JPH0967621A - 材質変動の少ない熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

材質変動の少ない熱延鋼板の製造方法

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JPH0967621A
JPH0967621A JP24532895A JP24532895A JPH0967621A JP H0967621 A JPH0967621 A JP H0967621A JP 24532895 A JP24532895 A JP 24532895A JP 24532895 A JP24532895 A JP 24532895A JP H0967621 A JPH0967621 A JP H0967621A
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temperature
rolling
point
cooling
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Goro Anami
吾郎 阿南
Tetsuo Toyoda
哲夫 十代田
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 計算負荷が小さく、オンライン制御により材
質の変動を十分抑えることができる熱延鋼板の製造方法
を提供する。 【解決手段】 オーステナイト単相域で熱間圧延を終了
し、鋼板のAe3点( 平衡状態におけるA3 点)における
オーステナイトの残留歪量から目標材質が得られる最適
巻取温度を算出し、巻取温度が最適巻取温度になるよう
に圧延後の冷却を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、一つのコイルにお
ける長さ方向の材質変動あるいはコイル間の材質変動の
少ない熱延鋼板の製造方法に関し、かかる鋼板をプレス
加工用素板として用いることにより、プレス成形品の品
質安定に寄与することができる。
【0002】
【従来の技術】熱延鋼板のコイル間やコイル内の材質の
ばらつきをできるだけ小さくするたに、熱間圧延の仕上
げ温度や巻取温度はコイル間あるいはコイル内で、ある
範囲に管理されている。とりわけ、引張強度TSのばら
つきを小さくすることで、通常、伸びや曲げ特性などそ
の他の材質特性も安定するので、TSの変動を抑制する
ことは材質の管理上重要である。
【0003】一つのコイルに巻き取られた熱延鋼板の長
さ方向の材質のばらつきを抑制するために、圧延の仕上
げ温度を一定に維持するように加速圧延が行われる。す
なわち、仕上げ圧延前の鋼片(ラフバー)は、時間の経
過と共に冷え、これに伴って圧延後の材質が変動するの
で、鋼片温度の低下を補うために、各鋼片につき、圧延
後端側にいくに従って圧延速度を増して、圧延中の温度
降下を少なくしている。また、加速圧延を行った場合、
後端側ほど圧延速度が上がり、圧延機下流側に設けられ
た冷却帯での冷却時間が短くなるため、巻き取り温度が
変動しないように冷却水量が制御される。
【0004】しかし、かかる方法では、仕上げ圧延終了
から巻取りまでの時間が圧延後端側ほど短くなるため、
コイルの後端側ほど圧延から巻き取りまでの平均冷却速
度が大きくなり、熱延鋼板の長さ方向の材質が変動す
る。また、圧延終了から変態開始までの時間がコイル後
端側ほど短くなるので、変態開始時のオーステナイト組
織が変動し、これに伴って材質も変動する。
【0005】一方、コイル間のばらつきを抑制する手段
として、仕上げ温度や巻取温度の変動が過大にならない
ように、所定の管理値を設定して対応しているが、同じ
規格の熱延コイルでも、加熱炉の温度や圧延速度は必ず
しも一定に管理することが困難であり、特に圧延速度は
生産性の観点からできるだけ大きく設定されるので、管
理が難しい。
【0006】このように、複雑な外乱要因を踏まえて、
熱延コイルの材質のバラツキを抑制することは極めて困
難である。このため、近年、材質予測モデルを作成し、
これを用いて材質の均質化を図ることが試みられてい
る。例えば、特開平5−279737号公報には、鋳造
モデル、鋼片搬送モデル、圧延モデル、組織・材質モデ
ル等の各種のモデルを導入して、これに基づき製造段階
における材質を予測し、最適な製造条件を設定すること
が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】材質予測モデルを用い
て、TS等の材質を予測するには、オーステナイト組織
の予測に加えて、更に複雑なフェライト変態、パーライ
ト変態、ベイナイト変態の予測計算を行い、鋼板組織を
推定し、その上で予測した組織から材質を予測しなけれ
ばならない。実際は、フェライト、パーライト、ベイナ
イトの各変態は競合して進行するため、前記推定計算は
極めて複雑になり、材質の計算に膨大な時間を要する。
【0008】熱延鋼板の材質を均一にするためには、熱
延プロセスに対してオンラインで制御することが不可欠
であるが、叙上の通り、従来の材質予測モデルを用い
て、オンライン制御を行っても、計算に膨大な時間がか
かるために、状況の変化に即応することができず、緩慢
な制御しかできない。このため、材質のばらつきを十分
に抑制しているとは言い難く、結局、巻取温度や仕上げ
温度を一定範囲に管理する従来の方法が相変わらず行わ
れているのが実情である。
【0009】本発明はかかる問題に鑑みなされたもの
で、計算負荷が小さく、オンライン制御により材質の変
動を十分抑えることができる熱延鋼板の製造方法を提供
することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の熱延鋼板の製造
方法は、オーステナイト単相域で熱間圧延を終了し、鋼
板のAe3点( 平衡状態におけるA3 点)におけるオース
テナイトの残留歪量から目標材質が得られる最適巻取温
度を算出し、巻取温度が最適巻取温度になるように圧延
後の冷却を制御するものである。
【0011】巻取温度の算出は、Ae3点におけるオース
テナイト中の残留歪量をε、引張強度のεに対する増加
率をa、引張強度の巻取温度に対する低下率をb、残留
歪量及び巻取温度の目標値(一定に維持した場合に目標
とする材質、例えば強度が得られる値)を各々ε0 、C
0 としたとき、最適巻取温度CTは次式から算出する
ことができる。 CT=CT0 +(ε−ε0 )a/b
【0012】前記熱延鋼板の製造方法は、特に40℃/
s で冷却した際のAr3点が650℃以上である鋼片を熱
間圧延するにより、優れた制御効果が得られる。
【0013】上記発明がなされた背景を説明することに
より、本発明の技術的意義を明らかにする。本発明者ら
は、材質変動の原因を検討したところ、圧延後のオース
テナイト未再結晶組織の量的変動によるものと考えるに
至った。すなわち、圧延終了後、冷却されるまでの時
間、言い換えれば再結晶時間の変動により未再結晶組織
に量的変動が生じるが、未再結晶のオーステナイトは細
粒化やフェライト変態が促進されるため、降伏強度YP
の上昇や引張強度TSの低下などの材質の変動を招来し
やすい。
【0014】かかる考察の当否を確かめるため、圧延シ
ュミレーターを用いて、冷却開始までの保持時間及び冷
却速度が材質に及ぼす影響を調べた。圧延冷却条件は図
1に示す通りであり、オーステナイト化加熱条件を12
00℃×30分、圧延後の仕上げ温度を850〜950
℃、圧延後冷却までの保持時間を1〜60sec 、冷却速
度を10〜100℃/s 、巻き取り条件を500℃×3
0分、巻き取り後の冷却条件を炉冷(FC)とした。
【0015】その結果の一例を図2及び図3に示す。図
2は通常の圧延条件である仕上げ温度を900℃、冷却
速度を40℃/s としたときの保持時間tと引張強度T
Sとの関係を示したもので、保持時間が短くなるに従っ
てTSが急速に増大することが分かる。一方、図3は仕
上げ温度を900℃、冷却までの時間を4sec としたと
きの冷却速度CRとTSとの関係を示したもので、冷却
速度の変動は熱延鋼板の材質にほとんど影響を与えない
ことが分かる。
【0016】以上の説明から明らかな通り、熱延鋼板の
材質の変動を防止するには、変態開始時点でのオーステ
ナイトの未再結晶量を一定に保てばよいことが理解され
る。前記未再結晶量はAe3点における残留歪量(以下、
特に断らない場合、残留歪量とはAe3点におけるものを
いう)として把握され得る。この残留歪量の算出には種
々の予測モデルが提案されており、また実際圧延におい
てX線などによるセンサーを利用して測定してもよい。
【0017】前記予測モデルの一例を下記に示す。この
モデルはG.Anan,N.Nakajima,M.Miyahara,S.Nanba等が提
案したもの(ISIJ Int.,Vol.32(1992),No.3,p261)を簡
略化したものである。
【0018】
【数1】 t0.5 =( 5.0 ×10-1 22)exp( 30000 / T ) ……(1) XREX =1−exp(−0.693 t/ t0.5 ) ……(2) ρ0 =1×1011exp (8000/T)[1-exp {−1×104 exp(-8000/T)ε}]…(3) ρ =ρ0 exp[−90exp(−8000 /T)t0. 7] ……(4) ρ2 =ρ(1−XREX ) ……(5) εr =−ln{1−ρ2 ×10-1 1exp(-8000/T) }/1×104 exp(-8000/T)…(6)
【0019】ここで、(1) 式のt0.5 はオーステナイト
の再結晶が半分完了するまでの時間、Tは鋼の加工温度
(絶対温度)、εは加工真歪である。(2) 式のXREX
再結晶率、tは加工後の保持時間である。(3) 式のρ0
は加工直後の転位密度、(4)式のρは保持後の転位密
度、(5) 式のρ2 は再結晶分を補正した転位密度、(6)
式のεr は求めようとする残留歪量である。尚、多パス
加工の場合は、残留歪量に次パスの加工真歪を加えたも
のをεとして計算を繰り返せばよい。温度が変化する場
合は、温度が階段状に変化するものとして取り扱うこと
で対応することができる。
【0020】前記残留歪予測モデルの当否を確認するた
め、圧延シュミレーションを行い、Ae3点での残留歪量
と引張強度TSとの関係を調べた。その結果の一例を図
4に示す。この場合、圧延条件は、図1において仕上げ
温度を900℃、冷却速度を40℃/s 、巻取温度を5
00℃とし、保持時間を変えることにより残留歪量を調
整した。同図より、残留歪量とTSとは密接な関係があ
ることが読み取れる。尚、巻取温度の設定値を変えるこ
とにより、図中の直線とほぼ平行な直線が巻取温度毎に
描ける。この場合、500℃より高い巻取温度について
は、図中、二点鎖線で示すように、巻取温度が500℃
の直線の下方に位置する。
【0021】以上の結果から冷却開始までの時間をAe3
点における残留歪量が変動しないように制御することに
より、材質変動の少ない熱延鋼板が製造できるものと推
定される。かかる制御は、Ae3点におけるオーステナイ
トの残留歪量を推定あるいは測定すればよいので、短時
間で鋼板の状態を把握することができ、オンラインでの
制御が可能になる。尚、制御方法としては、例えば冷却
帯において、最初に冷却水を吐出する冷却ノズルの位置
(冷却開始位置)を移動させて、圧延終了後から冷却開
始までの時間を一定にすればよい。冷却開始位置の移動
は、例えば各冷却ノズルへの給水弁を開閉することによ
り行うことができる。
【0022】ところが、実際の生産の場合、生産性を確
保するために、加熱温度や圧延速度が大幅に異なる場合
が多く、残留歪量を冷却条件を制御して一定に保つこと
が困難な場合が多い。そこで、本発明者は引張強度等の
材質が巻取温度に大きく影響を受けることに着目し、本
発明ではオーステナイトの残留歪量の変化に伴う材質の
変動を巻取温度を調整することで吸収することとした。
【0023】図5は前記圧延シュミレーションにより、
仕上げ温度を900℃、Ae3点での残留歪量を0.0
4、冷却速度を40℃/sとして、巻取温度を種々変化
させて巻取温度と引張強度TSとの関係を求めたもので
あり、巻取温度の上昇により、TSが逆比例して減少す
ることが分かる。尚、残留歪量の設定値を変えることに
より、図中の直線とほぼ平行な直線が残留歪量毎に描け
る。この場合、0.04より大きい残留歪量について
は、図中の直線の上方に位置する。
【0024】従って、図4のように、ある圧延仕上げ温
度、目標巻取温度の下で得られた残留歪量とTSとの関
係から、製造中の鋼板の残留歪量から予測されるTSと
目標TSとの差(ずれ)を求め、この差を相殺するよう
に冷却帯における冷却水量を制御するなどして、巻取温
度を調整することにより、所期のTSが得られる。すな
わち、TSと残留歪量との関係、TSと巻取温度との関
係には、図4および図5に示すように直線関係が認めら
れるので、図中に示すようにTSの残留歪量に対する増
加率をa、TSの巻取温度に対する低下率をbとする
と、最適巻取温度CTは次式で表すことができる。但
し、εは製造鋼板のAe3点におけるオーステナイト中の
残留歪量、ε0 ,CT0 は残留歪量及び巻取温度の目標
値(一定に維持した場合に所期の材質が得られる値)で
ある。 CT=CT0 +( ε−ε0)a/b
【0025】尚、上記説明は材質として引張強度を例に
とって説明したが、降伏強度等の他の材質についても同
様に考えることができる。また、本発明では、残留歪や
巻取温度から図3及び図4を用いて間接的に引張強度T
Sを求めているが、従来方法と異なり計算の負荷を大き
くするものではない。徒来方法ではオーステナイト組織
を予測した上で、変態挙動を予測し、製品の組織を予測
し、さらに組織からTSを求めるというものであり、T
Sを求めるために、通常の熱延鋼板の製造においてTS
にあまり影響を及ぼさない変態中や変態後の冷却パタン
までが考慮されており、このため計算の負荷が大きくな
ってしまうからである。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明において、熱間圧延に使用
する鋼成分については、特に限定されないが、40℃/
sで冷却した際の変態開始温度(Ar3点)が650℃以
上であるような鋼が好適である。図6は変態開始温度と
本発明により制御した引張強度TSの変動幅(ばらつ
き)の関係を示すが、変態開始温度が低いほど、ばらつ
きが大きくなる傾向にある。従って、変態開始温度は高
い方が望ましく、650℃以上、願わくば700℃以上
が望ましい。変態開始温度の低い鋼は所謂合金鋼であっ
て、冷却条件に大きく影響されるが、同温度が高い鋼は
構造用・加工用に用いられる一般の熱延鋼板であり、合
金鋼に比して安価であるため、コスト的にも有利であ
る。
【0027】本発明における圧延条件は、圧延温度がオ
ーステナイト単相温度以下になると、柔らかいフェライ
ト相が析出するようになり、板厚の精度が維持できなく
なるので、オーステナイト単相域で圧延を終了するもの
とした。鋼板の中央部でオーステナイト単相であって
も、板の端部では温度が低く、フェライト相が析出する
場合もあるので、願わくばフェライトが析出し始めるA
r3点より20℃以上高めの温度で圧延を終了することが
望ましい。
【0028】圧延後、生産される全てのコイルにおい
て、Ae3点におけるオ一ステナイトの残留歪量を一定に
保つように冷却開始位置を制御することは、加熱温度や
通板速度が変動することから困難である。本発明では、
Ae3点におけるオ一ステナイトの残留歪量から、目標と
する材質(例えば、引張強度TS)が得られるように最
適巻取温度を算出し、該最適巻取温度に巻取温度を一致
させるように冷却を制御する。引張強度TSの変動を抑
制する場合、最適巻取温度CTは下記式により求められ
る。 CT=CT0 +( ε−ε0)a/b 但し、aはTSの残留歪量に対する増加率、bはTSの
CTに対する低下率、εは製造鋼板のAe3点におけるオ
ーステナイト中の残留歪量、ε0 ,CT0 は残留歪量及
び巻取温度の目標値(一定に維持した場合に所期の材質
が得られる値)である。a,bの値は図3、4に示した
ように容易に求めることができる。
【0029】また、種々の巻取温度における残留歪量と
TSとの関係から、目標とするTSが得られるように、
製造中の鋼板の残留歪量から最適巻取温度を算出し、巻
取温度が最適巻取温度と一致するように巻き取ることに
より、所期の引張強度を有する熱延鋼板を得ることがで
きる。例えば、図4において、目標とするTSが450
N/mm2 とした場合、巻取温度を500℃、残留歪量を
0.04を目標値として一定に制御するならば、ほぼ目
標とするTS(=450kgf /mm2 )が得られるのであ
るが、何らかの原因により残留歪量が0.06になった
とする。この場合、残留歪量が0.06で所期のTSが
得られる最適巻取温度T1 (図中、二点鎖線で示す関係
が得られる巻取温度)を算出して、巻取温度がT1 にな
るように、例えば冷却水量を制御して巻取温度を調整す
る。尚、巻取温度は、冷却帯と巻取り機との間に設けら
れた放射温度計等の非接触温度計により検出することが
できる。
【0030】
【実施例】化学組成がC:0.12wt%、Mn:0.9
wt%を主成分とするSS400(一般構造用圧延鋼材)
相当鋼及びこれをベースとしてMn量を調整することに
より変態開始温度Ar3点(但し、40℃/s の冷却速度
における値)を表1に示すように調整した鋼を用いて、
実機にて加速圧延を行い、同表に示した温度にて圧延を
終了した後、前記オーステナイト残留歪予測モデルを用
いて算出したAe3点における残留歪量と引張強度TSと
の関係並びに巻取温度とTSとの関係から、目標のTS
(430N/mm2 )が得られるように、最適巻取温度を
算出し、巻取温度が最適巻取温度に一致するように冷却
水量を制御して巻き取った。最適巻取温度は既述のよう
に、図3及び図4からa/bを求め、前記式に代入して
求めた。尚、表1には圧延時にフェライトが析出する最
高温度、残留歪量及び巻取温度の目標値、並びにb/a
の値も併記した。
【0031】巻取り後、コイルを引き延ばして、製造過
程において算出された残留歪量に対応するように、鋼板
の長さ方向の各部から圧延方向に引張試験片を採取し、
引張強度を測定した。得られた引張強度と目標引張強度
との偏差を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】表1より、鋼成分が同じである実施例の試
料No. A1〜A7と従来例の試料No. A8〜A14とを
比較すると、実施例では巻取温度が最適巻取温度になる
ように冷却制御したので、各試料の残留歪量が相当ばら
ついているにもかかわらず、TSの目標値に対する偏差
は小さい。これに対して、試料No. A8〜A14は巻取
温度を550℃に固定しているので、たまたま巻取温度
が最適巻取温度と等しくなったコイル部分(No. A1
2)を除いて、TSの目標値に対する偏差が最大15N
/mm2 程度変動しており、コイル各部における材質のば
らつきが実施例に比して非常に大きい。
【0034】また、試料No. A17〜A19から、Ar3
点が650℃より低くなると、巻取温度の変動に対する
TS変動が大きくなるので、b/aの値が大きくなり、
TSの目標値に対する偏差が大きくなるものの、Ar3
が同じ場合、実施例のNo. A18と従来例のNo. A20
から明らかな通り、本発明の制御を行ったもの(No.A
18)は行わないもの(No. A20)に比して、TS偏
差が小さく、材質の変動が効果的に抑制されていること
が分かる。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、鋼板のAe3点における
オーステナイトの残留歪から目標材質が得られる巻取温
度を算出し、巻取温度が算出値になるように圧延後の冷
却を制御するので、推定計算あるいは実測によりAe3
におけるオーステナイト残留歪を短時間で把握すること
ができ、オンライン制御により材質変動の少ない熱延鋼
板の製造が可能になる。また、材質のばらつきを小さく
することで、平均的な材質強度を下げても、強度の下限
を保証できるようになり、合金元素の低減によるコスト
の低減や加工性の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延後冷却開始までの保持時間及び冷却速度が
材質に及ぼす影響を調べるためのシュミレーション圧延
冷却条件の説明図である。
【図2】保持時間tと引張強度TSとの関係を示すグラ
フである。
【図3】冷却速度CRと引張強度TSとの関係を示すグ
ラフである。
【図4】Ae3点における残留歪量と引張強度TSとの関
係を示すグラフである。
【図5】巻取温度と引張強度TSとの関係を示すグラフ
である。
【図6】鋼の変態開始温度と引張強度TSの変動幅との
関係を示すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オーステナイト単相域で熱間圧延を終了
    し、鋼板のAe3点におけるオーステナイトの残留歪量か
    ら目標材質が得られる最適巻取温度を算出し、巻取温度
    が最適巻取温度になるように圧延後の冷却を制御するこ
    とを特徴とする材質変動の少ない熱延鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Ae3点におけるオーステナイト中の残留
    歪量をε、引張強度のεに対する増加率をa、引張強度
    の巻取温度に対する低下率をb、残留歪量及び巻取温度
    の目標値を各々ε0 、CT0 としたとき、最適巻取温度
    CTを CT=CT0 +(ε−ε0 )a/b より算出する請求項1に記載した熱延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 40℃/s で冷却した際のAr3点が65
    0℃以上である鋼片を熱間圧延する請求項1又は2に記
    載した熱延鋼板の製造方法。
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