JPH0975891A - 製鉄ダストの湿式処理方法 - Google Patents

製鉄ダストの湿式処理方法

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JPH0975891A
JPH0975891A JP23241595A JP23241595A JPH0975891A JP H0975891 A JPH0975891 A JP H0975891A JP 23241595 A JP23241595 A JP 23241595A JP 23241595 A JP23241595 A JP 23241595A JP H0975891 A JPH0975891 A JP H0975891A
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bath
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anode
dust
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JP23241595A
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Seiichi Kotani
精一 小谷
Hiromitsu Moridera
弘充 森寺
Jun Akimoto
純 秋元
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製鉄ダストの湿式処理において湿式処理で発
生する残渣を減量化、無害化し、ダスト中に含まれる鉛
と鉄をそれぞれ金属として回収し、亜鉛を硫酸溶液中に
亜鉛イオンとして回収する製鉄ダストの湿式処理方法を
提供する。 【解決手段】 製鉄ダストを酸により溶解し、残渣を分
離洗浄後、電気分解によりろ液から鉛を電析回収する。
その後、この電解溶液に中和剤を加えてpHを4〜7に調節
後、電気分解により電解溶液から鉄を電析回収する。電
解溶液中に残留した亜鉛イオンを有機溶媒により溶媒抽
出し、それを硫酸溶液中に逆抽出することにより亜鉛イ
オンを硫酸溶液中に回収することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】製鉄業で発生するダスト(高
炉ダスト、転炉ダスト、電気炉ダスト等)、またはスラ
ッジの再資源化処理、および無害化処理のための湿式処
理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】製鉄ダストには高炉ダスト、転炉ダス
ト、電気炉ダスト等がある。それぞれの代表的な組成を
表1に示す。
【0003】
【表1】
【0004】これらの主成分は酸化鉄であるが、亜鉛、
鉛等の重金属を含有するため産業廃棄物として扱われて
いる。特に電気炉ダストは、スクラップを原料とするた
め、亜鉛、鉛の含有量が多くなっており、ダストからこ
れらの重金属を分別する必要がある。また、酸洗ライン
などから発生するスラッジ中にもこのような重金属が含
まれており、ダストと同様に重金属を分離、回収する必
要がある。(以下、これらのスラッジもふくめて製鉄ダ
ストと総称する。) 従来の製鉄ダストの処理方法としては大きく分けて乾式
法と湿式法がある。
【0005】乾式処理法で一般的な方法は、特開昭56
−236号公報、特開昭58−141345号公報にあ
るような横型回転炉を用いる方法である。ダストを横型
回転炉にコークス等の炭材とともに投入し、1100〜1300
℃でダストを還元処理し、亜鉛、鉛等を金属蒸気として
揮発させ固体分から除去する。亜鉛、鉛等が除去された
固形分は、製鉄原料、セメント原料、埋め立て等に利用
される。
【0006】この時固体分から揮発した亜鉛は回転炉の
出口で再び酸化し、酸化亜鉛として回収される。回収さ
れる粗酸化亜鉛中には塩素が含まれており、亜鉛原料と
してこの粗酸化亜鉛を利用するには、特開平4−147
927号公報のような脱塩素処理が必要となっている。
その結果、製鉄ダストの亜鉛原料に至るまでの処理コス
トは大きなものになっている。したがって、乾式法では
ダスト処理のコストと回収される亜鉛原料の価値とをバ
ランスさせるために生産性をあげる必要があり、その設
備規模も60,000t/y程度の大きなものになっている。
【0007】一方、一般に湿式処理は、比較的少量の原
料で多様な不純物元素を含む原料を処理するのに適して
いるので、ダストを発生場所で処理するのに適してい
る。湿式法ではダストを酸溶液で抽出する方法とアルカ
リ溶液で浸出する方法がある。酸浸出では特開昭61−
106730号公報、特開昭62−45391号公報に
あるようにダストの金属成分を溶かした後、pHを調整す
ることにより鉄分を沈殿させ、溶液中に亜鉛分を残して
いる。
【0008】アルカリ浸出では特開昭57−79127
号公報、特開昭57−501384号公報にあるように
ダスト中の亜鉛、鉛分だけを浸出し、鉄分を浸出残渣と
して回収している。しかし、これらの浸出法では原料ダ
ストの量に匹敵する鉄含有残渣が発生する。電気炉ダス
トの酸浸出の場合でも、乾燥重量で原料ダスト1に対し
て鉄含有残渣は0.7程度ある。フィルタープレスを経て
排出された鉄含有残渣中に30%程度水分を含有すると考
えると、湿式処理により排出された直後の残渣の量は、
あまり減量化されておらず、廃棄処理する場合、十分な
処分地を確保する必要がある。
【0009】また、これらを製鉄原料として利用するに
は、乾燥処理と、場合によっては造粒処理が必要であ
り、その分のエネルギーと処理コストが必要となる。さ
らに、残渣回収の際、残渣に付着する溶液を十分に洗い
落とさないと、亜鉛、鉛等の重金属が残渣中に混入する
ことが予想され、製鉄原料としても受け入れられず、廃
棄処分もできなくなる。そのため、さらに処理効率の向
上した製鉄ダストの湿式処理方法の開発が望まれてい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来、製鉄所で発生し
たダストを製鉄所内だけで処理する場合、乾式処理法で
は処理対象となるダスト量が一製鉄所だけでの発生する
量を対象としたのでは量的に少ないため採算が合わな
い。また、従来の湿式処理法では、亜鉛回収と、鉛回収
に重点があり、排出される残渣の減量化、利用技術につ
いてあまり考慮されていない。以上のことより、本発明
が解決しようとする目的は、ダストの湿式処理におい
て、残渣の減量化と無害化を達成し、しかも亜鉛、鉛、
鉄をそれぞれ資源回収する新しい湿式処理方法を提供す
ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、製鉄所ダスト
の湿式処理における鉄含有残渣の発生を極力抑える手段
に着目し、溶液中から鉄を金属として選択的に回収でき
る知見を得て、本発明に至った。本発明の課題を解決す
るための手段は以下のとおりである。 (1) 製鉄ダストを酸で溶解し、溶解残渣をろ過して
除去した後、ろ液のpHを-0.5〜3に調節して電気分解
し、前記ろ液中に溶解した鉛を主成分とする重金属を電
解析出させて回収するとともに、前記ろ液中の鉄イオン
を3価から2価に還元した後、電気分解後の電解溶液の
pHを4〜7に調節し、前記電解溶液を電気分解し、前記電
解溶液中の鉄を電解析出させて回収するとともに電解液
中に亜鉛イオンを残留させることを特徴とする製鉄ダス
トの湿式処理方法。
【0012】(2) アノードに鉄、カソードに鉛、鉛
合金またはカーボンを用いてろ液を電気分解する際に、
水素標準電極に対するカソード電位が -0.47〜-0.25V
となるように両極の電圧を制御して、アノードから鉄を
溶出させるとともに、カソードに溶液中の鉛を主成分と
する重金属を電解析出させて回収することを特徴とする
(1)記載の製鉄ダストの湿式処理方法。
【0013】(3) アノードに亜鉛、カソードに鉄ま
たはカーボンを用いて、pHを4〜7に調節した電解溶液を
電気分解する際に、水素標準電極電位に対するカソード
電位が-0.82〜-0.47Vとなるように両極の電圧を制御し
て、アノードから亜鉛を溶出させるとともに、カソード
に鉄を電解析出させて回収することを特徴とする(1)
または(2)記載の製鉄ダストの湿式処理方法。
【0014】(4) アノードに不溶性電極、カソード
に鉄またはカーボンを用いて、pHを4〜7に調節した電解
溶液を電気分解する際に、酸素発生浴と鉄電解浴とを陰
イオン交換膜で分割した電気分解槽を用い、鉄電解浴に
該電解溶液を投入し、酸素発生浴には鉄電解浴とほぼ同
等のpHを有する溶液を投入し、酸素発生浴にアノードを
浸漬し、鉄電解浴にカソードを浸漬して、水素標準電極
電位に対するカソード電位が-0.82〜-0.47Vとなるよう
に両極の電圧を制御して、アノードから酸素を発生させ
るとともにカソードに鉄を電解析出させることを特徴と
する(1)または(2)記載の製鉄ダストの湿式処理方
法。
【0015】(5) アノードに不溶性電極、カソード
に鉄またはカーボンを用いて、pHを4〜7に調節した電解
溶液を電気分解する際に、酸素発生浴と塩生成浴とが陽
イオン交換膜で仕切られ、塩生成浴と鉄電解浴とが陰イ
オン交換膜で仕切られた、酸素発生浴、塩生成浴、鉄電
解浴からなる電気分解槽を用い、鉄電解浴に前記電解溶
液を投入し、酸素発生浴にはpH7〜14の溶液を投入し、
塩生成浴には蒸留水またはpH4〜10の溶液を投入した
後、酸素発生浴にアノードを浸漬し、鉄電解浴にカソー
ドを浸漬して、水素標準電極電位に対するカソード電位
が-0.82〜-0.47Vとなるように両極の電圧を制御して、
アノードから酸素を発生させるとともにカソードに鉄を
電解析出させることを特徴とする(1)または(2)記
載の製鉄ダストの湿式処理方法。
【0016】(6) (1)記載のの溶解残渣を中和処
理して、セメント原料、路盤材、埋め立て土砂の原料と
して回収することを特徴とする製鉄ダストの湿式処理方
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のプロセスフローを図1に
示す。本発明の主要工程は、1)ダスト溶解、2)ろ過、3)
鉛電解、4)pH調整、5)鉄電解、6)溶媒抽出、7)逆抽出、
8)イオン交換、9)中和である。以下、本工程について、
その特徴について説明する。1)のダスト溶解では、金属
酸化物を酸によりイオンとして溶解させる。2価の金属
元素の場合の溶解反応は次の化学反応式で表される。
【0018】MeO+2H+→Me2++H2O (Me
は2価の金属元素) この溶解反応によってダスト中の有害な重金属である
鉛、亜鉛をほぼ完全に酸溶液中に溶解し、溶解残渣中に
これらの重金属を残さないようにする。電気炉ダストの
場合、ダスト1kg中には、酸溶解反応にあずかる酸素原
子は13.5mol程度存在するため、金属元素を全て溶解さ
せるためには27mol以上の水素イオンを投入する。投入
する酸溶液の量は酸の濃度に対して決まる。たとえば、
2.7規定の硝酸であれば10L以上投入する。
【0019】酸の種類としては、鉄、鉛、亜鉛が沈殿物
を作りにくいものとして、塩酸、硝酸、塩素酸または過
塩素酸が選択できる。一般的な酸の一つである硫酸は、
鉛が硫酸鉛の沈殿を形成するので、ダスト溶解の酸とし
て好ましくない。酸濃度については、酸濃度が低すぎる
とダストを溶解するのに必要な酸溶液の量が非常に多く
なり、装置容量が大きくなりすぎるので0.1規定以上に
する。また、酸濃度が濃すぎると硝酸、塩素酸または過
塩素酸を用いた場合、酸化力が強くなりすぎるので5規
定以下が好ましい。
【0020】溶解操作は十分攪拌しながら行う。溶解反
応は加熱することにより促進されるが、90℃を越えると
溶液の蒸発量が多くなるため、60〜90℃が好ましい。2)
のろ過工程では、シリカ、アルミナ、カーボン及び酸化
鉄を主成分とする溶解残渣を酸溶液または水で十分に洗
浄し、溶解残渣に付着した重金属を取り除く。このと
き、ろ液のpHが-0.5〜3になるように洗浄水を調整しな
がら残渣を洗浄する。pHを-0.5未満にすると、次工程の
鉛電解工程でカソードの水素過電圧を超えて水素が発生
しやすくなり、また、その後工程のpH調整工程で中和剤
の投入量が多くなり不利である。pHを3以下にするのは
溶液中に3価の鉄イオンを完全に溶かし込むためであ
る。望ましくは、pH1〜2程度に調整できるように、ダス
ト溶解工程から酸の投入量を管理する。また、ろ液のpH
の調節にはCaO等の中和剤を用いてもよい。ろ過工程で
発生する溶解残渣の量は、電気炉ダストの場合、乾燥重
量で初期原料ダスト100%として15%〜25%程度にまで減量
化することができる。
【0021】3)の鉛電解工程の装置概要図を図2に示
す。ここで、アノードには鉄板をおき、鉄の溶解反応を
起こす。この鉄の溶解反応は次の化学反応式で表わされ
る。 Fe→Fe2++2e- ここで鉄をアノードとして用いるのは、アノード表面に
おいて3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに酸化されるの
を防ぐためである。
【0022】カソードには水素の発生を抑制するため水
素過電圧の高い鉛、鉛合金あるいはカーボンを用いる。
ここで、3価の鉄イオンは次工程でpHを4〜7にした際に
沈澱を生ずるため、pHが4〜7でも安定な2価の鉄イオン
に還元する必要がある。本工程の電気分解では、鉛の還
元析出と同時に鉄イオンも3価から2価にまで還元でき
る。
【0023】以上のように本発明は、製鉄ダストから鉛
を主成分とする重金属を電解析出して回収する工程で、
鉄イオンは3価から2価に還元することができ、この2
価の鉄イオンを電解析出させて鉄を回収することによ
り、製鉄ダストの湿式処理後の残渣量を減少できること
を見いだし、本発明を完成するに至った。これらの化学
反応式は次式で表される。
【0024】Pb2++2e-→Pb Fe3++ e-→Fe2+ また、原料ダスト中に含まれる重金属の80〜90wt%は
鉄、鉛、亜鉛で構成されるが、ニッケル,錫,銅が含まれ
る場合には、これらの元素も鉛とともに同時に電解析出
させて除去できる。
【0025】電気分解はカソード電位を管理しながら行
う。カソード電位を水素標準電極電位で-0.47〜-0.25V
に制御し、電解電流を計測しながら鉛を溶液中からカソ
ードに析出させる。pH=-0.5〜3でカソード電位が-0.47
V以下になると、溶液中の鉄も同時に析出し、鉄の析出
した箇所から水素が発生するので、鉛を選択的に析出さ
せることができない。
【0026】また、pH=-0.5〜3でカソード電位が-0.25
V以上では鉛は析出しない。望ましくは、カソード電位
は-0.32V程度で制御する。電気分解の間、電解電流の
値を計測し、電解電流がほとんど流れなくなったことで
鉛の電解析出と3価の鉄イオンの2価の鉄イオンまでの
還元が完了したことを確認できる。4)のpH調整工程で
は、鉛電解工程が完了した後の電解溶液に、中和剤とし
てアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリ
ウム水溶液、石灰等を用い、pHを4〜7に調整する。この
ときpHを4以下にすると、次工程の鉄電解工程で水素が
発生し電解効率を低下させてしまうので好ましくない。
また、pHを7以上にすると、2価の鉄イオン、または亜
鉛イオンの水酸化物の沈澱が生成するため好ましくな
い。望ましくは、pH=5〜6に調節する。
【0027】5)の鉄電解工程では、アノードに亜鉛板を
用いて亜鉛溶解を起こす場合と不溶性電極を用いて酸素
発生を起こす場合とがある。この2通りの方法は、金属
亜鉛を安価に入手できるかどうかで使い分ける。例え
ば、金属亜鉛の精錬元など金属亜鉛を安価に入手可能な
所では、アノードに亜鉛板を用いる方法が有利である
が、亜鉛板を市販価格並でしか購入できない所では、ア
ノードに不溶性電極を用いてもよい。また、製鉄ダスト
中に含まれる塩化物または製鉄ダストを溶解する塩酸等
に起因する塩素イオンが電解溶液中に存在する場合、低
酸素過電圧または高塩素過電圧の電極を選択して、アノ
ードで酸素を発生させながらカソードで鉄を電解析出さ
せることにより、アノードからの塩素の発生を避けるこ
とができる。
【0028】アノード反応に亜鉛溶解反応を用いる場合
の装置概要図は前記図2と同様であり、この場合ではア
ノードとして亜鉛板を用い、亜鉛溶解反応を起こす。こ
の亜鉛溶解反応は次の化学反応式で表される。 Zn→Zn2++2e- カソードには、亜鉛溶解反応、酸素発生反応の両方の場
合とも、鉄を電解析出させるので、鉄を電極として用い
るか、電極に付着した鉄を容易に剥離回収できるように
カーボン電極を用いる。
【0029】電気分解は、亜鉛溶解反応、酸素発生反応
の両方の場合とも、カソード電位を管理しながら行う。
カソード電位を水素標準電極電位で-0.82〜-0.47Vに制
御し、電解電流を計測しながら溶液中から選択的に鉄を
析出させる。この化学反応式は次式で表される。 Fe2++2e-→Fe カソード電位が-0.82V以下になると、溶液中の亜鉛も
同時に析出してしまい、鉄を選択的に析出させることが
できないため好ましくない。また、カソード電位が-0.4
7V以上では溶液中の鉄を析出させることができないの
で、好ましくない。
【0030】望ましくは、カソード電位は-0.62V程度
にする。電気分解の間、電解電流の値を計測し、電解電
流がほとんど流れなくなったことで鉄の電解析出が完了
したことを確認する。アノード反応に酸素発生反応を用
いる場合の装置概要図を図3および図4に示す。この場
合ではアノードで水が分解し、酸素を発生させる。この
酸素発生反応は次の化学反応式で表される。
【0031】2H2O→O2+4H++4e- ここで、鉄電解浴の仕切に陰イオン交換膜を用いるの
は、鉄イオンがアノード側に拡散して、アノード電極で
Fe2+→Fe3++e- の反応を起こすのを防ぎ、鉄電解浴
中に亜鉛イオンを残留させ、亜鉛イオンを鉄電解浴中に
濃縮するためである。
【0032】図3の場合と図4の場合の違いは、鉄電解
浴中に含まれる陰イオンが酸素発生浴へ浸透するのを防
がない場合と防ぐ場合の違いである。特に塩化物イオン
はニッケル等を腐食するので、ダストの溶解に塩酸を用
いる場合やニッケルをアノードに用いる場合には図4の
場合が好ましい。酸素発生のためのアノード電極には不
溶性電極であるカーボン電極、あるいは酸素過電圧の低
いニッケルメッキ電極、塩素過電圧の高いチタン等を用
いる。特にイオウを含有する黒ニッケルメッキの施され
た電極は酸素過電圧が低く、酸素発生には有効である。
また、電解効率の低下を防ぐためアノード近傍は十分に
撹拌し、アノードに付着した酸素の気泡を除去する。
【0033】カソードと電気分解時のカソード電位の管
理については、アノード反応に亜鉛溶解反応を用いる場
合と同様の理由で、カソードには鉄あるいはカーボン電
極を用い、カソード電位を水素標準電極電位で-0.82〜-
0.47Vに管理した電気分解を行い、電気分解の間、電解
電流の値を計測し、電解電流がほとんど流れなくなった
ことで鉄の電解析出が完了したことを確認する。
【0034】また、電気分解槽を3分割する図4のよう
な場合では、酸素発生浴の溶液をpH10〜14程度のアルカ
リ性にすることによって、より良好な酸素発生を起こさ
せることができる。6)の溶媒抽出工程では、鉄、鉛等の
重金属を電解析出により除去した後の電解溶液中には、
亜鉛が残留しており、適当な有機溶媒を用いて亜鉛イオ
ンを溶媒抽出する。ここで用いる抽出剤には、たとえ
ば、一般的な抽出剤である2-エチルヘキシルリン酸をケ
ロシンに溶解したものを用いることができる。この工程
で電解溶液から亜鉛を99%近くまで抽出する。
【0035】7)の逆抽出では、抽出剤に溶け込んだ亜鉛
イオンを硫酸溶液に接触させ、硫酸溶液中に亜鉛イオン
を取り出す。ここで得られた亜鉛イオンを含有する硫酸
溶液は、電解亜鉛精錬原料、あるいは電気亜鉛メッキ浴
の原料として製鉄所内で利用することができる。8)のイ
オン交換の処理により電解溶液中のアルカリ土類金属イ
オン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン等を取
り除き、強酸性溶液を得る。この処理で得られた強酸性
溶液は、再び、ダスト溶解の浸出溶液としてリサイクル
利用することができる。
【0036】9)の浸出残渣の中和工程では、浸出残渣中
に含まれる酸性溶液を石灰、あるいは酸化カルシウムを
含む製鉄スラグ等を用いて中和する。中和された浸出残
渣中には有害な重金属元素は含まれておらず、セメント
原料、路盤材、埋め立て土砂として有効利用できる。
【0037】
【実施例】組成が前記表1である電気炉ダスト1kgを3
規定の硝酸溶液10Lで溶解した。溶解残渣を濾過により
分離し、十分に水洗し、乾燥した後重量を測定したとこ
ろ、残渣は160gであった。この残渣中の重金属の含有量
は重量%で鉄5%、亜鉛0.01%、鉛0.001%以下となり、こ
の結果、従来の鉄を残渣として回収する方法において残
渣の乾燥重量が800g近くあるのに対し残渣量を減少
させ、十分に重金属を浸出しており、残渣の減量化と無
害化を達成することができた。
【0038】ろ液のpHを1.0に調節し電解槽に移した。
アノードに亜鉛板、カソードに鉛板を用い、カソード電
位を測定する参照電極を用意し、ポテンシオスタットを
用いて、十分に攪拌しながら第1段電解を行なった。こ
のとき、カソード電位を水素標準電極電位に対して-0.3
2Vで、鉛の電解析出を行った。その結果、鉛の析出と、
3価の鉄イオンが2価の鉄イオンになる還元反応による
電流が検出された。その後、電流が減少しほとんど流れ
なくなり、電解を停止した。この電解で得られた金属鉛
は22.2gあり、鉛の純度は90%であった。これは、粗鉛と
して十分に価値のある純度である。
【0039】この溶液を取り出し、アンモニア水でpHを
5に調整し、図2に相当する装置でポテンシオスタット
を用い、アノードに亜鉛、カソードにカーボンを用い、
カソード電位を水素標準電極電位に対して-O.62Vでカソ
ードに鉄を電解析出させた。そして、電解電流がほとん
ど流れなくなった時点で電解を停止した。この電解で得
られた金属鉄は36.2gあり、鉄の純度は95%であり、鉄源
として十分に価値あるものが得られた。また、溶液中の
重金属濃度は、亜鉛濃度が1.3 mol/Lであるのに対
し、鉄濃度が0.001 mol/Lとなり、溶媒抽出にお
いて、亜鉛の選択抽出が可能な程度になった。
【0040】また、鉛電析後、アンモニア水でpHを5に
調整した溶液を図3に相当する装置でポテンシオスタッ
トを用い、アノードにニッケル、カソードにカーボンを
用い、カソード電位を水素標準電極電位に対して-O.62V
で鉄の電解析出を行った。そして、電解電流がほとんど
流れなくなった時点で、電解を停止した。その結果、鉄
の電析挙動に関しては、アノード電極に亜鉛を用いた場
合と同様の結果であったが、アノード反応に亜鉛溶解反
応を用いた場合に比べ、電解溶液中の亜鉛濃度が低かっ
た。この電解で得られた金属鉄は35.5gあり、その純度
は96%であり、十分に価値あるものが得られた。また、
溶液中の重金属濃度は、亜鉛濃度が0.5mol/Lであ
るのに対し、鉄濃度が0.001 mol/Lとなり、溶媒
抽出において、亜鉛の選択抽出が可能な程度になった。
【0041】鉄、鉛を電解析出により除去した電解溶液
中の亜鉛を2-エチルヘキシルリン酸をケロシンに溶解し
た溶媒で抽出した。抽出剤に溶け込んだ亜鉛イオンは硫
酸溶液に接触させ、硫酸溶液中に亜鉛イオンを逆抽出し
た。以上の処理で、従来処理後に製鉄ダスト量の80%
近くあった残渣の量を製鉄ダストの16%に減少させ
て、鉛、鉄、亜鉛を選択的に回収できた。
【0042】
【発明の効果】製鉄ダストの湿式処理において発生する
溶解残渣の量を十分に減量化し、鉛、鉄の重金属を金属
として回収し、亜鉛を電気メッキ浴槽との硫酸亜鉛溶液
として回収できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製鉄ダストの処理方法のプロセスフロ
ー図である。
【図2】本発明の鉛電解および鉄電解工程の装置概要図
である。
【図3】本発明の他の実施態様の鉄電解工程を示す装置
概要図である。
【図4】本発明の他の実施態様の鉄電解工程を示す装置
概要図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 製鉄ダストを酸で溶解し、溶解残渣をろ
    過して除去した後、ろ液のpHを-0.5〜3に調節して電気
    分解し、該ろ液中に溶解した鉛を主成分とする重金属を
    電解析出させて回収するとともに、該ろ液中の鉄イオン
    を3価から2価に還元した後、電気分解後の電解溶液の
    pHを4〜7に調節し、該電解溶液を電気分解し、該電解溶
    液中の鉄を電解析出させて回収するとともに電解液中に
    亜鉛イオンを残留させることを特徴とする製鉄ダストの
    湿式処理方法。
  2. 【請求項2】 アノードに鉄、カソードに鉛、鉛合金ま
    たはカーボンを用いてろ液を電気分解する際に、水素標
    準電極に対するカソード電位が -0.47〜-0.25Vとなる
    ように両極の電圧を制御して、アノードから鉄を溶出さ
    せるとともに、カソードに溶液中の鉛を主成分とする重
    金属を電解析出させて回収することを特徴とする請求項
    1記載の製鉄ダストの湿式処理方法。
  3. 【請求項3】 アノードに亜鉛、カソードに鉄またはカ
    ーボンを用いて、pHを4〜7に調節した電解溶液を電気分
    解する際に、水素標準電極電位に対するカソード電位が
    -0.82〜-0.47Vとなるように両極の電圧を制御して、ア
    ノードから亜鉛を溶出させるとともに、カソードに鉄を
    電解析出させて回収することを特徴とする請求項1また
    は請求項2記載の製鉄ダストの湿式処理方法。
  4. 【請求項4】 アノードに不溶性電極、カソードに鉄ま
    たはカーボンを用いて、pHを4〜7に調節した電解溶液を
    電気分解する際に、酸素発生浴と鉄電解浴とを陰イオン
    交換膜で分割した電気分解槽を用い、鉄電解浴に該電解
    溶液を投入し、酸素発生浴には鉄電解浴とほぼ同等のpH
    を有する溶液を投入し、酸素発生浴にアノードを浸漬
    し、鉄電解浴にカソードを浸漬して、水素標準電極電位
    に対するカソード電位が-0.82〜-0.47Vとなるように両
    極の電圧を制御して、アノードから酸素を発生させると
    ともにカソードに鉄を電解析出させることを特徴とする
    請求項1または請求項2記載の製鉄ダストの湿式処理方
    法。
  5. 【請求項5】 アノードに不溶性電極、カソードに鉄ま
    たはカーボンを用いて、pHを4〜7に調節した電解溶液を
    電気分解する際に、酸素発生浴と塩生成浴とが陽イオン
    交換膜で仕切られ、塩生成浴と鉄電解浴とが陰イオン交
    換膜で仕切られた、酸素発生浴、塩生成浴、鉄電解浴か
    らなる電気分解槽を用い、鉄電解浴に該電解溶液を投入
    し、酸素発生浴にはpH7〜14の溶液を投入し、塩生成浴
    には蒸留水またはpH4〜10の溶液を投入した後、酸素発
    生浴にアノードを浸漬し、鉄電解浴にカソードを浸漬し
    て、水素標準電極電位に対するカソード電位が-0.82〜-
    0.47Vとなるように両極の電圧を制御して、アノードか
    ら酸素を発生させるとともにカソードに鉄を電解析出さ
    せることを特徴とする請求項1または請求項2記載の製
    鉄ダストの湿式処理方法。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の溶解残渣を中和処理し
    て、セメント原料、路盤材、埋め立て土砂の原料として
    回収することを特徴とする製鉄ダストの湿式処理方法。
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