JPH0979009A - きのこ形タペットの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 クラウニング量を任意に調整できる製造方法
の提供。 【解決手段】 中空のガイド胴部１ａと、ガイド胴部１
ａに向かってテーパー状に凹んだフランジ脚部１ｂとか
らなるタペット本体を構成する金属部材１の接合面１ｃ
と、耐摩耗性部材２の接合面２ａを（メタライズ層３を
介して）、ろう材４を載せた後に、空洞５ができるよう
に配置した後、ろう付け接合するときに、摺動面２ｂの
外縁部を除いた領域で耐摩耗性部材２にタペット本体に
向かって圧力付加手段６によって圧力を加えながらろう
付け接合する。好ましくは、圧力を加える領域はガイド
胴部１ａの横方向の断面の外周によって囲まれた領域に
合致する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する分野】本発明は、内燃機関においてカム
の運動を弁に伝えるために使用されるタペットの一種で
あるきのこ形タペットの製造方法に関する。より詳細に
は、本発明は、耐摩耗性部材がタペットのカム摺動面に
ろう付けされ且つ摺動面がクラウン状となっているきの
こ形タペットの製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】構造が簡単で軽量化がしやすいため平面
タペットが一般的であるが、平面タペットとカムとの相
対運動は複雑でかつ互いに動触する摺動面は高面圧とな
るのでピッチング、スコーリング等さまざまな形態の摩
耗が生ずる。従って、潤滑や材料の選択などに十分注意
を払う必要がある。

【０００３】近年は、内燃機関の動弁系の諸部材は一層
の高負荷運転に耐えることに加えてメンテナンスフリー
化も要求されている。カムと摺動する部材であるタペッ
トにおいても、例外ではなく、その要求に答えるべく、
給油を必要とせずに良好な摺動性能を有するカムとの摺
動部分の形状に特徴を有するきのこ形タペットの開発が
報告されている。更に、その改善として、形状の面から
は、摺動する相手部材との片当たりを防止するため、タ
ペットの摺動面の中央部をその外縁部に対して数ミクロ
ンから数十ミクロン高くして緩勾配の山形、すなわちク
ラウン状とする試みも報告されている。また、材料の面
からは、タペットの摺動部分の耐摩耗性を向上させるた
めに、熱処理による表面硬化、チル硬化、超硬合金の焼
結、自溶性合金溶射などを施して用いられてきたが、品
質上の問題やコスト面の欠点かがあった。また、材料の
面からの改善として、セラミックを代表例とする耐摩耗
性材料を張付ける摺動面を構成する部材としてタペット
本体に接合する試みが報告されているが、材料自体の改
質には限界があり、最近の苛酷な使用条件を満足させる
ものではなかった。

【０００４】最近では、摺動面を耐摩耗性材料で構成し
且つ該摺動面をクラウン状にすることによって材料面と
形状面の両方から摺動特性の更なる向上を図るべく、種
々の提案がなされている。例えば、クラウン形状とする
ために摺動面をダイヤモンド砥石で研磨することも提案
されているが、クラウン形状が三次元曲面であることか
ら三次元研磨となりコストの増大を伴うことに加えて、
セラミックなどの耐摩耗性材料で摺動面を構成したとき
には元々セラミックなどの耐摩耗性材料は難削材であり
機械加工が困難である。また、予め耐摩耗性部材をクラ
ウン状とするには、焼結前の成形体を予めクラウン状に
成形しておき、それを焼結することにより製造すること
になるが、焼結時の収縮率の厳格な制御は困難であり、
摺動面の中央部をその外縁部に対して数ミクロンから１
００ミクロン程度まで高くして緩勾配の山形とするよう
な高度な寸法精度要求には答えられない。

【０００５】特開昭６３−２２５７２８号公報には、本
体を構成する金属部材の摺動面に該金属部材よりも熱膨
張率の小さい耐摩耗性材料、代表的にはセラミックから
なる部材を加熱動合すると同時に、接合部冷却収縮によ
り該耐摩耗性部材の摺動面をクラウン状とする方法が提
案されている。この方法は、金属部材と耐摩耗性部材と
の熱膨張係数が大きく異なることから両方の部材を平面
として接合してもたわみが生ずることを利用して考案さ
れたものであるが、この方法は、加熱及び冷却のときの
雰囲気並びに温度の正確な制御とともに材料自体の物性
を利用したものなので、寸法精度が悪い。

【０００６】特開平４−２０３２０６号公報には、ろう
付けによって金属部材とセラミック部材を接合した後
に、セラミック部材の摺動面の外縁部に荷重を付与する
ことによってクラウン形状とすることが提案されている
が、やはり、この方法も、荷重とクラウニングとの相関
関係は認められているもののその関係は単純ではなく、
単に荷重を調整するだけでは容易に所望のクラウニング
を得ることはできない。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】それ故、本発明は、寸
法精度の高いクラウニング量を容易に付与できる、金属
部材と耐摩耗性部材とから構成されてなるきのこ形タペ
ットの製造方法を提供することを目的とする。

【０００８】また、本発明は、クラウニング量を任意に
調整できる、金属部材と耐摩耗性部材とから構成されて
なるきのこ形タペットの製造方法を提供することを目的
とする。

【０００９】更に、本発明は、望ましい摺動特性を有す
る金属部材と耐摩耗性部材とから構成されてなるきのこ
形タペットの製造方法を提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明の発明者は、鋭意
研究の結果、タペット本体を構成する金属部材と摺動面
を構成する耐摩耗性部材とがろう付けにより接合されて
なるきのこ形タペットの製造方法において、金属部材を
そのろう付け接合面が凹んだ形状のものに加工し、且
つ、ろう付けと同時に圧力を加えるが、その時の凹量を
任意に調整することにより、金属部材及びセラミック部
材の熱膨張の差に関係した凸形状が得られることを利用
するものである。

【００１１】すなわち、本発明のタペット本体を構成す
る金属部材と摺動面を構成する耐摩耗性部材とがろう付
けにより接合されてなるきのこ形タペットの製造方法
は、中空のガイド胴部と、該ガイド胴部に向かってテー
パー状に凹んだフランジ脚部とからなるタペット本体を
構成する金属部材を準備し、ろう材を耐摩耗性部材のろ
う付け接合面にのせ、そして、該摺動面の外縁部を除い
た領域に該タペット本体に向かって圧力を加えながら、
該金属部材と該耐摩耗性部材とをろう付けする各工程を
含むことを特徴とする。

【００１２】本発明の好ましい態様では、上記の製造方
法の圧力付加工程において、該摺動面上の圧力を加える
領域を該ガイド胴部の横断面の外周によって囲まれた領
域と実質的に合致するよう設定する。

【００１３】本発明の更に好ましい態様では、Ｍｎ−Ｍ
ｏ系メタライズ層を耐摩耗性部材の上に設けた上で、そ
れを金属部材と接合させる。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下に本発明の製造方法の実施の
形態を、図面を引用しながら詳述するが、これはあくま
でも例示であって、本発明の範囲の解釈に当たっては以
下の記載に限定されるものではなく当業者が適宜行い得
る設計上の改変などは含まれるものである。

【００１５】図１は、タペット本体を構成する金属部材
の軸方向の断面を示した図である。これに示されている
ように、金属部材１は、中空のガイド胴部１ａと凹んだ
フランジ脚部１ｂとからなるタペット本体を構成してい
る。フランジ脚部１ｂのろう付け接合面１ｃは、ガイド
胴部１ａに向かってテーパー状に凹んでいる。

【００１６】金属部材としては、タペットの構成材料と
して慣用されている鋼材や合金鋳鉄を使用できるが、好
ましくは、ＳＮＣＭなどの合金鋼である。反返り特性が
よいからである。ガイド胴部１ａと凹んだフランジ脚部
１ｂとからなるタペット本体１とするために、通常、鍛
造後、切削加工をして成形する。最大凹み量は、合金鋼
をタペット本体の構成材料とした場合には、好ましく
は、１００μｍである。耐摩耗性部材と金属部材との密
着性がよく且つ必要なクラウニング量（最大１００μｍ
程度）を付与できるからである。

【００１７】摺動面を構成する耐摩耗性部材は、円板状
であり、その材料としては、窒化ケイ素、炭化ケイ素、
ジルコニア、アルミナなどのセラミックに加えて、摺動
特性に優れた超硬合金やセーメットなども使用できる
が、この中で、好ましいものは、窒化ケイ素又はサイア
ロンを主成分とする焼結体である。熱膨張率及びヤング
率が小さいためクラウン形状にしやすいからである。耐
摩耗性部材を焼結材料から構成する場合には、適当な焼
結助剤及び成形バインダーを加えて金型プレスにより円
板状に成形する。その後、窒素雰囲気などの非酸化性雰
囲気下で焼結する。端部に対する仕上げ処理として、例
えばラップ研磨を施してもよい。また、厚みは、セラミ
ック部材、特に、窒化ケイ素又はサイアロンを主成分と
した場合には、好ましくは、１．０〜１．５ｍｍであ
る。１．０ｍｍ未満であると、セラミックの強度が低下
するし、また、１．５ｍｍを超えると、セラミックが変
形しにくくなるからである。

【００１８】図２ａは、耐摩耗性部材の軸方向の断面を
示した図である。図２ｂに示されているように、耐摩耗
性部材２のろう材と接合する面２ａに予めメタライジン
グ処理を施して、メタライズ層３を設けるのが好まし
い。ろう材との密着性をよくするためである。なお、図
２ａでは理解のために、メタライズ層が実際によりも厚
く示されている。ろう材がチタン、ジルコニウムなどの
活性金属を含まない場合には、予めメタライジング処理
を施しておくのが特に望ましい。メタライズ層は、好ま
しくは、Ａｇ−Ｃｕ−Ｔｉ系材料からなる。

【００１９】上述の条件を満足するタペット本体と構成
する金属部材を摺動面を構成する耐摩耗性部材とろう付
けにより接合する。ろう材は、好ましくは、銀ろう合金
である。

【００２０】図３は、金属部材と耐摩耗性部材とのろう
付け直前の配置状態を示した図である。ろう付けは、加
熱炉中において、図３に示されるように、金属部材１と
耐摩耗性部材２を配置して行う。まず、圧力付加手段
６、例えば、押さえ治具の上部の平面領域上６ａに、耐
摩耗性部材２の摺動面２ｂを、接触配置する。平面領域
６ａは、好ましくは、円形である。別法として、圧力の
かかる領域を限定するために、押さえ治具の上にその平
面領域より小さい円板を載せてもよい。このとき、注意
することは、圧力が、摺動面２ｂの外縁部にはかからな
いように接触配置することである。好ましくは、図３に
おいて示されているように、摺動面２ｂ上の圧力を加え
る領域が、（図示はされていないが）上から保持懸垂さ
れた金属部材１のガイド胴部２の横断面の外周によって
囲まれた領域に実質的に合致するようにする。この場合
には、加えた荷重と結果として得られるタペットのクラ
ウニング量との間により良好な相関関係が認められる。
ろう付け直前には、金属部材１と耐摩耗性部材２とを、
金属部材１と耐摩耗性部材２とによって囲まれた空洞５
ができている。

【００２１】圧力は、ろう付けの際に加えられるが、厳
密にろう付け工程中の全時間にわたって加えなければな
らないというものではない。一定時間経過後は部材の変
形が停止するからである。なお、好ましくは、一定の圧
力で行う。

【００２２】ろう付けは、非酸化性雰囲気中、高温、銀
ろう材を用いたときは好ましくは８２０〜９２０℃の温
度下で、好ましくは１０〜３０分間、ろう材を加熱融解
して行う。

【００２３】圧力付加下でろう付けを行うと、耐摩耗性
部材と金属部材との熱膨脹係数の違いから、圧力が直接
付加されない摺動面上の領域の反返り作用により、結果
として得られるタペットの軸方向の断面は、図４に示さ
れる通りとなる。耐摩耗性部材２の摺動面２ｂが、その
中央部が外縁部に比べてテーパー状に膨らんでいる。す
なわち、クラウン形状となっている。このとき、クラウ
ン形状を評価する指標として、クラウニング量を使用す
る。ここで、クラウニング量とは、図４に示されている
摺動面２ｂの外周によって限定された領域から最凸部ま
での距離Ｎのことである。

【００２４】なお、本発明の好適な実施の形態は以下の
通りである。まず、タペット本体を構成する材料は合金
鋼とし、また、ろう付け接合面の最大凹み量を１００μ
ｍとなるよう製造し、更に、耐摩耗性部材を、円板状で
あり、且つ、以下の式

【００２５】

【式１】（このとき、Ｐは荷重（ｋｇ）を、ｒは円板の
半径（ｍｍ）を、ｈは円板の厚さ（ｍｍ）（但し、１．
０〜１．５ｍｍの範囲）を、Ｅは耐摩耗性部材の弾性係
数を示す）を満足するよう設計する。

【００２６】このように、耐摩耗性部材と金属部材を設
計すれば、摺動面にかける荷重（換言すれば圧力）を調
整することにより、最大１００μｍまでの範囲で任意の
クラウニング量をより一層寸法精度高く付与できる。ま
た、摺動面にかける荷重とクラウニング量との間の相関
関係も一層向上する。

【００２７】

【実施例】窒化ケイ素粉末９０重量％にアルミナーイッ
トリア系焼結助剤及び成形バインダーを加え、金型プレ
スにより円板状に成形し、窒素雰囲気で焼結し、仕上げ
研磨をして、径が３４ｍｍ、板厚が１．０ｍｍ、面粗さ
が１．５ｓの窒化ケイ素焼結体からなる円板を複数作製
した。このとき、該円板は、上記の式１を満足するもの
である。そして、該円板上に、Ｍｎ−Ｍｏメタライズ層
を２０μｍの厚さだけ施した。

【００２８】次に、鍛造と機械切削加工により、軸方向
の長さが８４ｍｍで、フランジ脚部のろう付け接合面の
外周によって限定された領域の径Ｋが３８ｍｍで、最大
凹み量Ｌが１００μｍで、ガイド胴部の横断面の外周の
径が１８ｍｍのタペット本体を合金鋼で作製した。

【００２９】次に、これらを上の実施の形態の欄で詳述
したように、炉中に配置した。このとき、摺動面のうち
ガイド胴部の横断面に合致した領域にのみ圧力がかかる
ように、上部面積がガイド胴部の横断面と合致した押さ
え治具上に、該セラミック部材を載せた。タペット本体
は上方から懸垂保持した。ろう付け直前には、円板とタ
ペット本体との間には、それらによって囲まれた空洞が
できていた。ろう付けは、８６０℃で３０分間加熱する
ことによって行った。また、ろう付けの際にかけて荷重
は、２０ｋｇとした。その後、室温まで冷却した。得ら
れたタペットは、押さえ治具で押さえられていない部分
が塑性変形により反返って、均一なクラウン形状をなし
ていた。そして、クラウニング量は、いずれの試料も１
００μｍであった。

【００３０】また、製造後に目視検査をしたところ、い
ずれの試料も、後処理は不要であった。

【００３１】上記実施例は、本発明の製造方法によれ
ば、複雑な又は困難な調整をせずに、所望のクラウニン
グ量を寸法精度高くタペットに付与することができるこ
とを立証している。

【００３２】

【発明の効果】本発明のきのこ形タペットの製造方法に
よれば、クラウニング量を任意に調整できる。また、後
処理としての研磨を必要としない。

【図面の簡単な説明】

【図１】タペット本体を構成する金属部材の軸方向の断
面を示した図である。

【図２】耐摩耗性部材上にメタライジング処理を施す工
程を示した図である。

【図３】金属部材と耐摩耗性部材とのろう付け直前の配
置状態を示した図である。

【図４】本発明の製造方法の実施により得られるきのこ
形タペットの軸方向の断面を示した図である。

【符号の説明】

１：タペット本体、１ａ：ガイド胴部、１ｂ：フランジ
脚部、１ｃ：ろう付け接合面 ２：耐摩耗性部材、２ａ：ろう付け接合面、２ｂ：摺動
面 ３：メタライズ層 ４：ろう材 ５：空洞 ６：圧力付加手段、６ａ：上部の平面領域

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 タペット本体を構成する金属部材と摺動
   面を構成する耐摩耗性部材とがろう付けにより接合され
   てなるきのこ形タペットの製造方法において、 中空のガイド胴部と、該ガイド胴部に向かってテーパー
   状に凹んだフランジ脚部とからなるタペット本体を構成
   する金属部材とを準備し、 ろう材を耐摩耗性部材のろう付け接合面にのせ、そし
   て、 該摺動面の外縁部を除いた領域に該タペット本体に向か
   って圧力を加えながら、該金属部材と該耐摩耗性部材と
   をろう付けする各工程を含む、摺動面がクラウン形状の
   きのこ形タペットの製造方法。
2. 【請求項２】 該摺動面上の圧力を加える領域が該ガイ
   ド胴部の横断面の外周によって囲まれた領域と実質的に
   合致していることを特徴とする請求項１に記載のきのこ
   形タペットの製造方法。
3. 【請求項３】 タペット本体を構成する材料は合金鋼と
   し、また、ろう付け接合面の最大凹み量は１００μｍで
   あることを特徴とする請求項１又は２に記載のきのこ形
   タペットの製造方法。
4. 【請求項４】 該耐摩耗性部材は、円板状であり、且
   つ、以下の式 【数１】 （このとき、Ｐは荷重（ｋｇ）を、ｒは円板の半径（ｍ
   ｍ）を、ｈは円板の厚さ（ｍｍ）を、Ｅは耐摩耗性部材
   の弾性係数を示す）を満足するものであることを特徴と
   する請求項３に記載のきのこ形タペットの製造方法。
5. 【請求項５】 該耐摩耗性部材は窒化ケイ素又はサイア
   ロンを主成分として含むものであることを特徴とする請
   求項１乃至４のいずれか１項に記載のきのこ形タペット
   の製造方法。
6. 【請求項６】 ろう付けに先だち、耐摩耗性部材の接合
   面上にメタライズ層を設けることを特徴とする請求項１
   乃至５のいずれか１項に記載のきのこ形タペットの製造
   方法。