混合光硬化性樹脂の硬化厚
さは200μm程度であった。しかも硬化膜の表面のべ
たつきがなく、積層法により粉末混合樹脂成形体を形成
する場合、硬化層と硬化層との接着性がよいと推定でき
た。図2の製造装置を用い、図3に示した製造方法で直
径0.8mm×高さ1.2mm程度の硬化層間の接着が
十分な粉末混合樹脂成形体2が製造できた。
【0088】実験3−4:体積比25%でソフト系ジル
コンチタン酸鉛系化合物を含有する粉末混合光硬化性樹
脂を用い、光源に出力15Wのアルゴンレーザを用いる
場合 20秒間の露光時間で、粉末混合光硬化性樹脂の硬化厚
さは120μm程度であった。しかも硬化膜の表面のべ
たつきがなく、積層法により粉末混合樹脂成形体を形成
する場合、硬化層と硬化層との接着性がよいと推定でき
た。図2の製造装置を用い、図3に示した製造方法で直
径1.0mm×高さ1.2mm程度の硬化層間の接着が
十分な粉末混合樹脂成形体2が製造できた。
【0089】上記実験3−2と実験3−4を比較する
と、実験3−2では実験3−4に比べ硬化膜の厚さが薄
く、粉末混合樹脂成形体も十分なものが得られていな
い。これは、PLZT粉末の中にランタンの成分が含ま
れているため、粉末の光透過性がソフト系ジルコンチタ
ン酸鉛系化合物の場合より若干良くなり、ソフト系ジル
コンチタン酸鉛系化合物に比べ良好な光硬化層が得られ
たためと考えられる。
【0090】比較実験 上記ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物(従来例1)
またはPLZTの粉末(従来例2)と紫外線硬化性樹脂
から構成される粉末混合光硬化性樹脂を調製し、表3に
示すような照射光波長で硬化実験を行った。粉末材料の
含有率は、体積比で15%である。
【0091】ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物の粉
末を含有する粉末混合光硬化性樹脂を用いる場合、表3
に示されるように硬化層の厚さは20μm以下であり、
十分な硬化層を得ることができなかった。図3に従っ
て、粉末樹脂成形体を製造したが、十分な成形体を得る
ことはできなかった。
【0092】また、体積比15%でPLZT粉末を含有
する粉末混合光硬化性樹脂を用いた場合も、表3に示さ
れるように硬化層の厚さは20μm以下であり、十分な
厚さの硬化層を得ることはできなかった。図3に従って
粉末混合樹脂成形体は製造できなかった。
【0093】
【表3】
【0094】以上のように本実施例によれば可視領域に
光透過波長帯域を有する粉末材料と可視領域に発光波長
帯域を有する光源を用いることにより、粉末混合光硬化
性樹脂に十分光が透過することとになり、硬化層の厚さ
が厚くなるという効果がある。さらにジルコンチタン酸
鉛系化合物にソフト化添加物を一種または複数種添加す
ることにより、硬化層の厚さはより厚くなる。
【0095】勿論、本実施例には、色々な変形例が考え
られる。例えば粉末材料101は先記した酸化物原料を
用いるのではなく、いわゆるゾル−ゲル法によるPZT
粉末でも良いし、共沈法によるものでもよい。さらには
必ずしもPZT系材料でなくてもよく、例えば、イット
リア、ジルコニア、チタニア等の透光性に優れた無機酸
化物でもこれらの光透過特性に応じた光源や光硬化性樹
脂を選定することにより優れた粉末混合樹脂成形体、並
びに焼結構造体を得ることができる。
【0096】また、上記実験例では光重合開始剤を用い
ない例を示したが、上記実施例で示したように可視光で
分解する光開始剤を用いれば、紫外線硬化性樹脂を用い
ても良好な粉末混合樹脂成形体を得ることができる。
【0097】実施例2 図4、図5および図6は本発明の実施例2を説明するた
めの図である。図4は本侍史例の製造方法を示すフロー
チャート図であり、図5は光造形用粉末材料301の製
造工程S00を示すフロチャート図であり、図6は粉末
製造工程S00において製造された光造形用粉末材料3
01の形状を示す図である。
【0098】本実施例で用いる光造形用の製造装置は実
施例1の製造装置と同様のものである。本実施例の焼結
構造体の製造工程は、図4に示したフローチャートのよ
うに、光造形用粉末材料を製造するための粉末製造工程
S00と混合・混練工程S1と光造形工程S2と、樹脂
除去工程S3と焼結工程S3からなる。また、粉末製造
工程S00は、図5に示したフローチャートのように熱
硬化性樹脂と粉末材料を混合する混合・混練工程S11
と熱硬化工程S12と粉砕、整粒工程S13からなる。
【0099】次にこの実施例の作用と効果について説明
する。図5に示したフローチャートに従って、粉末材料
101の表面に有機材料201をコーティングすること
による光造形用粉末材料301を製造する方法について
説明する。本実施例においては、該有機材料201に粘
度の低い熱硬化性樹脂溶液を用いる。
【0100】まず、粘度の低い熱硬化性樹脂(旭電化工
業製、製品名アデカオプトン、KTX965−2)20
1と粉末材料(平均粒子径1μmのPZT粉末)101
を準備し、混合・混練工程S11において混合する。こ
の工程では、熱硬化性樹脂201にできる限りたくさん
の粉末材料101を混ぜて、攪拌もしくは混練もしくは
脱泡しながら攪拌混練することにより均一に混合する。
該熱硬化性樹脂201の粘度が数10センチポイズ程度
で、粉末材料101の平均粒径が10μm程度である場
合、混合できる粉末の量は、体積比で65%まで達成で
きる。攪拌、混練もしくは脱泡には真空攪拌器などを使
用し、均一に混合されるまで数時間〜数十時間にわたっ
て攪拌する。さらに必要に応じて50℃〜60℃に加熱
しながら攪拌してもよい。
【0101】次に、熱硬化工程S12では、得られた該
粉末材料101と該熱硬化性樹脂201の混合体202
に熱を加えて、該粉末材料101と該熱硬化性樹脂20
1の混合体を硬化させる。硬化体203を得るために前
記混合体202に熱を加える方法としては、(1)該混
合体202を含有する容器全体を電気加熱炉などで加熱
する方法と、(2)赤外線ランプや赤外レーザで該混合
体を照射する方法などがある。(1)の加熱方法では、
混合体202の温度が80℃〜100℃程度になると熱
硬化が始まる。(2)の赤外線ランプや赤外レーザを用
いる照射方法では、赤外線ランプやレーザの種類、出力
パワー、走査速度などを選定することにより、該混合体
202を硬化させることができる。例えば、出力パワー
5WのYAGレーザを用いて、粉末材料の体積比が60
%の混合体202を照射した場合、走査速度が30mm
/秒以下であれば、効率よく混合体202を硬化させる
ことができる。また該レーザの走査速度が5mm/秒で
ある場合には、まず混合体202の照射された部分が硬
化する。この硬化によって熱量が発生し、この熱により
この硬化部分の周囲が硬化し、この周囲の硬化した部分
がさらに熱を発する。このような熱の伝播によって、該
混合体202全体が硬化し、硬化体203を得ることが
できる。
【0102】粉砕・整粒工程S13では、前記熱硬化工
程S12得られた硬化体203を粉砕し、細かくするこ
とにより、光造形用粉末材料301を製造する。前記硬
化体203を粉砕し、光造形用粉末材料301を製造す
るための粉砕方法は色々あり特に限定されないが、例え
ば乾式粉砕法或いは湿式粉砕法を用いれることができ
る。図6のような目標とした粒径の粉末材料301が得
られる。得られた粉末301表面は有機材料201の薄
膜201’でコーティングされているが、一粒の粉末材
料がコーティングされた1次粒子及び該1次粒子の集合
体、即ち複数の粉末粒子の集合体がコーティングされた
2次粒子を形成している。
【0103】その後、図4に示したフローチャートに従
って焼結構造体を製造する。混合・混練工程S1では、
粉末製造工程S00で得られた光造形用粉末材料301
を光硬化性樹脂とを混合し、粉末混合光硬化性樹脂4を
得る。この工程は実施例1と同様に行うことができる。
光造形工程S2では、実施例1と同様の方法で粉末混合
樹脂成形体2が作製できる。樹脂除去工程S3では光硬
化性樹脂とともにコーティング層としての熱硬化性樹脂
201も除去する。得られた粉末成形体の焼結工程S4
を実施することにより、焼結構造体が得られる。これら
の工程は、上記実施例と同様に行う。
【0104】表4に本実施例で製造した光造形用粉末材
料301と、従来のコーティングしない粉末材料(平均
粒子径1μmのPZT粉末)101を光硬化性樹脂(ス
リーボンド製、樹脂名3042)と混合した粉末混合光
硬化性樹脂の特性(流動性、光透過性および粉末の分布
の均一性)を示した。光造形用粉末材料301の含有量
が体積比で30%である粉末混合光硬化性樹脂は、粉末
材料101を含有した場合の体積含有率に換算すると約
20%となる。
【0105】
【表4】
【0106】本実施例で得られた光造形用粉末材料30
1の表面には、熱硬化性樹脂201の薄膜201’があ
るので、該光造形用粉末材料301を光硬化性樹脂と混
合する場合、該光硬化性樹脂との濡れ性が良くなり、粉
末混合光硬化性樹脂4の流動性が良くなる。また、前記
光造形用粉末材料301の表面には樹脂201の薄膜2
01’があることによって、光の透光性が良くなり、厚
い硬化層ができる。さらに、粉末粒子101表面に熱硬
化性樹脂201の薄膜が形成された光造形用粉末材料3
01はその比重が、見かけ上熱硬化性樹脂をコーティン
グしていない粉末材料101の比重より小さくなる。こ
のため、該光造形用粉末材料301は樹脂中に沈殿しに
くくなり、粉末混合光硬化性樹脂中で均一な粉末密度分
布が得られる。特に粉末混合樹脂成形体2を造形する造
形時間が数時間以上に及ぶ場合、粉末密度分布の均一性
を保つことができるので極めて効果的である。
【0107】もちろん、本実施例にはほかの変形例も考
えられる。例えば、有機材料201として光硬化性樹脂
を用い、粉末材料101と該樹脂201の混合体を光照
射で硬化させて硬化体2を得ることもできる。有機材料
201として光硬化性樹脂を用いる場合、加熱しながら
攪拌や混練したほうがより多量の該粉末材料101を混
合できる。
【0108】実施例3 本実施例3の製造方法は図4に示したフローチャートと
同様、粉末製造工程S00と攪拌・混練工程S1と光造
形工程S2と、樹脂除去工程S3と焼結工程S4からな
る。図7は本発明の実施例3を説明するためのフローチ
ャート図であり、光造形に用いる光造形用粉末材料を製
造するための粉末製造工程S00を示している。
【0109】粉末製造工程S00は、図7に示したフロ
ーチャートのように、加熱・融解工程S10と、混合・
混練工程S11と冷却硬化工程S14、S14’と粉砕
・整粒工程S13からなる。本実施例の焼結構造体の製
造方法では、まず粉末材料101の粒子表面に有機材料
201をコーティングし、粉末材料301を得、該粉末
材料301を用いて混合・混練工程S1において前記粉
末材料301と光硬化性樹脂とを混合して粉末混合光硬
化性樹脂4を得る。
【0110】焼結構造体は、図4に示したフローチャー
トと同様に、実施例2で説明した方法に従い製造する。
光造形工程S2では、実施例1と同様の方法で粉末樹脂
成形体2を作製し、また実施例1で説明した樹脂除去工
程S3で光硬化性樹脂とともに前記有機材料201も除
去する。更に、実施例1の焼結工程と同様の方法で焼結
し、焼結構造体を得る。
【0111】以下に本実施例を具体的に説明する。図7
は粉末材料101に有機材料201をコーティングし、
光造形用粉末材料301を作製する方法を説明するため
のフローチャートである。本実施例においては、有機材
料201に室温で固体で、加熱されると融解し粘度の低
い液体となるもの(例としてパラフィーンやワックスが
挙げられる)を使用した。まず、加熱・融解工程S10
で有機材料201を加熱・融解させ、粘度の低い液体を
得る。パラフィーンを使用した場合、70℃程度まで加
熱するとパラフィンが溶解し、100℃程度で粘度が数
十センチポイズ程度の液体が得られる。次に混合・混練
工程S11では、前記の温度を保ちながらできる限り多
量の粉末材料101を混ぜて、攪拌もしくは真空脱泡や
混練することにより均一に混合させる。該有機材料20
1の溶液粘度が数10センチポイズであれば、粉末の平
均粒径が10μm程度である場合、混合できる粉末の量
は体積比で65%まで達成できる。冷却硬化工程S1
4、14’では、得られた該粉末材料101と該有機材
料201の混合体202を攪拌または脱泡しながら半硬
化状態になるまで温度を下げる。その後、攪拌を止め
る。該粉末材料101と該有機材料201の混合体20
2は半硬化状態となっているので、攪拌を止めても該混
合体202中の粉末は沈殿しない。冷却硬化工程S1
2’では前記粉末材料101と該有機材料201の半硬
化体をさらに室温まで冷却させることにより硬化させ、
硬化体203を得る。
【0112】粉砕工程S13では、得られた硬化体20
3を粉砕することにより、光造形用の粉末材料301を
製造する。前記硬化体203を粉砕し、光造形用粉末材
料301を得るための粉砕方法は実施例2と同じであ
る。得られた粉末301表面は有機材料201の薄膜2
01’でコーティングされているが、一粒の粉末材料が
コーティングされた1次粒子及び該1次粒子の集合体、
即ち複数の粉末粒子の集合体がコーティングされた2次
粒子を形成している。
【0113】該光造形用粉末材料301と光硬化性樹脂
とを混合し、実施例2と同様に焼結構造体を製造するこ
とができる。実施例2と同様に粉砕することにより微細
粉末301は粉末材料101と有機材料201の薄膜と
からなる光造形用粉末材料が得られる。該微細粉末30
1を光造形用粉末材料として使用すれば、該光造形用粉
末材料301の表面には、有機材料201の薄膜がある
ので、該光造形用粉末材料301を光硬化性樹脂と混合
する場合、樹脂との濡れ性が良くなり、粉末樹脂混合体
の流動性が良くなり、該光造形用粉末材料301は光硬
化性樹脂の中に凝集しにくくなる。さらに、該光造形用
粉末材料301は、その比重が有機材料をコーティング
していない粉末材料101の比重より小さいため、粉末
混合光硬化性樹脂中で沈殿しにくくなり、均一な粉末密
度分布の粉末混合光硬化性樹脂を得ることができる。
【0114】もちろん、本実施例にはほかの変形例も考
えられる。例えば、有機材料201をできるだけ多量の
粉末材料101と混合し、得られた混合体の中に適切な
硬化剤を混ぜることによって硬化させることもできる。
得られた硬化体202を粉砕することにより、光造形用
の粉末材料301を作ることができる。
【0115】実施例4 図8に本発明の実施例のフローチャートを示す。本実施
例の製造方法は、焼結構造体の構成元素を含む化合物を
含有する溶液(以下化合物溶液という。)104を製造
する化合物溶液製造工程S15と、さらに該化合物溶液
104を光硬化性樹脂と混合して光硬化性樹脂組成物1
04’を製造する光硬化性樹脂組成物溶液製造工程S1
6と、前記光硬化性樹脂組成物104’に光を照射し、
一次成形体を製造する一次成形体製造工程S17と、焼
結構造体の構成元素と光硬化樹脂とからなる成形体を作
製するための加熱乾燥工程S18と、樹脂除去工程S3
と焼結工程S4からなる。
【0116】焼結構造体の構成元素を含む化合物を含有
する溶液を製造する化合物溶液製造工程S15では、目
的の焼結構造体の組成、例えば(Pb0.98Sr0.05
(Ti0.52Zr0.48) O3 + 1mol%Nb25
と成るように、例えば酢酸鉛[Pb(CH3 COO)
2 ]、酢酸ストロンチウム[Sr(CH3 COO)
2 ]、イソプロピルチタン[Ti(iso −OC37 )
4 ]、イソプロピルジルコニウム[Zr(iso −OC3
7 ) 4 ]、イソプロピルニオビウム[Nb(iso −O
37 ) 5 のような金属有機化合物の溶液(PSZT
前駆混合溶液)を混合し、PSZT前駆混合溶液を作成
する。混合は、上記の溶液が均一になる方法を用いれば
よく、機械撹拌などの方法を用いることができる。
【0117】次いで、光硬化性樹脂組成物製造工程S1
6では、工程S15で作製したPSZT前駆混合溶液
(即ち化合物溶液104)と光硬化性樹脂(例えば東亜
合成化学(株)製の可視光硬化性樹脂、製品名5035
Dなど)とを、例えば60%:40%の混合比率で混合
し、光硬化性樹脂組成物104’を製造する。尚、前記
PSZT前駆混合溶液に用いる溶剤は、光硬化性樹脂に
用いる溶剤と同系統の溶剤、例えば2−メトキシエタノ
ールを用いる。前記PSZT前駆混合溶液と光硬化性樹
脂とを、同様の溶媒を用いて均一に混合する。
【0118】次に、一次成形体製造工程S17では、光
硬化性樹脂組成物104’を用いて、実施例1に示した
方法と同様の光造形工程で光を照射することにより、一
次成形体を作製する。本実施例では、化合物溶液104
を用いているので、粉末材料を用いるような固−液不均
一系ではないため、ここで得られる一次成形体は、焼結
構造体の構成元素をより均一に含有できる。
【0119】加熱乾燥反応工程S18では、作製した一
次成形体を水蒸気雰囲気中で約100℃で加熱する。こ
の工程で、焼結構造体の構成元素を含む化合物の加水分
解反応を行わせる。これによって、焼結構造体の構成元
素からなる成形体とアルコール成分等を生成させる。不
要なアルコール成分等は水蒸気雰囲気下の加熱で揮発す
る。次いで、約200℃で数時間にわたり乾燥し、不要
な有機溶剤を全て蒸発させる。これによって、焼結後の
焼結構造体の構成元素と光硬化性樹脂成分のみを含有し
た粉末混合樹脂成形体2が生成される。得られた該粉末
混合樹脂成形体2を、実施例1で説明した樹脂除去工程
S3および焼結工程S4にかけ、焼結構造体を得る。本
実施例では、光硬化性樹脂に可視光硬化性樹脂を使用し
たが、可視光で分解する光重合開始剤を併用することに
よって、紫外線硬化樹脂も使用することができる。ま
た、実施例1で述べたような種々の変更が可能である。
【0120】焼結構造体を製造するための原料は、焼結
構造体の構成元素を含む化合物を含有する溶液104と
光硬化性樹脂とを混合して得られた光硬化性樹脂組成物
104’であるので、本実施例の製造方法では、粉末材
料を使用することがない。従って、光造形中に粉末材料
が沈殿するという問題がなく、しかも光硬化性樹脂組成
物104’が良好な光透過性を有するので、光造形法で
良好な一次成形体を作製することができる。
【0121】実施例5 図9に示すフローチャート図と、図10から13に示す
装置図を用いて本発明による実施例5を説明する。
【0122】本実施例で用いる装置は、図12に示され
るように、容器1と、該容器1内の中心付近に造形用ベ
ース2が設けられている。該造形用ベース2の上面部徒
過面部には、それぞれ造形用耐熱基板2’と、加熱機構
9’が設けられている。該造形用ベース2には、エレベ
ータ機構10が設けられており、このエレベータ機構1
0により該造形用ベース2は、容器1の底面に垂直な方
向(図中ではZ方向で表されている。)に昇降自在に移
動でき、必要に応じて回転することができるようになっ
ている。更に、本実施例の装置には、光硬化性樹脂組成
物7を造形用ベース2供給するためのノズル4と該組成
物を貯蔵するためのタンク5と、造形用ベース2に供給
された光硬化性樹脂組成物7を平らにするためのスキー
ジ8と、加熱用赤外線ランプ9と、霧状の水を供給する
ための噴霧機構12を備えている。前記加熱機構と加熱
用赤外線ランプ9は、ノズル4から供給された光硬化性
樹脂組成物7を加熱するためのものである。6はこの装
置を用いて積層した成形体部分である。
【0123】本実施例の製造工程は、図9のフローチャ
ートで示されるように、化合物溶液製造工程S50;光
硬化性樹脂組成物製造工程S51;溶液塗布工程S5
2、加熱反応工程S53、露光硬化工程S54および前
記エレベータを硬化層一層分移動させる工程S55より
なる光成形体製造工程56;洗浄工程S57;乾燥工程
S58;樹脂除去工程S3;並びに焼結工程S4とから
なる。
【0124】以下に必要に応じて図10から13を参照
して本実施例を詳述する。化合物製造工程S50は、上
記実施例4で説明したとおりである。即ち焼結構造体の
構成元素を含む化合物を含有する溶液を目的の焼結構造
体の組成、例えば(Pb0.98Sr0.05) (Ti0.52Zr
0.48) O3 + 1mol%Nb25 と成るように、
例えば酢酸鉛[Pb(CH3 COO)2 ]、酢酸ストロ
ンチウム[Sr(CH3 COO)2 ]、イソプロピルチ
タン[Ti(iso −OC37 ) 4]、イソプロピルジ
ルコニウム[Zr(iso −OC37 ) 4 ]、イソプロ
ピルニオビウム[Nb(iso −OC37 ) 5 のような
金属有機化合物の溶液(PSZT前駆混合溶液)を混合
し、PSZT前駆混合溶液を作成すればよい。
【0125】光硬化性混合溶液製造工程S51も上記実
施例4と同様に行えばよい。即ち、得られたPSZT前
駆混合溶液(即ち化合物原料溶液)と光硬化性樹脂(例
えば東亜合成化学(株)製の可視光硬化性樹脂、製品名
5035Dなど)とを、例えば60%:40%の混合比
率で混合し、光硬化性樹脂組成物を製造する。尚、前記
PSZT前駆混合溶液に用いる溶剤は、光硬化性樹脂に
用いる溶剤と同系統の溶剤を例えば2−メトキシエタノ
ールを用いる。前記PSZT前駆混合溶液と光硬化性樹
脂とを同様の溶媒を用いて均一に混合する。このように
して得られた光硬化性混合溶液はタンク5に溜めてお
く。
【0126】更にその次の工程として、光硬化性樹脂組
成物を一層分の厚さ塗布するための光硬化性樹脂組成物
塗布工程S52を実施する。この塗布工程S52を図1
0を参照して説明する。先ず、タンク5に貯蔵した光硬
化性樹脂組成物7を、ノズル4を通して厚さが硬化層一
層分だけ造形用ベース2上に載置した耐熱性基板2’上
に滴下しする。次いでエレベータ機構10を回転させて
スピンコート法によって滴下した光硬化性樹脂組成物7
の厚さを均一にするか、もしくはスキージ8で塗布した
光硬化性樹脂組成物7をなぞり、その厚さを均一にす
る。均一にされる光硬化性樹脂組成物の厚さはスピンコ
ートの回転速度やスキージ8の位置によって制御出来
る。塗布工程が終了した後に、次の工程が実施できるよ
うにノズル4とスキージ8(スキージを使用した場合)
を回避させる。
【0127】次に、加熱反応工程S53を実施する。こ
の加熱反応工程S53の目的は前記塗布工程S52で出
来た光硬化性樹脂組成物の塗布層に含まれる前記PSZ
T前駆液成分を加水分解反応することにある。これによ
って、焼結構造体の構成元素からなるPSZT酸化物ゲ
ル粒子組成物(焼結構造体の構成元素からなるPSZT
酸化物粒子と光硬化性樹脂との混合組成物)とアルコー
ル成分等を生成させる。また、生成した不要なアルコー
ル成分は、加熱処理中に揮発除去される。加熱加水分解
には水を添加する必要があるが、水分供給手段として
は、例えば霧水器(図中12として示した)から水霧を
吹きかける方法等がある。加熱手段は赤外線ランプ9を
用いて前記塗布液膜の上方側から赤外線を照射して加熱
するか、または加熱機構9’を用いて造形用耐熱基板
2’を通して光硬化性樹脂組成物の塗布層を加熱する。
前記赤外線ランプ9の光スペクトルは前記光硬化性樹脂
の硬化波長範囲とは全く重なっていないものを使用す
る。また照射加熱する温度50℃〜100℃の間であり
前記光硬化性樹脂組成物の種類によって適宜選択する。
本実施例ではPSZT圧電材料焼結構造体を作製する事
を想定しているが、これを作製するための光硬化性樹脂
組成物を用いる場合、加熱温度が80℃程度、加熱時間
数分程度であれば良い。この加熱反応工程S53を実施
することによって、前記光硬化性樹脂組成物の塗布層は
焼結構造体の構成元素からなるPSZT酸化物ゲル粒子
と光硬化性樹脂との混合体となる。また、光硬化性樹脂
を加熱する場合でも、熱による硬化が起こらないように
熱重合阻害剤(例えばベンゾキノン、p−ベンゾキノ
ン、ハイドロキノン、メトキシノンなど)を混合する。
赤外線ランプをしようした場合は、加熱反応工程S53
を終わらせた後、赤外線ランプ9を回避させる。
【0128】次に、露光硬化工程S54を図12を参照
して説明する。工程S54は、所望の一次造形体のCA
Dデータに基づいた断面形状に従って図12に示すよう
に、光のビーム3を走査させるか、または光を断面形状
のパターンに照射することにより一層分の硬化層を形成
する。本実施例では、ラスター走査方式により、光が作
製したい成形体の断面形状に厳密に走査されているか否
かを判定しながら光硬化を行う。
【0129】次に工程S55では、エレベータ機構10
を制御して造形用ベース2を成形体の一層厚分だけ下げ
る。このエレベータの降下距離は、所望の成形体のCA
Dデータから設定してもよく、また前工程S54で生成
された硬化層一層分の厚さに等しくなるように設定して
もよい。
【0130】次に、上記工程S52から工程S55の各
工程を再度実施することにより第二層目の硬化層を作製
する。図13に第二層目の硬化層を作製する露光硬化工
程の様子を示す。これらの工程を所定回数繰り返して硬
化層を積層させることにより、三次元一次成形体が得ら
れる。
【0131】次に、洗浄工程S56では、作製した一次
成形体を造形用耐熱性基板2’から外し、エタノールの
ようなアルコール類の洗浄液で洗浄することにより未硬
化部分を除去する。
【0132】乾燥工程S57では、得られた前記一次成
形体を200℃前後で乾燥し、成形体中の樹脂以外の有
機材料を全て分解もしくは揮発させ、焼結構造体の構成
元素と光硬化性樹脂とから構成される粉末混合樹脂成形
体を得る。
【0133】最後に上記実施例1と同様の樹脂除去工程
S3および焼結工程S4で樹脂の除去と焼結を行い、焼
結構造体を得る。本実施例の製造法は以下の特徴を有す
る。
【0134】焼結構造体の構成元素を含む化合物を含有
する溶液の中に光硬化性樹脂を混合して得た光硬化性樹
脂組成物を用いる。本実施例の製造方法は、前記光硬化
性樹脂組成物を所定の厚さに塗布する光硬化性樹脂組成
物塗布工程と、前記光硬化性樹脂組成物の塗布層を加熱
することにより、焼結構造体の構成元素と光硬化性樹脂
からなるゲル粒子組成物(混合組成物層)を得る加熱反
応工程と、前記混合組成物層に光を照射することにより
該光硬化性樹脂組成物の塗布層を硬化させる硬化工程を
基本工程として、該基本工程を所定回数繰り返して行う
ことにより一次成形体を作製する。次に、得られた一次
成形体を洗浄工程で洗浄し、引き続き乾燥工程で乾燥さ
せることにより、焼結構造体の構成元素と光硬化性樹脂
とから構成される粉末混合樹脂成形体を得る。次に、樹
脂除去工程S3と焼結工程S4を行うことにより焼結構
造体を製造する。本実施例では、光硬化性樹脂に可視光
硬化性樹脂を使用したが、可視光で分解する光重合開始
剤を併用することによって、紫外線硬化樹脂も使用する
ことができる。また、実施例1で述べたような種々の変
更が可能である。
【0135】構造体を作るための出発原料は、焼結構造
体の構成元素を含む化合物を含有する溶液と光硬化性樹
脂とを混合することにより得られた光硬化性樹脂組成物
であるので、本実施例の製造方法では、粉末材料を使用
することがない。従って、光造形中に粉末材料が沈殿す
るという問題がなく、しかも光硬化性樹脂組成物が良好
な光透過性を有するので、光造形法で良好な一次成形体
を作製することができる。
【0136】また本実施例の変形例として、上記光硬化
性樹脂組成物の成分を種々変化させた光硬化性樹脂組成
物を多数用意し、一次成形体を作製する際に、光硬化性
樹脂組成物塗布工程S52でこれらの異なった組成の光
硬化性樹脂組成物を適宜塗布し、硬化層を形成させ、構
成元素の分布が不均一若しくは一定の勾配となった焼結
構造体を作製する方法等がある。
【0137】本発明は、上記請求の範囲に記載した以外
の発明も包含しうる。以下にこれらを記載する。尚、上
記(1)から(3)は、それぞれ以下の(I)、(IV)
及び(VI)に対応する。
【0138】(I) 光硬化性樹脂と粉末材料とを混合
した粉末混合光硬化性樹脂を用いて焼結構造体を製造す
るための方法であって、前記粉末混合光硬化性樹脂を、
可視領域に発光波長を有する光源を用いて、該可視領域
の光により硬化させ、粉末混合樹脂成形体を造形する光
造形工程と、該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉
末成形体にする樹脂除去工程と、該粉末成形体を熱処理
することにより焼結構造体にする焼結工程とを具備し、
更に、前記粉末材料が、ソフト系ジルコンチタン酸鉛粉
末であること、および、前記粉末混合光硬化性樹脂が、
可視領域に発光波長を有する光源の発光波長帯域で該光
硬化性樹脂に硬化反応を開始させる光重合開始剤を含有
することを特徴とする焼結構造体の製造法。
【0139】実施例1が該当する。 (作用) 本発明は、粉末材料が透過する光の波長を照
射することによって分解する光重合開始剤を含有する光
硬化性樹脂を用いることを特徴とする光造形工程に用い
る粉末材料の光透過特性を考慮した粉末混合光硬化性樹
脂成形体の製造方法である。
【0140】混合・混練工程において、必要に応じて脱
泡を行ないながら光硬化性樹脂とソフト系ジルコンチタ
ン酸鉛系化合物若しくはPLZT粉末の粉末材料とを混
練・攪拌、または攪拌し、粉末混合光硬化性樹脂を得
る。光硬化性樹脂には、前記光源からの光の波長によっ
て分解する光重合開始剤を含有する。
【0141】ここで、ジルコンチタン酸鉛系化合物と
は、純粋なジルコンチタン酸鉛(PZT)または純粋な
ジルコンチタン酸鉛に鉛と同族の元素を微量添加し、鉛
を置換した化合物をいう。本発明では、これらの内、ソ
フト系ジルコンチタン酸鉛系化合物の粉末を使用するこ
とが特に好ましい。ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合
物とは、上記ジルコンチタン酸鉛系化合物にソフト化添
加物を加えたものをいう。ここで、ソフト化添加物と
は、Nb、W、Bi、Sb、Taまたはランタン族元素
の酸化物をいう。
【0142】ソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物は、
以下の一般式で表される。 (Pb1-x Mex ) (Zr1-y Tiy ) O3 + αMo Me:鉛の同族元素(Ba,Sr,Mg,Ca) Mo:ソフト化添加物 x,y:組成比率,x=0〜0.2,y=0.1〜0.
9 α:添加量 このソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物は、光を吸収
する欠陥がソフト化添加物を添加することによって消滅
するので光透過性に優れている。とりわけ、これらの添
加物を5〜8原子%含み、Zr/Ti比が65/35の
組成であるものが大きな光透過性を有している。このよ
うなソフト系ジルコンチタン酸鉛系化合物の例として
は、例えば、ソフト化添加物にNb酸化物を添加したP
ZT、Pb(Zr0.65Ti0.35) O3 + 3mol%Nb
25 がある。
【0143】得られた粉末混合硬化性樹脂を適切な容器
に入れ可視光源と、予め三次元CADより得たデータを
用い、以下の手順で光造形体を形成した。容器に粉末混
合光硬化性樹脂を導入した後、エレベータと造形用ベー
スを導入する。造形用ベースが、容器底面の石英ガラス
面から一定の厚みになるようにZステージを調節し、造
形用ベースを固定する。次に、X−Yステージを用い
て、構造体モデルのスライスデータに基づいて光ビーム
を走査させ、粉末混合光硬化性樹脂を硬化させる。更
に、硬化層一層分の走査が終了してから、Zステージを
制御し、エレベータを次の硬化層の厚さ一層分だけ上昇
させる。次に、X−Yステージを用いて光ビームを走査
させることにより、次の層の硬化を行う。以上の硬化層
の形成操作を所定回数繰り返して所望の粉末混合樹脂成
形体を作製する。本実施例では、特に、光硬化性樹脂に
可視光で硬化するものを使用すれば、光開始剤を用いな
くても光硬化を行うことができる。
【0144】次に、作製した粉末樹脂成形体を樹脂除去
工程と焼結工程で処理することにより、焼結構造体が得
られる。 (効果) 可視領域に光透過波長帯域を有する粉末材料
と可視領域に発光波長帯域を有する光源を用いることに
より、粉末混合光硬化性樹脂に十分光が透過することと
になり、硬化層の厚さが厚くなるという効果がある。さ
らにジルコンチタン酸鉛系化合物にソフト化添加物を一
種または複数種添加することにより、硬化層の厚さはよ
り厚くなる。
【0145】(II) 上記(I)に記載した焼結構造体
の製造法において、前記ソフト系ジルコンチタン酸鉛系
粉末材料がPLZTであることを特徴とする焼結構造体
の製造法。
【0146】実施例1が該当する。PLZTの組成は Pb1-x Lax ( Zr1-y Tiy ) O3 である。x,yは組成比率である。
【0147】(作用) 光造形工程では、ソフト系ジル
コンチタン酸鉛粉末がPLZTである物を使用する。P
LZT粉末は可視光波長帯域に透過性を有し、かつ波長
が長くなると透過率が大きくなる。本発明では光源とし
て、前記PLZT粉末の光透過波長帯域内に発光波長帯
域を有する光源を用い、更に光硬化性樹脂として、前記
光源の発光波長帯域で硬化反応を開始させる光重合開始
剤を含有する光硬化性樹脂を用いる。前記PLZT粉末
と光硬化性樹脂との混合物である粉末混合硬化性樹脂を
光源の光で像状に照射し、硬化をさせることにより、粉
末混合樹脂成形体を作製する。さらに樹脂除去工程と焼
結工程を実施することによって、PLZT焼結構造体を
製造する。 (効果)光造形工程で使用するPLZT粉末は、光源の
光の波長に対して透過性を有し、かつ波長が長くなると
透過率が大きくなるという特性を有する。従って、本発
明で、前記PLZT粉末と光硬化性樹脂との混合物であ
る粉末混合光硬化性樹脂を用いて光造形工程で粉末樹脂
成形体を作製し、さらに樹脂除去工程と焼結工程を実施
することによって、PLZT材料の構造体を効率よく、
且つ簡便に製造する方法が提供される。
【0148】(III )上記(I)に記載した焼結体の製
造法において、前記ソフト系ジルコンチタン酸鉛粉末が
PZTにソフト化添加物を一種または複数種添加した組
成を有することを特徴とする焼結構造体の製造法。
【0149】ここで、ソフト化添加物とは上記(I)の
Moであり、具体的にはNb,W,Bi,Sb,Ta及
びランタン族元素の酸化物である。実施例1が該当す
る。 (作用)光造形工程で用いる粉末は、PZT粉末にソフ
ト化添加物を一種または複数種添加した組成を有する。
これにより前記粉末は、可視光波長帯域に透過性を有
し、かつ波長が長くなると透過率が大きくなるという特
性を獲得する。前記粉末材料と光硬化性樹脂との混合体
(粉末混合硬化性樹脂)を適切な光源で照射し、硬化を
させることにより、粉末混合樹脂成形体を作製する。さ
らに樹脂除去工程と焼結工程を実施することにより焼結
構造体を製造する。 (効果)光造形工程で用いる粉末は、PZT粉末にソフ
ト化添加物を一種または複数種添加した組成を有する。
これにより前記粉末は、可視光波長帯域に透過性を有
し、かつ波長が長くなると透過率が大きくなるという特
性を有するようになる。本発明で、前記粉末材料を含有
する粉末混合硬化性樹脂を適切な光源の光で照射し、硬
化をさせることにより、粉末樹脂成形体を作製し、さら
に樹脂除去工程と焼結工程を実施することにより、効率
よく且つ簡便に焼結構造体を製造することができる。
【0150】(IV) 光硬化性樹脂と粉末材料とを混合
した粉末混合光硬化性樹脂を用いて焼結構造体を製造す
るための方法であって、前記粉末混合光硬化性樹脂を光
により硬化させ、粉末混合樹脂成形体を造形する光造形
工程と、該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉末成
形体にする樹脂除去工程と、該粉末成形体を熱処理する
ことにより焼結構造体にする焼結工程とを具備し、更
に、前記光造形工程で用いる粉末が、前記粉末材料の粒
子表面を有機材料でコーティングした粉末であることを
特徴とする焼結構造体の製造法。
【0151】実施例2および3が該当する。 (作用)光造形工程で用いる粉末は、粉末材料と有機材
料により調製される光造形用粉末材料である。該粉末材
料の粉末表面は有機材料の薄膜でコーティングされてい
る。この光造形用粉末材料を光造形工程の粉末材料とし
て用い、前記光造形用粉末材料と光硬化性樹脂との混合
物(粉末混合光硬化性樹脂)を用いて、光造形工程で粉
末混合樹脂成形体を作製する。さらに樹脂除去工程、焼
結工程で処理することにより、焼結構造体を製造する。 (効果)粉末材料の表面には、有機材料がコーティング
されているので、樹脂との濡れ性が良くなり、該光造形
用粉末材料は光硬化性樹脂中で凝集しなくなり、粉末樹
脂混合体の流動性が良くなる。また、有機材料の材料特
性によっては、得られた光造形用粉末の光透過性が良く
なり、厚みの厚い硬化層を得ることが期待できる。さら
に、該光造形用粉末材料は、その比重が有機材料でコー
ティングされていない粉末材料の比重より小さいため、
粉末混合光硬化性樹脂中で沈殿しにくくなり、均一な粉
末密度分布が得られる。特に成形体を造形する造形時間
が数時間以上に及ぶ場合、粉末密度分布の均一性を保つ
ことに対して極めて効果的である。
【0152】(V)上記(IV)に記載した焼結構造体の
製造法において、前記有機材料をコーティングした粉末
材料が、前記有機材料と前記粉末材料とを混合する混合
工程と、該混合体を硬化させ、さらに粉砕・整粒する工
程により製造されることを特徴とする焼結構造体の製造
法。
【0153】実施例2および3が該当する。 (作用)光造形用の粉末材料を作るために、有機材料と
粉末材料を混合して混合体を得る。この混合体を硬化さ
せることにより硬化体が得られる。該硬化体を更に粉
砕、整粒することにより光造形用粉末を作製する。得ら
れた粉末表面は有機材料の薄膜でコーティングされてい
るが、一粒の粉末材料がコーティングされた1次粒子及
び該1次粒子の集合体、即ち複数の粉末粒子の集合体が
コーティングされた2次粒子を形成している。前記光造
形用粉末材料と光硬化性樹脂との混合物(粉末混合光硬
化性樹脂)を用いて、光造形工程で粉末混合樹脂成形体
を作製する。作製した前記粉末混合樹脂成形体を樹脂除
去工程、焼結工程で処理することにより、目標となる材
料101の焼結構造体を製造する。 (効果)粉末材料の表面には、有機材料がコーティング
されているので、樹脂との濡れ性が良くなり、該光造形
用粉末材料は光硬化性樹脂中で凝集しなくなり、粉末樹
脂混合体の流動性が良くなる。また、有機材料の材料特
性によっては、得られた光造形用粉末の光透過性が良く
なり、厚みの厚い硬化層を得ることが期待できる。さら
に、該光造形用粉末材料は、その比重が有機材料でコー
ティングされていない粉末材料の比重より小さいため、
粉末混合光硬化性樹脂中で沈殿しにくくなり、均一な粉
末密度分布が得られる。特に成形体を造形する造形時間
が数時間以上に及ぶ場合、粉末密度分布の均一性を保つ
ことに対して極めて効果的である。
【0154】(VI) 光硬化性樹脂組成物を用いて焼結
構造体を製造するための方法であって、前記焼結構造体
の構成元素を含む化合物を含有する溶液を光硬化性樹脂
と混合し、光硬化性樹脂組成物を調製する工程と、前記
光硬化性樹脂組成物に光を照射することによって一次成
形体を作製する一次成形体作製工程と、該一次成形体を
加熱乾燥処理して、焼結構造体の構成元素と光硬化樹脂
とからなる成形体を作製する工程と該焼結構造体の構成
元素と光硬化樹脂とからなる成形体から樹脂成分を除去
する樹脂除去工程と該樹脂除去工程で得られた該焼結構
造体の構成元素からなる成形体を熱処理することにより
焼結構造体にする焼結工程とを具備することを特徴とす
る焼結構造体の製造法。
【0155】実施例4が該当する。 (作用)光硬化性樹脂組成物製造工程では、焼結構造体
の構成元素を含む化合物を含有する溶液を光硬化性樹脂
と混合して光硬化性樹脂組成物を製造する。前記光硬化
性樹脂組成物は光透過性があり、かつ焼結構造体の構成
元素となる化合物を含有する。一次成形体作製工程では
前記光硬化性樹脂組成物に光を照射することにより成形
体を作製する。また加熱乾燥反応工程を行うことによ
り、焼結構造体の構成元素と光硬化樹脂とからなる成形
体を生成させると供に、不要な成分を揮発除去する。さ
らに樹脂除去工程と焼結工程を行うことにより目的の焼
結構造体が得られる。 (効果)一次成形体を製造するための出発原料は焼結構
造体の構成元素を含有する化合物溶液と光硬化性樹脂と
を混合して得られた光硬化性樹脂組成物であるので、造
形中において粉末が沈殿するという問題がなく、しかも
該光硬化性樹脂組成物が良好な光透過性を有するので、
効率よく光硬化を行うことができる。本発明の光造形法
を用いれば効率よく、且つ簡便に一次成形体を作製する
ことができる。得られた一次成形体を更に加熱乾燥反応
工程にかけ、引き続き樹脂除去工程と焼結工程を行うこ
とにより目的の焼結構造体を容易に製造することができ
る。
【0156】(VII ) 光硬化性樹脂組成物を用いて焼
結構造体を製造するための方法であって、前記焼結構造
体の構成元素を含む化合物を含有する溶液を光硬化性樹
脂と混合し、光硬化性樹脂組成物を調製する工程と該光
硬化性樹脂組成物を光硬化して、一次成形体を得る工程
と該焼結構造体の構成元素と光硬化樹脂とからなる成形
体から樹脂成分を除去する樹脂除去工程と該樹脂除去工
程で得られた該焼結構造体の構成元素からなる成形体を
熱処理することにより焼結構造体にする焼結工程とを具
備し、且つ、前記一次成形体を得る工程が、前記光硬化
性樹脂組成物を所定の厚さの層に塗布するための塗布工
程と該塗布された光硬化性樹脂組成物を加熱乾燥処理し
て、焼結構造体の構成元素と光硬化樹脂とからなる混合
組成物層を作製する工程と該混合組成物層に光を照射す
ることによって硬化層を得る露光硬化工程とを含有し、
且つこの塗布工程、混合組成物作製工程および露光硬化
工程を所定回数繰り返すことよりなることを特徴とする
焼結構造体の製造法。 (作用) 光硬化性樹脂組成物製造工程では、焼結構造
体の構成元素を含む化合物を含有する溶液を光硬化性樹
脂と混合して光硬化性樹脂組成物を製造する。前記光硬
化性樹脂組成物は光透過性があり、かつ焼結構造体の構
成元素となる化合物を含有する。塗布工程で該光硬化性
混合溶液を一層分だけ塗布する。次いで加熱反応工程
で、塗布層を加熱することにより、焼結構造体の構成元
素と光硬化樹脂とからなる混合組成物層を生成させると
供に、不要な成分を揮発除去する。次に、所望の一次造
形体のCADデータに基づいた断面形状に従って、光の
ビームを走査させるか、または光を断面形状のパターン
に照射することにより一層分の硬化層を形成する。この
硬化層を複数層積層するように上記操作を繰り返し、一
次成形体を得る。さらに樹脂除去工程と焼結工程を行う
ことにより目的の焼結構造体ができる。 (効果)一次成形体を製造するための出発原料は焼結構
造体の構成元素を含有する化合物溶液と光硬化性樹脂と
を混合して得られた光硬化性樹脂組成物であるので、造
形中において粉末が沈殿するという問題がなく、しかも
該光硬化性樹脂組成物が良好な光透過性を有するので、
効率よく光硬化を行うことができる。上記塗布工程、加
熱反応工程および露光硬化工程を所定回数繰り返して行
うことにより一次成形体を容易に作製することができ
る。本発明の光造形法を用いれば効率よく、且つ簡便に
一次成形体を作製することができる。得られた一次成形
体を更に加熱乾燥反応工程にかけ、引き続き樹脂除去工
程と焼結工程を行うことにより目的の焼結構造体を容易
に製造することができる。
【0157】
【発明の効果】第一の発明の製造方法を用いることによ
って、可視領域に光透過波長帯域を有する粉末材料と可
視領域に発光波長帯域を有する光源を用いることによ
り、粉末混合光硬化性樹脂に十分光が透過することとに
なり、硬化層の厚さが厚くなるという効果がある。さら
にジルコンチタン酸鉛系化合物にソフト化添加物を一種
または複数種添加することにより、硬化層の厚さはより
厚くなる。
【0158】第二の発明の製造方法では、粉末材料とし
て有機材料(熱硬化性樹脂等)をコートした光造形用粉
末材料を用いる。該光造形用粉末材料の表面には有機材
料の薄膜が形成されているので、該光造形用粉末材料を
光硬化性樹脂と混合する場合、該光硬化性樹脂との濡れ
性が良くなり、粉末混合光硬化性樹脂の流動性が良くな
る。また、前記光造形用粉末材料の表面には樹脂の薄膜
があることによって、光の透光性が良くなり、厚い硬化
層ができる。さらに、粉末粒子表面に熱硬化性樹脂の薄
膜が形成された光造形用粉末材料はその比重が、見かけ
上熱硬化性樹脂をコーティングしていない粉末材料の比
重より小さくなる。このため、該光造形用粉末材料は樹
脂中に沈殿しにくくなり、粉末混合光硬化性樹脂中で均
一な粉末密度分布が得られる。特に粉末混合樹脂成形体
を造形する造形時間が数時間以上に及ぶ場合、粉末密度
分布の均一性を保つことができるので極めて効果的であ
る。
【0159】第三の発明の製造方法では、焼結構造体を
製造するための原料は、焼結構造体の構成元素を含む化
合物を含有する溶液と光硬化性樹脂とを混合して得られ
た光硬化性樹脂組成物であるので、本実施例の製造方法
では、粉末材料を使用することがない。従って、光造形
中に粉末材料が沈殿するという問題がなく、しかも光硬
化性樹脂組成物が良好な光透過性を有するので、光造形
法で良好な一次成形体を作製することができる。
【0160】このように、本発明の製造方法を用いるこ
とによって、効率的且つ簡便に焼結構造体(特にマイク
ロマシンに適用しうる)を製造することができ、本発明
は、これらの優れた製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、従来の焼結構造体を製造するための
製造過程を示したフロー図である。
【図2】 図2は、本発明の焼結構造体を製造する際の
粉末混合樹脂成形体を作製するための装置である。
【図3】 図3は、第一の発明に係る焼結構造体を製造
するための製造過程を示したフロー図である。
【図4】 図4は、第二の発明に係る焼結構造体を製造
するための製造過程を示したフロー図である。
【図5】 図5は、第二の発明に係る焼結構造体を製造
するための製造過程のうち、粉末製造工程の製造過程を
示したフロー図である。
【図6】 図6は、第二の発明に係る粉末製造工程で得
られる光造形用粉末材料の粉砕前後の形状を表す概略図
である。
【図7】 図7は、第二の発明に係る焼結構造体を製造
するための製造過程を示したフロー図である。
【図8】 図8は、第三の発明に係る焼結構造体を製造
するための製造過程を示したフロー図である。
【図9】 図9は、本発明に係る焼結構造体を製造する
ための製造過程を示したフロー図である。
【図10】 図10は、本発明に係る焼結構造体を製造
するための装置および該装置を用いた光造形体の製造過
程の一部を表す図である。
【図11】 図11は、本発明に係る焼結構造体を製造
するための装置および該装置を用いた光造形体の製造過
程の一部を表す図である。
【図12】 図12は、本発明に係る焼結構造体を製造
するための装置および該装置を用いた光造形体の製造過
程の一部を表す図である。
【図13】 図13は、本発明に係る焼結構造体を製造
するための装置および該装置を用いた光造形体の製造過
程の一部を表す図である。
【符号の説明】
<図2における符号>粉末混合光硬化性樹脂…4、容器
…1、石英窓ガラス…9、造形用ベース…5、エレベー
タ…6、光ビーム…3、X−Yステージ…7、Zステー
ジ…8と、支持ベース…10。 <図10から13における符号>容器…1、造形用ベー
ス…2、造形用耐熱基板…2’、加熱機構…9’、エレ
ベータ機構…10、光硬化性樹脂組成物…7、ノズル…
4、タンク…5、スキージ…8、加熱用赤外線ランプ…
9、噴霧機構…12。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B29K 101:00 103:04 105:24

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光硬化性樹脂と粉末材料とを混合した粉
    末混合光硬化性樹脂を用いて焼結構造体を製造するため
    の方法であって、 前記粉末混合光硬化性樹脂を、可視領域に発光波長を有
    する光源を用いて、該可視領域の光により硬化させ、粉
    末混合樹脂成形体を造形する光造形工程と、 該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉末成形体にす
    る樹脂除去工程と、 該粉末成形体を熱処理することにより焼結構造体にする
    焼結工程とを具備し、更に、 前記粉末材料が、ソフト系ジルコンチタン酸鉛粉末であ
    ること、および、 前記粉末混合光硬化性樹脂が、可視領域に発光波長を有
    する光源の発光波長帯域で該光硬化性樹脂に硬化反応を
    開始させる光重合開始剤を含有することを特徴とする焼
    結構造体の製造方法。
  2. 【請求項2】 光硬化性樹脂と粉末材料とを混合した粉
    末混合光硬化性樹脂を用いて焼結構造体を製造するため
    の方法であって、 前記粉末混合光硬化性樹脂を光により硬化させ、粉末混
    合樹脂成形体を造形する光造形工程と、 該粉末樹脂成形体の樹脂成分を除去して粉末成形体にす
    る樹脂除去工程と、 該粉末成形体を熱処理することにより焼結構造体にする
    焼結工程とを具備し、更に、 前記光造形工程で用いる粉末が、前記粉末材料の粒子表
    面を有機材料でコーティングした粉末であることを特徴
    とする焼結構造体の製造方法。
  3. 【請求項3】 光硬化性樹脂組成物を用いて焼結構造体
    を製造するための方法であって、 前記焼結構造体の構成元素を含む化合物を含有する溶液
    を光硬化性樹脂と混合し、光硬化性樹脂組成物を調製す
    る工程と、 前記光硬化性樹脂組成物に光を照射することによって一
    次成形体を作製する一次成形体作製工程と、 該一次成形体を加熱乾燥処理して、焼結構造体の構成元
    素と光硬化樹脂とからなる成形体を作製する工程と該焼
    結構造体の構成元素と光硬化樹脂とからなる成形体から
    樹脂成分を除去する樹脂除去工程と該樹脂除去工程で得
    られた該焼結構造体の構成元素からなる成形体を熱処理
    することにより焼結構造体にする焼結工程とを具備する
    ことを特徴とする焼結構造体の製造方法。
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