【発明の詳細な説明】
生物学的に被処理水を処理する方法及びその装置
本発明は、生物学的に活性化された粒状濾材を連続的に循環させて形成され、
窒素等の気体が発生し又は一般的に空気が供給される連続式粒状濾床において、
被処理水、好ましくは廃水を処理する方法及び装置に関するものである。
気体が発生する処理とは所謂脱窒処理のことであり、空気が供給される処理と
は硝化処理又は生物化学的酸素要求量(BOD)除去処理のことである。
連続式粒状濾過装置とは、処理される懸濁液又は溶液が主に上方へ流れるのに
対して濾材が下方へ移動するような濾床を備えた濾過装置のことである。この濾
過装置には連続的に濾材を下方へ移動させるために濾床の下部に移動した濾材を
連続的に濾床の上部に搬送する搬送手段が設けられている。
従来技術において、下方へ移動した濾材に付着した懸濁物等を除去するために
、この濾材の洗浄を濾材の搬送と組み合せて行っていた。従って、この濾材に付
着した懸濁物等は、濾材が濾床の上部に戻される前にこの濾材から除去されるこ
とになる。このような濾過装置は、スウェーデン国特許第7602999−0号
に開示されている。
連続式粒状濾床によって脱窒処理を行うことは以前から公知である。また、脱
窒処理は、例えば固定床(スタティック濾床)のような非連続的に動作する濾床
でも行われている。しかしながら、固定
床は窒素の堆積による詰まりが通常のものよりも速く起こる欠点がある。この欠
点は、廃水が上方から下方へ濾床を通過して行われるような濾過をする場合に特
に問題となる。このような場合、窒素の気泡を除去するための逆浄操作いわゆる
ガス抜きを行うために、1日に何回も装置を停止させなければならない。これに
対して連続式粒状濾床の場合には、この連続式粒状濾床を備えた濾過装置が廃水
の脱窒処理のために動作している間に、堆積した窒素が濾材の洗浄装置への搬送
に伴って除去されることになる。一般的に、この堆積した窒素は濾材に付着した
懸濁物及び細菌株の一部を除去するための最終洗浄工程を行うまでに濾材から完
全に除去されることになる。
べン・クープマン(Ben Koopman)等による1990年発行のリサーチジャー
ナルWPCF(Research Journal WPCF)Vol.62、No.3における「移
動濾床を備えた砂濾過装置による脱窒処理(Denitrification in a moving bed
upflow sand filter)」において、総窒素含有量22g/m3までの硝酸塩及び
亜硝酸塩を含有する廃水の脱窒処理におけるパイロット試験が上記文献の239
頁乃至245頁に開示されている。この試験では、濾材を洗浄装置まで搬送する
ために圧縮空気を1.1m3/hまでの割合で搬送管(マンモスポンプ)に供給
している。これらの試験における濾床の最大処理量は、11.0m/h(懸濁液
[m3]/(時間[h]x濾過装置の面積[m2]))であった。ベン・クープマ
ン等は、濾床の処理量をこれ以上増加させることはできなかったと上記文献に記
載している。上記最大処理量は、厳密には言えないが、連続式濾
床において除去できる窒素量の限界と言えるものである。
仮に窒素濃度がおよそ50g/m3程度である場合、この窒素を除去するため
には膨大な量の濾材を搬送し且つ洗浄する必要があるので、未処理水(濾床の底
部から濾材と共に搬送された水)の量はこの脱窒処理によって得た濾液の量と比
較して多くなってしまう。従って、これは実用的且つ経済的に不適当であると言
える。
廃水の硝化処理又はBOD除去処理においては、一般的に空気が濾床内に供給
されることになる。この空気の量によって、廃水が濾床を通過して濾過される間
に不利益な効果が生ずることがある。
空気の気泡は、上方に移動する際に廃水を伴って濾床を通過し、濾液を巡回さ
せる役割を果たしている。このような場合、濾液を流出させる流出口から砂等の
濾材が流出するという問題が生ずる。更に、洗浄装置が濾液と直接接触するよう
に配置されている場合には、上記空気の気泡は洗浄水を伴って洗浄装置内に入り
込むという問題も生ずることがある。従って、空気量によってはこの空気の気泡
が洗浄処理を妨げることになる。この問題を解決する方法は、スウェーデン国特
許第9102179−0号に開示されている。
本発明は、生物学的処理を行う連続式粒状濾過装置において、窒素等の発生又
は空気等の気体の供給に関連する上述した諸問題を全て解決するものである。
本発明では、濾床内で廃水を生物学的に処理し、その間に濾材が濾床の底部か
ら頂面に搬送されることになる。しかしながら従来技術と比較して本質的に異な
る点は、濾材の搬送と組み合せて濾材を
洗浄しないことである。従って、本発明は従来技術と全く異なるものである。本
発明では洗浄処理を搬送と組み合せない代わりに、濾床を通過して処理されて濾
床の上面に流れてきた水と濾材と共に搬送された水とを混合させて、これらを濾
過装置外部好ましくは次の処理工程に案内する。従って、懸濁物等を取り除く濾
過処理(固液分離処理)は、この濾床における廃水の処理工程と連動するもので
はない。即ち、この濾過装置は反応装置(脱窒処理の場合には窒素を還元する装
置)としての機能を有するものである。仮に、この処理が空気中の酸素が供給さ
れる硝化処理又はBOD除去処理であった場合、その後の脱窒処理は本発明によ
り好適に行うことができる。更に、前記脱窒処理の後には懸濁物及び細菌を分離
させる従来技術による濾過処理を行う。
硝酸塩及び亜硝酸塩を25gN/m3以上含有した廃水を脱窒処理する際に窒
素を取り除く搬送を達成するためには、濾材の搬送管の直径を大きくすることが
必要となる。この場合、濾床内を高い反応性のまま維持することが問題となる。
反応性とは、gN/m3xd(除去される窒素量[g]/濾床の容積[m3]x日
数)の測定値により定義されるものである。濾床内を高い反応性のまま維持する
ためには、細菌株(バクテリアストック)の生存環境を維持することが根本的な
問題である。通常、廃水内に存在する有機物(有機生物)の量は、細菌株が必要
とする炭素量に比べて少ないので、炭素を例えばメタノール等により供給する必
要がある。上述のように搬送管の直径を大きくすると、濾材は濾床の底部から頂
面まで激し
く搬送される。これによって細菌株が減少することになり、実質的に濾床の反応
性を著しく悪化させることになる。これは、濾床に2つ又はそれ以上のマンモス
ポンプ等の搬送手段を設け、搬送における水の流れを各搬送部に分散させること
で激しい流れを制御し、細菌株の著しい減少を防ぐことで解決される。このよう
な方法及び装置は、スウェーデン特許出願第9302184−8号に詳細に開示
されている。
脱窒処理及び硝化処理の両方に共通して、濾材を必要とされる高さにまで搬送
しなければならないので、マンモスポンプにかなりの負担がかかるという問題が
生じる。また、このマンモスポンプは濾材だけでなく水をも搬送するものである
ので、更に負担がかかることになる。マンモスポンプにより搬送される水の生物
学的処理は、濾床の下方にある濾材すなわち濾床の上方で既に処理を行った濾材
で行われるので、この水の処理には十分な時間を必要とする。即ち処理時間を十
分得るために、廃水の流入口を濾床内の高い位置に配置しなければならない。実
際の場合において、この流入口は処理される廃水の種類により選択された高さに
配設されることが好ましい。硝化処理及びBOD除去処理時に必要な空気の供給
口は、廃水の流入口の上方に位置するのが好ましい。なぜなら、濾床は下方へ移
動するので、廃水の流入口の下に移動した濾材にも酸素を供給させることができ
るからである。
本発明を添付図面を参照して以下に更に詳細に説明する。
図1は、本発明による装置の一部を概略的に示した斜視図である。
図2は、本発明による装置の縦断面図である。
図3は、図2に示した装置の横断面図である。
図1は、洗浄装置が配設されていないことを特徴とする脱窒処理を目的とした
連続的に粒状濾材が循環する濾床、所謂連続式濾床の原理を示した概略図である
。この態様において、濾過槽は円筒状の容器であるがその底部が円錐形状に形成
されており、この濾過槽の頂面から下方に適当な空間を残すように砂等の濾材(
1)から成る濾床で満たされている。濾過槽には、その中央軸に濾材等を搬送す
る手段(マンモスポンプ)が配設されている。このマンモスポンプは、前記濾過
槽の底部近傍から濾床を貫通して延びる搬送管(5)と、この搬送管の外側に且
つこれと同軸に配された圧縮空気供給管(7)とから構成されている。前記搬送
管(5)の下端部には濾材等を吸入する吸入バルブ(6)が設けられていると共
にこの上端部には濾材等を排出する排出開口部(8)が設けられている。前記マ
ンモスポンプには、前記搬送管と同軸に配され且つ濾過槽外部から延びる廃水供
給導管と連通した廃水供給管(2)と、この廃水供給管と連通しており且つ廃水
を濾床内に流入させるための開口部を有する複数の分配アーム(3)とが配設さ
れている。これら分配アームの下方には、濾材(1)を下方へ好適に移動させる
ための円錐形シェル(4)が配設されている。前記濾過槽には、処理された水の
流出口(9)が前記排出開口部(8)より上方に設けられている。
この濾床が下方へ移動する間に、濾材(1)は脱窒処理に適した細菌株によっ
て活性化されることになる。脱窒処理を行った濾材(1)は、マンモスポンプの
圧縮空気供給管(7)から搬送管(5)の吸入バルブ(6)に案内された圧縮空
気を利用して濾床の底部から上面まで搬送される。このように濾材(1)が搬送
されることによって、前記シェル(4)の外表面から矢印(B)で示すような濾
材(1)の流れが生ずることになり、濾材を連続的に循環させることができる。
また、このようにして濾材を搬送した後、前記搬送管(5)の排出開口部(8)
で脱窒処理により発生した窒素が排出されると共に搬送された濾材及び水もこの
排出開口部から流出し、この濾材は濾床の上面に向かって下方へ流れることにな
る。この搬送の間に窒素及び懸濁物等は濾材から分離するので、この濾材を再度
濾床に戻すことができる。処理される廃水は、矢印(A)で示す位置から前記廃
水供給導管を通って廃水供給管(2)に供給され、これと連通した複数の分配ア
ーム(3)から濾床内へ流出する。矢印(C)に示すように濾床を通過した水は
、マンモスポンプによって濾床の上方に搬送された水と共に流出口(9)から次
の処理工程に案内される。
硝化処理又はBOD除去処理に使用される濾床も、上述と同様の原理に基づく
ものでよいが、この場合には濾床内に空気を供給するための供給口を設ける必要
がある。この供給口は、廃水の流入口の真上に配設されることが好ましい。
本発明による硝化処理又はBOD除去処理の後には、脱窒処理を
行う。当然、この脱窒処理は上述した本発明によって好適に行うことができるが
、公知技術よって行うことも可能である。
脱窒処理の後には、実質的に濾過処理が行われる。この濾過処理に用いられる
濾床も、生物学的に活性化されていることが望ましい。なぜならこの処理工程に
おいて、これまでの処理工程では十分に処理する時間がなかった硝酸塩と亜硝酸
塩の残滓が水を濾過すると同時に最終的に処理されるからである。また、懸濁粒
子だけでなく細菌の死骸もこの濾過処理で除去される。偶発的に増加した炭素又
はメタノールの量もまた、この濾過工程により消費される。この濾過処理におい
ては、従来技術による連続式粒状濾過装置を用いて行うことが好ましい。この公
知技術の濾過装置は実質的に図1に示す本発明のものと同様であるが、この濾過
装置にはマンモスポンプ上端部の開口部に濾材洗浄装置及び洗浄水排出口が設け
られている。また必要に応じて、固定床のような他の公知技術によってこの濾過
処理を行うことも可能である。しかしながら、この方法で濾過処理する場合には
濾床の逆洗操作が必要であり、連続的に脱窒処理を行う場合には1つの濾床に最
低でも2つの固定床を必要とする。
硝酸塩と亜硝酸塩の含有率が高い工業廃水の多くは、本発明による脱窒処理を
用いて直接的に処理することが可能である。更にアンモニア混合物をも含有する
廃水においては、最初に硝化処理を行う必要があるが、この硝化処理も本発明に
よって行うことができる。また別の方法としては、この硝化処理を公知技術によ
る反応槽を用いて行うことも可能である。
本発明による脱窒処理用の連続式濾床に高濃度の窒素が含有している場合には
、この濾過装置は濾床の体積に限界があるので比較的低い処理量で作動すること
になる。この結果、濾過装置の反応性が最大であっても脱窒処理にはかなりの時
間がかかることになる。多くの場合、濾床の処理量は2m/hが最大である。仮
に、次に行う最終的濾過処理を前記濾床と同じ体積の連続式濾床で行うならば、
この濾床の処理量を例えば10m/h程度にすることができる。即ち、完全に最
終的濾過処理の濾床に供給するためには、脱窒処理反応器として並列動作する5
つの濾床が必要となる。これとは別に、本発明のように脱窒処理反応器として作
動する場合には、この反応器の処理量は濾床の高さを増加させることによって増
大させることが可能であるので濾過槽の体積を変化させずに濾床の体積を増加さ
せることができる。従って、多くの反応器を必要とすることはない。また、この
ように濾床の高さを増加させることによるもう1つの利点は,ポンプを使用せず
に水を最終処理用濾床を介して案内することができることである。
しかしながら、図1に示す脱窒処理反応器によって例えば大きい工場の多量の
廃水を処理する必要がある場合には、上述のように反応器の濾床の体積を増大さ
せたり反応器を増加させたとしても限界があるので好ましくない。このような場
合には、水平方向の濾床面を例えば長方形に変形して面積を増加させて、この濾
床面に亘って多数のマンモスポンプを配設することが好ましい。このような脱窒
処理反応器の態様を添付した図2及び図3に略図的に示す。処理さ
れる廃水は、矢印(D)のように廃水流入口(11)から実質的に長方形である
濾床(長方形濾床)(10)に供給され、多数のキャップ(12)の下方の濾床
内へ分配される。圧縮空気供給管(14)を備えた多数のマンモスポンプ(13
)は、濾床面全体に亘って配設されている。処理された水及びマンモスポンプに
より搬送された水は、流出口(15)から矢印(E)に示すように次の処理工程
に案内される。
上記の脱窒処理反応器を硝化処理反応器として使用する場合には、前記キャッ
プ(12)の真上に更に空気用流入口(図示せず)を設ける必要がある。
濾材に付着したスラッジ等の懸濁物は、濾材と共にマンモスポンプにより搬送
される間にこの濾材から剥離して濾床の上面に沈降するので、このスラッジに対
する処理が必要となる。細菌の死骸も含んでいるこのようなスラッジは、処理さ
れた水に伴って排出されて次の処理工程で除去されることになる。しかしながら
スラッジは濾床上面に沈降するので、このスラッジを次の処理工程に移すには処
理された水と混合されなければならない。従って、脱窒処理により発生した気泡
又は硝化処理時に供給された気泡が濾床の上方の水を十分に撹拌することができ
ない場合には、この水を付加的に撹拌することが好ましい。これは、例えば多数
の穴部を有するコイル管を用いて空気を供給することにより行うことが可能であ
る。
濾材及び窒素を搬送する手段としては、上述したマンモスポンプが最も有効で
あり且つ適しているが、このような搬送手段には他の
公知手段を使用することも可能である。例えば、反応槽の底部に濾材を排出する
ための排出口があり、反応槽の外部において濾材及び水等の液体を反応槽の上面
まで搬送するような公知の機械的な搬送手段を使用してもよい。この場合、この
搬送の間に窒素を脱窒処理により除去する。
搬送手段における吸入口の開口部は、濾材をこの開口部に案内するために反応
槽の底部に設けられたトンネル状孔部の内部又はその真上に配置することが好ま
しい。
上述した廃水とは、実際の廃水でなくとも、必要に応じて本発明によって処理
する必要がある水を意味することは言うまでもない。
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