【発明の詳細な説明】
ディスククランプ及びスペーサ
〔技術分野〕
本発明は、磁気記録の技術分野に関し、特にハードディスク駆動スピンドルや
ディスク収容部のためのディスククランプ及びスペーサに関する。
〔背景技術〕
磁気ハードディスク駆動スピンドルのためのディスククランプは、主な目的と
して、複数の磁気ハードディスクが、衝撃下で、半径方向に移動しないように、
ディスク収容部内の複数の磁気ハードディスクをスピンドル上にクランプすると
いう目的がある。このような半径方向への移動は、別に“ディスクスリップ”と
して産業界において知られているが、スリップしたディスクの予め記録されたト
ラックの他のディスクの予め記録されたトラックからの芯ずれによって、ディス
ク駆動装置の全体的な故障を招く結果となり得る。
従来技術におけるディスククランプの主な方法によれば、ディスク収容部内の
一番下のディスクがスピンドルフランジに接合接触している状態で、収容部内の
一番上のディスクに垂直なクランプ力が提供される。これらのディスク自体は、
スペーサによって分離されている。
要求されるディスククランプ力は、ディスク駆動装置の衝撃仕様によって決定
される。例えば、ディスク駆動装置仕様が、ディスク駆動装置が300G'sの衝
撃に耐えることを要求する場合、半径方向力を、約3poundでディスクに作用さ
せる必要がある。この力を達成するには、クランプとディスク間の摩擦係数が0.
15のレンジであるので、ディスククランプは、例えば、20poundの垂直クラン
プ力を作用させる必要があり、この垂直クランプ力は、20lbsの垂直或いは軸
方向力を、ほぼ3lbsの水平或いは半径方向力に変換することになる。
ディスク駆動装置がより小さくなるに連れて、より薄くもなる。このことは、
ディスク/スピンドルアッセンブリの全収容高さに厳しい制限を課し、言い換え
れば、ディスクの厚さやスピンドル上方のディスククランプの高さの低減が必要
となる。ディスクが小さくなると、また、“ディスクスリップ”を防ぐために要
求されるディスククランプのクランプ力によって、ディスクをポテトチップ形状
に反らせる傾向がある。上述の要因の全てのために、新しいディスククランプに
関するアプローチが要求される。
〔発明の開示〕
本発明は、磁気ディスクの内周リムに対して締まりばめとなる一体式フランジ
を備えたディスクスペーサアッセンブリを含んで構成される。この締まりばめが
、従来クランプによって与えられていた“ディスクスリップ”を防止するために
要求される半径方向力を、ディスクに与えるように設計される。ディスクに対す
るディスクスペーサの力は、スペーサ(フランジ)の直径を、ディスクの内径よ
り僅かに大きく形成することよって与えられる。好ましい実施態様では、スペー
サは、スペーサの環の一位置に小さな割れ目を有しているので、より小さな直径
内に圧縮される。この圧縮されたスペーサは、ディスクの内径内に嵌め合わされ
、ディスクの内径に対してスプリング力を供給するために解放される。或いは、
僅かに寸法が大きく割れ目のないディスクスペーサをディスクの内径内に挿入す
る前に、初期冷却することによって、半径方向荷重を作用させることもできる。
これは、スペーサが実用温度まで温まったときに膨張して、ディスクの内径に対
して要求されるスプリング力や荷重を供給するようになるからである。
当該ディスクスペーサとディスクアッセンブリは、一つの組み立てられたユニ
ットとしてディスク駆動スピンドル上に取り付けられ、ディスクスペーサに接す
る一つのディスククランプによってディスク駆動スピンドル上にクランプされる
。本発明の構成におけるディスククランプは、収容部内の一番上のディスクの上
表面に対して垂直方向或いは軸方向荷重を作用させる必要がないので、当該クラ
ンプはスペーサアッセンブリの内径上のリップ部にクランプ荷重を作用させるべ
く配設される。このリップ部は、最上部のディスクの上表面より軸方向下側に配
設されるので、クランプの上部とクランプのスクリュウの両者は、軸方向におい
て、ディスク収容部の一番上のディスクの上表面と同じか、或いはそれより下側
に位置することになる。
他の配設においては、ディスククランプのリップ部に対する接触面が、僅かに
傾斜して、ディスククランプが、リップ部に力を作用させるときに、垂直(軸方
向)力だけでなく、前記傾斜した接触面によって引き起こされる力の変換によっ
て、ディスク収容部内の最上部のディスクに半径方向力を作用させて、半径方向
に整列させて最上部のディスクの半径方向の位置合わせを保持するための付加的
なクランプ力を供給する。
本発明のもう一つの特色は、下側のディスクスペーサのフランジを、ディスク
収容部がクランプされるスピンドルのフランジから僅かに離して、ディスクスペ
ーサのリップ部に作用された力を、ディスク収容部内の下側のディスクに対して
垂直或いは軸方向に作用させ、ディスクスペーサアッセンブリのディスクスペー
サ部とスピンドルフランジとの間に、ディスク収容部内の下側のディスクを挟み
込んでクランプすることを含んで構成される。この付加的な軸方向荷重は、上述
したように、“ディスクスリップ”の防止に役立つ付加的な半径方向荷重となる
。
本発明の更に別の特色は、ディスクスペーサアッセンブリのフランジ部とディ
スクスペーサ部との間に、小さなカット(切欠き)或いはノッチ(切込み)を設
けたことにあり、ディスクスペーサのフランジが、半径方向に物理的に変形でき
るようにする。このことは、ディスクの内径に対して一様に半径方向荷重を作用
させることに役立つ。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明に係るディスクスペーサアッセンブリを備えたディスク駆動ス
ピンドルの部分断面図である。
図2は、本発明に係るディスクスペーサアッセンブリの上面図である。
図3は、締まりばめに磁気ハードディスクを配設した状態における本発明に係
るディスクスペーサアッセンブリの上面図。
図4は、本発明に係る他のディスクスペーサアッセンブリを備えるディスク駆
動スピンドルの部分断面図である。
図5は、図4で示した他の実施態様の部分詳細図であり、特に、ディスクスペ
ーサアッセンブリの傾斜したリップ部へのディスククランプの実際の荷重から生
じる力のベクトルを示す。
図6は、ディスクの反り返り防止バンプ(緩衝器)を含んだ本発明に係るディ
スクスペーサの上面図である。
〔発明を実施するための最良の形態〕
図1において、好ましいディスクスペーサアッセンブリ10は、ディスク駆動
回転スピンドル軸18内のクランプスクリュウ16を介してディスククランプ1
4により与えられる実際のクランプ力で、ディスク駆動スピンドルフランジ12
上に取付けられる。このディスクスペーサアッセンブリ10は、ディスクスペー
サ部と、ディスクスペーサアッセンブリ10の内径に向かって見たときにT字形
状断面を形成するような、スペーサ部30の内径から延伸する2つの一体式フラ
ンジ部40,46と、を含んで構成される。2つの磁気ハードディスク20,2
2は、両方とも、ディスクスペーサアッセンブリ10のスペーサ部30上に載せ
られ、かつ、各々の内径44,46がスペーサアッセンブリ10の各フランジ4
0,42に接するように、ディスクスペーサアッセンブリ10上に取付けられる
。ディスククランプ14によって与えられる軸方向クランプ力は、リップ部24
に作用する。このリップ部24は、ディスク20の上表面より軸方向に下方にあ
るフランジ部40の上表面より下方のディスクスペーサアッセンブリ10から半
径方向内側に延伸する。この配置により、ディスククランプ14の上部は、軸方
向に、上側のディスク20の上表面より下方に位置することになる。同様に、ク
ランプスクリュウ16の上部もまた、上側のディスク20の上表面と同じになる
か、或いはそれより下方となる。
ディスクスペーサアッセンブリ10の下側フランジ部42は、当該フランジ部
42の下表面とスピンドルフランジ12の隣接面との間に、小さな間隙26がで
きるように配置される。この配置により、ディスククランプ14によって与えら
れる軸方向力が、スペーサ部30によって、下側のディスク22に伝達され、こ
れによって、下側ディスク22を、ディスクスペーサ部30とスピンドルフラン
ジ12との間に挟み込む。このことは、スピンドルフランジ12上のディスクス
ペーサアッセンブリ10と、接続されたディスク20とディスク22との完全な
アッセンブリを維持することに役立つばかりでなく、前記3つの構成要素間の摩
擦力によって、下側ディスク22への付加的な半径方向荷重の作用を補助するの
にも役立つ。
図2において、前記ディスクスペーサアッセンブリ10を上面図で示す。この
図において、符号30,40,及び24は、各々、前記ディスクスペーサ部30
,前記上側フランジ部40,及び前記リップ部24である。図1には示されてお
らずこの図に示された一つの付加な特色は、スペーサリング(環)に設けられた
小さな割れ目32である。この割れ目26は、ディスクスペーサアッセンブリ1
0のスプリング力をディスク20又はディスク22の内径に作用させる手段を提
供する。ディスクスペーサアッセンブリ10の直径は、ディスク20や22の内
径より僅かに大きく作られる。ディスクスペーサアッセンブリ10は、前記割れ
目32によって僅かに圧縮されて、ディスク20や22の内径の内側に装着され
る必要がある。その後、圧縮が解放されると、前記ディスクスペーサアッセンブ
リ10の弾性エネルギがディスク20や22の内径に対してスプリング力を与え
る。材料や、前記ディスクスペーサアッセンブリ10の直径の適切な選択による
圧縮量を適切に準備することによって、要求される衝撃荷重に対してディスクを
固定保持するのに必要かつ十分な半径方向荷重を、ディスクの内径に与えること
ができる。更に、当業者であれば、ディスク駆動装置が使用される様々な用途の
様々な要求に応じて荷重の値が変化することを、容易に認識するであろう。例え
ば、ディスク駆動装置が、落下しやすいポータブルコンピュータに使用される場
合、より高い衝撃荷重が要求される。
図3は、ディスク20に取付けられた状態のディスクスペーサアッセンブリ1
0を示す。この図では、ディスクスペーサアッセンブリ10と、破線で示された
ディスクスペーサ部30と、リップ部24と、が示されている。ディスクが前記
ディスクスペーサアッセンブリ10に取付けられた状態では、これらの結合した
ユニットは、前記ディスク駆動スピンドルフランジ12に単一の構造物として取
付けられるディスク収容アッセンブリを形成する。この取付方法は、前記ディス
ク駆動スピンドルフランジ12に取付ける際に、ディスク20,22を正確に位
置合わせする必要性を排除する。一般に、ディスク駆動スピンドルフランジ12
がスチールで構成されるのに対して、磁気ディスクはアルミニウムで構成される
。この材料の相違は、磁気ディスクの内径がスチール製スピンドルフランジの外
径に接している場合、好ましくない“ディスクスリップ”を招く相互熱膨張係数
の相違の原因となる。代わりに、本発明のディスクスペーサアッセンブリに複数
のディスクが取付けられる場合には、本発明のディスクスペーサアッセンブリは
、ディスクと同じ材料で作ることができ、また寧ろそうした方が好ましいが、そ
れによって、どんな熱膨張係数の不一致も除去でき、もし除去できない場合でも
、スピンドルフランジとディスクとの間の材料の相違を原因として生じたディス
クリップ部のどんな問題点も低減できる。従って、結果として、ディスクスペー
サアッセンブリ10と磁気ディスク20,22とから構成されるディスク収容ア
ッセンブリは、ディスク収容アッセンブリとディスク駆動スピンドルフランジ1
2との間の半径方向の分離を維持するのに必要なステップなしに、ディスク駆動
スピンドルフランジ12に単一装置として取付けることができる。従って、実際
には、ディスク20,22は、まずディスクスペーサアッセンブリ10に組み付
けられ、そしてディスクスペーサアッセンブリ10とディスク収容部とが、スピ
ンドルフランジ12の周りに取付けられてスピンドルフランジ12に接する。そ
して、クランプ14が、クランプスクリュウ16を介してスピンドルシャフト1
8上に取付けられる。このような完全な組み付け方法は、如何なる従来技術の手
法と比較しても能率が非常に改良されている。
図4は、ディスクスペーサアッセンブリ10の他の態様を示す。この図におい
て、リップ部24には、傾斜した表面が備えられて、図5に示すように、矢印5
0で表されるディスククランプ14によって与えられる力が、軸方向力52と、
半径方向力54と、に変換される。この軸方向力52は、図1のディスククラン
プの軸方向力と同様の方法で、同様の目的のために作用する。しかしながら、前
記半径方向力54は、上側のディスク20の内径に対して、付加的な半径方向力
を供給するのに役立つ。この配設の仕方によれば、上側ディスク20に対して作
用する半径方向力の大きさと、下側ディスク22に対して作用する半径方向力の
大きさと、を均一にする傾向がある。これは、前述したように、ディスクスペー
サ部30とスピンドルフランジ12との間の下側ディスク22のサンドイッチ効
果によって、ディスクスペーサアッセンブリ10にかかるディスククランプ14
の軸方向荷重が、下側ディスク22に付加的な半径方向力を供給するからである
。
一つの付加的な特色として、ディスクスペーサアッセンブリ10のこの変更例
は、スペーサ部30とフランジ部40,42との間に、カット(切欠)34,3
6を含むことによって、それぞれのカット(切欠)34,36の部分における材
料の薄肉化のため、フランジ部40,42を、半径方向に物理的に変形させる。
この半径方向の変形能は、ディスククランプ14から上側ディスク20の内径へ
の半径方向力の移動を助ける。
本発明のこの実施形態の一つの付加的な特色は、ディスクスペーサアッセンブ
リのフランジ部分が、ディスクスペーサの中心を通る線に対して対称となるよう
に構造的に同一に作られていることにある。このため、ディスクスペーサアッセ
ンブリ10は、本来は、上側や下側といったフランジ部(40,42)を持って
いない。これは、これらのフランジが構造的に同一であるためである。このこと
は、製造工程において役立つ。
本発明の一つの付加的な特色は、ディスクスペーサアッセンブリ10の上面図
である図6に関連して示される。ディスク駆動装置の幾つかの用途においては、
“ディスクスリップ”を防止するために要求される半径方向荷重は、この半径方
向荷重がディスクの反り、若しくは“ポテトチッピング”として知られることを
引き起こす程、非常に高い。このディスクの反りは、もし無制御であれば、許容
できないディスク振れ性能を招く結果となる。このような場合、振れのプロフィ
ールを制御するなら、振れがディスク性能において軸増大を与えることが可能で
あることを示唆する従来技術がある。例えば、Farid Kaymaramによる米国特許4
875118号である。
図6において、所望の角度とプロフィールに応じて所定の半径方向間隔でディ
スクスペーサフランジ部40に取付けられたバンプ(緩衝器)60によって、制
御された振れが提供される。この図では、120度の半径方向間隔で示された3
つのバンプ(緩衝器)60があり、そのうちの1つが環の割れ目32の横方向に
隣接されている。
この好ましい実施形態の固有の説明は、出願人が請求する発明の範囲を限定す
るものではない。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年7月12日
【補正内容】
1995年7月12日付条約第34条に基づく補正
(1) 明細書及び請求の範囲全文を以下の通り補正する。
(2) 図2を添付の補正図面の通り補正する。
補正明細書
ディスククランプ及びスペーサ
〔技術分野〕
本発明は、磁気記録の技術分野に関し、特にハードディスク駆動スピンドルや
ディスク収容部のためのディスククランプ及びスペーサに関する。
〔背景技術〕
磁気ハードディスク駆動スピンドルのためのディスククランプは、主な目的と
して、複数の磁気ハードディスクが、衝撃下で、半径方向に移動しないように、
ディスク収容部内の複数の磁気ハードディスクをスピンドル上にクランプすると
いう目的がある。このような半径方向への移動は、別に“ディスクスリップ”と
して産業界において知られているが、スリップしたディスクの予め記録されたト
ラックの他のディスクの予め記録されたトラックからの芯ずれによって、ディス
ク駆動装置の全体的な故障を招く結果となり得る。
従来技術におけるディスククランプの主な方法によれば、ディスク収容部内の
一番下のディスクがスピンドルフランジに接合接触している状態で、収容部内の
一番上のディスクに垂直なクランプ力が提供される。これらのディスク自体は、
スペーサによって分離されている。
要求されるディスククランプ力は、ディスク駆動装置の衝撃仕様によって決定
される。例えば、ディスク駆動装置仕様が、ディスク駆動装置が300G'sの衝
撃に耐えることを要求する場合、半径方向力を、約3poundでディスクに作用さ
せる必要がある。この力を達成するには、クランプとディスク間の摩擦係数が0.
15のレンジであるので、ディスククランプは、例えば、20poundの垂直クラン
プ力を作用させる必要があり、この垂直クランプ力は、20lbsの垂直或いは軸
方向力を、ほぼ3lbsの水平或いは半径方向力に変換することになる。
ディスク駆動装置がより小さくなるに連れて、より薄くもなる。このことは、
ディスク/スピンドルアッセンブリの全収容高さに厳しい制限を課し、言い換え
れば、ディスクの厚さやスピンドル上方のディスククランプの高さの低減が必要
となる。ディスクが小さくなると、また、“ディスクスリップ”を防ぐために要
求されるディスククランプのクランプ力によって、ディスクをポテトチップ形状
に反らせる傾向がある。上述の要因の全てのために、新しいディスククランプに
関するアプローチが要求される。
PCT出願国際公開第93/06599において示唆される一つのアプローチ は、第1のディスクの上に半径方向圧力を働かせる複数の指を有すると共に第2 のディスクの上に設けられて第1のディスクの半径方向の移動を制御し且つ前記 2つのディスクの分離を制御するための複数の突起を有する環状のクランプ及び スペーサを使用するものである。
IBM Technical Disclosure Bulletin Vol.32,No.6,November19 89,Page129,Disc Pack Assembly Design,において、複数のディスクをク ランプするために溝付割りリングを用いるもう一つのアプローチが示唆されてい る。各ディスクは、ディスクの内径に挟み込まれたりすべり込む前記リングの溝 内に置かれ、前記リングは解放されると、ディスクに半径方向クランプ力を働か せる。
〔発明の開示〕
本発明は、磁気ディスクの内周リムに対して締まりばめとなる一体式フランジ
を備えたディスクスペーサアッセンブリを含んで構成される。この締まりばめが
、従来クランプによって与えられていた“ディスクスリップ”を防止するために
要求される半径方向力を、ディスクに与えるように設計される。ディスクに対す
るディスクスペーサの力は、スペーサ(フランジ)の直径を、ディスクの内径よ
り僅かに大きく形成することよって与えられる。
第1の実施態様において、本発明は、環状のスペーサ部を含んで構成されるデ ィスクスペーサであって、更に断面で見たときに半径方向にT字形状を形成する 前記スペーサ部から延伸する2つの一体式フランジ部と、前記フランジ部に接合 する複数のディスクの内径に所定の半径方向荷重を提供するための手段と、を含 んで構成されることを特徴とするディスクスペーサを提供する。
好ましい実施態様では、スペーサは、スペーサの環の一位置に小さな割れ目を
有しているので、より小さな直径内に圧縮される。この圧縮されたスペーサは、
ディスクの内径内に嵌め合わされ、ディスクの内径に対してスプリング力を供給
するために解放される。或いは、僅かに寸法が大きく割れ目のないディスクスペ
ーサをディスクの内径内に挿入する前に、初期冷却することによって、半径方向
荷重を作用させることもできる。これは、スペーサが実用温度まで温まったとき
に膨張して、ディスクの内径に対して要求されるスプリング力や荷重を供給する
ようになるからである。
第2の実施態様では、本発明は、それぞれ内周リムを有する少なくとも2つの ディスクを含んで構成されるディスク/スペーサアッセンブリであって、更に断 面で見たときに半径方向にT字形状を形成する前記スペーサ部から延伸する2つ の一体式フランジ部を有するディスクスペーサを含んで構成され、各フランジ部 の前記スペーサ部からの高さが各ディスクの厚さより小さく、各ディスクが所定 の半径方向力で前記スペーサフランジ部のそれぞれに前記内周リムを接合させて 前記スペーサに取付けられるようにしたことを特徴とするディスク/スペーサア ッセンブリと、
スピンドルフランジを有するスピンドルであって、前記2つのディスクのうち 一つが前記スピンドルフランジに接合すると共に、ディスクスペーサのスペーサ 部とスピンドルフランジとの間に挟み込まれるようにディスク/スペーサアッセ ンブリが前記スピンドルに取付けられるようにしたスピンドルと、
前記スピンドルに取付けられて、ディスクスペーサの接触面に接するディスク クランプと、
を含んで構成されたディスク駆動スピンドルアッセンブリを提供する。
当該ディスクスペーサとディスクアッセンブリは、一つの組み立てられたユニ
ットとしてディスク駆動スピンドル上に取り付けられ、ディスクスペーサに接す
る一つのディスククランプによってディスク駆動スピンドル上にクランプされる
。本発明の構成におけるディスククランプは、収容部内の一番上のディスクの上
表面に対して垂直方向或いは軸方向荷重を作用させる必要がないので、当該クラ
ンプはスペーサアッセンブリの内径上のリップ部にクランプ荷重を作用させるべ
く配設される。このリップ部は、最上部のディスクの上表面より軸方向下側に配
設されるので、クランプの上部とクランプのスクリュウの両者は、軸方向におい
て、ディスク収容部の一番上のディスクの上表面と同じか、或いはそれより下側
に位置することになる。
他の配設においては、ディスククランプのリップ部に対する接触面が、僅かに
傾斜して、ディスククランプが、リップ部に力を作用させるときに、垂直(軸方
向)力だけでなく、前記傾斜した接触面によって引き起こされる力の変換によっ
て、ディスク収容部内の最上部のディスクに半径方向力を作用させて、半径方向
に整列させて最上部のディスクの半径方向の位置合わせを保持するための付加的
なクランプ力を供給する。
本発明のもう一つの特色は、下側のディスクスペーサのフランジを、ディスク
収容部がクランプされるスピンドルのフランジから僅かに離して、ディスクスペ
ーサのリップ部に作用された力を、ディスク収容部内の下側のディスクに対して
垂直或いは軸方向に作用させ、ディスクスペーサアッセンブリのディスクスペー
サ部とスピンドルフランジとの間に、ディスク収容部内の下側のディスクを挟み
込んでクランプすることを含んで構成される。この付加的な軸方向荷重は、上述
したように、“ディスクスリップ”の防止に役立つ付加的な半径方向荷重となる
。
本発明の更に別の特色は、ディスクスペーサアッセンブリのフランジ部とディ
スクスペーサ部との間に、小さなカット(切欠き)或いはノッチ(切込み)を設
けたことにあり、ディスクスペーサのフランジが、半径方向に物理的に変形でき
るようにする。このことは、ディスクの内径に対して一様に半径方向荷重を作用
させることに役立つ。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明に係るディスクスペーサアッセンブリを備えたディスク駆動ス
ピンドルの部分断面図である。
図2は、本発明に係るディスクスペーサアッセンブリの上面図である。
図3は、締まりばめに磁気ハードディスクを配設した状態における本発明に係
るディスクスペーサアッセンブリの上面図。
図4は、本発明に係る他のディスクスペーサアッセンブリを備えるディスク駆
動スピンドルの部分断面図である。
図5は、図4で示した他の実施態様の部分詳細図であり、特に、ディスクスペ
ーサアッセンブリの傾斜したリップ部へのディスククランプの実際の荷重から生
じる力のベクトルを示す。
図6は、ディスクの反り返り防止バンプ(緩衝器)を含んだ本発明に係るディ
スクスペーサの上面図である。
〔発明を実施するための最良の形態〕
図1において、好ましいディスクスペーサアッセンブリ10は、ディスク駆動
回転スピンドル軸18内のクランプスクリュウ16を介してディスククランプ1
4により与えられる実際のクランプ力で、ディスク駆動スピンドルフランジ12
上に取付けられる。このディスクスペーサアッセンブリ10は、ディスクスペー
サ部30と、ディスクスペーサアッセンブリ10の内径に向かって見たときにT
字形状断面を形成するような、スペーサ部30の内径から延伸する2つの一体式
フランジ部40,42と、を含んで構成される。2つの磁気ハードディスク20
,22は、両方とも、ディスクスペーサアッセンブリ10のスペーサ部30上に
載せられ、かつ、各々の内径44,46がスペーサアッセンブリ10の各フラン
ジ40,42に接するように、ディスクスペーサアッセンブリ10上に取付けら
れる。ディスククランプ14によって与えられる軸方向クランプ力は、リップ部
24に作用する。このリップ部24は、ディスク20の上表面より軸方向に下方
にあるフランジ部40の上表面より下方のディスクスペーサアッセンブリ10か
ら半径方向内側に延伸する。この配置により、ディスククランプ14の上部は、
軸方向に、上側のディスク20の上表面より下方に位置することになる。同様に
、クランプスクリュウ16の上部もまた、上側のディスク20の上表面と同じに
な
るか、或いはそれより下方となる。
ディスクスペーサアッセンブリ10の下側フランジ部42は、当該フランジ部
42の下表面とスピンドルフランジ12の隣接面との間に、小さな間隙26がで
きるように配置される。この配置により、ディスククランプ14によって与えら
れる軸方向力が、スペーサ部30によって、下側のディスク22に伝達され、こ
れによって、下側ディスク22を、ディスクスペーサ部30とスピンドルフラン
ジ12との間に挟み込む。このことは、スピンドルフランジ12上のディスクス
ペーサアッセンブリ10と、接続されたディスク20とディスク22との完全な
アッセンブリを維持することに役立つばかりでなく、前記3つの構成要素間の摩
擦力によって、下側ディスク22への付加的な半径方向荷重の作用を補助するの
にも役立つ。
図2において、前記ディスクスペーサアッセンブリ10を上面図で示す。この
図において、符号30,40,及び24は、各々、前記ディスクスペーサ部30
,前記上側フランジ部40,及び前記リップ部24である。図1には示されてお
らずこの図に示された一つの付加な特色は、スペーサリング(環)に設けられた
小さな割れ目32である。この割れ目32は、ディスクスペーサアッセンブリ1
0のスプリング力をディスク20又はディスク22の内径に作用させる手段を提
供する。ディスクスペーサアッセンブリ10の直径は、ディスク20や22の内
径より僅かに大きく作られる。ディスクスペーサアッセンブリ10は、前記割れ
目32によって僅かに圧縮されて、ディスク20や22の内径の内側に装着され
る必要がある。その後、圧縮が解放されると、前記ディスクスペーサアッセンブ
リ10の弾性エネルギがディスク20や22の内径に対してスプリング力を与え
る。材料や、前記ディスクスペーサアッセンブリ10の直径の適切な選択による
圧縮量を適切に準備することによって、要求される衝撃荷重に対してディスクを
固定保持するのに必要かつ十分な半径方向荷重を、ディスクの内径に与えること
ができる。更に、当業者であれば、ディスク駆動装置が使用される様々な用途の
様々な要求に応じて荷重の値が変化することを、容易に認識するであろう。例え
ば、ディスク駆動装置が、落下しやすいポータブルコンピュータに使用される場
合、
より高い衝撃荷重が要求される。
図3は、ディスク20に取付けられた状態のディスクスペーサアッセンブリ1
0を示す。この図では、ディスクスペーサアッセンブリ10と、破線で示された
ディスクスペーサ部30と、リップ部24と、が示されている。ディスクが前記
ディスクスペーサアッセンブリ10に取付けられた状態では、これらの結合した
ユニットは、前記ディスク駆動スピンドルフランジ12に単一の構造物として取
付けられるディスク収容アッセンブリを形成する。この取付方法は、前記ディス
ク駆動スピンドルフランジ12に取付ける際に、ディスク20,22を正確に位
置合わせする必要性を排除する。一般に、ディスク駆動スピンドルフランジ12
がスチールで構成されるのに対して、磁気ディスクはアルミニウムで構成される
。この材料の相違は、磁気ディスクの内径がスチール製スピンドルフランジの外
径に接している場合、好ましくない“ディスクスリップ”を招く熱膨張係数の相
違の原因となる。代わりに、本発明のディスクスペーサアッセンブリに複数のデ
ィスクが取付けられる場合には、本発明のディスクスペーサアッセンブリは、デ
ィスクと同じ材料で作ることができ、また寧ろそうした方が好ましいが、それに
よって、どんな熱膨張係数の不一致も除去でき、もし除去できない場合でも、ス
ピンドルフランジとディスクとの間の材料の相違を原因として生じたディスクス リップ
のどんな問題点も低減できる。従って、結果として、ディスクスペーサア
ッセンブリ10と磁気ディスク20,22とから構成されるディスク収容アッセ
ンブリは、ディスク収容アッセンブリとディスク駆動スピンドルフランジ12と
の間の半径方向の分離を維持するのに必要なステップなしに、ディスク駆動スピ
ンドルフランジ12に単一装置として取付けることができる。従って、実際には
、ディスク20,22は、まずディスクスペーサアッセンブリ10に組み付けら
れ、そしてディスクスペーサアッセンブリ10とディスク収容部とが、スピンド
ルフランジ12の周りに取付けられてスピンドルフランジ12に接する。そして
、クランプ14が、クランプスクリュウ16を介してスピンドルシャフト18上
に取付けられる。このような完全な組み付け方法は、如何なる従来技術の手法と
比較しても能率が非常に改良されている。
図4は、ディスクスペーサアッセンブリ10の他の態様を示す。この図におい
て、リップ部24には、傾斜した表面が備えられて、図5に示すように、矢印5
0で表されるディスククランプ14によって与えられる力が、軸方向力52と、
半径方向力54と、に変換される。この軸方向力52は、図1のディスククラン
プの軸方向力と同様の方法で、同様の目的のために作用する。しかしながら、前
記半径方向力54は、上側のディスク20の内径に対して、付加的な半径方向力
を供給するのに役立つ。この配設の仕方によれば、上側ディスク20に対して作
用する半径方向力の大きさと、下側ディスク22に対して作用する半径方向力の
大きさと、を均一にする傾向がある。これは、前述したように、ディスクスペー
サ部30とスピンドルフランジ12との間の下側ディスク22のサンドイッチ効
果によって、ディスクスペーサアッセンブリ10にかかるディスククランプ14
の軸方向荷重が、下側ディスク22に付加的な半径方向力を供給するからである
。
一つの付加的な特色として、ディスクスペーサアッセンブリ10のこの変更例
は、スペーサ部30とフランジ部40,42との間に、カット(切欠)34,3
6を含むことによって、それぞれのカット(切欠)34,36の部分における材
料の薄肉化のため、フランジ部40,42を、半径方向に物理的に変形させる。
この半径方向の変形能は、ディスククランプ14から上側ディスク20の内径へ
の半径方向力の移動を助ける。
本発明のこの実施形態の一つの付加的な特色は、ディスクスペーサアッセンブ
リのフランジ部分が、ディスクスペーサの中心を通る線に対して対称となるよう
に構造的に同一に作られていることにある。このため、ディスクスペーサアッセ
ンブリ10は、本来は、上側や下側といったフランジ部(40,42)を持って
いない。これは、これらのフランジが構造的に同一であるためである。このこと
は、製造工程において役立つ。
本発明の一つの付加的な特色は、ディスクスペーサアッセンブリ10の上面図
である図6に関連して示される。ディスク駆動装置の幾つかの用途においては、
“ディスクスリップ”を防止するために要求される半径方向荷重は、この半径方
向荷重がディスクの反り、若しくは“ポテトチッピング”として知られることを
引き起こす程、非常に高い。このディスクの反りは、もし無制御であれば、許容
できないディスク振れ性能を招く結果となる。このような場合、振れのプロフィ
ールを制御するなら、振れがディスク性能において実際の増大を与えることが可
能であることを示唆する従来技術がある。例えば、Farid Kaymaramによる米国特
許4875118号である。
図6において、所望の角度とプロフィールに応じて所定の半径方向間隔でディ
スクスペーサフランジ部40に取付けられたバンプ(緩衝器)60によって、制
御された振れが提供される。この図では、120度の半径方向間隔で示された3
つのバンプ(緩衝器)60があり、そのうちの1つが環の割れ目32の正反対の 側
に設けられている。
この好ましい実施形態の固有の説明は、出願人が請求する発明の範囲を限定す
るものではない。
補正請求の範囲
1.一つの環状のスペーサ部(30)を含んで構成され、更に、
断面で見たときに半径方向にT字形状を形成する前記スペーサ部から延伸され
る2つの一体式フランジ部(40,42)と、
前記フランジ部に接合する複数のディスクの内径に対し、所定の半径方向荷重
を供給するための手段と、
を含んで構成されたことを特徴とするディスクスペーサ(10)。
2.前記ディスクにスプリング力を作用させる前記フランジ部によって前記半
径方向荷重が与えられることを特徴とする請求項1に記載のディスクスペーサ。
3.前記手段が、更に、ディスクスペーサ内の環状部分内の割れ目を含んで構
成されたことを特徴とする請求項2に記載のディスクスペーサ。
4.ディスクスペーサの内径部分に形成され、前記一体式フランジ部の上表面
より軸方向下方でディスククランプと接する面を有するリップ部を、更に含んで
構成されたことを特徴とする請求項1または請求項3に記載のディスクスペーサ
。
5.前記ディスククランプと接する面が、ディスクスペーサの軸方向及び半径
方向の両方に関して傾斜することによって、前記ディスククランプと接する面に
作用される力をディスクスペーサの軸方向力及び半径方向力の両方に変換するよ
うに調整されることを特徴とする請求項4に記載のディスクスペーサ。
6.ディスクスペーサの前記フランジ部と前記スペーサ部との交差部分に、半
径方向荷重下での前記フランジ部の半径方向の変形能を増大させるノッチを更に
含んで構成されることを特徴とする請求項5に記載のディスクスペーサ。
7.それぞれ内周リム(44,46)を有する少なくとも2つのディスク(2 0,22)
を含んで構成されるディスク/スペーサアッセンブリであって、更に
断面で見たときに半径方向にT字形状を形成するスペーサ部から延伸する2つの
一体式フランジ部(40,42)を有するディスクスペーサ(30)を含んで構
成され、スペーサ部からのそれぞれのフランジ部高さが、それぞれのディスクの
厚さより小さく、各ディスクが所定の半径方向力で前記スペーサフランジ部のそ
れぞれに前記内周リムを接合させて前記スペーサに取付けられるようにしたこと
を特徴とするディスク/スペーサアッセンブリ(10)と、
スピンドルフランジ(28)を有するスピンドル(12)であって、前記2つ
のディスクのうちの一つが前記スピンドルフランジに接すると共に、ディスクス
ペーサのスペーサ部とスピンドルフランジとの間に挟み込まれるようにディスク
/スペーサアッセンブリが前記スピンドルに取付けられるようにしたスピンドル
と、
前記スピンドルに取付けられて、前記ディスクスペーサの接触面(24)に接
するディスククランプ(14)と、
を含んで構成されたことを特徴とするディスク駆動スピンドルアッセンブリ。
8.各フランジ部とディスクとの間に制御された接合を提供して、制御された
ディスクの反り返りプロフィールを与えるそれぞれのディスクスペーサフランジ
部に半径方向に間隔を空けて形成された少なくとも3つのバンプ(60)を、更
に含んで構成されたことを特徴とする請求項7に記載のディスク駆動スピンドル
アッセンブリ。
9.前記スペーサの接触面が、ディスククランプによって作用される下向きの 力を半径方向力及び軸方向力に変換する傾斜した表面を含んで構成され、
前記半径方向力は前記ディスクの内周リムへの前記スペーサの半径方向力を増 大させるように作用する半径方向力であり、前記軸方向力は前記スピンドルフラ ンジ上にディスクスペーサアッセンブリを保持するように作用する軸方向力であ ることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のディスク駆動スピンドルア ッセンブリ。
【図2】
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フロントページの続き
(72)発明者 ハイコックス,トーマス エー.
アメリカ合衆国、カリフォルニア 95066、
スコッツ バレー、ナンバー 17、ディス
ク ドライブ 917
(72)発明者 バトゥ,ラムゴパル
アメリカ合衆国、カリフォルニア 91306、
カノーガ パーク、エルクウッド ストリ
ート 20220